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日本の労働組合 グローバル化・ボーダーレス化時代における 労働運動の

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日本の労働組合 グローバル化・ボーダーレス化時代における 労働運動の
特 集
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
特集
日本の労働組合
―グローバル化・バーチャル化時代の運動課題―
労働組合の組織率低下が続いている。裏を返せば、労働組合の真価が問われる時代ともい
えよう。組織率低下に歯止めがかからない原因として、日本経済の製造業からサービス業中
心型への転換、それに伴うパートタイマーや派遣社員の増加が、繰り返し強調される。だが、
労組が直面する課題はそれだけではない。商品・サービス、資本のグローバル化のなかで
労働市場のグローバル化はますます勢いを増すであろうし、
I
T技術の進展は予想さえ困難
な職種や就業形態を産みだすことも確実だろう。本特集では変革期真っただ中の労働組合
の課題を探った。
グローバル化・ボーダーレス化時代における
労働運動の課題
南雲 光男(サービス・流通連合 会長)
市場万能主義・資本優先のグローバル化は世
界経済に与えたのである。このような変化のなかで市場
界経済の危機
万能主義や資本優先のマネーゲームが台頭してきたので
ある。市場万能主義は1国営事業の民営化、2市場の
グローバル化とはいったい、世界経済や人々の暮らし
ボーダーレス化(WTOの電気通信協定)、3民間部門が
に何をもたらしているか。今、検証しなければならない。
行っているサービス部門からの公務部門の撤退、4政府
かつて日本では国際化という言葉が多くの人々によって
の規制緩和、5労働市場の弾力化などに代表されるもの
使用された。ここでいう国際化は欧米化であり、日本企
であり、集団として保障されるべき社会保障やセーフ
業のアジアへの進出であり、地球全体に目を転じた、い
ティネット、ミニマム基準もすべて個人的対応を強調し、
わゆる今日的なグローバル化ではなかった。グローバル
労働権、社会保障および労働組合組織に対し対話の機
化が急速にいわれ出したのは東側ブロック諸国の統制
会すら持たない多国籍企業が資本・株主中心の経営に
経済が内部崩壊したことやアフリカ・アジア太平洋・米州
走り、グローバル化は人類にマイナス面を露呈してきて
における民主的改革に伴って市場経済のなかで大多数
いる。このようななかで国連・ILOはグローバル・コンパ
の人々が暮らすことになってからである。また中国にお
クトの重要性を各国に求め、人権・労働基準・環境分野
ける社会主義市場経済への転換も大きなインパクトを世
において一連の中核的価値を採択・支持・立法化するこ
60 海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
特 集
とを求めている。また、多国籍企業に対してはコーポ
る。特にITの推進により、人間の時間的・距離的・集団
レート・ガバナンスとしてすべての関係者に情報公開し説
的ハンディは払拭され、瞬時のうちに個人に情報が入る
明責任を負うこととし、社会的対話の道を開くよう求めて
時代に突入した。その結果、多国籍企業を中心に企業
いる。
の合併・統合、そして資本の自由な移動をゲームのごと
く行っている。多国籍企業の多くは競争に勝つためには
グローバル化は一握りの富める者を生み、大
手段を選ばない株主本意・利益中心主義に走り、そのた
多数の貧しき者を発生させた
めに資金が最も低く社会条項の適用が最も少ない場所
を探し、国家間で値下げ競争をさせる冷酷な行動をとり、
それではグローバル化の結果、現実の世界はどうなっ
たか少し数字で述べてみたい。
労働組合を軽視し、社会福祉を荒廃させ、その国や働く
者への貢献は極めて少ない。銀行金融サービス・出版・
2001年では30億人の労働人口の3分の1が失業、また
情報処理などこれまで現地レベルで行われていた仕事
は不完全就労の状態であり、約1億6000万人が失業中で
が、他の場所で他国で行われるようになってきており、企
ある。これは1997年のアジア金融危機が始まる前よりも
業は労働組合組織が弱いかあるいは独立労働組合が禁
2000万人も増えていることになる。一方、世界の人口は
止されている国を探すことが多い。組合は今や地域的
発展途上国で30億人の増加が見込まれることから、今後
および世界的なアウトソーシングに直面しているといって
50年間に世界の人口は60億人から90億人に増えるだろ
も過言ではない。これを克服するためには労働組合はグ
うと予測されている。世界銀行の2000−2001年世界開発
ローバルに結束し、グローバルな基本的労働基準と社会
報告は、1日1ドル以下で暮らしている人の数が、1987年
基準を導入し、多国籍企業との社会的対話を図らねば
から98年を比較しても増加し続け現在13億人となってい
ならない。そのためにもILOが主張する、1職場におけ
ると報告している。グローバル化は世界の富の再配分、
る基本的権利、2完全雇用、3社会的保護、4社会的対
発展途上国の開発に貢献するというよりは富める国と貧
話、の4つの戦略を支持し、政府・企業・IMF・世界銀
しい国の不平等や国内の不平等を助長し、ますます格差
行・WTOなどグローバルな組織との対話を通して真に地
は拡大している。1960年に30対1であった富める国と貧
球市民として人々が生きられる社会を築く努力をしなけ
しい国の格差は97年さらに拡大し74対1と2倍以上に広
ればならない。
がっている。このようなことから今、私たちは、グローバ
ル化のマイナス面を早期に是正する新しい社会経済の秩
グローバル経済は労働力の流動化と個人化の
序づくりに、労働運動をもってして、その責任を果たすべ
傾向を強めている
き時に来ている。
グローバル経済はIT化の急速な進展と相まって労働市
グローバルな経済にはグローバルな労働運動
場に大きな変革を求めている。その変革とは次の3点に
の推進で社会対話を
代表されよう。まず第1は人件費の最も低い場所や国で
事業を行うための工場や会社を設立するため、先進国で
グローバル化は貿易・資本投資・技術・人間・企業・
文化・娯楽など人間生活のあらゆる分野で起こってい
の雇用は減退し高失業率が継続されるということ、すな
わち雇用の空洞化現象が起こる。
海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
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特 集
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
第2は企業の分社化・アウトソーシングが大企業を中心
に進められ既存の人事管理システムが自然崩壊し、正社
の対話によって決定することがこれからの労働運動の課
題といえよう。
員中心の労働組合は常に企業の合理化・改革案の意志
決定を余儀なくされ、結果として労働条件の低下に甘ん
まずは非典型労働者の組織化が急務である
じなければならない。すなわち正社員の賃金は上昇し
ない時代に入るということ。
第3は労働契約は集団から個人化へ進行する。テレ
非典型労働者はグローバル化、IT化、さらには経済の
サービス化の大きな流れのなかで急速に増加している。
ワーカー、在宅ワーカー、コールセンター社員など新しい
特に製造業を中心に国際競争力の視点から企業はコス
働き方の出現によって報酬制度も変化し、雇用管理・人
ト削減のために多様な雇用形態を生み出し、仕事の再
事管理といった従来型の概念は希薄となり、仕事の質・
編成を図っている。一方、雇用の多様化は高失業率と家
出来高払い、処理件数など年齢や勤続・熟練などにあま
庭生活の変化を背景に、働く側からも一つの選択肢とし
り関係しない型の仕事の与え方ややり方が多くなること
て雇用の受け皿になっている。
によって企業は集団的契約から個人契約型を増加させよ
うとしてきている。
しかし、ここで考えなければならないことはこの問題
には2つの側面があるということである。その1つは企業
このような労働力の様々な変化は労働組合にとっても
の多くは安い人件費として位置づけ、企業の都合により
その改革を迫るものであることは間違いない。今起って
契約していることからフルタイマーの雇用は減少し労働条
いるグローバル化・ボーダーレス化・バーチャル化の波は
件の引き下げ傾向に突入していることである。2つ目は本
改めて労働組合の必要性を訴えている現象ではないだ
来フルタイマーで働くことを希望している者でさえ、やむ
ろうか。
をえずパートや派遣労働の道を選択しなければならない
これからの労働運動はもはや一企業にとどまるもので
という厳しい雇用情勢にあるということである。そこで労
あってはならないし、一国だけで解決するものでもない。
働組合としての対応は雇用形態の多様化は職業生活と家
一企業から企業グループ全体へ、そして産業・地域・国
庭生活の調和という視点ではフルタイマーだけの企業社
家レベルへ、そしてグローバルな世界レベルへとその連
会よりも高齢化社会への突入、女性の社会進出という点
帯と行動を強化していかなければ、グローバル企業、す
からしても働く者の選択肢の拡大であるという点におい
なわち多国籍企業の資本の論理のうえに労働者は分断
てこれを認め、よりよい制度に改革していくことが必要で
され、その結果、労働組合は人権を無視され交渉権も与
ある。
えられない存在になってしまってはならない。そのため
そこで労働組合として次の3点を強調したい。まず第1
には働く者の多様性を尊重し、どんな雇用形態であれ、
点はフルタイマーとの不公平な格差を是正し均等待遇を
すべての働く者が参加できる労働組合に改革しなければ
確立する。そのためには職務価値や仕事の与え方や責
ならない。そして個人の自由な選択は認めるもののミニ
任を明確化することが必要である。単に短時間労働者だ
マム基準やソーシャルセーフティネットは集団として企業
から非典型労働者だからといった身分差別的発想は払
と対話し決定する。労働条件は個人でも労働環境、安全
拭しなければならない。
衛生、社会保障、従業員区分・従業員体系、制度やシス
第2は多様な働き方の情報を公開し、個人の意志と個
テム・教育・共済などは集団としての労働組合が会社と
人の自由な選択を認めるといった会社の意志から個人の
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日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
意志の尊重に切り替えるべきである。
特 集
にしてパートタイマーや非典型労働者が参加しやすい環
第3は多様化する雇用形態の労働市場にあっては様々
境の整備を図っている。いずれにしても、どんな形態で
な働き方に自由に転換できる制度の確立と整備が必要で
雇用されようとも同じ仲間であるという視点で組織化に
ある。個々人の家庭生活の環境変化や個人のキャリア形
取り組むことがサービス流通連合の基本である。
成による変化に対応できるよう選択肢の拡大と他の雇用
さらにグローバル化の波は企業の分社化・アウトソーシ
形態への転換が可能になるよう労働環境の整備を図る必
ング化を促し、企業の合理化・改革が断行されるなかに
要がある。加えて税や社会保障制度についても働く者に
あっては企業グループに働く仲間のすべてを組織化し、
とって中立的な仕組みに改革し、少なくとも働く意志を阻
経営との対話を図らなければ、結果として水は低いほう
害するものであってはならない。また、退職金や年金に
へ流れるがごとく既存の組合は年々減少し、発言力も弱
ついても一企業の制度から社会に通用するものは改革す
まり、ひいては労働条件の引き下げへと厳しい立場に労
べきであり、ポータブル化もその1つのアイディアである。
働組合がなる可能性がある。それだけに、たとえテレ
以上のような考え方から、日本サービス流通労働組合
ワーカーやSOHO、コールセンターなどで働く人々が個人
連合はまず組合としてパートタイマーをはじめとする多様
契約であっても分社化された別会社であっても、組織化
な働き方の人たちを自分たちの仲間として迎えるため、
していかなければ、働く者のミニマム基準やセーフティ
すべての従業員を基本的には組合員にする。働き方、雇
ネットが保障されない使い捨ての労働者が増加し、グ
用形態によって組合員・非組合員の区別はしないという
ループ経営は弱くなる危険性がある。
こと。しかし会社からは強い抵抗がある場合もあり、す
グローバル化・バーチャル化時代の労働運動はもはや
べての組織化に成功しているわけではない。また、パー
正社員中心の労働運動であってはならない。むしろ多様
トタイマー自身から「なぜ私は組合員にならなければいけ
な働き方、非典型労働者の組織化こそ、労働組合に新し
ないの」という質問もあり、現在では組合員の徴収基準
い文化と新しい力を与えるものであると確信する。組織
や組織の形態についてもフルタイマーとは別基準や組織
化なくして労働運動の発展はない。組織化、組織化・・・
ユースフル労働統計2002
日本労働研究機構 編 A5判 287頁 本体1,500円(税別)
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日本労働研究機構 出版課
海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
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特 集
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
情報労連における企業の
グローバル化・バーチャル化の影響
菅井 加津子(情報労連 政策局長)
はじめに
情報通信産業は、1980年代までは世界各国とも、国
の規制・保護の下「あまねく公平なサービス提供」を基
近年のグローバル化・バーチャル化の勢いは、多くの
本として、電話事業を中心に国営もしくは公社やそれに
企業に変革を迫り、傘下の組合に様々な形で深刻な影
近い公共企業体において事業を担ってきた。しかし、
響を与えている。NTT、KDDI等の通信会社、情報サー
1980年代から民営化、自由化の流れが強まり先進諸国
ビス・ソフトウェア企業の労働組合を中心とする産業別労
は無論、発展途上国においても民営化が進められ、自由
働組合である私たち情報労連も、例外ではない。とりわ
化と競争が始まった。つまり、競争の歴史がまだ浅い分
け、情報労連の中核産業である情報通信産業は、グロー
野である。
バル化の波を自らが先駆けて受けた産業であると同時
日本では、電電公社からNTTへの民営化が通信自由
に、インターネットをはじめとする情報通信の飛躍的な技
化のスタートとなった。その後、世界的な潮流で規制緩
術革新の下、産業それ自体がグローバル経済の下支え
和が進み、様々な制度の撤廃・見直しが進められた。
となり、企業のグローバル化やバーチャル化を促進させ
1990年代半ばには、グローバル化への流れを受け、国内
ている。とりわけ、コールセンターやテレワーカーといっ
はもとより世界の主要通信事業会社(メガキャリア)が国
た新たな働き方は、情報通信技術(ICT)
なしには成り立
境を越えて企業戦略を展開する大競争時代に突入し、価
たない。
格破壊ともいえる熾烈な料金値下げ競争が行われた。
このような基本認識の下、情報労連におけるグローバ
同時に、情報通信市場は、情報通信技術の驚異的、飛躍
ル化の影響の特徴と労働組合としての対応、さらにコー
的な革新により、黒電話に象徴される100年の歴史に
ルセンター等の「新たな雇用形態」に対する取り組みの現
よって築き上げられた「固定音声通話」から、誕生からわ
状について報告する。
ずか20年の「携帯電話」やインターネットに代表される「情
報・データ通信」へと需要構造が急激に変化した。加え
1. 情報通信産業におけるグローバル化の
進展
て、インターネットやブロードバンド等の新たなサービス・
事業領域では、従来の情報通信以外の様々な産業、業
種が、新規参入しボーダーレス競争へと激しさを増した。
情報通信産業では、グローバル化によって国内企業の
その結果、情報通信産業の各企業は、加速するグローバ
国際展開、多国籍化が進展したこと以上に、規制緩和と
ル経済のなかで、規制緩和と生き残りをかけた国際競争
相まって日本の情報通信市場への新規参入が進み「ボー
への対応、加えて技術革新による事業領域変化に同時並
ダーレスでグローバルな国際競争」に突入したインパクト
行的に直面している。
が大きい。
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日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
2. 労働者と労働組合への影響
特 集
3. コールセンターを中心とする新たな業務
分野の発展
前述のようなグローバル化の進展や市場変化は、結果
的に、各企業の収益基盤を大きく悪化させている。その
既存の労働者の雇用や働き方が、グローバル化の下、
ため、情報通信産業全体として国内外を問わず、業界再
変革期にあるなかで、一方、情報通信技術(ICT)
を活用
編、企業再編が進行し、各企業とも経営建て直しに向け
したバーチャルな仕事の進め方は、多方面に浸透し新た
事業構造の改革を断行せざるをえない状況が見られて
な事業領域や雇用形態を生み出しつつある。e-mailやイ
いる。また、総人件費抑制の動きとともに、正社員中心の
ントラネットを活用した社内周知、情報交換等が積極的に
雇用管理から雇用形態の多様化が進み、派遣、パート等
導入されるとともに、顧客情報の一元的な管理と仕事の
の非典型労働者の活用や柔軟な働き方へ各企業の指向
標準化、効率化がなされ、コールセンターでの電話やイン
が強まっている。
ターネットを通じた集中的な顧客対応により即時対応性
情報労連の主要組合でも、会社側から組合員の働き
が伸びている。
方や雇用と労働条件に大きな影響を与える大胆な事業
コールセンターは、アメリカで管理技術が開発され、日
構造改革が提起され、過去に遭遇したことのない課題
本だけでなく世界的に急激に増加し「ニューエコノミー
に直面した。情報労連は、この1、2年、雇用確保と事業
の工場」
というべき存在になってきている。そのサービス
構造改革を最重要課題と位置づけ、その基本を、1グ
内容は、
「注文・資料請求の受付」
「商品・サービスの案
ローバル化そのものの世界的な潮流は押しとどめられ
内」
「苦情・問い合わせ対応」等であり、これら社内で
ない。2企業の将来展望と現状を労使で冷静に受け止
個々に対応されていた業務をセンター化し一元的に対応
め、職場組合員と現状認識を共有化する。3組合員の
することで、データベースによる対応履歴の蓄積等を行
雇用確保を第一義に、スピード感をもって改革に向けた
い、顧客サービスの向上と効率化を図ることに狙いがあ
大胆な決断を行っていくこととし、取り組みを強化して
る。もう1つの特徴としては、通信ネットワークがもたらす
いる。
エリアフリー効果が挙げられる。そのため、北海道や沖
さらに、持株会社方式による再編、合併、分社化等の
縄をはじめ企業誘致に積極的な自治体も見られるほか、
企業再編は、会社組織のあり方とともに、再編後の組合
外資系企業のなかにはオーストラリアやハワイ等にコー
組織のあり方等、企業別労働組合の存立基盤に大きく影
ルセンターを設置し、ワールドワイドで業務を展開する企
響を与える課題だと痛感した。当該労使間はもとより組
業が出てきている。
織内外各方面との十分な事前対応が求められるが、交渉
今日、コールセンターは、銀行、金融機関、生命保険会
力の源は「組織率や組織力」であることからも、日常的な
社、損害保険会社、証券会社、クレジット会社、製造業
「組織化と組織強化」が重要であり、今まで以上に目を向
(電気機器、コンピューター、食品、自動車産業等)、デ
けていく必要がある。
パート、小売・卸売業、通信販売業者、チケット販売業者、
運送業、宅配便業者等、多くの業種や企業で導入されて
いる。しかし、コールセンターを社内の人材のみで運営
している企業は少ない。多くの企業では、コールセン
ター化する際にシステム運営を専門会社にアウトソーシ
海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
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特 集
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
ングするか、人材について派遣契約等で対応している。
の短時間パートが半数に上り、仕事と家庭を両立しやす
コールセンターを運営実施する専門会社は、テレマーケ
い勤務時間が選択できることが魅力になっているようで
ティング・サービス・エージェンシーと呼ばれているが、
ある。しかし、処遇面においては、賃金水準の低さや正
人材派遣・人材教育会社、通信会社、企画・コンサル
社員との処遇格差が見られ、情報労連内の他職種との比
ティング会社などが母体となって事業展開している場合
較でも、
平均時給で50円程度低い実態が明らかになった。
が多い。企業数については、経済産業省の「平成12年特
個人アンケートでは、賃金面での不満が強く示され、
定サービス産業実態調査」で494社(その約3分の1が従
VDT労働に対する安全衛生課題や職場環境への改善要
業員1∼4人の小規模企業)
との数値があるものの、その
望なども意見として出された。この状況は、諸外国の
全体像はあまり把握されていない。また、コールセンター
コールセンター労働者とも共通している。私たち労働組
業務に従事する労働者の状況把握についても、まだ十分
合は、これらの声を運動に吸収し前進していくことが求
にできていないのが現状であり、今後コールセンターの
められている。
バーチャル化とともに在宅ワーカーによる対応等が進め
ば、ますます労働実態把握が難しくなると想定される。
4. 情報労連におけるコールセンター
5. 非典型労働者の課題への挑戦
情報労連は、産業構造が大きく変化するなか、組合員
である典型労働者が減少する一方、非典型労働者が質
情報労連では、以前から「104番号案内」等、通信関連
量ともに増加・拡大している現状を受け止め、2002春闘
業務のなかでコールセンターの職場が形成されてきた。
で「パート等非典型労働者の組織化、実態把握と相互理
番号案内については、以前は、電話帳をもとに正社員が
解、賃金・処遇の改善、税・社会保障制度、均等・均衡
行っていたが、データベース化が進むとともに子会社化し
の確保など諸課題」について総合的な観点から取り組む
て、他企業から市場調査や注文受付、商品案内等のコー
ことを方針決定した。その結果は、賃上げ等での十分な
ルセンター業務を受託するなど、幅広く事業拡大が進め
成果を上げるまでには至らなかったが、非典型労働者の
られた。人員構成についても、パートタイマー、有期契約
課題への理解を正社員である組合員に求めていくきっか
社員が実務の中心になり、正社員は研修と業務管理を担
けとなり、初めて労使協議のテーマとした組合が見られ
うように変化した。今日、コールセンターは、情報労連の
るなど、取り組みを広げていくスタートとなった。また、こ
なかでもパートタイマー等の非典型労働者が全体の9割近
の活動を通じて「非典型労働者の労働条件向上」を会社
くを占める職場となっている。
に要求するためには、その前提条件として「組織化」が必
情報労連は、各企業における非典型労働者の雇用実
須となることを痛感した。
態を把握するためのアンケート調査を昨年秋に行った。
非典型労働者の増加は、労働組合自身に変革期の到
そのなかからコールセンター労働者の特徴点を挙げると、
来を告げるものである。従来の方法では成果は上がらな
女性既婚者が多く、非典型雇用の内訳ではパートタイ
い。したがって、労働組合自身が非典型労働者に近づい
マーが70%、契約社員25%となっている。コールセンター
ていく工夫や改革を行い、新たな雇用形態の労働者へと
を住宅地域に設置し、周辺の主婦をパートとして雇用し
組織のネットワークを広げることにチャレンジしなければ
ているケースが散見される。パートでは、週25時間以下
ならない。
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日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
特 集
戦略課題は同一職種/同一賃金
−電機連合「IT時代の雇用システム」調査から−
片岡 武夫(電機連合総合研究センター 副所長)
1990年代に入り、インターネット・電子メール等の情報通
ハワイへ長期滞在し、そこから仕事の発信を行うことや、
信技術(IT)の急速な発展と普及により、日常のコミュニ
世界中どこの国にでも業務の発注ができる利点を生かせ
ケーション手段に大きな変化が起こった。特に、そのギ
ば、最も安い労働力をネット上で買うこともオファーするこ
ア(道具)のモバイル化は、場所と時間を選ばず、いつ、
とも可能なのである。
どこにいても必要な情報の送受信が可能になり、世界中
のだれとでもコミュニケーションできることになった。
労働組合はこれまで長きにわたって、正規採用された
従業員を組織化し、職場を通じて結束を固めてきた経緯
このような情報通信環境の劇的な変化は、働く人たち
があるが、こういった働き方の台頭により、これまでの組
にとっても、場所や時間を問わない働き方を生み出し、テ
織活動を根本的に見直さざるをえない状況に追い込まれ
レワーカー・在宅ワーカー・コールセンター等々、SOHOと
ている。
いう流行語とともに世のなかに普及していった。これら
電機産業に働く労働者の産業別労働組合である電機
の働き方は、従来職場という決められた場所に通勤して
連合は、製造業という位置づけからやはり工場(事業場)
働くという固定化された雇用契約から労働者を解放し、
中心の組織活動がなされてきたし、こういった多様な働
任意の場所で任意の時間に働き、定められた結果を出
き方のできる業種がそれほど多くないこともあり、どちら
せばよいという自由な雇用契約を可能ならしめるもので
かというとこれまで対応が後手に回ってきたように思え
あり、働く意思があっても、これまで様々な障壁があって
る。ところが、電機産業を襲った別の衝撃波から、計らず
働くことができなかった有能な人材に就労機会が与えら
もこちらへの対応を検討せざるをえない事情が発生した。
れることになり、労働者側・雇用者側双方にメリットがあ
それは、国際競争力という観点から発生する高コスト
ることから、現在までにその働き方の可能性が様々な業
構造の是正という問題だった。この問題は電機連合に
種で模索検討されている。
とってというより、労働組合全体に春闘のあり方を考える
とはいえ、こういった働き方がすべての職種に適用さ
きっかけとなったが、それ以外にも製造拠点の国外流出
れるかといえばそうはならないものであり、普及目覚まし
という大きな問題をもたらした。電機連合の活動の中核
い業種は今のところ、文字やテープの入力・翻訳作業、
を担ってきた労働者の働き場所である製造拠点が中国を
さらにはホームページのデザインやシステムプログラム開
はじめとするアジア諸国へ展開されてしまい、国内には大
発設計等々、自己完結型でチームを組んで業務の進捗を
量の雇用喪失が発生することになってしまった。2001年
調整する必要がなく、極めて裁量労働に近い職種に限定
度、電機産業が取り組んだ事業構造改革により、電機連合
されている。
の組合員は実に6万7000人の減少を余儀なくされたのだ
しかしながら、該当する職種であれば世界中どこにい
が、喪失した雇用機会を配置転換により確保しようとした
てもできることになるので、例えばオフシーズンに格安で
時に、これまでの正規社員とは違った雇用形態が受け皿
海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
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特 集
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
の職場に浸透していたというわけである。
課題だ。それには日常化された情報通信インフラをフル
働き方の新しい形態は、場所や時間が自由な一方で極
に活用し、豊富な情報をタイムリーに、高い透明性を維持
端な成果主義の労働条件が適用され、これまでの労使関
しながら発信し、かつ相互のコミュニケーションを活発
係で一歩一歩積み重ねられてきた労働条件の枠外にあ
化させていく努力を怠りなく行わなければならない。イ
るのが通例になっている。したがって、これまでの枠内
ンターネットというのが最も簡単な方法だと思うが、環境
で労働組合が労働諸条件を主張することは、企業の構造
が整わない(PCがない、あるいはあってもデスク固定式
改革を阻害するかのごとくいわれることになり、主張の少
である等)ケースも想定される。それなら携帯電話でも
ない労働組合がある企業や労働組合がない企業と、きち
使ってはどうだろう? 携帯は今やメールの送受信ばか
んと主張する企業とでは新しい働き方の浸透∼構造改
りか映像だって送受信可能、しかも普及台数も6000万台
革の進展に差が出ることになりかねず、組合員を思って
を軽く超えている。組合員と組合、「メル友」になる努力
の労組主張が理解されない場面も想定される。
をすべきというのはわが師・小林良暢電機連合総合研究
だからといって、これからの多様化が進む働き方の社
センター特別研究員の提起であり、同感である。
会では労働組合が必要ないという議論にはならないし、
次に、多様な労働条件の労働者に対する春季交渉にお
その果たすべき役割は重いと考える。なぜなら、こう
ける代表制の維持も重要な課題と思う。これを解決しよ
いった不規則な労働条件の雇用においてはそのポジ
うとすれば、やはり個別、それも職種別賃金の絶対額方
ションが非常に不安定で、働き手にとっても雇用する側に
式に移行し、正規・非正規を問わず同一職種であれば時
とっても拘束されない自由を併せ持つものだからであり、
間当たり賃金は同一という形が最も透明性が高いのでは
この不安定な雇用関係を安定させ、安心して働ける環境
ないか? 電機連合は中期計画のなかで、春闘改革に
づくりを行う社会的責任が労働組合にはあると考えるか
ついての課題提起で職種別賃金決定方式への移行をう
らだ。
たっており、同一職種/同一賃金という高いハードルを乗
電機連合は2001年12月、増え続けるパート、派遣、契
り越えるための議論を進めている。
約社員等非正規社員の雇用の動態を明らかにすべく、電
その他、労災の問題もある。働く時間と働く場所が任
機連合総合研究センターがヒアリング・アンケート調査を
意である以上、就業時間中か否かの判定が難しい。また、
行い、東京大学の佐藤博樹教授らと共同でこれを分析
ストライキなどが発生した場合の対処方法なども検討し
し、「IT時代の雇用システム」を上梓した。このなかで労
なければならないだろう。働き手にとっては場所や時間
働組合の戦略が課題提起されているが、これからの労働
を選ばないというのはとても便利であるが、管理する側
組合は、多様化する働き方のなかで、正規社員と非正規
にとってはとても難しい課題を残している。特に協約や
社員、労働集約型の働き方と裁量労働的働き方それぞ
法律で規制されているような場合は、特定する
(立証する)
れの特性に合わせた対応を行っていく必要があり、従前
という作業が不可欠であり、これをどう克服するか、大変
のように事業場敷地内に事務所を構え、組合員が訪れる
難しい。
のを待つといった殿様商売的な活動や、一方通行的な情
報発信を行っていては未来は暗い。
このように働き方は多様化する一方であるが、他方で
は整理しなければならない課題が山積しているというの
まず、コミュニケーションの問題であるが、仕事場が特
が現状であり、労働組合として整備を進めていかなけれ
定されない組合員とどうコミュニケーションをとるか、が
ばならない重要な課題としては法律の整備だろう。労働
68 海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
特 集
組合を取り巻く環境変化に対応し、多様な働き方に即し
のはなんともおかしな話だ。パート保護法というもの
た雇用戦略を構築しなければならない。
があるが、対象はパートだけであるし、労働者派遣法
概ね考えられる法律の整備は以下の通りだ。
1 解雇制限の法定化
というのもあるが、あれは派遣事業法であって労働者
を保護する法律ではない。働き方の多様化で、パー
日本の労働組合は「雇用保障」に関しては丸腰といっ
トも派遣も請負も、境界線がなくなりつつあるという現
てもいい。
「解雇の自由」はあっても
「解雇規制」はなく、
状を考えれば、法律で規制している枠を非正規労働
先進国中最も解雇が行いやすい国に挙げる人もいる
者全体へ拡大し、細部を整備するべきだ。
くらいである。せいぜい「解雇権濫用法理∼整理解
雇4要件∼」が判例にあるくらいで、これでは不十分で
その他、これらと連動して労働協約の整備も行う必要
ある。曖昧なことを続けていないでさっさと法定化
が急務と考える。
「解雇に関する労働協約未整備組合が
し、明確なルールを作るべきだ。
60%もある」
というのは1990年代半ばの連合調査だが、終
2 2000万非正規労働者一括保護法の整備を
身雇用が崩壊し、今日のような解雇など念頭になかった
多様化する働き方の時代であるから、パートや派遣と
時代とは違うことを認識し、一刻も早くこれらを整備する
いった非正規労働者の数はフリーターを範疇に含め
必要がある。この点の不透明さが労組に対する信頼を損
れば2000万人ともいわれる時代を迎えている。これ
ねている遠因なのかもしれない。
だけ増えている非正規労働者を保護する法律がない
自動車産業の多様な働き方について
−非典型労働者の動向と働き方への影響−
小鍛治 満弥(自動車総連 労働政策局長)
はじめに
非典型労働者の動向と職場での働き方への影
響について
自動車総連では、2001年9月∼2002年8月までの約1年
間で、
自動車産業の働き方について調査、研究を行った。
(1) 典型労働者は減少し、非典型労働者は派遣・請負
本研究では、働き方に関する職場の実態を把握すること
等を中心に増加傾向−典型労働者・非典型労働者
に重点を置き、各種調査を行い、そのなかで職場の
の動向
様々な課題・問題が浮き彫りとなった。今回、このなか
1 組合調査(表1)
では、特に非典型労働者注1)と職場での働き方への影響
非典型労働者の比率は全体平均で9.1%あり、従
について、調査結果を踏まえながら少し触れさせてい
業員規模が小さいほど非典型労働者の比率が大きく
ただきたい。
なる傾向にある。非典型労働者の内訳では表1のと
海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
69
特 集
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
表 1 従業員構成比率(組合調査)
(%)
非典型労働者
典型
労働者
その他
外国人
労働者
(内数)
パートタイマー
合計
派遣
フルタイム
型
パートタイム
型
請負
有期契約
全体合計
90.5
9.1
2.0
0.3
0.4
2.7
2.2
1.5
0.7
メーカー
92.9
6.7
1.2
0.1
0.2
1.4
2.6
1.2
0.1
車体・部品計
88.0
11.5
3.3
0.4
0.5
4.1
1.8
1.4
1.2
299人以下
73.9
26.1
6.7
2.1
1.8
5.3
1.4
8.8
7.1
300人以上
83.3
16.7
4.6
0.9
1.7
4.1
3.7
1.7
5.6
500人以上
86.3
13.7
3.1
0.8
1.2
4.5
2.7
1.4
2.2
1000人以上
89.1
10.3
3.1
0.2
0.3
4.1
1.5
1.1
0.4
従
業
員
数
別
※ 総従業員数に無回答が含まれているため、必ずしも典型・非典型労働者の合計とは一致しない
おり、請負(2.7%)、有期契約(2.2%)、派遣(2.0%)
の比率が高くなっている。3年前との比較ではどうか
(2) 生産部門で問題意識が高く、特に組合員の負荷増
との問いに対しては、
「非典型労働者が増加した」と
大、業務の非効率化を懸念−非典型労働者の受
答えた組合が53.0%に上り、従業員規模が小さいほ
け入れに伴う職場の課題認識
ど増加する傾向にある。なかでも、派遣(55.5%)
・
請負(32.7%)の比率が高く、企業籍を持たない従業
1 組合調査(表2)
非典型労働者の受け入れに伴う労組としての問題
員が増加の中心となっている。逆に3年前と比較して
意識は、特に生産部門において高く、
「教育工数注3)
減少したのは、典型労働者が最も多く、58.5%を占
増等で組合員の負荷増大」
(62.1%)、
「人の入れ替わ
めた。3年後の予想はどうかとの問いについても、派
りが激しく業務が非効率」
(55.2%)
、
「技能の伝承がで
(28.4%)
遣
(37.1%)
・パートタイム型パートタイマー注2)
きない」
(55.2%)点を問題視する組合が過半数を占
の順に増加することが予想されており、逆に減少予
めている。一方、他部門では、
「特に問題はない」と
想では典型労働者(54.8%)が最も多かった。
する組合が研究開発部門で20.7%、研究開発以外の
2 組合員アンケート
3年前と比較して
「職場の非典型労働者が増加した」
事技部門で28.7%に及んでおり、生産部門ほど問題
視する組合が多くない。ただし、研究開発部門で最
と答えた人は39.7%に上り、典型労働者(同16.8%)
よ
も多い回答が「技能の伝承ができない」
(34.5%)、事
りも多く、特に技術部門(44.0%)や事務部門(43.8%)
では
「非典型労働者増による組織の脆弱化」
技部門注4)
で高くなっている。同様に3年前と比較して減少した
と答えた人の比率では、典型労働者(同59.2%)が非
典型労働者(同24.4%)
を大幅に上回っている。
(31.0%)であり、課題がないということではない。ま
た、職種により問題意識が異なっている。
2 組合員アンケート
組合員アンケートでは、組合調査と設問内容が若
干異なるが、非典型労働者と一緒に働いていて感じ
ることとして、生産部門では「人の入れ替わりが激しく
70 海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
特 集
表 2 非典型労働者の受け入れに伴う課題認識(複数選択)上位3項目
(組合調査)
(%)
1位
生産
研究開発
2位
教育工数増等で組合員の負荷増大
(62.1)
技能の伝承ができない(34.5)
事技
非典型労働者増による組織の脆弱化
(研究開発除く) (31.0)
3位
人の入れ替わりが激しく業務が非効率
(55.2)
教育工数増等で組合員の負荷増大
(26.4)
教育工数増等で組合員の負荷増大
(29.9)
技能の伝承ができない(55.2)
非典型労働者増による組織の脆弱化
(23.0)
特に問題はない(28.7)
業務が非効率」
(44.9%)、
「教育工数増等で組合員の
体・部品でも1000人以上規模では63.6%と低くなってお
負荷増大」
(37.4%)が多く、問題意識は組合調査とほ
り、大規模企業ほど会社としての把握率が低下する傾
ぼ同じ結果である。ただし、研究開発では「典型労働
向にある。
者が忙しい時に手助けになる」
(33.2%)が最も多い
• 経営側の管理担当部署を見ると、
「部署ごとで管理し
など、事務(同24.9%)
も含めて肯定的な声が多くなっ
人事部門で統括管理」が62.1%と最も多く、
「中央の人
ている。同様に、営業やサービスでも
「典型労働者が
事部門で一括管理」
(32.2%)、
「部署・事業場ごとで一
忙しい時に手助けになる」が回答のトップであり、肯
括管理」
(4.6%)が続く。
定的な見方が多い。
• 非典型労働者在籍状況の労組への報告については、
「労組が要求すれば報告あり」が48.3%と最も多く、次
(3) 概ね労組への報告はあるが、約半数の組合では非
いで「定期的に報告あり」が39.1%、
「報告なし」は4.6%
典型労働者についての労使協議なし−非典型労
となっている。
働者の把握状況と労使論議状況(組合調査:表3)
• ただし、非典型労働者比率の上限設定など、非典型労
•「会社が非典型労働者の雇用動向を完全に把握できて
働者についての労使協議の状況を見ると、
「労使協議
いる」
と回答したのは78.2%(完全把握率)であり、
「大
等はなし」が最も多く
(50.6%)、
「定期的に協議」は
体把握できている」が17.2%、
「一部把握できている」が
12.6%にすぎない。なお、
「労組が要求すれば労使協議
4.6%。特にメーカー平均の完全把握率が45.5%、車
等あり」は28.7%となっている。
表 3 経営としての非典型労働者在籍状況の把握状況(組合調査)
(%)
完全に把握できている
全体合計
78.2
大体把握できている
一部は把握できている
全く把握できていない
17.2
4.6
0.0
メーカー
45.5
45.5
9.1
0.0
車体・部品計
82.9
13.2
3.9
0.0
従業員数別
299人以下
100.0
0.0
0.0
0.0
300人以上
90.0
10.0
0.0
0.0
500人以上
85.7
14.3
0.0
0.0
1000人以上
63.6
22.7
13.6
0.0
海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
71
特 集
日本の労働組合−グローバル化・バーチャル化時代の運動課題−
おわりに
たり、定期的な労使協議の場を設置しなければならない
状況であり、検討すべき課題は山積している。
今回紙面の都合で紹介できないが、私たちの働き方に
現在、自動車産業もグローバル化の進展に伴い、国際
関する研究では、1働き方に関する社会的なシステムの
競争の荒波の真っただ中にいる。企業は、国際競争社
あり方(長期的・政策的視点)
、2生産部門の働き方、3
会のなかで、生き抜いていくために、今後も様々な施策
事技部門の働き方、4販売部門の働き方(2∼4は実態
を打ち出してくるであろうし、そのことが私たちの働き方
把握を踏まえた問題提起、多様な働き方の検討)
と4項目
にもなんらかの影響を及ぼすことは間違いない。労働組
に絞って検討(働き方に関するすべての課題を包括的に
合としては、
「人」に焦点を当てた活動という視点を大切
検討したものではない)
を行った。3の事技部門では、
に、雇用の確保、労働条件の維持・向上のみならず、現
新たな働き方について、テレワーク雇用(在宅勤務、モ
状を踏まえながら、雇用形態やそれに伴う働き方や処
バイルワークなど)の日本の現状を認識しつつ、組合員の
遇・保障などの問題を、今後ますます取り上げていかな
意識調査を行い、このような働き方を検討するに当たっ
ければならないと考えている。
て、その評価のあり方と関連する成果軸・時間軸のとら
注1) 本研究においては、企業内における区分を基本とし、当該企
業における正規従業員以外をすべて非典型労働者とした。し
たがって、請負労働者(請負企業における正規従業員)は社会
的には典型労働者となるが、ここでは非典型労働者とした。
注2) 所定労働時間が典型労働者より短い人
注3) 典型労働者が非典型労働者に仕事を教育する時間
注4) 事務・技術部門の略称。但し、組合調査(表2)では、そこでの
設問の性質上、技術部門を研究開発とそれ以外の事技(例.生
産技術)
とに詳細に分けた
え方についても、少し検討に加えた。
しかしながら、自動車産業において、このような働き方
は現実的にはまだ少ないのが実態である。ただし、先に
紹介したとおり、非典型労働者という点一つをとらえても、
職場の従業員構成は変化してきており、それに伴い働き
方にも影響が出ている。自動車総連としては、この点に
おいて、まだまだ、労組への定期的な報告体制を構築し
データブック国際労働比較2002
日本労働研究機構 編 A5判 258頁 本体1,500円(税別)
労働に関する各種指標の中から代表的なものを精選し、グラフや解説も盛り込んだ内容豊富な国際比較資料集の
最新版。日本および諸外国の労働面の実態をわかりやすくまた客観的に把握することができる。巻末には参考資料
として、各種労働統計のHPアドレスも掲載。
お求めは、お近くの書店、または直接日本労働研究機構出版課へ。
〒163-0926 新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス25F
TEL:03-5321-3074 FAX:03-3345-1233 E-mail:[email protected]
日本労働研究機構 出版課
72 海外労働時報 2002年 10月号 No. 329
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