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日本ゼオン(株) - 中央労働災害防止協会
健 康 イ キ イ キ 職 場 ・ ・ 12 グリーン化作戦による健康づくりの推進 日本ゼオン (株) 総合開発センター 環境安全室 労働衛生担当 高橋 貞夫 TAKAHASHI sadao 労働者すべてが心身両面にわたり健康で、そ 報提供や個別指導の充実、さらには講演等の実 の能力を十分に発揮できる職場環境を形成して 施により、健診有所見率の低減を図っている事 いくことが必要です。今回は、健康に関する情 業場からの報告です。(中災防 健康確保推進部) このような状況を危惧した当時の経営陣は 当事業所の概要 「従業員が明るく爽やかに、はつらつとして業 当社は、1 9 5 0年に設立され、当初は塩化ビ 務を推進できる職場づくり」が肝要であると考 ニール樹脂を製造・販売し、その後、合成ゴム、 え、全社で健康・体力づくり活動を展開すると 合成ラテックス、化成品等の製造・販売を中心 の方針が示されました。 に事業を展開してきました。近年では新規事業 この取り組みは人事部長を組織長とした全社 分野として、高機能性樹脂、電子材料、光学材 活動でフィットネスリフレッシュゼオン(別 料、医療・健康分野等への事業展開を図ってお 名:F R-Z) と命名されて、各事業所に推進委 ります。 当事業所は研究開発部門の中核として、 員会を設置して活動が展開されました。弊社で 既存事業技術の充実化、新規事業分野の充実化 の健康づくり運動は約2 0年ほど継続的に実施 を目指し『人の真似をしない、人が真似の出来 されてきました。 ない』独創的な技術開発活動の推進をモットー 第1期(黎明期) :この時期は、日頃の運動不 れいめい まいしん として研究開発活動に邁進しております。 「健康づくり」活動の取り組み経緯 「安全で健康で安心して働ける職場の創造」 足の解消を目的に、家族と一緒に軽い運動を継 続的に続けられるようにすることを主眼とし て、 「トリム運動」 、 「ウオーキング」 ( 「レッツ ウオーク」と呼称)に代表される健康づくり活 は、働く者にとって永遠の課題といえます。当 動を展開しました。 「万歩計」 、 「簡易血圧計」等 社でも従業員の安全・健康、環境保護の維持促 を従業員全員に配付するとともに成績優秀者に 進活動を積極的に展開してきました。 は全社レベルでの表彰を行いました(1年間に しかし、昭和4 0年代の石油ショック等の要 2, 000km も走破する人が1 5人もおりました) 。 因により、従業員の構成が団塊世代に偏り、そ 第2期(成長期) :この時期は、全社の環境安 の人たちが中高年代を迎えるとともに、平均年 全活動であるレスポンシブルケア活動の一環と 齢の上昇とあいまって、肥満、高血圧症、肝機 して年度計画に組み込み、環境安全部門の全面 能障害等の生活習慣病症状の所見が増える傾向 的なバックアップにより、活動を飛躍的に展開 にありました。 した時期です。事業所にあっては、①生活習慣 健康イキイキ職場 病予備軍を減少させるための運動指導、食事指 導等の教育展開(グリーン化作戦) 、②産業医、 (1)健康情報の積極的紹介 健康に関する従業員の意識高揚を目的に『安 看護師による職場衛生教育の実施、③レッツウ 全ニュース』を発行して健康情報を紹介してい オークをさらに活発化し、健康意識の向上に結 ます。この『安全ニュース』は、誰もが読める び付けること―を主眼に活動を展開しました。 ように社内のパソコンネットワークの掲示板に 特に上記①の「グリーン化作戦」については、 掲載しています。ここ2年間は生活習慣病に 外部のスポーツクラブに委託して健康測定と運 関する情報をシリーズで紹介しています。特に 動指導、肥満防止用の食事の試食と栄養指導な 生活習慣病の改善と予防については、健康診断 どにより、参加者の好評を博し、また、効果も 結果を正しく理解し、自分自身の健康状態を把 それなりに上がりましたが、残念なことに、施 握して、適度の運動と適切な食事を摂ることの 設側の経営不振により中断せざるを得なくなり 重要性を紹介してきました。従業員からは、 「生 ました。 活習慣病の怖さと、その予防対策等についてよ 第3期(成熟期) :中央労働災害防止協会に運 く理解できた。参考になった」と喜ばれていま 動指導、栄養指導をお願いして、指導員の方に す。 弊社に来所していただいて、指導を受け、今日 まで活動を展開してきました。この時期に「グ (2)産業医による講演会の開催と 個別指導の充実 生活習慣病対策には専門的な視点からの指導 リーン化作戦」を復活しました。 以下に第3期の取り組み内容をご紹介いた が重要なため、産業医による講演会・指導会を 以下のように展開しています。①生活習慣病の します。 予防・対処法を内容とする講演会を年2回実 具体的取り組み内容 施、②短時間指導会として毎月1回の頻度で 「グリーン化作戦」とは健康診断結果の有所 健康ワンポイントレクチャーを実施、③健康診 見者(イエローカード者)に対し、事業所産業 断で生活習慣病およびその予備軍と診断された 医を中心に衛生管理者、看護師が連携して教 人に対する飲食・喫煙・生活態様等についての 育・指導を強化し、健康者( 「グリーンカード 健康個別指導会を実施。 者」と呼ぶ)に移行させるための援助をするこ 上記①②の開催時には、出席率も高く活発 とを目的として、以下のような具体的な取り組 な質疑応答、意見交換が行われています。また、 みを実施してきました。 (1) 健康情報の積極的 ③の健康個別指導会では、参加者は「毎週水曜 紹介、 (2) 産業医による講演会の開催と個別指 日を禁酒デーにしよう!」 「喫煙本数を半分に 導の充実、 (3) 専門家による食事・運動指導(健 する!」 「就寝時間前には食事を摂らないよう 康づくりセミナー) 。 にしよう!」との決意を語り、継続実施してい みずか これらは、自分自身の健康状態を自らが正 しく理解し、健康づくりセミナーで解決方策を るようです。 (3) 「健康づくりセミナー」活動 見出し、それを実行した後、その効果を健康診 生活習慣の改善には各人に「発想の転換」を 断にてチェック、産業医との面談にて方策の修 するよう働きかけ、 「良性な刺激」を与え、自 正をするという PDCA サイクルを回しながら 分の健康に興味を持たせること、および意識を 改善実行する活動です。以下に上記 (1) から (3) 変革させる必要があります。そのためには、前 についてその内容を紹介します。 述の個別指導に加え、 「運動や食事等の実技指 導のできる専門家」による集合教育お 16 よび個別指導の併合教育も非常に重要 14 そのため、 「運動指導」 、 「食事指導」 12 10 8 を中央労働災害防止協会にお願いして 6 指導員の方に来所してもらい「健康 4 づくりセミナー」を開催しています。 このセミナーは年2回開催し、これ 2 0 93 年 94 年 95 年 96 年 97 年 98 年 99 年 00 年 01 年 02 年 03 年 04 年 05 年 06 年 07 年 93 年 94 年 95 年 96 年 97 年 98 年 99 年 00 年 01 年 02 年 03 年 04 年 05 年 06 年 07 年 93 年 94 年 95 年 96 年 97 年 98 年 99 年 00 年 01 年 02 年 03 年 04 年 05 年 06 年 07 年 であるととらえております。 まで1 2 8名が受講しました。以下に 「健康づくりセミナー」の中身を紹介 血圧 図 脂質 肝機能 定期健康診断生活習慣病関連有所見率の推移(%) します。 ①運動指導:個々人の柔軟性、機敏性を確認す 化率3 1% の改善を図ることができました。③ るため、軽いエクササイズを実施しています。 グリーン化作戦を継続することにより、上昇傾 また、生活習慣病防止策として簡単にできる運 向にあった有所見率を減少傾向に転ずることが 動法を紹介し、実技指導を行っています。中で できました(図) 。ただし、まだまだ十分なレ も、誰にでもできるウオーキングを推奨し、正 ベルとは言えません。④アルコールに起因する しいウオーキング法の指導を行っています。 γ―GT P 等は改善効果が見られません。飲酒 ②食事指導:セミナー実施前に中災防ヘルスア 習慣の改善を図ることが必要です。 ドバイスサービスを受け、自分の健康状態と食 (2)これからの課題 し こう 事の嗜好をチェックし、この資料をもとに個々 ①健康診断結果から血圧、脂質検査の有所見 人の栄養指導を行っています。 率は改善されてきましたが、さらなる改善を目 ③マイ健康プランの作成:セミナーの最終目的 指します。②肝機能検査でのアルコールに起因 は自分の基礎体力を正しく理解する中で、今後 したγ―GP T 等の有所見率はなかなか改善が の改善行動となる「マイ健康プラン」の作成に 見られないので、飲酒習慣の改善のために保健 あります。各自の腹囲を測定し、その改善目標 指導・視聴覚教育等で 「酒量の抑制」 、 「禁酒デー を決め、無理のない改善方策としての実行プラ の設定」等の活動を広めていきます。③スポー ンを作成しています。 ツ・運動の日常化のために、外部スポーツクラ 活動結果とこれからの課題 (1)活動結果 ①各活動を有機的に結びつけることにより、 生活習慣病に対する健康意識レベルの向上が図 ブの法人会員制度の積極的利用、および歩こう 会等のスローライフ活動の輪を広げていきま す。④生活習慣病の若年化傾向が見られる昨今、 若年者を対象とした「健康づくりセミナー」も 計画していきます。 られたとともに有所見者の意識改革レベルが向 生活習慣の維持・改善は一生を通じ誰にでも 上し、改善気運を高めることができました。② 共通した課題です。これまで述べてきた活動を 上記の活動結果から2 007年度の定期健康診断 有機的に関連付けることで、 『従業員の安全と では、健康づくりセミナーに参加した有所見者 健康』を守り『安心して働ける職場づくり』活 8 0名のうち2 5名が無所見者となり、グリーン 動を充実していく所存です。 (中災防 月刊誌「安全と健康」H19.8月号より)