あとがき

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あとがき
昨年度「神戸の野鳥」と「神戸の野鳥観察記」の2冊を、神戸の自然シリーズに仲間入りさせて
いただいた。そして、これらの本が意外に幅広く、多くの方がたに読まれていることを知り、今さ
らながら出版に対する責任の重さを痛感している次第である。それにもかかわらず、三たび「神戸
の蝶」を書くことになったが、これらの冊子は、神戸市立教育研究所の研究員としての研究報告で
もある。
私と昆虫とのつき合いは、小学校時代にさかのぼる。当時、誰もがやっていた、いわゆる虫取り
で始まった。それは野鳥とのつき合いと同じ頃か、それより古いかも知れない。私の虫取りは、あ
くまで余暇をつくって少しずつ積みあげただけであるから、観察の内容も浅く、専門約な知識も乏
しく、断片的で趣味の域を脱していないので、不十分な点も多くあると思われる。
本書のＩ、ＩＩ章は私の調査資料をもとにリストアップした、神戸の蝶の紹介というべき内容で
ある。皆さんが神戸の野山で蝶の種類を見分けたり、捕えた蝶を調べるのに役立つように、それぞ
れの種の雌雄別、春・夏型などできるだけ写真を多くした。そして神戸に棲息する蝶の分布や発生
経過、生態などを解説した。しかし日々休むことなく進行している自然破壊は、この可憐な友を奪
い去り、この本の内容も何年か後には実情に合わなくなるのではないかとおそれている。
蝶にかぎらず昆虫の飼育は、一般に完全な新鮮標本を得るための手段としてなされてきた傾向が
強い。しかし蝶の生態研究、分類、進化などの学術的研究にも欠くことのできない重要な分野であ
るが、自然の営みを知り、自然とつき合う心がまえを養う上で、教育の域でもとりあげる必要があ
る。本書は成虫を中心に記述しているため、蝶の生活史をぜひ加えたいと思っていた。幸い、蝶の
飼育について造詣の深い武衛晴雄氏がⅢ章を執筆してくださることになった。体裁上は共著者に
なっていただいてるが、氏のご協力に厚く感謝したい。武衛氏の緻密な観察内容と暖かい思いやり
が、皆さんによい参考になるものと思う。
この本が小・中学校の理科の授業、理科クラブの活動や、神戸の自然に関心をもつ多くの方に活
用され、自然保護の大切さがわかっていただければ、私にとってこれ以上のうれしいことはない。
本書の作成にあたり、多くの方がたから御指導と御援助をいただいた。とくに大阪市立自然史博
物館の日浦勇氏からはいろいろの御意見を、日本鳥学会小林桂助氏からは数多くの資料を、そのほ
か同好の諸氏からも資料の提供をいただいた。また神戸市立教育研究所長中堀明仁氏をはじめ諸先
生方には多方面にわたる御指導を仰いだが、とくに編集面では前田保夫先生のお手をわずらわすこ
とが多かった。さらに須佐野、歌敷山両中学校の校長先生をはじめ諸先生方には、私の執筆や研究
に多方面から御援助と御協力を与えてくださった。ここに紙面をかり深く感謝いたします。
（加藤昌宏）
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