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人と自然が共生するかがわの環境づくり

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人と自然が共生するかがわの環境づくり
人と自然が共生するかがわの環境づくり
―ボランティアによる自然環境保全の将来像―
活動写真
平成17年2月
香川県環境森林部
はじめに
近年、国民の意識が”物の豊かさ”から”心の豊かさ”に変化し
つつあり、自然とのふれあいや自然界に生きる動植物を大切にしよ
うと、自然環境を保全し、良好な自然や生きがいの場を形成するな
ど、自然が持つ多面的な機能や価値に対する期待が高まりつつあり
ます。このような中、国では多様な生物がもたらすさまざまな恵み
を将来にわたり受け取ることができるよう、生物多様性の保全と持
続可能な利用に関する基本方針や国のとるべき施策の方向を定めた
「生物多様性国家戦略」を平成7年10月に決定しました(平成1
4 年 3 月 に こ れ を 見 直 し 、「 新・生 物 多 様 性 国 家 戦 略 」を 決 定 。)。
「新・生物多様性国家戦略」では、自然と共生する社会の実現のた
めの中長期的なトータルプランを示しており、生物多様性の観点か
ら自然環境保全の行動計画をまとめています。
本県でも平成7年3月に「香川県環境基本条例」を策定し、環境
保全に関する基本的施策において、大気や水といった環境の自然的
構成要素の良好な保持や生態系の多様性の確保を図るなど、県民が
自然と共生する豊かな環境の創造を掲げています。また平成12年
6 月 に 県 政 運 営 の 基 本 指 針 と し て 策 定 し た「 香 川 県 新 世 紀 基 本 構 想 」
に お い て は 、”み ど り・う る お い・に ぎ わ い の 創 造 ”を 基 本 目 標 に 、
自然との共生・持続的発展を重点推進プランのひとつに掲げていま
す。今後、自然環境の保全にあたっては、人と自然とのふれあいを
保つことのできる「県民が自然と共生できる豊かな環境づくり」と
いう視点のもとに実施していくことが、21世紀の環境保全活動に
必要な思想(考え方)であると考えております。
本冊子は、実際に里山を舞台として県民(ボランティア)が主体
的に取り組んだ環境保全活動(人と自然が共生する環境創造モデル
事業:平成15∼16年度)の成果や課題などをもとに、環境保全
活動のポイントや課題を整理し、県民の参画による香川の自然環境
保全活動の将来像(ビジョン)をまとめたものです。
今後、県民や事業者の方々が、県下の各地域で自然環境保全活動
を進める際に、本冊子が有効に活用されることを期待しています。
終わりに、本冊子の策定にあたり、貴重なご意見やご提言をいただ
い た ア ド バ イ ザ ー の 皆 様 を は じ め 、モ デ ル 事 業 に ご 協 力 を い た だ き ま
した地権者である篠原氏をはじめとする地元の皆様、三木町産業振興
課、その他関係の皆様に心から感謝申し上げます。
平 成 17 年 2 月
環
境
森
山
林
本
部
長
伸
二
目
さとち
次
さとやま
1 . 里 地 ・ 里 山 は 人 に も 生 き 物 に も 大 切 な 空 間 ...................................... 1
1 ) 里 地 ・ 里 山 の 豊 か な 自 然 環 境 が も た ら す さ ま ざ ま な 恵 み ..................... 2
( 1 ) 生 き 物 の 生 息 空 間 の 創 出 .................................................................... 2
( 2 ) 自 然 と の ふ れ あ い の 場 、 環 境 学 習 の 場 ................................................. 3
( 3 ) 美 し い 景 観 ....................................................................................... 3
( 4 ) 食 料 供 給 地 ....................................................................................... 3
2 ) 里 地 ・ 里 山 の 危 機 ............................................................................ 5
( 1 ) 里 地 ・ 里 山 の 自 然 ............................................................................. 5
( 2 ) 社 会 の 変 化 に 伴 う 身 近 な 生 き 物 の 減 少 ................................................. 6
3 ) 県 民 に よ る 環 境 保 全 活 動 の 必 要 性 ..................................................... 8
4 ) 香 川 県 内 で 実 施 さ れ て い る 環 境 保 全 活 動 ............................................ 9
2.
人 と 自 然 が 共 生 す る 環 境 創 造 モ デ ル 事 業 の 取 組 み ........................... 10
1 ) 活 動 場 所 の 選 定 ............................................................................. 12
2 ) 生 息 ・ 生 育 状 況 の 把 握 .................................................................... 13
3 ) 活 動 計 画 の 検 討 ............................................................................. 14
( 1 ) 現 地 視 察 に よ る 現 状 の 認 識 ...............................................................14
( 2 ) 環 境 改 善 の た め の 保 全 手 法 、 全 体 構 想 の 抽 出 ......................................14
( 3 ) 取 組 可 能 な 手 法 の 選 択 ......................................................................14
( 4 ) 活 動 体 制 づ く り ...............................................................................14
( 5 ) 活 動 目 標 と キ ャ ッ チ フ レ ー ズ の 検 討 ...................................................15
( 6 ) 全 体 ス ケ ジ ュ ー ル の 作 成 ...................................................................15
4 ) 環 境 整 備 活 動 ( 自 然 環 境 の 創 出 に よ る 生 態 系 の 回 廊 づ く り ) ............. 16
5 ) そ の 他 環 境 保 全 活 動 の 効 果 的 な 取 組 み ............................................. 18
6 ) さ ぬ き 里 山 倶 楽 部 の 環 境 保 全 活 動 に よ る 成 果 ................................... 19
( 1 ) 環 境 保 全 活 動 の テ ー マ と 期 待 す る 効 果 ................................................19
( 2 ) 環 境 保 全 活 動 に よ る 生 態 系 の 回 復 の 効 果 ............................................21
( 3 ) 環 境 保 全 活 動 を し な が ら 学 ぶ 環 境 学 習 の 実 施 ......................................22
( 4 ) 地 域 の 資 源 を 活 か し た 恵 み を 得 る ( 耕 作 物 の 収 穫 や 地 元 と の 交 流 ) .......22
3 . ま と め ......................................................................................... 24
1 ) 環 境 保 全 活 動 の 重 要 ポ イ ン ト ( 効 果 的 な 取 組 み と 留 意 点 の 整 理 ) ...... 24
( 1 ) 具 体 的 な 保 全 目 標 の 決 定 ...................................................................24
( 2 ) 保 全 活 動 に 対 す る 専 門 的 意 見 の 聴 取 ( ア ド バ イ ザ ー か ら の 助 言 ) ..........24
( 3 ) 地 域 住 民 ( 土 地 管 理 者 を 含 む )、 研 究 機 関 な ど と の 密 接 な 関 係 づ く り . . . . . 2 4
( 4 ) 維 持 管 理 作 業 、 生 物 調 査 に 必 要 な 道 具 の 準 備 ......................................24
( 5 ) 現 地 活 動 に お け る 安 全 管 理 ( 危 機 意 識 の 徹 底 ) ...................................25
( 6 ) 弾 力 性 の あ る 活 動 計 画 ......................................................................25
( 7 ) デ ー タ の 蓄 積 ..................................................................................25
( 8 ) ボ ラ ン テ ィ ア 同 士 の 情 報 共 有 と 自 発 性 の 尊 重 ......................................25
( 9 ) 保 全 活 動 に 参 加 す る こ と で 得 ら れ る 地 域 の 恵 み を 体 験 で き る 機 会 の 創 出 25
( 1 0 ) 行 政 の 多 面 的 支 援 .........................................................................25
2 ) 人 と 自 然 が 共 生 す る 環 境 づ く り の 将 来 像 ( ビ ジ ョ ン ) ...................... 26
( 1 ) 人 と 自 然 が 共 生 で き る 環 境 を つ く る た め に は ......................................26
( 2 ) 自 然 と 共 生 で き る 環 境 づ く り の 将 来 像 ( ビ ジ ョ ン ) .............................26
( 3 ) 将 来 像 の 実 現 の た め に は ...................................................................27
4 . 参 考 資 料 ..................................................................................... 29
1 ) ワ ー ク シ ョ ッ プ ニ ュ ー ス ................................................................ 29
2 ) 報 道 記 事 ....................................................................................... 32
3 ) 参 考 ・ 引 用 文 献 ............................................................................. 33
4 ) 参 加 者 及 び 協 力 者 一 覧 .................................................................... 33
【表 紙 などイラスト】
【表 紙 写 真 】
【裏 表 紙 写 真 】
千 田 有 美 (野 生 生 物 ボランティア)作
復 活 した田 んぼで生 き物 観 察 する「さぬき里 山 倶 楽 部 (野 生 生 物 ボラ
ンティア)」の活 動 風 景
市 村 康 (野 生 生 物 ボランティア)撮 影
さ と ち
さとやま
1.里地 ・里山 は人にも生き物にも大切な空間
∼なぜ環境保全が必要なの?∼
里地・里山とは
おくやま
里地・里山とは、奥山※と都市の中間に位置し、集落とそれを取り巻
に じ り ん
く二次林※、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地
域 の こ と で 、香 川 県 内 の 自 然 環 境 の 多 く が こ の 里 地・里 山 に 含 ま れ ま す 。
この里地・里山では、森林からため池、ため池から水田へと、それぞ
れの環境が水を中心につながりをもち、人だけでなく生き物も安心して
棲むことができる豊かな空間を作り出しています。また、農林業などさ
まざまな人間の働きかけを通じて、人と自然が調和した環境も形成・維
た な だ
ちんじゅのもり
げんふうけい
持されており、棚田※や鎮守の森※は日本人がもつ農村の原風景※として
人々にやすらぎを与えてくれます。
集落
里地・里山のイメージ図
【用 語 】
奥山
二次林
棚田
:山 林 の恒 常 的 な管 理 や人 の日 常 生 活 に深 く関 わりをもたない地 域 の概 念 。
:原 生 林 が伐 採 や災 害 によって破 壊 された後 、自 然 にまたは人 為 的 に再 生 した森 林 。
:山 のふもとや丘 陵 地 など傾 斜 する土 地 に階 段 状 に作 られた水 田 。
鎮 守 の森 :鎮 守 社 (ちんじゅしゃ:地 域 を平 穏 に守 る神 を奉 り立 てた神 社 )を含 めた周 辺 の森 。そ
の土 地 に住 むすべての生 き物 を守 る神 が住 む森 。
原 風 景 :幼 少 時 の体 験 を想 い起 こさせるイメージ風 景 。
1
1)里地・里山の豊かな自然環境がもたらすさまざまな恵み
(1)生き物の生息空間の創出
農地やため池など多様な自然環境の構造をもつ里地・里山には、カエ
はぐく
ル や メ ダ カ 、タ ン ポ ポ な ど 、さ ま ざ ま な 生 き 物 を 育 ん で お り 、そ の な か
しゅ
きしょうしゅ
には絶滅のおそれのある種(希少種)も多く含まれています(日本全国
の 希 少 種 の 集 中 分 布 地 域 の 5 割 以 上 が こ の 里 地・里 山 の 中 に あ り ま す )。
ほ う こ
す
特に「生き物の宝庫」とよばれるため池は、多くの生き物が棲む重要
な生息空間となっており、全国有数のため池保有県である香川では、今
後も守っていきたい大切な環境です。
さまざまな生き物を育む里地・里山
香川県「身近な生き物マップ」より
(参考)
里地・里山希少種集中分布図
データ出典:環境省資料
【環 境 省 資 料 】
http://www.env.go.jp/nature/satoyama/chukan.html
http://www.env.go.jp/nature/satoyama/03.pdf
2
(2)自然とのふれあいの場、環境学習※の場
ゆ う ほ ど う
里地・里山は、遊歩道などを利用した自然散策や自然の素材を使った
竹細工づくりなど身近な自然とのふれあいの場、植物・昆虫観察など環
境学習の場、自然環境を大切にする心を育てる場として、とても重要な
はたらきを持っています。
(3)美しい景観
ご し き だ い
いい の や ま
さ ぬ き
讃岐平野には、屋島や五色台など台地状の山(メサ)や飯野山(讃岐
ふ
じ
えんすい
富士)などの円錐状の山(ビュート)が点在し、また多くのため池とも
合わさって、美しい里地・里山の景観がつくりだされています。
(4)食料供給地
きんとき
香川県では日本一の生産を誇る金時にんじんや讃岐うどん用高品質小
麦 ( さ ぬ き の 夢 2000) が あ り ま す が 、 従 来 よ り た め 池 を 活 用 し た 農 業
も盛んに行われており、棚田や水田など里地・里山の地形を上手に利用
した米や野菜づくりは、わたしたちに新鮮で安全な食料を提供してくれ
る大事な食料供給地として、その役割を果たしています。
自然散策の様子
環境学習の様子
自 然 とのふれあいの場 をもつ里 地 ・里 山
環 境 学 習 の場 となる里 地 ・里 山
讃岐平野の航空
写真
美 しい景 観 をつくりだす里 地 ・里 山
【用 語 】
環境学習
農作物の写真
か耕作の様子
農 作 物 を生 産 する里 地 ・里 山
:人 間 も地 球 に生 きる多 様 な生 物 の一 種 であるという認 識 に立 ち、環 境 について自 然 や
地 理 ・歴 史 などの総 合 的 な学 習 を行 うこと。
3
た
た
め
ん
て
き
き
の
う
ため
めん
んて
てき
きき
きの
のう
う
た
機能
能
ため
め池
池の
の多
多面
面的
的機
コ
ラ
ム
○
コ○
ラ○
ム1
1
○
○
○
香 川 県 は 全 国 で も 有 数 の た め 池 保 有 県 で あ り 、そ の 総 数 は 14,600 余
り 、県 の 面 積 あ た り の 密 度 は 全 国 第 1 位 で す 。た め 池 は 本 来 の 機 能 で あ
た
る農業用水の確保に加えて、洪水で流れる水を一時的に貯めておく防災
機能をもつほか、最近では生き物の生息空間や地域住民のうるおいとや
じょうそうきょういく
すらぎ空間、地域の子どもたちの 情 操 教 育 ※の場など、さまざまな面に
おいて重要な役割を果たしています。
大 雨 のとき、水 を
ため洪 水 を防 ぐ
多 くの生 き物
の住 みかとなる
農 業 用 水 をためる
ため池
ため池
ため池
水田
水 が地 下 にしみこむ
入 り口 となっている
ため池
地 域 の歴 史 を物 語 る
文化遺産
豊稔池
水田
地 下 水
散 歩 や、自 然 観 察 などいろいろ
なレクリエーションの場 となる
ため池
水 不 足 や、火 災 、震 災 のとき
生 活 用 水 や防 火 用 水 となる
ため池
上記イラストは、中国四国農政局香川農地防災事務所の資料
「ため池物語」を一部引用または参考に作成
【用 語 】
情操教育
4
:豊 かな感 受 性 や自 己 表 現 などの能 力 を育 てることを目 的 とする教 育 。
2)里地・里山の危機
(1)里地・里山の自然
じょう
里地・里山は、ほ 場 ※、用排水路、ため池、あぜ道、二次林である雑
木林、鎮守の森・屋敷林、生け垣、放牧地や草刈り場など、多様な環境
が有機的につながりをもつことにより多くの生き物が育まれ、多様な生
態系※が形成されているとともに、山や川と調和した良好な景観を形成
いとな
し て き ま し た 。里 地・里 山 の 自 然 環 境 は 、主 に 農 家 の 人 々 の 営 み に よ っ
げんせいてきしぜん
て 生 ま れ た も の で 、手 つ か ず の「 原 生 的 自 然 ※ 」に 対 し て「 二 次 的 自 然 」
と呼んでいます。
写真
原生的自然
写真
二次的自然
【用 語 】
ほ場
生態系
原生的自然
:農 作 物 を栽 培 する田 畑 。
:ある地 域 に生 息 するすべての生 き物 の群 集 と、それを取 り巻 く環 境 とをひとまと
めにし、生 態 に関 するエネルギーなど機 能 の流 れを表 現 したもの。
:天 然 の自 然 林 など人 間 活 動 の影 響 をほとんど受 けることなく、原 生 状 態 が維 持
されている自 然 環 境 。
5
(2)社会の変化に伴う身近な生き物の減少
たきぎ
社 会 の 変 化 に 伴 い 、従 来 、炭 や 薪 な ど 生 活 燃 料 と し て 里 地・里 山 に 生
えていた木が利用されなくなり、肥料も天然肥料から化学肥料に変わる
しげんじゅんかんがたしゃかい
など、これまで里地・里山で形成・維持されてきた資源循環型社会※が
き は く か
成り立たたず、人間と自然とのつながりが希薄化しています。
か
そ
か
こうさくほうき
きゅうこうでん
また、過疎化※・高齢化の進展により、耕作放棄に伴う休耕田の増加
など農業生産活動や集落の機能保持が困難な状況となっています。
のうぎょうせいさんきばん
このように、里地・里山では生産の場である農業生産基盤※の整備が
進められてきた反面、生活様式の変化や耕作放棄、農薬の使用などに伴
い、かつて人と共に生息していたゲンゴロウ、タガメ、ドジョウ、キキ
い ぞ ん
「香
ョウといった二次的自然に依存する身近な生き物が見られなくなり、
川県レッドデータブック(香川県RDB)」にも掲載されるようになり
ました。
(参考)
年齢別農家人口の推移
里地・里山が抱える問題点
上段データ出典:農業調査、香川県農林水産統計年報
下段データ出典:環境省調査資料
【用 語 】
資源循環型社会
過疎化
農業生産基盤
6
:木 や水 など限 りある資 源 を循 環 ・再 利 用 することで資 源 全 体 の使 用 量 を減 ら
し、環 境 への負 荷 を最 小 限 に抑 制 するような社 会 。
:ある地 域 の人 口 が少 なくなること。
:農 業 を営 むのに必 要 な農 地 、用 排 水 路 や水 源 、農 道 などの総 称 。
コ
ラ
ム
○
コ○
ラ○
ム2
2 香
香川
川県
県レ
レッ
ット
トデ
デー
ータ
タブ
ブッ
ック
ク((香
香川
川県
県R
RD
DB
B))
○
○
○
香 川 県 で は 、県 内 に 生 息 ま た は 生 育 す る 野 生 生 物 の う ち 、絶 滅 の お そ れ
があるとして、絶滅危機の要因やその生物の生息環境などをまとめ、絶滅
の危険度ごとに分類した資料データ「香川県レッドデータブック(香川県
RDB)」を、平成16年3月に作成しました。
ぜ つ め つ き ぐ
香 川 県 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク で は 、絶 滅 の お そ れ が 高 い 順 か ら「 絶 滅 危 惧
Ⅰ類」、「絶滅危惧Ⅱ類」、「準絶滅危惧」に分類され、既に絶滅した生
き物や情報不足の生き物を含め、県下では798種が掲載されています。
こ の 中 に は 、か つ て わ た し た ち が 身 近 に 感 じ て い た 生 き 物 も 多 く 掲 載 さ
れており、里地・里山の環境を保全し、生き物が棲みやすい環境を維持し
ていくことが求められています。
RDB表紙
ゲンゴロウ
里地・里山に
棲む身近な
生き物たち
(絶 滅 危 惧 Ⅰ 類 )
タガメ
ドジョウ
キキョウ
(絶 滅 危 惧 Ⅰ 類 )
(絶 滅 危 惧 Ⅱ類 )
(準 絶 滅 危 惧 )
※香 川 県 レッドデータに関 する詳 しい内 容 は、上 記 の資 料 冊 子 のほか、
「http://www.pref.kagawa.jp/kankyo/shizen/rdb/index.htm
(県 ホームページに掲 載 の「香 川 県 レッドデータブック」)」からでも見 ることがで
きます。
7
3)県民による環境保全活動の必要性
多くの生き物は二次的自然環境(里地・里山、ため池など)に依存し
ており、それぞれの地域において多様な生き物による固有の生態系など
の自然環境が形成されています。
したがって、里地・里山において農業生産活動を継続しつつ、二次的
自然環境の回復を図り、地域の生態系を保全することは、県全体として
良好な環境を形成・維持するうえでも重要です。
今後は、このような人と農の営みと自然との共生により形成・維持さ
れてきた良好な自然環境を県民参加によって適切に維持管理し、そこに
生息する生き物も保全していくことが、これからの環境保全活動に求め
られていると考えます。
生き物に配慮した二次的自然環境の保全の様子
い け ほ し
定 期 的 に草 刈 りを行 い、明 るい環
池干し※ による水 生 植 物 の再 生 を
境 を好 む生 き 物 の環 境 づくりを行 っ
図 り、生 物 相 ※ の豊 かなため池 づく
ている様 子
りを行 っている様 子
ふち
田 んぼの縁 にヨケ(溝 )を作 り、
か っ す い き
渇水期 の水 生 動 物 の逃 げ場 の確
しつでん
保 など種 の供 給 源 となる湿田 環 境
せいぶつそう
休 耕 田 のメダケ林 を伐 採 し、湿 地 を
好 む生 き物 の浅 場 の環 境 づくりを
行 っている様 子
を整 備 している様 子
写真:さぬき里山倶楽部の活動の様子
【用 語 】
池 干 し :灌 漑 期 (かんがいき:田 畑 に水 を使 用 する時 期 )以 外 に、ため池 にたまった水 を抜 き、
底 土 を取 り除 くなど古 くからため池 の機 能 を回 復 させるために伝 わる池 の管 理 手 法 。
生 物 相 :一 定 の場 所 や地 域 に生 息 する生 物 の全 種 類 。
8
4)香川県内で実施されている環境保全活動
一言で環境保全活動と言っても、さまざまな形の環境保全の取組みが
あります。県内の里地・里山を中心とした地域では、環境保全活動がど
のように行われているか整理をすると、以下のようになります。
ふきゅうけいはつ
主 に は 自 然 観 察 会 、雑 木 林・草 地 の 維 持 管 理 、野 外 活 動 な ど 普 及 啓 発 型
ふ ず い
で、付随的に環境保全に取り組んでいる団体が多いのに対し、特定の動
しょくぶつぐんらく
植物や植物群落※を保護し、環境整備・施設整備を行うなど直接的な環
境保全に取り組んでいる団体はまだまだ少ない状況にあります。したが
って、今後は環境保全を中心に活動を進める団体を増やしていく必要が
あります。
また、環境保全活動を行う場所は、公園や学校などの公有地を活動場
所としている団体が多く、私有地(特に里山)で活動している団体はま
だまだ少ない状況です。これは私有地内での環境保全活動の調整が難し
く、最終的に活動地域との合意が取りにくいということが原因ではない
かと考えられます。したがって、今後は環境保全活動がもたらす地域の
利益について、地域と共に考え、お互いが協力しあえるような身近な場
所での活動を進めていく必要があります。
自然環境の保全に向けたさまざまな取組み(一部紹介)
小 学 校 のプールを利 用 して、トンボの幼
地 元 の小 学 生 などと一 緒 に希 少 な海 浜
虫 を繁 殖 させ、休 耕 田 への移 植 を実 施
植 物 を保 護 し、海 岸 清 掃 や観 察 などを
(坂 出 市 王 越 小 学 校 )
実 施 (香 川 の水 辺 を考 える会 )
ボランティアによる里 山 の観 察 会 や体 験
自 然 とのふれあいや森 林 整 備 などさま
学 習 を通 し、自 然 のしくみや人 と自 然 との
ざまな体 験 活 動 ができる場 を設 け、ボラ
かかわりなど自 然 への理 解 を深 める学 習
ンティア活 動 をはじめとする自 然 体 験 の
拠 点 づくりを実 施
学 習 拠 点 づくりを実 施
(国 営 讃 岐 まんのう公 園 :自 然 生 態 園 )
(ドングリランドビジターセンター)
【用 語 】
植物群落
:ある場 所 で一 つのまとまりをもって生 活 している、幾 種 類 かの植 物 の集 まり。
9
2.
人と自然が共生する環境創造モデル事業の取組み
∼事例紹介∼
香川は全国でも有数のため池保有県であり、水辺の空間として多面的
な 価 値 を 有 し 、特 に た め 池 に は 多 く の 生 き 物 が 生 息 す る「 生 き 物 の 宝 庫 」
であることが、近年、改めて認識され、ため池を含めた周辺の環境を保
全していくことが重要な課題となっています。
香川県にはいくつかの環境保全団体(または組織)が活動しています
が、ため池を中心に生き物にも配慮した環境保全活動を行っている団体
はあまり存在していません。それは、ため池が危険な場所であるという
認識から、安全性を重視するあまり、保全活動の場所として注目されな
のうぎょうすいりしせつ
じゅえきしゃ
かったことや、また、ため池が農業水利施設※であるため、受益者が多
く、利害関係者の理解が得られにくかったことなどが原因として考えら
れます。
そこで、県では、平成15年度から平成16年度までの2年間におい
て「人と自然が共生する環境創造モデル事業」を実施し、公募で集まっ
た県民ボランティアにより、ボランティア組織「さぬき里山倶楽部」
を結成し、里山の環境づくりに取り組むことでどのような生き物をこの
地に戻らせることができるかを実践してきました。
ここでは、ため池の環境改善など里山の自然再生への試みに取り組み
ながら、自然の大切さを学び、人にも生き物にも気持ちのよい環境づく
りに向けたさぬき里山倶楽部の活動について紹介します。
こ の 事 業 で は 、 県 が ボ ラ ン テ ィ ア メ ン バ ー を 公 募 し た と こ ろ 、 31 名
の応募がありました。また、生き物や農業土木など専門的な知識をもつ
事業アドバイザー※6名を加え、人と自然が共生できる環境づくりを目
指した保全活動の取組みが始まりました。
また、この事業の目的は、ため池の環境を改善し、生物の保全・回復
を図りながら人と自然が共生できる環境をつくることであり、その主な
内容は里山の環境改善活動、勉強会、生物モニタリング※、ワークショ
ッ プ ※ 、広 報 用 ホ ー ム ペ ー ジ に よ る ワ ー ク シ ョ ッ プ 活 動 の 紹 介 な ど で す 。
【用 語 】
農業水利施設
アドバイザー
モニタリング
ワークショップ
10
:水 路 やため池 など農 業 を行 うのに必 要 となる農 業 者 の共 同 利 用 施 設 。
:ここでは生 き物 や農 業 土 木 など専 門 的 な知 識 をもつ人 のこと。
:注 意 して見 ること。ここでは環 境 改 善 活 動 による生 き物 の回 復 状 況 や自 然
環 境 の改 善 状 況 を定 期 的 に調 査 する仕 組 みを指 す。
:本 来 は「共 同 で何 かを作 る場 所 」を表 すが、現 在 ではさまざまな意 味 で用 い
られている。ここでは会 議 や現 地 活 動 など「参 加 者 が共 同 で作 業 する機 会 」と
いう広 い意 味 で用 いている。
人と自然が共生する環境創造モデル事業の概要
◆実施期間
平成15年度∼平成16年度
◆活動場所
三木町朝倉のため池及びその周辺
◆活動主体
野生生物ボランティア(公募参加)
→後に「さぬき里山倶楽部」として団体名称を決定
◆活動目的
た め 池 の 環 境 を 改 善 し 、生 物 の 保 全・回 復 を 図 り な が ら 、人 と 自 然 が
共生できる環境をつくること。
◆事業内容
・ア ド バ イ ザ ー に 対 す る 意 見 聴 取( 主 に ワ ー ク シ ョ ッ プ の 後 に 実 施 )
・生物モニタリング調査(2年間で合計10回実施)
・ワークショップと環境改善活動(15年度は7回、16年度は
10回、合計17回実施)
・活動内容を広報用ホームページで発信
■さぬき里山倶楽部の掲示板
http://www.gofield.com/~yamaike/imgboard.cgi
■香川県ホームページ内”ワークショップニュース”
http://www.pref.kagawa.jp/kankyo/shizen/shizen_top.htm
・環境保全の将来像(ビジョン)の作成
写真
ワークショップの様 子
写真
生 物 モニタリング調 査 の様 子
11
1)活動場所の選定
ため池のある二次的自然環境を選ぶ
選定条件
●人力による環境改善活動が可能な小規模ため池がある
● た め 池 を 中 心 に 水 田 な ど 自 然 環 境 の 連 続 性 が あ り 、伝 統 的 な 管 理 手 法
により生き物の生息環境の回復状況などモニタリングが可能である
●水利組合など地元の理解及び協力がある
選定場所
● 3 つ の た め 池( 南 か ら 上 池 、中 池 、下 池 )が あ り 、下 池 の 北 側 に は 耕
けいりゅう
作地(一部休耕)があり、そのわきを渓 流が流れています。また、
は ん も
池 の 周 辺 は 、竹 林 、メ ダ ケ 、落 葉 広 葉 樹 林 、ク ズ 、ケ ネ ザ サ な ど が 繁 茂
し、環境改善を必要とする場所(里山)を選びました。
耕作地
(一 部 休 耕 )
竹林
フィールド図
活動場所
メダケが繁 茂 する
エリア(放 棄 田 )
クズ、ケネザサが
繁 茂 するエリア
落葉広葉樹林
(松 枯 れ後 の林 )
環境保全活動から学ぶポイント ∼活 動 場 所 を選 定 する∼
①
ボランティア同士の意欲を高めるため、環境保全活動の成果の目印
となる種(または保護すべき希少種)の生息地近くなど、活動による
環境改善の効果が期待できる場所を選定することが望ましいです。
②
いろいろな活動ができるように、ため池など単体の自然環境だけで
さとやまりん
はなく、水田(耕作放棄されたものを含む)や里山林など、さまざま
な環境条件を含む区域を選定することが望ましいです。
③
環境保全活動による改善効果が期待できる場所を選定または確認す
るために、活動をアドバイスできる専門家などと十分な事前調査を実
施する必要があります。
④
はきゅう
活動の継続性や他地域への波及効果を高めるため、住民活動がある
地域や学校の近くなど、住民や生徒が参加しやすい場所を選定し、連
携して継続的に取り組むことも効果的と考えられます。
⑤
活動地域の市町との連携や周辺住民に対する活動趣旨の理解、住民
生活にも配慮しておく必要があります。
12
2)生息・生育状況の把握
活動場所の環境状況を調べ、モニタリングの対象種を把握する
●活動場所の生物相(活動前の環境状況)を調べる
りんえん
● 草 地 、 林 縁 ※ に 生 育 す る 野 草 ( アキノタムラソウ、 ツリガネニンジン、 ワレモコウな ど )
● 樹 林 地 に 占 め る 植 物 ( スギ、 ノグルミ、 メダケな ど )
● 水 田 地 に 生 息 す る 動 物 ( ウスバキトンボ、 ショウリョウバッタ、 トノサマガエルな ど )
● た め 池 に 生 息 す る 動 物 ( ギンブナ、 ドンコ、 モノサシトンボな ど )
環境保全活動から学ぶポイント ∼生 息 ・生 育 状 況 を把 握 する∼
①
モニタリングの対象となる種と環境保全活動の手法を十分に議論し、
必要な準備や事前の調整を図るため、草刈りなどの現地作業にとりか
かる前に、季節毎の生態など現地の状況を事前に調査することが望ま
しいです。
②
調査の精度を確保するため、ボランティアによる環境調査を実施す
る 際 は 、専 門 家 あ る い は 専 門 コ ン サ ル タ ン ト ※ に よ る 調 査 の 現 地 指 導 及
どうてい
び分析・同定※が必要です。
③
ため池などの生き物に関するデータは大変貴重なものであり、他の
保全・研究活動などへの有効利用を図るため、標本をはじめ環境保全
活動に伴う調査データを研究機関などに保管、あるいは専門の学術誌
などにデータを掲載するなど、広く活用可能な形で公表することが望
まれます。
“もんどり※”など一般書籍に掲載されている調査器具であっても、
④
一般市民の使用が禁止されている場合があるため、ボランティアによ
る調査(保全活動時も含む)を行う場合には、関連法令や規則に違反
しない調査方法などを選択する必要があります。
みつりょう
とうくつ
希少種を取り扱う場合、部外者による 密 猟 ・盗掘を防止するため、
⑤
専門家の助言・指導を仰ぐなど、調査データの取扱いには十分な配慮
が必要です。
【用 語 】
林縁
コンサルタント
同定
:森 林 の、草 地 や裸 地 に接 する部 分 。微 気 候 条 件 の変 化 があり、林 内 と異 なる多 様
な動 植 物 がみられる。
:診 断 ・助 言 ・指 導 を行 うことを職 業 としている会 社 専 門 家 。
:生 き物 の分 類 上 の所 属 や種 を特 定 すること。
もんどり
:魚 を獲 るための道 具 で、魚 の習 性 を利 用 したワナのこと。
13
3)活動計画の検討
(1)現地視察による現状の認識
◆現地はどのような状況か?
約 20 年 間 池 干 し が 行 わ れ て い な い た め 池
管理不足により特定の生き物しか棲めない厳しい環境で、メダケ
などが繁茂する里山空間
●ボランティアの認識
いや
「 暗 く 、 癒 さ れ な い 環 境 」、「 動 植 物 が 少 な い 」
(2)環境改善のための保全手法、全体構想の抽出
◆この環境をどのようにしたいか?
●ボランティアの希望
「 た め 池 利 用 の 復 活 」、
「 休 耕 田 の 利 用 」、
「 環 境 教 育 の 場 に 利 用 」、
「伝統
的 農 山 村 の 風 景 の 復 元 」、「 希 少 種 保 全 の 場 」、「 情 報 拠 点 」
(3)取組可能な手法の選択
◆どのような保全を試みることができるか?(自分たちにできること)
●ボランティアによる保全活動
「 た め 池 と 周 辺 の 生 態 系 ネ ッ ト ワ ー ク づ く り 」、「 モ ニ タ リ ン グ 調 査 」、
「 活 動 記 録 づ く り ( 今 後 の 活 動 へ の フ ィ ー ド バ ッ ク ※ )」
(4)活動体制づくり
◆どのような体制で進めるか?
ワークショップの中で出てきたボランティアの意見を整理し、
えいのう
“ 生 態 系 ”、
“ 拠 点 づ く り ”、
“ 広 報 ”の 4 つ の 活 動 キ ー ワ ー ド
“ 営 農 ”、
を も と に 「 村 づ く り 班 」、「 生 態 系 班 」、「 広 報 班 」 を 構 成 。
【用 語 】
フィードバック
14
:実 施 結 果 に含 まれる情 報 を元 の原 因 に反 映 させ、改 良 を図 ること。
(5)活動目標とキャッチフレーズの検討
◆目標とキャッチフレーズをどうするか?
●さぬき里山倶楽部の目標
昭 和 30年 代 の た め 池 の 原 風 景 を 作 る
持続可能な組織と方法を提言する
生態系の保全
生き物で遊びながら学べるため池づくり
●さぬき里山倶楽部のキャッチフレーズ
朝倉の里山再生
∼生き物とふれあえる山池を目指して∼
(6)全体スケジュールの作成
◆どのような工程で活動を進めるか?
各班ごとの活動目標、活動内容、活動時期について検討し、全体
スケジュールを作成。
環境保全活動から学ぶポイント ∼活 動 計 画 をつくる∼
①
参加状況や現地の状況に応じた活動計画づくりをすることが重要です。
②
環境保全活動を効果的に進めるため、具体的な保全目標及び活動方針
を明確にしておくことが必要です。
ぶんけん
保全の対象とする生き物を選定する場合には、まず文献調査や地元住
③
民などへの聴きとりを行い、活動地域に昔から生息していた生き物の中
から回復または復元可能な生き物を優先的に選定することが望ましいで
す。
④
生き物の移動能力(自然に分布する力)が弱いなど、自力による生態
い で ん し
かくらん
系の回復が見こめない場合には、遺伝子の攪乱※防止に気をつけながら
活動地の付近からの生き物の導入も検討が必要です。
こ た い ぐ ん
他の場所から生き物を移植する場合、移植元の個体群※の減少や誤っ
⑤
がいらいしゅ
た認識または判断による外来種※の持込みがないよう、移植元の生物の
分 布 状 況 、個 体 数 、生 息 環 境 な ど を 事 前 に 調 査 し て お く こ と が 必 要 で す 。
【用 語 】
遺 伝 子 の攪 乱
個体群
外来種
:遺 伝 子 構 造 の異 なった種 を人 為 的 に持 ち込 むことにより、元 々あった原 種 が
消 滅 または雑 種 化 するなど遺 伝 子 学 的 な混 乱 が生 じること。
:同 じ種 に属 する動 植 物 の一 つひとつである個 体 が集 まった状 態 のこと。
:動 植 物 がもつ本 来 の移 動 能 力 を超 えて、意 図 的 ・非 意 図 的 に移 動 させられ
た生 き物 のこと。ブラックバスやアメリカザリガニ、セイタカアワダチソウなどが
これに当 たり、捕 食 や侵 食 など他 の生 き物 に影 響 を与 える。
15
せいたいけい
かいろう
4)環境整備活動(自然環境の創出による生態系の回廊※づくり)
各班毎の環境改善活動
◆むらづくり班
むらづくり班は、連続した自然環境をつくり出すことによる生態系の
回廊づくりを目的として、休耕田を復活、下池周辺の除木・除草、浅場
の造成などの環境の改善活動を実施しました。
◆生態系班
生態系班は、環境の改善状況の把握を目的として、活動時に生物調査
を実施しました。
◆広報班
広報班は、広報に必要な情報素材の収集を目的として、活動時に定点
写真※を撮影しました。
写真
除 草 前 の様 子
(下 池 )
写真
写真
除 草 後 の様 子
(下 池 )
写真
写真
休 耕 田 の復 元 整 備 の様 子
(むらづくり班 )
池 干 しに伴 う
生 物 調 査 の様 子
(生 態 系 班 )
話 合 いの様 子
(広 報 班 )
【用 語 】
生 態 系 の回 廊
定点写真
16
:ある地 点 でつくられる生 態 系 と別 の地 域 の生 態 系 のそれぞれがもつ環 境 の
空 間 が結 びつき、生 き物 が自 由 に行 き来 できる状 態 をあらわす。
:定 まった位 置 の写 真 。これにより活 動 による環 境 の変 化 が把 握 しやすくなる。
環境保全活動から学ぶポイント ∼環 境 整 備 活 動 を行う∼
①
現地活動に際しては、活動のはじめに、参加メンバー全員で起こり
うる事故とその予防策を確認し、安全確認を行うとよいでしょう。ま
た、ヘルメットの着用、長袖長ズボン、手袋の着用を義務づけるなど
安全確保に努める必要があります。
②
事前にボランティア保険に加入し、事故が発生した場合に迅速な対
応ができるように最寄りの病院の連絡先、経路などを確認しておくこ
とが必要です。さらに、応急処置ができるように救急箱を常備し、ま
た救急に関する講習会に事前に参加するなど準備しておくことも必要
です。
③
除草作業で草刈り機など危険を伴う道具を使用する場合は、付近に
人が近寄らないように作業分担を行い、時間ごとの人員の配置や作業
手順を決めておけば、安全でかつ効率的に作業を進めることが可能で
す。またそれに合わせた道具も無駄なく手配することができます。
④
自然の中に生息する危険な生き物(マムシやヤマカガシ、スズメバ
チなど)の特性をよく知り、生息しそうな場所や襲われた時の対処法
な ど を 事 前 に 学 習 し て お く な ど 、現 地 の 活 動 に 対 す る 注 意 が 必 要 で す 。
⑤
環境整備活動の作業時期及び手順は、場合によっては生物の生態を
考慮しながら実施する必要もありますので、注意が必要です。
⑥
環 境 を 維 持 管 理 す る 作 業 に は 、例 え ば 、長 靴 、ぐ ん 手 、ヘ ル メ ッ ト 、
どのうぶくろ
かま
シャベル、一輪車、土嚢袋、ジョレン※、鎌、タケ切り用のノコギリ、
きゃたつ
草刈り機、くま手、脚立、雨具などをその都度準備しておく必要があ
ります。また、現地に道具を保管しておく物置などを設置しておくと
良いでしょう。
⑦
生き物を調査する道具には、昆虫採取用の網、バット※、バケツ、
水槽が必要です。また、生き物を観察記録できるように虫メガネやカ
メ ラ 、ノ ー ト 、新 聞 紙 を 用 意 し 、現 場 で も 生 き 物 が 確 認 で き る よ う に 、
香川県レッドデータブックやハンディ−図鑑、ポケットガイドなどを
持参すると良いでしょう。さらに、現地で見つかった生き物の写真な
どを整理し、地域毎に簡単な図鑑を作ることも、生き物の知識が深ま
り、今後の利用にも役立つので良いでしょう。
⑧
荒天時は現地活動から話合いの機会に切り替えるなど、雨天になっ
た場合の機動的な対応策も決めおいたほうが良いでしょう。
【用 語 】
ジョレン
バット
:田 んぼのあぜづくりなど土 砂 をかき寄 せるために用 いる道 具 。長
い柄 の先 に鉄 板 をとりつけた鍬
:網 で採 取 した虫 などを入 れて観 察 するためのトレイ状 の受 け皿
ジョレン
17
5)その他環境保全活動の効果的な取組み
活動を効果的に進めるための工夫
◆ワークショップニュースの作成
ワークショップや自主活動の活動内容を
一般に広める情報資料(ワークショップ
ニュース)を作成。
これまでの活動内容は、
ワークショップニュース
県 ホームペ−ジ「香 川 の環 境 」−
「自 然 」−「ワークショップニュース」 に掲 載 。
◆野生生物ボランティアの名称づくり
さぬき里 山 倶 楽 部 の名 称 を検 討
◆ロゴマーク、活動看板の作成
◆昔ながらの農作業の体験実施
ロゴマーク
◆炊き出し
環境保全活動から学ぶポイント ∼活 動 を効 果 的 に進める∼
①
活動を長期継続させるためには、単なる奉仕活動ではなく、参加者
にも自然の恵み(活動により得られた収穫物)や貴重な体験により得
た 満 足 感 な ど が 受 け ら れ る 活 動 内 容 を 検 討 す る 事 が 必 要 で す 。例 え ば 、
炊き出しや農作物の収穫など、地域の文化を学びながら楽しく活動が
できるイベント的な仕掛けが必要です。
②
組織やボランティア同士の相互のネットワーク※を確立していくた
めには、ホームページの作成や電子メールなどの利活用が必要です。
また、これらは多様な交流とボランティア活動への参加者増加につな
がっていくと考えられます。
③
活動内容を普及啓発したり、また、組織内での活動の評価を行うた
めの情報資料(ニュース)を作成することも必要です。
【用 語 】
ネットワーク
18
:網 状 組 織 。ここでは情 報 または活 動 内 容 などのつながりを表 す。
6)さぬき里山倶楽部の環境保全活動による成果
(1)環境保全活動のテーマと期待する効果
ていたい
◆ため池堤体の草刈り、周辺樹木の伐採
テーマ
・管理しやすい環境づくり
・明るい環境を好む生物空間の提供
・心地よいため池の創出
期待する効果
・ネザサ型草地からススキ草地への転換
・草地性植物の増加による、昆虫や草地性の小
動物の多様性の確保
◆池干し
テーマ
・生物相の豊かなため池づくり
期待する効果
・水生植物の再生、水質改善、外来種の駆除、
ま い ど し ゅ し
休眠していた埋土種子※の発芽
◆浅場の造成
テーマ
・水生動物の豊富な環境づくり
・明るい環境とそれを好む生物空間の創出
期待する効果
・水田雑草の生育
すいとう
◆水稲・クワイの栽培
テーマ
・水田に依存する生物空間の提供
期待する効果
・水田に生息する生き物の増加
◆川沿いの除草作業
テーマ
・自然とのふれあいの場の創出
・管理しやすい環境づくり
期待する効果
・明るい環境とそれを好む生物空間の創出
水 稲 ・クワイの栽 培
浅 場 の造 成
活 動 場
所
ため池 堤 体 の草 刈 り、
周 辺 樹 木 の伐 採
活動場所位置図
【用 語 】
埋土種子
: 土 の中 で何 年 も生 き、発 芽 できる環 境 変 化 を待 ち続 ける種 子 のこと。
19
自然環境の改善活動効果
写真
写真
堤 体 の草 刈 りと池 干 しを実 施
約 20 年 間 池 干 しされていな
写真
管 理 しやすくなったため池
いため池
写真
放 棄 田 に繁 茂 するメダケの伐 採
写真
写真
浅 場 にするための 土 壌 整 備
20
生 き物 が棲 める浅 場 の出 現
(2)環境保全活動による生態系の回復の効果
◆ため池堤体の草刈り、周辺樹木の伐採
年 3 回 ( H15 年 11 月 、 H16 年 7、 8 月 ) の 草 刈 り や 周 辺 樹 木 の 伐
採を行ったことにより依然としてケネザサが優占するものの、ススキや
ワラビなども多く見られるようになりました。
◆池干し
そうるい
シャジクモ属の一種(藻類)が確認されました。
◆浅場の造成
放棄田に繁茂するメダケ林を伐採し、浅場(湿地)として造成したと
ころ、水田の土壌を投入した箇所で、トノサマガエル(香川県レッドデ
ー タ ブ ッ ク ( RDB) 種 ) が 多 数 繁 殖 を し て い ま し た 。
◆水稲・クワイの栽培
水 稲 と ク ワ イ の 無 農 薬 に よ る 栽 培 を 行 っ た と こ ろ 、 香 川 県 RDB 種 の
シマゲンゴロウ、ヒンジガヤツリ、ミズマツバ、ホソミイトトンボがあ
らたに確認されました。また、ここにもトノサマガエルが多数繁殖して
いました。
◆川沿いの除草作業
雑草の繁茂した川沿いの除草を行い、明るい環境を創出しましたが、
あらたな生き物の生息・生育は確認できませんでした。
自然生態系の回復効果
トノサマガエル
(準 絶 滅 危 惧 )
ヒンジガヤツリ
(絶 滅 危 惧 Ⅱ類 )
ミズマツバ
(絶 滅 危 惧 Ⅰ類 )
ホソミイトトンボ
(準 絶 滅 危 惧 )
シマゲンゴロウ
(準 絶 滅 危 惧 )
【ことわり】
環 境 保 全 活 動 に伴 う自 然 の回 復 状 況 については、気 象 の影 響 や調 査 期 間 等
の制 約 もあるため、これら以 外 にも多 くの生 き物 が回 復 する可 能 性 があります。
21
(3)環境保全活動をしながら学ぶ環境学習の実施
里 山 環 境 に 依 存 し た 植 物・動 物 に つ い て の 学 習 会 や 現 地 で の 管 理 作 業 、
調査を生物専門家と一緒に行うことで、ボランティアに里山環境、生き
しゅうとく
物の基礎知識や里山の管理技術を 習 得 する機会が得られました。
◆勉強会の様子(一部紹介)
6月13日勉強会の様子
タイトル:
講
師:
内
容:
「香 川 のため池 の現 状 について」
川 東 アドバイザー
ため池 が、古 代 から営 まれてきた稲
作 の範 囲 を広 げ、安 定 した収 穫 を得 る
ための必 要 不 可 欠 な産 物 であったこと
など香 川 の風 土 と併 せて歴 史 的 な観 点
から説 明 していただきました。
7月4日勉強会の様子
タイトル:
講
師:
内
容:
「自 然 の中 の勝 ち組 と負 け組 について」
出 嶋 アドバイザー
さぬき里 山 倶 楽 部 が活 動 するこの里
山 の当 初 の様 子 を説 明 しながら、人 手
により管 理 されない自 然 環 境 において、
勢 力 を伸 ばす動 植 物 と生 きられない動
植 物 の説 明 をしていただきました。
8月8日勉強会の様子
タイトル:
講
師:
内
容:
「昆 虫 調 査 用 の網 の使 い方 について」
事務局 斉藤
地 球 上 に存 在 する昆 虫 世 界 の多 様
性 を説 明 しながら、さまざまな環 境 で生
息 する昆 虫 の特 色 に応 じた捕 獲 方 法 に
ついて、捕 獲 網 を用 いて説 明 をしていた
だきました。
(4)地域の資源を活かした恵みを得る(耕作物の収穫や地元との交流)
下池北側の水田でクワイの栽培と無農薬による米づくりを行い、農業
の楽しさを体験しました。また、広報班が主体となり炊き出しなどを行
い、収穫した新米やクワイ汁などを食べ自然の恵みを味わいました。さ
らに、地元の方からイノシシの肉や手打ちそばの差し入れがあり、地域
の人との交流ができました。
22
コ
ラ
○
○
コ○
ラム
ム
3
○
○
○3
自
自然
然環
環境
境の
の保
保全
全活
活動
動へ
へ参
参加
加し
した
た人
人た
たち
ちの
の感
感想
想
活動の成果について
・ボランティア活動により生物環境の保全及び地域への貢献ができた
・二次的自然環境の保全の大切さが理解できた
・自然保護活動の考え方は人により様々であることがわかった
今後の課題について
・活動目的を明確化する(事業趣旨及び活動目的を共有化する)
・個々の保全活動における活動意義(活動のねらい)の事前認識を図る
・活動終了後、ボランティアからの意見を次回活動に反映させる仕組み
づくりを行う
・他地域からのエサ植物や種の移植、堤体の木の伐採を検討する
・土曜、平日にワークショップを開催する
・リーダーなど活動の核となる人材を確保する
・小中学生による保全活動への参加機会づくり
県民全体に伝えたいこと
・住民活動による環境改善の効果と必要性
コ
ム
○
○
コラ
ラ
ム4
4
○
○○
○
ア
アド
ドバ
バイ
イザ
ザー
ーか
から
らひ
ひと
とこ
こと
と
・豊かな自然を育む里地・里山の保全活動は地域住民との連携により継
続することによって徐々に効果が発揮されます。この活動を継続させ
るための工夫と努力が最も必要と考えています。
・数は力なりと言われますが、まさしく、大勢で事に当れば荒れていく
環境がよみがえる事が証明されたと思います。
・環境さえ整えば自然は戻って来ます。楽しみながら自然の再生をはか
ることが、これからのテーマではないでしょうか?
・多くの人の協力で放棄田にびっしり生えたメダケの除去、自然のまま
に 繁 茂 し た 樹 木 の 伐 採 の 後 、里 山 ら し き 景 観 が 再 現 さ れ た こ と に 感 動 。
里地・里山は、農山村の人々の労働力で守られてきたことを実感。
・「環境」は少なくとも今世紀の一番大きなキーワードの1つです。視
野を広く持ちながら、まずは身近な場所から行動を起こしていくこと
が大切です。
23
3.まとめ
1)環境保全活動の重要ポイント(効果的な取組みと留意点の整理)
(1)具体的な保全目標の決定
保全活動を効果的に進めるため、具体的な保全目標及び保全戦略を明
確にしておくことが必要です。また活動を進める上では、役割分担と責
任 の 範 囲 を 明 確 に し て 、そ れ ぞ れ の 分 野 ご と に 指 示 を 行 う 人( リ ー ダ ー )
を決めておく必要があります。
(2)保全活動に対する専門的意見の聴取(アドバイザーからの助言)
活動を効果的に行うためには、専門家や経験者の参加が必要です。ま
た、新規に加入してきたボランティアに対し、活動目標や目的の周知、
活動手順などの指導を行うことも必要です。
( 3 ) 地 域 住 民 ( 土 地 管 理 者 を 含 む )、 研 究 機 関 な ど と の 密 接 な 関 係 づ く り
地域住民や研究機関などに活動趣旨や内容を伝え、お互いの了解が得
られる活動内容とし、相互の参加協力を促すなど地域一体となった保全
こうちく
活動につながる関係を構築することが重要です。
(4)維持管理作業、生物調査に必要な道具の準備
維持管理作業には、例えば、長靴、草刈り機、ぐん手、ヘルメット、
どのうぶくろ
かま
シャベル、一輪車、土嚢袋、ジョレン、鎌、タケ切り用のノコギリ、く
きゃたつ
ま手、脚立、雨具などを準備しておく必要があります。
また、可能であれば、現地に道具を保管しておく物置などを設置して
おくことも必要です。
生き物を調査する道具としては、昆虫採取用の網、バット、バケツ、
水槽が必要です。また、生物を記録できるように虫メガネやカメラ、ノ
ート、標本採取用の新聞紙などを用意し、さらに現場で確認できるよう
に香川県レッドデータブックやハンディ−図鑑、ポケットガイドなどを
持参すると良いでしょう。
ノコギリ釜
ノコギリ
虫 とりあみ
ぼうし
くま手
ぐん手
むしめがね
ノート
ジョレン
バット
むしかご
24
シャベル
ながぐつ
カメラ
新聞紙
(5)現地活動における安全管理(危機意識の徹底)
現地活動に際しては、参加メンバー全員で起こりうる事故とその予防
策を確認し、安全管理を行うことが必要です。ヘルメットの着用、長袖
長ズボン、手袋の着用を義務づけるなど安全確保に努める必要がありま
す。また、応急処置ができるように救急箱などの準備も必要です。さら
に 、事 故 が 発 生 し た 場 合 の 病 院 の 連 絡 先 や 経 路 な ど も 把 握 し て お い た り 、
ボランティア保険への加入などの備えも必要です。
(6)弾力性のある活動計画
現地活動と室内での話し合いをアドバイザーからの意見と上手く組み
合わせることによって、常に活動計画の見直しが可能となり、現地の状
況に応じた対応が可能となります。
(7)データの蓄積
参加者が現地で見つけた生き物の写真などを整理し、その場所毎に簡
易な“図鑑”を作るなど、活動地域の生き物のデータを蓄積していくこ
と が 必 要 で す 。こ れ は 、参 加 者 の 生 き 物 に 対 す る 知 識 の 向 上 に も 役 立 ち 、
モニタリングにも活用することができます。
(8)ボランティア同士の情報共有と自発性の尊重
ボランティア同士の活動情報のネットワーク化を行い、ボランティア
が目的意識を共有しながら保全活動がスムーズに実施されるためのさま
ざまな手法を活かすことが重要です。(ホームページの作成、電子メー
ルなどの利活用)
( 9 )保 全 活 動 に 参 加 す る こ と で 得 ら れ る 地 域 の 恵 み を 体 験 で き る 機 会 の 創 出
ボランティア活動に参加することで、地域の資源を活かした恵み(耕
作 物 の 収 穫 、炊 き 出 し 、地 元 の 人 と の 交 流 )を 得 た り 、ま た 、専 門 家( ア
ドバイザー)から自然に関するさまざまな知識を得るなど地域の価値を
見直したり発見したりする機会として、活動時にあわせて“イベント”
や“勉強会”を実施することも効果的です。
(10)行政の多面的支援
活動を持続させるためには、人材育成、資金調達、保全手法などがあ
る 程 度 ボ ラ ン テ ィ ア 自 ら の 力 で 遂 行 で き な け れ ば な り ま せ ん 。こ の た め 、
自立した組織が確立されるまでは資金・人材などの調整、相談窓口とし
ての行政のバックアップが必要不可欠です。
25
2)人と自然が共生する環境づくりの将来像(ビジョン)
(1)人と自然が共生できる環境をつくるためには
こうはい
近年は、里地・里山の二次的自然環境の手入れが行き届かず荒廃※が
進み、人と自然との関係が単純・希薄化しています。生物多様性※の維
持向上を目的とした環境保全は、人と自然との関係をより深めることの
せいぎょう
で き る 2 1 世 紀 が 目 指 す 重 要 な 課 題 で あ り 、地 域 に 根 ざ し た 生 業 や 個 人
きょうぞん
のライフスタイルの中で 共 存 させる必要があります。
今後、人と自然が共生する環境をつくるためには、里地・里山のよう
な二次的自然環境の多面的な価値を認め、生態系を利用した環境保全の
に な い て
取組みが必要です。また、管理の担い手を確保しながら里地・里山の質
の低下や消失を防いでいくことも重要です。
(2)自然と共生できる環境づくりの将来像(ビジョン)
人 と 自 然 が 共 生 で き る 環 境 づ く り に 向 け て あ な た は 、・ ・ ・
1 .目 標 を 持 ち 方 向 性 を 決 め て 持 続 的 な 環 境 保 全 の 活 動 を 進 め て い
ます。
2 .環 境 を 保 全 す る た め の 自 主 的 な 組 織 が 構 築 さ れ 、リ ー ダ ー を 中
心に活動を展開しています。
3 .地 権 者 や 地 元 住 民 等 と 共 に 、楽 し み な が ら 地 域 づ く り の 活 動 を
進めています。
4 .農 の 恵 み を 受 け る こ と で 農 業 の 楽 し さ を 理 解 し 、農 の 営 み か ら
生まれた二次的自然(里地・里山)や文化とそこに生息する動
植物を大切にしています。
5 .日 常 生 活 に お い て も 、里 地・里 山 で 作 ら れ る 農 産 物 を 買 う な ど
消費者として地域の農業を積極的に応援し、日常面での環境改
善活動に参加しています。
6 .子 ど も た ち に 水 や 緑 な ど 自 然 の 大 切 さ 、農 業 の 楽 し さ な ど を 教
え、自らの手で保全しようとする「環境の心」が育まれ、将来
もこの環境が残されていくことを確信しています。
7 .自 然 環 境 保 全 活 動 の P R( 情 報 の 発 信 )を 行 い 、活 動 を 他 の 地
域にも広げています。
8 .自 然 環 境 の 保 全 意 識 と 活 動 が 社 会 に 定 着 し 、人 に も 生 き 物 に も
気持ちのいい環境がつくられ、水やゴミなど資源を無駄なく利
用する循環型社会で暮らしています。
26
(3)将来像の実現のためには
これからの環境保全活動を進める上で、「地域住民(地権者など権利
関係者を含む)」、「ボランティア」、「専門家(専門コンサルタント
を含む)」、「行政(県や市町)」、「県民」のそれぞれの役割を生か
きょうどう
した連携や 協 働 ※体制づくりが必要です。
連携・協働体制づくりのイメージ
●地域住民
●県民
●ボランティア
新たな組織の結成
(ボランティア団体)
地
ボラ
ア、、行
行
元住
住民
ラン
ンテ
ティィア
民、、ボ
地元
民
県
、
家
門
専
、
政
連
の連
政 、 専 門 家 、 県 民の
携
り
づくくり
制づ
体制
働体
協働
携・・協
●行政
●専門家
それぞれの立場を活かしながら、人と情報のネットワーク化
を図り、県民が環境保全活動に参加しやすい組織をつくる
【用 語 】
荒廃
生物多様性
協働
:荒 れすさむこと。ここでは田 畑 の管 理 放 棄 が環 境 を変 え、日 照 など生 き物 の生 育
に必 要 な環 境 要 素 が失 われていくことを表 す。
:あらゆる生 物 種 (動 物 、植 物 、微 生 物 )と、それによって成 り立 つ生 態 系 を含 んだ
「個 体 ・種 ・生 態 系 」のそれぞれのレベルにおいて用 いられる多 様 性 の包 括 的 な概
念。
:同 じ目 的 のために、協 力 して働 くこと。
27
◆地域住民が環境保全活動に参加する意義
行政やボランティアが行う活動目的を理解し、環境保全活動に積極
的に参加・協力することで、地域に根付く地域文化を広め、また、里
地・里山の再生や生態系の保全など行政やボランティアと一体となっ
た地域環境の維持または向上を図ることができます。
◆ボランティアが環境保全活動に参加する意義
地域住民や行政に活動内容を伝え、協力を求めることで、地域との
つちか
良 好 な 関 係 が 形 成 さ れ 、こ れ ま で に 培 っ た 経 験 や 知 識 を 生 か し た 環 境
保全活動がより効率的に実施されるなど、ボランティアが目指す理想
が実現しやすく、他地域への波及も期待されます。また、専門家の助
言など協力を得ることで自己の見識をより深めることができます。
◆専門家が環境保全活動に参加する意義
おぎな
行政やボランティアで 補 いきれない専門的な知識や環境保全活動
に配慮すべき内容を伝え、協力することで、環境保全活動全体を支援
し、活動成果を確かめるなど自身の研究材料に活用し今後の活動場所
を広げることが期待されます。
◆行政が環境保全活動に参加する意義
ボランティアや地域住民、また専門家や行政間の協力を得ながら環
境 保 全 活 動 を 進 め る こ と に よ っ て 、地 域 環 境 全 体 の 向 上 を 図 り 、ま た 、
相談窓口や情報発信などの役割を担うことで、地域の環境保全活動の
維持や他地域への多様な展開を図り、新たな環境保全づくりを目指す
ことができます。
◆県民が環境保全活動に参加する意義
ボランティアや地域が取り組む環境保全活動を理解し、環境教育の
促進や活動への積極的な支援、環境保全につながる産業(農林水産業
など)を消費者として協力するなど直接または間接的に環境保全に貢
献することによって、あらたな生きがいづくりや県民それぞれの地域
環境の向上につながります。
28
4.参考資料
1)ワークショップニュース
こ こ に は 、 さ ぬ き 里 山 倶 楽 部 の 活 動 内 容 ( 2003∼ 2004) を ま と め
たものを添付します。
なお、各回の活動については、香川県のホームページのワークショッ
プニュースで見られるほか、さぬき里山倶楽部のホームページでもご覧
いただけます。
香川県ホームページ
http://www.pref.kagawa.jp/kankyo/shizen/shizen_top.htm
さぬき里山倶楽部ホームページ
http://www.niji.or.jp/home/hara001/sindex.htm
29
2003 8/6
香川県の初の試みとして、
『人と自然が
共生する環境創造モデル事業』がスタ
ートしました。
2003 8/20
ボランティアメンバーを募集した結果、
約 30 名もの方々から応募がありまし
た。
また、
アドバイザー5 名も決定し、
着々と準備が整っていきます。
2003
10/19
第 1 回 WS
記念すべき第1回目のワークショップ
開催です。まだ、みんなが初対面なの
で、若干の硬さはありましたが、この
活動について自由な意見交換ができま
した。
2003
10/20
新聞掲載
2003
11/15
第 2 回 WS
30
2003
11/30
現地活動 1
現地での活動開始。
これまでの屋内での検討から一転、
メンバーも待ち望んでいた現地活動
の第1回目です。この活動では、除
木・除草、生物調査を行いました。
2003
12/14
第 3 回 WS
現地活動 2
第3回ワークショップは、前回の活
動に引き続き、現地で生物調査や除
木・除草、池干しなどを行いました。
また、広報班の提案で、炊出しを行
いました。
更には、テレビ局の取材も訪れ大変
な盛り上がりを見せていました。
2003
12/19
テレビ放送
第3回ワークショップの活動風景や、
これまでの活動の流れなど約20分
に渡って、
ニュース番組で特集され、
放送されました。
2004 1/8
第 4 回 WS
年明けて 2004 年始めての活動であ
る第 4 回ワー
クショップで
は、この活動
グループの名
称を決定しよ
うと様々な意見を出し合いました。
そして、最後に残った『さぬき里山
倶楽部』に決定しました。
この活動が四国新聞に掲載されました。
多くの人に活動を知ってもらうPR活
動の第 1 弾となりました。
第 2 回ワークショップ開催。
ここでは、今後の活動体制(班分け)
についてや、活動内容などについて検
討しました。
今後は、生態系班、むらづくり班、広
報班の 3 つの班で活動を行うことが
決定しました。
さ
さぬ
ぬき
き里
里山
山倶
倶楽
楽部
部の
の歩
歩み
み 2
20
00
03
3∼
∼2
20
00
04
4
2004 1/28
新聞掲載
『日本農業新聞』に活動
が掲載されました。→
2004 1/31
新聞掲載
『リビングたかまつ』に
活動が掲載されました。
また、これを見て、是非
参加したいという2名の
女性から連絡があり、メ
ンバーが増え、ますます
活気付きました。
→
その他の活動概要
活動毎の報告 -----『WorkShopNEWS』
2004 2/8
現地活動 3
ワークショップや現地活動を回毎にとりまとめて、
『WorkShopNEWS』として香川県のホームページに
掲載しています。
■香川県ホームページ内”ワークショップニュース”
http://www.pref.kagawa.jp/kankyo/shizen/shizen_top
.htm
雪解け前の寒い日の現地活動となりま
した。この活動では、生物の生息場で
ある浅場や観察ルートづくりが行われ
ました。
また、この回でも、広報による恒例の
トン汁が用意されました。暖まる最高
の一品でした。
メーリングリスト&インターネット掲示板
2004 2/14
新聞掲載
前回に続いて、
『日
本農業新聞』に活
動が掲載されまし
た。今後、継続し
て活動の経過を記
事にしていくよう
です。
『さぬき里山倶楽部』メンバーと事務局のうち、携帯
電話やパソコンのEメールアドレスを所有している人
が連絡を取る際に大変便利なメーリングリストを開設
しました。
また、インターネット掲示板も同時期に開設されまし
た。これらは、ともに広報班の成果です。さすが!
■さぬき里山倶楽部の掲示板
http://www.gofield.com/~yamaike/imgboard.cgi
2004 2/29
発表会
2/29 の発表会で、15 年度の活動につ
いて報告を行い、地元のかたから昔の
状況などについて、話を聞きました。
ロゴの決定
『さぬき里山倶楽部』のロゴを決定しました。
31
2)報道記事
四国新聞
32
平 成 15 年 10 月 20 日
3)参考・引用文献
「 香 川 県 レ ッ ト デ ー タ ブ ッ ク 」 2004
「身近な生き物マップ」
香川県環境森林部
環境・水政策課
2002
「香川県農林水産統計年報」
「ため池物語」
農政水産部
農林水産省
土地改良課
中国四国農政局
香川農地防災事業所
4)参加者及び協力者一覧
【 ボ ラ ン テ ィ ア ( さ ぬ き 里 山 倶 楽 部 )】
安田能久、市村康、井内正、石川孝、石川桂子、上田富夫、榎本隆志、
大林由明、柏原陽子、川越幸一、川田正明、川西玉夫、香西謙二、
末澤正義、須田琢也、千田有美、谷川和美、中島秋平、中村正和、
林文保、原内純治、原田雅弘、福永展隆、前田勉、松井賢児、松本豊、
水 野 勤 、 三 好 規 雄 、 村 上 英 二 、 山 田 悦 子 、 山 本 浩 司 ( 31 人 )( 50 音 順 )
【アドバイザー】
伊 藤 英 夫 ( 林 業 、 淡 水 魚 類 )、 川 東 俊 雄 ( 土 地 改 良 )、
高 木 真 人 ( 昆 虫 類 、 農 業 )、 出 嶋 利 明 ( 昆 虫 類 )、 増 井 武 彦 ( 生 物 学 )、
三 木 武 司 ( 昆 虫 類 )( 50 音 順 )
【協力いただいた個人、団体】
◆篠原密夫
◆三木町
ほか地元関係者
産業振興課
◆香川県環境保健研究センター
◆ (独 )水 資 源 機 構
◆香川大学
香川用水総合事業所
工学部
【事務局】
◆香川県
環境森林部
環境・水政策課
自然保護室
◆ (株 )ウ エ ス コ
〈四国支社
技術部〉
森下殷夫、中島俊憲、西村正一、岩井慎二、太井史朗、新家亨
〈岡山支社
環境計画部〉
斉藤光男、河本智宏、森分泰三郎、榎本孝一、片岡大輔、奥本康之
人と自然が共生するかがわの環境づくり
―ボランティアによる自然環境保全の将来像―
平成17年2月
編集・発行
香川県 環境森林部
〒 760-8570 香 川 県 高 松 市 番 町 4-1-10
URL:( http://www.pref.kagawa.jp/kankyo/shizen/shizen_top.htm)
33
お問 い合 わせ先
この冊 子 につきまして、ご意 見 、ご質 問 等 がございましたら、
香 川 県 環 境 森 林 部 環 境 ・水 政 策 課 自 然 保 護 室 野 生 生 物
グループへお寄 せください。
TEL :087-832-3212 / FAX :087-834-9605
E-mail :[email protected]
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