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欧州における CO2 排出権取引の現状(その2)

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欧州における CO2 排出権取引の現状(その2)
情報報告
ウイーン
●欧州における CO2 排出権取引の現状(その2)
前回に引き続き、
2009 年 7 月 9 日~10 日にブリュッセルで開催された
“EU Emissions Trading
2009”
(欧州排出権取引に関する国際会議)について報告する。主催は Environmental Finance
社(www.environmental-finance.com)で、環境情報雑誌の出版が主要業務である。以下に、各
講演内容について報告していく。
2. EU-ETS フェーズ2-履行状況の検証および評価
Henry Derwent 氏、IETA(International Emissions Trading Association:国際排出権取引協会)
2.1 数字からみた状況
2008~2012 年における欧州排出権取引制度(いわゆる EU-ETS フェーズ 2)の履行状況の中
間報告を行う。
IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)が言及するシナリオでは、2006
~2030 年の間に、エネルギー関連の CO2 排出量が 45%上昇、すなわち 28 ギガトンから 41 ギガ
トンへ増加するとしている。この増加分の 97%が、発展途上国からの排出分であるが、相殺は
いかなる場所においても可能である。
また大気中 CO2 濃度を 550ppm に維持するためには、2030 年における目標を現在考えられて
いる 41 ギガトンからさらに 8 ギガトン削減した、
33 ギガトンとする必要がある。
さらに 450ppm
とするのであれば、15 ギガトンの削減の、26 ギガトンとする必要となる。2020 年までの削減
必要量は、4 ギガトンである。
京都議定書の第 1 約束期間(2008~2012 年)に取られている手段で、特に目新しいものは今
のところ出てきていない。気候変動枠組条約の中での 2012~2020 年にかけての提議として、必
要な排出削減は、全体で約 4 ギガトンである。
以上の流れを図 2-1 に示す。
出典:EU Emissions Tranding 2009 講演発表資料、Henry Derwent 氏、IETA
図 2-1 今後の CO2 削減目標
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ウイーン
2.2 2009 年中間時点での EU-ETS:成功または失敗の 8 つのチェックポイント
以下の 8 項目に常に注目しながら、EU-ETS の今後の推移を検証していく必要がある。
(1)混乱するような明らかな下落を避けてきたか?
(2)システムは物理的に正確に機能しているか?
(3)強力で持続的な政治的支援を受けているか?
(4)経済的打撃を受けていないか?
(5)本当に排出削減に貢献しているか?
(6)効果的な価格指標を作り出しているか?
(7)特に、価格指標が投資形態に影響を及ぼしているか?
(8)地球規模の問題の解決に結び付いているか?
(参考資料)
・EU Emissions Trading 2009 講演発表資料、Henry Derwent 氏
IETA(International Emissions Trading Association:国際排出権取引協会)
3. 減少する炭素取引
Mark C. Lewis 氏、ドイツ銀行
3.1 概略
EU-ETS(European Union Emissions Trading Scheme:欧州連合域内排出量取引制度)は、
CO2 排出量そのものの減少や炭素市場の地球規模的な上昇などにより、今年が本制度自体の生
き残りをかけた年になる。本報告では、炭素価格の推移、分野別の排出権収支状況、その中で
も収支で赤字が見込まれる電力会社の状況、新規参入施設枠を活用する場合の収支改善予測な
どについての現状について説明する。
3.2 炭素価格の推移
EUA(EU Allowance:欧州排出権取引制度)および CER(Certified Emission Reduction:国
連認証排出削減量)それぞれの制度における、2008 年 1 月~2009 年 7 月の炭素価格の推移を図
3-1 に示す。
炭素価格(ユーロ/トン)
EUA:欧州内排出権取引制度内価格
CER:国連認証価格
図 3-1
出典:Datastream
欧州排出権取引制度(EUA)および国連認証排出削減量制度(CER)
における炭素価格の推移
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ウイーン
3.3 CO2 相場の今後の見通し
CO2 相場に関して、2008 年 5~10 月にドイツ銀行が発表した予測を図 3-2 に、その後状況が
悪化し、2008 年 12 月に修正した予測を図 3-3 にそれぞれ示す。
図 3-2
出典:ドイツ銀行
2008 年 5~10 月時点での CO2 相場に関する予測
出典:ドイツ銀行
図 3-3 経済悪化により 2008 年 12 月に修正した CO2 相場に関する予測
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ウイーン
3.4 EU23 ヶ国の分野別 EUA 収支
EU 加盟の大半に当たる 23 ヶ国における、分野別での欧州排出権取引制度(EUA)における、
排出権の収支状況について図 3-4 に示す。
(単位:メガトン)
発電所
精錬所
コークス
鉄鉱石
製鉄
セメント
ガラス
セラミック パルプ・製紙
出典:欧州委員会、NAPs(National Allocation Plan:各国国内割当計画)
、ドイツ銀行
図 3-4 EU23 ヶ国における分野別 EU 内排出権取引に関する収支状況
3.5 EU23 ヶ国の電力分野における 2008 年の排出権状況(取引された排出権も含む)
次に、2008 年の電力分野における、取引された量を含んだ正味の EU 内排出権収支状況につ
いて、図 3-5 に示す。
10 (単位:メガトン)
スウェーデン
スロヴェニア
イギリス
スロヴァキア
ルーマニア
ポルトガル
ポーランド
オランダ
マルタ
リトアニア
ルクセンブルク
スペイン
-40
ラトヴィア
イタリア
アイルランド
-30
ハンガリー
ギリシア
フランス
エストニア
フィンランド
デンマーク
チェコ
キプロス
ブルガリア
-20
ベルギー
-10
オーストリア
0
-50
-60
-80
ドイツ
-70
出典:欧州委員会、NAPs(National Allocation Plan:各国国内割当計画)
、ドイツ銀行
図 3-5 各国電力分野における 2008 年の欧州排出権収支状況(取引された量を含む)
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ウイーン
3.6 ドイツ銀行参加プロジェクトにおける 2008~2012 年の排出権取引量の状況
2008~2012 年における、ドイツ銀行が参加するプロジェクトにおける排出権取引量の総計を
表 3-1 に示す。表内の NER(New Entrant Reserve)とは、新規参入施設枠を意味する。
表 3-1
2008~2012 年のドイツ銀行参加プロジェクトにおける排出権取引量収支状況
電力分野を
除く総量
+ 90
+190
+140
+130
+100
+650
電力分野
2008 年
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
上記合計
-180
-143
-158
-194
-208
-883
(単位:メガトン)
排出権取引量
(NER 不使用)
- 90
+ 47
- 18
- 64
-108
-233
不使用
NER 量
+ 65
+ 65
+ 65
+ 65
+ 65
+325
出典:ドイツ銀行
3.7 RWE 社における売却(売約)済み電力量
ドイツ大手のエネルギー会社 RWE 社が、現時点においての 2008~2012 年分(EU-ETS フェー
ズ 2 期間)の売却または売約済みの電力量の割合を表 3-2 に示す。
表 3-2
RWE 社がすでに売却または売約した電力量の割合
ETS フェーズ2
売却・売約済み発電量割合
2008 年
100%
2009 年
>95%
2010 年
>80%
2011 年
>45%
2012 年
>20%
2008~2012 年の平均値
>68%
出典:RWE
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3.8 EU-ETS フェーズ 1,2 における RWE 社の排出権量
EU 排出権取引枠組フェーズ 1(2005~2007 年)およびフェーズ 2(2008~2012 年)における、
RWE 社の排出権量の状況を図 3-6-1 に、また RWE 社における今後の排出権不足量について図
3-6-2 に、それぞれ示す。
(単位:メガトン/年)
無償割当量(取引後)は
排出予想量の約 60%
=約 80 メガトン±5%
2007 年 CO2
排出量
2007 年 CO2
排出割当量
2008~2012 年の
年間 CO2 排出予想量
契約上保証された量
図 3-6-1
2008~2012 年の
年間 CO2 排出割当量
自社発電所からの量
出典:RWE 社
EU-ETS フェーズ 1,2 における RWE 社の排出権状況
(メガトン/年)
図 3-6-2
出典:RWE 社
2008~2012 年、2013~2020 年における RWE 社の排出権不足量の推測
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3.9 NER の使用有無による排出権量への影響
EU-ETS フェーズ 2(2008~2012 年)において、NER(新規参入施設枠:New Entrant Reserve)
を全額使用する場合の排出権余剰量の推移予測について図 3-7-1 に、また NER を使用しない場
合の排出権不足量の推移予測を図 3-7-2 に、それぞれ示す。
(単位:メガトン)
全排出枠との差(平均値)
全排出枠との差(各年)
図 3-7-1
出典:ドイツ銀行
EU-ETS フェーズ 2 における NER を全額使用する場合の排出権余剰量
(単位:メガトン)
既存施設における排出枠との差(各年)
既存施設における排出枠との差(平均値)
図 3-7-2
出典:ドイツ銀行
EU-ETS フェーズ 2 における NER を使用しない場合の排出権不足量
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3.10 CO2 相場の長期展望
炭素価格の推移予測を図 3-8 に示すが、これは原油価格を 1 バレル 85 ドル、また石炭価格
を 1 トン 125 ドルと長期的視点で仮定した場合、
今日の炭素価格が 1 トン当たり 25~30 ユーロ
となると想定したものである。
(炭素価格:ユーロ/トン)
逆ザヤのリスクは
以前よりかなり低下
キャリーコストを
4%として計算
出典:ドイツ銀行
図 3-8 炭素価格の推移予測
3.11 将来の地球規模的炭素市場の展望
地球規模市場での炭素取引量の予測として、2010 年終わりまでに 1,750 億米ドル、2020 年
終わりまでには 1 兆米ドルが見込まれている。
特に北アメリカおよびオセアニアにおいて、
CERs
(Certified Emission Reduction:国連認証排出削減量)の需要が増加すると考えられている。
図 3-9 に地球規模での炭素市場の動きのイメージを示す。
将来連係の
可能性
京都議定書
を通じての連係
出典:ドイツ銀行
図 3-9 地球規模での炭素市場の動きのイメージ
(参考資料)
・EU Emissions Trading 2009 講演発表資料、Mark C. Lewis 氏、ドイツ銀行
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4. EU-ETS および炭素取引の地球規模での傾向
Wolfgang Sterk 氏、Wuppertal Institute(ドイツ西部 Wuppertal 市の研究機関)
4.1 ETS の設計に関する問題
排出権取引制度(ETS:Emissions Trading Scheme)の設計上の問題として、以下の 5 項目
が考えられる。
①温室効果ガスおよび産業分野の保証
②目標設定および取引単位の割当
③融資および借入に関する規則
④輸出取引時に使用する単位の認知
⑤法令遵守の枠組み
以下では、主要各国における排出権取引制度の実施状況について説明し、今後の世界共通の
枠組みに発展させるための課題について検討する。
4.2 アメリカ
アメリカにおける通称ワックスマン・マーキー法は、地球環境およびエネルギー問題に関す
る法律であるが、下院を先日通過し、現在は上院で審議中である。
本法案が可決すれば、現在は RGGI(Regional Greenhouse Gas Initiative:地域温室効果ガ
スイニシアティヴという意味であるが、
実際にはアメリカ北東部 10 州地域連合)
や WCI
(Western
Climate Initiative:こちらはアメリカ太平洋側 9 州地域連合)のような、地域レベルでの取
組から、国全体に適用される法律へ発展することが見込まれている。また本法案は、農林業以
外の分野すべてで適用される見込みである。
具体的な数値目標として、2020 年までに 2005 年レベルから 17%削減、2050 年までに 83%
の CO2 削減を見込んでおり、キャップアンドトレード方式を含んだ法案となっている。
最初は 80%の無償割当が与えられるが、2025 年以降に無償割当は段階的に廃止される方針
である。融資については 1 年間の排出枠は無利息であるが、5 年後までの排出枠に対しては 8%
の利息が発生する。
オフセットの使用制限については、1 年当たり 20 億トンとし、10 億トンは国内から、残り
10 億トンは外国からの供給源とする。もし国内供給が不十分であれば、外国からの供給を 15
億トンとする可能性もある。また 2017 年からは、国際オフセットは本来の排出枠に対して 1.25
分の 1 に重み付けされることになる。
本法案に対する罰則としては、競売時の手形価格の 2 倍を支払うこととする。
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ウイーン
4.3 カナダ
現段階ではまだまだ不明確な点が多いが、連邦政府における制度設定が着手され、2010 年か
ら開始される見込みである。また先般のアメリカ大統領選挙以降、アメリカは共同での制度参
加に強い関心を示しているが、まだ実現はしていない。
従来の連邦政府制度は、魅力的な目標や価格設定などとの関連に問題を抱えていたが、現在
制定作業中の新制度は、アメリカとまったく同じにはならないが、両立できる可能性があると
されている。新制度については 2009 年 12 月のコペンハーゲン会議以前に、政策の概要が発表
される予定である。
州レベルで追加実施される制度については、アルバータ州は制定済で、また他の多くの州で
WCI(Western Climate Initiative:アメリカ太平洋側 9 州地域連合)とパートナーを組むため、
カナダ全体との関係はいまだ不明確なままである。
4.4 オーストラリア
ETS 採用については、現在議会において審議中であるが、農林業を除くすべての分野をカバ
ーする様々なシステムを制定予定である。
また農林業分野の自主的な参加は 2015 年からと見込
まれている。
エネルギーを大量に消費する輸出産業は排出量に対して 70~95%の無償排出権を得ている
が、石炭火力発電に対してはそれ以上の無償排出権が与えられている。
2015 年までの価格設定は、固定価格による追加排出権を政府が販売する場合、最初は 40 豪
ドル(約 23 ユーロ)とし、インフレによる 5%上昇も見込んでいる。
非林業分野に対する CERs、ERUs、RMUs の利用については、制限を設けない方針であるが、
ニュージーランドを除く外国への排出権販売によって、オーストラリア国内での CO2 価格を管
理し切れなくなる可能性を危惧している。
CERs:Certified Emission Reduction→CDM 事業で得られた認証排出削減量
ERUs:Emission Reduction Unit→共同実施事業で得られた排出削減ユニット
RMUs:Removal Unit→吸収源活動で得た吸収量
4.5 ニュージーランド
林業分野には 2008 年から適用開始となったが、排出権取引制度自体は現在新政府によって
検証されているところである。
また 2013 年までにすべての分野において適用され、
排出量 100%
を対象とする予定である。キャップ(排出量上限)は、国際基準と同等する見込みである。
電力および液体石油燃料供給者にとっては排出権取引となるのに対して、林業にとっては無
償割当となり、また輸出産業および農業にとっては 90%の無償割当が得られる制度となってい
るが、この無償割当は 2025 年までに段階的に廃止される。
非 LULUCF 分野(Land use and land use change and forestry:土地利用、土地利用変化お
よび林業)の CERs、ERUs、AAUs には、制限を設定しない方針である。
(AAUs:Assigned Amount Unit→各国が持つ排出枠に対する削減量である初期割当量)
罰則は、1 トン超過当たり 30 新ドル(約 13.5 ユーロ)で、法令を無視した場合は 60 新ドル
および次の新しい年からの追加排出権の放棄が含まれる。
2012 年以降は、排出権の価格上限設定または他の価格抑制方法が採られる可能性を残してい
る。
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4.6 スイス
2008 年より施行されているが、拘束力のある目的と交換に、CO2 税の免除を基にした制度で
ある。究極の目標は、2010 年において現状基準で 18%の CO2 削減、2000 年と比べて 7%の削減、
1990 年と比べて 4%の削減である。2010 年まで、無償割当は事後調整とする方針である。
CERs および ERUs については、制度の改変や、訳の分からない参入者に利用されたプロジェ
クト由来のものを除いて、基本的にすべて認める方針である。他の取引システムからの排出権
認可については、それぞれ要求の 8%、また優れた技術を用いる企業に対しては要求の 30%を
それぞれ認める方針である。
罰則は、免除された時点に遡った利息を含めて、CO2 排出量全量に対して税金が課税される
ことになる。2012 年以降は、EU-ETS との統合が希望されている。
4.7 日本
将来像は非常に不明瞭であるが、2005 年より小さい自主的な制度が採用開始となった。2008
年 10 月から排出権取引制度の自主的な試験段階が始まり、
企業は経団連の自主的な行動計画に
基づいた自主的な目標を定めた。現在は 700 以上の企業が参加し、大規模排出企業の大半が含
まれている。
2012 年以降は強制力のある排出権取引制度を持つことについて議論している。提案している
のは経済産業省と環境省である。また今年の総選挙で政権交代の可能性があり、現在の野党は
与党以上に野心的である。
4.8 議論
世界で統一した排出権取引制度を採用する上での問題として、現状の制度設計が国ごとに大
幅に異なっていること、また多くの国で価格設定をどうするべきかの問題を抱えているのが特
徴である。自国内で運営される制度設計は、必ずといっていいほど他の問題を引き起こしてい
る。
各国政府は履行によるリスクを最小限とすることに腐心している、設立の期間、価格が安定
し先が読めるようになることも含んでいる。完全な制度となるまでには、少なくとも数年はか
かると思われる。
最初は国家間で高いレベルでの経済統合や規制に関する協力が必要である。ヨーロッパ、北
アメリカ、オーストリアとニュージーランドなどがこれに該当する。これによって、来たる 10
年間に地域間協力が拡大し、2020 年以降には OECD(経済協力開発機構)並みに排出権取引制度
が完全統合される可能性も出てくると思われる。
それにも関わらず、CDM、JI(Joint Investment:先進国同士で温室効果ガス排出削減を行
う共同実施)
、もしくは 2012 年以降のメカニズムとは間接的にしか関連しない制度となり得る
危険性もある。
4.9 2012 年以降に向けて
EU-ETS フェーズ 2 が終了する 2012 年以降に、排出権取引を後退させようとする動きもある
ようだが、FCCC(United Nations Framework Convention on Climate Change:国連気候変動枠
組条約)において交渉が順調に進められることによって、排出権取引やその関連項目の動向に
決定的な影響を与えることになる。2012 年以降の方針に対する合意がなければ、国によっては
ETS の目標を見失うことになる。
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ウイーン
発展途上国の制度を強力に拡大することに対する FCCC の議論は、分野ごとのクレジット制
度、確固たる目標、取引に関する事項を中心に行われており、需要供給比率とその後の価格に
対して持続的に影響を与えるものとなる。
国内排出権取引制度と FCCC との連係強化によって、以下に示す効果が得られると考えられ
ている。
①FCCC は政策目標と一般的に受け入れられる努力分担(=キャップ)を決定することが可能と
なる。
②FCCC は排出権取引制度設計との調整に関わることも可能であるが、現在は少し差異が生じて
いる。
③排出権取引制度を通じて国家目標を各企業へ委託することは、コスト削減や経済効率の改善
に役立つものとなる。
④気候政策自体が変わることはない。
(参考資料)
・EU Emissions Trading 2009 講演発表資料、Wolfgang Sterk 氏、Wuppertal Institute
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