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世界初のFLNGプロジェクト - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

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世界初のFLNGプロジェクト - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報
更新日:2012/3/22
石油調査部:大貫 憲二
世界初のFLNGプロジェクト:Prelude LNGにおける技術的現況
(各社ホームページ、各種報道 他)
○Shell が開発を行う、世界初の洋上天然ガス液化プロジェクトである Prelude LNG が、2011 年 5 月
20 日に最終投資決定(FID)を迎えた。以降、主な設備の受注企業が決まりつつある。
○主な設備としては、LNG・LPG タンクがメンブレン方式で 2 列配列式(double-row)、液化設備の主熱交
換器が Air Products 社(米)製の Coil Wound 式熱交換器、ボイラー(発電及びプロセス向け蒸気製造)
が川崎重工業製、スチームタービン発電機が三菱コンプレッサー社製等である。
○洋上液化設備における各々の設備は既存の技術の集合体であるが、①これまでにない規模(大きさ)
の設備である、②これまで設置・運転されたことがない、常に波浪により揺動する環境下であることが
課題であり、結果として現時点では保険が適用されない状況である。このような中、基本設計の段階
から主要な設備については、メーカーと共に検討を行い、安全性や操業安定性の確保を図って来て
おり、FID を決定したことは Stranded ガス田と呼ばれる中小規模、もしくは遠隔地で開発が難しかった
ガス田の開発を進める上で、大きな意味を持つ。
○FLNG の技術としては、競合他社も引き続き検討しており、今後とも技術の進展が注目される。
1.はじめに
2011年5月、世界初の洋上天然ガス液化プロジェクトとなる Prelude LNG の最終投資決定(FID:
Final Investment Decision)が、100%権益保有者である Royal Dutch Shell によりなされた。本プロジェ
クトは、洋上の浮体式液化設備でLNGを生産、貯蔵、積み込みを行うものであり、一つ一つの要素は
既存の技術の組み合わせであるものの、操業条件が波浪により常に揺動した状態であること、洋上の
各設備がこれまでで最大であること(既存の原油・LPG 用 FPSO と比較しても最大)、保険会社が保険
を現状設定できないこと等、厳しい条件下での決定であった。
FID 決定以降、主要な設備が受発注されていることを受け、それらの状況から見る LNG 洋上液化
設備(LNG-FPSO:LNG Floating Production, Storage and Offloading、以下 FLNG とする)のプラント技
術動向について、以下にまとめる。
–1–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2.Prelude LNG プロジェクト
(1)Prelude LNG プロジェクト概要
Prelude LNG は、Shell が権益を 100%所有するプロジェクトである。世界で初めて、洋上液化設備
(FLNG)が採用され、今後の中小規模ガス田やフロンティア地域のガス田等、これまで Stranded ガス
田と呼ばれていたガス田開発のソリューションの 1 つとして特に注目されるプロジェクトである。プロジ
ェクトの概要を以下に記す。
表 Prelude LNG プロジェクトの概要
液化設備
液化設備設置場所
油ガス田
生産量(予定)
FID(最終投資決定)
液化設備設置予定
操業開始予定
洋上天然ガス液化設備(世界初の FLNG)
設備概要:長さ 488m/幅 74m/排水トン数約 60 万トン
Browse Basin(オーストラリア北西部)
西豪州 Broome の北北東約 475km(最も近い陸地から約 200km)
Prelude 油ガス田、Concerto 油ガス田(合計可採埋蔵量:3Tcf)
LNG:360 万トン/年、LPG:40 万トン/年、コンデンデート:130 万トン/年
2011 年 5 月 20 日
2016 年 9 月
2017 年
図 Prelude LNG の位置
(2)洋上天然ガス液化設備(FLNG)
洋上天然ガス液化設備とは、洋上で天然ガスを液化し、LNG としてタンクに貯蔵し、LNG 運搬船に
積み込み出荷を行う設備であり、LNG-FPSO(LNG Floating Production Storage and Offloading)と呼
ばれる(以下、FLNG とする)。
–2–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
本体は造船所で建設され、洋上のサイトに係留(固定)される。本体の上部(topside)に前処理設備
及び液化設備が配置され、陸上の設備と同様、コンデンセートの分離、天然ガスの前処理及び液化
が行われる。生産物は、本体内部にある LNG、LPG、コンデンセートタンクに一時的に貯蔵された後、
各運搬船(LNG 船、LPG 船、油槽船)に適宜積み込まれ、出荷される。
⑥出荷設備
②ガス処理
③液化
コントロール室
居住区
(b)係留
コンデンセート
タンク
④LPGタンク
⑤LNGタンク
⑦ユーティリティー
(発電・蒸気)
海面
(a)本体
マニホールド
井戸
井戸
海底
①海底生産システム
図 FLNG 概略図
(出所:Shell ホームページ)
図 Prelude LNG 設備予想図
–3–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(3)Prelude LNG の経緯
表 Prelude LNG の経緯
時期
1999 年
2007 年
2008 年 6 月
2009 年 7 月
2010年10月
2010年11月
2011 年 5 月
2011 年 6 月
内容
Shell、FLNG の Conceptual 設計を実施
Shell、Prelude ガス田を発見
Shell、FLNG 設備の入札を開始
Shell、Technip-SHI※1コンソーシアムと
FLNG のマスターアグリーメントに署名
SHI と GTT※2、FLNG に関する FEED※3
作業に対する技術作業契約を締結
Prelude Floating LNG プロジェクト、
オーストラリア政府より環境承認を受領
Shell、最終投資決定(FID)
Shell、Technip・SHI と FLNG 建設契約
SHI と GTT、Shell より Prelude LNG 向け
LNG・LPG タンクを正式に受注
備考
※Concerto ガス田は 2009 年
事前に 3 コンソーシアムを選定済み
①15 年間の FLNG の設計・建設・設置
②FEED 作業の実施
メンブレン型タンクに関する契約
5/20
5/30
6/1
(出所:Shell ホームページ他)
※1:SHI=Samsung Heavy Industries(韓国)、※2:GTT=Gaztransport and Technigaz(仏)
※3:FEED=front-end-engineering-design
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
3.Prelude LNG 向け FLNG の受発注状況から見るプラント技術動向
(1)Prelude LNG 向け FLNG の受発注状況
表 Prelude LNG 向け FLNG の受発注状況(2012 年 3 月時点)
項目
EPCI
船体
タンク
係留
LNG・LPG
ポンプ
積込設備
海底
井戸
液化
設備
設計・調達・建設・設置契約
船体
GTT Mark-Ⅲ(メンブレン)
Double-row-type:並行にタンクを 2 列配置
本体係留
①Turret Mooring System
②EPCI
(係留関連の設計・調達・建設・設置契約)
LNG・LPG 船係留:クイックリリースフック(QRH)
2 フック用 14 基+3 フック用 2 基(各 125t)
<LNG 用>Cargo Pump:840m3/h×14 基
Stripping Pump:50m3/h×7 基
<LPG 用>Cargo Pump:750m3/h×8 基
Stripping Pump:50m3/h×5 基
Loading Arm(LNG/LPG)
海底生産システム(井戸)
受注企業
Technip,SHI
SHI
GTT,SHI
時期
11/5/30
11/5/30
11/6/1
発表媒体
Technip 他
SHI
GTT
SBM Offshore
11/6/27
SBM
Offshore
未定
入札済
-
未定
入札済
-
未定
FMC
Technologies
Air Products
未定
11/6/27
主熱交換器
Cryogenic Coil Wound LNG Heat Exchanger
蒸気タービン駆動コンプレッサー:3 基
三菱重工業
蒸気タービン駆動混合冷媒
GE Oil & Gas
及び予冷混合冷媒コンプレッサー:各 1 基
定速 LNG Expander 駆動式交流発電機
EIC※1
Expander 及び再昇圧コンプレッサー
GE Oil & Gas
蒸気タービン駆動遠心式ブースターコンプレッサー
三菱重工業
液化設備関連低温ポンプ 9 基+Expander1 基
EIC
発電・蒸気 ボイラー:220t/h×7 基
川崎重工業
(Utilities) 蒸気タービン発電機:4 万 kW×3 基
三菱重工業
制御
Main Automatic Contractor(MAC)
Emerson
⇒DCS System(メイン制御システム)
※編みかけ部は、発注先が決定した設備
-
FMC
Technologies
11/6/30 Air Products
12/1/11
11/9/20
三菱重工業
GE
-
-
-
12/3/8
11/9/15
12/1/11
11/7/9
P.C.※2
P.C.
P.C.
EIC
川崎重工業
三菱重工業
Emerson
(出所:各種報道、各社ホームページより)
※1:EIC=Ebara International Corporation(米、荏原製作所関連会社)
※2:P.C.=Project Connect(西オーストラリア州のプロジェクト登録サイト)
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(2)Prelude LNG 向け FLNG 各設備の技術動向
①本体
サムソン重工業(SHI:Samsung Heavy Industries)の Geoje Shipyard(韓国・巨済島)にて建造を開始
した。長さ:488m、幅:74m、排水トン数 60 万トンの、世界最大の浮体式洋上 LNG 設備であり、その大
きさから、Geoje Shipyard の Dock No.3(640m×98m)で建造されるものと思われる。現在、世界最大の
LNG船は、長さ 330m、幅 52m であり、長さ、幅とも既存LNG船の最大船型の概ね 1.5 倍となる。
西オーストラリア州Broome の北北東約475km の洋上に設置され、ドライドック、もしくはオーバーホ
ールを行う前まで、約 25 年間設置される予定である。なお、最大カテゴリー5 の熱帯低気圧に耐えう
るよう設計されている。
図 Samsung Heavy Industries Geoje Shipyard(韓国・巨済島)
(出所:Samsung Heavy Industries ホームページ)
②係留
1)FLNG 本体の油ガス田への係留
2011年6月に、SBM Offshore社(蘭)が Technip より、主要なTurret Mooring Systemに対するEPCI
(設計・調達・建設・設置契約)を締結した。現在、SBM Offshore 社が入札を実施中である。設置される
Turret Mooring Systemは、直径30m、長さ100mに及ぶ円柱形の係留設備であり、本船の船首側に設
置される。本船は、潮流や風による力を受けながら、係留設備を中心に回転することでバランスする。
SBM Offshore 社としてこれまで設計・製造されたものとして最大であり、製造後、韓国の造船所で設置
されることとなる。
この設備は、サイクロン環境下での極度な係留力に耐えることができるよう、設計される。
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図 SBM Offshore 社製 Internal Turret Mooring System
(出所:SBM Offshore ホームページ)
2)LNG・LPG 運搬船の FLNG への係留
FLNG の生産物(LNG・LPG)を積み込むため、LNG・LPG 運搬船は FLNG に平行に接舷される。
接舷後の運搬船の固定については、運搬船の固定用ロープ(係留策)を FLNG に設置された係留設
備(クイックリリースフック)に掛け、固定することで行われる。
現在、能力 125t のクイックリリースフックが 16 基(2 フックタイプ:14 基+3 フックタイプ:2 基)発注さ
れている(受注者は不明)。なお、本発注では、テンションモニタリングシステム(クイックリリースフック
に係留策の張力測定用センサーを設置し、オペレーションルームで張力を管理できるシステム)も合
わせて発注されている。これは、既存のLNG液化基地、受入基地で実績のあるものである。
(出所:杉田産業ホームページ)
図 クイックリリースフック(例)
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
③LNG タンク
FLNG を建設・運用する上で、最も重要な設備の一つがタンクである。Prelude LNG では、
Gaztransport and Technigaz 社(以下、GTT)がライセンスを持つメンブレンタイプが採用された。メン
ブレンの形式は、Mark-Ⅲであり、船体の内側に保冷材を張り付け、その上にメンブレンと呼ばれる波
型のステンレス製薄膜(SUS 304L、厚さ:1.2mm)を張り付け、メンブレン同士を溶接することで液密性
を確保するものである。
LNG 船の LNG タンクについては、メンブレン型、モス型、SPB 型と、異なる 3 つのタイプがある。モ
ス型、SPB 型は、波浪により生じるスロッシング(内部の液面が船体の揺動により揺れ、エネルギーを
持ってタンク内面に衝突すること)の影響が全液位において小さいが、メンブレン型は中間液位で影
響が大きいため、積み付け制限(低液位及び高液位以外で基本的に運用しない)がある。Technip 社
と SHI 社は、GTT 社と共に FEED(Front-End-Engineering-Design)作業を行い、最適なタンク形状や
配列を検討している。2011 年 6 月 1 日に GTT と SHI が共同で FLNG のタンクシステムを受注した、
と発表し、その中で、スロッシングの影響を小さくすることを目的に、2列にタンクを配列する様式
「double-row」が採用される、と発表している(GTT 社ホームページ参照)。
LNG タンクは 6 タンクで合計 231,500m3、LPG タンクは 4 タンクで合計 94,700m3 である。
(出所:GTT ホームページ)
図 メンブレン型 LNG 船のタンク内部及びメンブレン
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
④液化設備
液化方式は公式には発表されていないが、当初より、Shell が開発しサハリンⅡプロジェクトにおい
ても実績がある混合冷媒予冷式(Shell Double Mixed Refrigerant、以下 SDMR とする)で検討が進めら
れている。オーストラリア政府に提出された環境影響評価書にも記載され、また、設備入札において
も「予冷混合冷媒用コンプレッサーの発注」との表現があることから、SDMR方式が採用されるものと思
われる。
図 Cryogenic Coil wound LNG Heat Exchanger
(出所:Air Products ホームページ)
液化プロセスの心臓部である主熱交換器は、Air Products 社(米)の Cryogenic Coil Wound LNG
Heat Exchanger(超低温コイル巻き式 LNG 熱交換器)が採用された。Air Products 社は、Technip・
Samsung コンソーシアムに対し、基本設計(FEED:Front-end-engineering-design)作業時からエンジ
ニアリングサポートを行っており、FLNG 上での揺動環境下における設備への影響や液化性能への
影響についても、十分に検討されているものと思われる。
また、液化プロセスで用いられる原料ガスコンプレッサー(3 基、三菱コンプレッサ)や、混合冷媒及
び予冷混合冷媒用コンプレッサー(GE Oil & Gas)は蒸気タービン駆動式を採用しており、船上の限
られたスペースに配置されることに対し、安全性が図られている。
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(出所:JOGMEC)
図 Shell Double Mixed Refrigerant(SDMR)方式の液化プロセス
⑤ユーティリティー(スチーム・発電設備)
蒸気は、LNG 生産プロセスで必要な電力・蒸気を賄うために活用する。主なコンプレッサー類は安
全対策と効率性から、スチームタービン駆動となっており、駆動源としてスチームが必要である。また、
ガス前処理装置のリボイラー用熱源等としてスチームそのものを使用し、更に所内電源やプロセス用、
生産物積み込み用のカーゴポンプの電力は、スチームタービンを用いて発電を行い供給する。ボイ
ラーや蒸気タービン発電機は、既存のLNG船上で運航中に使用されており、洋上での揺動する状況
においても高い信頼性を持っているものと思われる。
表 主なユーティリティー設備の仕様(能力及び台数)
設備
ボイラー
蒸気タービン発電機
仕様(1 基当たりの能力)
220t/h
4 万 kW
受注者
川崎重工業
三菱コンプレッサー
台数
7
3
⑥LNG・LPGポンプ(積み込み用カーゴポンプ)
生産後 FLNG 上のタンクに貯蔵された LNG・LPG を、輸送船に積み込むために用いられるもので
ある。選定先については現状分かっていないが、仕様は既存のLNG・LPG船と同様のポンプである。
表 各低温ポンプの仕様(能力及び台数)
LNG ポンプ
LPG ポンプ
設備
カーゴポンプ※1
ストリッピングポンプ※2
カーゴポンプ
ストリッピングポンプ
仕様
840m3/hr、@170mlc
50m3/hr、@180mlc
750m3/hr、@165mlc
50m3/hr、@150mlc
台数
14
7
8
5
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
※1:カーゴポンプ:貨物(LNG・LPG)の荷降ろし・積み込み用ポンプ
※2:ストリッピングポンプ:タンクの点検等を安全に行うため、タンク内の LNG・LPG を全量払い出す
際に使用するポンプ。また、FLNG 上の他のタンクや、積荷を行う LNG 船の配管、タンクを冷
却する際にも用いる。
3)LNG 積み込みレート
LNG タンク 6 基、各タンク当たりの LNG ポンプ台数を 2 台とすると、定常積み込みレートは 6
タンク×2 基/タンク×840m3/h=10,080m3/h であり、既存のLNG液化基地とほぼ同等の積み
込みレート(通常、約 10,000m3/h)と思われる。
⑥海底井戸
(出所:FMC Technologies ホームページ)
2011 年 6 月に、FMC Technologies 社(米)が受注した。設備構成は以下の通りである。
表 Prelude LNG における海底井戸設備(受注内容)
設備
Subsea EVDT Production Trees
Production Manifolds
Riser Base Manifold
PLET components
Well Jumpers
Flowline Jumper Kits
Subsea Distribution and Topside Control Systems
基数
7
2
1
1
1
1
1
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含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
3.まとめ
・Prelude LNG プロジェクトにおいて設置される世界初の FLNG は、各々の設備は既存の技術の集合
体である。しかしながら、
①これまでにない大きさの設備である(船体、係留設備等)
②これまで設置・運転されたことがない、常に波浪により揺動する環境下である
といった、既存の設備とは異なる課題があり、結果として
③現時点では保険が適用されない
状況となっている。
・この様な中、安全性や操業安定性の確保の観点から FEED 作業の段階から、核となる LNG・LPG
タンクの形状や配列については GTT 社と、液化設備(主熱交換器)については Air Products 社と、
エンジニアリングサポート契約を結び、対策を講じる(もしくは安定性を検討する)ことで FID を決定
したことは、Stranded ガス田と呼ばれる中小規模、もしくは遠隔地で開発が難しかったガス田の開発
を進める上で、大きな意味を持っている。
・一方で、先行する Prelude LNG の FLNG が、FLNG の最終形態であるとは言えないであろう。現在も、
Shell-Technip-Samsung 以外の企業が引き続き、様々なコンセプトに基づき検討を実施中であり、一
部は船級協会から承認を受けている状況にある。LNG ローディング用フローティングホースの開発
やそれに伴うタンデム方式でのローディング、メンブレン型以外の LNG・LPG タンクの利用等、安全
性向上やコスト削減について更に改良が図られることが期待され、今後とも技術動向を注視していく
必要がある。
以上
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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