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洞道等の地下構造物の煙流動に関する研究(第 l報) - 東京消防庁

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洞道等の地下構造物の煙流動に関する研究(第 l報) - 東京消防庁
消防科学研究所報 34号(平成9年)
洞道等の地下構造物の煙流動に関する研究(第 l報)
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)
毘
文雄・
吉村延雄日
杉田直樹“
概 要
洞道のように閉鎖された空間内において、火災時に発生する煙を効率的に排除するための方策を採ることを目的とし
0の模型を使用 Lて換気方式の違いによる比較実験を行った。
て、縮尺1/1
その結果、次のことがわかった。
l 給気・排気側のいずれか一方だけで機械換気する場合には、排気側を機械換気とした方が効率的である。
2 最も効率的な方式は、給気・排気両側で等しい風速により機械換気を行うことである。
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l
yandexhaust
.
また、火災発生から鎮火まで 1
6時間以上を要するなど
l はじめに
消防活動においても困難を極めた。
その後、平成 8年 5月にも東京都墨田区内の洞道で鎮
現代社会に必要不可欠である電力や通信などのライフ
ラインの地中化が進むなかで、東京消防庁管内において
4時間以上を要した火災が発生している。
火までに 1
1
5ケ所の洞道が敷設されている。(平成 8年 1月現
は1,2
これらのことから、消防活動上の障害要因である濃
在)
煙・熱気等に対する困難性を低減するため、洞道のよう
洞道は、地中に鉄筋コンクリート等による暗きょを敷
に閉鎖された空間内での煙流動特性を把握し、機煙等を
設し、その内部に電力や通信ケープルを設置したもので
効率的に排除するための基礎資料を得ることを目的とし
あり、共同溝にはそのほかに上下水道やガス等の公益施
て縮小模型による実験を実施した。
設が収容されている。
いずれも外部からの火災などの災害の影響を受けない
2 実験概要
が、内部でひとたび火災が発生すると電力や通信のケー
プルの被覆などが燃焼し、延焼が甚大するおそれが高い。
(
1
) 実験方法
また、地下空間という狭あいで閉鎖された環境下にあ
洞道内に充満した煙を排除する手段としては、自然
ることから、濃煙・熱気や有毒ガス等が充満するなど、
換気によるものと機械的に換気を行う方法がある。
消防活動の障害となることが多い。
さらに機械換気には、給気・排気とも機械的に行う
さらに、通信ケーフ+ル等が損傷を受けることによる社
方法と、給気、排気のいずれか一方を機械給(排)気
会的な影響も大きい。
とし、他方を開口とする方法などが考えられる。
昭和 5
9年 1
1月に東京都世田谷区の洞道内で発生した通
そこで煙を効率的に排除する方策を得るため、給
信ケープノレ火災では、 1
1
9番目線を含む電話回線が広域に
気・排気側の開口条件、換気条件を変えて実験を行つ
わたり使用不能となった。
た
。
なお、条件の設定にあたっては排煙高発泡車や可搬
勺k
手I
J課
"第一研究室
式送風機などの装備の活用を考慮して、開口部の大き
3
3
3
0
0
m
mX3
0
0
m
m、長さ 4mの直方体とし、材質はケイ酸カ
さ及び風速を設定した。
ルシウム板とした。
実験は、模型内に設置したノてーナーで LPGを燃焼
させたのち、燃焼に伴って発生するガスのうち煙の挙
開口部は、両端から 3
0
0
m
mの位置に設定し、ダクトに
動と比較的よく一致する一酸化炭素の濃度変化につい
より天井部分から換気できるようにし、さらに機械換
て、一酸化炭素用半導体ガスセンサーを用いて測定す
気が行えるようファンを着脱できるものとした。
なお、 1
/
1
0の縮小模型と実大規模では、ブルードモ
ることにより、一酸化炭素の流動を煙の流動とみなし、
デルの相似則により次の関係が成り立っている。
換気時の煙の流動を推定することとした。
なお、換気に伴う濃度低下を比較するため、換気開
始時の濃度を一定とし、濃度が 1
1
2に低下するまでの時
長
間について主に比較検討した。
速度
L :L
' =1:1
/
1
0
v v' = 1 0
/
1
0
) 112
換気量
Q :Q' =1
0
/
1
0
) 512
時間
t
'=1
0
/
1
0
) 112
温度
T :T' = 1
(
2
) 実験模型
/
1
0の縮小模型を使用
実験は洞道等を想定し大きさ 1
した。
さ
(,印は模型を示す)
実験模型は、図 1- 1及び図 1-2のとおり、断面
給気ファン
排気ファン
T1
C1
T2
C2
T4
C4
T3
C3
T5
C5
協務~
T6
C6
風速計
風速計
│ユ│
¥¥
開口部の径
(φ90または φ
3
0
)
ガスバーナー
E鉾符稔鉱ね唱
5
0
0
4
0
0
8
0
0
4
0
0
4
0
0
4
0
0
5
0
0
4
0
0
0
凡例
T:温 度
C:一酸化炭素濃度
単位 [
m
m
J
図 1- 1 洞道模型(立面図)
0 0的
popol
TC4
3
4
FDFDl
図 1-2 洞道模型(平面図)
TC4
aAMaaAMa
qJqu
TC4
Tc.
つムつムー
Tct
-A1i
Tct
ガスバーナー
(
3
) 測定器材
(
1
) 自然換気における開口条件の違いによる濃度低下を
2台
・給気・排気ファン
比較すると、開口部の直径が 9
0酬の場合は濃度1/2に低
(山洋電気側、 SAN ACE25、最大風量2
.
5
1
吋/
min)
下するまでの時間が3
0凹と比べ1
/2
以下であり、一方が
lムI:l
閉鎖された場合(直径 9
0
m
r
n
) と比べると1/4
以下の所要
-パーソナルコンビューター
(日本電気側、 PC- 980 1N)
時間となっている。(図
2)
lムI:l
・データ切替器
(TEAC側
、 DL-9060)
一一実験地 1
1台
・風速計
一 一 実験No
.
2
(日本カノマ ックス側
、 アネモマス ター MODE
L
l5
0
0
)
eK線熱電対
6本
-半導体 c
oセンサー
6台
0
.
5
(側オスト、 OST-C001P)
・火源
一 一 実験地 3
LPGい号
3 実験結果
換気条件等
換
。
浪
実
*
方
験
N
Q
式
給気側
開口部 給気風速 関口部 排気風速
径(
m
m
) (m/s) 径(阻) (m/s)
9
0
自
排気側
閉
o
o
10
1
5
20
25
30
時 間(
m
i
n
)
結
果
図 2 自然換気
皇
賞
図
妖
換
気
5
定
(
2
) 給気側及び排気側の開口部の大きさを直径 9
0
m
r
nとし、
2
9
0
9
0
3
3
0
3
0
4
9
0
1
.0
9
0
1
.0
5
9
0
3
.
0
9
0
3
.
0
図
*
持t 7
*8
9
0
2
.
0
9
0
3
.
0
3
9
0
3.
0
9
0
2
.
0
3
0
1
.0
3
0
1
.0
図
9
3
0
3
.
0
3
0
3
.
0
4
1
0
9
0
9
0
1
.0
図
一 一 実験No.5
1
1
9
0
5
- 一 実験No
.
6
片
領1 1
2
3
0
2
機
械
給
6
併
給気・排気ファンでそれぞれ給気・排気を行う場合は、
双方の風速を 3.
0m/
sとした場合が濃度が1/2に低下す
るまでの時聞が最も早く、1.0m/sの場合と比べ 1
/
2の
所要時間となっている。
給気風速と排気風速が2.0m/sと3.
0m/sまたは 3.
0
0m/sのように異なる場合は、双方の風速を
m/sと2.
1.
0m/
sとした場合と同程度であった。(図 3)
用
1
.0
9
0
3
0
3
.
0
図
給
(
1
3
3
0
1
4
9
0
1
5
3
0
3
.
0
3
0
一一実験No
.
4
- 一 実験地7
0
.
5
6
持
ド
)
ヌ
n
.
3
0
3
.
0
図
k
3
.
0
1
6
閉
委
員
1
7
閉
室
員
一
9
0
7
9
0
0
.
0
7
図
3
0
1
.0
9
一
o
o
8
2
3
4
5
6
7
8
時 間(
m
i
n
)
(凡例: は自然、換気)
図 3 機械給気・排気併用
3
5
9 10 1
1
(
3
) 給気側及び排気側の開 U部の大きさを直径 3
0
m
mとし、
また、同様に開口部の大きさを直径 3
0
m
mとした場合
給気・排気プアンでそれぞれ給気・排気を行う場合は、
でも、排気側をファンで換気する方が所要時間は短く
sとした場合が最も早く、 1
.Om/
s
双方の風速を 3.0m/
なっている。(図 6)
の場合と比べて 1
/2以下の所要時間となっている。
(
図 4)
一 一 実 験 NO.12
一 一 実 験 地8
一 一 実験 NO.13
一 一 実験地 9
0
.
5
0
.
5
O
O
o
2
4
6
8
10
1
2
14
16
1
8
o
2
4
6
8
1
0 1
2 14 1
6 1
8 20
時間 (min)
時間 (min)
図 4 機械給気・排気併用
図 6 片側給(排)気
(
4
) 給気側及び排気側の開口部の大きさを直径 9
0
m
mとし、
さらに、給気・排気側の開口部の大きさがそれぞれ
ファンにより給気・排気のいずれか一方で換気を行う
異なる場合であっても、同様に排気側をファンで換気
/
2
以下に 低下するま での 時間をみ る
場合は、濃度が 1
する方が所要時間は短くなっている。(図7)
と、排気側をファンで換気する方が所要時間は短く
なっている。(図 5)
・m
一 一 実 験 地 10
r
¥
一一 実験N
O
.
1
1
0
.
5 ~、 "
oI
O
一 一 実 験 地 14
一 一 実験地 15
0
.
5
・
2
・
・
4
3
時間 (min)
o
o
・
5
6
2
4
6
8
10 1
2 14 1
6 1
8 20
時間 (min)
図 5 片側給(排)気
図 7 片側給(排)気
3
6
(
5
) 給気側及び排気側の開口部の大きさが同じ場合にお
いて、換気方式の違いによる濃度低下を比較すると、
4 まとめ
最も濃度低下が早い換気方式は機械給気・排気併用で
あり、次いで片側排気、片側給気、自然換気の順となっ
洞道とい う、閉鎖された地下空間における効率的な排
ており、 9
0
m
r
nと3
0
m
mのいずれの場合においても同じ傾
煙方法について、模型実験で得られた結果をまとめると
向であった。(図 8、図 9)
以下のようになる。
(
1
) 自然換気の場合、一方が閉鎖された片側開口状態で
一一実験No
.
1
一 一 実験No
.
2
一 一 実験地4
一一-実験No
.
5
一一実験No
.10
一 一 実験地 11
一 一 実験地 16
0
.
5
は濃度の低下は非常に緩慢で換気の効果は低い。
したがって両側を開口とした方が効果的である。
(
2
) 自然換気では、給気・排気両側とも開口し、開口面
積の大きいものほど効果が大きい。
(
3
) 給気・排気側のいずれか一方だけで機械換気し、他
方を自然換気とする場合には、排気側を機械換気とし
た方が効果的である。
この場合、給気側の開口部は、排気側の開口面積と
同 じ、もしくはそれ以上とする方が効果的である。
(
4
) 給気・排気側のいずれか一方だけで機械換気 し、他
方が閉鎖された場合では、ファンの有効な出力は得ら
o
o
5
1
0
1
5
2
0
時間(min)
2
5
3
0
れないが、自然換気よりは効果的である。
(
5
) 給気、排気両側で機械換気を同時に行い、それぞれ
図 8 各開口部径 9
0
m
mの比較
の風速を等ししかっ給気・排気口径を大きくす.Qこ
とが最も効果的である。
一 一 実 験 地3
一 一 実験地8
一 一実 験 制
一 一実験恥 12
一 一実験No
.13
一一ー実験No.17
今回の実験では、主に火災時に生じる煙に対する効率
的排除方法についてみてきたが、縮小模型という制約さ
れた条件での実験であることから、熱気の影響について
確認するには至らなかった。
今後の課題として洞道の形状、洞道内工作物等の影響
0
.
5
もあわせて考慮し、より現実に近い条件における実験を
行っていく必要がある。
o
o
5
1
0
1
5
20
25
3
0
時間(min)
図 9 各開口部径3
0
m
mの比較
3
7
Fly UP