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1. - 経済産業省

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1. - 経済産業省
WTO交渉について
2008年3月
経済産業省
総論
WTOの概要
1.組織の概要
・WTO(世界貿易機関)は、それまでのGATT(ガット。関税及び貿易に関する一般協定)に
代わり、1995年に発足。
・スイス・ジュネーブに事務局が所在。
・2008年1月現在の加盟国・地域数は151ヶ国。
・事務局長はパスカル・ラミー(前欧州委員会貿易担当委員)。
2.WTOの役割
①ラウンド交渉を通した、貿易障壁の削減・撤廃及び、予見可能性を高めるための
通商ルール(WTO協定)の強化・充実。
②通商上の紛争処理。
注)
ラウンドとは、鉱工業品・農林水産品の関税引き下げ、サービス分野の規制緩和など、幅広い分野
について包括的に交渉を行うもの。ラウンドの立ち上げが決まった閣僚会議の開催場所にちなみ、
現在のラウンドは「ドーハ・ラウンド」と呼ばれている。なお、正式名称は「ドーハ開発アジェンダ(DD
A)」と言う。
2
我が国にとってのラウンドの主要な意義
・他の先進国及び主要途上国の関税を引き下げさせる。
注 )各国における平均譲許税率(非農産品)
・日本
:2.7%
・米国
:3.3%
・EU
:3.9%
・中国
:9.1%
・ブラジル :30.8%
・インド :34.9% (出典:World Tariff Profiles 2006)
・日本のサービス産業が海外の市場に参入しやすいようにする。
・通商ルールの強化により、予見可能性を高め、紛争を未然に防止す
る。(ラウンドが失敗すると、通商摩擦が増える恐れ。)
・各国にとっても、国内構造改革を進めるきっかけとなる。
3
ラウンドの経緯
●ラウンドについて
GATT(ガット。関税及び貿易に関する一般協
定)締約国は過去8度にわたり、集中的に多角
的交渉を行ってきた。その中でも1960年に開始
された第5回交渉(ディロン・ラウンド)以降、GA
TTにおける多角的交渉は「○○ラウンド」と呼ば
れる。
数次のラウンド交渉を経て、次第に関税引き下
げが実現され、また、関税以外の貿易関連ルー
ルも整備された。前回のウルグアイ・ラウンドは、
農業、サービスの自由化、貿易ルールの強化、
紛争解決手続の整備など、これまでのラウンド
の中では画期的な内容を有するものであった。
これを受け、1995年1月、世界貿易機関(WTO)
が発足した。
2001年11月のドーハ閣僚会議でWTO発足後初
となる新ラウンドの開始が決定された。本交渉は、
途上国の意向を踏まえ、正式には「ドーハ開発
アジェンダ(DDA)」と呼ばれる。
(参考) これまでのラウンド交渉
参加国数
・1947年
第1回交渉
23
・1949年
第2回交渉
13
・1951年
第3回交渉
38
・1956年
第4回交渉
26
・1960~61年 ディロン・ラウンド
26
・1964~67年 ケネディ・ラウンド
62
・1973~79年 東京ラウンド
102
・1986~94年 ウルグアイ・ラウンド
123
・2001年~
151
ドーハ開発アジェンダ
(出典:WTO事務局ホームページ)
4
ドーハ・ラウンドは何故長い時間がかかっているのか
今までのラウンドとの違い
今までのラウンドとの違い
①モノの貿易だけでなく、サービス、ルール、貿易円滑化
①モノの貿易だけでなく、サービス、ルール、貿易円滑化等等、交渉分野が拡大
、交渉分野が拡大 ※08年2月現在
②加盟国の増加/ウルグアイ・ラウンド妥結時123ヶ国→ドーハ・ラウンド151ヶ国
②加盟国の増加/ウルグアイ・ラウンド妥結時123ヶ国→ドーハ・ラウンド151ヶ国
加盟国の利害が複雑に交錯(先進国vs途上国、輸出国vs輸入国)
→農業の国内補助金・市場アクセス、NAMAの関税削減etc
意味ある成果が得られなければ、
意味ある成果が得られなければ、
米国、EU、日本などの先進国も、ブラジルなど途上国も、国内を説得できないため
米国、EU、日本などの先進国も、ブラジルなど途上国も、国内を説得できないため
交渉妥結までに長い期間を要している(2001年11月~)。
交渉妥結までに長い期間を要している(2001年11月~)。
一方で、GATT時代、8回のラウンドは全て成功。
一方で、GATT時代、8回のラウンドは全て成功。
しかも、今次ラウンドはWTO発足後、初のラウンド。
しかも、今次ラウンドはWTO発足後、初のラウンド。
万が一失敗した場合、多角的自由貿易体制を損なう恐れ。
万が一失敗した場合、多角的自由貿易体制を損なう恐れ。
失敗する訳にはいかない!
必ず妥結する必要あり。
5
時系列でみるドーハ・ラウンド
WTO非公式閣僚会合(ダボス)
WTO非公式閣僚会合(ダボス)
(2007年1月)
(2007年1月)
ラウンド交渉を本格再開
ラウンド交渉を本格再開
第4回
閣僚会議
(ドーハ)
2001年
11月
2002年
第5回
閣僚会議
(カンクン)
2003年
9月
2003年
7月
一般理
枠組
合意
2004年
7月
2004年
第6回
閣僚会議
(香港)
2005年12月
香港閣僚
宣言を採択
サービス議長報告書
サービス議長報告書
(2008年2月12日)
(2008年2月12日)
農業/NAMA交渉議長
農業/NAMA交渉議長
テキスト発出
テキスト発出
(2007年7月17日)
(2007年7月17日)
農業/NAMA改訂議長
農業/NAMA改訂議長
テキスト発出
テキスト発出
(2008年2月8日)
(2008年2月8日)
ルール交渉議長
ルール交渉議長
テキスト発出
6月末
テキスト発出
米国TPA失効 (2007年11月30日)
(2007年11月30日)
2005年
2006年
2007年
決裂
ラウンド立ち上げ
G4閣僚会合
G4閣僚会合決裂
決裂
(2007年6月)
(2007年6月)
ラウンド交渉を
ラウンド交渉を中断
中断
(2006年7月末)
(2006年7月末)
2009年
2008年
1月米大統領選挙開始
07年9月~
07年9月~
農業・NAMA交渉議長テキ
農業・NAMA交渉議長テキ
ストをベースに、寿府でのマ
ストをベースに、寿府でのマ
ルチの交渉。
ルチの交渉。
(今後の方針)
4月に、農業・NAMAのモダリティ合意及び
他の分野の進展を図り、2008年中の交渉妥結を目指す
08年内に
最終妥結
09年に
署名、批准
3/21~24
3/21~24
イースター休暇
イースター休暇
1/26
1/26
WTO非公式閣僚会合
WTO非公式閣僚会合
(於、ダボス)
(於、ダボス)
6
ドーハ開発アジェンダの交渉分野
農業
NAMA
農業に関する国内支持、輸出競争、市場アクセスに関する交渉。
農産品以外の全て(鉱工業品等)に関する関税及び非関税障壁の撤廃・削減に関する交渉。
(非農産品市場アクセス)
サービス
外資規制や人の移動、国境を越える取引などの自由化等に関する交渉。
開発
途上国の特別扱いや、途上国への支援策を議論。
ルール
アンチダンピング(AD)、補助金等に関する交渉。
貿易円滑化
貿易手続の透明性・予見可能性・公平性の向上、簡素化・迅速化の促進を目的とする交渉。
なお、上記に加え、TRIPs(知的財産権関連)や貿易と環境についても交渉が行われている。
7
主要論点に関する主要国・グループの立場
EU、日本、印
→現実的な削減、
守り
十分な「柔軟性」を。
農業
市場アクセス
(関税削減等)
攻め
農業
国内支持
(農業補助金削減)
守り
米国
→高いレベルの削減には市場
アクセスでの成果が必要。
攻め 米国以外
→米国に更なる削減を要求。
輸出国側(米、伯、豪)
→高い野心、
少ない「柔軟性」のみ。
3つの論点での
膠着状態を打開できず、
06年7月に交渉は一旦中断。
再開後もこれらの論点を
中心に交渉が展開。
非農産品市場
アクセス
(鉱工業品等関税削減)
守り
途上国(特に伯、印)
→十分な「柔軟性」を。
攻め
先進国
→高いレベルの削減
8
ラウンド交渉における主要国のポジション
農業
(市場アクセス)
農業
(国内支持)
NAMA
日本、EU、インド
G10
G33
米国、ブラジル、豪州
G20
G20
日本、EU、インド、ブラジル、豪州
G10
G33
G20
ケアンズG
米国
ケアンズG
インド、ブラジル
日本、EU、米国、豪州
NAMA11
サービス
日本、EU、米国、豪州
ルール
(AD)
日本、ブラジル
ルール
(漁業補助金)
(注) (攻め)
(守り)
インド
EU
ブラジル
インド
豪州
米国
ADフレンズ
日本、EU
インド
米国、ブラジル、豪州
9
各交渉分野
NAMA
NAMA交渉①基本的な構図
1.農産品以外のすべて(鉱工業品及び林水産物)に関する関税及び非関税障壁の撤廃・削減に関
する交渉。
2.主要論点は①関税削減方式(フォーミュラ)、②途上国の柔軟性、③非譲許品の取扱いの3つ。
その他、分野別アプローチ、非関税障壁も重要分野。
3.我が国としては、各国の事情も踏まえつつ、関税削減効果の分析や、関税構造の分析等を通じ
て、交渉の活性化に寄与。高い水準の成果を得るべく交渉に貢献。
5.基本的な交渉姿勢:
4.関税引き下げの意義:
新興市場に関心のある先進国対、様々な主張
欧米の高関税品目の関税引下げ、途上国の
を持った途上国。
高関税引下げによる世界的な関税格差の是
正が交渉の主眼。また、途上国の関税引下
先進国
途上国
げは、途上国間の貿易を促進するうえで重要。
非 農 産 品 の 平 均 譲 許 税 率
40
[ %
]
3 4 .9
3 0 .8
30
2 5 .5
20
1 5 .7
9 .1
10
2 .7
3 .3
11
3 .9
高関税の国が多い。
政策余地の維持、
自国産業保護及び関税
収入確保の観点から、
関税引下げには消極的。
イ ンド
ブラジル
タイ
南 ア フリ カ
※我が国関心品目
米国: トラック(25%)
EU: 家電(14%)、自動車(10%)
豪州
韓国
中国
EU
米国
日本
0
1 0 .1
工業品で優位。
全体として、
低関税。
途上国の関税を
引き下げたい。
中国: 音響映像機器(30%)
ブラジル: 自動車(35%)
※途上国それぞれの主張は各論で異なる。
◆新興途上国
◆新規加盟国(RAM)
◆小規模・脆弱経済国(SVE)
◆後発開発途上国(LDC)
12
NAMA②関税削減方式(フォーミュラ)
・ 2係数のスイス・フォーミュラの係数の水準が交渉の焦点。
・ 日米欧など先進国は、議長テキストの数字[19~23]で十分に途上国に配慮していると主張。
・ NAMAの関税引き下げに消極的な途上国グループ(伯、印、亜等)は、譲許税率の削減率が
途上国よりも先進国が大きくなるよう、先進国と途上国の係数差25を主張。
t0 × A
t1 =
t0 + A
(特徴)
・高い関税率ほど引下げ
幅が大きい。
・原則係数以下の関税率
に引き下げられる。
議長テキストの係数を適用した場合の関税水準
20
係数23
13.9
15
13.0
係数19
12.3
11.6
現行35%
10
(例:ブラジルの乗用車
インドの繊維製品)
先進国の係数
A=フォーミュラの係数
t0= フォーミュラ適用前
関税率
t1=フォーミュラ適用後
関税率
スイスフォーミュラ
適用後 t1 (%)
途上国の係数
スイス・フォーミュラ
係数9
5
係数8
現行30%
(例:中国の音響映像機器)
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
スイスフォーミュラ適用前
45
t0 (%)
50
55
60
23
13
NAMA③途上国向け柔軟性
・途上国に対する「柔軟性」(フォーミュラ適用の緩和または免除)をどの程度認めるかが、大きな
論点の一つ(2008年2月改訂議長テキスト パラグラフ 7)。
・ブラジル、アルゼンチンは途上国の関税同盟(メルコスール)に対する特別の柔軟性拡大、
南アは自らの特別事情を理由として個別の特別扱いを提案。
・先進国は、特別の事情があれば議論に応じるものの、一般的な柔軟性拡大には反対。
・現在は、係数と柔軟性を組合せて議論する考え方、既存の柔軟性に適用上の柔軟性を追求す
る考え方、追加的に柔軟性を拡大しようとする考え方等が、検討されている。
2008年2月 改訂議長テキスト パラグラフ 7
(a)
(i)品目数の[ ]%かつ輸入額の[ ]%までについて、
フォーミュラが適用される場合の削減幅の半分までの緩和
または、
(ii)タリフラインの[ ]%までは、輸入額の[ ]%を超えない範囲で、
非譲許を維持し、又はフォーミュラの適用を除外できる。
(b)[この柔軟性を適用しない国は、途上国係数に[3~5]を上
乗せ。]
(%)
25
20
15
フォーミュラ削減の柔軟性イメージ
現行税率(20%)
削減免除
フォーミュラ削減
削減幅の半分緩和
10
5
0
柔軟性なし
Para7(a)(i)
※2007年7月議長テキスト
2004年枠組合意パラ8を踏襲し、品目数かつ輸入額10%までフォーミュラによる引き下げ幅の半分までの緩和、
又は、同5%までの非譲許またはフォーミュラ適用免除と記述。これに対し、一部の途上国から、
柔軟性の拡大を要求する提案(上述)が出されるなど、コンセンサスが得られず、2月テキストでは括弧内を空欄とされた。
Para7(a)(ii)
14
NAMA④非譲許品目の扱い
1. 今回のラウンドでは、これまで譲許していない品目(非譲許品目)も、原則として全品目譲許
すること、及びその譲許税率を決定する場合、基準年(2001年)の実行税率に一定のかさ上
げ(マークアップ)をして、フォーミュラを適用する。
2. 現在、マークアップ幅について交渉が継続。
先進国は、5を主張。チリ等10ヵ国の途上国は、20を提案。NAMA11は、30と主張。
非譲許品目に対するフォーミュラの適用方法
フォーミュラ適用のベース
(a+M%)
実行税率
a%
フォーミュラ適用後
X%
M%上乗せ
マークアップM%
フォーミュラ適用
2007年7月のNAMA交渉議長テキストは、マークアップを20を提示。
15
NAMA⑤分野別関税撤廃の議論の現状
※分野を特定した関税撤廃の議論が、以下の分野について関心国主導で進展。
分野
電気電子
化学
保険医療への
オープンアクセス
提案加盟国
日本、米国、韓国、シンガポール、タイ、香港の6ヵ国が共同提案。
米国、カナダ、シンガポール、台湾、スイス、ノルウェーの6ヵ国が共同提案。
米国、スイス、シンガポールの3ヵ国が共同提案。
宝石・宝飾品
日本、タイ、米国、香港、台湾、シンガポール、スイス、カナダの8ヵ国が共同提案。
スポーツ用品
日本、台湾、シンガポール、ノルウェー、スイス、米国の6ヵ国が共同提案。
自動車・関連部品
日本が提案を提出。
自転車・関連部品
日本、台湾、シンガポール、タイ、スイスの5ヵ国が共同提案。
手工具
台湾が提案。
原材料
UAEが提案。
林産物
カナダ、NZ、米国、シンガポール、タイ、香港の6ヵ国が共同提案。
水産物
NZ、カナダ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、タイ、パナマ、オマーン、香港、ウルグアイの10ヵ国が
共同提案。
(注)下線は主導国。
香港・台湾が玩具提案を準備中。ECが繊維・履物に関心を表明している。
※トルコが繊維の関税調和を提案。
環境物品
米国、EC、カナダ、NZ、ノルウェー、シンガポール、スイスの7ヵ国が環境物品の合意内容について提案。
日本、米国、EC、カナダ、NZ、ノルウェー、スイス、韓国、台湾の9ヵ国が品目について提案。(※)
(注)環境物品に関する交渉への義務的参加については合意がなされており、任意参加を前提とする分野別交渉とは性質が異なる。
対象品目は、貿易と環境委員会特別会合において議論中。
(※)昨年11月、米、ECが環境物品に関する交渉の成果を具体的に示す新提案を提示。
16
NAMA⑥非関税障壁撤廃の議論の現状
○輸出規制の透明性強化(日本):
輸出規制の透明性を高めるため、情報公開やWTOへの通報を中心とした新たな規律を設け
輸出規制の透明性を高めるため、情報公開やWTOへの通報を中心とした新たな規律を設け
ることを提案。
ることを提案。
○輸出税(EC):
輸出税を原則として禁止。途上国には、例外的な場合のみ維持を容認。輸出税をバインド(各
輸出税を原則として禁止。途上国には、例外的な場合のみ維持を容認。輸出税をバインド(各
国の譲許表に記載)し、段階的に削減した後、撤廃。
国の譲許表に記載)し、段階的に削減した後、撤廃。
○水平メカニズム(EC、途上国グループ等):
WTOによる紛争処理システムとは別に、専門的知見を有した調停人による、迅速な調停シス
WTOによる紛争処理システムとは別に、専門的知見を有した調停人による、迅速な調停シス
テムを設けるべきとの提案。
テムを設けるべきとの提案。
○再製造品(米国):
再製造品(中古品を分解し、摩耗品の交換等を行った上で再度組み立てて販売)について、今
再製造品(中古品を分解し、摩耗品の交換等を行った上で再度組み立てて販売)について、今
後各国で議論する場を設けることを提唱。現在、法的拘束力のない閣僚決定案を提示。
後各国で議論する場を設けることを提唱。現在、法的拘束力のない閣僚決定案を提示。
○電気電子(EC):
ISO等3機関をTBT協定上の国際規格策定機関と認め、特定の電気電子製品について、自
ISO等3機関をTBT協定上の国際規格策定機関と認め、特定の電気電子製品について、自
己適合宣言
己適合宣言 制度を原則義務化する等を提案。
制度を原則義務化する等を提案。
○繊維・衣服・履物及び旅行用品(EC、米国):
ラベル上の表示が義務づけられる事項を限定することを提案。
ラベル上の表示が義務づけられる事項を限定することを提案。
○林産物(NZ):
建築基準に関し、樹種でなく機能に基づく規制とする等の提案。
建築基準に関し、樹種でなく機能に基づく規制とする等の提案。
○花火・ライター(中国):
○花火・ライター(中国):
花火及びライターに係る過剰な安全規制を撤廃することを提案。
花火及びライターに係る過剰な安全規制を撤廃することを提案。
17
(参考1)NAMA交渉改訂議長テキスト(2008年2月)概要
1.関税削減フォーミュラ
【モダリティ案】
・スイス・フォーミュラを個別の品目ごとに適用する。
・先進国係数は[8~9]、途上国係数は[19~23]とする。
2.非譲許品目のマークアップ(かさ上げ)
【モダリティ案】
・基準時(2001年)における実行税率に[20]又は[30]%ポイントのマークアップを行った上で
フォーミュラを適用し、関税削減を行う。
3.途上国の柔軟性(「パラ8の柔軟性」)
【モダリティ案】
(a)途上国については、以下のフォーミュラ適用の緩和及び免除が認められる。
(ⅰ)品目数の[ ]%かつ輸入額の[ ]%までについて、フォーミュラが適用される場合の削減幅
の半分までの削減緩和
または、
(ⅱ)品目数の[ ]%かつ輸入額の[ ]%までについて、非譲許維持またはフォーミュラ適用免除
(b) [この柔軟性を適用しない国は、途上国係数に[3~5]を上乗せ。]
18
サービス
サービス①サービス貿易自由化の意義
各国の名目GDPに占めるサービス産業のシェア
(2007年『通商白書』)
○サービス貿易額は着実に増大。現在では世界貿易の約20%、2兆7,550億ドル
に達している。また、GDPに占めるサービス産業のシェアも拡大。
80
◆世界貿易におけるサービス貿易額(輸出額ベース)
(単位:10億ドル)
70
米国
英国
ドイツ
インド
中国
日本
世界計
60
1996
1999
2002
2004
2005
2006
% 50
サービス
1,270
1,406
1,608
2,212
2,458
2,755
40
INTERNATIONAL TRADE STATISTICS 2007(WTO事務局)
30
20
○先進国に比べて、途上国の自由化の度合いは大幅に遅れている。これは途上国
の間に、国内産業の育成及び雇用の確保等の観点から、自由化に対する警戒感が
あるため。しかし、実際には自由化は途上国の経済成長に貢献している。
◆保護の度合いを25%削減した場合のGDP上昇率試算
国・地域名
GDP上昇率(保護度合25%減)
南アフリカ
3.0%
ASEAN
2.9%
インド
1.4%
米国・日本
1.2%
EU
1.0%
(OECD「サービス自由化の事例研究(2001))
1990年
2004年
(日本・米国は2003年)
◆自由化の進んだ分野ほど高成長(インドの事例)
20
サービス②サービス交渉の概要
1.サービス貿易交渉とは、金融、運輸、通信、建設、流通等のサービス分野において、 国際取引の障壁を削減・撤廃
するための自由化交渉。具体的には以下の義務に関する交渉を実施。
○自由化の二本柱(いずれも具体的な約束によって内容が決まる義務)
・市場アクセス(Market Access)
政府が採るべきでない措置の類型として、外資制限等6種類の措置を限定的に列挙。
政府が採るべきでない措置の類型
(a)サービス提供者の数の制限、 (b)サービスの取引総額又は取引資産の制限、
(c)サービスの事業の総数又は指定された数量単位によって表示されたサービスの総産出量の制限
(d)サービス提供に必要であり、かつサービス提供に直接関係する自然人の総数の制限
(e)サービスを提供する事業体の形態の制限、 (f)外国資本の参加の制限
・内国民待遇(National Treatment)
外国事業者に対し内国事業者と比して不利でない待遇を与えなければならない。
2.基本的な交渉の構図:
(1)各国は自らの障壁をどのように削減・撤廃するかを互いに約束しあう。基本的に、他の加盟国から受けた
要請(リクエスト)を踏まえて、自由化案(オファー)を提出する形で交渉は進められている。(リクエスト・オファー方式)
(2)競争力のあるサービス産業を有する先進国と、労働者の越境移動以外にサービス輸出力の乏しい途上国 という構図。
先進国
ウルグアイ・ラウ
ンド時に既に相当
程度の自由化約
束を行っている。
競争力のあるサービス
産業を有する。外国
(特にアジアや南米の
途上国)の外資制限等
の撤廃に関心大。
途上国
交渉には、概して消極的。他方、
労働者の越境移動に関心がある
他、一部途上国はアウトソーシ
ングの自由化にも関心大。
ウルグアイ・ラ
ウンド時の自由
化約束分野は
少ない。
21
サービス③サービス貿易の4態様(コンピュータ関連サービスにおける例)
サービス貿易の場合、モノと異なり輸出の概念が不明確であるため、WTOではサービス貿易を以下の四つの態様
(モード)に分類。 交渉では、各モードにおける自由化を求めている。
○海外へのコンピュータ関連サービスの提供
国内の拠点から、電話やインターネット等を利用してサービスの提供を実施。(規制の例: 拠点設置要求、アクセス制限)
第1モード (国境を越える取引)
(IT化に向けたコンサルティング、プ
ログラミングサービス等の提供)
海外の顧客
国内本社
海外の顧客
第2モード (海外における消費)
(ホームページへアクセスすることに
よる情報の受領、ダウンロード)
○海外におけるコンピューター関連サービス拠点の設置
第3モード(業務上の拠点を通じてのサービス提供)
海外における最適なシステム支援体制構築のため、各国において商業拠点の設置を行い、その拠点からサービスの提供を実施。
(規制の例: 外資制限、合弁要求)
設計
システム
支援
現地の
顧客
拠点設置
海外の支店
国内本社
全体
システム
支援拠点
○コンピュータ関連サービス提供者の移動
第4モード(自然人の移動) 高度なコンピューター技能を有する者(プログラマー等)を海外に派遣し、サービスの提供を実施。
22
サービス④ドーハ・ラウンド サービス交渉の経緯
<基本構図>
・商業拠点の設置(第3モード)に関心の高い先進国
・人の移動(第4モード)に関心の高い途上国
・越境サービス(第1・第2モード)も、アウトソーシングの増大に伴い、途上国の関心を集めている。
2000年2月
サービス交渉開始
2001年11月
(交渉本格化)
ドーハ閣僚会議
<市場アクセス交渉>
【我が国の初期リクエスト】
全加盟国に広範な自由化要求
【リクエスト・オファー方式での交渉】
2002年6月末 初期リクエスト提出
※特に、コンピュータ関連、電気通信、流通、金融、海運、AV、建設・エンジニ
アリング。重点地域は中国、ASEAN等
2003年3月末 初期オファー提出期限
【我が国への主要リクエスト】
※途上国は全般的に提出に遅れ。
人の移動、弁護士、郵便・クーリエ、教育、環境(水道等)、金融、
電気通信、エネルギー等
2003年9月
カンクン閣僚会議決裂
2004年7月
一般理事会
→改訂オファーの提出期限設定(2005年5月)
→初期オファー未提出国へ早期提出呼びかけ等
2005年2月 絞り込んだ改訂リクエストを20数カ国 ・地域に提出
2005年5月
2005年12月
<ルール交渉>
【我が国の初期オファー】
UR時以降の構造改革の成果(自主的自由化分)を積極的にオ
ファー
改訂オファー提出期限
URにおいて積み残
しとなった各ルール
の策定を検討。
◆国内規制規律
※国内規制の透明性
向上等を図る→我が
国からドラフト案提出
(2003年5月)
※2006年7月に議長
作成の叩き台が提示さ
れた。
◆セーフガード
香港閣僚会議・香港閣僚宣言
→モード毎の自由化目標、プルリ交渉の導入
【我が国の改訂オファー】
※一部途上国が強く要
求)
→共同リクエスト、第2次改訂オファー、最終約束表の提出期限
設定
途上国の関心の高い第4モード及び実務サービスを改善。流通、
音響映像、郵便・クーリエ、海運等の一部を新規にオファー。
◆ 政府調達
◆ 補助金
2006年2~3月 共同リクエスト提出
2006年7月末 第2次改訂オファー提出期限
2006年10月末 最終約束表提出期限
2006年7月に交渉が一時中断。
提出期限は無効に。
23
サービス⑤交渉の構図
香港閣僚宣言を受けて、各分野・モードにおいて関心国が複数国リクエストの調整を精力的に行い、
現在までに21分野で共同リクエストが提出されている。
(1)市場アクセス交渉
補完
分野別プルリ交渉
バイ交渉
●日本が要求国である分野
左記21分野
コンピュータ
金融
電気通信
建設
流通
郵便・クーリエ
音響映像
法律
エネルギー
ロジスティクス
(総合物流)
環境
建築・エンジニアリング
MFN免除・削減
(拠点を通じた提供)
海運
+ 各国の関心事項
第3モード
●日本が被要求国である分野
第4モード
(人の移動)
越境取引
農業関連
航空
教育
観光
途上国の関心分野
(2)ルール交渉
国内規制規律
・許認可要件・手続
・資格要件・手続
・技術基準
緊急セーフガード
(ESM)
補助金
政府調達
24
サービス⑥国内規制規律
資格要件、免許要件等に関する措置がサービス貿易に対する不必要な障害とならないよう、サービス貿易
協定(GATS)第6条4ではこれらの措置に係る規律策定に向けた交渉を行うこととなっている。
○国内規制(Domestic Regulation)
(1)貿易制限ではなく、サービスの質の確保や消費者保護などを目的とする「国内規制」は、自由化交渉の枠外であり各国の権利。
(2)他方、国内規制の無制限な適用は結果的に貿易を制限し、サービスの自由化約束を無効にし得ることから、GATS第6条4は、
国内規制が合理的、客観的、公平に運用されることを確保するために、以下の5つの要素につき規律の作成を義務づけている。
①資格要件 : 資格を取得するのに必要な要件(例:学歴、資格試験)
②資格手続 : 資格を取得する手続
③免許要件 : 免許を取得するのに必要な要件(例:現地法人設置に必要な最低資本金)
④免許手続 : 免許を取得する手続
⑤技術上の基準: 資格又は免許取得後にサービス提供をする際に遵守すべき基準(例:倫理基準)
○2005年12月の香港閣僚宣言では、今次ラウン
ドの終結までに国内規制規律を“develop”すること
とされ、これを受けて、国内規制作業部会議長は
本格的な交渉の開始に向けてベースとなる作業
ペーパーを2006年7月及び2007年4月に加盟
国に配布。2008年1月には再改訂ペーパーが提
示され、議論が進んでいる。
各国立場の差が大きく調整必要
○GATS第6条4に基づき、1999年からWTOの
国内規制作業部会(WPDR)において規律策定に
向けた議論が行われ、加盟国から様々な提案が提
出された(我が国も2003年に提出)。
○主要国のポジション
日本:5要素、分野横断の包括的な規律(テキスト)を提
案済。EUもこの方向を支持。
米国:透明性のみの分野横断規律(テキスト)を提案。
(当初、規制の多くが州レベルであることや、規制権
限を縛られるべきでないとするNGOもあり、透明性
以外の分野横断的な規律策定には強い難色を示し
ていた。)
ブラジル:防御的な立場から野心のレベルが低い規律
を提案。
インド:人の移動に関連する要素(資格の相互評価等)
が不可欠との立場。
25
(参考)サービス議長報告書(2008年2月)
2月12日、デ・マテオ・サービス交渉議長が議長報告書を加盟国に発出。全体として3部構成となっており、
その概要は次のとおり。
○第1部
-3ヵ国(ボリビア、キューバ、ベネズエラ)がテキストの合意に反対。
○第2部(加盟国の見解が収斂しつつある要素 : 実質的な議長テキスト)
-香港閣僚宣言附属書Cに沿って交渉を活性化。
-香港閣僚会議以降、二国間・複数国間でリクエスト・オファーの交渉を実施。
-サービス交渉の進展度合いについては、加盟国間で見解に相違が存在。交渉結果の評価は、他の分野との
関係も含めて各国が判断すべき事項。
-サービス交渉は、DDAの不可欠な一部(an essential part)であり、野心的な成果が全体のバランスにとって
不可欠。
-国内規制規律については、交渉終結前の採択を視野に改訂ドラフトの協議を継続。
-次期オファー及び最終約束表の提出期限は、[………]。
○第3部(加盟国間の見解に大きな相違が残る要素)
-農業・NAMAのモダリティと同程度の野心水準が、サービスにも必要。(先進国提案)
-オファーでは、限定的な例外を除いて、現行規制水準の反映、及び、 貿易障壁が残る分野での新たな
自由化 を行う。
(先進国提案)
-途上国への柔軟性に配慮しつつ、より深く、可能な限り、完全な自由化約束を行う。(中間派提案)
-途上国が輸出関心を有する第1モード(越境サービス)及び第4モード(人の移動)分野での自由化を行う。
26
ルール
ルール①ルール交渉の構図
1.アンチ・ダンピング(AD)
交渉の狙いは主に以下の2点。
(1)AD協定改正による規律強化を通じて、
米国等によるAD措置の濫用を防ぐ。
(2)近年、AD措置の発動を急増させている
途上国(中国、インド等)によるAD措置の
濫用を防ぐ観点から手続の透明性を向上
させる。
<主要国の立場>
・日本、ブラジル等ADフレンズ
→ (1)、(2)とも攻め。我が国は交渉全体を
引っ張る立場。
・米国
→ 守り。(ただし、(2)については攻めの関心も)
・EC
→ 日米の中間的な立場(日本と是々非々で連携)。
・インド、中国
→ 一部の規律強化には賛成。
2.地域貿易協定(RTA)
地域貿易協定に対するWTO協定の規律を明確化・
改善
3.漁業補助金
水産資源の保護を図る観点から一定の漁業補助
金の供与を禁止するとのルールを策定中。
禁止対象の設定の基本的考え方につき対立あり。
<主要国の立場>
・米国、NZ、豪州、チリ等
→漁業補助金は一般に水産資源の減少につながる
ため原則禁止(攻め:トップダウン・アプローチ)
・日本、EC、韓国等
→資源に影響を及ぼす過剰漁獲につながるような
補助金を個別に指定
(守り:ボトムアップ・アプローチ)
4.補助金一般
EC、米国、カナダ等の先進国が、中国、ロシア
(将来の加盟を先取り)等新興工業国政府による
貿易歪曲的な補助金や融資等について、規律を
強化しようとするもの。我が国は中立的な立場を
取りつつ、個別の利害得失としては概ね先進国
サイド。
<主要国の立場>
・米国、EC、カナダ:攻め
・中国、産油国:守り
28
ルール②アンチダンピング(AD)の濫用防止
1.アンチダンピング(AD)交渉について
アンチダンピング(AD)とは、国内価格より廉価で輸出する行為(ダンピング)に対抗するためにWTOルールで認められた措置。
近年、世界的にAD措置の発動が増加。AD措置が単なる国内産業保護の手段として濫用されることを防止するため、そのルール
について明確化、規律強化を行う交渉を行っている。
2.AD措置件数は依然として高水準。ADの濫用は途上国、先進国共通の問題。
AD措置発動・被発動国上位10カ国・地域と措置数(95年~06年)
被発動国
発動国
世界的なAD措置数の推移
250
216
227
200
170
150
221
151
167
125
119
100
185
137
131
92
50
0
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
1
インド
331
6
トルコ
107
1
中国
375
6
ロシア
84
2
米国
239
7
中国
92
2
韓国
136
7
タイ
76
3
EC
231
8
カナダ
84
3
台湾
107
8
インド
75
4
アルゼンチン
152
9
メキシコ
82
4
米国
104
9
インドネシア
73
5
南アフリカ
120
10
豪州
71
5
日本
97
10
ブラジル
69
(出典:WTO事務局)
3.AD措置の濫用は、関税引下げ等市場アクセス改善の効果を損なうもの。予見可能性のある貿易ルール確立の
ためには、ADの規律強化が必要。日本は、ADの規律強化を目指す国々(ADフレンズ)のリーダーとして、条
文改正提案を順次提出するなど交渉をリード。一方、米国は議会・産業界にAD発動を求める強い意見がある
ことを踏まえ、規律強化に消極的。
平均実効税率と平均AD税率
平均AD税率は通常の
関税の約5倍の水準
WTO加盟国実効税率:10%
(2005年時点)
対日AD税率:49%
(2005~2006年平均)
◆AD措置の問題例:
一度措置が発動されると、適切な見直しがなされずに何十年
も継続する例も。米国の対日AD措置は最長で33年(合成ゴ
ム)、ボールベアリングでは18年間も措置が継続中。
(World Trade Report 2005等より経済産業省試算)
29
ルール③議長テキスト(アンチ・ダンピング)の概要(1)
(1)ゼロイング
ゼロイングとは、マイナスのマージンをゼロ扱いしてダンピングマージンをかさ上げする手法。ゼ
ロイング禁止とした上級委員会判断を覆し、ほぼ全面的に容認。
※我が国のある産業は、ゼロイングのため、年間約20億円過剰にAD税を支払っている。
(2)サンセット
AD措置の発動から10年間で自動的に措置が失効することを規定。(ただし、自動サンセット
後2年以内であれば再度調査を行い、暫定措置を発動することが比較的容易となる規定が挿入
されており、自動サンセットが形骸化しないよう内容を確認する必要がある。)
※我が国産業に対する米国のAD課税21件のうち、10年を超えるものは10件。30年を超えるも
のもある。
(3)公共の利益
AD措置の影響を受ける利害関係者(例えば消費者団体など)の意見を調査当局が勘案する
公共の利益考慮の義務化を規定。
(4)因果関係
ダンピングと損害の因果関係の認定については、ダンピングによる影響と他の要因による影響
を分離峻別すべきとした上級委員会判断から後退し、分離峻別は努力規定とすることを規定。
30
ルール④議長テキスト(アンチ・ダンピング)の概要(2)
(5)迂回
AD課税対象企業がAD課税を逃れる(迂回)について、現行の米国及びECの実務を融合した内容の規律を新た
に規定。
AD課税対象産品の部品を輸入国に輸出し輸入国内で組み立てる「輸入国迂回」、AD課税対象産品の部品を第
三国へ輸出し第三国内で組み立てた後に輸入国へ輸出する「第三国迂回」、AD課税対象産品と僅かに異なる産
品に切り替えて輸出する「微少変更迂回」に対し、迂回レビューにより措置対象産品の輸入との代替が認められ
れば、AD措置の適用を可能とする。
また、輸出国からの部品の比率や輸入国・第三国における付加価値についての数値基準(この数値基準を満たさ
なければ迂回認定ができないというセーフハーバー)を、それぞれ60%以上、25%以下とする。
(6)調査対象産品の定義の明確化
調査対象産品は、同様の物理的特性を持つ輸入品に限ることを規定。
(7)AFAの適用の制限
ダンピング調査において輸出企業は、自社情報のみならず、関連企業の情報の提供を求められることがある。利
害関係者が努力したにもかかわらず関連企業情報が取れない場合に、調査当局は非協力とみなしてAFA
(Adverse Facts Available)を適用することを禁止。
(8)その他、適正手続の強化、透明性の確保
○調査開始前の通知・提訴状送付
調査開始15日前に相手国政府に対して事前通知を行い、公開版の申請書全体を提供することを規定。
○マージン計算方法の情報の開示
仮決定及び最終決定において、調査当局は、個別にマージンを算出した輸出企業に対して具体的なマージン計
算方法を示したマージン計算の電子媒体を提供し、使用した情報源、情報の加工利用などに関する十分な説明
をしなければならないことなどを規定。
○現地調査手続きの規律強化
現地調査の手続きを明確化し、これを義務化することを規定。
31
ルール⑤議長テキスト(漁業補助金・一般補助金)の概要
漁業補助金
¾漁船建造補助金、漁船改造補助金、価格支持補助金、漁港施設関係補助金、操
業経費補助金など、禁止される補助金を列挙。
¾一方で、漁船や乗員の安全確保、漁業が環境に与える影響緩和技術の導入、資
源管理の実施、再就職用職業訓練補助金等、禁止の例外となる補助金も列挙さ
れている。
¾漁船建造補助金、漁船近代化補助金などについては、途上国であっても、EEZ内
での漁船にのみに許容。
一般補助金
¾補助金の性質に応じた利益の算定の方法についての規定等を追加。
32
貿易円滑化
貿易円滑化①交渉の概要
1.「貿易円滑化」は、 税関手続を含む貿易手続を対象とし、貿易手続を簡易化することにより、物流が迅速化さ
れ、貿易関連コストが下がり、行政側も事務の効率が図れる等、貿易関係者全体に様々なメリットをもたらすもの。
貿易手続に関する問題の類型と例
解決策
①法令の透明性・予見可能性の欠如
②運用における公平性の欠如
①透明性・公平性の確保(法令の公表及びWTOへの通
報、苦情窓口設置等)
③複雑な輸出入手続
②貿易手続の簡易化・調和化(書類の簡素化等)
④過大な輸出入書類要求
③途上国配慮(キャパシティ・ビルディング等)
2.貿易円滑化交渉は、1994年のガット5条、8条及び10条の関連する側面を明確化し改善することにより、通過貨
物を含む物品の移動、国内引取り、貿易手続をさらに迅速化することやこの分野における技術支援及びキャパシ
ティ・ビルディングのための支援を強化すること等を目的としている。
3.途上国を含むWTO加盟国間で貿易円滑化のメリットが共有されており、将来の「貿易円滑化協定」に係る条
文ベースの提案を中心に議論が進められている。
4.今後は、「貿易円滑化協定」の条文案を固めることと、途上国に対するS&D(技術協力やキャパシティビルディ
ングを含む)の位置づけが交渉の焦点。経団連を中心とした国内経済界の要望もあり、我が国としては、引き続き、
貿易円滑化交渉へ積極的に参加。
34
貿易円滑化②ルールの策定
ルールの要素
貿易手続に関する問題の類型と例
○法令の透明性、予見可能性の欠如
○運用における公平性の欠如
•地域、担当官により手続が不統一
•恣意的な関税分類基準の運用
•恣意的な関税評価、原産地規則の適用
○複雑な輸出入手続
•煩雑な関税還付手続、還付の遅延
•許可時期が不明確、通関の遅延
○過大な輸出入書類
•様々な証明書が必要
•過大な安全認証や登録証が必要
○透明性の確保
貿易円滑化ルール策定
•不透明かつ頻繁な諸規則の変更
•不明確かつ割高な手数料
•猶予期間のない突然の課税方法変更
•運用規則の不開示
•法令の公表及びWTOへの通報
•法令等改正に関するパブリック・コメン
ト制度の導入
•貿易手続に関する照会所の設置
•苦情受付窓口の設置
○貿易手続の簡易化・調和化
•貿易手続及び所要書類の簡易化
•他の専門国際機関の協定等に基づく貿易
手続の実施
•通過貨物に関する手続の簡易化
○途上国配慮
・キャパシティビルディング
・より長い実施期間、経過期間
(財務省作成)
35
開発
開発①ラウンドにおける開発の位置づけ
1.本ラウンドは「開発」ラウンドであり、途上国の経済発展を支援しつつ、貿易自由化を進めることが必要。
-WTO加盟国(151カ国)のうち途上国(120カ国)が約8割を占める。
(※)WTO加盟国中、先進国(OECD加盟国)は30カ国
(※)WTO加盟国中、LDC(後発開発途上国)一人あたり国民所得750ドル未満かつ人口75百万人以下)は32カ国
2.このため、各交渉分野を通じ、途上国の義務に対する配慮を議論中。
-農業の市場アクセスやNAMAでも途上国に配慮した柔軟性の規定が議論されている。
-WTO協定上の途上国の配慮に関する規定を、より充実すべきというのが途上国の主張。また、途上国に関する規定を、よ
り充実すべきというのが途上国の主張。また、途上国が多角的貿易体制の利益を十分に享受できるようになるための支援に
ついても議論。
・S&D(Special and Differential Treatment)※ ・実施問題 ・技術支援 ・キャパシティビルディング など
※「特別かつ異なる待遇」。WTOの各協定における途上国向けの配慮条項。義務の減免、経過措置の付与等を定める。
3.さらに、2005年12月の香港閣僚会合では、LDC産品に対する特別の取扱(無税無枠)等に合意したほか、先
進国が開発パッケージを発表。
-各国の開発パッケージ
①日本(「開発イニシアティブ」):
→2006年から3年間に、貿易・生産・流通インフラ部門で100億ドルの資金協力を実施。
→途上国が自国の有望な商品を開発し、国際市場に輸出するための支援を目的とする
「一村一品」キャンペーンを経済産業省が中心となって国内外で実施中。
→2007年4月よりLDC無税無枠措置をタリフラインベースで約98%まで拡充。
②米国:貿易関連支援額を27億ドルに倍増。
③EU:2010年より貿易関連支援のため年20億ユーロを供与。
(出典)米・EU共に香港閣僚時の公式発表資料より。
37
開発②香港閣僚会議での「開発パッケージ」
LDC(後発開発途上国)産品に対する原則無税無枠措置の供与
先進国及び自ら実施する立場にあると宣言する途上国が次の措置を行うべきことに合意。
①2008年に又は実施期間の開始までに、全てのLDC原産の、全ての産品に対する無税無枠の市場アクセスを持続的
に供与。
②上記のアクセス供与が困難な加盟国は、LDC原産のタリフラインの97%以上の産品に対し無税無枠の市場アクセス
を供与。
③LDCからの輸入に適用される特恵的原産地規則が、透明かつ簡素であり、また、市場アクセスの円滑化に貢献するこ
とを確保。
綿花
①先進国の綿花に対するすべての形態の輸出補助金は2006年に撤廃。
(香港閣僚宣言 附属書F 36)
「綿花4カ国」:
マリ、ベニン、
チャド、ブルキナファソ
米国
②先進国は、実施期間の開始時から、LDCの綿花に対し、無税無枠措置を供与。
③綿花生産に対する貿易歪曲的国内支持は、今後合意されるいかなる一般的なフォーミュラよりも野心的かつ短期間に
削減。
(香港閣僚宣言 パラ11)
貿易のための援助
①IMF及び世銀の開発委員会における貿易のための援助(Aid for Trade)の拡充等の議論を歓迎。
②2006年7月までに、貿易のための援助を活用する方法に関する勧告を行い、2006年12月までに、IF(注)の強化が図られ
なければならない。
(注)WTO、IMF、世銀を含む国際機関によるLDC援助の枠組
(香港閣僚宣言 パラ49、57)
38
開発③国際版「一村一品」キャンペーンの展開
背景等
当省及びジェトロでは、開発途上国が貿易を通じた経済発展を促進させる観点から、開発途上国自らが自国
の有望な産品を開発し、世界の市場に通用する競争力のある産品に仕上げる「一村一品」運動を関係機関と
連携しつつ、支援中(アジア、アフリカ及び大洋州諸国の80カ国の途上国を対象)。
各国に「一村一品」運動の必要性等を積極的にPRし、各国の政府要人等から高い評価を受けている。
途上国産品の展示・販売
<空港展の開催>
<空港展の開催>
2006年3月~2007年3月の約1年にわたり、日本を
2006年3月~2007年3月の約1年にわたり、日本を
代表する空港(成田、関西、中部、羽田、神戸、大阪、福
代表する空港(成田、関西、中部、羽田、神戸、大阪、福
岡)に開発途上国の産品を展示・販売する「一村一品
岡)に開発途上国の産品を展示・販売する「一村一品
マーケット」を設置。
マーケット」を設置。
さらに多くの日本の消費者に
さらに多くの日本の消費者に
開発途上国の産品を紹介する
開発途上国の産品を紹介する
ため、2007年4月~5月にか
ため、2007年4月~5月にか
けて成田
けて成田(4/15)、
(4/15)、関西
関西(4/22)
(4/22)、
、
羽田
(5/1)
の主要3空港に集約
羽田(5/1)の主要3空港に集約
させ、リニューアルオープン。
させ、リニューアルオープン。
(写真)ラミーWTO事務局長に
よる成田店の視察(2006.7.25)
<各種展示会の開催>
<各種展示会の開催>
2006年~2007年にかけて、経済産業省及びジェト
2006年~2007年にかけて、経済産業省及びジェト
ロ等の主催により、アフリカ、大洋州地域等の開発途上
ロ等の主催により、アフリカ、大洋州地域等の開発途上
国を対象に、それらの国が有する産品の我が国向けの
国を対象に、それらの国が有する産品の我が国向けの
輸出拡大を促進するために、展示・販売会を開催した。
輸出拡大を促進するために、展示・販売会を開催した。
広報活動等の展開
○我が国消費者向けに開発途上国産品の周知、国内外に開発
○我が国消費者向けに開発途上国産品の周知、国内外に開発
途上国に対する我が国支援策をPRするため、政府広報(Cabi
途上国に対する我が国支援策をPRするため、政府広報(Cabi
ネット)、ポスター、リーフレット及びDVDによる広報を展開
ネット)、ポスター、リーフレット及びDVDによる広報を展開
○2007年6月に、政府ミッション
○2007年6月に、政府ミッション(外務、農水、当省、ジェトロ)
(外務、農水、当省、ジェトロ)をア
をア
フリカに派遣。一村一品キャンペーンを政府要人に直接PR
フリカに派遣。一村一品キャンペーンを政府要人に直接PR
キャパシティ・ビルディング
開発途上国の政府関係者に、一村一品運動の理解促進を図る
開発途上国の政府関係者に、一村一品運動の理解促進を図る
ため、①「AOTS
ため、①「AOTS ((財)海外技術研修協会)
((財)海外技術研修協会)一村一品運動研修」
一村一品運動研修」
(2006.8:45カ国、約80名)
(2006.8:45カ国、約80名)、②「APEC
、②「APEC 一村一品セミナー」
一村一品セミナー」(第1回
(第1回
(2006.9):約120名、第2回(2007.10):約60名)
を実施
(2006.9):約120名、第2回(2007.10):約60名)を実施
今後の取り組み
○2008年5月開催の「TICADⅣ」及び「アフリカンフェア2008」
○2008年5月開催の「TICADⅣ」及び「アフリカンフェア2008」
の開催にあわせ、過去2年間に亘る一村一品キャンペーンの成
の開催にあわせ、過去2年間に亘る一村一品キャンペーンの成
果を総括し、発表(パネルの展示等)
果を総括し、発表(パネルの展示等)
○2008年5月以降は、商品開発等の専門家を開発途上国現
○2008年5月以降は、商品開発等の専門家を開発途上国現
地に派遣し、輸出能力向上に向けた支援など「ビジネスベース」
地に派遣し、輸出能力向上に向けた支援など「ビジネスベース」
の支援へと発展
の支援へと発展
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