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EMC VNX 仮想プロビジョニング:高度なテクノロ

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EMC VNX 仮想プロビジョニング:高度なテクノロ
ホワイト ペーパー
新しい VNX シリーズ向け仮想プロビジョニング
VNX5200、VNX5400、VNX5600、VNX5800、VNX7600、
VNX8000
高度なテクノロジー
要約
このホワイト ペーパーでは、新しい EMC® VNX™シリーズ ストレ
ージ システムの仮想プロビジョニング(Virtual Provisioning™)
によってもたらされるメリットについて説明します。このテクノロ
ジーの概要を紹介し、仮想プロビジョニングが VNX にどのよう
に実装されているかを説明します。
2014 年 8 月
Copyright © 2014 EMC Corporation. All rights reserved.(不許
複製・禁無断転載)
このドキュメントに記載されている情報は、ドキュメントの出版
日現時点の情報です。この情報は予告なく変更されることがあ
ります。
この資料に記載される情報は、「現状有姿」の条件で提供され
ています。EMC Corporation は、この資料に記載される情報に
関する、どのような内容についても表明保証条項を設けず、特
に、商品性や特定の目的に対する適応性に対する黙示の保
証はいたしません。
この資料に記載される、いかなる EMC ソフトウェアの使用、
複製、頒布も、当該ソフトウェア ライセンスが必要です。
最新の EMC 製品名については、EMC の Web サイトで EMC
Corporation の商標を参照してください。
パーツ番号:H12204-J
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VNX5200、VNX5400、VNX5600、VNX5800、VNX7600、VNX8000
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目次
エグゼクティブ サマリー ........................................................................................... 4
対象読者 ............................................................................................................................ 4
用語........................................................................................................................ 4
はじめに ................................................................................................................. 6
ビジネス要件 ........................................................................................................... 6
仮想プロビジョニングとは ......................................................................................... 7
ストレージ プール .................................................................................................. 10
プールの属性 ................................................................................................................... 10
プールのオーバーサブスクライブ ...................................................................................... 11
プール容量の監視 ............................................................................................................ 12
プールの拡張 ................................................................................................................... 13
プール LUN ........................................................................................................... 15
シン LUN ........................................................................................................................... 15
シック LUN ........................................................................................................................ 15
シン LUN 対 シック LUN ..................................................................................................... 16
プール LUN の作成 ........................................................................................................... 16
プール LUN の拡張と縮小 ................................................................................................. 17
クラシック LUN、シック LUN、シン LUN を使用するタイミング ............................................... 18
Virtual Provisioning for File の使用 ......................................................................... 19
シックおよびシンが有効なファイル システム ...................................................................... 19
シンが有効なファイル システムの作成 .............................................................................. 20
シンが有効なファイル システムの監視 .............................................................................. 23
結論...................................................................................................................... 25
参考資料 .............................................................................................................. 25
付録 A: シン LUN ................................................................................................... 26
シン LUN への移行によるスペース再利用 ......................................................................... 26
アプリケーションでのシン LUN の使用 ............................................................................... 27
ホスト ベースのファイル システム .................................................................................. 27
VMware ........................................................................................................................ 28
Hyper-V ........................................................................................................................ 28
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エグゼクティブ サマリー
EMC® VNX®の仮想プロビジョニングは、シン LUN とシック LUN のどちらとしてでも使
用できるプール LUN の導入によって、プール ベースのストレージ プロビジョニングを
実現します。シン LUN は、ストレージを必要に応じて割り当てることで、ストレージの
使用率を最大化するオン デマンドのストレージです。シック LUN は、すべてのユー
ザー容量が作成時に確保され、割り当てられるため、予測可能な高いパフォーマン
スをアプリケーションにもたらします。どちらの種類の LUN も、プール ベースのプロ
ビジョニングの特徴である利便性を享受することが可能です。プールとプール LUN
は、FAST™ VP(Fully Automated Storage Tiering for Virtual Pool)、圧縮、重複排除と
いった拡張データ サービスのビルディング ブロックでもあります。
仮想プロビジョニングにより、容量使用率を向上させ、ストレージ管理を合理化し、
アプリケーションのダウンタイムを短縮することで、組織はストレージ コストを削減で
きます。仮想プロビジョニングは、企業における電力要件と冷却要件、設備投資の
軽減にも貢献します。
対象読者
このホワイト ペーパーの対象読者は、IT プランナー、ストレージ アーキテクト、管理
者など、VNX ストレージ システムの評価、管理、運用、設計に携わっている方です。
用語
このホワイト ペーパーの中で使用する用語について説明します。
割り当て容量 : プールの場合はすべてのシン LUN によって現在使用されているプ
ール領域。シン LUN の場合は LUN によって使用されている物理的な領域。シック
LUN の場合は LUN によって使用されている、ホストで認識される容量。プール LUN
レベルでメタデータが存在するため、割り当て容量は、ホストで使用されている容量
よりも若干大きくなります。これは「合計割り当て」とも呼ばれます。
使用可能容量:現在プール LUN に対して割り当てられていない、プールの物理的な
実際 の領域。
AVM(自動ボリューム管理):ファイル ボリュームを自動的に作成し、管理する VNX
の機能。AVM は、ファイル システムへの割り当てが可能なファイル用ストレージ プ
ールにボリュームを編成します。
クラシック LUN: ユーザー定義の RAID グループ上に作成されるストレージの論理ユ
ニット。物理的に割り当てられている領域とホスト サーバーが認識しているユーザー
容量は同じです。クラシック LUN はプールでは作成できません。常に RAID グループ
上で作成されます。
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High Watermark:VNX が、関連機能のソフトウェア/パラメーター設定によって命令
された 1 つ以上のアクション(警告メッセージの送信、ファイル システムの拡張など)
を実行するトリガー ポイント。
LUN の移行:アプリケーションの実行停止を最小限に抑えながら、データを別の LUN
に移行する VNX の機能。
マップ済みプール:VNX for File で使用するストレージ検出処理中に作成されるファイ
ル用ストレージ プール。これは、ブロック用 VNX ストレージ プールとの 1 対 1 マッピ
ングです。
オーバー サブスクライブ容量:プール LUN に対し、プールの物理容量を超えて構成
されるユーザー容量。シン LUN では、オーバー サブスクライブ容量がサポートされ
ます。
プール LUN:プール内に作成された、ストレージの論理ユニット。プール LUN は、
シン LUN にすることも、シック LUN にすることもできます。
プール閾値のアラート:%フルの閾値の値を超えた場合に発行されるアラート。
スライス:プール LUN に割り当て可能な最小増分容量 プール LUN はスライスから成
ります。
ブロック用のストレージ プール:プール(シックおよびシン)LUN を構成するためのド
ライブのグループ。
ファイル用のストレージ プール:ファイル システムに割り当てるために使用する AVM
によって編成される利用可能なファイル ディスク ボリュームのグループ。これらのグ
ループは、AVM を使用して自動的に作成することも、ユーザーが手動で作成するこ
ともできます。
サブスクライブ容量 : プールの LUN に対して構成されている容量の合計。この値は、
利用可能なユーザー容量よりも大きくなることがあります。利用可能なユーザー容量
は、プールにドライブを追加することにより拡張できます。
シック LUN:割り当てられた物理的な容量とホスト サーバーによって認識されるユー
ザー容量が同一になるタイプのプール LUN。
シンが有効なファイル システム:現在必要としているファイル システム リソースのみ
を消費しながら、長期的な予測に基づいてストレージを割り当てることのできるファイ
ル システム。NFS または CIFS のクライアントやアプリケーションには、ファイル シス
テムの仮想最大サイズが表示されますが、物理的にはファイル システムの一部の
みが割り当てられています。
シン フレンドリー:初期化中にストレージ領域の一部だけを事前割り当てするファイ
ル システムやアプリケーションを主に指す用語。この用語は、(最初から追加のスト
レージを消費しようとせずに)削除されたスペースをまず再使用するファイル システ
ムにも用いられます。どちらの機能も、シン プロビジョニングにおいて容量使用率を
向上させます。
シック LUN:割り当てられた物理的な容量とホスト サーバーによって認識されるユー
ザー容量が少なくなるタイプのプール LUN。
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総容量:プール LUN 用に使用できるプールの物理ストレージの総容量。未フォーマ
ット時の容量から RAID およびその他のオーバーヘッドを差し引くことで算出されます。
また、「有効容量」や「ホストで認識される容量」と呼ばれることもあります。
ボリューム:VNX for File 上で、ファイル システム、データベース管理システム、その
他のアプリケーションがデータを配置する仮想ディスク。ボリュームには、単一のディ
スク パーティションまたは 1 台以上の物理ドライブ上での複数のパーティションが含
まれます。
%フル:現在使用されているプール容量の割合。次の数式を使用して算出されます。
使用済み容量/ユーザー容量 = %フル
%フルの閾値:超過した場合、システムをトリガーしてアラートを生成させるユーザー
が構成可能な閾値。
はじめに
ストレージ管理者が直面している最大の課題の 1 つが、データセンターで同時に運
用されるさまざまなアプリケーションについて、ストレージ要件のバランスを調整する
ことです。通常、管理者は、予測されるストレージの増加に基づいて最初に領域を割
り当てる必要性に迫られます。ビジネスの成長に応じてストレージを追加しなければ
ならなくなったときの管理費用とアプリケーション ダウンタイムを軽減するのがその
目的です。その結果、概してストレージ容量の過剰なプロビジョニングが行われるこ
とになります。過剰なプロビジョニングはコストを引き上げ、電力、冷却、設置面積に
関する要件を増大させるばかりか、容量使用率を低下させます。周到に計画した場
合でも、将来的に追加ストレージのプロビジョニングが必要になることがあります。そ
の場合、使用しているオペレーティング システムによっては、アプリケーションのダウ
ンタイムが発生する可能性があります。
VNX 仮想 プロビジョニング テクノロジーはこうした問題に対処するように設計されて
います。シン LUN およびシンが有効なファイル システムは、物理的に利用可能な容
量以上のストレージをアプリケーションに提供します。よって、ストレージ管理者は、
ドライブ容量の割り当て方法を決めるという時間のかかる管理作業から解放され
ます。代わりに、いくつかの高レベルなユーザー入力に基づいて、アレイ ベースのマ
ッピング サービスがすべてのストレージ構造を構築および保守します。ドライブはス
トレージ プールにグループ化され、アクションと高度なデータ サービスをプロビジョニ
ングする基礎を形成します。プールからの物理ストレージは、効率性を最大限に高
めるのに必要な場合のみ、自動的に割り当てることができます。
ビジネス要件
規模の大小を問わずすべての企業が、厳格なサービス レベル要件への準拠、およ
びストレージ容量の爆発的な増大への対応を実現しつつ、それぞれのストレージ
インフラストラクチャの管理コストを削減する必要に迫られています。
シン プロビジョニングは、日増しに関心が高まっているいくつかのビジネス目標を解
決します。
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•
設備投資額および運用コストの削減
シン プロビジョニングでは、実際の需要に応じたストレージ容量を確保でき、予測
需要に基づいてストレージ容量を割り当てる必要がないため、設備コストが削減
されます。運用コストも削減します。これは、ドライブ数を削減することにより、
電力や冷却に関するコストを削減できるほか、設置面積も少なくなるためです。
•
ストレージの使用率の最大化
企業は、同じ容量または少ない容量のストレージ リソースから、より多くの価値
を引き出すことで、成長に対応していく必要があります。依然として運用面におけ
る効率性が問題となっていますが、これは、企業が、停止に伴うリスクを軽減す
るため、および将来的に再プロビジョニングを実行する必要性を減らすため、ア
プリケーションに過剰なストレージを割り当てるケースが多いためです。
•
ストレージ管理に伴うコストの削減
「使いやすさ」に関するイニシアティブが、さまざまなストレージ プロセス(スタッ
フのトレーニング、ストレージの初期プロビジョニング、新しいストレージの追加、
ストレージ システムの管理/監視)で求められています。仮想プロビジョニングに
よってストレージの追加処理を単純化することができます。
仮想プロビジョニングとは
ストレージのプロビジョニングとは、アプリケーションが求める容量、可用性、パフォ
ーマンスに関するニーズを満たすようストレージ リソースを割り当てるプロセスのこ
とです。
まず、従来のストレージ プロビジョニングがどのように実行されているかを見てみまし
ょう。従来のブロック ストレージ プロビジョニングでは、特定の RAID 保護レベル、特
定のドライブ数で RAID グループを作成します。RAID グループは、単一のドライブ タイ
プ、最大 16 ドライブに制限されます。RAID グループに LUN がバインドされている場
合、ホストで認識される LUN の容量は、割り当てられている物理ストレージ容量と同
じです。物理ストレージ容量全体が最初から提供されることになるため、使用率は低
くなり、使用率の低いスペースをなくすことが依然として課題となります。図 1 に、物
理的に割り当てられたスペースがアプリケーションにレポートされたスペースと等しい、
従来のストレージ プロビジョニングを示します。
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図1
従来のストレージ プロビジョニング
従来のプロビジョニングでは、ストレージ管理者が、アプリケーション管理者によって
予測された量に基づいて、アプリケーションに必要なストレージを慎重に切り出す必
要があります。しかし、こうした予測では一般的に容量を過剰に見積もる傾向にあり
ます。一部の企業では、アプリケーション管理者がストレージ領域を監視し、ストレー
ジ管理者に対して追加ストレージのプロビジョニングを要請しています。ストレージ管
理者は、ストレージ領域の使用率を効率的に管理するために、多様な IT チームと適
切なタイミングで正確なやりとりを行う必要があります。
VNX 仮想プロビジョニングは、ストレージ プール ベースのプロビジョニング テクノロジ
ーを利用して、時間の節約、効率性の向上、コストの削減、使いやすさの改善を目的
として設計されています。ストレージ プールは、シックおよびシン LUN を作成するの
に使用できます。シック LUN は、すべてのユーザー容量が作成時に確保され、割り
当てられるため、予測可能な高いパフォーマンスをアプリケーションにもたらします。
図 2 に、ストレージ プールからのシック プロビジョニングを示します。
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図2
シック プロビジョニング
シン プロビジョニングを使用すると、ユーザー容量 (ホストが認識するストレージ)
を、ストレージ システムの使用可能な容量よりも大きくすることができます。現在利
用可能なストレージ資産にかかわらず、シン LUN をデータ増大に対応するサイズに
設定できます。共有プールから必要に応じて容量を提供する方法で、サーバに物理
ストレージが割り当てられます。図 3 に、特定の容量がアプリケーションにレポートさ
れているが、消費済み容量のみがストレージ プールから割り当てられている、シン
プロビジョニングを示します。
図3
シン プロビジョニング
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仮想プロビジョニング テクノロジーは、シック LUN とシン LUN をアプリケーション要件
に応じて選ぶことのできる柔軟性を備えています。また、ホット スペアリングやプロア
クティブ スペアリングなどの機能、およびアプリケーションのダウンタイムをこうむる
ことなくシン LUN/シック LUN/クラシック LUN の間でデータの移動を行う既存の VNX
機能もサポートします。システムを停止せずにデータを別の LUN や別の種類のディ
スクに移行できるので、アプリケーション要件やビジネス要件の変化に応じた最適な
ソリューションをダウンタイムなしで導入することができます。
ストレージ プール
仮想プロビジョニングは、ストレージ プール テクノロジーを使用します。プールは
RAID に似ていますが、LUN を作成するドライブが物理的に集合したものです。しかし
プールには、RAID グループに勝る利点がいくつかあります。
•
プールにより、FAST VP、圧縮、重複排除などの高度なデータ サービスを利用
できます
•
複数のドライブ タイプは 1 つのプールに統合され、各階層が独自の RAID 構
成を保持する、複数の階層を作成できます
•
これらは数台あるいは数百台のドライブを収容できますが、RAID グループは
16 台に限定されています
•
サポートされるドライブ数がプールは多いため、プール ベースのプロビジョニ
ングによって、ワークロードが多くのリソースに分散し、プランニングと管理の
手間を最小限に抑えることができます
•
複数の RAID グループになる多数のドライブを選択した場合、システムは自
動的にプライベート RAID グループを作成します。各 RAID タイプの推奨ドライ
ブ数のオプションについては、表 1 を参照してください。
表1
RAID 構成オプション
RAID タイプ
推奨ドライブ数のオプション
RAID 1/0
4+4
RAID 5
4+1、8+1
RAID 6
6+2、14+2
プールの属性
プールは、わずかなユーザー入力で簡単に作成できます。
•
Pool Name: たとえば、「Pool 0」
•
ドライブ: 数とタイプ
•
RAID 保護のレベル
図 4 は、Pool 0 という名前のストレージ プールを作成する例です。フラッシュ VP
最適化ドライブには RAID 5(4+1)保護が、SAS ドライブには RAID 5(4+1)保護が、
NL-SAS ドライブには RAID 6(6+2)が使用されています。
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図4
ストレージ プールの作成ページ
できる限り、プールは同じ容量のドライブを使用して作成することをお勧めします。
異なるサイズのディスク タイプ(フラッシュ、SAS、NL-SAS)でプールを作成しようとす
ると、Unisphere は警告を表示します。しかし、異なるドライブ タイプでサイズが異な
ることは可能です。ただし、領域の使用率を最大限に高めるためには、各プールで
特定のタイプのすべてのドライブを同じサイズで統一してください。同じタイプのドラ
イブでサイズが異なる場合、大きい方のディスクはトランケートされる可能性があり
ます。異なる容量のドライブを使用してプールを作成することがどうしても必要になっ
た場合は、トランケートを避けるためにプールを段階的に作成してください。たとえば、
600 GB の SAS ドライブが 10 台と 300 GB の SAS ドライブが 5 台の構成の場合は、
まず 600 GB のドライブ 10 台を選択してプールを作成してから、300 GB のドライブ
5 台を追加してプールを拡張します。
プールのオーバーサブスクライブ
シン プロビジョニングでは、ホストに存在する容量がプール内の物理容量を超えた
場合、プールをオーバーサブスクライブすることができます。図 5 に、オーバーサブ
スクライブされたプールの例を示します。
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オーバーサブスク
ライブ
Capacity
合計サブスクリ
プション
合計割り当て
割り当て容量
%フルの閾値
図5
合計
Capacity
プール容量の図
•
総容量は、プール内のすべての LUN で利用可能な物理容量の合計です
•
総割り当ては、現在 LUN に割り当てられた物理容量の合計です
•
合計サブスクリプションは、ホストにレポートされた総容量です
•
オーバーサブスクライブ容量は、プール内の容量を超えた容量の合計です
プール容量の監視
プール容量の管理は、プールをオーバーサブスクライブするのにシン プロビジョニン
グを使用する場合、重要です。これは、オーバーサブスクライブされたプールで、
書き込み失敗の原因になるスペース不足が発生しないことを保証します。
プールは%フルの閾値のアラートを使用して監視されます。このアラートがアクティブ
となるためには、プール内にシン LUN が少なくとも 1 つは存在していることが必要で
す。シン LUN 以外でプールをオーバーサブスクライブすることはできません。プール
に存在する LUN がシック LUN だけである場合、オーバーサブスクリプションによるス
ペース不足の心配はないため、アラートは作動しません。プール プロパティ ページ
の[詳細]タブで、プールが作成される場合、ユーザーは%フルの閾値(総割り当て/
総容量)の値を指定できます。
アラートは、Unisphere の [アラート] タブで監視できます。Unisphere のイベント モ
ニター ウィザードを使用して、アラートをメール、ポケットベル サービス、SNMP トラッ
プで受け取るオプションを選択することもできます。
表 2 に、ユーザーが構成可能で統合された閾値アラートとその設定についての情報
を示します。
表2
閾値アラート
閾値タイプ
閾値タイプ
デフォルトの閾値
アラートの重
大度レベル
ユーザーが構成可能
50%~80%
70%
警告
組み込み型
なし
85%
重大
また、図 6 に示された Unisphere のストレージ プールのプロパティ ページにある、
ストレージ プール容量情報 も監視できます。ここには次の物理および仮想容量に関
する情報が示されます。
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•
総容量
•
空き容量
•
フルの割合
•
合計割り当て
•
合計サブスクリプション
•
サブスクライブの割合
•
オーバーサブスクライブ(該当する場合)
図6
ストレージ プールのプロパティ ページ
プールの拡張
プールではスペース不足が発生する可能があるので、モニタリング戦略を立て、必要
に応じて、プールを拡張するために適切なリソースを準備することをお勧めします。
ドライブをプールに追加するのは無停止の操作であり、増加した容量は、プール内の
LUN によって即座に使用できます。
ストレージ プールを拡張すると、容量の上限に比較的近い既存のディスクに、新し
い空のドライブが突然導入されるために、データの不均衡が生じることがあります。
この不均衡は、再バランシングと呼ばれる自動的な 1 回限りのデータ再配置によっ
て解消されています。この再バランシングでは、容量に基づいて新しいドライブにデ
ータの一部が再配置され、新しいスピンドルが利用されます。
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FAST VP(Fully Automated Storage Tiering for Virtual Pools)を有効にすると、この再
バランシングによってパフォーマンス データが考慮され、新しいスピンドル間のロー
ド バランシングが調整されます。FAST VP の詳細については、「EMC VNX FAST VP —
A Detailed Review」ホワイト ペーパーを参照してください。
システム タイプごとに許容される最大ドライブ数(ヴォールト ドライブとホット スペア
を除く)がプールの最大サイズとなります。たとえば、VNX7600 は、1 つのプール内
またはすべてのプール間で 996 ドライブを収容できます。ヴォールト ドライブ(ストレ
ージ システム内の最初の 4 つのドライブ)については、プールに含めることができな
いため、Unisphere のダイアログ ボックスおよびウィザードで選択することはできま
せん。大規模なプールを作成する場合は、複数の操作が必要になります。システム
タイプに応じた最大許容ドライブ増設単位でプールを作成、拡張して、プールに必要
なドライブ数を満たすことができます。プールを完全に初期化したあとで、LUN を作
成することができます。たとえば、240 ドライブのプールを VNX5600 に作成するには、
120 ドライブのプールを作成したあと、さらに別の 120 ドライブを使用してプールを
拡張する必要があります。そのあとストレージを追加する必要が生じた場合は、あと
からプールを拡張することもできます。システム タイプごとの最大許容ドライブ増設
単位については、表 3 を参照してください。
表3
各 VNX モデルのドライブ増設単位
VNX モデル
最大ドライブ増設単位
VNX5200
80
VNX5400
80
VNX5600
120
VNX5800
120
VNX7600
120
VNX8000
180
大規模なプールを使用する場合、ユーザーはフォルト ドメインを認識する必要があり
ます。フォルト ドメインはデータの可用性を指します。仮想プロビジョニングのプール
は、1 つまたは複数のプライベート RAID グループから成ります。1 つのプールのプラ
イベート RAID グループが、プールのフォルト ドメインとなります。つまり、プールの可
用性は、いずれかの単一のプライベート RAID グループの可用性です。プールの保
護レベルが RAID 6 である場合を除き、あまり多くの RAID グループでプールを作成
することは避けてください。より小さなプールのメリットについての詳細は、EMC オン
ライン サポートの「EMC VNX Unified Best Practices for Performance – Applied Best
Practices」ホワイト ペーパーを参照してください。使用可能なモデルにおけるプール
と LUN の最大数の制限については、表 4プールと LUN の制限に記載されています。
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表4
プールと LUN の制限
VNX モデル
プールの
最大数
プールあたりのデ
ィスクの最大数
アレイあたりの最大
ドライブ数
プールあたりの
LUN の最大数
VNX5200
15
121
125
1,000
VNX5400
15
246
250
1,000
VNX5600
20
496
500
1,000
VNX5800
40
746
750
2,000
VNX7600
40
996
1,000
3000
VNX8000
60
1496
1,500
4000
プール LUN
VNX のプール LUN は、多くの点でクラシック LUN に似ています。Unisphere の操
作と CLI コマンドは、その多くがプール LUN とクラシック LUN とで共通しています。
ユーザー指向のほとんどの機能(基盤となるデータ整合性機能、LUN 移行、ローカ
ル/リモート保護、LUN プロパティ情報など)は同じように動作します。
プール LUN は、スライスの集合からなり、シックやシンになるオプションがあります。
スライスは、追加のストレージが必要な場合に、プライベート RAID グループからプー
ル LUN に割り当てられる容量ユニットです。VNX Operating Environment (OE) for
Block リリース 33 以降、スライス サイズは 1 GB から 256 MB に削減されました。
シン LUN
シン LUN がクラシック LUN やシック LUN と大きく異なるのは、物理的な割り当て量を
超えるストレージをアプリケーションに提示できる点です。物理的に使用可能な量を
超えるストレージを認識させることで、十分活用されない余剰容量をストレージ シス
テムから排除します。
シン LUN にはデータや LUN メタデータが 8 KB チャンク単位で書き込まれます。シン
LUN は必要に応じて基礎となるプールからストレージを消費します。シン LUN に対し
て新たな書き込みが発生すると、物理的スペースが 256 MB のスライス単位で増や
されます。
シック LUN
VNX では、シック LUN を利用することもできます。シン LUN とは異なり、シック LUN
の容量は作成時にすべて予約され、割り当てられるので、容量が不足することはあ
りません。また、ユーザーはスライスの最初の書き込み先となる階層をより適切に制
御することもできます。たとえば、プールを最初に作成する時点で最上位の階層にま
だ十分なスペースが存在する場合、ユーザーは、[使用可能な最上位の階層]また
は[最上位階層で開始したあとに自動階層]で LUN を作成すれば、その場で LUN が
割り当てられるため、データの書き込み先を確実に最上位の階層にすることができ
ます。
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シン LUN 対 シック LUN
シン LUN は間接アドレス指定のため、通常、シック LUN よりもパフォーマンスが下回
ります。したがって、シック LUN のマッピング オーバーヘッドはシン LUN よりも大幅
に下回ります。
シック LUN は、スライス割り当てを作成時に行うので、シン LUN よりも予測可能なパ
フォーマンスが実現します。ただし、シック LUN には、シン LUN ほどのオーバーサブ
スクライブに対する柔軟性がないので、パフォーマンスがスペースの節約よりも重要
なアプリケーションに使用されるべきです。
シック LUN とシン LUN は同じプールを共有でき、どちらも、プール ベースのプロビジ
ョニングの優れた利便性を活かすことができます。
プール LUN の作成
VNX Operating Environment (OE) for Block リリース 33 以降、シンは Unisphere で新
しい LUN を作成する場合のデフォルト オプションです。
図 7 に示すとおり、プール LUN は次の情報を提供することによって、作成できます。
•
ストレージ プール:LUN 作成元になるプール
•
シンまたはシンではない
•
ユーザー容量:ホストが認識できるユーザー容量
図7
LUN の作成ページ
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最小の LUN サイズは 1 MB バイトで、最大の LUN サイズは 256 TB バイトです。ただ
し、いずれの LUN に対しても最小で 1.75 GB の容量が消費されます。これは、受信
書き込み用に 1.5 GB のオーバーヘッドと 0.25 GB の初期容量が割り当てられるか
らです。図 8 を見ると、初期状態で 1.75 GB の容量が新しい 500 GB の LUN に消費
されていることが分かります。
図8
シン LUN プロパティ ページ
プール LUN の拡張と縮小
また、仮想プロビジョニングでは数回の単純なクリック操作でプール LUN を拡張する
機能があり、ストレージ管理タスクも単純化されています。物理ストレージ領域を増
設する必要がある場合は、ドライブを無停止で追加し、基礎となるプールを拡張する
こともできます。シン プロビジョニングを使用することによって、追加ストレージのプロ
ビジョニングに必要な時間と労力が軽減され、使用されない可能性のあるストレージ
をプロビジョニングせずに済みます。
注: VNX for File に割り当てられた LUN を拡張することはできません。VNX for File
に追加の容量が必要な場合、AVM が管理する新しい LUN の作成と割り当てが必要
です。
シック LUN の場合、LUN の拡張に必要な容量のストレージがプールに存在する必要
があります。一方、シン LUN の場合、追加のストレージを用意する必要はありません。
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LUN 移行または MirrorView などのデータ保護操作の対象であるプール LUN は拡張
することができないことに注意してください。
VNX には、プール LUN を縮小する機能もあります。この機能が利用できるのは、
Microsoft Windows Server 2008 または Server 2012 に割り当てられた LUN に限られ
ます。この機能はサーバによって制御される操作であり、現時点でこの機能を備えて
いる OS は他に存在しないためです。縮小処理には、次の 2 つのステップが伴います。
1. Windows の[ディスクの管理]からファイル システムを縮小します。
2. コマンド ウィンドウと DISKRAID ユーティリティを使用してプール LUN を縮小
します。このユーティリティは、EMC Solutions Enabler パッケージに含まれて
いる VDS Provider を通じて利用できます。
縮小処理が完了するとすぐに、新しい LUN サイズが表示されます。縮小されたスペ
ースを回収してプールに戻すためのバックグラウンド タスクがトリガーされます。この
タスクが完了すると、回収されたスペースを同じプールの他の LUN が利用できるよう
になります。
クラシック LUN、シック LUN、シン LUN を使用するタイミング
重要なのは、アプリケーションの要件を把握して、ニーズに合ったアプローチを選択
することです。条件が変化した場合は、VNX LUN 移行を使用して、シン LUN、シック
LUN、クラシック LUN 間で移行することができます。
プール ベースのシン LUN を使用する目的。
•
パフォーマンス要件がそれほど高くないアプリケーション
•
FAST VP、VNX スナップショット、圧縮、重複排除などの高度なデータ サービ
スの利用
•
設定と管理の容易性
•
最適なストレージ効率性
•
電力や設備投資に関するコストの削減
•
領域の使用量の予測が困難なアプリケーション
プール ベースのシック LUN を使用する目的。
•
良好なパフォーマンスが要求されるアプリケーション
•
FAST VP、VNX スナップショットなどの高度なデータ サービスの利用
•
VNX for File に割り当てられたストレージ
•
設定と管理の容易性
クラシック LUN を使用する目的。
•
極めて高いパフォーマンスを必要とするアプリケーション(ミリ秒単位のパフォ
ーマンスが重要な意味を持つなど)
•
最も予測可能なパフォーマンスが必要な場合
•
物理ドライブおよび論理データ オブジェクトへの正確なデータ配置が必要な場合
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•
データの物理的な移行
シン LUN の詳細については、ホーム ディレクトリ データベース ファイルについて詳しくは、付
録 A: シン LUN を参照してください。
Virtual Provisioning for File の使用
VNX は、Virtual Provisioning for File もサポートしています。
シックおよびシンが有効なファイル システム
まず、シック ファイル システムがどのように稼働するかを見てみましょう。シック ファ
イル システムは作成時にすべて割り当てられ、ファイル システムのサイズは、ホスト
にレポートされるサイズと同じです。使用されない割り当て済みデータが大量に生じ
ています。
シック ファイル システムはより小さい初期サイズで作成して、必要に応じて拡張する
ことが可能です。また、ファイル システムがほぼ満杯の場合、自動的に拡張する機能
を利用するオプションもあります。これを使用するには、High Water Mark(デフォルト
の 90%)とファイル システムの増加による最大サイズを提示する必要があります。
シック ファイル システムと同様に、シンが有効なファイル システム(シン LUN 上のシ
ック ファイル システムとは対照的)も、初期サイズをフルに割り当てたうえで構成しま
す。ただし、シンが有効なファイル システムの場合、拡張するタイミングと最大サイズ
を決定する属性が定義されます。ファイル システムの最大サイズとは、エンド ユー
ザーから見たファイル システム内の使用可能な容量です。
シンとシック ファイル システムには、異なる使用上の特徴があることに注意してくだ
さい。一部のアプリケーションや I/O ワークロード、ストレージ導入のシナリオでは、
シンが有効なファイル システムの使用でパフォーマンスが向上することがあります。
しかし、時間の経過に伴って、シンが有効なファイル システムの拡張、データの使用、
削除、変更を繰り返すうちに、一度は向上したパフォーマンスにも変化が生じてくる
ことに注意してください。
シンが有効なファイル システムを使用すると、パフォーマンスはほとんどがランダム
で混在した読み取り I/O ワークロードによって向上します。シン ファイル システムは、
ディスク上で占有される初期スペースが、フル プロビジョニングされたファイル シス
テムと比べて小さいため、ランダム リードに必要なディスク シークが比較的小さくて
済みます。ディスク シークは I/O レーテンシーに影響するため、シークを最小限にす
ることでパフォーマンスを向上させることができます。
シーケンシャルな読み取り I/O では、ディスク シークの発生頻度がもともと低いので、
パフォーマンスの向上を体感することは通常できません。書き込み I/O についても
大きなパフォーマンス向上は見込めません。ディスク シークは通常不要であるか、
あってもごく限られており(ランダム オーバーライトを除く)、また、大部分はどちらに
してもキャッシュによって処理されるためです。繰り返しになりますが、パフォーマン
スの向上は、時間の経過とともに低下していくことに注意してください。ファイル シス
テムが使い込まれ、拡張され、そしてフラグメント化が進むにつれて、ディスク シーク
のサイズとそれに伴うレーテンシーが増えていきます。
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シンが有効なファイル システムの作成
ブロック重複排除はファイル LUN ではサポートされていないため、ブロック重複排除
を無効にした、シックで圧縮されていない LUN を使用するファイル システムの作成を
強くお勧めします。VNX OE for Block リリース 33 では、新しい LUN のデフォルト LUN
タイプはシンなので、LUN 作成時、シン チェックボックスのチェックを外します。デフォ
ルトではブロック重複排除と圧縮は無効になっています。シン、重複排除、圧縮の最
適化は、シンとファイル重複排除(圧縮を含む)属性を、ファイル システム レベルで
使用することによって達成できます。
どのファイル システムを作成する前も、最初にストレージを VNX for File に割り当て
る必要があります。これを行うには、次の手順を実行します。
1.
プールから LUN をプロビジョニングします(シック LUN を推奨)。
2.
保護された~filestorage ストレージ グループに LUN を割り当てます。
3.
ストレージ システムの再スキャンを開始します(Unisphere の[システム]タブ)。
次の手順を開始します。
a. VNX for File コンポーネントにファイル ストレージ領域用として LUN を公開する
ディスクマークを実行します。
b. 対応するストレージ プールと同じ名前のファイル用ストレージ プールを作成し
ます。
c. ストレージ グループに追加された各 LUN について、ディスク ボリュームを 1:1
マッピングで作成します。
完了すると、図 9 に示したプロパティ ページにファイル用ストレージ プールの情報が
表示されます。
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図9
ファイル用ストレージ プールのプロパティ ページ
ファイル用ストレージ プールが使用可能になると、それを使用して、ファイル システ
ムの作成を開始できます。シンが有効なファイル システムは、基盤となるストレージ
にプール ベース LUN とクラシック LUN の両方を使用して、作成できます。シンが有
効なファイル システムの作成は、Unisphere でシック ファイル システムを作成するの
に似ています。図 10 に、シンが有効なファイル システムを作成するのに使用できる
ファイル システムの作成ページを表示します。
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図 10
ファイル システムの作成ページ
まず、他の新しいファイル システムと同じように、ストレージ容量の値を入力します。
[シン有効化]チェックボックスをチェックすると、「自動拡張の有効]チェックボックス
も自動的にチェックされます。これにより、ファイル システムが拡張するタイミングとフ
ァイル システムの増加による最大サイズを制御できます。自動拡張の High
Watermark と最大容量の入力は必須です。ここでは、クライアントに表示されるファ
イル システム容量を指定します。
ファイル システムを作成すると、図 11 に示したように、ホストには 2 TB と表示される
一方、VNX によって実際に割り当てられるストレージは 1 GB となります。ファイル シ
ステムは、最大容量の 2 TB に達するまでに、90%フルの閾値に達すると自動拡張さ
れます。
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図 11
10 TB のシンが有効なファイル システムのプロパティ
シンが有効なファイル システムの監視
シン LUN と同様に、シンが有効なファイル システムの使用率をトラッキングして、
容量不足を避けることが重要です。ファイル システムの自動拡張によってシンを有効
化しても、そのファイル システムに使用するプールの容量は、自動的には確保されま
せん。管理者は、自動拡張処理が成功するように、適切なストレージ領域の存在を
確認する必要があります。ファイル システムの拡張に必要なストレージ容量よりも、
使用できるストレージが小さい場合、自動拡張は失敗します。この場合、ファイル シ
ステムのスペースが不足したときに、エラー メッセージがユーザーに表示されます。
このメッセージが表示されたとき、ファイル システムには空き領域が存在するかのよ
うに見える場合もあるので注意してください。
シンが有効なファイル システムとその作成先となるファイル用ストレージ プールの使
用率は、さまざまな方法でプロアクティブに監視できます。シンが有効なファイル シ
ステムまたはファイル用ストレージ プールがほぼ満杯の場合、Unisphere を使用し
てプロアクティブ アラートを構成できます。使用ストレージについては、次の 2 種類
の通知を構成できます。
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•
現在のサイズ:現在割り当てられているファイル システムまたはファイル用ス
トレージ プールの容量のうち、どの程度の容量が使用されているか
•
最大サイズ:構成された最大のファイル システムまたはファイル用ストレージ
プールの容量のうち、どの程度の容量が使用されているか
アラート通知は、イベントをイベント ログにログしたり、メールを送信したり、SNMP
(Simple Network Management Protocol)トラップを生成したりするのに、構成できま
す。イベント通知の設定に関する詳細については、「Configuring Events and
Notifications on VNX for File」マニュアルを参照してください。
シン ファイル システムが満杯になるタイミングの予測情報も参照できます。図 12 に、
シンが有効なファイル システムのプロパティ ページに提供される情報を示します。
図 12
シンが有効なファイル システムのプロパティ
ストレージ使用の適切なトラッキングにより、増設するストレージを必要なときにプロ
ビジョニングし、容量不足から生じるユーザーやアプリケーションへの影響を防ぐこと
ができます。
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結論
仮想プロビジョニングを適切に実装することで、操作性とストレージ容量の効率的な
活用が実現し、企業のプロセスとテクノロジーを強力に補完することができます。
VNX 仮想プロビジョニングは、既存の管理/ビジネス継続性テクノロジーと適切に統
合し、VNX を使用するお客様に対して重要な機能向上を提供します。
VNX 仮想プロビジョニング
•
•
•
•
時間の節約

プール LUN およびファイル システムの作成と拡張が容易

監視/管理が容易
プロビジョニングの不確実性の低減

決定を容易に変更可能

ホスト サーバーへの影響なし

プール間での負荷の均衡
初期投資額と電力消費量の削減

優れた領域効率性

複数のアプリケーションでリソースを共有

必要時に物理ストレージを追加可能
既存の VNX 機能のサポート

移行はすべての種類の LUN でサポートされる

VNX スナップショット、SnapView スナップショットおよびクローン、SnapSure
チェックポイント、Replicator、MirrorView/S、MirrorView/A、SAN Copy

Unisphere Analyzer
参考資料
•
EMC オンライン サポート

EMC Virtual Provisioning リリース ノート

「EMC VNX Unified Best Practices for Performance — Applied Best
Practices Guide」

EMC VNX FAST VP — A Detailed Review

EMC VNX Deduplication and Compression for the new VNX Series

VNX AVM によるボリュームとファイル システムの管理
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付録 A: シン LUN
シン LUN への移行によるスペース再利用
未使用ストレージをロックしているアプリケーションが、最初に割り当てたほどのスト
レージを使っていないことは少なくありません。スペースの再利用は、割り当て済み
のストレージのうち、使用されていないストレージを回収する機能です。この機能は、
LUN 移行、SAN Copy™、または PPME(PowerPath® Migration Enabler)で、シック
LUN からシン LUN に移行するのに作動します。シン LUN は、データが書き込まれた
ストレージのみを消費するため、割り当て済みのストレージのうち未使用分は、同じ
プール内の他の LUN が使用できるようにすべてプールに戻されます。この処理は完
全に透過的に行われるため、アプリケーションを移動する際にダウンタイムは発生し
ません。
ソース ボリュームからターゲットとなる VNX 上のシン LUN への SAN Copy のプル オ
ペレーションを、他の VNX、CLARiX®、Symmetrix®、対応サード パーティ システムか
ら実行すると、スペースの再利用が自動的に実行されます。
図 13
スペースの再利用
また、すでに使用されているクラシック LUN またはシック LUN から同じアレイ内のシ
ン LUN に移動する LUN 移行を実行した場合にもスペースの再利用が実行されます。
このソフトウェアは、8 KB チャンクのグラニュールでゼロを検出します。たとえば、移
行対象となるのは、データが格納されている 8 KB チャンクに限られます。ゼロで満
たされている 8 KB チャンクはシン LUN に移行されず、スペースは解放されます。
もう 1 つのオプションは、EMC PPME(PowerPath® Migration Enabler (PPME)を使用
することです。これは、ストレージ システム間や単一ストレージ システム内の論理ユ
ニット間で無停止または最小限の停止でデータを移行することのできるホスト ベース
の移行ツールです。PPME のホスト コピー テクノロジーは、ホスト オペレーティング
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システムと連携してソース LUN からシン ターゲット LUN にデータを移行します。シン
LUN のホスト コピー移行は、VNX に接続された Windows ホスト、Linux ホスト、AIX
ホスト、Solaris ホストでサポートされます。
NTFS によるスペースの再利用を使用する場合、NTFS によってファイルが削除され
ても、データは実際にはディスクから削除されていないことに注意してください。代わ
りに、データはスペースが必要な場合に上書きされます。ビット レベルでデータを処
理するこの移行ソフトウェアにはファイルの概念がありません。そのため、削除され
たファイルのデータは、削除されていないアクティブなファイルと同じように処理され
ます。その結果、スペースの再利用によって得られる効果が著しく低下する可能性
があります。NTFS 用の Microsoft SDelete ユーティリティでは、スペースの再利用を
実行する前に、ファイルを永久に削除する簡単な方法を提供します。-c オプションを
使用してユーティリティを実行した場合、削除されたファイルがゼロでリプレースされ、
スペースの再利用処理の効果を高めることができます。
アプリケーションでのシン LUN の使用
シン LUN は、そのオン デマンド ストレージ機能のために、一部のアプリケーション環
境には適しません。一般的なベスト・プラクティスは、シン フレンドリーなアプリケーシ
ョン、つまり、必要なストレージ領域の一部だけを初期化中に事前に割り当てるアプ
リケーションを使用することです。また、シン フレンドリーなアプリケーションでは、追
加のストレージを消費する前に、削除済みのスペースが再使用されます。以下は、
VNX で最も多く使用されるアプリケーションと組み合わせてシン LUN を使用するため
のガイドラインです。
ホスト ベースのファイル システム
シン LUN にファイル システムを作成するときは、シン LUN に書き込まれるメタデータ
の量を考慮する必要があります。大量のメタデータを LUN に書き込む非効率なファ
イル システムは、効率的なファイル システムよりも短期間で、シン デバイスがフル
に割り当てられた状態になります。
また、削除されたスペースを効率的に再使用する能力も、シン フレンドリーな機能の
特徴です。ホストのファイル システムに新しいファイルを作成する際に、削除済みの
ファイルによって解放された領域を使用できるかどうかは、ファイル システムによっ
て異なります。事前に回収された領域に新しいファイルを書き込む場合、シン LUN
は、プールからのスペースを新たに消費することはしません。一方、以前に書き込み
が行われていない領域にファイルを書き込む場合には、より多くのプールの領域が
シン LUN で消費されます。
NTFS には、シン フレンドリーな操作がいくつかあります。たとえば、NTFS フォーマット
は、物理的スペースの事前割り当てが行われません。その代わり、シン LUN にファ
イル システムのメタデータが作成されます(このメタデータには数ギガバイトしか使
われません)。NTFS は、LUN に新しいデータが書き込まれると、それに応じて自己の
メタデータを更新します。その一方で、削除されたスペースの再使用という点では、
NTFS は決して効率的ではありません。
他のファイル システム(Linux の ext2 や ext3、Solaris の ZFS や UFS、Symantec の
VxFS など)は、事前に割り当てを行うストレージが一部だけであり、また、削除された
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スペースを効率的に再使用したうえで新しいスペースの割り当てを行うため、シン
LUN との相性は良好です。VNX 仮想プロビジョニングでサポートされるファイル シス
テムの最新のリストについては、EMC オンライン サポートので「EMC サポート マトリ
ックス」を参照してください。
VMware
VMware 環境の VMFS(仮想マシン ファイル システム)には、シン フレンドリーな特性
が数多く存在します。まず、VMware ファイル システムがシン LUN 上に作成されると、
プールから最低限の数のシン エクステントが割り当てられます。また、VMFS データ
ストアは割り当て済みのブロックを再利用するため、シン LUN には好都合です。
RDM ボリュームを使用している場合は、RDM ボリュームがシン フレンドリーかどうか
はゲスト OS のファイル システム(またはゲスト OS に作成されたデバイス)によって
決まります。
VMware 仮想ディスクを作成する際、LUN は次のようにプロビジョニングできます。
•
シック プロビジョニング Lazy Zeroed
•
シック プロビジョニング Eager Zeroed
•
シン プロビジョニング
シック プロビジョニング Lazy Zeroed はデフォルトであり、シン LUN 用の仮想ディスク
タイプに推奨されます。この方法を使用すると、仮想ディスクに必要なストレージが
データストア内で予約されますが、作成時に VMware カーネルがすべてのブロックを
初期化するわけではありません。
VMware カーネルが備えている仮想ドライブ作成メカニズムには、シン フレンドリー
でないものもあります。シック プロビジョニング Eager Zeroed フォーマットはシン LUN
では推奨されません。作成時にすべてのブロックに対して書き込みが行われるから
です。これにより、シン プールで使用される容量と等しくなってしまいます。
シン プロビジョニングを使用する場合、仮想ディスクに必要なスペースは作成時に
割り当てられません。代わりに、領域は必要に応じて割り当てられ、ゼロ化されます。
また、vSphere 5 では、シン LUN のスペース再利用をストレージ システム レベルで
実行できるようになりました。VMFS 5 は、シン LUN 上にストレージ プールが作成さ
れると、SCSI UNMAP コマンドを使用してストレージ プールにスペースを戻します。
VMFS 5 で削除(Storage vMotion、VM の削除、スナップショットの削除、その他の削
除)を行うたびに、SCSI UNMAP が使用されます。以前のバージョンの VMFS では、
容量の返却がファイル システム レベルに限られていました。vSphere 5 では、スペ
ース再利用を自動的に行うことによって、この処理が大幅に単純化されています。
さらに、VMware DRS、Converter、VM クローン、Storage vMotion、コールド移行、テ
ンプレート、vMotion などの機能もシン フレンドリーです。
Hyper-V
Hyper-V 環境では、VNX シン LUN と組み合わせて使用する場合、VHD(Virtual Hard
Disk)を動的に拡張するオプションを選択するようにお勧めします。そのようにするこ
とでディスク リソースを節約することができます。パススルー ボリュームを使用して
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いる場合は、ボリュームがシン フレンドリーかどうかはファイル システムまたはゲス
ト OS によって決まります。Hyper-V サーバーの使用の詳細については、EMC オンラ
イン サポートの「Using EMC CLARiiON with Microsoft Hyper-V Server」ホワイト ペー
パーを参照してください。
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