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>> 愛媛大学 - Ehime University Title Author(s) Citation Issue Date URL 鉱業史再考(2) : 分析のフレームワーク&鉱業の特徴 栗田, 英幸 愛媛経済論集. vol.23, no.1, p.1-15 2004-01-25 http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/2140 Rights Note This document is downloaded at: 2017-03-30 18:21:28 IYOKAN - Institutional Repository : the EHIME area http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/ 〈論 文〉 鉱業史再考(2) 一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 Rethinking of the mining history (2) 一Framework of the study and characteristic of the mining industry一 栗 田 英 幸 Kurita Hideyuki 《要約》 本稿は、鉱業史再考(1)で明らかにされた既存研究の限界を克服するための分析手法 を提示するとともに、鉱山開発のリスク故にそれを巡って摩擦が過熱化せざるを得ないこ と、そのリスクを克服するためには効率的なグローカルネットワークの構築が必要不可欠 の条件となることを論述した。 地域住民を中心に据え直し、グローバルな鉱業の史的変遷の中にNGOを媒介とした住民 運動の影響力向上を位置づけるという詩稿で提示された課題に対して、本稿の分析手法で は、従来のバーゲニングパワー・アプローチを地域住民中心および長期的視点から捉え直 し、更にガルトゥングの構造的暴力の概念を引用した。長期的な視点による各分析アクター の変化を把握する場合、短期硬直的なバーゲニング・パワーの概念は不適切であるため、 本稿では代わりに影響力の概念を用いた。 鉱山開発は、各主要アクターそれぞれにとって、異なる意味合いにおいて、非常にハイ リスクなものである。しかし、企業、政府の両アクターにとっては、鉱物資源への依存が 非常に強いため、鉱物資源は開発されなければならない対象として認識される。一方、地 域住民にとって、一般的に鉱山開発のリスクは利益可能性を遙かに上回るものとして認識 される。ここに摩擦を激化させる原因が存在しており、開発するにはリスクを十分に克服 可能一他主体を利用可能一なグローカルに張り巡らされたネットワークを不可避とする。 示する。つづいて、鉱業の特徴について説明し、 その特徴故にグローカル・ネットワークが顕著に はじめに 描き出されること、顕著ではあるが他産業に対し 前稿[栗田,2003]では、「南」鉱業諸国を取り ても一般化することがかなりの程度可能であるこ 巻き、鉱業利益のあり方を規定するグローカル・ とについて説明する。 ネットワークに分析の焦点を当て、企業および政 府のみならず、地域住民をも主要アクターとして 1.分析のフレームワークとしての影響 分析視野に組み込んだ上で、その動態的変化を史 力アプローチ 的展開およびプロジェクトのライフサイクルに伴 1−1.バーゲニングパワー・アプロー う変化の両面から描き出すことの必要性について チから影響力アプローチへ 前稿では、従来利用されてきたバーゲニングパ 論じた。本稿では、まず上記分析のための、バー ゲニングパワー・アプローチおよび構造的暴力概 ワー・アプローチの問題点について触れた。しか 念を延用した手法としての影響力アプローチを提 し、これはアプローチ自体に問題があるという意 一1一 [愛媛経済論集 第23巻,第1号,2004] 味合いのものではない。分析焦点となる要因に、 てきたナショナルとローカルのレベルを縦断する 以下のような若干の広がりを持たせることで、多 パトロン・クライアント関係2というネットワーー くの事柄を明らかにすることが可能である。 ク、そしてこのネットワークの利益供給先を決定 その第一は、関連組織・主体の選択である。こ するグローバル・ネットワークが描き出される必 のアプローチが資源ナショナリズム期において 要がある。言い換えるならば、上部構造としての 「南」鉱業諸国から多国籍企業に対して行われた グローバル・ネットワークと下部構造としてのパ 資源利益再分配要求の動きを説明するものとして トロン・クライアント関係というネットワークと 用いられたことから、分析対象としての主要アク の接合体としてのグローカル・ネットワークのあ ターは企業と多国籍企業のみに限定されている。 り方が分析対象とならなければならないのである。 そこでは地域住民がほとんど無視されており、主 史的展開という長期過程を分析するには、バー 要アクターのバーゲニングパワーを規定する要因 ゲニングパワーの概念臼体にも大きな限界が存在 として国民もしくは労働者階級、「北」政府が間 する。バーゲニングパワーは、制度との相互関係 接的な分析対象として取り上げられているに過ぎ の中で規定されるものであるが、この制度の変遷 ない。地域住民の状況に焦点を当て、近年の地域 過程は、主要アクター問一その代理をも含む一の 住民のバーゲニングパワーの著しい向上を鉱業の 論争の蓄積の中でそれぞれが鉱業に対する認識を 史的展開過程から描き出すには、分析対象として 変えてきた過程として見ることが可能である。こ 地域住民をも主要アクターとして敢り入れる必要 のような鉱業に対する認識の長期的変化を促す能 がある。 力は、固定的な条件下で行使されるバーゲニング しかし、地域住民を主要アクターとして取り扱 パワーの定義に収まらない。このような鉱業に対 うのみでは、近年のバーゲニングパワーおよび地 する認識、もしくは鉱業を規定する認識の変化を 域住民を被害から守るための具体的な方向性を十 も促す能力を含む概念としては、影響力という単 分に明らかにすることができない。真に重要な分 語が最も適している。 析対象は、主要アクターの利益を代弁し、そのバー このようなバーゲニングパワーよりも広い概念 ゲニングパワーを支えるネットワークである。従 としての影響力に焦点を当てる本アプローチは、 来は、ナショナルおよびグローバルなレベルでの もはやバーゲニングパワー・アプローチではなく、 動きのみを分析対象にすることで、資源ナショナ 影響力アプローチと呼びうるものである。以下、 リズムの解明という当時の目的を果たすのに事足 本稿では、このアプローチを影響力アプローチと りた。しかし、特に、地域住民のバーゲニングパ 呼ぶこととする。 ワーを描き出すには、ローカル・レベルでの意志・ 1−2.影響力について 主張が、ナショナルおよびグローバルなレベルへ と伝達され、何らかの効果をもたらす過程が決定 制度と影響力 的に重要な要素となる。このためには、地域住民 実際、各アクターは鉱山に関してむき出しの状 を起点とし、NGOを媒介として不特定の市民1 2 「社会経済的に地位の高い個人(パトロン)が、低 へとつながるグローカルなネットワークが、鮮明 い地位にある個人(クライアント)に対して、その 影響力と資源を用いて、保護もしくは利益を与え・ クライアントの側は、パトロンに対して個人的なサー ビスを含む一般的な支持と援助で報いるという、道 具的な友情関係と関連する、特別な2者間のつなが に抽出されなければならない。また、過去および 現在の被害の分析においても、地域住民の利害を 調整し、主張や抵抗を十分に抑えるために機能し り」[Scott,1972]のこと。大規模プロジェクトは・ 1ここでは、市民を居住地域の問題に限らず、共感を 媒介として問題に対して何らかの社会的選択を行う パトロンの支配力を大きく越えているため、しばし ばクライアントの被害を、パトロンの提供する保護 人間として定義し、地域住民と区別する。 や利益で十分に賄えない。 一2一 鉱業史再考(2)一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 態で向かい合って影響力を及ぼし合い・開発の是 非や操業方法、その帰結としての利益分配のあり 影響力と構造的暴力 方を決めている訳ではない・鉱山の開発や操業に 影響力を社会構造、ひいてはその骨格である制 関して構築されている制度一そこでは・文言化さ 度に対する評価の中心概念として位置づけている れtルールをどの箇所でどの程度無視し得るのか のは、平和学者ヨハン・ガルトゥング(Johan という現実的な内容を含む一が媒介として存在し Galtung)の構造的暴力アプローチである。彼は、 ているのであり、各アクターは、その枠組みの中 万人が理想状態として合意可能な平和を社会変革 で利益の最大化もしくは被害の最小化を目指して の目標として設定し、平和を武力等の物理的、直 影響力を行使するのである。そして・影響力の格 接的な暴力の不在状況(=消極的平和)のみなら 差および制度が、各アクターの利用可能な手段一 ず、構造的、間接的暴力の存在しない状態(=積 合法、非合法を問わず一を規定することとなる。 極的平和)をも含むものとして捉えている。ここ 制度と影響力との関係は、相互規定的な関係に で暴力は、「ある人に対して影響力が行使された ある。アクター間の影響力バランスが鉱業に関す 結果、その人が現実に肉体的・精神的に実現しえ る「合意」としての文言化された法制度を規定す たものが、その人の持つ潜在的実現可能性を下回っ る。ここで作成される法制摩は、長期的な論争・ た場合」と定義される。したがって、ある影響力 対話および経験の蓄積としての「常識」や改訂前 バランスにおいて、潜在的実現可能性を下回るよ の法制度一これも以前の「常識」の反映であると うな場合、そこには暴力が存在していると言える。 言える一にも大きく依存する。その一方で、影響 そして、先述のような影響力の媒介としての制度 力も制度によって大きく規定される。「常識」や の役割を考慮に入れるならぼ、そこに存在する暴 法律は各アクターの主張の大きな根拠であり、そ 力は、制度が埋め込まれている社会構造によって こからあまりにも大きく外れた主張や行為は、制 作り出される構造的暴力となる。 度の下で効果を発揮しないか、逆にその主体にとっ ガルトゥング自身非常に多くの著作を生み出し てマイナスの効果をもたらす。 続けており、また彼の平和の定義を延用する研究 制度の機能を規定するのは、直接的な利害関係 も膨大な数に上る。しかし、影響力が暴力を規定 主体であり、鉱業の場合は企業、現地政府、地域 する媒介として重要な役割を担っているにもかか 住民がそれにあたる。しかし、先述したようにそ わらず、多くの研究において影響力の存在は自明 れらアクターは単独で制度および他主体に対して のものとして扱われており、敢えて影響力そのも ダイレクトに影響力を行使するのではなく、実際 のに分析視点を向けていない。筆者は、上記のよ にはそれぞれの利用可能な、利害を共有できるネッ うなガルトゥングの影響力と暴力との関係に関す トワークを媒介として行使される。特に、鉱業に る理解を、一部変更する、もしくは説明を加えて おいて早くから生産過程が多国籍企業によって直 強調する必要があると考えている。実際に影響力 接的に取り込まれていたこと、後述(次章)のよ を行使する、しないに関係なく、他者の潜在的実 うに円滑な操業が決定的に重要であり続けてい「る 現可能性を下回せることの可能な程度の影響力の ことは、グローバル、ナショナル、ローカルそれ 格差が存在し、それを容認もしくは強化する社会 ぞれのレベルでの「合意」の形成を不可欠とする。 構造が存在するならば、そのような社会構造をも そして、そのためには執行状況の監視、それぞれ 暴ヵ構造として定義し、変革の対象として積極的 のレベルへの異議申し立ての主張、もしくは、そ に位置づけなければならない。なぜなら、不当な れらへの反論といった行為がネットワークを通じ 影響力格差が残存している限り、大規模な利益も しくは不利益の獲得機会の出現、ローカル・レベ てなされなければならない。 ルにおけるパトロン・クライアント関係の基盤一 例えば土地一の変化等が、関連主体の積極的な影 一3一 [愛媛経済論集 第23巻,第1号,2004] ベネフィットを正当化の根拠としている開発傾向 響力の行使を引き起こし得るという、大規模プロ ジェクトによってあまりにもしばしば引き起こさ (以下、このような考え方を開発主義と呼ぶ)に れる一そして、この点についての考慮はほとんど 対する批判に重きを置くためである5。この開発 なされていないのが現状である一出来事に焦点を 主義は、特に大規模プロジェクトにおいて権威主 当てなければならないと考えるからである。各主 義と親和性が強い。合意の構築が困難であるため、 体による積極的な影響力行使の結果として、例え 始めから合意が軽視されている中で、公共利益が ば利害関連主体全てに利益を分配する目的で推進 社会変革に対する住民意志の軽視を正当化するか されるプロジェクトも、影響力の優越主体と劣位 らである。しかし、住民意志の軽視は、制度に対 主体をそれぞれ受益主体と受苦主体に分離させて する住民の影響力がプロジェクト推進主体の影響 しまうこととなる。この結果、影響力格差および 力よりも劣っていることを示している6もちろん、 受苦主体の潜在的実現可能性と現実との間の格差 プロジェクトの是非に対する影響力がそのまま住 は更に拡大する。このような状況は明らかに暴力 民の利益や被害に対する影響力にも当てはまると の存在を示唆しており、ガルトゥング自身によっ は限らない。しかし、このような強制的なプロジェ て類型化された暴力の内、「潜在的暴力」3に分類 クトの推進は、次の3っの理由から大きな問題を されるべきものである4。そして、この点こそが はらんでいる。 現在の開発学が陥っている開発主義の根本的な問 その第一は、プロジェクトの進行が、プロジェ 題のひとつであると筆者は考えている。 クト主体の既得権益を増大させ、その影響力を増 すこととなる点である。投資の開始は、コストー 1−3.他アプローチとの位置づけ 開発主義批判としての影響力アプローチ ベネフィット計算の中に既に投資された金額を入 上記のようなガルトゥングの平和の概念を浴用 とするプロジェクトでは、投資総額は地域住民の するのは、鉱山に限らず社会変革の試みの多くが、 単純な被害総額を容易に上回ることとなる。加え り込ませる。鉱山のような巨額の開発投資を必要 て、大規模な投資による短期的もしくは局地的な 利益の積み上げに偏重した総利益増大とコストー 経済活性化や将来的な税収期待、プロジェクト主 3ガルトゥングは、平和と暴力の定義を行った論文[ 体によるインフラサービスは、中央政府および地 Galtung,1975]において、暴力をその構成要素のあ 方政府のプロジェクトへの依存を高める。これら りよう(被害主体、加害主体、影響力行使方法)か の結果、企業に大規模なダメージを与えるような ら以下6っに類型化している。それらは、1)物理 的暴力と心理的暴力、2)意図的暴力と非意図的暴 対策を地方政府や中央政府にとらせることは、非 力、3)被害主体が存在する暴力と存在しない暴力、 常に困難となる6。 4)個人的暴力と構造的暴力、5)顕在的暴力と潜 5この点に関しては、横山氏が理論的な展開を行って いる。彼は、従来の開発が「便益benefitないし善 在的暴力、6)積極的暴力と消極的暴力である。 4もちろん、制度というものの存在自体が、既に影響 きもの=goodsを増やすこと」であり、「当該社会が 力を行使しているとみなすことも可能であるし、そ うであればガルトゥングの影響力の説明を変える必 直面している重要問題を、グッズを増やすことによつ て解決しようとする方法」[横山,1999]であると批 要はない。しかし、潜在的暴力を強調するためには、 判しており、開発パラダイムから平和パラダイムへ 将来予測可能な暴力を明確化する必要がある。そし の転換の必要性を説いている。 て、将来予想可能な、言い換えるならば、顕在化し 6バ_ゲニングパワー.アプローチにおいて強調され ているのは、プロジェクトの終了が政府の企業に対 するバ_ゲニングパワーの著しい増大を生じさせる しかし、住民から見ると、この というものである。 変化は政府が積極的な利益獲得主体となることを意 得る暴力とは、暴力の媒介としての影響力の格差お よびその将来的な変化によって規定される。もちろ ん、影響力バランスの完全な予測は不可能である。 しかし、出来うる限り、影響力格差とその変化を把 握、予測することが、社会変革のあり方を決定する 味しているに過ぎず、ある程度政府に利益をもたり す企業活動が継続可能な範囲内での対処という限定 上で決定的に重要となる。 的な条件でその恩恵にあずかれるに過ぎない。 一4一 鉱業史再考(2)一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 第二の理由は、反対の存在にもかかわらずプロ ジェクトを強行することにより・プロジェクト強 他アプローチとの親和性と相違点 行主体である政府’役人がプロジェクトへの思い 影響力アブV一チは、内発的発展論7、ケイパ 入れを過度に強めてしまう点である。地域住民の ビリティ・自由アプローチ8、サブシステンス・ 意思の軽視は、役人の優越心もしくは地域住民へ アプローチ9と親和性が高い。それは、人間およ の卑下を伴っていることが少なくなく、そのため びその集合としての社会が、多様な可能性を有し 彼ら・彼女らの主張に反する状況への対処は・そ ており、その可能性の発現において個々および社 の自尊心や意地故に、硬直的になる可能性が強い。 会の主体性・自発性を原動力として捉えている点 最後は、主体性に関する問題である。プロジェ である。ここでは、社会のあり方や変革の方向性 クトの強行は、反対主体の主体性を抑圧せざるを (もしくは変革のためのプライオリティの1頂位付 得ない。新たな環境の中で新たな生活手段・生活 け)は、開放された自由な議論の蓄積によって構 スタイルを確立しなければならない地域住民にとっ 築されなければならず、権力主体による決定の押 て、補償としての支援があるとしても、その成否 しつけは排除される。 には当事者の主体性が決定的に重要となる。加え グローカル・ネットワークのあり方に焦点を当 て、主体性の抑圧は、被害の主張をも弱いものと てた影響力アプローチは、上記3アプローチに正 する。自信喪失や諦めから、被害の主張を消極的 当化の根拠を与えるとともに、分析および実践に なものとし、問題への対処を大きく遅らせること おいてグローカル・ネットワークの視点の重要性 となる。 を主張することとなる。影響力格差を是正する適 以上のような事柄は、開発の強制が、開発推進 切なネヅトワーク、特にグローバル化の下では適 とともにプロジェクト推進主体としての政府およ 切なグローカル・ネットワークの構築こそが、上 び企業と地域住民との問の影響力の格差を拡大す からの開発の押しつけを排除し、開放された自由 る可能性を示唆する。もちろん、被害の拡大・深 な議論に基づく集団の決定とその帰結としての可 化は、住民の反発を強め、大規模な反対運動を生 能性の開花、言い換えるならばその集団の発展を じさせ、そのことによって被害の軽減や克服を達 可能とする前提条件を作り出すのであるlo。 成させるかもしれない。実際、多くの地域住民ど 逆に、本稿の評価基準の基盤であるガルトゥン 政府・企業との摩擦の事例は、そのような変化が グの潜在的実現可能性については、センのケイパ 頻繁化していることを示している。しかし、これ ビリティの概念がその整理と理解を大いに助けて はあまりにも遅きに失しており、不可逆的で深刻 くれる。個々人の潜在的実現可能性の詳細を知り な被害を回避できない。大規模プロジェクトであ 得ることは不可能である。しかし、集団としてで るが故に、十分な合意構築が重要であり、上から あれば、非常に基本的な指標に限ってではあるが、 の強制は斜なる地域住民の意志軽視へのインセン ティブを作り出すのである。 7内発的発展論に関しては、鶴見(1996)、西川 したがって、大規模プロジェクトであればある (2001)を念頭に置いている。 8これについては、Sen(1999)を参照。 ほど、そこでは地域住民の影響力を強めることが 9サブシステンス・アプローチは、さまざまなバリエー ションがあり、十分な一貫性を有しているとは言え ない。本稿では、筆者も所属している環境・平和研 究会での共同研究蓄積としてのサブシステンス・ア ブローチを念頭に置いている。このアプローチに関 重要となってくる。利益の積み上げではなく、影 響力格差の是正にこそファースト・プライオリティ を置いた視点が、社会変革の議論に求められてい るのである。 しては、戸崎他(2002)を参照。 lOこのような視点から見るならば、センのケイパビリ ティ・自由アプローチで言及されている Developmentは、「開発」ではなく「発展」の日本語 訳こそがふさわしい。 一5一 [愛媛経済論集 第23巻,第1号,2004コ 客観的な基準である程度示すことは可能となる 鉱山のライフサイクル 。仁ジビリテ,1 [横山,2002]。そして、この視点は、ケイパビリ ttt ティの視点と共通しており、その把握に関しては 更に先を行っている。それは、センがケイパビリ @探 開発 饗響 クラ ーン ティを選択肢、それぞれの組み合わせによる到達 可能性、選択の主体性によって表されるものとし 精 査 マイノ ト調査 て定義している点である。更に、彼はケイパビリ 採鉱 修復 露天堀 坑内愚 1リーチノク 選鉱 等Tl ティの概念から予測可能な範囲での対策の必要性 について強調しているが、これは筆者の強調する 潜在的暴力への対策を強く支持するものと言える。 図1銅の鉱山開発および加工過程 筆者作成 ここで、内発的発展論およびケイパビリティ・ 一 自由アプローチとの相違点を強調しておくことは 社会的弱者が市場による被害から十分に身を守る 重要である。内発的発展論に関しては、発展とい システムを構築することはできない。 う利益の積み上げに重点が置かれており、その利 2.鉱業の特徴と事例としての意義 2−1.鉱山のプロセス 益が影響力格差を利用したものなのか、是正した ことによって生じたものなのか、それとも単なる ウィンドフォールなのかを説明しない。したがっ 鉱山のプロセスは、一般的に図1のように探鉱 て本論分の焦点である開発主義の欠陥を十分に批 から修復に至る鉱山のライフサイクルおよびその 判することができない。 中の操業ステージにおける鉱石抽出・加工プロセ 一方、センのケイパビリティ.・自由アプローチ スの2っのプロセスとして捉える必要がある。 とは、市場の認識で大きな相違点を有する。この アプローチは、自由、特に基本的自由への手段と ライフサイクル して市場に大きな役割を担わせている。確かに、 鉱山開発は、探鉱活動から始まる。実際に現地 市場は十分な配慮の下であるならば、そのように で地質調査を行う前に、これまでの各国各地域に 機能するかもしれない。しかし、機能しないかも おける地質調査の結果を分析し、広域調査もしく しれないということが軽視されている点にも注意 は精密調査を行う地域の選定を行うことが、最初 を払う必要がある。センや開発主義者が提示する の作業となる。探鉱活動は、大きく2っの段階に 市場の可能性は、未だ非常にリスクの高いものだ 分けられる。まず、広い地域を対象に、衛星や飛 からである。センが市場の危険性について目をつ 行機を用いて基本的なマッピングを行う広域調査 ぶっているわけではない。それどころか、セーフ がなされ、つついて広域調査の結果から比較的狭 ティネットや民主的制度、開放された自由な議論 い地域に限定し、ボーリングや試掘調査が行われ の場、透明性心、市場のリスクを取り除くための る。鉱業統計では、広域調査から行うグラスルー さまざまな要素の必要性を執拗に強調した非常に ツ(grassroots)と呼ばれる探鉱と既に広域調査 慎重な議論を展開している。しかし、市場および の終了している地域を選定して、より詳細な調査 複雑で無限の間接的人間関係を作り出していく市 から始める精密調査(late stage)とで区分される 場を絶えず監視・変革できる人間の理性、感受性、 場合が多い’1。条件や企業戦略によって、どちり 主体性に対して希望的信頼を寄せすぎている点に の探鉱を行うのかは異なる。一般的に、優良鉱床 筆者は疑問を感じている。もちろん、人間の持つ 上記可能性を否定するものではない。しかし、現 11更に、マインサイト(mine site)と呼ばれる特定の 状に合った市場とは、今よりもかなり単純で小規 鉱脈を調査する更に精密な調査の3種類に分類され 模のものであろう。そこからスタートしない限り、 ることもある。 一6一 鉱業史再考(2)一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 は既存の優良鉱床の近辺で発見されることが多い fめ、既存鉱山もしくは鉱床に隣接する地域での 抽出・加工プロセス 精密調査が好まれる傾向にある。しかし、こうし 鉱物資源の採鉱方法は、鉱床の種類によって大 f条件には限りがあるため・採鉱企業にとって・ きく異なる。銅を例にとると、現在、大規模な採 グラスルーツを完全に避けることはできない。更 鉱が行われている主な鉱床は、ポーフィリー lt、グラスルーツの積極的な要因として、優良鉱 (porphyry)鉱床、硫化(massive sulfide)鉱床、 床発見後・ホスト政府からの開発許可が得やすい そして酸化銅(strata−bound)鉱床の3つである。 二と12や精密調査よりも大規模かっ優良な鉱床を ポーフィリー鉱床は、銅含有率が1%前後と低い 発見する可能性のあることが挙げられる。これら 一方で、鉱床が大規模に存在するため、露天堀に 探鉱の結果、地質上有望な鉱床が特定されると、 よって採掘されることが多い。大規模化と機械化 つついてフィージビリティ・スタディが行われる。 から採鉱コストを大きく削減できるため、巨額の フィージビリティ・スタディで考慮される主な要 初期投資と低コスト操業が特徴である。酸化銅鉱 因は、ロケーション、地質、価格単行、開発必要 床は、5%ほどの高い品位を有する反面、銅の選 資本、政治リスク、社会的安定、人材供給、鉱業 鉱コストと人件コストがかさむため、コストの増 政策である。このフィージビリティ・スタディによっ 大を不可欠とする。硫化銅も3%前後と品位は高 て、開発が決定されるまでが、探鉱段階である。 いが、鉱床が小規模なため坑内堀を主流とせざる 開発段階では、プラント建設およびインフラ整 を得ず、比較的少ない産銅量と人件コストにより 備が行われる。鉱山の多くがインフラ設備の整っ コスト高の傾向を有する。 ていない辺境地域で行われるため、プラント建設 露天掘と坑内堀によって採鉱された銅鉱石は、 のみならず、道路、発電設備、港湾整備のような 選鉱(mill)とりーチングによって、金や銀、モ 基本的なインフラから、労働者や地域住民への福 リブデン、鉛、亜鉛等の副産物と分離され、銅品 祉・補償施設等の生活環境整備と、非常に多岐に 位30%程度まで精製される。リーチングは、酸化 わたるインフラ整備が必要とされる。 鉱と一部硫化鉱に用いられる手法であり、採鉱過 数十年、時には百年以上におよぶ操業により経 程で生じる膨大な早耳から、銅を抽出する二次的 済的採鉱の可能な鉱床が失われた時点で、修復作 な方法として用いられてきた。しかし、近年、特 業が開始される。「南」鉱業諸国における鉱山修 にアメリカで改良されたSX−EW法 (Solvent 復は、近年ようやく義務化されてきたものであり、 Extraction−Electrowinning) が、低コスト化と環 これまでは修復されず野晒しにされていtg..また、 境影響低下を促進する抽出方法として注目され、 環境のみならず、閉山後の鉱山町衰退への対処に アメリカ、チリで積極的に用いられるようになっ 関しては、「北」も含め未だに決め手を欠いてい てきており、将来の主流選鉱手段として注目を浴 るのが現状である。加えて、「南」鉱業諸国では、 びている。 修復義務内容の曖昧な国が多く、また鉱山の寿命 選鉱された鉱石は、製錬(smelting)されてブ も数十年と長い。したがって、修復の一般的な内 リスターとなる。ブリスターおよびリーチングさ 容や結果については、これからの事例を待たなけ れた電気(electrowon)銅には、微量ながら酸素 ればならない。 や硫黄が含まれているため、それらの多くは、精 錬作業(refining)によって、更に純度の高い銅 12「南」諸国では、1)グラスルーツを海外に依存して 地金にされる。 いること、2)広域での地質情報の存在が外資を引き 一般的には製錬過程として製錬および精錬の過 つけ、ホスト政府の多国籍企業に対する影響力を強 程が含まれる。しかし、製錬過程のみを有してお 化させることにもつながるため、グラスルーツから り、ブリスターを輸出している国も存在しており、 携わる企業が優遇される傾向にある。 製錬工場は、製錬プラントのみを有するものと、 一7一 [愛媛経済論集 第23巻,第1号,2004] 両方のプラントを有するものの2つが存在する。 したがって、銅の垂直分業を詳細に分析する際に ハイリスクーハイリ頭目ン は、ブリスター生産主体と地金生産主体とで一部 第2の特徴は、鉱業のもたらす膨大な利益可能 区別する必要がある。しかし、本稿の分析焦点が 性およびリスクである。ホスト国および地域に対 鉱業にあること、精錬プラントの有無が「南」政 する利益可能性は既に述べた。このことは鉱業の 府一首業間の影響力バランスを大きく左右するこ もたらす利益可能性一企業利益も含めた一の大き とから、本稿での製錬過程に対する分析は専ら地 さを端的に示していると言える。しかしながら、 金生産主体に限定する。 膨大な利益可能性の存在する一方で、それに伴う 製錬所で生産された地金は、加工施設へと送ら リスクも非常に高い。リスクを膨大なものとする れる。そこで地金はシートやワイヤー、ストリッ 要因は、探鉱における巨額投資の必要性と不確実 プ、ロッド、チューブの形へと変えられ、更に、 性、不安定性、優良鉱床の非移動性である。 多くがプラス・ミル(brass mill)によって真鍮 鉱業は、規模の経済が大きく働く産業である。 や青銅等の合金とされる。 鉱床の低品位化による鉱山の大規模化・機械化・ 辺境化、労賃の上昇、オイルショック以降のエネ 2−2.鉱業の特徴 ルギー価格の増大、そして、近年の環境防除設備 偏在性 投資の義務化によって、この傾向は更に加速を見 鉱業の第1の特徴として、生産および消費の偏 せている。1960年目操業開始したペルーの 在性を挙げることができる。非鉄金属に関してい Toquepala銅山は、大規模化の先駆けとなった銅 えば、表1が示すように、多くの金属で生産が南 鉱山であり、開発費に約240百万ドルという当時 北アメリカ、アフリカ南部、オーストラリアおよ 破格の巨額投資が費やされた。更に、1970年代後 び一部のアジアに偏在している一方で、地金消費 半になると、平均で4∼600百万ドル、大規模なも は米国、日本、ヨーロッパに集中している。最終 ので1000百万ドル以上が必要とされるようになっ 消費先を把握するのは不可能であるが、地金消費 た13。近年では、その額は更に飛躍し、数十億ド 以上に「北」に集中していることは間違いない。 ル規模のプロジェクトも現れている。 埋蔵量との関係で見るならば、この傾向はより顕 巨額投資の必要性がある一方で、不確実性の存 著である。埋蔵量における採鉱量の割合は、「北」 在はリスクを非常に大きなものとする。不確実性 鉱業国で高く、「南」鉱業国で低くなっており、 の原因のひとつは、探鉱技術の制約によるもので 埋蔵量は採鉱量以上に「南」鉱業諸国へ偏在して ある。探鉱費は開発プロジェクトの約1割、多い いることが分かる。 ときには3割以上もの高額が費やされるが、それ 加えて、近年の開発環境の変化は、実質的な偏 にもかかわらず、優良鉱床の発見は困難である。 在性を更に高めてきている。環境や人権への意識 更に、発見された優良鉱床は、この時点では「優 の高まりは、世界的な鉱山開発の困難さを増大さ 良鉱床である可能性が高い」というものでしかな せてきているが、特に「北」諸国で著しい。一方、 い。実際に開発・操業してみるまで、経済的であ 「南」では環境や人権に対する規制の強化が「北」 の後追い的に急速に進んできているものの、制度 るか否かは、分かり得ないのである。 加えて、操業までの懐妊期間の長い点が、不確 の実質的な機能は「北」に比べて不十分であり、 実性を更に高めることとなる。図2は、鉱山開発 更に多国籍企業受入れ環境も著しく向上させてき プロセスにおける期間とコストの関係を示しtも ている。 131970年代後半までの鉱山開発コストの推移について は、G1。、chk、 。。d Sh。w, Var。n,1979, PP.77−100を 参照。 8 鉱業史再考(2)一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 表1主要非鉄金属の偏在性 a銅 埋蔵量(含有金属量:1000の 国 名 1 1,チツ. 2.アメリカ 3.’ぐルー 4.4揮 5,溶一ヲン冷’ 埋蔵量 { 160,GOO 25甲 90,000 40,000 37,000 国 名. 4,383 34% アメリカ 2,995 21% 1,633 13% 亭!岬 1,530 11% 6% ≠ンみ馳≠シア 786 6% 日本 1,294 9% 6% 719 614 545 536 520 6% ドイツ 1,133 8% 5% 5% オーストラリア カナダ ロシア 4% 韓国 台湾 4% イタリア 4% フランス 14% アメリカ 7.ロシフア 36,000 34,000 30,00G 6% 5% ベノ〃一 8..メキシコ 27ρ00 4% 中蛋 6.ゲンどア 地金消費量qOOOt) 消費量 比率 鉱石生産量(含有金属量11000t) 生産量 比率 国 名 チク 9.インドネシア 25,000 4% ボー.ランみ’噛 461 4% メキシコ 10.カナダ オーストラリア 23,000 23,000 4% メキシコ 381 3曾1 ベルギー 525goo 31% 136ρ00 21% 「南」 389,000 60% 全世界 650ρ00 100% b鉛 埋蔵量(含有金属量・1000t) 国 名 埋蔵量 合計 .、o,57s 内、「北」. 「南」 全世界 国 名 25% オーストラリア 2.㌍屠 3.アメリカ 20ρ00 14% 4.カナダ 5.!ぐノレー 21% アメリカ 中蛋 14,089 100% 比率 5丁5 17% 501 17% ドイツ 3% フランス ア7 3% スペイン 63 2孚6 メキシコ 合計 2,565 内、「北」 1,436 「南.1 全世界 20% 中皿 2,アメリカ 80,000 80,000 19% オーストラリア カナダ 国 名 4.カナダ 3LOOO フ% へ『 5.へσノ〃一 i2,000 3% アメリカ 8ρ00 2% メキンコ 1」29 38% 2,946 100% 比率. 16% 1」20 τ4% 1ρ09 13% 日本 633 8% カプ7スタン アイルランド 201 46% dニッケル 全世界 国 名 561 11% ドイツ 10% 5% 389 5% イタリア 3フ5 5% t7ンス 2% ベルギー 台湾 2% インみ“ 3% 82% 42% 3.1で3 39% 7β87 100% 合計 国 名 比率 1.ヰユーバ 23ρ00 T6% σシア 2.カナダ 15,000 11% カナダ 内、「北」 「南j 全世界 15ρ00 9% ニユ「汐〃六ニア 13ρ00 12ρ00 . 9% イ〉弛≠シア 11,000 8% 6.オーストラリア 11ρOQ 8% 11% 8.㌍厨 7,900 6% 9.∫コシア 10.ブラシラ〃 7,300 5% 6,000 .4% 22% 87% 合計 、 26,000 95,200 140,000 19% 1,396 17% 8,328 100% 国 名 消費量 比率. 14% 丁26 12% ドイツ 9% 可10 10% 89 8% 台湾 韓国 67 6% イタリア 5% フランス 36 日本 17% 4% 算厨 88 82 55 53 45 4% フィンランド 41 4% 3% スペイン 38 838 フ7% フ93 73% 91% 29% 62% 1,075 . 100% 全世界 3% 101 980 314 666 「南」 68弘 3% 67% 50% 183 152 39 内、「北」 3% 17% アメリカ 5G 40 コロンどア 厨アフ捗ク 121200 100% 比率 235 188 キューバ 中国 ブラジル 4,154 4% 地金消費量(1000t) 生産量 オーストラリア 2.ニュー汐μハ1=ア 毛 S,イ%1堺シ7 5.唐ア7助力 6.7〃どン. 297 275 273 246 5,550 鉱石生産量(含有金属量:1000t) .埋蔵量(含有金属量:1000t) 7% 韓国 3% 一 185 175 「南」 23% 11% 100% 1,150 31318 100% 61% 695 6,204 1,351 900 813 385 275 求[ 3,756 3% 3% 72% 消費量 内、「北」 196ρ00 「南」 「南」 4% ㌍岬 6,431 100,000 430,000 全世界 内、「北」 全世界 5.1 5% 4% 14% .17% スウェーデン 合計 .「南」 内、「北」 4,451 5% 地金消費量(1000t) 比率 可、368 69% 内、「北」 合計 合計 8% .6% アメリカ. 生産量 インみ1』 埋蔵量 87% 49% 鉱石生産量(含有金属量:1000t) 比率 85,〔}00 国 名 イタリア ポーランド 埋蔵量 全世界 イギリス 5% 漉ア7グカ 1.オーストラリア 296,000 9% 272 260 192 170 7ア% 19% 28% 日本 110000 埋蔵量(含有金属量:1000t) 比率 て,745 韓国 モ江7ソコ c亜鉛 消費量 525 372 329 295 学’厚 4% 偶 スウェーデン 48% 29% 100瓢 22% アメリカ 4% 才% 合計 地金消費量(1000t) 国 名 生産量 642 i30 118 87 1% 69,000 41,000 全世界 291 1% 6.メヰシコ 100% 161 1,000 2、中島 13% 12,フ71 ベノ〃一 1ρ00 国 名 60% 1,889 カナダ 2,000 ,筋 8,399 「南」 8% 143000 1昏2冊 内、「北」 2% 9.モ々ソコ 「南」 合計 23% 3,000 2% .メキンコ 内、「北」 33% 60% 12,000. 3ρ00 21000 全世界 3% 3% 2,966 271 5.房アフグカ 7.カザフスタン 7.メヰシコ 9、スウェーデン 合計 5% 4% フ,612 鉱石生産量(含有金属量:1000t) 比率 36,000 30,000 1,オーストラリア 6% 5% 4% 目、「北」 合計 784 655 635 550 359 353 合計 内、「北」 「南」 全世界 8% 8% 5% 5脇 4% 4% 45 4% 1,083 可00% θアルミニウム 埋蔵量(ボーキサイト乾燥重量=百万t) 国 名 埋蔵量 比率 ボーキサイト生産量α000t) 生産量 比率 .国 名 2.オーストラリア 8,600 . 25% オーストラリア 7,000 21% ギとア 3..ブラシル 4,900 1.ヂ≧ア 14% 地金消費量(1000t) 国 名 48,416 38% アメリカ 17,200 13% ブラジル i1,961 9% 消費量 比率 6,203 27% 2,946 ≠3% ψ厨 日本 2,丁00 9% 11403 6% 4.インみ“ 2β00 7% ジfマイりク 11,689 9% ドイツ 5、ジャ7イカ 5.中蛋 2,000 6% 中餌 9ρ00 7% 韓国 8青4 4% 2,000 6% インみ噛1 6,5ア8 5% カナダ 3% 4,4ア2 4% イタリア 774 746 737 558 506 7..が〆アナ 8.スグナム 9.ベネズ土ラ 10.ロシア 合計 900 600 350 200 3% 28,850 85瓢 ベネズよヲ 2% スノナム 3,715 3% 一 tフンス 1% カデフヌタン 3,607 3% インみ“ 1% ロシア 3,500 3% スペイン 120,138 94% 13% 内、「北」 102,938 127,624 81% 「南」 合計 内、「北」 7,000 21% 内、「北.」 「南」 21,850 64% 「南」 34,000 100% 全世界 全世界 17200 100% 合計 16,787 全世界 13283 3,504 1 23,050 注禿.「南上は移行経済国を含む 注2.「南」に分類した国は斜体・明朝体で示した(「北」はゴシック体) 原典=資源エネルギー年鑑編集委員会編『資源エネ.ルギー年鑑2003・2004』通産資料出版会 一9一 3% 3% 2% 2% 73% 58% 15% 100% [愛媛経済論集 第23巻,第1号,2004] 100 ︹ 資 と支 投75 ノ 投資決定 勘 唄 操業開始} 割合 出50 の 25 o 1 図1 鉱山開発と設備建設1 一_ま/ レぐ 1操剰 レ <d探鉱とフィージビリティ調査1 2 3 4 56 7 8 910年 図2 一般的な大規模鉱山開発のコスト推移 出典:Bosson and Varon,1979, p.30 のであり、探鉱活動を開始してから操業に移るま 「南」鉱業諸国では、鉱業が国の基幹産業である で、一般的に10年もの長期懐妊期間が必要である 一方で、巨額の外資導入を不可欠とするため、経 ことを示している/4。実際には、この期問に加え 済の低迷期には、その原因として国民や政治家の て、探鉱申請や開発申請の許可を取得する期間が 批判対象とされ易い。そのため、政府による突発 必要となるが、近年、環境影響評価や地域住民の 的な規制強化が行われることもしばしばであった。 反対活動の激化等を理由として、申請一許可の必 1960年代から70年代にかけて世界中を席巻した資 要期間が長期化してきている。このような長期壊 源ナショナリズムは、この性格を良く表している。 妊期間の存在は、開発時点において、操業開始時 最後に巨額の設備投資と資源の偏在性からくる の価格や需要、その他社会的変化の推測を不可能 非移動性という鉱業のもうひとつの性質が、不確 とする。 実性に対する多国籍企業の回避行動を困難にする。 不安定な市場が、不確実性の第3の要因である。 この結果、多国籍企業のリスクは更に増大せざる 鉱業は、膨大な設備投資と開発期間が必要であり、 を得ない。 市場動向に柔軟に対応することを困難にする。こ のことは、市場を更に不安定化してしまうため、 経済発展および税収への過度の期待 国際価格の乱高下を招きやすい。これまで市場安 鉱業は、原料としての役割だけでなく、より積 定化のために、カルテルや緩衝在庫制度、買上価 極的に「南」諸国の経済発展戦略と結びつきやす 格の設定、消費国会議等のさまざまな手法がとら い。それは、「南」諸国が経済的に外部に大きく れてきたが、戦問期から戦後の一時期を除いて、 これらの試みは全て失敗に帰している。 依存していることを大きな理由とする。 為替管理と貿易を通した経済の安定化および技 更に、ホスト国の政治的な不安定性が、民間企 術導入は、十分な外貨の存在を不可欠とする。そ 業の操業にとって、非常に大きなリスクとなる。 して、外貨の重要性は、工業化政策の輸入代替・ 輸出志向に関係なく、「南」諸国にとって容易に 14図は1970年代について示したものであるが、現在も 比較優位を発揮できる一次産品の輸出力を、経済 大きな変化はない。 発展戦略の中心に位置づけるのである。更に、輸 10 一 鉱業史再考(2)一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 鉱山の被害可能性 表2一 作業内容 プロセス 一 探鉱 試掘地へのアクセス道路建設 生物多様性の喪失 y地の改変 一 開発 詞@作業 Z民の住居空間、生活手段の破壊 ミ会的、文化的な摩擦と変化 表土の除去 上記影響の拡大・深刻化+(プラス) O部から建設労働者の移入 y砂の河川・海洋流出による水質汚染 イ塵による大気汚染 n表・地下の水系の破壊 ウまざまなインフラ整備 ヲ例えば、ダム等の電源開発、 ケ路、港湾等 實ケ y壌浸食 一 操業 採鉱作業 政府の不適切な介入 ノよる影響可能性 作業に伴う影響可能性 開発プロセスの影響の更なる拡大・深刻化+(プラス) y砂廃石の河川・海洋への流出による水質汚染 eーリングの外部流出による土壌・水質汚染 一 修復 鉱山町のゴーストタウン化と生活手段喪失 採鉱場の埋め立て A生や土地の変化による生態系へのインパクト A林作業 耳〒の資料および本文引用事例より筆者作成 I鉱作業 O部からの労働者移住 ・住民の意思の無視 ヲプロジェクト強制執行 ヲ被害改善・補償要求の ウ視等 E批判者、反対者への ィ理的、精神的暴力 ヲ軍隊、警察、私兵を ?pしての嫌がらせや 激Cプ、殺害等 E賄賂や汚職構造の強化 資料:pring, George et al, Trends in international Environmental Law AfFecting the Mineral Industry, Jou〃7∂ノofEne!一gy(望Resources乙∂va(17−D,1999 Marshall, lan E., A Survey of Corruptt’an issues fn the nahing and naheraf Sector, iied, 2001 出牢の付加価値増大、そのための技術導入・向上 らば、広範囲にわたって深刻な影響を及ぼすこと は、しばしば鉱山をその土台として位置づける。 となる。また、採鉱現場での問題に加えて、鉱山 鉱山一製錬一精錬(=重化学工業化)一加工(圧 町、大規模な港湾や輸送、通信、その他さまざま 延・鋳造)一組み立てという付加価値増加戦略は、 なインフラの整備も環境への大規模な影響を不可 他一次産品よりも技術取得(=重化学工業化)お 避とする。特に、ダムや地熱発電等の大規模電源 よび経済波及効果の点で優れていると見なされる 開発の場合、その環境影響は著しい。 ことが多い。 操業段階では、採鉱によって膨大な量の土砂廃 加えて、「南」諸国では、その低い徴税能力を 棄物である鉱津が生じる。この鉱津は粉塵や海洋・ 補うものとして輸出入税が相対的に重要な政府収 河川汚染を生じさせる可能性がある。続く選鉱過 入源として位置づけられる傾向にある。また、累 程では、鉱種によって利用する化学薬品が異なる 積債務、慢性的財政不足、相対的に高い軍事予算 が、例えば、金鉱山では、環境や健康への被害を のシェア等による深刻な財政状況が、その傾向に 引き起こす可能性のあるシアン化物と、それに加 拍:車をかける。 えて水銀を利用しているものも少なくない15。ま た、ほとんどの鉱山では重金属を含んだテーリン 環境影響および被害の可能性 グと呼ばれる酸性廃液が大量に排出される。近年、 鉱山の環境影響は、2っの技術的プロセスと社 ほとんどの二種における鉱石品位は数%からゼロ・ 会的構造により立体的に把握する必要がある。そ コンマ数%程度となっているため、抽出鉱石の9 「の第1は、鉱山のライフサイクルである(表2)。 割以上がこれらの過程で廃棄されることとなる’6。 探鉱作業では、小規模ながらも、試掘やその検 査のために、アクセス道路を作り、設備を導入し、 15水銀の使用は、近年、中小規模の採鉱主体による利 実際に地下数キロの鉱石をドリリングによって抽 用が問題となってきている。ブラジルのアマゾン川 出しなければならない。したがって、このための 流域が有名であるが、最近ではアジア諸国でも注目 されてきている[Murao,2000]。 森林伐採や土地改変が不可避となる。 162000年には世界各地の鉱山でおよそ9億トンの金属が 開発段階では、上記の被害を更に拡大・深化す 採掘され、60億トンの廃石が出されており、鉄、銅、 る。特に、広域にわたって表土を削り取る作業は、 金でその大半を占めている。除去された表土をも計 表土喪失部分のみならず、表土堆積場からの粉塵、 算に入れるならば、廃石の両は更に増加する[ワー そして土砂の河川もしくは海洋への流出を伴うな ルドウォッチ研究所,2003]。 一11一 [愛媛経済論集 第23巻,第1号,2004] この内、テーリングは、テーリングダムと呼ばれ 境や人権の軽視を促すからである。この問題は、 る大規模な人口池に放流されるか、もしくは、直 特に社会的地位が低く、文化への理解も十分にさ 接パイプラインを通して海洋へと投棄される。台 れていない先住民族において顕著となる傾向があ 風や大雨、地震等によってテーリングダムの決壊 る18。 もしくはオーバーフローが生じるならば、環境修 2−3.グローカル・ネットワークの必要性 復に数年もの期間を必要とする深刻な汚染問題を 引き起こす。海洋投棄に関しては、近年インドネ 強度の摩擦 シアやフィリピンといった諸島での効果的な処理 上述のような鉱業の特徴は、鉱山活動に対する 方法として導入が進んでいるが、どのような環境 企業、政府、地域住民の態度を極端なものにする 影響があるのかは十分に分かっていない。それど ため、否が応でも3主体問の摩擦を増大させるこ ころか、漁獲量の低下や海底環境の悪化の事例が ととなる。 数多く報告されている。また、テーリングダム内 まず、企業にとって、優良鉱床は、発見しなけ で乾燥したテーリングの表面部分が風によって飛 ればならず、そして開発しなければならない対象 散すると、近隣のみならず数十キロ離れた地域に となる。その背後に存在するのは、利益の最大化 まで気管支系や皮膚の健康被害を生じさせること および経営の安定化である。しかし、他産業と比 もある。 べ、鉱業においては、不確実性やリスクの大きさ、 修復段階では、植生のさまざまな組み合わせが 優良鉱床の希少性の故に、優良鉱床に対する発見・ 試行されているが、基本的に以前と同様の自然環 開発意欲が、極端に強くならざるを得ない。 境に復元することはできない。特に、生物多様性 一方、先住の地域住民の多くにとって、大規模 に関しては、これまでの活動によって生じた壊滅 鉱山は、.その被害の歴史故に生活手段の喪失を促 的な被害を十分に修復できない。 す許容しがたい暴力の源泉として捉えられること 2っ目の技術的プロセスは、鉱石の加工プロセ が多い。更に、多くの地域住民が小規模な金の採 スである。抽出され、選鉱された鉱物資源は、ほ 鉱を営んでいる地域も少なくない。そこでは、鉱 ぼ全量が精錬所で地金に加工されるが、この精錬 山企業は優良鉱床を巡る競合者ともなり得る。ま の過程が地球温暖化や酸性雨の主要な汚染源となっ た、金を産出する鉱山では、排出されたテーリン ていると言われている。ある試算では、世界で排 グを企業から購入もしくはもらい受けてそこから 出する二酸化硫黄の約13%が精錬所から出され、 金を抽出する者、企業から安価にシアン化薬品や アルミニウム、銅、粗鋼の3上種で世界のエネル 水銀といった化学薬品、ダイナマイト等を購入す ギーの7.2%が使用されている’7。 る者、採鉱鉱石を企業に売却する契約を結ぶ者も 上記のような技術的限界から生じる環境被害の 居り、このようなケースでは、企業をパートナ” 可能性は、もし顕在化したならば補償によって賄 と見なしている場合もある。しかし、これは今の われるべきものと認識されているが、特に「南」 ところかなり限られた特殊なケースであると言「c 鉱産国において顕著な社会構造的な問題と結びつ る。 次に、工業国政府(=「北」政府)およびホス き、逆に被害を拡大、深刻化する可能性が高く、 更に、環境問題の範疇を超えた深刻な人権侵害を ト政府にとって、優良鉱床は、自国の経済活動の も引き起こすことが多い[ワールドウォッチ研究 ために、発見・開発されなければならない対象で 所,2002]。他産業と比べて格段に高いリスクと 政治経済的依存、辺境地域による情報の不透明性 が、賄賂や強制執行のインセンティブを強め、環 18鉱山の被罰能性に関しては、ワールドウ。。チ研 究所(1992)、(2002)、(2003)や日本環境会議/ 「アジア環境白書」編集委員会(2000)が多くの事 17ワールドウォッチ研究所(2003)pp.212−213。 例やその背景について論じている。 一12一 鉱業史再考(2)一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 ある。しかし、その目的は異なる。まず、工業国 にとって、非常に重要である。何故なら、このよ 政府にとって、目的とする経済活動は、2っに分 うな鉱業の持つ特殊性は、例外として扱われるべ けられる。ひとつは、加工産業のための安定供給 きではなく、良い意味でも悪い意味でも、その構 目的であり、もうひとつは、自国に本拠を持つ多 造の中で、現実化しうる可能性として扱われるべ 国籍鉱山企業の利益保護である。したがって、工 きだからである。 業国政府にとって、自国籍の多国籍鉱山企業の活 グローカル・ネットワークの必要性 動支援が、これら2つの目的を達成する主な手段 鉱山の開発・操業において寡占状況を作り出し となる。 ホスト政府にとって、鉱山の持つ意味は、非常 ている巨大多国籍企業は、その政治経済的な影響 に広いものとなる。そのため、政府の立場は非常 力と環境や人権に対する破壊的行為により、巨人 に複雑である。状況によって、多国籍企業の後ろ と呼ばれて恐れられる存在であった。しかし、巨 盾ともなれば利益をめぐる敵対者、競合者ともな 人にならなければならなかったという理由故に、 り、更に地域住民の利益の保護者ともなるのであ 決定的なアキレス腱をも有している。そして、そ る。しかし、これまでのところ、地域住民の利益 のアキレス腱の存在故に、グローカル・ネットワー 保護は限定されたものでしかなく、政治家および クが社会状況の変化に対して敏感で顕著な反応を 鉱業関連機関の役人は富の源泉としての埋蔵鉱物 示してきた。加えて、このアキレス腱は、鉱山に 資源の「神話」を強く信じている。前稿[栗田,2 限定されるものでなく、程度の差こそあるものの 003]で述べたようなオランダ病、それに基づくマ 資本主義的な活動をしている企業一般に当てはめ クロ管理の困難さ、政治との結びつきや汚職との ることができる。したがって、ここで顕著に描き 親和性等、鉱物資源に依存した経済の悪影響は、 出されるグロ一葉ル・ネットワークの状況や役割 政策にほとんど反映されていない。もちろん、だ に関するエッセンスは、鉱山を超えてある程度一 からと言って地域住民による鉱山拒否の成功が例 般化できるものと言える。 外的な出来事でしかないという訳ではない。近年 鉱山は、大規摸な初期投資を必要とする反面で、 の地域住民の著しい影響力の向上は、例外からの 非常に大きな不確実性をも有している。また、国 脱却を可能とし始めているようにも見える。政府 際価格は不安定で振れ幅も大きい。したがって、 の立場は、政治に対するさまざまな鉱業関連主体 経営安定化が決定的に重要な要素となる。そして、 の影響力バランスに依存する。そして、どの立場 経営安定化として用いられてきた手段が、価格高 であるにせよ、膨大な利益可能性、リスク、被害 騰時の生産最大化と価格低迷時の人員最小化、金 可能性は、政府の積極的な介入意欲を大いに高め 融機関や政府からの適切な支援である。 ることとなる。 価格は非常に不規則であり、高騰期間が3年も 上記のように、開発関連主体は、優良鉱床の開 続けば良い方である。一方、鉱山の開発には少な 発をめぐって、極端な姿勢をとる。したがって、 くとも建設開始から同様の年数(多くの場合、5 地域住民と企業、ホスト政府、工業国政府の摩擦 年から10年が必要と言われている)、拡張にもや は、しばしば、極大化せざるを得ない。そして、 はり数年が必要とされる。したがって、この価格 ここに、鉱業を事例として取り上げる上での大き 高騰時に生産量の拡大を合わせるのは技術的な要 な特徴と意義が存在する。各主体は、他産業と比 素だけでも至難の技と化す。加えて、鉱山では円 べ、鉱業活動をめぐって、しばしば極端な手段を 滑な建設や操業に対する社会的阻害要因も大きい。 用いることとなるからである。ここでいう「極端 数千haにも及ぶ広大な面積の利用と高い環境リ な手段」とは、より暴力的な手段という意味のみ スクが伴うため、地域住民への被害/リスクも非 を表さない。場合によっては、より平和的な手段 常に大きなものとならざるを得ない。このため、 をとることもあり得る。この点は、本稿のテーマ 合意形成は困難となり、プロジェクト推進に対す 一 13 [愛媛経済論集 第23巻,第1号,2004] 開発」制度の新たな局面:フィリピン、タンパカ る住民の抵抗も大きくなる。 価格低迷時には、生産量を高く維持するよりも、 ン銅山プロジェクトの事例を通して』『愛媛大学 労働者を削減できるのであれば、生産量の削減も 経済論集』第22巻第1号,2002年。 しくは一時停止こそが最も効率的な経営安定策と 栗田英幸「鉱業史再考(1):既存研究の限界と なる。解雇しゃすい環境、例えば組合の禁止、低 必要とされる新たな視点」『愛媛大学経済論集』 い労働条件、非正規労働者(契約労働者)への依 愛媛大学経済学会頭22巻第3号,2003年。 存が好まれるが、この点に関しても、当然のこと 資源エネルギー年鑑編集委員会編『資源エネル ながら強力な抵抗が生じることとなる。 ギー年鑑2003・2004」通産資料出版会,2003年目 上記2っの手段を達成するには、ナショナルな 鶴見和子『内発的発展論の展開」筑摩書房, レベルで法律作成や違法行為の無視を通した企業 1996年。 活動の「合法化」が必要とならざるを得ず、更に 戸崎純・横山正樹編「環境を平和聴する!: ローカルなレベルでの素早い「合意」もしくは抵 「持続可能な開発」からサブシステンス志向へ』 抗削減も不可欠な要因となる。地域住民が納得の 法律文化社,2002年。 いく合意をとりつけるには、多国籍企業や鉱山に 西川潤『アジアの内発的発展』藤原書店, 対する信頼、もしくは鉱山がもたらすリスクを自 2001年。 らコントロール可能であるとの地域住民の自信が 日本環境会議/「アジア環境白書」編集委員会 必要となるが、その媒介となる政府に対する信頼 「アジア環境白書2000/01」東洋経済,2000年。 がこれほどまで失われている現状ではまず不可能 横山正樹「国際貢献のあり方とODAの実像一 に近い。したがって、強引に推進するしかなく、 開発パラダイムから平和パラダイムへ」『平和研 国および地方の軍や警察、パトロン・クライアン 究』第24号,日本平和学会,1999年。 横山正樹「第1章 暴力は本来性(サブシステ ト関係を利用した抵抗の封じ込めが現状では効果 的な手段となる。 ンス)を奪う」戸崎純・横山正樹編『環境を平和 政府の支援に関しては、上記のような現地政府 幽する!:「持続可能な開発」からサブシステン による円滑化のためのさまざまな支援に加えて、 ス志向へ」法律文化社,2002年。 免税措置や投資回収保証がなされており、企業本 ワールドウォッチ研究所『地球白書1992−3』ダ 国政府からは巨額の補助金、企業同士の協力戦略 イヤモンド社,1992年。 の仲介、現地政府や国際機関との外交交渉といっ ワールドウォッチ研究所「地球白書2002−03』 た支援がなされている。また、金融機関からの巨 家の光協会,2002年。 額融資に関しては、リスクが高いため、世界銀行 ワールドウォッチ研究所「地球白書2003.2004』 や本国輸出入銀行による融資保証を不可欠とする。 家の光協会,2003年。 これらのことは、巨大多国籍企業が単独で鉱山 Galtung, Johan, Violence, Peace and Peace を維持できないことを意味している。逆に、グロー Research: Education ’ Action Essays in PeaCe バル、ナショナル、ローカルのそれぞれのレベル Research Vol.1, Christian Ejlers Copenhagen, 1975− において、強力な支援を獲得しなければ、鉱山を Glusohlce, Wolfgang and Shaw, Joseph and 開発・操業することができない。言い換えるなら Varon Bension, Copper: The Next Fifteen Years (A ば、鉱山を開発・操業するためには、適切なグロ一 United Nations Study), D. Reidel Publishing 円ル・ネットワークを構築しなければならないの Company, 1979. である。 Marshall, lan E., A Survey of Corruption lssueS in the Mining and Mineral Sector, iied, 2001. Murao, Satoshi and Maglambayan, victor B. and 参考文献 栗田英幸『巨大資源開発における「持続可能な Cruz, Neoman, Small−scale Mining in Asia : 一14一 鉱業史再考(2)一分析のフレームワーク&鉱業の特徴一 observations towards a solution of the issue, M血ing Journal Books, 2000. pring, George et al, Trends in international Environmental Law Affecting the Mineral lndustry, μ脚1・ゾE・曙翻…躍。θ・伽(17−1), 19991 Scott, James C., Patron−Client Politics and political ’ Change in Southeast Asia, American. political Science Review g66−1), 1972. Sen, Amartya, Development As Freedom, Alfred AKhopf Inc.,1999.(アマルティア・セン『自由 と経済開発』日本経済新聞社,出版年) 一 15・一