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フレンズ・オブ・ リオ+20 からのメッセージ
フレンズ・オブ・ リオ+20 からのメッセージ 「フレンズ・オブ・リオ+20」は、世界経済フォーラムが召集・後援した、国際的なビジネス、科 学、市民社会の多様な活動分野のリーダーを集めたユニークなハイレベル・グループです。 私たちは、今後数十年の間に経済的、社会的、環境的要因がからみあった急を要する問題を克服 し、持続可能な開発への道のりを創造する必要があります。現在、世界では14億人が電気や清潔 な水を利用できず、9億人が飢えに苦しんでいます。今後10年間に6億人分の雇用が必要になりま す。また、人間社会は地球の環境システムを強く圧迫しているため、安全な自然の境界線を踏み越 えてしまう日が近いという研究結果も出ています。 リオ+20会議の開催に合わせ、私たちは持続可能な開発という差し迫った問題に対処する実用的な行 動を提案するため、ビジネス、科学、市民社会のリーダーから成る多彩な集団として結集しました。 持続可能な開発への道に移行するために必要な目標、政策、法律を定めるのは各国の政府です。し かし、問題への対処に急を要する中、私たちは多国間協定や国家計画の代わりとしてではなく、究 極的なインパクトを与えるために、多面的なマルチステークホルダー方法を活用し、持続可能な開 発に向けた行動を起こすよう政府に推奨します。 政府、ビジネス、科学、市民社会から意欲と能力を備えた参加者が明確な意図を持って集まれば、 技術と革新性、リソースを結集させ、特定の持続可能な開発目標に対して明らかな進歩を成し遂げ ることはすでに実証済みです。このような実践的コラボレーションは関心や専門性、国籍といった 従来の境界を越え、容易な参加を促し、透明性が高く、説明責任を果たすものとなります。また、 持続可能な開発の特定の目標について、社会的、経済的、環境的な要素を組み合わせた目的の達成 にむけた協力を築きあげることができます。さらに、現実的な結果を迅速にもたらすことができ、 また、実際にもたらしています。 このレターの付録には、このような協力の例が30件以上掲載されており、その一部には私たちも関 与しています。食料や水、エネルギー、雇用の確保を改善するためのコラボレーションの例も含ま れています。このようなマルチステークホルダー活動では、協力と革新性を通して、持続可能な開 発に関する政府と国際社会の取り組みを支援して補完できるような規模とスピードのインパクトを 与えられることが多々あります。 このため、私たちは以下の2つの具体的な行動を取るようリオ+20サミットに参加する政府指導者 の方々にお願いします。 •持続可能な開発への道につながる経済の計画、2015年以降の開発計画に適した持続可能な 開発の意欲的で普遍的かつ公正な目標の設定、また、その実現を迅速化させるために必要な 国および地域の政策と枠組みの構築を約束すること。 •意欲と能力を備えた参加者による多国間マルチステークホルダー協力作業(関心のある国お よび地方政府を含む)で、現在および近い将来、上記の目標達成を支援するための明確な行 動を取れるようにすること。 以下に私たちのメッセージを詳述しますが、私たちの提案はシンプルです。多様なネットワーク、 能力、洞察力を活用すれば、マルチステークホルダーでの協力作業により、実践的で期限のある行 動を起こし、持続可能な開発の主要な目標を達成できるよう政府を支援できるというものです。リ オに集まる各国政府指導者の方々に、これらを実行するための関与をお願いするとともに、私たち フレンズ・オブ・リオ+20からのメッセージ 3 概要 フレンズ・オブ・リオ+20からのメッセージ 4 と同じような考えを持つ人々に対して、更なる関与の輪を広げていくことをお願いします。これに より、リオ+20は、持続可能な開発に関する協力的かつ実践的な行動を起こすための真に変革的な 世界的指針の起点になります。 メッセージ全文 1. 私たちは、多様な活動分野、経済部門、地域から集まったビジネス、科学、市民社会のリー ダーで構成された国際的なグループです。「フレンズ・オブ・リオ+20」と呼ばれる非公 式の類まれな協力関係を構築しました。私たちは、世界を真の持続可能な開発に向けた軌道 に修正させ、急を要する相関的な経済、社会、環境問題に対処できるようにするという共通 の関心を持っています。グローバル社会はすべての人が食料やエネルギー、水を確保でき、 妥当な雇用の機会があり、大気と海が汚染されず森林伐採が行われない世界でなくてはなり ません。これは切迫した問題です。人間社会は地球の環境システムを大きく圧迫しているた め、安全な自然の境界線を越える日が近いという調査結果が出ています。 2. このため、私たちはブラジルのリオデジャネイロで開催される「国連持続可能な開発会議」 に参加される政府指導者の方々に2つの具体的な行動を会議参加中に取っていただくようお願 いします。まず、2030年までに持続可能な開発を達成するための意欲的で普遍的かつ公正な 目標を確定して実装すること。これは、2015年に「ミレニアム開発目標」が終了した後の新 たな開発の枠組みを形作る上でも役立ちます。このような目標は、地球の限りある天然資源 を尊重しつつ、貧困の根絶、不平等の低減、正義と人権の実現が可能になるよう計画された ものでなくてはなりません。これにより、2030年までに持続可能な開発のあらゆる面で目に 見える進展を加速化させます。第二に、多国間のマルチステークホルダー協力作業の可能性 を認識すること。これは、目標の達成を支援し、意欲と能力を兼ね備えた参加者(国および 地方政府を含む)のグループを召集して、現在および近い将来、明確な行動を取ってもらう ためです。期限のある創造的で明確に定義された現実的なコラボレーションを通して、実践 的な相当規模の結果を「下から上」へ生み出すことができれば、政府は公共、民間、市民社 会部門の技能と革新性、リソースを組み合わせて新たな目標に向けた進展を最も必要かつ実 行可能な場所で加速化させることができます。国際協力(多国間、複数国間、地方、マルチ ステークホルダー、異分野提携)の潜在的な要素をすべて活用した場合にのみ、人類は前回 のリオ会議のビジョンを実現できます。 3. 目標の設定、共通基準への移行、自由で公正な貿易の追求、財政運用といった持続可能な開 発の数多くの切迫した問題に対処するには、多国間政府の取り組みが欠かせないと私たちは 考えています。地域、国、地方レベルでも、政府は持続可能な開発を促進するという重要な 責任を負っています。たとえば、明確でコスト効果の高い政策や規制、市場インセンティ ブを策定することができます。ビジネスや市民社会も果たすべき重要な指導的役割を担って います。対応すべき明確な政府の目標と政策があれば、企業は革新性を発揮して、持続可能 な開発の成果を提供する新しい製品やサービスを作成することができます。経済界の指導者 は、企業のバランスシートに社会や環境への影響をよりよく取り入れて報告することを約束 できます。NGO、科学者、学者は、持続可能な開発活動の進展を実現、監視、報告するため の透明性の高い方法を新たに提案できます。GDPの範疇には収まらない社会的、環境的な成 長の質を測定する新たな(金銭に基づかない)基準や、持続可能な開発を達成するために人 間の痕跡を測定して低減するための新しい方法などが考えられます。政府や国際社会も広範 な目標を達成するという観点で、特定期間に持続可能な開発の実践的な成果をあげる上で大 利用)する必要があります(特に発展途上国の貧しいコミュニティを支援する場合)。経済 の先行きが不透明な現在、このような特定のマルチステークホルダーのコラボレーションが 相当規模で成功すれば、政府は自信を得られ、持続可能な開発の成果を確保すべく独自に前 向きな行動をしたり他者と協力したりするようになるでしょう。 4. リオ+20会議は、20年前の最初の「地球サミット」の時代とは大きく異なる世界で開催され ます。この間、世界では1日1.25米ドル未満で生活する人々の数が半減し、世界中で「中産 階級」の人口が5億人以上増えました。また、通信や技術のめざましい発展により、1992年 には想像もできなかった方法で社会はより緊密につながっています。新興国の合計生産高今 や、世界のGDPの40%近くに達し、1990年に比較すると倍増しています。多国間の取り組 み、民間部門での技術革新、市民社会からの圧力の価値が証明されたのです。これは、私た ちが結束し、より創造的な方法で協力すれば、より多くを成し遂げられるということです。 5. 明らかに、私たちはさらに多くのことを達成しなければなりません。私たちが直面する多く の開発関連の問題の複雑さ、範囲、規模は1992年以降、増大しています。新しい世紀に入っ て10年以上が経つものの、ミレニアム開発目標の社会的な要素の多くは未解決のままです。 たとえば、9億の人々がいまだに飢えに苦しんでいます。世界的な金融危機をきっかけに、さ まざまな理由から所得格差は世界中で驚くほど広がっています。私たちは今後10年間で、6 億の妥当な雇用を創出するという課題にも直面しています。現在、世界中で2億人が失業して おり、そのうち7500万人は若者です。約9億1000万人の労働者の1日の賃金は2米ドル未満 で、世界人口の75%には社会保障がありません。失業の懸念が広がっている上、質の高い雇 用を生み出す最適な方法も定かではありません。 6. また、持続可能な開発の環境問題が相互に関連していることが明らかになってきました。今 後20年間で最高30億人が中産階級の仲間入りをしますが、エネルギー、水、食料、健康、貿 易、気候変動の問題 - そして多くの他の物質的なニーズ - は結合して私たちの将来を形成 するため、これらの問題は統合的に検討する必要があります。各国政府は、このようなつな がりを認識して対応するための新たな多国間アプローチを必要としています。さらに、持続 可能な開発の特定の目標を達成するための新しい多面的なアプローチも必要です。環境や天 然資源の問題の関連性に対処し、革新的な対策を講じるためです。たとえば、気候に適した 農業を実践して安定した食料を確保する、または、持続可能なエネルギーと妥当な雇用の双 方を提供することなどが考えられます。チャンスは数多くあるのです。 7. 幸いなことに、政府や市民社会がこれらの課題を解決するために協力できることは実証され ています。企業、NGO、研究・科学団体、地方政府、その他、市民社会の多くの分野で、 持続可能な開発に関連したイニシアチブのために協力する機会が増えています。このよう な経験に基づき、従来の関心や専門性、国籍の境界を越えて明確に定義された協力作業は効 果があることが確実に証明されています。マルチステークホルダー活動はコラボレーション を通して、特に発展途上国の政府が単独では実現できないことを達成できる場合が多々あり ます。このような協力的取り組みは透明性が高く、参加も容易で説明責任も果たします。ま た、コストとリスクを共有することができます。経済的に実行可能であると同時に、明確な 社会的および環境的な利点を実証できます。堅実な科学的知識に基づき、特定の期間内に相 当規模の現実的な成果をあげられます。これは現在、実践されています。付録には、世界中 でこのような協力作業を通して持続可能な開発の課題への対処に成功している30件以上の活 動例が掲載されています。また、活用できる新たなイニシアチブについてもいくつか概説し ています。このような協力作業を繰り返して拡張するには、政府はその活動を認識して支援 し、持続可能な開発に関する「正式」な議論の一部にする必要があります。 フレンズ・オブ・リオ+20からのメッセージ 5 規模なマルチステークホルダー協力作業とイニシアチブが果たす役割の潜在性を認識(かつ フレンズ・オブ・リオ+20からのメッセージ 6 8. このため、リオ+20会議に集まる政府指導者の方々には、意欲的かつ普遍的ですべての人に とって公平な持続可能な開発の目標を達成するという決意を新たにしていただく必要があり ます。これらの目標は、私たちの社会、経済、環境のニーズに公平に応えるものでなくては なりません。リオ+20会議の成果は、ミレニアム開発目標後の開発の枠組み内で目標を達成 するための明確な方向付けとなり、地球の限りある天然資源を尊重しつつ、正義と人権を確 保できるようなやり方で目標を達成する方法を示す必要があります。1992年以降の大幅な科 学研究の進展により、環境がどのように変化しているかをよりよく理解して予測できるよう になりましたが、これを目標達成のために利用しなくてはなりません。リオ+20で各国政府 指導者の方々は専門家主導のプロセスを開始し、明確な目的と期限、指標を伴う完全出資の 持続可能な開発目標(SDG)を作成して、既存のミレニアム開発目標後のレビュー・プロセ スに統合させる必要があります。SDGは持続可能な開発の3つの要素をまとめ、一般的に適 用できる公平なものでなくてはなりません。また、各国政府はリオで、あらゆる人のための 食料、水、エネルギーの確保を含むSDGの主要な分野について合意する必要があります。 9. 実用的で期限がありコスト効果の高い方法で、相当規模の目標達成を支援するため、各国政 府指導者の方々には、私たちや私たちと同じような考え方、興味を持っている他の方たち( 関心を寄せている国および地方政府も含まれます)を関与させていただけるようお願いしま す。特定期間に特定のタスクを行い、特定の目標に向かって明らかな進展を遂げられるよう に、意欲と能力を兼ね備えた参加者の多国間協力活動を提起するためです。それぞれの活動 は、社会、経済、環境の目標が平等に検討され、中心的な目的とされるものでなくてはなり ません。これにより、また、創造的、協力的、そして協働的に連携し合うことにより、政府 外部で活動する者は迅速に相当規模でポジティブな変化を引き起こし、持続可能な開発とい う共通の世界的な目標を実現するために政府や国際社会を支援できます。 10. これまでに明らかになった事実に基づき、協力作業によって達成できる内容について図解ア イデアをいくつか作成しました。市民社会の指導者の方々が好例とみなす強力なイニシアチ ブは、この他にもあることでしょう。また、私たちの非公式なグループに参加していただけ る政府外部の識者が他にもいらっしゃることと思います。私たちはこのような方々を歓迎 します。私たちの提案は非常に明確です。私たちの能力、経験、洞察力を組み合わせ、世界 中のメンバー、顧客、バリューチェーンを結集すれば、市民社会、ビジネス、科学の貴重な 非公式ネットワークを創造し、地域や問題、経済部門全体で持続可能な開発に関する特定の マルチステークホルダー活動を迅速に相当規模で実施できるよう政府を支援できるのです。 協力し合うことにより、私たちは現実的な結果を生み出して広範な政府の取り組みを支援す ることができます。つまり目標を達成できるのです。リオに集まる各国政府指導者の方々に は、これを実行するために私たちや同じような考えを持つ人たちに関与させていただけるよ うお願いします。実行に移すなら今です。もう待っている余裕はないのですから。 敬具 フレンズ・オブ・リオ+20 ファザルH. アベド BRAC、創設者兼会長(バングラデシュ) ジェームズ・バッカス 世界経済フォーラム持続可能性ガバナンスに関するグローバル・アジェン ダ委員会、議長、グリーンバーグ・トローリッグLLP(米国) ピーター・バッカー 持続可能な開発のための世界ビジネス委員会(WBCSD)、会長(スイス) マルコス・ビキュド CBDES(持続可能な開発のためのブラジル・ビジネス委員会)、フィリッ プス中南米、CEO兼社長(ブラジル) ピーター・ブラベック=レッツマット ネスレ、取締役会長(スイス) シャラン・バロウ 国際労働組合総連合(ITUC)、事務局長(ベルギー) シンシア・キャロル アングロ・アメリカンPlc、最高経営責任者(英国) フェデリコ・キュラド エンブラエル、最高経営責任者(ブラジル) カルロス・ファディガス ブラスケム、最高経営責任者(ブラジル) 高紀凡 トリナ・ソーラー、会長兼最高経営責任者(中国) ベケレ・ゲレタ 国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)、事務総長(スイス) ヴィトー・ハラック カマルゴ・コレア、取締役会長(ブラジル) ムーター・ケント ザ・コカ・コーラ・カンパニー、会長兼最高経営責任者(米国) カイオ・コッホ=ヴェーザー ドイツ銀行グループ、副会長(ドイツ) バーバラ・クックス シーメンスAG、チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼業務執行役員( ドイツ) ジム・リープ WWFインターナショナル、事務局長(スイス) 李遠哲 ノーベル賞受賞者、国際科学会議、会長(フランス) ポール・ポルマン ユニリーバ、最高経営責任者(オランダ/英国) マリア・ラモス アブサ・グループ最高経営責任者およびバークレイズ・アフリカ最高経営責任者 (南アフリカ) ヨハン・ロックストロム ストックホルム・レジリアンス・センター、エグゼクティブ・ディレク ター(スウェーデン) リチャード・サマンズ グローバル・グリーン・グロース研究所、エグゼクティブ・ディレクター (韓国) ジョゼット・シーラン 世界経済フォーラム、副会長(スイス) 王石 万科企業股份有限公司、会長(中国) B.G.スリニバス インフォシス、理事(インド) モーリス・ストロング 北東アジア安全保障・持続可能性研究所、諮問委員会委員長 (中国) ベン・J・ヴァヴァイエン アルカテル・ルーセント、最高経営責任者(フランス)