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Title ナラティヴが生成される重層的コンテクストとその解釈

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Title ナラティヴが生成される重層的コンテクストとその解釈
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ナラティヴが生成される重層的コンテクストとその解釈 :
次なるナラティヴ・ベイスト・インクワイアリーに向け
て
荘島, 幸子
京都大学大学院教育学研究科紀要 (2008), 54: 138-151
2008-03-31
http://hdl.handle.net/2433/57033
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
京都大学大学院教育学研究科紀要 第5
4
号 2
0
0
8
テ ラテ ィヴが生成 され る重層 的 コンテ クス トとその解釈
-次 な るナ ラテ ィヴ eペイス ト 。イ ンクワイ ア リ-に向 けて-
荘
島
幸
子
は じめに
ナ ラテ イヴ、語 り、 ス ト- リ-、 物語、 自伝、 個人誌 とい った、 人 々 に よ って語 られ、記 録 さ
れ た資料 が人 々の経験 を知 るの に決定 的 に重 要 で あ るとい うことが、学 問領域 を横 断 して声 高 に
叫 ばれ るよ うにな って久 しい。 これ まで、 社 会科 学 にお け るナ ラテ ィヴ
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ペイ ス ト ・イ ンク ワイ
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y:ナ ラテ ィゲに基 づ く探 求 ) は、 現 象 に関 す る認 識論 的、 イ
ア リ- (
デオ ロギ -的、存在論 的 に幅広 い理解 の もとに実 践 されて きた.
しか し、 ナ ラテ ィヴ
。
ペ イ ス ト 争イ ンク ワイア リ- は、 ナ ラテ イヴの探 求 のすべ てが経験 につ
いて の研究 で あ る ことに同意 を示 して い る ものの、 ナ ラテ ィヴの研 究 にいた って は、 ナ ラテ ィガ
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の 扱 い 方 や ナ ラ テ ィ ヴ概 念 に か な り の 違 い が み られ る (
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)
。 例 え ば、 テ ラテ ィヴの探 求 に よ って 「
生 き られ た経 験 」が抽 出可能 で あ るか
「
ど うか を巡 って、 (
経験 で はな () 生 き られ た テ クス ト性 (
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」の検 討 に とどま
)
る とい う主 張 (
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) に対 し、 「テ クス ト性 は、経 験 につ いての重要 な機 能 、 特性
で あ り、経験 が語 られ、生 き られ た現象 と して研 究 され うる」描i
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) と考 え る
立場 もあ る。 Ri
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9u は、 ナ ラテ ィガの探 求 行為 そ の ものが、 コ ンテ クス トか ら引 き
離 され た要素 還元主義 に陥 る危 険性 を指摘 してお り、 テ ラテ ィヴ研 究 は混迷 を極 めて い る。
で は、我 々 は、 ナ ラテ ィヴ 昏ペ イス ト 魯イ ンク ワイア リ-の遂行 者 と して、 いか に実践 して い
くことがで きるだ ろ うか。 本 稿 で は、 まず㌔ テ ラテ ィヴアナ リシスの類型 化 か ら、 ナ ラテ ィヴア
ナ リシスにお いて ナ ラテ ィヴが生成 され る壷 層 的 な コ ンテ クス トに着 冒 し、 4つ の コ ンテ クス ト
を提示 す るo 考察 で は、 テ ラテ ィヴ 魯ペイ ス ト卓イ ンク ワイ ア リ-の新 たな研究実践 を提案 す る。
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「ナ ラテ ィヴとは何 か」 とい う問 い に対 して は、研究者 間 で も定義 が一 致 してお らず、 しば し
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学 問 的 デ ィ シプ リン との つ な が りの 中 で 、 多 くの理 論 的 立 場 が 存 在 す 義 (
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9)
。 また、 ナ ラテ ィヴほ、 方 法論 的 に も多様 で あ る (
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)
。 ナ ラテ ィ
ガ は調 査 の対 象 で あ り (
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か つ 世 界 を認 識 す るパ ラ ダ イ ムで もあ り
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㌦ 多 面 的 側 面 を持 っ こ とが 立 場 の多 様 性 を生 み 出 して い る
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ナ ラテ イヴ とい う周 語 が意 味 す る もの に も違 いが あ る (
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)
。 社会 史 や文化 人類
一
一
一
一 138 -
荘島 :ナラティヴが生成 される重層的 コンテクス トとその解釈
学 の領域 で は、 ナ ラテ ィヴ とは、 イ ンタ ビュ-や観察、資料が織 り合 わ さ った全体 的 な ライフス
ト- リ-の ことを指 すが、社会言語学 のなかで トピック とな るの は、 1つの質問 に対 す る 1つ の
回答 か らな るデ ィス コ-ス とい う個別的 な単位 で あ り、 これ らもナ ラテ ィヴに含 まれ る.心理学
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k) とされ る。 そ
や社会学 で は、個人 的 なナ ラテ ィガは、 会話 の長 い区分 (
れ は、 あ るコ ンテ クス トにお け る生 (
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) に関す る説 明 ・陳述 (
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) で あ る. つ ま り、
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) が生 き られ る とい う比較 的 マ クロな
ナ ラテ ィヴとい う広大 な網 の 目を通 して、全 ての生 (
立場 もあれ ば、 あ る出来 事 間 の ミク ロな因 果 的 連 関 に焦 点 を当 て る立 場 もあ る (
Ri
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man,
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9
93,p。
1
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)
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テ ラテ ィヴに対 して異 な る認識 を持っ研究者 たちによ って、 い くつ もの問 い- ナ ラテ ィヴとは
何 か ? ナ ラテ ィヴは特徴 的 な構造 を持 っ のか ? ナ ラテ ィヴには異 な る ジャ ンル はあ るのか ?
いっ それ は語 られ、何 のために語 られ るのか ? 誰 に語 る権利 が あ るのか ? 文化 的、心理学的、
s
hl
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r(
1
9
9
5
) の ナ ラテ ィヴア
社会 的 な効果 は何 か ?一 に回答 が与 え られて きた。次節 で は、 Mi
ナ リシスのモデルを参考 に して、 これ まで ナ ラテ ィヴが探求 されて きた観点 につ いて ま とめ る。
2 テ ラテ ィヴアナ uシ完の モデ ル (
Mi
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9
5
) による類型的 レビュー
表 1は、 Mi
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1
9
95
) によ るナ ラテ ィヴアナ リシスの モデルの類型化 で あ り、 大 き く 3つ
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の カ テ ゴ リ- 1。 参 照 と時 間 的 順 序 : 「語 る こ と」 と 「語 られ る もの 」 (
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つ、 2. テクス トの一貫性 と構造 :ナ ラテ ィゲス
トラテ ジ- (
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)、 3. ナ ラテ ィヴの機
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) 一 に分類 され
舵 :コ ンテ クス トと結 果 (
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)
。社会科 学 にお け るナ ラテ ィヴ ・ター ンの多様性 が よ く示 されて お り、
て い る。 (
我 々が世 界 を語 り、様 々 な コンテ クス トにおいて物語 を語 り直 しなが ら、 出来事 や経験 の意味 を
作 り出 して い るとい う認識 を広 く跡付 けて い る (
Mi
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hl
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95
)
。 本稿 の主題 で あ るナ ラテ ィヴ
を取 り巻 く重層 的 な ヨ ンテ クス トの検討 にあた って、 Mi
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rの類型論 は次 の 2点 において有用
と思 われた。 1点 目は、 さまざまなナ ラテ ィヴアナ リシスのモデルが前提 と してい る仮定、概念、
方法 を比較 す るための枠組 みを理論的 に発展 させ ることを 目的 と して、諸研究か ら帰納 的 に類型
され てお り、分類 の クオ リテ ィが非常 に高 い ことが挙 げ られ る。 2点 目は、 ナ ラテ ィヴが社会 的
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d) ことや、 ナ ラテ ィヴの政治 的 コ ンテ クス トを取 り込 ん だ
に状況づ け られ る (
議論 を行 ってお り、 テ ラテ ィヴ研究 にお けるコ ンテクス トの問題 を積極 的 に押 し出 して い こうと
す る姿勢 がみ られ る点 であ る。
衰旦 Mode
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5,p.
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lか ら内容 を引用)
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下位項 目
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ng(語 りか ら語 られた ものを概括す ること)
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語 りか ら語 られた ものを再構成す ること)
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ng〔語 られた ものを語 りに押 し付 けること〕
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d(語 られた ものか ら語 りをっ くりだす こと)
139
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
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カテゴ リ 2
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(テクス トの一貫性 と構造 :ナ ラテ ィヴス トラテ ジー)
下位項 目
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e(テクス トの詩学 :配 置、比聴、形式)
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s(デ ィス コース言語学
:オ ー ラルナ ラテ ィヴ)
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(ナ ラテ ィヴの機能 :コ ンテクス トと結果)
下位項 目
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.(経験 の物語化 :認知、記憶、 自己)
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e(ナ ラテ ィヴと文化 :神話、儀式、パ フォーマ ンス)
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s(制度 的 コ ンテクス ト及 び相互作用 にお ける
ス トー リーテ リ ング)
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e(ナ ラテ ィヴの政治学 :権力、葛藤、抵抗)
カ テ ゴ リ 1.参照 と時間的順序 : 「語 る こと」 と 「語 られ る もの」 は、 4つ の下位項 目か らな
る。 ここで は、 ナ ラテ ィヴは、 時間的 に順序立 て られ た一連 の出来事 の表象 であ り、現実世界 に
お ける出来事 の シ- クエ ンス と、 ナ ラテ ィヴと Lて表象 され た語 りにみ られ る出来事 の順序立 て
は同等 の もの と して扱 われ る。 また、 このアナ リシスモデルを用 いてナ ラテ ィヴの構造的 アプ ロー
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abov良 Wal
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1
967
) は、 ナ ラテ ィヴを定義 す るの は文節 間 の
チを行 った社会言語学者 のI
関係 の特性 で あ ると述 べ て い る。 つ ま り、語 りは過去 の経験 を把握 す る方法 で あ り、言語 が リア
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)0Labovらの構造 的 アプ ローチの はか、 オー
リテ ィを表象 す る と措定 したので あ る (
桜井 ,2
ラル ヒス トリーや歴 史家 、 ジャーナ リス トらが行 うライ フ ヒス トリー (
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ory) や臨床 的
イ ンタ ビュー (
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(
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しか し、後 にLabov (
1
982) は、 語 り手 との社会 的 ステイ タスを含 んだ関係 を仲介 して、 ナ ラ
テ ィヴが提示 され る ことに着 目 し、 要求 と応答 とい うや りと りを言語 的社会行為 と して分析 す る
ことに焦点 を移行 して い る。 Labovの言語 的社会行為 と しての ナ ラテ ィヴとい う概念 を援用 し、
Mi
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hl
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r(
1
992
) は、家具作 り職人 の ワー ク ヒス トリー (
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y) か ら、語 り手 と聞 き手
の双方 が経験 の再構成 や意 味 の生成 に積極 的 に関与 してい ることを見 出 した。 そ こで は、必 ず し
もナ ラテ ィヴが正確 に過去 の出来事 を示 す ので はな く、調査者 との イ ンタ ビュー とい う固有 の コ
ンテ クス トにお いて、 あ る 1つ のバ ー ジ ョンの物語が作 られ るにす ぎない とい う見解 を打 ち出 し
て い る。
カ テ ゴ リ 2. テクス トの一貫性 と構造 :ナ ラテ ィヴス トラテ ジーは、 2つの下位項 目か らな る.
カ テ ゴ リ 1との根本 的 な違 いは、 ナ ラテ ィヴデ ィス コースが、実際 の出来事 の時間性 を さほど重
視 しな い点 で あ る。 この アナ リシスモデル は、 もともとは構造主義 及 びポス ト構造主義 によ る リ
テ ラ リー分析 や文法理論 (
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he
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sofgr
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) に始 ま り、 ナ ラテ ィヴが異 な る言語 リソース
を運用 し、 い か に構成 され系統立 て られ なが ら、意味 を作 り出 して い るか とい うことに関心 を持
つ (
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03)。社会 言語学以 降、言 語 の統語構造 か ら下位項 目にみ られ る会話 や テ クス ト
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) とい う概念 が提案 され た. デ ィス コースの
へ と分析 単 位 が広 が り、 デ ィス コ- ス (
定 義 も ま た 、 研 究 者 間 に よ って 異 な り、 1っ に定 め る こ と は困 難 で あ る (
Jawor
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-
14 0
-
荘島 :ナラティヴが生成 される重層的コンテクス トとその解釈
Coupl
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9
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)
o簡潔 な定義 と して、 中村 (
2
0
01
) は、①文 よ り大 きな単位 の相互行為、②社
会的実践 と定義づ げを行 っている(
以下 で は、特 に① の意味でのデ ィスコースにフォーカスす る)
.
歴 史 を物 語 と して捉 え 直 した Whi
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1
9
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) は、 ナ ラテ ィガを 「言 説 的戦 術 (
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)
」とみな して いる。 また、 Ke
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1
9
8
9
) も、歴史 の陳述 は、 出来事 の客観 的な配列 か
らま とま りと一貫性 を持っ ので はな く、文化 的 に根付 いた レ トリックと言語的な慣習 によ るもの
だ と主張す る。
語 られたデ ィス コ-スを分析す る場合 には、発話 と発話 の関係や全体 の構造 に着 目す ることに
重点 がおかれ、異文化 や相 互行為 的な コンテクス トとい った、実際 の言語使用上 の場面 における
発話 の伝達機能が検討 され る。 ナ ラテ ィガの形式 や構造 と、 そ こか ら生 み出 される意味 を切 り離
す ことは不可能 であ り、 それ は Fあの とき、 あそ こで」 とい う過去 のナ ラテ ィヴと、「
今、 ここ」
でナ ラテ ィヴを再構成 しつつあ る視点 の結節点 を生み出 してい る。
カテ ゴ リ 3. ナ ラテ ィヴの機能 :コ ンテ クス トと結果 は、 4つの下位項 目か らな る。 ナ ラテ ィ
ガが生成 され る場でのテ ラテ ィガの機能性、作用 につ いて焦点 が当て られ る。 自己、文化、社会
的プ ロセス、制度 な ど多様 な局面 において分析 され るテ-マである.
これ まで多 くの心理学者が、構成 された個人的 ナ ラテ ィヴを自己や アイデ ンテ ィテ ィの発達 の
中心 に位置づ けて きた (
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)
。一方 で、語
り直 し (
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ng) による個人 のナ ラテ ィヴの変化 に重 きを置 く立場 もあ る。 Mi
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9
9
5
)
は、 精神分析 (
Shar
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9
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) や家族療法 (
Whi
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9
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)が、 臨床
実践 の 1つ に経験 の語 り直 しを含 む ことを指摘す る。 ここでのナ ラテ ィヴとは、 自己にまつわ る
多様 で慣習的 なス ト- リ- ライ ンを有 し、人 は F生 (
l
i
f
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) の語 り直 し」 によ って変化す るとみ
な され る。 つ ま り、 ナ ラテ ィヴが脱文脈化 された状況 で、 自己やアイデ ンテ ィテ ィの発達が生 じ
るので はな く、 それ は何 らかの コンテ クス ト下で、 自己のあ る局面 を語 るとい う行為 によ って変
化、発達 して い くことを意味す る。 認知 や学習、記憶 とい う分野 で も、 ナ ラテ イヴが果 たす機能
につ いて研究 が盛ん になされてい るが、 その場合、 ナ ラテ ィガの機能 に特化 して記述す るので は
な く、家族 とい うコ ンテクス トのなかで、多様 なバ リエー ションを もった子 ど ものナ ラテ ィヴ機
能が発生、変化、発達 してい く様子 を描 く必要が あるとい うことを示唆 している。
家族 とい う場か ら、語 り手 と聞 き手 とい う ミクロな相互作用 の単位へ コ ンテクス トを移行す る
と、 デ ィス コ-ス分析 に近接す る(ここで は、会話、 イ ンタ ビュー、 臨床実 践 とい った場面 で語
る ことが もっ相互作用的、 制度 的機能 に焦 点が おかれ る. 例 えば、 暗黙知 につ いて理論 化 した
Pol
anyi
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9
8
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、 語 りと ジェ ンダ-の関係 につ いて は、 Fi
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t良 Mc
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、語 りとアイデ ンテ ィテ ィの関係 につ いて は、 Ta
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)
0
ナ ラテ イヴアナ リシスのモデルを概観 す ると、 3つのカテ ゴ リの うち、 どのカテ ゴ リを とって
も、 ナ ラテ ィガが様 々な コンテクス トとの関係で捉 え返 されていることが明 らかである。 ナ ラティ
ヴが、局所的 に引 き出 され (
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ai
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d)
、語 り手 と聞 き手 による制約 のなかで意味が共
同的 に達成 され るとい う指摘 は、 ナ ラテ ィヴ 卓夕- ン以降の社会科学 や文化 における知が、現象
か ら単 に鏡像 的 に見 出 され ることの不可能 性 を唱えて い る (
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)
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近年 のナ ラテ ィヴ心理学 は、豊 かな コ ンテ クス ト上で表現 された行為 と して ナ ラテ ィヴを扱 う研
究 領 域 とな りつ つ あ るが (
Sc
hi
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f
,2
0
0
6
)、 研 究 者 の多 くは、 ナ ラテ ィヴを状 況 的 な 出来 事
-
1
41
-
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
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8
(
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) とい うよ り もデ ィス コー スか ら分 離 した ま とま り と して扱 いが ち で あ る
(
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man, 1
9
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)。 例 え ば 、 病 い の 物 語 り (
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8
) や 、 ラ イ フ ス ト- リー
(
Mc
Adams 良 Oc
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乱 ユ
9
8
8)、 自 己物 語 (
Ge
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ge
n,1
9
94
)・個 人 的 神 話 (
pe
r
s
onalmyt
h:
97
5
) とい った 自己 に関す るナ ラテ ィグ ・ペ イス ト ・イ ンク ワイ ア リ-は増大 して い る も
May,1
のの、異体 的 な状況下 で いか にナ ラテ ィヴが生成 され、機能 す るのか とい うことはあま り検討 さ
Ri
e
s
s
man,1
9
91
)
。多
れて いな い し、 それ らを実証 す るための細 か な手順 も吟 味 され て いない 〔
様 な コ ンテ クス トで生成 され るナ ラテ ィヴを我 利 まいか に扱 うべ きなのだ ろ うか ?この大 きな問
いへ の ステ ップ と して、次節 で は、 ナ ラテ ィガが生成 され る コ ンテ クス トにつ いて検討 す る。
3 ナラテ ィヴを取 り巻 く 4つの コンテク謁 巨
や まだ (
2
0
07
) は、 ナ ラテ ィヴが多重 の文脈 のなかで生成 され る相互行為 で あ る ことを前提 に、
ナ ラテ イヴの レベルを 1.実在 レベル、 2
.相互行為 レベル、 3
.テ クス ト .レベル、4
.モデル ・
レベルの 4つ に分類 し、異 な るナ ラテ ィヴ 。レベル問 の対話 を明確 に して い る。 や まだ は、 コ ン
テ クス トか らはなれ たテクス トに焦点化 して、 テ クス トが多様 なナ ラテ イヴ 。レベルを超 えてむ
す びつ け る働 きをす ると して、 テ クス トによ る レベル間対話 を 目指 して い る。 本節 で は、 多重 の
コ ンテ クス トに埋 め込 まれ たナ ラテ ィヴの様態 を把 握 す る ことを 目的 と して、 ナ ラテ ィヴを取 り
巻 く 4つ の コ ンテクス トー 王. ナ ラテ ィヴの相互行為 的側面、 Ⅱ. テ ラテ ィヴの社会行為 的側面、
社会 的歴 史 的連結点 、 乱
ナ ラテ ィヴの外 側 と語 り得 な い もの、 Ⅳ.語 り手 の生 (
l
i
f
e
) を取 り
巻 く複数 の生 (
l
i
f
e
)
、声- につ いて検討 す る. 検討 に進 む前 に、論 を分 か りやす く進 め るために、
Pl
umme
r(
2
0
01
) を手 がか りに して作成 され た図 1につ いて説 明す る。
ライ フス トー リーの理解 を理 論 的 に追 求 して きた社 会学 者 のPl
umme
r(
2
0
01
) は、 ナ ラテ ィ
p.
4
4,Fi
gur
e
岩.
1
)。 ナ ラテ イヴとコ
ヴを取 り巻 くコ ンテ クス トを メ タナ ラテ イヴと称 して い る (
ンテ クス トの関連 を考 え る上 で、 Pl
umme
r(
2
0
01
) が挙 げ る ライ フス トー リー研 究 の特 徴 -①
amb主
gui
t
yい 過程 ・変化 、④全 体 性 を
個人 の主 観性 と意 味、②歴 史 を捉 え る道 具 、③ 多義 性 (
umme
rによ って作成 され た メ タナ ラ
捉 え る視座 - は、 示 唆 に富 んだ視点 で あ る。 本稿 で は、 Pl
テ ィヴの図 を基本形 と し、 これ ら 4つ の視 点 を組 み合 わせ、 ナ ラテ ィヴを取 り巻 く 4つ の コ ンテ
クス トに関す る図
1を作成 した。以下、 コ ンテクス ト Ⅰ∼Ⅳにつ いて順 に検討 す る。
3- 1 ヨンテクス ト l:ナラテ ィヴの相互行為的側面
3-1及 び 3-2で述 べ られ る コ ンテ クス ト Ⅰと Ⅱは、 ナ ラテ ィヴが社会 的 コ ンテ クス ト上 で
循 環 す る流 れ の只 中 に生 成 され る こ とに強 調 点 が 置 か れ て い る (図 1中 、 PRODUCERS、
PRODUCT、 CONSUMERSを横 断 して い る)。 コ ンテ クス ト Ⅰは、 語 りが引 き出 され る場 や他
者 との関係 の よ うな コ ンテ クス トⅡに比較 して、 ミク ロな領域 を扱 って い る。 社会科学 にお ける
テ ラテ ィヴ ・ター ンとはぼ時期 を同 じくして、言語学 で は、 デ ィス コース ・ター ンやパ フオ-マ
ンス 。ター ンが展 開 し、言 語 の相互行 為 的次元 に 目が向 け られ始 め た。 それ に伴 い、 ひ とま とま
りの言語 が持 っ意 味 や機能 は、固定 的 で も不変 で もな く、 あ る状況下 で の用 い られ方 によ って変
化 し、多義 的 な意 味 を持っ とみな され るよ うにな った. ジェ ンダー学 や女性学 (また、 ゲ イ& レ
ズ ビア ン研究 や、人種研究 な どカル チ ュ ラル ス タデ ィーズ一般 が ここに は含 まれ る) は、 それ ま
ー
1
42 -
荘島 :ナラティヴが生成 される重層的 コンテクス トとその解釈
図 1 ナ ラテ ィヴを取 り巻 く 4つの コンテクス ト (
Pl
umme
r
,2
0
01
,p
.
4
4,Fi
gur
e
2.
1
を一部改変)
,
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
.
-I
--・ 量 感
コ.
>ヂタス FD
、
、
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島SOCI
ETT
腿
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血
A
④多義性 .通観 一
き
一
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蒜
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I,
1
蒜
言 蒜
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F
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重
義t
q∴ 尋
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.
.
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I
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b
I
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㊨多義性 .遺良 ,変化
C
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鵬
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鮎 述由量昏
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O胤 CO澗
ヽ
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、
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一
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、
一
一
●
l
l
J
、
■
L
l
I
-
で個人が内的 に 「
持 って い る」とされた 「女性 らしさ」「
男性 らしさ」が、実 は、 自明 に 「
存在」
す るので はな く、
笥特定 の状況下-公共 の トイ L
Jにい くとい う素朴 な行為が行 われ る状況 で もー に
お いて行為 され、構築 され る もの と考 え.
も それを"
doge
nde
r
"f
一
ge
nde
r
・pe
r
f
or
manc
e
"と行為 の
側面 を強調 して呼んで いる (
例 えば、 But
l
e
r,1
9
9
0;Go
f
f
man,1
9
7
7
)
.
このよ うな言語 に関す る思考形式 の変化 は、 ナ ラテ ィヴを相互行為 と して捉 えよ うとす る思考
とパ ラ レルで あ る。 シンボ リ ッ ク相互作用論 の立場 に立っPl
umme
rも、 ス トー リーを共 同行為
(
j
oi
ntac
t
i
on) とみな して いるO ナ ラテ ィガが 自己の構成 と深 く関わ っている ことは、すでに述
べた とお りだが、 コ ンテクス ト 互で は、 ある状況下で個人が ナ ラテ ィヴとい う リソースを用 いな
が ら、 いかな る自己を提示 し㌔達成 しよ うと しているのか とい う、 自他 に対す るパ フォーマ ンス
を ミクロに分析 してい く手法 が採 られ る。 当然、人 は、多様 な局面 で様 々な自己を提示す る。 新
たなナ ラテ ィヴを語 った り、
号音 か らの ナ ラテ ィヴを語 り直 した りす るなかで、 自己は変化、発達
してい く
。
その よ うな多義 的で可変的 な様態 は、孤立 した個 (
i
ndi
v
i
dual
i
t
y)で はな く、常 にあ
る コ ンテ ク ス ト Fで、 な ん らか の他 者 〔実 在 す るか否 か は問 わ な い〕 と と もに あ る主 体
(
s
ubj
e
c
t
i
v
i
t
y) と しての 自己を映 し出すだ ろ う (
Sc
l
at
e
r
,2
0
0
3
)
.
エスノメソ ドロジ-の手法 によ って、 日常生活 にお ける相互行為 がいか に意 味を産 出 してい る
かが明 らか にされているが , 1つの状況 と して、筋 (
pl
o
t
) の展 開 を伴 う対人 間的 ドラマであ る
イ ンタ ビュ- (
Hol
s
t
e
i
n a Gubr
i
um,1
9
91
)の コンテ クス トもみてい く必要 が あろ う. それ は
また、聞 き手 が語 り手 に対 していかな る自己を提示 しているのか につ いて、反省的 に描 き出す行
為 であ る。
3- 2 ヨンチタ貫 目 巨 テ ラ テ イヴ 亀社 会 行 為 的側 面 、 社 会 的 歴 史 的 連 結 点
コ ンテクス トⅠ
‖ま、社会 的 コ ンテクス トに埋 め込 まれた社会的行為 と しての ナ ラテ ィヴに関心
を もつが、 この点 はPl
umme
T(
1
9
9
5
) および小林 (
1
9
9
7
) に詳 しい。 Pl
umme
rは、主 に人 々の
セ ク シュアル 争ス ト- リ-を取 り上 げ、 それ まで私的な領域 で しか語 られず、聞かれ ることのな
か った個人的経験 のナ ラテ ィヴが、公 的な領域 で聞かれ るよ うにな った社会的条件 を解明 した。
そ して、 ある社会的枠組 みや コ ンテクス トが、彼 らの語 りを引 き出す ス トー リーテ リングの過程
と、逆 に、彼 らの語 りが社会 に対 して学 む政治性 につ いて考察 を試 みて いる。 ナ ラテ ィヴとは、
-
14 3 -
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
008
語 る場 と聞かれ る場 を持 って生成 され るので あ り、 その タイ ミングとは、 コ ンテクス トⅡを鑑 み
れ ば、歴史 的 な時間 の問題 で もあ り、政治 的 な過程 の なか に もあ る といえ る 〔
小林 ,1
9
99
)。 図
1で は、 コ ンテクス トⅠ
‖ま、 PRODUCT、 邑王
VES 良SOCI
ETY、 CONSUMERSを囲 って い る
。
「彼 / 彼 女 の問題 は公 的 な問題 とな る(
公 的 問題 は、 常 に歴 史 的 で構 造 的 で あ る)」 とい う
De
nz
i
nの言葉 (
1
9
92,p.
15) もまた、個人 の ナ ラテ ィヴが 「公」 とい う社会 的 にマ クロな コ ンテ
クス ト 昏コ ミュニテ ィ (
年齢b 階級、 ジェ ンダ-、性 的指 向 に したが って構造化 され た、歴史 的
に発展 す る 「
記憶 の共 同体 」と もいえ る) と常 に連結 して い る ことを意 味 して い る。 その よ うな
コ ミュニ テ ィには、社会 的規範 やイデオ 田ギ-を具現 す るマス タ- (モデル)。ナ ラテ ィガが あ
0
02
)
。 入 射 こよ って語 り出 され るナ ラテ ィヴは、 マス タ-ナ ラテ ィヴの変化 、歴史
る (
桜井 ,2
の変遷 とい った社会 的 コ ンテ クス トと切 って も切 り離せ ない関係 にあ るだ けで な く、 さ らに個人
のナ ラテ ィヴが社会 的な コ ンテ クス トを変革 す る可能性 を常 に秘 めて い る。 しか し、 ナ ラテ ィガ
を語 り出せ ない コ ンテクス トはい くらで も存在 しうる し、 ナ ラテ ィヴを生成 す る ことで他 の可能
性 が閉 じられ る場合 もあ る。 我 々 は、 ここで述べ た意味 での社会行為 的側面 や、社会 的歴史 的 な
結節点 と しての コ ンテクス トも分析 の射程 に入れ、 よ り包括 的 に人 の語 りや経験 をみて い く必要
が あ るだ ろ う。
3- 3 ヨンテタ謁 紺 巨 テラテ音響宛外側 (
混乱 卓多義性 ・矛盾)と語 り得ないもの
コ ンテ クス トⅢで は、 「テ ラテ ィヴは、経験 に意 味 を与 え るだ けでな く、我 々が それ を通 して
s
e
l
ve
s
)が構成 され る。 そ して我 々が語 る物語 を我 々 は生 きてい る」 とい うナ ラテ ィ
まさに自己 (
ヴの機能 に対 して、 「デ ィス コ-式の外側 は何 か wha
ti
sout
s
i
dedi
s
c
our
s
e
?
」(
Fr
os
h,1
99
9)
とい う次元 につ いて検討 す る。 本稿 で は、 「外側」 が意 味す る もの は、 「ナ ラテ ィヴを越 え た とこ
ろ」 を指 す ので はな く、 ナ ラテ イヴの混乱
専
多義 性 ・矛盾 や語 り得 ない もの と して扱 う (
荘 島,
2
0
07
a)
。 図 1で は、 コ ンテ クス トⅢ は、 uVES & SOCI
ETYとPRODUCERSを またが って い
る。 つ ま り、個人 の体験 が経験 と して語 られ る過程 において、 ナ ラテ ィヴは多義性 や語 り得 ない
もの を挙 むので あ る。 「自分 の人生 を話 す とき、人 々 は ときどき嘘 をっ き、 い ろいろ忘 れ、誇 張
中略)私 たちは、
し、混乱 し、勘違 いをす る。 だが、 それ らは複数 の真実 を明 らか に して いる。 (
それ らの創作 をっ くりあげるヨ ンテクス トやそれ らを伝 え る世界観 に慎重 な注意 を は らいなが ら、
Pe
r
s
onalNar
r
at
i
veGr
oup,1
9
89,p。
2
61
) こと しかで き
解釈 を通 してのみそれ らを理解 す る」(
ないのであ る。
浅野 (
2
0
01
) は、 自己物語 と語 り得 ない ものにつ いて理論化 し、語 り得 なさが どのよ うな時 に、
どの よ うな形式 で現 れ るのか述 べ て い る
O
荘島 (
2
0
07
a) は、語 り得 ない もの の表象様式 の検討
か ら、具体 的 な事例 の分析 に際 し、①表象不可能 な真実 か らの示 唆 と しての <飼 い馴 らされず に
い る声 >、② 出来事 を見通 す統 一 的 な <モ ダニ ズ ム的文体 >、 ③ 精神分析 にお け る<仮構 の物
語 >の介在 とい う 3つの視点 を設定 し、 あ る性同一性障害の事例 を検討 している。 また、 ナ ラテ ィ
ヴが生成 され る場 は、 テ ラテ ィガが抑制 され る場 で もあ る。 ナ ラテ ィガが語 り手 と聞 き手 の相互
行為、共 同作業 において生成 され る以上、語 り手 が語 りを語 り得 て いない と解釈 す る ことは、 聞
き手 が何 を聞 きだそ うと して い るのか とい うことに深 く関 わ って い る (
桜井 ,2
0
01
)。 したが っ
て、語 りが混乱 を起 こ して い るよ うに聞 き手 に感 じられ た場面 が あれば、 その場面 の コ ンテクス
トを詳細 に分析 し、研究者 自身 が イ ンタ ビュ-に対 して無意識 に抱 いて い る構 え につ いて も内省
-
14
4
-
荘島 :ナ ラテ ィヴが生成 され る重層的 コンテクス トとその解釈
す る必要 が あ る。 コ ンテ クス トⅢの分析 は、複数 の真実 や声、経験 の在 り方 を重層 的 に映 し出す
だ ろ う。
3-4 コンテクス トI
V:語 i
J手の生 (
l
i
f
e
) を取 り巻 く複数の生 (
l
i
f
e
)
、声
コ ンテ クス トⅣ は、個人 のナ ラテ ィヴを、複数 の他者 のナ ラテ イヴとの関連 か らみ る。 人が あ
る出来事 につ いて、 自己の経験 と して意 味 を もったあ るナ ラテ ィヴを生成 す るとき、 その出来事
の時空 間 を共 に した他者 はその出来事 を いか に語 るのか とい った問題 を扱 うコ ンテ クス トであ る。
1中 、 コ ン テ ク ス トⅣ は 、 P
RODUCERS、 PRODUCT、 CONS
UMERSが LOCAL
CONTEXTと相互作用 して い る場面 を指 す。
図
例 え ば、 Ri
e
s
s
man (
1
9
9
0
)の離婚 につ いて の ナ ラテ ィヴ分析 は、女性 側 と男性側 で彼 らの関
係 の在 り方 につ いて異 な る リア リテ ィの構 築 を行 って い た ことを明 らか に して い る。 また、
Pol
ki
nghor
ne(
1
9
91
) は、 黒揮監督 によ る映画 「羅生 門」 を例 に して、 あ る出来事 や体験 に対
p
l
ot
) が あ る と、 ナ ラテ ィ ヴに、 よ り意 味 の あ る布 置
して 、 1つ 以 上 の ナ ラテ ィ ヴの筋 (
〔
c
o
ns
t
e
l
l
at
i
on) や統 合 が見 込 まれ る と述 べ て い る そ して、 あ る筋 とは異 な る別 の筋 が 出来事
。
を再解釈 す る ことで、 出来事 の意 味 に変 化 が生 じるとい う。 (日常 の些細 な出来事 で あ って も、
災害 や病 い とい った転機 とな りうる出来事 で あ った と して も)個人 に とっての経験 は、他者 か ら
孤立 して生 み 出 され るナ ラテ ィヴはな く、 コ ンテ クス トⅠ、 Ⅱで触 れた よ うに、必 ずや他者 や社
会 を仲介 して生成 され る。 そ して、異 な る筋 によ って語 られた他者 のナ ラテ ィヴを 目の前 に して、
人 はまた新 たな ナ ラテ ィヴを語 り出す契機 へ と開かれて い る。 ナ ラテ ィヴとは本質 的 に対話 的 な
機能 を備 えた過程 で あ り、 あ る公/私 的 な場 とは、複数 のナ ラテ ィヴが存在 す る多声 的 な場 で あ
る (
Bakht
i
n,1
9
7
4
)
。 それぞれの声 は、互 いに融合す ることな く、異質 なずれ によ って対話 的 に
生成 され る (コ ンテ クス トⅢで述 べた ナ ラテ ィヴの矛盾 や多義性 に関 して いえ ば、一見単声 にみ
え る自己の内部 で も対話 の過程 が生 じて い る といえ、 その過程 に もずれが発生 して い る ことが明
らか にされて い る〕
家族 とい う集団 を例 に挙 げてみ よ う。 家族 とは私 的で クローズ ドな社会集団 の典型例で あるが、
これ まで、 家 族 の経 験 は、 態度 や行 動 な どの個 別 的で断片 的 な変数 と しか扱 われ て こなか った
(
Dal
y,1
9
9
2
)
. しか し、 ナ ラテ ィヴアプ ローチは、家族 の相互作用 や ダイナ ミクス、家族 メ ンバ ー
間 の対話 的 な コ ンテ クス トに迫 る ことを可能 にす る。家族 の経験 を、複数 のパ ースペ クテ ィヴか
ら眺 め る ことで、いか に 「リア リテ ィ」が構成 されてい る (されっつ あ る)のか、そ もそ もいか に
して 1つ の 「リア リテ ィ」 の構 成 に家族 メ ンバ ーが寄与 して い るのか、 また、 いか にそれが変化
してい る (して きた) のか を、人生 とい う長 い時間の経過 に沿 って詳細 に分析す る ことがで きる。
4 考察
い まや ナ ラテ ィヴ ・ペ イ ス ト ・イ ンクワイ ア リ-は、諸 々の領域 をまたが り、質 的研究 の主要
な研究 (
方法 ) と して確立 しっつ あ る。 しか し、 ナ ラテ ィヴの定義 が錯綜 して いるの と同様 に、
ナ ラテ ィヴ ・ペ イス ト・イ ンク ワイ ア リ一にお いて も様 々な研究 が乱立 して い る。 本稿 で は、 ナ
ラテ ィヴアナ リシスのモ デルの レビューか ら、研 究及 び実践 において ナ ラテ ィヴを扱 う方法 と し
て、 ナ ラテ ィヴが生成 され るコ ンテ クス トの重 要性 に改 めて着 目 し、 Ⅰ. ナ ラテ ィヴの相互行為
-
145
-
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
0
0
8
的側 面、 Ⅲ. ナ ラテ ィヴの社会行為 的側面、 社会 的歴 史 的連結点 、 乱
ナ ラテ イヴの外 側 と語 り
得 な い もの、 Ⅳ。語 り手 の生 (
l
i
f
e
) を取 り巻 く複数 の生 (
l
i
f
e
)
、 声 とい う 4つ の コ ンテ クス ト
を検 討 した。 今後 の課題 と して は、 これ らの コ ンテ クス トを ナ ラテ ィガと切 り離 さな い形 で研 究
へ と結 び付 けて い くことが求 め られて い るO 重層 的 な コ ンテ クス トに埋 め込 まれ た ナ ラテ ィヴを
研究 す るス タイル は、事実 の記述、 経験 や意 味 の単 な る映 しとい った、 む しろ実証主 義 的 なナ ラ
テ イヴ 。ペ イ ス ト 卓イ ンク ワイ ア リ- とは異 な る新 しい研究 の視点 をっ くりだす だ ろ う。
例 え ば、 Mi
s
hl
e
r(
2
0
0
5
) は、 ナ ラテ ィヴアナ リシス モデルの 3カテ ゴ リを組 み合 わ せ た研 究
を推奨 して い るo デ ィス コース分 析 中心 の研 究 で も、 ナ ラテ ィヴの構造 や機 能 につ いて も分析 を
す る とい った具合 で あ る。 考察 で は、蚕層 的 な コ ンテ クス トで生 成 され るナ ラテ ィヴを いか に研
究 と して扱 って い くのか とい う問 いに対 し、過渡 的空 間 と して ナ ラテ ィヴを記 述 す る研 究 実践 に
つ いて提案 す る。 現 時点 で考 え うる研究実践 につ いて、① ミクロ過 程 :ナ ラテ ィヴに現 れ る自己
の問題、及 び② マ ク ロ過程 :多様 かっ重層 的 な コ ンテ クス トを組 み合 わせ た研 究、 とい う 2つ の
視点 か ら筆者 の考 え を述 べ る。
4-1 ミクロ過程 :ナラテ ィヴに現れ る自己の問題
ナ ラテ ィヴ さ夕- ン以 降、 立場 に よ って違 いはあれ、 ナ ラテ ィヴや ス ト。リ- と自己、 アイデ
ンテ ィテ ィのつ なが りの在 り様 が明 らか に されて きて い る。 で は、 重層 的 な コ ンテ クス ト上 に現
c
l
at
e
r(
2
0
0
.
3
) は、 自己を ナ ラテ ィヴや
れ る 自己 は、 いか な る様 態 で存在 しうるのだ ろ うか ? S
言説 によ って輪郭 を縁取 られ る歴史 的、社会 的、 間主観 的 な構成物 で あ る ことに同意 を示 しなが
ら、 ナ ラテ ィガの実践 やパ フオ-マ ンスに焦 点 を置 くことは、 自己が常 にテ ラテ ィヴで語 られ る
もの以上 で あ る可能性 を示 唆 して い る と述 べ て い る。 そ して、研究 にお いて着 目す る対象 を 自己、
アイ デ ンテ ィテ ィか ら関係性 (
r
e
l
at
i
ons
hi
ps
)概 念 へ と移 行 を図 って い る (関係性概念 に は、現
r
e
al
) と想 像 (
i
magi
ne
d)
、 あ る もの (
pr
e
s
e
nt
) とな い もの (
abs
e
nt
)
、 無 意 識 の次 元 も含
莱 (
まれ る)0
関係性概念 は、 ナ ラテ ィガが生 成 され る重 層 的 な コ ンテ クス ト上 を臨模 的 に移行 す る自己の ポ
po
s
i
t
i
oni
ng:直訳 は位 置調 整。 例 え ば、 Bambe
r
g,2
0
0
4
) の概 念 と親和 性 が あ
ジ シ ョニ ング (
る。 例 え ば、 ポ ジ シ ョニ ングの分 析 で は、 「私 」 の関 係 性 概 念 と して、 ナ ラテ ィヴを生 成 す る
「私 」、 ナ ラテ ィヴの なか で指 示 され る 「
私 」、 「私 」 を指示 す る 「私 」、 登 場 人 物 と して の 「
私」
な どが存在 す るo Lか し、 明 らか に され るべ き 「私 」は
lつ に統一 されて いな いため、個 人 的 な
ナ ラテ ィヴを字面 の通 りに分析 して も、個 の理解 に達 す ることはで きない とい う (
Sc
l
at
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の過渡 的 な空 間 を構 築 す る とい う意 味 で、 ナ ラテ ィヴは 「私 」 の生 成 と維 持、 そ して変容 に重要
な役 割 を果 た して い る 。 自 己 の構 造 につ い て 、 ア イ デ ンテ ィ テ ィの 多 面 性 (
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-
14 6
-
荘島 :ナラティガが生成される重層的コンテクス トとその解釈
イ ナ ミックな過 程 や 自己 の可 能 性 (
例 え ば、 潜 在 的 自己) に関 心 が 向 け られ 始 め て い る
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) は、 自由形式のイ ンタ ビューデー タを分析 し、 自己
の矛盾 した 「
表層的」 デ ィスコース問 にあ るアイデ ンテ ィテ ィの連続的移動 に焦点 を当てたモデ
ルを提起 した. 荘 島 〔
印刷 中) は、 「私 は性 同一性 障害者 であ る」 と語 って いた者 が、 次第 に
「
私 は牲同一性障害者 で はない」 と自己につ いて語 るよ うにな って い った過程 を自己物語 の再組
織化過程 として分析 し、 ナ ラテ ィガの変容 か ら常 に何か別 の者 に移行 してい こうとす る自己の在
り様 を検討 した. これ らの研究 ほも過渡的空間 と してのナ ラテ ィヴと、 その空間で生成、維持、
変容 す る自己 との関連 を示唆す る具体的研究 といえ る。
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) が、質的研究が人 々の経験 を描 き出す ことに固執すべ きで は
ない と警告 したよ うに、 ナ ラテ ィヴそれ 自体 は経験 をそのまま映 し出す もので はな く、何 かに変
わ りゆ く過程 の一場面 を切 り取 ったにす ぎない.描かれ るのは、 ナ ラテ ィヴの過程 ・多義性 ・変
化 (
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)であ り、 それは常 に重層的なコンテクス トに埋 め込 まれているのである。
次 に、 マクロな観点か ら、
.重層 的な コンテクス トを組 み合 わせた研究 の方向性 につ いて展望 を
試み る。
4-空
軍タ E
3過 程 :重 層 的 な コ ンテ タ 呆 卜を組 み 合 わ せ た研 究 実 践
ここで は、研究 とい う行為 を、過渡的空間 としてのナ ラテ ィヴ実践 と捉 え直 してみよ う (
研究
を行 い、知見 を出す こと自体が研究者 による 1つのナ ラテ ィヴ実践 である). っ ま り、研究 とい
うナ ラテ ィヴ実践 は、過渡的空間を常 に生成 し続 ける営みであ り、翻 って、過渡的空間 とは重層
的な コンテクス トに支 え られてい る。 研究 とい うナラテ ィヴ実践 における過渡 的空間 は、 いか に
生成 され るのだ ろうか。 それはまた、誰 に向か って、 いかなる意味を もつ ものなのだろ うか。
2
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07
b) は、 あるひ とまとま りのイ ンタビューデータな らびに トランスク リプ トに対 し、
荘島 (
認識論およびアプローチの異 なる 2つの方法論 を用 いて、異 なる知見 を導 き出す ことを 「
知見の
羅生 門的生成」 とよび、実践 して いる。 さ らに、 同一 テーマにつ いての研究 を継続す るなかで、
例 えば、 コンテクス トⅢ :自己物語論 とい うアプローチに対 して語 り得 ない もの とい う視点 を導
入す る、 コンテクス トⅣ :語 り手 を取 り巻 く複数 の声 (
例えば、調査協力者 の友人 や家族 を巻 き
込んでい く) を取 り入れ るほか、調査期間 を伸 ば して縦断的研究 を行 い、個 の変容 をみ るなど し
て、 ナラテ ィヴが生成 され るコ ンテクス トの拡大化 を図 っている。 ナ ラテ ィヴ実践 の 1つの意義
と して、 コンテ クス トの拡大化 に伴 う過渡的空間 の拡大化が挙 げ られ る。 荘 島 (
2
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07
b) は、知
見 を羅生門的に生成す ることで明 らか になるデータの多面的構造や知見のせめぎあいについては、
1つの知見へ収束 させ る必要性 は必ず しもな く、 む しろ、異 なる方法論 によ って照射 されたデー
タか ら、双方 にせめ ぎあ う知見が得 られたな らば、 そのせめ ぎあいがなぜ、 いか に生 じたのかを
み る ことに重 きをおいている。知見の 「ずれ」 が内包す る意味合 いを十分 に読 み取 り、 「ずれ」
の内奥 に迫 ってい くことで、
うー見す ると 「ずれ」ているもののなか に共通 の構造が見 出され、 そ
れ は次 の研究 の新 たな コンテクス トとなる可能性 を秘 めているのである。個や事象 の理解への到
達 は、研究者 の目指すべ き最終 目標 と して は位置づ け られ るが、おそ らく重要 なのは個 の理解へ
到達 しよ うとす る研究者 の格闘の痕跡 や道筋 を、重層的な コンテクス ト上 に残 してい くことなの
で はないだろ うか。 それ は研究者 と対象者 が共 に居合 わせた土俵の記述であ り、今後 いかなる土
俵が形成 され うるのかを指 し示す過程で もある。 その過程 こそが、過渡的空間 としてのナ ラテ ィ
-
147 --
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
008
ブ実践 なので あ り、双方 が対話 を維持 し続 けるとい うま さに臨床 的 な実践 で もあ る。
過渡 的空 間 とい う概念 は、 まだ理 論化 に とどま って お り、研究実践 まで に は至 って いな いのが
現状 であ る。 今後 は、過渡 的空 間 とい う重 層 的 な コ ンテ クス トを描 き出 し、新 たなナ ラテ ィヴ ・
ペ イス ト 。イ ンクワイア リ-を開拓、実践 して い きたい.
文献
浅野智彦.(
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).自己-の物語論的接近一家族療法か ら社会学へ.勤草書房.
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荘 島 :ナ ラテ ィヴが生 成 され る重 層 的 コ ンテ クス トとそ の解 釈
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桜井 厚.(
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).イ ンタ ビューの社会学- ライ フス トー リーの聞 き方 .せ りか書房.
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印刷中). 「
私は性同一性障害者である」という自己物語の再組織化過程一自らを 「
性同一
荘島幸 子.(
性 障害者」と語 らなくなったAの事例の質的検討.パーソナリティ研究,1
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a).自己物語論への 《
語 り得ないもの≫ という視点導入の試み.心理学評論,
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b).ある性
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京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
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).質的研究 における対話的 モデル構成法.質的心理学研究 ,6,1
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4.
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注釈
注 1) テクス ト性 とい う言葉 は、我 々 自身がすで に言語 やナ ラテ ィヴの形式 にすで に浸か ってい るため
に、今 日の社会 における我 々の生 (
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) や経験 が、様 々なメデ ィアを通 して何 らかのか たちで
理論化 され、分析 され、 カテゴライズされ、表象 されて しま うことを意味す る。
(日本学術振興会特別研究員
教育方法学講座
博士後期課程 2
回生)
0
0
7
年9
月7日、改稿 2
00
7
年1
1
月3
0日、受理2
0
07
年1
2
月1
2日)
(
受稿 2
-
1
50 -
Multilayered Contexts in which Narrative is Generated and
Interpreted: Toward the Next Narrative Based Inquiry
SHOJIMA Sachiko
While narrative based inquiry became one of the maIn qualitative study and method
across a wide variety of disciplines, narrative based inquiry had crowded the field of
qualitative study. Also, a definition of "narrative" was not integrated yet. In this paper,
drawing Mishler's (1995) model of narrative analysis, three categories of the narrative
analysis model (l.Reference and temporal order, 2.Textual coherence and structure, 3.
Narrative functions) were described. After examination, the three categories of narrative
analysis model, multilayered contexts in which narratives were generated were refocused
as an important perspective. Four contexts \vere extracted and explained, i.e., 1. an
aspect of interaction of narratives, 2. an aspect of social action of narratives, and
linkage between narrative and social historical contexts, 3. outside narratives and
undertone narratives, 4. multi voices and life around the narrator's life. Finally, a
connection between narrative and the self was discussed, introducing a concept of
"transitional space" (Sclater, 2003) to narrative based inquiry.
- 151 -
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