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第32回和牛枝肉共励会報告(審査講評含む)
審 査 講 評 本共励会は、家畜改良事業団の種雄牛を使用した受精卵移植で生産・肥育さ れた黒毛和種の枝肉を広く需要者にアピールし、生産振興に寄与することを目 的に開催されました。 第 32 回目のこの共励会が、かくも盛大に開催されましたことは、出荷者、 生産者の皆様の日頃のご努力と主催者であります畜産ニューテック協会ならび に家畜改良事業団、東京食肉市場他、関係各位の皆様のご尽力の賜物と敬意を 表するとともにお喜び申し上げます。 審査員を拝命いたしましたので、審査員を代表して出品牛の概要と審査結果 についてご報告いたします。 今回の共励会には 15 出荷者から和牛 55 頭の出品があり、去勢が 50 頭、雌 が 5 頭という内訳です。 格付結果は、和牛去勢は A5 が 21 頭、A4 が 24 頭、A3 が 5 頭、和牛雌は A5 が 2 頭、A4 が 3 頭で、4 等級以上が去勢で 90%、雌で 100.0%という好成績でし た。 【和牛去勢 55 頭の格付結果】 枝重 ロース ばら 皮下 基準値 A率 5 等級 4up BMS№ 今回 555.1 71.9 8.6 2.5 75.3 100.0 42.0 90.0 7.6 前回 544.3 63.0 8.4 2.4 74.3 100.0 34.9 93.0 7.5 最大 701.0 101.0 10.3 4.1 80.3 最少 437.0 56.0 7.3 1.4 72.5 全国 485.0 59.2 7.9 2.4 74.1 94.0 34.9 82.2 6.7 ※全国平均は、平成 27 年次の数値 和牛去勢の枝肉重量は、最も大きいもので 701 ㎏、小さいもので 437 ㎏、平 均 555.1 ㎏となっており、これは 27 年次の全国平均 485 ㎏と比べて、かなり 大きな重量の枝肉が出品されていたことになります。 また、ロース芯面積も大きいもので 101 ㎠、小さいもので 56 ㎠、平均 71.9 ㎠と、27 年次の全国平均 59.2 ㎠より大きくなっています。ばらの厚さについ ても厚いもので 10.3 ㎝、平均 8.6 ㎝と、こちらも昨年の平均値 7.9 ㎝より大 きい数字になっており、腹鋸筋のみならず広背筋も厚い、肉量の期待できるし っかりした体型の枝肉が多く見受けられました。 また肉質面では、5 等級の条件である BMSNo.8 以上のものが 46.0%を占め、 肥育技術の高さの証しであると大いに評価したいと思います。 【和牛雌 5 頭の格付結果】 枝重 ロース ばら 皮下 基準値 A率 5 等級 4up BMS№ 今回 475.2 70.2 7.9 3.3 75.0 100.0 40.0 100.0 7.2 前回 485.3 65.2 8.4 2.6 75.1 100.0 50.0 91.7 7.4 最大 539.0 83.0 8.5 4.4 76.8 最少 434.0 56.0 7.2 1.7 73.0 全国 419.9 54.8 7.4 2.7 73.8 82.9 28.5 73.0 5.8 ※全国平均は、平成 27 年次の数値 雌についても、平均重量は 475.2 ㎏、ロース芯面積は大きいもので 83 ㎠、 小さいもので 56 ㎠、平均 70.2 ㎠、また、ばらの厚さも平均 7.9 ㎝で、それぞ れ昨年の全国平均を上回る値となっています。 一方、この雌牛については若干、皮下脂肪が厚めになる傾向が見受けられま したが、歩留等級は全て A 等級でした。 雌の肉質についても BMS№9、№8、№7 が各 1 頭、№6 が 2 頭で、4 等級の条 件を満たした枝肉が揃っていました。 入賞牛については、最優秀賞 1 点、優秀賞 3 点、優良賞 4 点を選ぶというこ とで、牛枝肉取引規格に基づく格付結果を参考に、枝肉の姿かたち、切開面の サシの形状や入り具合、ハシリ、腿のサシの状態などを総合的に判定し、各審 査員が厳正に審査の上、投票形式にて決定いたしました。 公平な審査の結果、栄えある最優秀賞には、枝肉番号 79 番、小岩井農牧㈱ 小岩井牧場さん出品の去勢枝肉を選びました。この枝肉は重量 552 ㎏、ロース 芯面積 97 ㎠、ばらの厚さ 10.0 ㎝、皮下脂肪厚 1.7 ㎝で歩留基準値が 80.3 の 枝肉で、ロース芯が大きいだけでなく、僧帽筋の厚さが 6 ㎝、広背筋も 5.3 ㎝ と迫力ある切開面を呈し、枝肉外観も肩から後躯にかけて厚みがあり、充実し た体型で肉量を大いに期待させる姿かたちの枝肉でした。 また、肉質面でも BMS№は 12 で、BMS№12 の枝肉が数頭いる中で、ロース周 囲筋やばらの腹鋸筋はもとより広背筋にまでしっかりと均一にサシの入ったす ばらしい肉質の枝肉でした。 【最優秀賞】 枝肉番号 79 等級 受賞者 BMS A5 BCS 12 小岩井農牧㈱小岩井牧場 重量 4 ロース 552.0 97 ばら さん 皮下 10.0 基準値 1.7 80.3 優秀賞 3 点については、枝肉番号 62 番と 65 番の㈱松永牧場さん出品の枝肉 2 頭と枝肉番号 115 番、南信酪農業協同組合 黒内拓美さん出品の枝肉を選出 しました。これらは全て去勢枝肉で、いずれもロース芯が大きく、カブリ、ば らに厚みのある、迫力ある体型の枝肉で、BMS№も 12、11 とよくサシの入った 枝肉でした。特に枝肉番号 62 番の枝肉は、肉の光沢、脂肪質等の肉質がすば らしく、最優秀牛に推されるほどの枝肉で、僅差で優秀賞となりました。 【優秀賞】 枝肉番号 等級 BMS BCS 重量 ロース ばら 皮下 基準値 62 A5 12 3 578.0 75 9.5 3.3 75.3 65 A5 11 4 521.0 80 9.4 2.5 77.3 115 A5 11 3 534.0 88 9.0 1.4 79.0 優良賞 4 点についても、BMS№8 から 10 の、いずれも甲乙つけがたい枝肉が 多い中、得票の多かった枝肉番号 63 番、78 番、109 番、112 番の 4 頭を選出し ましたので、褒章下さるようお願いいたします。 今回、惜しくも選から漏れた枝肉には、枝肉番号 80 番(瑕疵「ウ」)と 100 番(瑕疵「エ」)のように BMS№12 のA5等級で、最優秀賞を競えるような枝肉 でありながら、瑕疵があったために入賞しなかった枝肉がありました。 瑕疵については、枝肉の評価を大きく下げる要因となるので、特に「アタ リ」など避け得る瑕疵については、より一層慎重、丁寧な取り扱いで防いで頂 きたいと思います。 【瑕疵発生状況】 ア 今回 前回 イ ウ 1 エ 3 1 6 オ 4 カ 1 計 1 10 1 8 最後になりますが、今回の共励会が、このような好成績をおさめられたの は、良い種雄牛と受精卵、それを仕上げる確かな肥育技術があってこその成果 であり、家畜改良事業団の種雄牛を使用した受精卵が、さらに普及し、今後と も関係者の皆様がますますご発展することを祈念いたしまして、審査報告とい たします。 平成28年8月5日 審査員 公益社団法人 日本食肉格付協会 東京事業所次長 及川 仁志