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3.地域のつながりの希薄化をもたらした要因

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3.地域のつながりの希薄化をもたらした要因
3.地域のつながりの希薄化をもたらした要因
ここまでで地域のつながりが希薄化していることを確認したが、以下では、なぜ地域のつなが
りは希薄化したのか、その要因について検証したい。
地域の希薄化をもたらした要因としては様々な点が指摘されている。例えば、「コミュニテ
ィ−生活の場における人間性の回復−」(国民生活審議会調査部会編:1969年)においては、①
交通通信機関の発達等による生活圏の拡大、②人口の都市集中、③生活様式および生活意識の都
市化、④機能集団の増大、⑤行政機能の拡大、⑥家族制度の変革、⑦農村における生産構造の変
化が、地域の希薄化の要因19として列挙されている。これらは、今から40年前までに進行した、
地域の希薄化の要因として挙げられたものであり、それ以降も地域のつながりを希薄化させ続け
たものもあるだろうし、それほど影響を与えなくなったものもあると考えられる。
ここでは上記の要因を踏まえつつ、先に示した①10年前と比べて地域のつながりが弱くなった
と回答した人が挙げた理由(人々の地域に対する親近感の希薄化、近所の人々の親交を深める機
会不足、他人の関与を歓迎しない人の増加など)、②地域から孤立している人の特性(配偶者が
いない人、子どもがいない人、雇用者、居住年数が5年未満の人、賃貸集合住宅に住む人など)
を手がかりとして、ここ30年間くらいに希薄化をもたらした可能性のある要因につき、それぞれ
の動きを見ていくことにする。
(1)人々の意識面における変化
深い近隣関係を望まない人が増えてきている
10年前と比べて地域のつながりが弱くなったと回答した人の38.3%が、
「他人の関与を歓迎しな
い人の増加」を理由として挙げているなど(前掲第2−1−26図)、地域のつながりの希薄化は
人々の意識によってもたらされた可能性がある。そこで、まず地域のつながりに対する人々の意
識がどのように変化してきたか見ていこう。
隣近所との望ましい付き合い方について尋ねたところ、「なにかにつけ相談したり、助け合え
るようなつきあい」と答えた人の割合が、73年の34.5%から2003年には19.6%にまで低下している
(第2−1−28図)。そしてその一方で、「会ったときに、あいさつする程度のつきあい」との回
答割合が15.1%から25.2%に高まっている。これは人々の求める地域のつながりが、深いものから
浅いものへと変化していることを意味しており、意識面からも地域のつながりの希薄化が進んで
いると言える。
多くの人は困ったときに助け合う関係を望んでいる
しかし近隣との関係が全く望まれなくなったわけではない。これは、あまり堅苦しくなく話し
合える関係を望む人が半数を超えることからも明らかである。また別の調査で、地域での望まし
い付き合い方を尋ねたところ、2004年においても、「住民全ての間で困ったときに互いに助け合
う」と回答した人が36.7%、
「気の合う住民の間で困ったときに助け合う」が25.8%と、合わせて6
割を超えている(第2−1−29図)。このように、多くの人は、日常的には深い付き合いは望ま
ないものの、困ったときは助け合いたいとの希望を持っており、いざというときは近隣関係を頼
りにしている。
19
84
本文では地域共同体崩壊の要因として挙げられている。
第1節●地域のつながりの変化と現状
第2-1-28図
隣近所との望ましい付き合いは浅い傾向
隣近所との望ましい付き合い方
会ったときに、
あいさつする程度のつきあい
あまり堅苦しくなく話し合えるようなつきあい
(年)
15.1
1973
その他
わからない・
無回答
なにかにつけ相談したり、
助け合えるようなつきあい
49.8
34.5
0.5
0.0
15.1
78
52.5
31.9
0.5
0.0
19.6
83
47.5
32.4
0.4
0.0
88
19.2
53.4
26.8
0.6
0.0
93
19.8
54.2
24.9
1.1
0.1
98
23.2
53.3
22.8
0.6
0.1
2003
25.2
54.0
19.6
1.1
0.0
0
20
40
60
80
100
(%)
(備考) 1.NHK放送文化研究所「日本人の意識調査」により作成。
2.
「隣近所の人とのつきあいのしかたがのせてあります。あなたはどれが望ましいとお考えですか。実際にどの
ようにしているかは別にして、ご希望に近いものをお答えください。」という問に対し、回答した人の割合。
第2-1-29図
第
2
章
地
域
の
つ
な
が
り
困ったときに助け合いたい人は6割以上
地域での望ましい付き合い
困ったときに助け合う事まではしなくても、
住民の間で世間話や立ち話をする
困ったときに助け合うことまではしなくても、
住民がみんなで行事や催しに参加する
困ったときに助け合うこと
まではしなくても、住民の間で
あいさつを交わす
困ったときに助け合う62.5%
1.7
36.7
25.8
気の合う住民の間で困ったときに助け合う
住民全ての間で困ったときに互いに助け合う
17.1
4.9
9.7
0.3
3.8
地域での付き合いは必要ない
その他
わからない
0
20
40
60
80
100
(%)
(2004 年)により作成。
(備考) 1.内閣府「社会意識に関する世論調査」
2.
「地域でのつきあいは、どの程度が望ましいと思いますか。次の中から1つお答えください。」という問に対し、
回答した人の割合。
3.回答者は、全国の 20 歳以上の者 6,886 人。
85
地域への貢献意識は高まっている
人々の社会への貢献意識の推移を見ると、「何か社会のために役立ちたい」と考える人は長期
的に高まる傾向にあり、90年以降は60%前後で推移している(第2−1−30図)。さらに具体的
にどのように貢献したいか尋ねた結果を見ると、「自然・環境保護に関する活動」を挙げた人が
37.9%、
「社会福祉に関する活動」が35.8%、
「町内会などの地域活動」が35.0%と、地域活動を通
じて社会に貢献したいと考えている人が多いことが分かる(第2−1−31図)。つまりこれらの
結果を合わせると、地域への貢献意識が高まっていることを見て取ることができる。
また、NPOやボランティア活動へ現在参加していないが、今後は参加したいと希望する人の
割合は51.6%で、今後も参加したくないと考える人の38.1%を大きく上回っており、地域への貢献
意識の高まりが反映された結果であると考えられる(第2−1−32図)
。
しかし、このように参加意識が高いにもかかわらず、先で示したように実際の参加は低迷して
いるのはなぜだろうか。NPOやボランティア活動に参加できない要因について尋ねたところ、
「活動する時間がない」との回答が35.9%と最も多かった(第2−1−33図)
。これは地域活動へ
の参加の壁として時間的制約があることを示唆している。また「参加するきっかけが得られない
こと」が14.2%、
「身近に団体や活動内容に関する情報がないこと」が11.1%、
「身近に参加したい
と思う適当な活動や共感する団体がないこと」が6.6%であるなど、地域活動に関する情報不足、
身近に魅力的な活動が存在しない点も制約となっている。つまり、せっかく地域への貢献意識は
高まっているにもかかわらず、様々な壁によってこれが活かされていない状態にある。
第2-1-30図
社会への貢献意識は高まっている
社会貢献意識の推移
(%)
社会のために役立ちたい
と思っている
70
62.6
60
50
48.3
45.2
40
34.9
30
20
あまり考えていない
1977
79
81
83
85
87
89
91
93
96
98
2002 2005 2007
(年)
(備考) 1.内閣府「社会意識に関する世論調査」により作成。
2.「あなたは、
日頃、社会の一員として、何か社会のために役立ちたいと思っていますか。それとも、
あまりそのようなことは
考えていませんか。」という問に対し、回答した人の割合。
3.回答者は、全国の20歳以上の者。
86
第1節●地域のつながりの変化と現状
第2-1-31図
地域活動を通じて社会に貢献したいと考えている人が多い
社会のために役立ちたい内容
0
10
20
30
自然・環境保護に関する活動
(環境美化、
リサイクル活動、牛乳パックの回収など)
37.9
社会福祉に関する活動(老人や障害者などに
対する介護、身の回りの世話、給食、保育など)
35.8
町内会などの地域活動(お祝い事や不幸などの手伝い、
町内会や自治会などの役員、防犯や防火活動など)
35.0
自分の職業を通して
21.7
交通安全に関する活動
(子どもの登下校時の安全監視など)
21.5
体育・スポーツ・文化に関する活動(スポーツ・レクリエーション指導、
祭り、学校でのクラブ活動における指導など)
20.4
自主防災活動や災害援助活動
20.4
家事や子どもの養育を通して
19.9
保健・医療・衛生に関する活動(病院ボランティアなど)
16.2
募金活動、
チャリティーバザー
地
域
の
つ
な
が
り
11.2
青少年健全育成に関する活動
(ボーイスカウト・ガールスカウト活動、子ども会など)
10.4
公共施設での活動
(公民館における託児、博物館の展示説明員など)
9.9
国際交流(協力)に関する活動
(通訳、難民援助、技術援助、留学生援助など)
わからない
第
2
章
12.4
人々の学習活動に関する指導、助言、
運営協力などの活動(料理、英語、書道など)
その他
40(%)
9.3
2.9
2.3
(備考) 1.内閣府「社会意識に関する世論調査」
(2007年)により作成。
2.第2−1−30図の備考2.の問で、
「社会のために何か役立ちたいと思っている」と回答した人に、
「何か社会のために
役立ちたいと思っているのはどのようなことですか。この中からいくつでもあげてください。」と尋ね、回答した人の割合。
3.回答者は、全国の20歳以上の男女3,498人
87
第2-1-32図
今後、
NPOやボランティアに参加したい人は5割
NPOやボランティアへの参加状況
(%)
無回答 0.3
現在参加している
10.1
今後も参加したくない
38.1
38.1
51.6
今後は参加したい
(備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」
(2003年)により作成。
2.
「現在参加している」は、
「あなたはNPOやボランティア、地域の活動などに参加したことがありますか。また、今後参加
したいと思いますか。あてはまるもの1つに○をお付けください。
(○は1つ)」という問に対し、
「現在、積極的に参加し
ている」または「現在、
お付き合いで参加している」と回答した人の合計の割合。
「今後は参加したい」は、同質問に
対し、
「過去に参加したことがあり、
また参加したい」、
「これまで参加したことはないが、今後は是非参加したい」また
は「これまで参加したことはないが、機会があれば参加してみたい」と回答した人の合計の割合。
「今後も参加したく
ない」は、同質問に対し、
「過去に参加したことがあるが、
もう参加したくない」または「これまで参加したことはなく、今
後も参加したいとは思わない」と回答した人の合計の割合。
3.回答者は、全国の15歳以上80歳未満の男女3,908人。
第2-1-33図
NPOやボランティア、地域の活動に参加しないのは
時間や参加のきっかけがないため
NPOやボランティア、地域の活動に参加しない理由
(%)
その他の理由
(無回答含む)
活動する時間がないこと
17.1
身近に参加したいと思う
適当な活動や
共感する団体がないこと
35.9
6.6
11.1
身近に団体や活動内容に
関する情報がないこと
14.2
15.1
全く興味がわかないこと
参加するきっかけが
得られないこと
(備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」
(2003年)により作成。
2.「NPOやボランティア、地域の活動に参加する際に苦労すること、
または参加できない要因となることはどんなことです
か。あなたにとってあてはまるもの1つに○をお付けください。
(○は1つ)」という問に対し、回答した人の割合。
3.回答者は、全国の15歳以上80歳未満の男女3,908人。
88
第1節●地域のつながりの変化と現状
(2)サラリーマン化
サラリーマン化により地域のつながりが希薄化した
地域のつながりの現状を分析した際、サラリーマンは近隣関係が弱く、地域からも孤立する傾
向にあることを明らかにしたが、これは、サラリーマン化が地域のつながりを希薄化させる可能
性を示唆するものである。職住が分離し地域との結び付きが浅い傾向にある雇用者が増加し、農
林漁業者や自営業者が減少すれば、総じて地域のつながりは希薄化することが予想されるが、分
析結果はその予想が正しいことの一つの証左となる。またサラリーマンのつながりの弱さを視覚
的に確認するため、従業上の地位別に、地域で助け合う地域住民がどの程度いるか見ると、雇用
者については、助け合う地域住民がいない人が70.0%に上る反面、自営業は59.0%とその割合が低
い(第2−1−34図)
。
第2-1-34図
第
2
章
自営業者や無職の人は地域に助け合う人が多い
従業上の地位別に見た地域で助け合う人の数
1∼4人
0人
雇用者
70.0
無職
24.7
61.7
自営業
31.8
59.0
0
20
5∼9人 10人以上
31.2
40
60
4.3 1.0
4.9
6.9
80
地
域
の
つ
な
が
り
1.5
2.9
100
(%)
(備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」
(2007年)により特別集計。
2.
「あなたのご近所づきあいについてお聞きします。次に挙げる項目にあてはまるご近所の方の人数をお答えください。」
という問に対し、
「互いに相談したり日用品の貸し借りをするなど、生活面で協力しあっている人」について回答した人
の割合。
3.雇用者は、正社員(公務員を含む)
で管理職および管理職以外、パートタイム従業者、
アルバイトなど正社員以外の
被雇用者、会社、団体などの役員の合計。無職は、専業の主婦・主夫、学生、無職の合計。自営業は、
自営業(農林
漁業、商工サービス業、
自由業などを含む)
を言う。
4.回答者は、全国の15歳以上80未満の男女3,364人。
さてここで、就業者のうち雇用者が占める割合の推移を見ると、55年には43.5%に過ぎなかっ
たが、その後一貫して比率が高まり、2006年には85.7%となるなど、この半世紀でサラリーマン
化が大きく進展したことが分かる(第2−1−35図)。そしてこのような地域から孤立しやすい
雇用者の比率が高まったことは、地域のつながりを希薄化させたことの理由の一つと考えられる。
89
第2-1-35図
進む就業者のサラリーマン化
就業者のうち雇用者が占める割合の推移
非雇用者
(%)
100
80
46.6
39.2
35.1
30.2
28.3
25.7
22.6
15.2
16.9
18.5
14.3
雇用者
56.5
60
40
43.5
20
0
1955
53.4
60
60.8
65
64.9
69.8
70
75
71.7
80
74.3
85
77.4
90
81.5
95
84.8
83.1
2000
2005
85.7
2006(年)
(備考) 1.総務省「労働力調査」により作成。
2.就業者数全体に占める雇用者数の割合。
サラリーマンの中でも長時間働く人ほど地域活動から遠ざかる
サラリーマンの中でも長時間労働をする人ほど地域活動を行わない傾向にある。雇用者につい
て、過去1年間にボランティア活動をしたことのある人の割合を、労働時間別に見ると、週39時
間以下については30.5%であるが、労働時間が長くなるほどその率が低下し、週60時間以上につ
いては24.6%となる(第2−1−36図)
。
第2-1-36図
労働時間が長くなるほど、ボランティア参加率は低下
週間労働時間別に見たボランティア活動行動者率
(%)
40
30.5
30
28.0
24.6
20
10
0
39時間以下
40∼59時間
60時間以上
(備考) 1.総務省「社会生活基本調査」
(2001年)により特別集計。
2.対象は、
「雇用されている人」
(正規の職員・従業員、パート、
アルバイト、労働者派遣事務所の派遣社員、
その他)お
よび「会社などの役員」の合計。
90
第1節●地域のつながりの変化と現状
またこれを片道の通勤時間別に見ると、自宅は33.1%であるが、通勤時間が長くなるほどその
率が低下し、2時間以上になると21.1%に低下する。そしてこれらの結果は、拘束時間が長くな
るほど、サラリーマンは地域から孤立する可能性が高まることを示唆している(第2−1−37図)
。
第3章で明らかにするように、最近は働き盛りの男性を中心に、長時間労働する人が増加してい
るが、これにより地域から孤立する人が増えている可能性がある。
第2-1-37図
通勤時間が長いほどボランティアに参加する割合は低下
普段の片道通勤時間別に見たボランティア活動行動者率
(%)
40
33.1
31.6
28.4
30
24.3
23.3
23.7
22.6
21.1
20
10
0
自
宅
15
分
未
満
15
∼
30
分
未
満
30
∼
45
分
未
満
45
分
∼
1
時
間
未
満
1
時
間
∼
1
時
間
30
分
未
満
1
時
間
30
分
∼
2
時
間
未
満
2
時
間
以
上
第
2
章
地
域
の
つ
な
が
り
(備考) 1.総務省「社会生活基本調査」
(2001年)により特別集計。
2.対象は、
「雇用されている人」
(正規の職員・従業員、パート、
アルバイト、労働者派遣事務所の派遣社員、
その他)お
よび「会社などの役員」の合計。
(3)単身世帯の増加
単身世帯の人は地域での交際が少ない
単身世帯の人は、近隣との交際が少ないと一般的に言われているが、隣近所との行き来の程度
や町内会・自治会への参加頻度は、他の世帯に属する人と比較して、実際のところどうなってい
るのだろうか。そこでまず、隣近所の人たちとの行き来の程度を尋ねたところ、単身世帯では
「ほとんど行き来していない」と回答した人が34.6%、「あてはまる人がいない」と回答した人が
18.8%となっているなど、半数を超える人が、隣近所との関係がほとんどないという状況にある
(第2−1−38図)
。
次に、地域活動の代表的な存在である町内会・自治会への参加頻度について尋ねたところ、単
身世帯では「参加していない」と回答した人が70.0%となっており、他の世帯より「参加してい
ない」と回答した人が多い。このように単身世帯の人は、隣近所との行き来、町内会・自治会へ
の参加頻度ともに、他の世帯の人より少なくなっている(第2−1−39図)
。
91
第2-1-38図
単身者は行き来の程度が少ない
世帯別隣近所の人との行き来の程度
(%) 50
夫婦だけ
40
34.6
夫婦と子どもと親
53.4%
30
18.8
20
それ以外
夫婦と子ども
10
単身
0
しよ
てく
い行
るき
来
し行あ
てきる
い来程
る 度
し行あ
てきま
い来り
な
い
し行ほ
てきと
い来ん
な ど
い
人あ
がて
いは
なま
いる
(備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」
(2007年)により特別集計。
2.
「あなたは現在、次(「隣近所の人」)にあげる人たちとどのくらい行き来していますか。」という問に対して、回答した人
の割合。
3.
「夫婦と子どもと親」とは、
「夫婦と子どもと親世帯」と「夫婦と子どもと親と夫婦の兄弟姉妹世帯」とを合計したもの。
4.回答者は、全国の15歳以上80歳未満の男女3,348人。
第2-1-39図
単身者の町内会・自治会への参加度合いは低い
世帯別町内会・自治会の参加程度
70.0
(%) 70
61.8
60
夫婦と子どもと親
(夫婦の兄弟姉妹を含む)
52.1
50
夫婦と子ども
41.9
40.5
43.0
40.8
40
36.6
30
29.1
20
10
18.6
15.1
11.3
9.1
8.9
単身
夫婦だけ
21.1
それ以外
0
程月
度に
以1
上日
程年
度に
数
回
い参
な加
いし
て
(備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」
(2007年)により特別集計。
2.「あなた自身の地域における活動についてお聞きします。あなたは現在、<A欄>(町内会・自治会)のような活動に
参加されていますか。参加の頻度についてお答えください。」という問に対して、回答した人の割合。
3.
「夫婦と子どもと親」とは、
「夫婦と子どもと親世帯」と「夫婦と子どもと親と夫婦の兄弟姉妹世帯」とを合計したもの。
4.回答者は、全国の15歳以上80歳未満の男女3,347人。
92
第1節●地域のつながりの変化と現状
単身世帯は増加している
ここで、単身世帯の推移を見てみると、過去30年の間にその数および割合がともに増加してお
り、2005年には一般世帯の29.5%を単身世帯が占めるまでになっている。このような地域とのつ
ながりが少ない単身世帯の増加も、地域のつながりが希薄化していることの背景の一つと言えよ
う(第2−1−40図)
第2-1-40図
単独世帯数および割合は増加している
単独世帯の数と割合
(千世帯)
29.5
15,000
12,000
20.3
19.5
19.8
単独世帯の割合(右目盛)
25.6
23.1
20.8
27.6
(%)
30
14,457
12,911
20
11,239
第
2
章
9,000
9,390
単独世帯の数(左目盛)
6,000
7,105
6,137
6,561
1970
75
7,895
10
3,000
0
80
85
90
95
2000
地
域
の
つ
な
が
り
0
2005(年)
(備考) 1.総務省「国勢調査」により作成。
2.一般世帯における「単独世帯」の割合。
(4)居住環境
賃貸共同住宅の住民は居住年数が短く、近所付き合いも少ない
地域のつながりの現状を分析した際、賃貸共同住宅に住む人は地域から孤立する傾向にあるこ
とを明らかにした。先に見た「地域から孤立している人」の住まいを見てみると、全体と比較し
て賃貸共同住宅(選択肢では「民間の借家(集合住宅)
」
)に住む人の割合が高い(第2−1−41
図)
。
また、5年以上居住している人については、近隣住民との行き来が多く、近隣関係も深いとの
傾向が見られることを指摘したが、同じ調査で住まい別の居住年数を見てみたところ、賃貸共同
住宅(選択肢では「民間の借家(集合住宅)
」
)に住んでいる人は、5年以上居住している人の割
合が少なくなっており、全体として他に比べて居住年数が短くなっている(第2−1−42図)。
このことは、賃貸共同住宅の住民はすぐに転居することが多いため、近所付き合いが少ないと言
われることと整合的である。
93
第2-1-41図
地域から孤立している人は借家集合住宅が多い
地域から孤立している人の居住環境
0
20
40
全体
60
72.6
地域から
孤立している人
(%)
100
80
7.7 3.8
55.4
8.6
持家(1戸建て)
4.4
10.3
22.8
3.2
2.4
4.4 4.5
公営の借家
持家(集合住宅)
給与住宅など
その他
民間の借家(集合住宅)
民間の借家(1戸建て)
(備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」
(2007年)により特別集計。
2.「あなたのお住まいは次のどれにあたりますか。
(○は1つ)」という問に対し、回答した人の割合。
3.地域から孤立している人とは、
まず「町内会・自治会」、
「その他の地縁活動」、
「スポーツ・趣味・娯楽活動」、
「NPO
などのボランティア・市民活動」のいずれの地域活動にも参加していないこと。次に、
「あなたのご近所づきあいにつ
いてお聞きします。次に挙げる項目にあてはまるご近所の方の人数をお答えください。」という問に対し、
「あいさつ程
度の最小限のつきあいの人」のみが1人以上いる、
または全く近所づきあいをしている人がいない人を示す。
4.回答者は、全国の15歳以上80歳未満の男女で、
「全体」は3,378人、
「地域から孤立している人」は689人。
第2-1-42図
賃貸集合住宅に住む人の居住年数は短い
住まい別居住年数
0
20
40
60
(%)
100
80
2.8
総計
4.3
10.5
14.6
22.8
45.0
1.6
持家
(1戸建て)
6.5
12.0
23.1
54.9
2.0
民間の借家
(集合住宅) 9.0
17.3
1年未満 1∼2年未満
27.2
24.9
2∼5年未満
5∼10年未満
14.5
7.2
20年以上
10∼20年未満
(備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」
(2007年)により特別集計。
2.
「あなたが、現在のご住所に住みはじめてから何年くらい経ちますか。
(○は1つ)」という問に対し、回答した人の割合。
3.回答者は、全国の15歳以上80歳未満の男女で、
「総計」は3,370人、
「持家(1戸建て)」は2,448人、
「民間の借家
(集合住宅)」は346人。
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第1節●地域のつながりの変化と現状
地域のつながりを持たない傾向にある賃貸共同住宅の住民が増加した
ここで住宅の建て方の割合の推移を見ていこう。80年には借家・共同住宅は12.9%であったが、
一貫して比率が高まり続け、2005年には19.9%となった(第2−1−43図)
。このように、地域か
ら孤立する傾向にある賃貸共同住宅が増加していることが、地域のつながりを希薄化させている
と言われることの背景の一つにあると言える。
第2-1-43図
賃貸共同住宅は増加している
所有関係別住宅の建て方の推移(世帯人員ベース)
(年)0
20
1980
40
60
(%)
100
80
1.8 2.9
6.1 5.5
3.8
65.2
12.9
5.4 0.3
13.9
4.9 0.2
16.3
4.3 0.2
1.5
85
65.3
90
64.7
3.9 3.8
5.7 4.5
1.3
3.4
4.7 3.8
5.1
1.0
63.5
95
2.9
5.5 3.8
4.5
0.8
63.3
2000
2005
持ち家・一戸建
持ち家・長屋建
3.8
19.1
8.6
3.4 1.9
3.8
19.9
持ち家・共同住宅
借家・一戸建
4.2 0.2
3.5
7.1
0.7
62.5
18.3
2.2
0.2
2.8
第
2
章
地
域
の
つ
な
が
り
0.1
給与住宅
借家・共同住宅
その他
借家・長屋建
(備考) 1.総務省「国勢調査」により作成。
2.借家とは、公営の借家、都市機構・公社の借家、
民営の借家を合計したもの。
3.その他とは、持ち家、借家、給与住宅において住宅の建て方が一戸建、長屋建、共同住宅のどれもあてはまらないもの。
コラム
賃貸住宅に住む人の意識
関東・関西の都市圏にて、賃貸集合住宅に住む18歳∼34歳の人を対象に行った「不動産
情報ポータルサイトHOME’
S調査」によれば、引っ越してきた時に、ご近所のどなたに挨
拶をしたか尋ねたところ、一人暮らしの人は「誰にも挨拶はしていない」が51.9%と半数を
超える人が何ら挨拶をしていない。他方で、子どもがいる家庭については、「隣の部屋の人」
が55.9%、
「同じマンション・アパートの部屋全員の人」が37.3%、
「上下階の人」が37.0%
と、比較的多くの人に挨拶をしている。
また、ご近所とどんな付き合い方をしているか尋ねたところ、一人暮らしの人は「近所づ
きあいはしていない」と回答した人が43.1%となっている。また、ご近所付き合いがあって
良かった、もしくはあれば良かったと思うことを尋ねたところ、一人暮らしの人については、
63.9%の人が「近所づきあいの必要性を感じたことがない」と回答しており、総じて一人暮
らしの人は、付き合いが少ないことがうかがえる。
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