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物語読書に於ける非インタラクティブ性 - JAIST 北陸先端科学技術

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物語読書に於ける非インタラクティブ性 - JAIST 北陸先端科学技術
FOKCS2012MAR-5-4
知識共創第2号(2012)
物語読書に於ける非インタラクティブ性
Non-interactivity on Reading Narrative 布山美慕1),川村邦光1)
Miho Fuyama1), Kunimitsu Kawamura1)
1) 大阪大学大学院文学研究科
1) Graduate School of Letters, Osaka University
1. 研究の背景と目的 小説など物語の読書をする際人は時として我を忘れて熱中し物語に入り込む。そのような熱中や忘
我が何故起こるのか、また、そのような熱中や忘我の時人はどのような状態にあるのか、その一端を
明らかにすることが本研究の目的である。多種多様なコンテンツが増加し物語の読書行為が減少傾向
とは言え、未だ続く読書行為の特殊性を明らかにすることで情報入手やある体験・行為に於ける自己
と対象及びその間の情報の遣り取りというモデルを破る可能性を見いだす。
2. 研究内容 読書についての研究は多くは歴史的、社会的側面から読書論として、また物語については物語論と
して存在する。しかしながらそれらの研究は読む自己と読まれるテキストとその間の作用という形を
前提にしている。テキスト論などによってテキストの捉え方が種々に議論されているが、それでもそ
れは『自己』を前提としてどこにテキストを置くかという問題となっている。
しかしながら忘我し熱中するような読書に於いて私たちは『自分』が何を感じているか、どのよう
に考えているかなど『自分』としての意識を持つことは無い。その事を素直に捉えるとき『自己』と
テキスト、その間の作用、というモデルではない読書行為の捉え方が必要だと考える。
本研究では特に類似点が見られるバーチャルリアリティと読書行為の比較を行い、バーチャルリア
リティでは重要とされるインタラクションの要素が読書に欠けていることを確認した。更にインタラ
クションがパッケージ化された情報をやりとりするインターフェースとしての自己に結びついている
ことを、バーチャルリアリティでの現実感や成長過程での身体性の構築から考察した。このことから、
インタラクションが行われない読書行為に於いては本質的に『自己』と『他者』その間の情報の遣り
取りという形式が存在しないと考えられる。
また、近年では認知科学からのアプローチも存在しており、読書行為の新しい有用なモデルを提供
できることを目指している。現段階では検証できる理論提供の段階には無いが何らかの検証可能なモ
デルを作っていきたい。
3. まとめ 忘我し熱中するような読書行為をインタラクションの観点から特にその情報入手モデルとしての特
殊性を考察した。それによって新しい読書行為の捉え方を提示することができた。今後は先行研究を
広く調べより具体的なモデルを構築し何らかの検証可能な形を作っていくことを目指す。
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