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2006年6月号(PDF)

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2006年6月号(PDF)
2006 年 6 月 1 日
155
すばる望遠鏡
塵に埋もれた超巨大ブラックホールを発見
●立花隆+自然科学研究機構シンポジウム
「見えてきた! 宇宙の謎。
生命の謎。脳の謎。」
●第1回SOLAR-B講習会報告
●
「N体シミュレーション雨水の学校」報告
●平成18年度共同研究等採択結果 1
2006
6
2006
6
表 紙
1
国立天文台カレンダー
2
研究トピックス
●塵に埋もれた超巨大ブラックホールたち
今西昌俊(光赤外研究部)
3
第1回SOLAR-B講習会報告
5
国立天文台Bee Project室コンペ2005報告笑
6
お知らせ
「N体シミュレーション雨水の学校」報告
5
立花隆+自然科学研究機構 自然科学の挑戦シンポジウム
「見えてきた宇宙の謎。生命の謎。脳の謎。
̶科学者が語る科学の最前線」報告
8
●天文台Watching 第1 5回 ̶渡邊鉄哉さん
東京タワーから太陽遷移層へ
コロナ加熱の謎に迫る極紫外線望遠鏡
10
共同研究等採択一覧
12
New Stuff
13
15
●平成18 年度共同研究
●平成18 年度研究集会
●平成18 年度共同開発研究
● 編集後記
国立天文台望遠鏡名鑑 03
すばる望遠鏡 山田 亨
●表紙画像
塵とガスに埋もれた、活動的な超巨大ブラックホ
ール(AGN)の概念イラスト。すばる望遠鏡に近
赤外線撮像分光装置IRCSを取り付け、3マイクロ
メートル付近の熱的赤外線を観測することによっ
て、その存在をつきとめることができた。
(イラス
ト:石川直美/国立天文台)
背景星図:千葉市立郷土博物館
16
国立天文台カレンダー
2006年
■5月
16日(火)
∼17日
(水)
PAONET総会
21日(日) 第8回ALMA公開講演会
(福岡県青少年科学館)
22日(月)
∼23日
(火)
第1回自然科学研究機構技術研究会
30日(火) 運営会議
31日(水) 大学院教育委員会
■6月
2日(金) 水沢VERA観測所観望会
7日(水) 教授会議
19日(月)
∼22日
(木)
プロジェクトウイーク
26日(月)
∼30日
(金)
国際会議「銀河系と近傍銀河のマッピング」
(沖縄県石垣市)
■7月
1日(土) 総合研究大学院大学ガイダンス・公開講座「宇宙からのメッセージ」
8日(土) 第14回七夕まつり∼親子で楽しむ夏の星空∼(鹿児島市錦江湾公園)
25日(火)
∼28日
(金)
君が天文学者になる4日間
写真:飯島 裕
2
塵に埋もれた超巨大ブラックホールたち
塵に埋もれた超巨大ブラックホールたち
今西昌俊(光赤外研究部)
宇宙には、100 ∼ 1000 万太陽質量程度の
超巨大ブラックホールが、多くの銀河の中心部
に存在すると考えられています。そこに物質が
落ち込むと、活動的になり明るく輝きます。そ
のような現象は、活動銀河核(AGN)と呼ばれ
ます。AGN が、塵によって隠されていなけれ
ば、あるいは、隠されていても、その塵の分
布がドーナツ状(トーラス状)であれば(図 1
左)、比較的容易に見つけることができます。
しかしながら、大量の塵やガスを中心核付近に
持つ銀河では、AGN が存在していたとしても、
ほぼすべての方向が隠された、 埋もれた 状
態になってしまいます(図 1 右)。このような
埋もれた AGN は、理論的には、宇宙に非常に
たくさん存在すると予想されていたにもかかわ
らず、見つけるのが難しいため、ほとんど見つ
かって来ませんでした。
埋もれた AGN からのエネルギー放射のほと
んどは、一度塵に吸収され、赤外線で熱再放射
されます。従って、特に強力で、光度の大きな
埋もれた AGN は、赤外線で明るい銀河(赤外
線銀河)の中に潜んでいるだろうと予想される
わけです。ただし、ガスや塵の中で星が一度に
非常に数多く生成されても、同じように赤外線
で明るく輝くため、両者を区別してやる必要が
あります。
その目的には、塵による吸収をあまり受けな
い波長での観測が必須になります。そのような
波長の一つに、3 マイクロメートル付近の熱的
赤外線があります。我々は、この波長帯で分光
観測すれば、塵に埋もれた AGN を、激しい星
生成と区別して見つけ出せることを、独自に
提唱しました。そして、国立天文台のすばる
望遠鏡に取り付けられた近赤外線撮像分光装
置 IRCS を用いて、赤外線銀河をこの波長帯で
分光観測する計画を立てました。すばる望遠
鏡のあるハワイ島マウナケア山頂は、標高が
4200m と高いため、地球大気による波長 3 マ
イクロメートル辺りの熱的赤外線の吸収が小さ
く、宇宙の暗い天体を高い感度で観測する目的
図 1:(左)ドーナツ状のガスや塵に囲まれた超巨大ブラックホール。活動的で非常に強いエネルギー放射をしている超巨大ブラッ
クホール(AGN)の場合、内側の塵は溶けてガスになってしまい、塵はある半径より外側から分布し始めます。図で、上方向か
ら見ている場合は、活動的な超巨大ブラックホールは塵に邪魔されずに見ることができます。横方向から見ている場合でも、上
下方向、ドーナツの外側に存在するガスが、活動的な超巨大ブラックホールからのエネルギー放射によって照らされて電離され
るため、可視光線の分光観測から、存在を認識することができます。図のクレジットは NASA/CXC/SAO。(右)塵とガスに埋
もれた、活動的な超巨大ブラックホール。中心の超巨大ブラックホールのすぐ外側のほぼ全方向に塵とガスが存在するため、可
視光線による分光観測では、もはや見つけることができません。ガスや塵は角運動量を持つため、それらの空間分布は、完全な
球対称ではなく、ある程度軸対称になると考えられますが、ガスや塵の総量が多ければ、薄い方向にも相当な量のガスや塵が充
満してしまいます。図は、石川直美(国立天文台・天文情報センター普及室)作成。
3
塵に埋もれた超巨大ブラックホールたち
において、地球上で最も適した場所です。
観測は 2002 年 3 月から 2005 年 5 月に渡
り、距離にして約 20 億光年より近くにある、
延べ 50 個以上の赤外線銀河の波長 3 ∼ 4 マ
イクロメートルの分光スペクトルを取得しまし
た。そして、上記の我々独自の手法を適用し、
明るい赤外線放射を作り出している塵の向こう
側のエネルギー源を調べました。その結果、約
半数において、これまでの他の波長の観測デー
タでは見つからなかった、埋もれた AGN の兆
候を見い出すことに成功しました(図 2)。特
にきれいな分光スペクトルの得られた赤外線銀
河に関しては、埋もれた AGN が、観測された
赤外線光度を支配していることを、定量的に確
認しました。つまり、宇宙には強力な埋もれた
AGN が数多く存在すること、従って、それら
の正しい理解が重要であることが明らかになっ
河のうち、いくつかにおいては、エネルギーの
高い硬 X 線の観測からも、埋もれた AGN から
の強い X 線放射が検出され、我々の手法、及
び、結果の信頼性が裏付けられつつあります。
本研究の成果は、2006 年 1 月 20 日発行のア
ストロフィジカル・ジャーナル誌に掲載された
ものです(第 637 巻、114 ∼ 137 頁)。
本観測は、最初の頃は、すばる望遠鏡の競争
率が激しくて、提案が採択されても少しの夜数
しかもらえず、かつ、天候にもあまり恵まれな
くて研究が進まず、焦りが募りました。しかし
ある時期、審査委員長が変わってから多くの夜
数がもらえるようになり、かつ天気も味方して
くれ、一気に観測データが取れました。ただし、
イタリアのグループが、我々の手法の有効性
に目をつけ、南米チリの VLT 望遠鏡を使って、
南天の赤外線銀河に適用しようとしているのを
たのです。より質量の大きなブラックホールほ
ど、より多くの物質を飲み込み、より明るいエ
ネルギー放射を作り出すことができます。今回
見つかった、赤外線銀河の塵の奥深くに埋もれ
た活動的な超巨大ブラックホールは、太陽の
1000 万倍以上の質量を持つと考えられます。
埋もれた AGN の兆候の見つかった赤外線銀
知っていました。本家として負けるわけにはい
きません。日本に帰国後、超特急でデータ解析
をし、論文を投稿しました。努力の甲斐あっ
て、彼らの 5 倍以上のサンプル数に基づく我々
の論文が、彼らより 2 週間ほど早く受理され、
astro-ph を通して成果を先に世界に公表でき
ました。ほっと胸をなでおろしています。
(b)
(a)
(c)
図 2 観測した赤外線銀河の例。
(a):ある赤外線銀河(IRAS 14060+2919)の赤外線の K バ
ンド(波長 2.2 マイクロメートル)での画像(左:10 角度秒
の視野、上が北で左が東)と、その赤外線 3 ∼ 4 マイクロメー
トルのスペクトル。波長 3.3 マイクロメートルに強い PAH 放
射が観測され、激しい星生成がエネルギー放射を支配している
と考えられます。
(b)
:別の赤外線銀河(IRAS 12127-1412)
の画像とスペクトル。
PAH 放射が見つからず、ダスト吸収フィーチャーが強いため、
埋もれた AGN がエネルギー放射を支配していると考えられま
す。エネルギー放射源の手前に、氷に覆われた塵、及び、覆わ
れていない炭素系の塵が存在すれば、波長 3.05、及び、3.4 マ
イクロメートルに、それぞれ吸収フィーチャーが観測されます。
(c):別の赤外線銀河(IRAS 17044+6720)の画像とスペク
トル。激しい星生成と、埋もれた AGN の両方が、エネルギー
放射に効いていると考えられます。本波長のスペクトルに基づ
きエネルギー源を区別する手法は、著者(今西)らによって確
立されたもので、観測した赤外線銀河の約半分近くが、(b)や
(c)の特徴を示します。
4
第1回SOLAR-B講習会報告
世話人代表:原 弘久
SOLAR-B は、宇宙航空研究開発機構宇宙科
学研究本部と国立天文台が海外のパートナー
と共に今年の夏期に打ち上げを目指して開発
している太陽観測用の科学衛星です。この衛
星に搭載される 3 つの観測装置 ( 可視光望遠
鏡、X 線望遠鏡、極紫外線撮像分光装置 ) によ
り、普段肉眼で見ることのできる太陽の表面か
らその上空にあるコロナまでを高い空間分解
能で詳細に観測して、コロナの生成機構を解
明することを大きな目標としています ( 詳細は
SOLAR-B 推進室のホームページをご覧くださ
い http://solar.nro.nao.ac.jp/solar-b/)。
この SOLAR-B で取得されるデータについ
▲講義風景。アンケートの結果は良好でした。
いるのか、という視点を基本として講義内容を
用意してもらいました。当日の講義の際には、
事前に用意した講習会テキストの冊子を参加者
に配布しました。この講習会テキストは、上記
の SOLAR-B 推進室のホームページから誰でも
取得することができます。
午前 10 時から午後 6 時まで続いた講習会の
後に回収したアンケート結果から、講義が全般
的に分かりやすく適当であったとの評価を得ま
した。講師の方々にテキスト原稿の校正を何度
もお願いした甲斐がありました。講習会中の質
問やアンケートを通して、講義内容の分かりに
くかった点や今後に期待したい内容などの参加
者の声を受けとることができましたので、2 回
目以降の講習会にはそれらを反映させていきた
いと考えています。そして、SOLAR-B が軌道
上に上がった後には、取得される科学データか
ら最大の成果をあげられるように着実に準備し
ていきたいと思います。
ての 1 回目の講習会を、国立天文台 SOLAR-B
サイエンスセンター主催、宇宙航空研究開発機
構宇宙科学研究本部 SOLAR-B プロジェクトと
学術創成研究「宇宙天気予報の基礎研究」( 代
表 : 柴田一成 ) との共催により、さる 2006 年
2 月 22 日に電気通信大学の講義室において開
催しました。参加者約 80 名の内訳をみますと、
太陽関連分野を研究している研究者や学生が 6
割、地球磁気圏関連分野が 2 割、その他は核
融合プラズマ、X 線天文学、公共天文台をはじ
めとする天文教育・普及関連の方々となってい
ました。今回の講習会では、観測装置を作って
いる側の発表でありがちな装置とその性能から
の説明をできるだけしないようにと心がけまし
た。研究者やポスドクからなる講師の方々には、
観測データを解析するユーザの立場に立って、
受け取るデータの中にどのような情報が入って
う す い
「N体シミュレーション雨水の学校」報告
出田 誠(天文シミュレーションプロジェクト)
のです。このような重力多体系を調べる方法の
一つとして、N 体シミュレーションが広く使わ
れています。N 体シミュレーションでは、天体
をたくさんの粒子で表現し、その粒子間の重力
相互作用を計算することで個々の粒子がどう動
き、全体として天体がどう進化していくか調べ
ることができます。近年の計算機の能力向上に
2005 年度の N 体シミュレーションの学校
が、2 月 15 日から 17 日の 3 日間、ニ十四節
気の雨水の時季に開催されました。
天文学では、銀河団、銀河、星団、微惑星
系、惑星リングなどといった重力多体系が研究
対象となっています。重力多体系とは、非常
にたくさんのより小さい天体から構成されてい
て、その進化が重力によって支配されているも
伴い、より多くの粒子を投入したより現実的な
5
シミュレーション初心者にターゲットを絞った
学校を開催しており、今回が 5 度目になりま
す。初日は 3 コマの講義を行い、重力多体系で
起こる基礎物理、N 体シミュレーション法の基
礎、さらには、GRAPE ハードウェアの仕組み
とその使い方について解説しました。2 日目は
実習を行い、cold collapse(星団が自分の重
力でつぶれていく)問題を例題にして、プログ
ラム作成からシミュレーションの実行、その解
析といった、実際の N 体シミュレーションの過
程を体験しました。3 日目は、実習のつづきと
して、前日に作成したプログラムの重力計算部
分を GRAPE を用いるよう改良し、銀河同士の
衝突実験を行いました。また今回の実習では取
り扱わなかった、N 体シミュレーションをより
効率よく行うための手法についての講義も行い
ました。
今回の学校には北は北海道から南は九州ま
で、全国各地から 15 名の生徒さんが参加しま
した。学部学生や、修士課程の人など若い人が
たくさん参加し、MUV ユーザの拡大が期待さ
れます。実習では放課後も遅くまでプログラム
のバグとの格闘が続きました。生徒さんは皆
さん優秀で、与えられた課題を着実にこなし
ていき、本学校の最終的な到達目標であった、
GRAPE を用いた銀河の衝突・合体シミュレー
ションを行うことができました。
今回も、総合情報棟二階の共同利用室を占有
して実習に使わせて頂きました。学校の開催期
間中はご不便をおかけしましたが、ご協力感謝
いたします。
● N 体シミュレーション雨水の学校スタッフ
牧野淳一郎、小久保英一郎、台坂博、武田隆顕、
斎藤貴之、荒木田英禎、出田誠
▲実習風景。「できたぜ !」。「う∼ん」。
計算ができるようになり、N 体シミュレーショ
ンは様々な天体の形成進化の研究に盛んに使わ
れるようになっています。
国立天文台天文シミュレーションプロジェ
ク ト で は、N 体 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 効 率 よ
く行ってもらうべく、重力多体問題専用計算
機 GRAPE(GRAvity PipE) シ ス テ ム の 共 同
利 用 を 行 っ て い ま す。GRAPE は N 体 シ ミ ュ
レーションの中でも最も計算量が多く時間の
かかる重力計算部分を高速に処理するための
ハードウェアです。この GRAPE システムは
三鷹キャンパス本館地下に設置されており、
MUV(Mitaka Underground Vineyard)と い
う 名 で ユ ー ザ に 親 し ま れ て い ま す。MUV で
は、GRAPE-5(無衝突系)と GRAPE-6(衝突
系)の二種類の GRAPE システムが運用されて
います。詳細については http://www.cc.nao.
ac.jp/muv/ をご覧ください。
N 体シミュレーションの学校は、N 体シミュ
レーションのおもしろさを知ってもらうととも
に、MUV ユーザの拡大促進を主な目的として
開催しています。2001 年度から毎年度、N 体
国立天文台Bee Project室コンペ 2005
報告笑
家 正則(光赤外研究部)
●ここ数年、三鷹キャンパスが緑の森で覆われる季節になるとスズメバチの活動が活発化し、夏には危険
防止のために巣の駆除が行われています。そこで、三鷹有志の調査グループは、2004 年に手弁当で Bee
Project を立ちあげ、その生態の解明に取り組んできました(『国立天文台ニュース』No.140、5 ページ)。
昨 2005 年夏には、2004 年の調査結果を受けて、より大規模なスズメバチの生態調査も行われました。以
下は、その報告記事です。今年もスズメバチの活動シーズンが始まりまるにあたり、三鷹キャンパス・ス
タッフ各人の危険防止に役立てていただければと思います。(編集委員会)
★[追記]2006 年度はプロジェクト解散のつもりでいましたが、NHK 番組「難問解決 ! ご近所の底力」か
ら協力依頼があり、今夏三鷹キャンパスを舞台に最優秀トラップを競う、全国大会へと発展することになり
ました。天文台代表は、以下に紹介する野口レセピとさせていただきました。乞、ご期待。(家 正則)
6
▲▶ 2004 年度の成果(上)と
2005 年度の成果(右)
▲捕獲数の分布図
平成 16 年度に Bee Project 室で試験的に行った
スズメバチ駆除作戦は一定の成果を挙げた(『国立天
文台ニュース』No.140、5 ページ)。今年度はコン
ペ形式にして規模を拡大して実施したので、その概
要を報告する。本年度は研究テーマとして、
(1)前年度より多数のスズメバチを捕獲し、構内か
ら一掃すること、
(2)スズメバチの酒の好みを学術的に解明し、駆除
の効率化を図ること、
(3)捕獲したスズメバチの分布から巣の位置を逆推
定すること、
という大変野心的かつ学術的な目標を設定した。
(ⅰ)まず、目的(2)のため、プロジェクト室側
で、5 種類のスズメバチ誘引エキスを用意した。内
訳は白ワインをベースにしたもの 8 本、焼酎ベース
4 本、日本酒ベース(菊正宗 7 本、松竹梅 4 本、久
保田 4 本)であった。8 月 1 日の昼休みに 19 名の
ボランティアの参加を得て、29 本のスズメバチト
ラップを天文台構内に各自で設置し、使用エキス名
と設置場所を登録してもらった。自家製エキス持参
の参加者も 2 名いた。所用経費は 1 万円弱であり、
ボランティアの寄金で実施した。
回収は天文台特別公開日前の 9 月 26 日の昼休み
に行った。従って設置期間は 56 日間である。台風
やカラスのいたずらもあり、7 本は空振りに終わっ
たが、合計 148 匹(平均 5.1 匹)を捕獲した。昨年
度の 10 月 10 日設置、11 月 26 日回収、設置期間
47 日間、5 本で 10 匹(平均 2.0 匹)に比べると、
大きな成果と言えよう。もっとも、今年も 11 月に
入ってからはスズメバチの姿を見なくなったので、
昨年度の捕獲期間は実質的には 20 日間程度であっ
たと考えると、効率には大差が無いのかもしれない。
また、今年度は捕獲作戦実施の前にスズメバチの巣
がテニスコートの近くで見つかり、業者が駆除した。
また 10 月にもう一つ見つかった巣を駆除したが、
こちらは専門家の鑑定ではジバチの巣をスズメバチ
が襲っているところだったらしい。
さて、今年度のコンペの大物捕獲賞を勝ち取った
のは天文情報センターの青木真紀子さんの焼酎ベー
スのトラップであった。体長 4cm 以上の大物のス
ズメバチ 10 匹を含む 23 匹を一網打尽にした。他の
トラップから離れた位置に設置した野口さゆみさん
の自家製トラップ(蜂蜜入り)には大物は少なかっ
たが最多賞となる 35 匹が捕まった。本プロジェク
ト成果回収後の 10 月の間も、スズメバチはよく見
かけた。今年の作戦で激減したという感触は未だ無
いので、実際に構内を飛び回っていた総数は捕獲し
た総数より 1 桁は多いと思われる。一掃までには更
なる努力が必要のようだ。
(ⅱ)さて、スズメバチの好むお酒があるかとい
う研究課題については、(捕獲数/本数)でみると、
高級酒久保田ブレンド(13 / 4)、松竹梅ブレンド
(12 / 4)、菊正宗ブレンド(26 / 8)、焼酎ブレン
ド(25 / 4)、白ワインブレンド(37 / 8)となっ
た。率からは清酒より焼酎や白ワインの成績が若干
良いようだが、あまり有意な差とは言えない。今回
の調査では「ハチには酒の違いは分からない」とい
うのが、順当かもしれない。この研究課題の答えを
より学問的に出すには、より多くのスズメバチを「生
け捕り」にした上で、どこに集まるかを比較調査す
る必要があろう。本腰を入れてやるには命がけでや
る覚悟が要るようだが、博士号が取得できるかもし
れない。
(ⅲ)捕獲数の分布は上図のようになった。この分
布から巣の位置を逆に求めるには、スズメバチの巣
の位置を仮定し、スズメバチの行動半径を R km と
したときのスズメバチの存在確率分布を求め、実際
に捕獲されたデータと比較してカイ自乗検定すれば
よい。行動半径は数百 m から 2km 程度と言われて
いる。行動半径の 10 倍くらいの領域にトラップを
展開すれば、スーパーコンピュータを駆使してこの
方法で巣の位置をピタリと当てるなんて研究ができ
るかもしれない。モデルをより精緻にするには、ト
ラップの種類による誘引ファクターなどを考慮しな
ければならないであろうが、天文学の理論研究者に
は易しい問題のように思える。こういうアプローチ
の研究は昆虫学会に前例は無いのだろうか ?
余談になるが、回収時にトラップに不気味なもの
が入っているのが複数あった。それは、白いクラゲ
の切れ端のようなもので、2cm 角の入り口からは
入れないような大きさで、エキスの中でゆらゆらし
ていたものである。最大のものでは、厚さ約 7mm。
解体したトラップの底に四角いはんぺんのように固
まっていた。国立科学博物館に鑑定を御願いしたと
ころ、このはんぺんエーリアンの正体は、「富栄養価
で成長した菌類のコロニー(紅茶キノコのようなも
の)」であろうとのことであった。
ま た、Bee Project の 話 を 共 同 研 究 中 の 理 化 学
研究所の所員に話したところ、理化学研究所では、
もっと本格的な研究がなされ、その成果が女子マラ
ソンの Q ちゃんが宣伝に登場する体脂肪燃焼飲料
のヴァームの開発につながったのだということをう
かがった。ヴァームは、スズメバチアミノ酸混合物
(Vespa Amino Acid Mixture)からの命名なのだそ
うだ。我々のプロジェクトの成果とは較べものにな
らない立派な成果。さすが理研ですね。
7
立花隆+自然科学研究機構 自然科学の挑戦シンポジウム
「見えてきた! 宇宙の謎。生命の謎。脳の謎。 科学者が語る科学の最前線」報告
縣 秀彦(天文情報センター)
自然科学研究機構は、自然科学に関する 5 つ
の研究機関、すなわち国立天文台、核融合科学
研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所、分
子科学研究所から成り立っている創設 2 年目の
若い研究機関だ。いま、これらの研究現場では、
研究者たちがどのような研究にどう取り組んで
いるのか ? また、自然の謎はどこまでが解明
され、いま私たちの前に横たわる最大の謎とは
いったい何なのか ? 同じ機構のメンバーでも、
隣の研究所は何するところぞ ? といった感じの
職員も多いのではないだろうか ? 関係者でさえ
そうなのだから、市民からの認知は全く無いも
同然である。これではいけないと、平成 17 年
マについて、その到達点を自然科学研究機構を
代表する研究者たちが生の声で熱く語った前半
の部も、また、後半の自然科学研究機構が一
丸となって取り組んでいる「イメージング・サ
イエンス」の研究紹介もとても興味深い内容で
あった。特に、パネルディスカッションの最後
で、永山氏が、「なぜ、国立天文台はここまで
発展できたのか ? その広報・普及の戦略とは何
か ?」と海部台長に問う場面があり、海部台長
の「野辺山の 45 メートル電波望遠鏡を建設す
るにあたり、税金を使うのだから成果を等しく、
子どもたちからお年寄りまで国民全員に還元し
たいと決意した。すばる望遠鏡を始め、すべて
12 月に開催された理科年表シンポジウム(3
月号記事参照)で意気投合した海部宣男台長
(当時)と立花隆氏(自然科学
研究機構経営協議会委員)が
中心となって、表記のシンポ
ジウムを平成 18 年 3 月 21 日
( 火 ) の 10 時 00 分 ∼ 18 時
45 分に、大手町サンケイプラ
ザ 4 階ホールを会場に実施し
た。
慌ただしい年度末の春分の
日、丸一日のハードな内容の
シンポジウムに、いったいど
れだけお客さんが来てくれる
か心配されたが、インターネッ
トでの参加申し込みは募集開
始早々の 3 月 9 日には 800 名
を越え、申し込みを慌てて打
ち切るほどの人気で、当日も
会場は 500 名を越える参加者で溢れ、立ち見
が出るほどの盛況ぶりであった。何と言っても
立花隆氏のネームバリューと、彼が中心となっ
てコーディネートしたプログラムの面白さが、
これだけの客を呼べたのだろう。自然科学研究
機構としてはねらいがズバリと当たってニンマ
リといったところだろうか。国立天文台として
も、いままでの講演参加者とは異なる客層に自
分たちの研究をアピールすることができ、意義
深いイベントであったと思われる。
当日のプログラムは、次ページのかこみの通り。
「宇宙」「生命」「脳」という科学の三大テー
の研究で国立天文台はそのような理念で活動し
ている」と答えるくだりは、国立天文台の広
報・普及を担当する一個人
として、胸が熱くなる思い
であった。その会場の盛り
上がりを受けて、立花隆氏
は、「国は儲かる科学ばか
り支援していたら、純粋科
学は絶滅してしまう。この
ままでは国家百年の愚行と
なってしまう。基礎研究の
大切さをもっと強く研究者
たちは国に訴えるべき」と
結んだ。
講演会場の隣には、各研
究所と総合研究大学院大学
の展示ブースが設営され、
パネルや模型、映像資料等
が公開された。多くの参加
者が各研究所のパンフレットを持ち帰ってい
た。また、さらに国立天文台では 4 次元デジ
タル宇宙シアター(4D2U・1 面簡易版)を 3
階に設置し、整理券を配布し、夜遅くまで合計
350 名もの方に偏光立体視方式での最新宇宙の
映像を楽しんでもらった。
今回のシンポジウムは、自然科学研究機構企
画連携課が中心となり、東京大学サイエンス・
インタープリタ養成講座の 10 名の大学院生
(通称立花ゼミ)のみなさん、(株)クバプロ、
国立天文台天文情報センターの協力で運営され
た。関係者のみなさんに深く感謝したい。
8
当日のプログラム
挨拶「自然科学研究機構とは何か」
自然科学研究機構 志村令郎機構長
本日のシンポジウムのコンセプトと概略説明
プログラムコーディネーター 立花隆
「見えてきた ! 宇宙の謎、宇宙生命の謎」
国立天文台 海部宣男天文台長
「見えてきた ! 生命の謎 生物はどこからきてどこに行く
のか」
基礎生物学研究所 長谷部光泰教授
「脳は不思議がいっぱい」
生理学研究所 柿木隆介教授
「フェムト秒レーザーがとらえる脳の秘密」
生理学研究所・東京大学 河西春郎教授
パネル「21 世紀はイメージング・サイエンスの時代」
総論「科学は見る時代から見えないものを観る時代へ」
▲今回のシンポジウムのプログラムコー
ディネーターは立花隆氏。
司会 岡崎統合バイオサイエンスセンター 永山國昭教授
「蛍光ラベル法で見た生物の発生過程」
基礎生物学研究所 田中実助教授
「ナノの世界まで光で見えてしまう近接場光学」
分子科学研究所 岡本裕巳教授
「位相差電子顕微鏡で見えてきた生き物のナノ世界」
生理学研究所 永山國昭教授
「ボケもゆらぎもキャンセルしてしまう補償光学」
国立天文台 家正則教授
「イメージング計測が解明した核融合プラズマの謎」
核融合科学研究所 長山好夫教授
★パネルディスカッション
総括と予告
立花 隆
▲裏方を支えた立花ゼミの学生さん。シンポ
ジウムの実況ネット配信にもトライ。
▲基調講演の第一弾は、国立天文台の海 ▲ 生命の謎 について語るのは、基礎生
部台長(当時)による 宇宙の謎 の最前線。 物学研究所の長谷部教授。
▲イメージサイエンスをキーワードにし
た第二部。国立天文台の家教授は、補償
光学について講演。
▲記念すべきシンポジウムは、志村令郎機
構長の挨拶でスタート。
▲そして、生理学研究所の柿木隆介教授は
脳の謎 をテーマに。
▲研究所の研究成果の紹介が一目でわかるパ
ネル展示スペースも大人気。
国 立 天 文 台 は、
携帯型 4D2U 装
置(左)を持ち込
み、別室で披露。
見学希望者で長
蛇の列(下)。
▲ 第 二 部 の 後 半 は、5
研究所のメンバーに
よるパネルディスカッ
ション。自然科学とい
う大きな括りで、各研
究所の連携の道筋を議
論しました。
▲大入り満員の会場。立ち見も含めて 500 人以上の参加者が
あ り ま し た。 な お、 シ ン ボ ジ ウ ム の 詳 し い よ う す は、http://
matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/sympo/ をご参照ください。
9
● 第 15 回
渡邊 鉄哉さんに
東京タワーから太陽遷移層へ
コロナ加熱の謎に迫る極紫外線望遠鏡
いよいよ打ち上げが迫ってきた太陽観
測衛星「SOLAR-B」。今回は、その準
備で忙しい太陽天体プラズマ研究部の
渡邊鉄哉さんにお話を伺いました。
◀ 1991 年、太陽観測衛星 SOLAR-A
「 よ う こ う 」 を 打 ち 上 げ た ISAS の
M-3S -Ⅱ 6 号機の写真とともに。
●プロフィール
渡邊 鉄哉(わたなべ・てつや)
●東京タワー
太陽天体プラズマ研究部主任。
東京生まれ。妻と二人の息子がいる。家族で私だ
けがバドミントンをせず「ハミゴ」(東京人には
理解不能なターミノロジー)にされている。キー
ル(西ドイツ:当時)滞在中に禁煙、その証にと
口ひげを生やしてから早二十余年。白髪が目立っ
てきたので、皆に「もうやめたら」と言われてい
る。趣味は将棋、読書、「懐メロ」を唄う̶̶仕事
がら「下町の太陽」をレパートリーからはずすこ
とができずにいる。
「私は、生まれも育ちも東京の北区で、今もそ
こに住んでいます。下町ですから、昔は高い建物
がなく、空が開けていたので、星空もけっこうよ
く見えました。高校生のとき、手に入れた口径
10cm の天体望遠鏡のピントを合わせるために、
東京タワーのライトを目標にしたことを今でもよ
く覚えていますよ」。
渡邊さんの表情が昔懐かしそうにほころんだ。
「私の場合、天文の研究者になろうと決心した
きっかけがふたつあって、そのひとつが高校 1 年
生の秋にあった皆既月食です。1968 年 10 月 6
日の夜のことです。中秋の名月が皆既になるとい
うので、事前に望遠鏡を買い、準備を整えてワク
ワクしながらその夜を待ちました。結局曇って見
えなかったのですが、それ以来、星の世界にのめ
りこむようになったのです。
月食というダイナミックな天文現象から興味を
もったからかもしれませんが、最初から観望的な
ことには関心がなくて、小さな望遠鏡でも、何か
真似ごとでもいいから観測的に意味のあることを
やりたいなと思って、選んだのが長周期変光星の
眼視測光観測でした。地味なテーマですが、高校
生レベルのアマチュアでも気軽にはじめられて、
ちゃんと観測データがたまって行くプロセスも体
験できる。これはかなりの快感でした(笑)。私
の性分からいって、たとえば、同じ観測的なテー
マであっても、彗星の探索などは、苦労が水泡に
帰す恐れも大きいので、あまりやる気がしません
でしたね」。
高校生のころから、変光星のサーベイに取り
組み、地道な観測者スピリットを培った渡邊さん
は、その後、希望通り天文学の道に進み、分光観
測による恒星大気の研究でプロの研究者としての
スタートを切った。
●飛び道具
そんな 堅実な 渡邊さんが天文台で最初に関
わった研究が、東京大学宇宙航空研究所(当時)
が打ち上げた最後の衛星である太陽 X 線観測衛星
「ひのとり」搭載用の軟 X 線分光器の開発であった。
「天文業界の一部では、ロケットで飛ばす観測
衛星などのことを 飛び道具 と呼んでいます
(笑)。最近のスペース天文学の成果を見れば明ら
かなように、うまく事が運べば、その威力は絶大
です。でも、ロケットの打ち上げが失敗したり、
衛星がトラブルに襲われても修理ができないと
いった大きなリスクと背中合わせなのも、スペー
ス天文学の宿命です」。
̶̶何年も精魂傾けて作った観測衛星が、一瞬に
してパーになる恐れもあるわけですね。
「そうです。しかも、当時は、日本のスペース
天文学がようやく本格化し始めたころのことです
から、未知の部分も多くて、そこは手探りで進む
しかありません。ただ、太陽のような恒星大気の
物理を研究する上で、いずれ、大気圏外で紫外域
をくわしく観測することが必要になるだろうとい
10
天文情報センターの出版担当
イラスト/藤井龍二
満月顔がトレードマーク
▶▼右は、SOLAR-B のイラスト。
極紫外撮像分光装置の他に、可視
光磁場望遠鏡、X 線望遠鏡の 3 本
の観測装置が搭載され、残された
太陽物理の謎の解明に挑む。下は、
渡邊さんの この一冊 。「畑中武
夫先生の『宇宙空間への道』です。
岩波新書の著作では、『宇宙と星』
も有名ですが、私はこちら。やっ
ぱりアポロのインパクトは強烈で
した ( 渡邊さん )」。
◀▲左は、渡邊さんが制作し、
「ようこう」に
搭載された軟 X 線分光器の開発風景。左中
のヒゲの人物は若き日の渡邊さん。上は、
SOLAR-B・EIS(極紫外撮像分光装置)計
画のロゴがデザインされたカップでコー
ヒ ー ブ レ イ ク。EIS は、JAXA / ISAS と
国立天文台を中心に、アメリカ、イギリス、
ノルウエイの国際協力で進められている。
う見通しがあったので、まずはその第一歩として、
「ひのとり」の開発チームに加わったのです。お
そらく、国立天文台でスペース天文学に関わる研
究者の人事は、私が最初のはずです。それまで堅
実な研究志向だった私にとっては、かなりバクチ
的なテーマに取り組んだといえるのかもしれませ
ん。なにしろ飛び道具使いですからね(笑)」。
1981 年に打ち上げられた「ひのとり」は、そ
れまで可視光と電波でしか観測できなかった太陽
の姿を、X 線という第 3 の目で捉えることに成功
した。そこで、「生データで論文がバンバン書け
る(渡邊さん)」太陽観測衛星の威力に感じ入っ
た渡邊さんは、1991 年に打ち上げられ、太陽物
理分野の長年の謎であったフレアの発生メカニズ
ムをほぼ解明した「ようこう」でも、軟 X 線分光
器の開発メンバーとしてミッションの中心的な役
割を担った。そして 2006 年、「ひのとり」「よう
こう」に続く 3 機目の太陽観測衛星「SOLAR-B」
が、いよいよこの夏に打ち上げられる。そこに搭
載される望遠鏡のひとつが、渡邊さんが手塩にか
けて開発した極紫外線望遠鏡(極紫外撮像分光装
置)である。
その仕組みは、よくわかっていません。鍵を握る
のは遷移層の観測ですが、そこを一気に見通すこ
とができるのが、この極紫外線望遠鏡なのです。
分光器も積んでいるので、プラズマの運動をくわ
しく観測しながら、その加熱のメカニズムの全容
を解き明かせるのではないかと期待しています。
私にとって、SOLAR-B は、3 代目の太陽観測
衛星となりますが、このシリーズは、代を重ねる
ごとに、より一般性のある観測テーマを目標に、
さまざまな分野の太陽研究者が参加できる広がり
のあるミッションに発展しています。その点も、
とても嬉しいことですね」。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あ、私が天文学を志したもうひとつのきっかけ
は、1968 年の皆既月食の翌年の夏のこと。忘れも
しない 7 月 21 日。アポロ 11 号の月面着陸です」
。
特大の 飛び道具 の壮挙に興奮冷めやらぬ夏の
夕方。観測準備を整えて夜を待つ渡邊さん。未来
を宇宙に賭ける決心をしたその瞳に、下町に沈む
夕陽は、とても大きく映っていたに違いない。
● 3 丁目の夕陽
̶̶ついに、念願の紫外線望遠鏡を宇宙に打ち上
げる日が近づきました。
「はい。紫外線望遠鏡は、なかなか技術的に制
作がむずかしいのですが、ようやく希望の性能の
ものを作ることができました。この望遠鏡でねら
うのは、ずばり、太陽物理に残された数少ない謎
のひとつ、コロナの加熱機構の解明です。彩層
から上空わずか 100km の遷移層を通り抜ける間
に、プラズマは 1 万度から 100 万度、ときには
1000 万度オーダーに劇的に加熱されるのですが、
▲渡邊さんは北区の教育委員も務め、地域の理科教育にも
関心が深い。近所には、推理小説家・内田康夫氏の生家も
あり、浅見光彦シリーズは北区の観光の目玉でもある。研
究室の扉に観光リーフレットを発見した推理小説ファンの
山下出版係長 ( 左 ) と話が弾む渡邊さん。
11
平成 18 年度共同研究等採択一覧
●共同研究
所 属
代表者
研 究 課 題
情報通信研究機構無線通信部門
梅原 広明
帯電微小天体集団の力学
日本原子力研究開発機構
先端基礎研究センター
千葉 敏
第一世代星の r 過程における核分裂サイクルの役割と初期宇宙
の化学進化の解明
高知工科大学
山本 真行
流星発光における短痕過程に関する総合的研究
核融合科学研究所
加藤 隆子
LHD を用いた Solar-B のための非平衡プラズマに対する
プラズマ診断の研究
北海道大学大学院理学研究科
林 祥介
天体流体運動の理解のための数値モデル開発と基礎実験
長野工業高等専門学校
大西 浩次
Space-Ground 長基線観測によるマイクロレンズ現象の視差測定
福岡教育大学
金光 理
すばる望遠鏡が撮像した銀河画像の教育への活用に関する共同研究
京都大学大学院理学研究科
山田 良透
高精度赤外線位置天文観測衛星(JASMINE)のための基礎開発
東京工業大学大学院理工学研究科
河合 誠之
ガンマ線バーストの可視・近赤外残光の迅速な観測
●研究集会
所 属
代表者
研 究 課 題
国立科学博物館
洞口 俊博
東京大学大学院理学系研究科
河野孝太郎 我々の銀河系と近傍銀河のマッピング
広島大学宇宙科学センター
大杉 節
多波長・多モード連携観測で探る高エネルギー天体現象
広島大学宇宙科学センター
川端 弘治
光学赤外線天文学連絡会シンポジウム
国立天文台
大向 一行
第 19 回理論懇シンポジウム
国立天文台
濵名 崇
超広視野撮像・分光器で切り拓く銀河天文学と観測的宇宙論
名古屋大学大学院理学研究科
光田 英司
第 36 回天文・天体物理若手の会 夏の学校
群馬大学教育学部
岡崎 彰
偏光分光観測で探る活動的連星の物理ワークショップ
国立天文台
渡部 潤一
ほうおう座流星群大出現 50 周年記念 太陽系小天体シンポジウム
神戸大学理学部
相川 祐理
星間物質ワークショップ
京都大学大学院理学研究科
長田 哲也
赤外線サーベイ研究会
筑波大学大学院数理物質科学研究科
小沢 顕
R プロセス元素組成の統合的理解
●共同開発研究
所 属
FITS 画像教育利用ワークショップ
代表者
研 究 課 題
東京大学大学院理学系研究科
宮田 隆志
熱赤外観測用の多層メタルメッシュフィルターの開発
北海道大学大学院工学研究科
馬場 直志
広ダイナミックレンジ CCD の開発
東京大学地震研究所
高森 昭光
能動防振用小型高感度加速時計の研究開発
法政大学工学部
春日 隆
冷却受信機を目的とした InP HEMT による
MMIC デバイスの開発(基礎定数の確立と設計)
京都大学大学院理学研究科
岩室 史英
京大新技術望遠鏡位相測定カメラの基礎技術開発
情報通信研究機構電磁波計測部門
瀬田 益道
南極 THz 望遠鏡プロトタイプ搭載用高感度受信機の開発
名古屋大学全学技術センター
増田 忠志
超精密加工機を用いた脆性光学部材の切削および研削加工技術の開発
東北大学大学院理学研究科
服部 誠
マイケルソン型ボロメトリック天体干渉計の
ミリ波サブミリ波天文学への応用
京都大学大学院理学研究科
菅井 肇
8 メートルクラス望遠鏡における可視光補償光学「面分光」の実現
東北大学大学院理学研究科
市川 隆
南極 2m 赤外線望遠鏡のためのサイト調査と基礎技術開発
新潟大学工学部
佐藤 孝
スペース重力波アンテナ DECIGO のためのレーザー光源の開発
12
■新任職員
■
固武 慶(こたけ けい)
所属:理論研究部
出身地:神奈川県
2006 年 4 月より理論研究部上級研究員に着任しました。研究テーマは、超新星爆発とそれに関連する高エネルギー天体
現象で、主に数値シミュレーションを用いた研究を行なっています。国立天文台という素晴しい研究環境を活かして、今
後もよりアクティブに活動していく所存です。また超新星は、ブラックホール、重力波、ニュートリノなど比較的、一般
の方にも興味を持って頂けそうな側面を持っています。こういった点を活かし、天文学の普及にも尽くしていきたいと考
えております。尚、趣味は料理で、テレビの料理番組等を録画しておいて、土曜夜に一気に見、日曜に ( 妻の助けを借りて )
実践しています。どうか、今後ともよろしくお願いいたします。
■
平野 彰(ひらの あきら)
所属:事務部総務課総務係長
出身地 : 東京都
2006 年 4 月 1 日付けで、国立大学法人電気通信大学から事務部総務課総務係に採用となりました平野と申します。
電通大で採用されて、今回初めて他機関で勤務することになり不安なことも沢山ありますが、一つ一つ一生懸命仕
事をして、1 日でも早く天文台に慣れていきたいと思います。台内で見かける機会がありましたら、お気軽にお声
をかけて下さい。どうぞ、よろしくお願いいたします。
■
所属:事務部財務課総務係主任
出身地 : 長野県
古畑 知行(ふるはた ともゆき)
2006 年 4 月 1 日付けで事務部財務課総務係に着任しました古畑と申します。国立天文台には三年ぶりに戻ってま
いりましたが、以前と比べてあらゆる事が様変わりしていて戸惑うばかりです。現在は初めての勤務地の様な感覚
で仕事をしておりますが、1 日でも早く皆さんのお役に立てるように頑張っていきますのでよろしくお願いします。
■
水島 暁(みずしま さとる)
所属:事務部財務課調達係主任
出身地 : 東京都
平成 18 年 4 月 1 日付けで、事務部財務課調達係に赴任しました水島と申します。3 月まで信州大学に勤務してお
りました。国立天文台に来た当初は、( 今もですが ) その敷地の広さと、緑の多さに圧倒されましたが、このよう
な恵まれた環境の中で働けることを感謝し、1 日でも早く仕事に慣れていきたいと思います。仕事ではなかなか顔
を合わす機会も少ないかも知れませんが、少しでも皆さんのお役に立てるように頑張りたいと思いますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。
■
■
加藤 弘已(かとう ひろみ)
所属:事務部財務課調達係主任
出身地 : 東京都
2006 年 4 月 1 日付で、東京学芸大学から財務課調達係に赴任しました加藤弘已と申します。東京農工大学に 1996 年
10 月に採用になり、東京学芸大学に 2000 年 4 月に人事交流で異動して、永久雇用となりましたが、このたび人事交流
で天文台へ異動してきました。学芸大では現在の職務内容と同じく契約課に 6 年間所属しておりました。契約業務 6 年間
の経験を生かせれば良いのですが、天文台と学芸大とでは、予算の規模がはるかに上回るので少々不安な面も正直当初は
ありました。しかし、こちらに赴任してみたら、まわりの方々はみなさんいい方ばかりなので安心しました。また、天文
台は自然に恵まれた環境なので仕事に疲れたときに澄みきった空気に癒されます。一日も早く仕事を覚えて皆様のお役に
立ちたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
所属:事務部財務課司計係
出身地 : 東京都
佐藤 陽子(さとう ようこ)
4 月 1 日付で財務課司計係に着任しました、佐藤陽子です。天文台に来る前は信州大学で経理・調達事務をしていました。久しぶりに東
京に戻って驚いたのは、人が多いこととスピードが速いこと(話す速さや仕事の速さなど、いろいろな面で)です。私もついていかなく
てはと焦ってしまいますが、そんななか、天文台の敷地にある木々に心を癒されています。最近は天文台裏でバスを降りて、台内を散歩
しながら出勤するのが楽しみとなっています。天文台についても司計の仕事についても分からないことばかりですが、早くみなさんの一
員として認めてもらえるようがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
■
日川 由恵(ひかわ ゆきえ)
所属:事務部総務課総務係
出身地:千葉県
2006 年 4 月 1 日付けで総務課総務係に新規採用されました日川由恵です。仕事を始めてから 2 ヶ月がたち、片道
2 時間かかる通勤にも大分慣れてきました。現在は先輩職員の方たちのお手伝いをしながら、身分証の作成などの
仕事をしています。総務係にはまだまだ多くの仕事があるので、みなさんに教えていただきながらこれから一所懸
命仕事をおぼえていきたいと思っております。台内で見かけた際は、気軽に声をかけてください。いろんな方と知
り合って、楽しく仕事をしていきたいと思っております。ご迷惑おかけすると思いますが、宜しくお願いいたします。
13
■
■研究員
■
■
髙見 正咲(たかみ まさき)
所属:野辺山宇宙電波観測所会計係
出身地:神奈川県
高見と申します。能力、経験とも不足している自分が何とかやっていけるのは、周りの皆様の暖かい支援のお陰です。
ありがとうございます。生まれが旧宇宙研 ( 神奈川県相模原市 ) のそばだったこともあり、子供のころは夏の一般
公開には見学に行ってました。小さなことですが、意外に宇宙に縁がある人生かな ? と思う今日この頃です。前任
地である信州大学とは別の形ではありますが、我が国の科学、教育及び研究の発展に微力でも尽くせるのは大きな
喜びです。野辺山の雄大な自然に負けぬよう、粉骨砕身、猪突猛進で日々精進していく所存ですのでよろしくお願
いします。
所属:ELT プロジェクト室
出身地:青森県
秋田谷 洋(あきたや ひろし)
この 4 月から ELT プロジェクト室の研究員となり、東北大から三鷹に移って参りました。将来の天文学の発展の上で重要
な計画の推進に、初期の段階から深く関わることとなり、身の引き締まる思いです。自身の力を付けつつ、基礎的な研究
開発をしっかりと積み重ねることで、プロジェクト全体の良い成果に繋げていきたいと考えています。私個人は、偏光分
光という手法に着目した前主系列星の観測研究を行っています。我々が製作し現在 UH2.2m 望遠鏡にて使用している観測
装置 LIPS( りっぷす ) は、エシェル分光器を備えた世界的にもユニークな高分散偏光分光装置です。その利点を生かした
研究成果を挙げていければと思います。
今田 晋亮(いまだ しんすけ)
所属:Solar-B 推進室
出身地 : 埼玉県
2006 年 4 月 1 日より Solar-B 推進室で研究員としてお世話になっています。着任前は、東京大学の地球惑星科学
専攻で大学院生として研究を進めてきました。博士課程では地球磁気圏尾部における磁気リコネクションの高エネ
ルギー電子加速の研究をおこなってきました。これからは新しく太陽をターゲットとして、今年の夏期に打ち上げ
予定の Solar-B 衛星のデータを用いて、フレア、コロナ加熱などの物理に挑んでいきたいと考えています。今後と
もどうぞよろしくお願いします。
■
蒲原 龍一(かもはら りゅういち)
所属:水沢 VERA 観測所
出身地 : 佐賀県
2006 年 4 月 1 日より水沢 VERA 観測所で研究員としてお世話になっています。鹿児島大学の出身ですが、博士課程の時
から天文台でお世話になっていて最近やっと醤油の辛さにも慣れてきました。学生時代は晩期型星の観測的研究を主にやっ
てきましたが今後はそのときの経験をいかしながら VERA プロジェクトの研究課題のひとつであるミラ型変光星の周期光
度関係の研究に貢献していければと思っています。最先端の研究成果に常に触れることができ、さらに自然豊かな天文台
はキャンプと料理が趣味な私にとっては魅力的な場所です。今後ともよろしくお願いします。
■
川勝 望(かわかつ のぞむ)
所属:理論研究部
出身地 : 東京都
2006 年 4 月 1 日付けで理論研究部に赴任いたしました。着任前は、イタリア(トリエステ)の International
School for Advanced Studies(ISAS/SISSA)で 2 年間研究員を勤めました。専門分野は活動銀河中心核で、特
に超巨大ブラックホール成長と銀河進化の関係に興味を持っています。最近は、銀河中心核からのジェットの研究
にも取り組んでいます。研究の合間にテニスを始めたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
■
菊池 冬彦(きくち ふゆひこ)
所属:RISE 推進室
出身地:岩手県
2006 年 4 月より RISE 推進室で研究員としてお世話になっています。2007 年度に打ち上げが予定されている月
探査計画 SELENE に携わり、特に超長基線電波干渉計 (VLBI) 技術を月周回衛星の位置決定に応用し、月重力場を
高精度で推定するための研究をしています。どうぞ宜しくお願いします。
■
■
関口 朋彦(せきぐち ともひこ)
所属:ALMA 推進室
出身地:北海道
2006 年 4 月より ALMA 推進室の研究員としてお世話になっております。これまで国立天文台研究員、学術振興会特別研
究員を経てこのたび出戻りとなりました。「出てないでしょ」って突っ込まれそうですが。その前の総研大博士課程の時分
(1998 年 ) には一度大学院を休学をして European Southern Observatory(ESO チリ ) の学生奨励研究員として、2 年 5 ヶ
月間、チリの首都サンチアゴに住んでおりました。その時訪れたイースター島やマチュピチュ(ペルー)の遺跡めぐりは
今でも良い思い出です。太陽系小天体 ( 彗星核や小惑星など ) の観測研究をしていますが、スキーやビールの方が好きです。
みなさまどうぞよろしくお願いします。ムーチョ グスト。
西山 正吾(にしやま しょうご)
所属:光赤外研究部
出身地:奈良県
今春名古屋大学を卒業し、光赤外研究部の研究員となりました。昨年度までは南アフリカ天文台にある近赤外線望
遠鏡を使った観測・研究を行っていました。毎年 5 ∼ 7 月ごろ南アフリカに観測に行き、夜空にひろがる天の川を
眺めるのが私の楽しみのひとつです。今年も行きます。また、田舎出身の私にとって東京の生活はすこしゆううつ
でしたが、初めて訪れた桜の季節の天文台にずいぶん癒されました。夕方構内を散歩している人物がいたら、それ
が私かもしれません。
14
■
美濃和 陽典(みのわ ようすけ)
所属:ハワイ観測所
出身地:岐阜県
4 月よりハワイ観測所プロジェクト研究員となりました美濃和と申します。着任前は、東京大学天文学専攻の大学
院生で、国立天文台光赤外、ハワイ観測所、東大天文センターと居場所を転々としてきました。大学院では、主に
すばる望遠鏡の補償光学を用いて、高解像度撮像による遠方銀河の研究をしてきました。これからも、引き続き銀
河の形成と進化の研究に取り組んでいきたいと思います。また、現在開発中のすばるレーザーガイド補償光学系を
用いた、新しいサイエンスを考えていきたいと思います。よろしくお願いします。
■
山田 真澄(やまだ ますみ)
所属:ALMA 推進室
出身地:山梨県
2006 年 4 月 1 日から ALMA 推進室の研究員として働いております。私はここ国立天文台で 2 年前から研究支援
員の肩書きで ALMA 受信機用 LO 系の開発を行っておりまして、新人といっても実際にはこれで 3 年目となります。
これまでと比較して仕事の内容に大きな変化はないかもしれませんが、この度研究員に昇格 ? ということで気持ち
を引き締めなおすと同時に、少しだけプレッシャーも感じながら研究を進めているところです。今後ともどうぞよ
ろしくお願いします。
■
吉田 敬(よしだ たかし)
所属:理論研究部
出身地:神奈川県
4 月 1 日より理論研究部に研究員として着任しました吉田敬と申します。着任前は東北大学の天文学専攻でポスド
クをしていました。主な研究は超新星爆発時における元素合成です。超新星元素合成の計算で得られた結果が隕石
中に含まれる超新星起源微小粒子の同位体比と一致するかを調べたり、超金属欠乏星での元素生成量の観測結果と
比較したりしています。趣味は自転車と旅行ですが気がつけば最近あまり遠出をしていないような気が……。たま
には気分転換にどこかに出かけようかと思います。よろしくお願いいたします。
●黄砂が今年はニュースで話題になりました。年とともに規模が増しているいう話も良く聞きます。供給源の砂漠
化が進んでいるのか、それとも風が強くて運ぶ量が増したのか ? アトピーや花粉症にも影響がでると言われて
ますが、酸性雨の中和という効果もあるようですね。畑に石灰を撒くのと同じようです。
(J)
●南半球にあるサンチャゴでは冬を迎えようとしています。日中はまだ暖かいものの、朝夕には少し冷えるよう
になってきました。ビルの 18 階から望むアンデスも雲とスモッグにかすみがちでいまひとつぱっとしなかった
のですが、ある朝ふと見るとアンデスに鮮やかな緑の雲が !「彩雲」とよばれるありふれた現象らしいのですが、
昔の人は「瑞雲」とよんで吉兆と考えたそうです。よいことがありますように。
(成)
● 4 年に 1 度の熱狂の 1 ヶ月がやってきました。1 日 3 試合も観戦していると、仕事では遅延行為でイエローカー
ド、家ではレッドカードを出されそうな毎日です(それでもやめられないのだけれど……)。
(κ)
●先日バッティングセンターに行った際、130km/s のボールを軽々と打っているおじいさんに遭遇しました。
130km/s のボールをバットにあてるだけで精一杯だった自分が恥ずかしくなってしまいました。これからも
バッティングセンターに通い続けないといけないようです。
(K)
●プレーオフ、堪能したっす。Lakers は…3 勝 1 敗としたものの、Suns に敗れてしまいました…orz。それでも、
Kobe の 81 得点をはじめ今年はなかなか楽しめるチームになったので良しとしよう。
(片)
●なんだか暑くなったり、寒くなったり、急激な気温変化が続く、この頃。ハワイの方がずっと安定しているだろ
う、と期待して、実際に出張してみたら、山頂はとっても寒いし、ヒロの街も暑かったり寒かったりと、寒暖の
差に耐えるのは同じでした。みな体調に気をつけましょう。
(W)
155 2006.6
2006
国立天文台ニュース編集委員会
http://www.nao.ac.jp/naojnews/recent-issue.html
15
すばる望遠鏡
山田 亨(ハワイ観測所)
ハワイ観測所
03
155
●ハワイ島マウナケア山頂にそびえる主鏡口径 8.2m の大型光 完成年:1999 年 1 月(ファーストライト)
学赤外線望遠鏡です。国立天文台、全国の大学はもとより世界の 製作メーカー:三菱電機
天文学者によって、宇宙論から太陽系の天体まで、様々な観測が 特徴:主焦点、カセグレン焦点、2 つのナスミス
行われています。汎用望遠鏡として多様な特徴を備えた 8 つの 焦点の 4 つの焦点を持つ。8m 級望遠鏡で主焦
観測装置を持ち、長い宇宙の歴史の中で銀河や星はどのようにし 点を持つのは「すばる」だけで、主焦点カメラ
て誕生し、進化したのか、そして太陽系外の惑星がいかにして生 (Suprime Cam)は大活躍中。カセグレン焦点
まれるのか、など様々な宇宙の謎に挑みつづけています。これま は、微光天体撮像装置(FOCAS)、多天体赤外分
で最も遠方の銀河の発見、宇宙の構造形成史を俯瞰する探査観 光撮像装置(MOIRCS)、中間赤外分光撮像装
置(COMICS)、コロナグラフ・撮像分光装置
測、補償光学やコロナグラフを活かした原始惑星系円盤の観測な
(CIAO)の 4 装置と補償光学装置(AO)、ナスミ
ど、具体的な成果は、枚挙にいとまがありません。
ス焦点では、高分散分光器(HDS)、赤外分光撮
「すばる」は、おうし座のプレアデス星団の和名。
「星はすばる」と
枕草子にも書かれた由緒ある名前です。当初は、
「ビッグアイ」の
向こうをはって、「大目玉」なんていう愛称も考えられたそうで
すが、本当かな(笑)。論文などの英語表記では、
「SUBARU」では
なく、
「Subaru」と書くのが通例です。ハワイ語では、
「マカリィ」
と言うそうです。
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像装置(IRCS)、近赤外カメラ(CISCO)が現在
稼働中。
●主鏡有効口径:8.2m /主鏡材質:ULE ガ
ラス(超低熱膨張ガラス)/主鏡研磨精度:平
均誤差 0.014 ミクロン/最大駆動速度:0.5
度角毎秒/天体の追尾誤差:0.1 秒角以下/観
測可能仰角範囲:10∼89.5 度/総合星像分解
能:0.2 秒角(補正光学なし、2.15 ミクロン)
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