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コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500 - PFU

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コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500 - PFU
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
Compact Duplex Color Image Scanner ScanSnap iX500
山下政明 *
笠嶋裕介 *
金谷真悟 *
田邊智哉 **
松井隆一郎 ***
島崎克仁 ***
Masaaki Yamashita
Yusuke Kasashima
Shingo Kanaya
Tomoya Tanabe
Ryuichiro Matsui
Katsuhito Shimazaki
*
イメージビジネスグループ イメージプロダクト事業部 第三技術部
**
イメージビジネスグループ イメージプロダクト事業部 ファームウェア開発部
***
イメージビジネスグループ イメージプロダクト事業部 ソフトウェア開発部
パーソナルドキュメントスキャナ「ScanSnap」は,
その製品コンセプト(カンタン・スピーディー・コンパクト)
が市場に受け入れられ,全世界で多くのお客様にご利用いただいている.今般,ScanSnap S1500 のフルモデ
ルチェンジを行い,
新たに搭載した 「GI」 プロセッサーを中心にスキャニング環境を進化させ,
最新インターフェー
ス(Wi-Fi 及び USB3.0)への対応,スキャン速度や給紙性能の大幅強化を実施した.機能・性能が進化し,スマー
トに文書を電子化する新世代ScanSnap iX500によって,
お客様のライフスタイルのイノベーションを目指した.
The personal document scanner ScanSnap series, which are based upon the concept of
being "Simple, Speedy & Compact", have been well-received by the market and are now used
by many people from all over the world. The ScanSnap series has received a major remodeling
with the ScanSnap S1500. We enhanced the scanning experience with a new "GI" processor.
We also made the new ScanSnap scanners so that they can be used with the latest interfaces
(Wi-Fi and USB3.0). And on top of this, we significantly improved the scanning speed
and paper feeding experience. We aim to provide innovation in people's lifestyles with the
ScanSnap iX500, a new generation scanner that has improved functions and performance as
well as the ability to simply digitize documents.
1
まえがき
AWARD(スキャナ部門最優秀賞)注2)」を 3 年連続受賞
スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス
している「ScanSnap」 シリーズの中で,ベストセラー
の普及の加速と共に,電子書籍端末も続々とリリースさ
モデルの「ScanSnap S1500/S1500M」
(以降,従
れ,文書や書籍を 「電子化する」 スタイルが浸透しは
来製品)参3)をフルモデルチェンジし,クラウドサービ
じめている.このような時代において,文書を読み取っ
スやスマートデバイスを活用し,お客様の利用シーンを
て電子化するスキャナも更なる進化が必要である.
更に拡大する新世代スキャナである.
PFU は,大量の紙情報を高速に電子化することがで
参1)
きる「fi」 シリーズ
を,
業務用スキャナ市場に提供し,
本稿では,iX500 の開発背景や狙い,製品概要,技
術的な取組みについて述べる.
多くのお客様との信頼を築いてきた.一方,個人向けス
キャナ市場では,2001 年 7 月からパーソナルドキュ
メントスキャナ「ScanSnap」 シリーズ参2)の発売を開
始し,ワンプッシュでスピーディーに文書を PDF 化で
きることから全世界で多くのお客様にご利用いただいて
いる注1).
「ScanSnap iX500」
( 以 降,iX500) は,
「BCN
PFU Tech. Rev., 24, 1,pp.9-16 (05,2013)
注1)著作権の対象となっている新聞,雑誌,書籍等の著作物は,
個人的,または家庭内,その他これらに準ずる限られた範囲
内で使用することを目的とする場合を除き,権利者に無断でス
キャンすることは法律で禁じられている.
注2)全国主要家電量販店・パソコン専門店・ネットショップ(22
社 2,445 店)の販売データを集計した「BCN ランキング」に
基づき,パソコン関連・デジタル家電関連製品の年間販売台数
第 1 位のベンダーを表彰するものである.
9
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
2
製品化の背景と狙い
ScanSnap は,
「カンタン・スピーディー・コンパクト」
に文書を PDF 化するパーソナルドキュメントスキャナ
であり,電子化データを,有効に活用,管理できるオフィ
スツールとして多くのお客様から高い評価を得ている.
iX500 では,昨今の時代のニーズであるスマートデ
バイスでの読み取りをパソコンレスで実現し,更なるお
客様の利便性を向上し,お客様の利用シーン拡大を狙い
として開発に取り組んだ.
単に,スマートデバイスへの直接転送を実現するだけ
ではなく,
ScanSnap らしく「カンタン・スピーディー・
コンパクト」に拘り,スマートデバイスからでも,ワン
プッシュで,パソコンと同様の高速スキャンを実現し,
お客様に感動を与えることを目指した.
また,基本性能に関しても,お客様が快適かつスマー
トに文書を電子化できるように,ハードウェアを一新し,
ソフトウェアも様々な工夫を施した.
3
製品概要と特長
iX500 は,ADF 注3)を装備したイメージスキャナで
あり,新世代の ScanSnap として,
「カンタン・スピー
ディー・コンパクト」のコンセプトを更に進化させた.
新しい利用環境においても,快適かつスマートに文書
を電子化するために,様々な改良を加えた.また,基本
性能についても向上した.
このiX500の外観を図-1に,
◆図 - 1 本製品外観◆
(Fig.1-ScanSnap iX500 external view)
仕様を表 - 1に示す.以下に,四つの特長について述べ
る.
(1)
スマートフォンやタブレットへの直接転送実現
スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス
度を従来製品比 25% UP(カラー 300dpi)の 25 枚 /
分を実現し,更なる使い勝手の向上を実現した.
「GI」 プロセッサーにより,スキャナ内部で,原稿サ
でも,
「カンタン・スピーディー」な利用を可能とする
イズ,色,両面や片面などの自動判別処理が可能となり,
ため,スキャンしたイメージデータをスマートデバイス
パソコンやスマートデバイスでの処理を最小限にした.
に直接転送可能な Wi-Fi インターフェースに対応した
これにより,パソコンはもちろん,スマートデバイスと
画像処理エンジン「GI」プロセッサーを新たに開発した.
の接続時も,安定した高速スキャンを実現した.
スキャンボタンをワンプッシュするだけで,スキャン
(3)
高い給紙信頼性と耐久性を実現
画像をスマートデバイスに PDF 形式(JPEG も可)で
世界トップシェア注4)の 「fi」 シリーズで培った給紙技
保存でき,メモ用紙などを,デジタルカメラの感覚で
術をフィードバックし,ScanSnap シリーズでは初め
「カンタン」に読み取って,クラウドサービスに入力す
てブレーキローラーによる原稿分離機構を搭載しつつ,
ることで,いつでも,どこでも,イメージデータの活用
従来比同等のコンパクトボディを実現した.
が可能となり,お客様の利用シーンを拡大した.
(2)
高速読み取り 25 枚 / 分を実現
「GI」 プロセッサーの高速画像処理により,読取り速
注3)Auto Document Feeder の略.自動給紙機構.
10
注4)ドキュメントスキャナの主要市場である北米,欧州,日本で
それぞれシェアトップである.詳細は業務用イメージスキャナ
「fi シリーズ」紹介ホームページを参照されたい.
http://imagescanner.fujitsu.com/jp/concept/feature-story/
page2.html
PFU Tech. Rev., 24, 1, (05,2013)
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
◆表 - 1 ScanSnap iX500 両面カラースキャナの仕様◆
主な仕様
Windows® ※1
Mac ※2 OS
製品名/型名
ScanSnap iX500 / FI-IX500
読取モード
片面/両面,カラー/グレー/白黒/自動(カラー/グレー/白黒※3の自動判別)
光学系/イメージセンサー
セルフォックレンズ等倍光学系/カラー CIS × 2(表面× 1,裏面× 1)
光源
読取速度※4
(A4 縦)
読取範囲
RGB3 色 LED
自動解像度モード
両面・片面 25 枚 / 分
ノーマル
カラー/グレー 150dpi,白黒 300dpi 相当:両面・片面 25 枚 / 分
ファイン
カラー/グレー 200dpi,白黒 400dpi 相当:両面・片面 25 枚 / 分
スーパーファイン
カラー/グレー 300dpi,白黒 600dpi 相当:両面・片面 25 枚 / 分
エクセレント※3
カラー/グレー 600dpi,白黒 1,200dpi 相当:両面・片面 7 枚 / 分
標準モード
自動サイズ検出,A4,A5,A6,B5,B6,はがき,名刺,レター,リーガル,
カスタムサイズ※3(最大:216mm × 360mm,最小:50.8mm × 50.8mm)
A3 キャリアシート
使用時※3, ※5
上記読取範囲(リーガル除く)に加え,A3,B4,11 インチ× 17 インチ,写真(E 版,L 版,LL 版)
長尺読取※3, ※6, ※7
可(863mm まで)
原稿の厚さ
40g/m2 ~ 209g/m2(34.4kg/ 連 ~ 180kg/ 連 )(A8 以 下 は,127g/m2 ~ 209g/m2(110kg/ 連 ~
180kg/ 連))
プラスチックカード(厚み:0.76mm 以下(エンボス付き可))(ISO7810 ID-1 タイプ準拠)単送横送り
原稿搭載枚数※8
50 枚(A4:80g/m2)
インターフェース
USB
USB3.0 ※9/USB2.0/USB1.1(コネクタ:B Type)
Wi-Fi
IEEE802.11b/g/n(モバイル機器接続時※10)
消費電力
動作時:20W 以下,スリープ時:1.6W 以下(USB 接続時(Wi-Fi スイッチオフ時)),2.5W 以下(Wi-Fi 接続時)
外形寸法※11(幅×奥行×高さ)
292 × 159 × 168mm
質量
3kg
マルチフィード検出
可(超音波方式マルチフィードセンサーによる)
ドライバ※12
独自(TWAIN,ISIS™ インターフェース非対応)
独自(TWAIN インターフェース非対応)
ScanSnap Manager V6.0
ScanSnap Manager V6.0
添付ソフト
ウェア
ドライバ
PDF・JPEG フ ァ イ ル ScanSnap Organizer V5.0
整理・閲覧ソフトウェア
名刺管理ソフトウェア※13
CardMinder V5.0,名刺ファイル OCR V3.2
PDF 編集ソフトウェア
Adobe Acrobat Standard 日本語版
-
CardMinder V5.0
-
OCR ソフトウェア
ABBYY FineReader for ScanSnap™ 5.0
(米国 ABBYY 社製)
ECM 連携ソフトウェア
Scan to Microsoft ※1 SharePoint ※1 3.4
(米国 knowledgeLake 社製)
-
家計簿ソフトウェア
やさしく家計簿エントリー 2 for ScanSnap
(メディアドライブ社製)
-
Evernote ※14ソフトウェア※15
Evernote for Windows 4.5(Evernote 社製)
ABBYY FineReader for ScanSnap™ 5.0
(米国 ABBYY 社製)
Evernote for Mac 3.3(Evernote 社製)
※1 Windows,Microsoft,Sharepoint は,米国 Microsoft Corporation の米国,日本およびその他における登録商標または商標である.
※2 Mac は,Apple Inc. の商標である.
※3 Wi-Fi 接続時は未サポート.
※4 読取速度はハードウェアの最大速度であり,実際の読取時間にはデータの転送時間等ソフトウェアの処理時間が付加される.
※5 e- スキャンモード(Windows のみ)で読み取った原稿は,常に 220mm × 306mm で出力する.読み取れる原稿サイズは 210mm
× 280mm 以内.
また,見開き画像は作成できない.
※6 送り方向に A4 サイズより長い原稿を 1 枚ずつ読み取ることができる.長尺読取は,カラー/グレー 300dpi,白黒 600dpi 相当まで
使用可能.
※7 e- スキャンモードが設定されている場合は長尺読取は動作しない.
※8 最大枚数は原稿の厚さによって変わる.
※9 一部のコンピュータにおいて,USB3.0 対応のポートに iX500 を接続した場合に認識しないことがある.その場合は,USB2.0 のポー
トに接続してください.
※10 接続できるモバイル機器は iPad,iPhone 又は iPod touch および Android™ 端末である.iPad,iPhone,iPod touch は,Apple Inc.
の商標である.
※11 本体の寸法.スタッカー等突起物を除く.
※12 ワンプッシュの簡単操作で画像ファイル(PDF,JPEG または検索可能な PDF)が作成できる.この機能は「ScanSnap Manager」
で実現されている.
※13 名刺ファイリング OCR から CardMinder へのデータ移行には制限事項がある.詳細は CardMinder のヘルプを参照ください.
※14 Evernote は Evernote Corporation の登録商標または商標である.
※15 Evernote 社より,最新版をダウンロードして,インストールしてください.
PFU Tech. Rev., 24, 1, (05,2013)
11
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
また,
従来製品から好評のマルチフィードセンサー
(超
る画像処理エンジンである.
音波方式)を搭載し,ブレーキローラーによる原稿分離
「GI」プロセッサーは,独自のアーキテクチャーを搭
機構と,マルチフィードセンサーによる重送検知の両方
載し,従来製品では別チップだった画像処理エンジンと
により,高い給紙信頼性と耐久性を実現している.
スキャナ制御用マイクロプロセッサーを 1 チップ化す
(4)
検索可能な PDF の高速生成を実現
従来製品と比べ,検索可能な PDF(文字認識有り)
ることで,非常に高速な画像の演算処理とスキャナ制御
を可能とした.
を生成する時間を大幅に短縮した.文字認識エンジンの
読み取った原稿は,イメージセンサーによって電気信
高速化,及び原稿読取り時のスキャン処理と文字認識処
号に変換され,イメージデータが生成される.
「GI」プ
理を並列化することで,通常の PDF(文字認識無し)
ロセッサーはこの読み取ったイメージデータを解析し,
とほとんど変わらない時間での高速生成を実現した.
原稿のサイズ,
色や両面・片面を自動的に判別する.また,
これにより,スキャンしてすぐに,検索可能な PDF
カラー原稿やサイズの異なる原稿を読み取っても,自動
をクラウドサービスやアプリケーションで活用できるよ
で最適なイメージデータを生成する.これにより,従来
うになった.
製品よりも画像処理を高速化し,パソコンで実施してい
た画像処理をスキャナ本体で実現した.
4
開発の主なポイント
4.2 最新インターフェースに対応
iX500 の開発にあたっては,スマートデバイスで利
iX500 は「GI」プロセッサー搭載により,最新イン
用する際,いかに ScanSnap らしく,「カンタン・スピー
ターフェース(Wi-Fi 及び USB3.0)に対応した.こ
ディー」 に読み取りを実現するかが課題であった.
れにより,スマートデバイスから Wi-Fi 経由での直接
そのため,その中核となる画像処理エンジン 「GI」
プロセッサーを開発し,様々な工夫により利便性を進化
させ,お客様に感動を与えることを目指した.
以降に,3 章の特長を実現している技術及び開発のポ
イントについて述べる.
転送を実現し,パーソナルドキュメントスキャナとして
他社に先駆けて USB3.0 に正式に対応した注5).
「カンタン,スピーディー」を踏襲し,
「すぐに読める」
ように,パソコンレスで,スマートデバイスへのイメー
ジデータの直接転送を可能にした.
iX500 と従来製品のデータ転送方法の違いを図 - 3
4.1 画像処理エンジン「GI」プロセッサー
に示す.
画像処理エンジン「GI」プロセッサー(図 - 2参照)は,
これまで培ってきた画像処理機能を更に進化させ,デュ
アルコア CPU を搭載し,高機能かつ高速処理を実現す
4.3 受信・管理アプリケーション
従来製品は,スキャンしたデータをスマートデバイ
スに送るためには,パソコンを経由する必要があり,メ
モ用紙や少数枚の原稿を読み取る時にも,パソコンを
起動する必要があった.iX500 では,パソコンレスで,
スキャンした原稿を直接スマートデバイス上のデータ
受信・管理アプリケーション 「ScanSnap Connect
Application」 に PDF もしくは JPEG 形式で保存し,
デジタルカメラの感覚で「カンタン・スピーディー」 に
読み取ることを可能とした.
また,「カンタン」 に Wi-Fi 接続するために,スマー
トデバイスで,「ScanSnap Connect Application」
を起動した際に,Wi-Fi に接続されている iX500 を
自動的に検出し,前回使用した iX500 に対して自動的
に接続を行うよう対応した.これにより,iX500 で読
◆図 - 2 GI プロセッサー◆
(Fig.2-"GI" processor)
12
み取る時には,「ScanSnap Connect Application」
注5)2012 年 11 月 30 日現在,当社調べ.
PFU Tech. Rev., 24, 1, (05,2013)
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
a)iX500 側からの読み取り操作
(iX500 の場合)スマートデバイスに直接転送
Wi-Fi
Wi-Fi
無線ルータ
タブレット・スマートフォン
①
PC
③
b)スマートデバイス側からの読み取り操作
(従来製品の場合)パソコン経由で Wi-Fi 転送
Wi-Fi
②
Wi-Fi
無線ルータ
タブレット・スマートフォン
①
②
③
◆図 - 4 利用シーンに対応した二つの読み取り操作方法◆
◆図 - 3 iX500 と従来製品のデータ転送方法の違い◆
(Fig.4-Two scenarios that show the scanning
(Fig.3-Data transmission method differences
workflow)
between the ScanSnap iX500 and previous
models)
上させた.
を起動するワンタッチ操作だけで,簡単で手間なく使用
できるようにした.
また,スマートデバイスでは,パソコンと比べてハー
ドウェア(CPU,メモリ容量等)性能が低いため,パ
さらに,様々な利用シーンに対応して,操作性を向上
ソコンと同じような画像処理を行うと,処理時間がかか
するために,iX500 側からだけではなく,スマートデ
るため,スマートデバイスでの高速スキャンの実現が課
バイス側からも読み取りできるように「Scan」ボタン
題となった.
を追加した.
この課題を,「GI」 プロセッサーによる画像処理
これにより,図 - 4の a)のように,
と Wi-Fi 転送の並列化,スマートデバイスに適した
① スマートデバイスの 「ScanSnap Connect
Wi-Fi 転 送 の 最 適 化 お よ び 「ScanSnap Connect
Application」 を起動する.
Application」 でのアプリケーション並列処理を行うこ
② iX500 に原稿をセットする.
とで,スマートデバイスであっても iX500 の読み取り
③ iX500 の Scan ボタンを押す.
速度は,パソコン接続時と同じ高速スキャンを実現でき
という手順だけでなく,図 - 4の b)のように,
た.
① iX500 に原稿をセットする.
しかも,スマートデバイスからの読み取り時に,原稿
② スマートデバイスの 「ScanSnap Connect
Application」 を起動する.
③ 「ScanSnap Connect Application」
のサイズや読み取りの解像度,色や白紙を自動的に判別
する機能も搭載し,お客様の利便性を拡大した.
の
「Scan」ボタンを押す.
という手順も可能となり,お客様がどちらの操作をした
さらに,
「GI」プロセッサーにて,スキャナのスリー
プ時の電力制御を,より詳細に実施可能となっており,
より環境に配慮した製品を実現した.
場合でも,ワンプッシュで,
「カンタン・スピーディー」
に読み取りができるように操作性を向上した.
4.5 高い給紙信頼性と耐久性を実現
(1)
ブレーキローラーでの原稿分離機構
4.4 読み取り速度向上
使い勝手を大きく左右する読み取り速度の向上につい
ては,「GI」 プロセッサーの高速画像処理と,ハードウェ
iX500 の給紙構造は,「fi」 シリーズで培った技術を
もとに,
ScanSnap シリーズで初めてブレーキローラー
による原稿分離機構を搭載した.
アの読み取り部の高速化により,従来製品比 25% UP
ブレーキローラーでの原稿分離機構は,原稿を引き込
(カラー 300dpi)の 25 枚 / 分に高め,使い勝手を向
む給紙ローラーに対向してブレーキローラーを配置し,
PFU Tech. Rev., 24, 1, (05,2013)
13
ブレーキローラーが原稿を押し戻す方向に回転すること
で,原稿が複数枚重なって引き込まれることを防ぐこと
ができる(図 - 5参照)
.
本機構により,複数枚重なりやすい原稿でも,安定し
原稿
給
紙
方
向
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
ブレーキローラー
(2 枚目以降の原稿を抑え込む)
た高い原稿分離力を実現し,給紙信頼性を高めた.
また,本方式は従来製品のパッド方式と比較すると,
ローラーの磨耗を少なくすることができる.これにより,
消耗品の長寿命化を実現し,従来製品と比較して,消耗
品の寿命が最大 4 倍となり,お客様のランニングコス
トを大幅に低減した.
給紙ローラー
(1 番下の原稿を引き込む)
(2)
セットガイド機構
iX500 では,更に給紙信頼性を高めるために,セッ
トガイド機構を搭載した.
この機構は,原稿をセットする際に,ローラー手前
◆図 - 5 ブレーキローラーでの原稿分離機構◆
(Fig.5-Document separation system with the brake
roller)
に原稿先端を受ける樹脂のガイドを形成することで,原
稿が滑り,原稿先端の位置を自動で整えることができる
原稿
(図 - 6参照)
.
給紙方向
これにより,お客様が原稿をセットする際に,原稿の
先端を整えることで,原稿位置が安定し,給紙信頼性を
高めることができる.
また,お客様が原稿をセットする際には,原稿がロー
給紙トレイ
ラーに接触することが無く,スムーズなセットが可能で
ある.
(3)
ストレートパス構造
iX500 では,原稿セットの角度と原稿排出の角度
を最適化することにより,原稿搬送路をストレート
(図 - 7参照)にすることで,多様な厚さの原稿に対応
セットガイドが突き当て面を
自動的に形成
セットガイドが自動的に退避
a)原稿セット時
b)原稿読取時
◆図 - 6 セットガイド機構◆
(Fig.6-"Set guide" operation)
できるようにした.最小 34.4kg/ 連(一般オフィス用
紙の約半分の厚み)の薄い原稿から,エンボス加工した
原稿
プラスチックカードの読み取りまで可能となり,お客様
の利用シーンを拡大した.
イメージセンサー
4.6 検索可能な PDF の高速生成
ScanSnap では,検索可能な PDF 生成により,ス
キャンして保存された大量の文書の中から容易に目的の
文書を探し出すことが可能である.
スキャンした文書は,まず,画像データとした上でお
客様のファイル形式に合わせて PDF 又は JPEG デー
タにて保存される.目的の文書を探し出すためには,事
前に固有の名前を付けたフォルダ等に整理しておくか,
イメージセンサー
iX500
◆図 - 7 ストレートパス構造◆
(Fig.7-Straight path feeding mechanism)
大量の文書からサムネイル画像で探す,又は一つ一つ開
いて探す必要があった.
見つけ出すことが可能になる.従来製品でも文字情報を
そこで,文書の画像データに文字情報を付加すること
付加した「検索可能な PDF」を生成できたが,iX500
で,キーワード検索により目的の文書を「カンタン」に
では,検索可能な PDF の生成時間を大幅に短縮し,コ
14
PFU Tech. Rev., 24, 1, (05,2013)
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
ンセプトである「スピーディー」を実現した.
(1)で処理時間の短縮結果,
(2)はその実現方法を
従来製品(ScanSnap S1500)との比較
スキャン開始から PDF 出力までの時間
説明する.
(1)
文字認識待ち時間を大幅に削減
0
20
40
60
(秒)
従来製品比
45% まで短縮
ノーマル
従来製品では,検索可能な PDF を生成するための文
字認識(OCR)処理時間に,スキャン時間より長い処
理時間をさらに必要としていた.
iX500 では,図 - 8に示すように,処理時間を大幅
に削減し従来製品比で半分以下の 45% の時間で検索
可能な PDF の生成を可能とした.これにより,通常の
PDF 生成とほぼ時間差なく,検索可能な PDF の生成
S1500 検索可能な PDF
ファイン
iX500 並列処理で検索
可能な PDF を生成
スーパー
ファイン
iX500 検索なし PDF
測定環境)iX500 推奨環境 PC
TM
(CPU:インテル ® Core -i5,Mem:4GB,OS: Windows 7)
PFU 所定の原稿を使用し測定(両面原稿 10 枚,20 ページ)
動作環境および原稿内容によって,処理時間は変動する.
インテル,インテル Core は,米国およびその他の国における Intel Corporation の商標である.
が可能となった.
◆図 - 8 検索可能な PDF の生成処理時間◆
(2)
高速化の仕組み
(Fig.8-Creation time for searchable PDFs)
高速化については,文字認識処理自体の高速化に加え
て,スキャンと文字認識処理の並列化の 2 段階の取り
組みを実施した(図 - 9参照)
.
1)
文字認識処理自体の高速化(図 - 9改善 A)
画像データから文字情報に変換する処理は,文字を
認識する前処理として,レイアウト解析による行の切
①従来製品(シーケンシャルな処理方式)
スキャン処理
文字認識処理
②文字認識処理自体の高速化
改善 A
り出しや文字領域の抽出処理,それらを実現する要素
技術として,二値化処理注6)やラベリング処理注7)など
③スキャンと文字認識の並列化
改善 B
様々な処理がある.
iX500 では,二値化処理ロジックの効率化や重複
時間 t
スキャン開始
完了(改善後)
完了(改善前)
していたラベリング処理の共通化などにより処理速度
改善を実施した.これにより,従来製品と比較し,文
字認識単体の処理時間を大幅に短縮した.
◆図 - 9 検索可能な PDF 生成高速化への対応(概念図)◆
(Fig.9-Improvements made in speeding up
searchable PDF creation(conceptual
2)
スキャン処理と文字認識処理の並列化(図 - 9改
diagram))
善 B)
従来製品は原稿をすべてスキャンした後に文字認識
するシーケンシャルな処理をしていた.
ては,処理の並列化の負荷のために,他の作業の妨げ
iX500 では図 - 9に示すように,スキャナから送
になる恐れがあった.そのため,単純に並列化するの
られてくる画像データをスキャンと並行して順次文字
ではなく,PC の性能を判断し,並列処理や処理の優
認識する仕組みを実現した.また,両面同時スキャン
先度を調整し,どのような PC 環境においても快適
に合せて,文字認識処理も両面並列化することで,高
にスキャンできるようにした.
速化を実現した.
これにより,原稿のスキャン終了後,検索可能な
PDF 生成のための待ち時間は,最後 1 枚分の原稿の
文字認識処理の時間だけとなり,
「スピーディー」を
実現した.
また,低スペックの PC や PC の使用状況によっ
注6)二値化処理は,基本的な画像処理の一つで,濃淡のある(連
続階調の)画像を白と黒の 2 階調に変換する処理である.
注7)ラベリング処理は,二値化処理された画像において,白(また
は黒)の領域の,連結している白(または黒)の画素一つ一つ
に同じ番号を付加する処理である.
PFU Tech. Rev., 24, 1, (05,2013)
5
むすび
以上のように,iX500 はベストセラーモデルである
ScanSnap S1500 をフルモデルチェンジし,基本性
能の向上に加え,
Wi-Fi インターフェースに対応し,
ハー
ドウェア・ソフトウェア両面で多くの工夫により,変化
する顧客利用環境での利便性を追求した.
このように iX500 は,今の時代の環境にマッチし,
スキャナの利用シーンを拡大させる商品である.
15
コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap iX500
今後も,ScanSnap シリーズは,その高い利便性と
紙を電子化する機会を創造することで,更なる顧客の価
値を拡大する便利なツールとして進化し続けていく.
参考文献
参1)業務用スキャナ fi シリーズ紹介ホームページ
http://imagescanner.fujitsu.com/jp/
参2)カラーイメージスキャナ ScanSnap(スキャンスナップ)紹
介ホームページ
http://scansnap.fujitsu.com/jp/
参3)室 崎 ほ か: コ ン パ ク ト 両 面 カ ラ ー ス キ ャ ナ ScanSnap
S1500,PFU Tech.Rev.,20,1,pp.7-13(2009).
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PFU Tech. Rev., 24, 1, (05,2013)
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