Comments
Description
Transcript
2014年夏タルトゥー大学報告書 Bさん
タルトゥ大学短期プログラム報告書 平成 26 年 9 月 授業について 事前には初日にプレイスメントテストを受け、結果を基に授業レベルを決定すると聞い ていましたが、実際にはテストは実施されず、前回プログラムまでの北大生の英語力から 判断して B2 レベルの授業が妥当であるとして、初日から通常の授業が行われました。授業 を担当して下さった先生はとても親切で丁寧に教えてくれました。また、今回のプログラ ム参加者は5名と少人数であったため、密度の濃い授業を受けることができました。特に 自分の意見や考えを英語で説明する機会が多く、スピーキングの経験に乏しい私にとって 非常に良い経験となりました。通常の英語の授業とは別に、エストニア、ラトビア、リト アニアの各国の文化・歴史を学ぶ授業や、博物館や街のガイドの時間も設けられており、 10 年以上海外渡航のなかった私には新鮮で、時には衝撃を受けることもありました。 400 年近い歴史を誇るタルトゥ大学 現地での生活について 今回のプログラムではタルトゥに 12 日間、その後タリンに 11 日間滞在しました。 タルトゥは日本の都市に比べれば小さな街ですが、博物館やショッピングセンターがタ ルトゥ大学近くの中心街付近に集まっており、人もそう多くないので、非常に快適な街で した。大学周辺にはたくさんのレストランがあり、昼食を取るにも困ることはありません でした。ホストファミリーの方にも親切にしていただき、週末にはエストニアで広く親し まれているキノコ狩りに連れて行って下さいました。ホストファミリーが集まっての Sushi パーティーも開かれました。また、タルトゥ大学では現地の方(学生中心)との交流会や 日本語クラス、さらには AniMatsuri(年一回開催される日本アニメを中心とした催し)に も参加することができ、エストニア人学生と友達になることもできました。 タルトゥ大学の植物園 タリンは首都であることもあってタルトゥに比べ大きな街で、近代的な建物が多く、人 はもちろん、デパートや銀行の数も多かったです。その一方で、旧市街には数百年前に建 てられた伝統的な建物が立ち並んでおり、たくさんの観光客はいるものの、今でも当然の ように街として機能していて驚きました。ただ、首都であり、観光客も多く、おまけにフ ィンランドに近い(フェリーで最短一時間半ほど)こともあって、物価(特に食事)はタ ルトゥよりも高かったです。タリンでのホストファミリーは、以前日本に住んでいたこと もあり、毎日、日本製の炊飯器でご飯を炊いてくれて、とても助かりました。日曜日には ホストファザーがタルトゥで会議がある関係で、私もタルトゥに連れて行ってくれて、半 ば諦めかけていた先述の AniMatsuri に行くことができました。週末には、ホストシスター の高校時代の友人たちを招いてのホームパーティーも開かれ、夜遅くまで談笑することが でき、楽しい時間を過ごせました。 旧市街からバルト海を望む 次に、エストニア人の英語についてですが、基本的に若い人はみんな英語を話すことが できます。(7 歳から学校で教えられるそうです)しかし、年齢が高くなると英語を話せな い人もいます。(逆にお年寄りでも話せる人は話せます)また、人によっては、語尾に”a” の発音がつく、エストニア人特有の訛りは見受けられました。無声音の後だと特に目立ち ます。とはいえ、英語の教師をしている人や学校でしっかり英語を習った人の英語には、 あまりこのような訛りはありませんでしたし、もし訛りがあっても基本的にはコミュニケ ーションに問題はないので気にするほどではないと思います。 通学にはタルトゥ、タリンともにバスを利用しました。タルトゥではバスに乗らずに歩 いても 25 分ほどで帰れましたが、タリンでは乗るバスの本数が少なく、歩いて帰ることも できなかったので、バスの時間に合わせて行動していました。また、タリンの中心街付近 では路面電車も走っているので、行き先によっては便利かもしれません。 Wi-Fi については、さすが IT 先進国だけあって、基本的に全てのカフェやレストランで、 無料で使うことができます。パスワードが必要な場合は、店員さんに聞けば教えてくれま す。大学内でも利用できますが、時々不安定な時もありました。タリンでは街の公共 Wi-Fi もありましたが、こちらは不安定であまり当てにはなりませんでした。 また、一度だけですが、タルトゥからタリンまで鉄道を利用しました。もちろん、日本 のように本数が多いわけではありません。チケットは駅舎ではなく、走行中の車内で乗務 員の人が回ってくるのでその時に買います(少なくとも売店のおばさんにはそうするよう に言われました)。1st クラス(指定席)と 2nd クラス(自由席)がありますが、私は 2nd クラスに乗りました。その日が日曜だったこともあり、混雑していたため、二時間立ちっ ぱなしでとても疲れる破目になってしまいました。鉄道を利用する際はそのあたりのこと も考えた方がいいかもしれません。チケットは事前にネットなどで購入(一割安くなりま す)することもできるようです。 最後に、現地でやや気を付けるべきなのがロシアに関する話題です。独立から 20 年余り しか経っておらず、最近の強硬姿勢もあってか、エストニア人はロシアをあまり良く思っ ていません。「学校でロシア語も習ったけど、もう忘れた。話せないし、話したくもない」 と言う人にはたくさん会いましたし、個人的に訪れたスポーツ博物館では、中を案内して くれたおばあさんに「ソビエト時代のところは話したくないから自分で見てくれ」と言わ れました。ロシアに関することを話してはいけないわけではないですが(向こうもあまり 事情に詳しくないことはわかってくれます)、夜の街など、酒に酔った人がいるような場所 では特に気を付けた方がいいと思います。 持ち物について(持って行くと良いと思われるもの) ・クレジットカード(エストニアでは現地の人はほぼ現金を使いません。使わないどこ ろか持ち歩かない人すらいます。もちろん現金での支払いでも何も問題ありませんが、 混雑時のスーパーマーケット等では嫌な顔をされたりするかもしれません。VISA が 無難だと思います) ・スマートフォンやタブレット(街で Wi-Fi を利用できます) ・ノートパソコン(必須ではないですが、宿題を e-mail で送ることや、授業でプレゼン テーションをすることがあったので、持っていた方が便利だと思います) ・海外対応ドライヤー(ドライヤー以外の電化製品はコンセントの変換プラグさえ取り 付ければほぼ使用できますが、通常のドライヤーは変圧器が必要になります。ただ、 変圧器は高価、かつ重いので 2000 円くらいで小さい海外対応ドライヤーを買った方 がいいかと思います) 感想 約三週間という短い期間でしたが、とても有意義な時間を過ごすことができました。英 語でコミュニケーションを取ることに抵抗がなくなっただけでなく、今回の経験を通して 今後どのような部分を意識して学習に取り組んでいくべきかを掴むことができました。英 語以外においても、日本という長きに渡って実質的独立を維持してきた国家で生まれ育っ た私にとって、占領というものがいかなるものなのかを垣間見ることができたのも貴重な 経験でした。それらと同時に、言語を学ぶことで、今までできなかった経験が可能になる のではないかと考えさせられました。というのも、エストニアは経済発展が進み、経済協 力開発機構(OECD)に加盟するほどになっており、街を一見するだけでは、ものの 20 年程 前までソビエトの一部であったとは想像し難いですが、一度、現地の人の話を聞くと所々 にその名残や傷跡が残っていることに気付かされました。例えば、Teletorn(テレビ塔)は現 在では綺麗な展望台もあって観光地のひとつですが、エストニア独立の際には、ソビエト 軍の戦車が Teletorn を囲む中、大きな鋼鉄の扉を閉め切って、自由な報道を死守したとい う話をホストマザーから聞きました。現在でも Teletorn はエストニア人にとっては無血革 命の象徴のひとつで、大切な建物であるそうです。もし言語が通じなかったらこのような ことを知ることもなかったのだと思うと、やはり、言語はコミュニケーションのための手 段であるだけでなく、二次的に新たな経験を得るための手段でもあるのだと思います。 今回のような素晴らしい経験をさせていただき、親切にして下さったタルトゥ大学の関 係者の方々、そしてホストファミリーの方々には感謝の気持ちでいっぱいです。エストニ アは本当に素晴らしい場所でしたし、是非また訪れたいです。そのためにも今回の短期プ ログラムでの経験を生かして、今後の英語の学習(エストニア語も少々)に励んでいきた いと思います。