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エコノミストの視点 - 三菱東京UFJ銀行

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エコノミストの視点 - 三菱東京UFJ銀行
エコノミストの視点
2013 年 10 月 9 日
通貨急落国の外貨準備高
~インドネシアは急減したが、ブラジルは微減~
5 月 22 日にバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が量的金融緩和(QE)
縮小の可能性に言及して以降、新興国から資本流出が加速し、新興国通貨は軒
並み下落した。8 月末までで対ドル相場の下落率が最も大きかったのはインド
(15.6%)で、ブラジル(14.1%)、インドネシア(12.6%)、トルコ(9.3%)が次
いでいる。
これら 4 ヵ国は経常赤字とインフレ率の高止まり、金融引き締めによる景気
減速懸念といった共通点があり、経済ファンダメンタルズの脆弱な国の通貨が
特に売られた格好となった。また、トルコについては、国内の反政府デモや隣
国シリアの情勢緊迫の影響といった政治要因も懸念され、リラ安が進行した。
4 ヵ国は自国通貨防衛のためドル売り・自国通貨買い介入に加え、①資本流出
抑制策(ブラジル、インド)、②金利引き上げ(ブラジル、インド、インドネシ
ア、トルコ)、③大規模な為替介入プログラム(ブラジル)、④輸入抑制・投資
促進に向けた緊急政策パッケージ(インドネシア)を相次いで発表した。経済
ファンタメンタルズの改善なくして、これらの政策効果は限定的とみられてい
たが、9 月 17-18 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場の予想に反して
QE 縮小が見送られたインパクトが大きく、新興国通貨は反発している。
通常、当局が自国通貨防衛のためにドル売り・自国通貨買い介入を実施する
と、外貨準備高が減少する。実際、8 月の外貨準備高(金を除くベース)は 4 月
に比べて、インドネシア▲13.7%、インド▲6.7%、トルコ▲4.6%、ブラジル▲3.1%
と軒並み減少しているが、国によって差がある。インドネシアの外貨準備高は
介入に伴い急減しているのに対して(第 1 図)、ブラジルは小幅減少に留まって
いる(第 2 図)。また、トルコは足元で増加に転じている。
(百万ドル)
(百万ドル)
第1図:インドネシアとトルコの外貨準備高(除く金)の推移
第2図:ブラジルとインドの外貨準備高(除く金)の推移
400,000
130,000
ブラジル
インドネシア
110,000
350,000
90,000
300,000
70,000
250,000
トルコ
インド
200,000
50,000
150,000
30,000
08
09
10
11
12
13
08
(年)
09
10
11
12
13
(年)
(資料)IMF、ブラジル中銀およびインド中銀資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(資料)IMF、インドネシア中銀およびトルコ中銀資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
1
2013 年 10 月 9 日
ブラジルの外貨準備高が小幅減少に留まっているのは、ブラジル中銀が外貨
準備を取り崩さない形で為替介入しているためである。2012 年以降、中銀の為
替介入は先物市場が中心だが、8 月 23 日から実施されている大規模な為替介入
プログラムにおいても、毎週月曜日から木曜日は先物市場での通貨スワップ入
札、毎週金曜日は直物市場でのレポ取引(=買戻し条件付取引)を実施、年末
までに 600 億ドル規模のドル資金を供給し、必要に応じて追加的なオペレーシ
ョンを行なう、としている。ブラジルの外貨準備高は 8 月時点で 3,728 億ドル、
これは輸入の 19 ヵ月分、短期対外債務残高の約 5 倍に相当し、対外支払いには
十分な水準である。
また、トルコの外貨準備高は 2012 年以降増加傾向にある。今年 5 月から 7 月
にかけてドル売り・リラ買い介入により減少したものの、足元 8 月は再び増加
に転じている。外貨準備の積み増しは、トルコ中銀が市中銀行に対して預金準
備の一定比率について外貨または金での預け入れを容認する「リザーブ・オプ
ション・メカニズム」の効果によるところが大きい。
新興国の外貨準備高の動向は、米国債に影響を与える点でも注目される。世
界の外貨準備の大半は米国債で運用されているとみられることから、ドル売り
介入は米国債の売り圧力になり得る。外国政府・中銀保有の米国債残高は 6 月
から 9 月前半にかけて減少しており(第 3 図)、ドル売り介入に伴う米国債売却
を示唆している。仮に、新興国が大規模なドル売り介入を実施すれば、米国債
への売り圧力が高まることになる。
( 10 億ドル)
3,000
第3図:FRBカストディ勘定における外国政府・中銀保有の
米国債残高(当該週平均保有残高)
2,900
米国債格下げ
2,800
2,700
2,600
2,500
11/01
11/07
12/01
12/07
13/01
( 資 料 ) FRB統 計 よ り 三 菱 東 京 UFJ銀 行 経 済 調 査 室 作 成
13/07
(年/月)
足元で新興国通貨の下落は一服しているものの、米国の財政協議難航による
ドル安要因が大きい。今回、通貨が急落した 4 ヵ国については、インフレ抑制
と景気回復、経常赤字縮小といったファンダメンタルズの改善が見られなけれ
ば、近い将来実施される米 QE 縮小の際に再び資本フローが不安定化するおそれ
があり、ファンダメンタルズ改善に向けた経済政策運営が求められている。
(H25.10.9 篠原
令子
[email protected])
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