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COPDの薬物治療に関して

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COPDの薬物治療に関して
6.パネルディスカッション
COPD管理の現状と課題
―COPDの薬物治療に関して―
近畿大学医学部附属病院 久保 裕一 先生
〈スライド1〉
〈スライド2〉
COPDの管理・治療において最も重要なこと
COPDに対して行われる治療方法は喘息の
は、「今より悪くしない」ことです。肺の組織
治療と同じではありません。したがって正しい
は残念ながら一度壊れてしまうと、再生する力
診断が大事です。
がありませんので、残存している肺(機能)を
最大限に使って、肺機能の低下を食い止めるこ
〈スライド3〉
とが必要です。そこでまず行うことは、禁煙で
す。COPDの治療はまず禁煙からスタートしま
す。加えて症状やQOLの改善、合併症の予防
と治療、急性増悪の防止などのさまざまな観点
から、運動療法や薬物療法、酸素療法、外科療
法などを組み合わせて管理します。ここでは、
慢性安定期の薬物療法を中心にみていきます。
これらのことから、COPDの薬物療法におい
−63−
ては、より効果の期待できる抗コリン薬を第一
では、なぜ、COPDの治療においては、抗コリ
選択とし、作用機序の異なるβ2刺激薬を重症
ン薬が第一選択となるのでしょうか?
度に応じて加えていくステップ療法が合理的と
気管支拡張薬でCOPD治療に使用されるのは、
言えます。
抗コリン薬とβ2刺激薬の吸入貼布および経口
一方、喘息の場合は、抗炎症剤であるステロ
キサンチン製剤の3種類です。
イドが治療のベースとなり、発作時に速効性の
このうち、経口キサンチン製剤、すなわちテ
あるβ2刺激薬を吸入するのが基本になってい
オフィリンは、治療域と安全域の差が小さいた
ます。
め、血中薬物濃度モニタリングが必要で、副作
これは、両疾患の病理的特性を反映した薬物
用が発現しやすく、COPD患者に多い高齢者に
療法の指針となっています。
は使いにくい薬剤です。
抗コリン剤とβ2刺激薬の吸入療法はどちら
〈スライド4〉
も比較的使いやすいものですが、循環器系への
作用がより少なく、耐性ができにくい点で抗コ
リン薬に軍配があがります。
〈スライド6〉
また、呼吸器疾患に特有である吸入治療はC
OPDの治療に最も適しています。
〈スライド5〉
また、作用特性の面からも抗コリン薬が第一
選択とされます。
COPDにおける気管支の収縮は、コリン作動
性である副交感神経系の緊張が病的に高まるこ
とによって起こることが知られています。した
がって、ここに作用する抗コリン薬を使用する
のが有効です。
−64−
〈スライド7〉
〈スライド9〉
まとめると、一般にCOPDと喘息の治療では、
実際にヒトの肺組織でβ2受容体数を測定した
それぞれ抗コリン薬とβ2刺激薬が主となる傾
結果では、COPD患者、特に肺気腫患者におい
向にありますが、COPDでは抗コリン薬がよ
て、β2受容体数が減少していることが報告さ
り重要となってきます。
れています。
〈スライド8〉
〈スライド10〉
さらに、COPDは高齢者に多い疾患ですが、β
以上のことをまとめると、COPD治療において
2受容体の数は、加齢に伴って減少することが
抗コリン薬が第1選択薬となることが分かります。
知られています。
①COPD患者においては副交感神経系の緊張
が病的に高まっている事
②β2受容体は加齢とともに減少している事
③COPD患者において肺組織のβ2受容体の
比率は健常者に比して低下している事が、その
理由となります。
−65−
〈スライド11〉
リン薬の使用により、薬剤投与による急性の気
管支拡張効果を抜きにしてもFEV1.0及びFVC
は改善していたということになります。
治療
が長期に及ぶCOPDではβ2刺激薬よりも抗コ
リン薬が有用であることが示唆されます。
〈スライド13〉
実際の吸入薬を使用した症例をお示しします。
一秒量の変化を経時的に見たグラフです。抗コ
リン薬単独、もしくはβ刺激薬単独でも一秒量
の改善は認められますが、両者を併用すること
によってさらに多くに一秒率の改善が認められ
ます。
COPDにおける薬物療法の目的は、症状、特に
〈スライド12〉
呼吸困難を軽減し、運動能力を高めることです。
呼吸困難を軽減するために、気管支拡張作用の
ある治療薬が使用され、第一選択薬は抗コリン
薬の吸入です。
COPDに対する抗コリン薬(アトロベント)と
β2刺激薬の長期(90日)使用における効果を
検討した7つの文献を合わせて解析したデータ
です。
この文献によると、試験開始時(薬剤
使用無)と90日後(薬剤
Wash
Out後)の
FEV1.0及びFVCのベースライン値は抗コリン
薬投与で増加した一方、β2刺激薬では影響を
及ぼしませんでした。
つまり、90日間の抗コ
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