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2007年度 第3回関西電気化学研究会

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2007年度 第3回関西電気化学研究会
2007年度 第3回関西電気化学研究会
主催:電気化学会関西支部
日
時
2007年12月8日(土) 14:00-18:00
場
所
京都大学 桂キャンパス A2号棟306号室(ポスタープレビュー)
306号室前ピロティ(ポスター会場及び懇親会)
京都市西京区京都大学桂 交通: 阪急京都線桂駅から京都市バスもしくは京阪京都交通バス約 12 分
「京大桂キャンパス前」下車
■講 演
1. (14:00 - 15:20)
ポスタープレビュー
(ポスター番号 P1~P12)
P1: (京都大院・窪田啓吾氏) 二元系アルカリ金属 BETI 混合塩の物理化学的性質
P2: (京都大院・金谷崇系氏) フルオロハイドロジェネートイオン液体を前駆体とした
新規な低融点フルオロ錯塩の合成とその物性
P3: (神戸大院・林 裕介氏) 金属酸化物/非水系リチウム電解質溶液共存系におけるイオン移動
P4: (神戸大院・箕輪 剛氏) 脂肪族 4 級アンモニウムイオンを含む二元系イオン液体の局所構造解析
P5: (大阪大院・有本 聡氏) Development of in situ Electrochemical Electron Microscopy Observation Using Ionic Liquid
- SEM Observation of Redox Reaction of Conducting Polymer -
P6: (京都大院・松本 翼氏) 多孔質シリコンのマクロ孔内における種々の貴な金属の電析形態
P7: (阪府大先端セ・森田亮輔氏) 有機-無機ナノラズベリーの作製と特性評価
P8: (京都大院・北川 寛氏) 新規中低温溶融塩 EMPyr-ZnCl2 系の物性および高融点金属電析への応用
P9: (京都大院・西村友作氏) 疎水性室温溶融塩中における Si 薄膜の電気化学プロセシング
P10: (北陸先端大院・斉藤香織氏) 電気化学的手法によるマルチ銅酸化酵素の反応解析
P11: (京都大院・野瀬雅文氏) 硫酸水溶液中における高配向性熱分解黒鉛の電気化学的酸化反応機構
P12: (京都大院・加登裕也氏) 溶融塩化物中におけるダイヤモンド電極の電気化学挙動
2. (15:40 - 17:00)
ポスタープレビュー
(ポスター番号 P13~P25)
P13: (阪府大院・三浦卓也氏) H2SO4 水溶液を含む高分子ヒドロゲル電解質の作製と電気二重層キャパシタへの応用
P14: (阪府大院・森本智子氏) 亜鉛を負極に用いた水系ハイブリッドキャパシタのキャラクタリゼーション
P15: (関西大化生工・内藤 匡氏) 臭化物イオンを利用した水系キャパシタの高容量化
P16: (関西大化生工・竹重雅之氏) CNT の集団的モルフォロジーの差異に基づく EDLC 電極特性の比較検討
P17: (京都大院・西村信吾氏) 電解液にフルオロハイドロジェネ-ト室温イオン液体を用いた
電気二重層キャパシタの特性
P18: (阪府大院・宮田和昌氏) Pt/SnO2/CB 触媒のキャラクタリゼーションおよびアルコール酸化活性の評価
P19: (京都大院・宮崎晃平氏) 金超微粒子を用いた直接メタノール形燃料電池アノード触媒
P20: (立命館大院・椙村直嗣氏) アルカリ形ダイレクトエチレングリコール燃料電池の正極特性
P21: (兵庫県大院・前川英治氏) 心疾患マーカーの高感度測定のための電気化学的酵素シグナル増幅
P22: (同志社大院・岡崎 礼氏) IrO2-Ta2O5/Ti 電極上での H2O2 および N3-の電極反応
P23: (阪府大先端セ・武田信太郎氏) 分子鋳型過酸化ポリピロールを用いた ATP センサの開発
P24: (京都大院・金村祥平氏) NaTFSI-CsTFSI 系溶融塩の物理化学的性質とナトリム硫黄電池への応用
P25: (京都大院・渡會 篤氏) リチウム二次電池への応用を目指した混合溶融アルカリ金属イミド塩の開発
3. (17:00 – 18:00)
ポスター展示
※ポスター展示後(18:00~)、簡単なビアパーティーを開きます。
(ビアパーティー中に表彰式を行います)
■参加費
無料
但し、ビアパーティー 1000 円(当日受理)
■申込方法
12 月 7 日(金)までに氏名、所属、連絡先(TEL、所在地)、懇親会参加の有無を明記の上、
下記事務局までお申し込み下さい。
(申し込み用紙はありません。任意の用紙にて送付いた
だければ結構です。)
■連絡先・申込先
〒563-8577 池田市緑丘 1-8-31 産業技術総合研究所 ユビキタスエネルギー研究部門
倉谷 健太郎(E-mail: [email protected]、TEL: 072-751-9651、FAX: 072-751-9629)
■会場地図
■ポスター発表要旨
(P1) 二元系アルカリ金属 BETI 混合塩の物理化学的性質
○窪田啓吾、野平俊之、後藤琢也、萩原理加(京都大院・エネ科)
筆者らは優れた性能を持つ溶融塩電解質の開発を目的として、アルカリ金属 (M : M = Li, Na, K, Rb, Cs) カチオン及びパーフルオロ
アルキルスルフォニルアミドアニオンから構成される塩に注目して研究を進めている。これまで、ビストリフルオロメチルスルフォニ
ルアミド(TFSI)アニオンからなる塩の物性について報告した。今回はビスパーフルオロエチルスルフォニルアミド(BETI)アニオンとアル
カリ金属カチオンからなる塩(MBETI)に注目した。HBETI と各アルカリ金属炭酸塩より MBETI を合成し、単塩同士を混合して二元系混
合塩を作成した。それらの単塩及び混合塩について、DSC と TG により融点と熱分解温度を求め、状態図を作成した。また、XRD によ
り中間化合物の有無を調べた。その結果、MBETI 二元系は共晶系と全率固溶体の二種類に分類でき、共晶系では単塩よりも大幅に融点
が低下することが分かった。
(P2) フルオロハイドロジェネートイオン液体を前駆体とした新規な低融点フルオロ錯塩の合成とその物性
○金谷崇系、山縣雅紀、上野竜一、松本一彦、萩原理加(京都大院・エネ科)
イオン液体は一般に、不燃性、高イオン導電率、広い液相温度領域等の特長を有する。そのような観点から、水溶液系の電解質より
も高い分解電圧を有する電解質としての利用が期待されている。しかしながら、イオン液体は、電解質としてのイオン濃度は極めて高
いにもかかわらず、低温領域で使用されるということから一般に粘性率が高く、それにともなって導電率が低下することが問題点とし
て挙げられる。そのような背景のもと、当研究室では、イミダゾリウム系のカチオンに、低分子量のフッ化水素酸イオン(FH)nF を組み
-1
合わせることによって、従来のイオン液体よりも一桁高い導電率(≧100 mScm )を有する低粘性のイオン液体、すなわち、イミダゾリ
ウム系フルオロハイドロジェネートイオン液体を開発した。本会では種々のカチオンを有するフルオロハイドロジェネートイオン液体
および、それらの一部を前駆体として合成されたフルオロ錯塩の諸物性ついて報告する。
(P3) 金属酸化物/非水系リチウム電解質溶液共存系におけるイオン移動
○林裕介、水畑穣、出来成人(神戸大院・工)
固相と液相が共存する固液共存系においては、固相近傍の液相は固相表面からの影響を受け、バルク状態とは異なる物性を示すこと
が知られている。よって、このような共存系内をイオンが移動する際には、バルク状態とは異なる挙動を示すことが予想される。本研
究では、固相に金属酸化物(α-Al2O3, ZrO2, SiO2, TiO2)を、液相には非水系リチウム電解質溶液を用い、Hittorf 法により輸率測定、電気伝
+
+
導度測定を行い、Li イオンの移動と固相表面物性との関連性について検討を行った。Li イオンの輸率は見かけの平均厚みが減少するに
+
つれて変化し、その大きさはα-Al2O3<ZrO2<TiO2<SiO2 であった。次に、輸率と電気伝導度の値から Li イオンの移動度を算出した。SiO2
+
を固相に用いた系においては、見かけの平均厚みが減少しても、Li イオンの移動度はほとんど変化しなかった。これらの固相の違いに
よる変化は、固相表面の酸性度の大きさが影響していると考えられる。
(P4) 脂肪族 4 級アンモニウムイオンを含む二元系イオン液体の局所構造解析
○箕輪剛、水畑穣、出来成人(神戸大院・工)
4 級アンモニウムイオンを含むイオン液体は、その構成イオンが複雑な形状を有し、両親媒性イオンの特徴に起因するイオン間相互
作用が生じるため、構造的な周期性や電子密度の偏りが存在し、分子レベルの不均一性が生じると考えられる。本研究では、SAXS 測
定を用い,非対称トリメチル 4 級アンモニウム系イオン液体の構造についての検討を試みた。SAXS 測定の結果より、アルキル鎖長 n =
-1
5 付近から q = 2 - 4 nm にピークが確認された。これは 4 級アンモニウムカチオンのアルキル鎖からなる局所構造が、 van der Waals
力により形成されたことが示唆される。第 2 のカチオンがイオン液体中の構造に与える影響について検討を行った。トリメチルヘキシ
ルアンモニウムイオン(N1116)を含む LixN1116(1-x)TFSI (x =0, 0.10, 0.30, 0.50) に対する SAXS 測定の結果より,LiTFSI の添加量が増加
-1
+
するに伴い,q = 4 nm 付近のピーク強度の増加が確認された。これは Li が TFSI-イオンと強く相互作用するために, 4 級アンモニウ
ムカチオンの構造規則性が増大したと考えられる。
(P5) Development of in situ Electrochemical Electron Microscopy Observation Using Ionic Liquid
- SEM Observation of Redox Reaction of Conducting Polymer -
○有本聡、桑畑進(大阪大院・工)
当研究グループはこれまでに、不揮発性かつ導電性を有するイオン液体が、高真空下で流動性を保持したまま走査型電子顕微鏡
(SEM) によって直接観察できることを見出し、生体試料などの様々な絶縁体をイオン液体によって塗れたままの状態で観察することに
成功している。そこで本研究では、このイオン液体を電解液に用いて、導電性高分子であるポリピロールの酸化還元反応を SEM の測定
系中で行い、反応に伴う微小な膜厚の変化を画像として直接捉えることを目的とした。また、SEM 観察にエネルギー分散型 X 線分析
(EDX) を組み合わせることで、電極に電位を印加することによるイオン液体中でのイオンの挙動を in-situ で評価することも試みた。
(P6) 多孔質シリコンのマクロ孔内における種々の貴な金属の電析形態
○松本翼(京都大院・エネ科)
多孔質シリコンはシリコンをフッ酸溶液中で陽極酸化することで得られ、その多様な形態を利用したテンプレートとしての応用が期
待されている。我々は多孔質シリコン上へ金属電析を行い、テンプレートの多孔構造を転写した金属微細構造の形成を試みている。こ
れまでに暗条件下での銅電析、および光照射下でのニッケル電析により、ロッド状の銅、チューブ状のニッケルが析出することを見出
してきた。今回、新たに暗条件下で白金、パラジウム、金の電析を検討した。白金は孔底部から連続的に析出しロッド構造が得られた。
パラジウムは孔底部と開口部で析出が進行し、不連続なチューブ構造が得られた。金は孔底部での析出がみられず、開口部付近で析出
しロッド構造が得られた。金属により異なる析出形態があらわれた要因について検討した結果を発表する。
(P7) 有機-無機ナノラズベリーの作製と特性評価
○森田亮輔、山本陽二郎、椎木弘、長岡勉(阪府大・先端科学イノベーションセンター)
通常金ナノ粒子はマイナス電荷を持っているため、プラス電荷を持った金ナノ粒子の多くはカチオン性のチオールによるリガンド交
換により調製されている。本研究ではこのようなリガンド交換を行うことなく、one-stepで正電荷をもつ金ナノ粒子を作製した。テト
ラクロロ金(III)酸四水和物およびアニリンを含む水溶液を65℃に保ちながら30分間撹拌した。得られた溶液を5℃で30分間遠心分離
(8500rpm)し、上澄みを捨て沈殿物を水に再分散した。この操作を3回行うことにより金ナノ粒子溶液とした。アニリンを用いて作製し
た金ナノ粒子では約550nmに吸収ピークが見られた。表面電位を調べた結果、+25.7mVの電位を持つことがわかった。TEM観察を行っ
たところ約1.5 nmの小粒子が集合してラズベリー状となった凝集体が得られた。
(P8) 新規中低温溶融塩 EMPyr-ZnCl2 系の物性および高融点金属電析への応用
○北川寛、野平俊之、萩原理加(京都大院・エネ科)
筆者らは、100-250℃という中低温域で使用する溶融塩に着目して研究を行っている。これまでに NaCl-KCl-ZnCl2 系を用いた 250℃
における W 電析および Mo 電析を報告している。本研究では、新規な中低温溶融塩として N-ethyl-N-methylpyrrolidinium chloride -ZnCl2
系に着目し、その諸物性の測定および 150℃での Mo 電析、W 電析を試み平滑な膜を得ることを目的とした。DSC を用いて種々のモル
比での融点を測定し、状態図を作成した。また、代表的な組成について粘性率および導電率を測定した。次に X(ZnCl2)= 0.5 の浴を
使用し電析を試みた。Mo イオン源として MoCl5 を、W 源として WCl4 を適宜添加した。種々の条件で定電位電解を行い、得られた試料
について SEM、XPS を用いて分析を行った。
(P9) 疎水性室温溶融塩中における Si 薄膜の電気化学プロセシング
○西村友作、福中康博、野平俊之、萩原理加 (京都大院・エネ科)
半導体は持続的発展可能な社会の形成に不可欠である。その中でも資源量や化学的安定性から、Si 及び Si 化合物が有望であると言え
る。筆者らは新規な Si 作製法を創出することを目的とし、疎水性室温溶融塩中における Si 電析の研究を行っている。電解液には
SiCl4-TMHATFSI 組成を採用し、電極には Ni 板(作用極)、Pt 線(擬似参照極)、黒鉛板(対極)をそれぞれ用いた。作用極上に得られた析出
物は SEM、EDS、顕微ラマン分光、XPS により分析・評価された。CV の結果から,−2.0 V 付近で Si 電析が起こると期待される。次に
−2.0 V で 4 時間、定電位電解を行った所、Ni 基板上に褐色の膜が得られた。断面 SEM 像から,4 時間の電解で厚さ約 200 nm の比較的
均質な膜が得られることが分かった。更に上記の分析結果から、析出物は Si を含み,約 1.6 eV のバンドギャップを有することが分か
った。
(P10) 電気化学的手法によるマルチ銅酸化酵素の反応解析
1,2
1,2
3
4
○斉藤香織 、辻野義雄 、大堺利行 、民谷栄一
1
2
3
4
( 北陸先端大院・マテ科、 (株)マンダム、 神戸大院・理、 大阪大院・工)
ラッカーゼやビリルビンオキシダーゼ(BOD)などのマルチ銅酸化酵素はフェノールやジアミンを酸化して、酸素を水に還元する酵素
であるが、至適 pH は酵素、および基質の種類によって異なる。我々は Flammulina veltipes の培養液から至適 pH が中性で、基質の種
類によって変化しない、新規ラッカーゼを見出した。BOD の場合、炭素電極上での直接電子移動(DET)を理論解析することにより酸化
還元電位(E°')を求めることができる。そこで BOD を用いて E°'の pH 依存性を調べ、基質との E°'の差(ΔE°')が最大となる pH 領域と至適
pH がほぼ一致することを明らかにした。また、電極をケッチェンブラックで修飾することにより F. velutipes ラッカーゼの DET の観測
に成功した。基質とのΔE°'は至適 pH 近傍で最大となり、ΔE°'が至適 pH に影響する因子であることが示唆された。
(P11) 硫酸水溶液中における高配向性熱分解黒鉛の電気化学的酸化反応機構
1
2
1
1
1
1 1
2
○野瀬雅文 、衣本太郎 、Choo, Hyun-Suk 、入山恭寿 、安部武志 、小久見善八 ( 京都大院・工、 大分大・工)
固体高分子形燃料電池(PEFC)内での炭素材料の電気化学的酸化反応機構を明らかにすることを目的に、表面の規定が容易な炭素材料
である高配向性熱分解黒鉛(HOPG)をモデル材料として用い、その酸性溶液中での電気化学的酸化反応機構を、特に表面官能基の生成に
注目して調べた。そして、硫酸水溶液中での HOPG の電気化学的酸化反応は、表面に存在する脆弱部位を起点として、表面官能基の生
成とその高次酸化を経て進行し、最終的に CO2 などのガス状化合物として逸散することを明らかにした。特に、酸化後の表面を化学的
方法で処理し、X 線光電子分光法で調べ、ラクトン環が酸化過程で形成することをはじめて見出した。最終的な反応過程であるカルボ
キシル基から CO2 発生に至る経路とラクトン環を介した CO2 発生への経路の酸化の程度を比較できる方法を開発し、調べた結果、前者
の反応過程の方が、より激しいと考えられた。本研究の知見は、高耐久性電極触媒の開発の指針となる。
(P12) 溶融塩化物中におけるダイヤモンド電極の電気化学挙動
○加登裕也、後藤琢也、萩原理加(京都大院・エネ科)
ボロンドープダイヤモンドボロンドープダイヤモンド(BDD)電極は、水溶液中において酸素発生過電圧が高い、バックグラウンド電
流が小さい、などの優れた電気化学特性を持っているため、新規電極材料として期待されている。しかし、BDD 電極の研究は水溶液の
ものがほとんどであり、溶融塩、特に高温溶融塩中での検討はほとんど行われていない。一方で、当研究室では、BDD 電極が 723 K の
Li2O を含む共融組成 LiCl-KCl において不溶性酸素発生陽極として利用できることを見出しているが、他の溶融塩化物中ではあまり検討
2−
−
(1)]
されていない。[O → 1/2O2(g) + 2e
そこで本研究では、いくつかの溶融塩化物中における BDD 電極の電気化学的挙動について検討を行った。具体的には、酸素ガス電極
反応について、電気化学計測、ガス分析、電極の表面分析などを行い、BDD 電極の酸素ガス電極としての安定性について評価した。
(P13) H2SO4 水溶液を含む高分子ヒドロゲル電解質の作製と電気二重層キャパシタへの応用
○三浦卓也、樋口栄次、野原愼士、井上博史(阪府大院・工)
固体電解質もしくはゲル電解質を用いて電気化学キャパシタを全固体化することは重要な課題の一つである。演者らは以前、ポリビ
ニルアルコールを用いて 4M H2SO4 水溶液を含む架橋型の高分子ヒドロゲル電解質膜を作製することに成功した。しかし、架橋点のエ
ステル結合が酸に弱いことなどから、時間が経つと電解質が分解する問題などが生じた。本研究では、酸に比較的安定である共有結合
で架橋させた高分子ヒドロゲル電解質の作製を試みた。その結果、H2SO4 水溶液中で p-スチレンスルホン酸ナトリウムと N,N’-メチレン
ビス(アクリルアミド)をラジカル重合させ、共有結合で三次元的に架橋させることで弾力性のある強固なヒドロゲル電解質膜を作製する
ことに成功した。作製したヒドロゲルは水溶液に近い電気伝導度を有した。また、活性炭電極と構築した電気二重層キャパシタは良好
に作動した。
(P14) 亜鉛を負極に用いた水系ハイブリッドキャパシタのキャラクタリゼーション
○森本智子、樋口栄次、野原愼士、井上博史(阪府大院・工)
演者らは、以前に負極に水素過電圧の大きな亜鉛、正極に活性炭素繊維布を用いることにより、従来の水系電気二重層キャパシタよ
りも高い作動電圧、エネルギー密度および出力密度を有する水系ハイブリッドキャパシタの構築に成功した。しかしながら、亜鉛の電
解液への溶出によりサイクル寿命や電圧保持特性などが劣るのが現状であった。そこで、電解液を KOH 水溶液から NaOH 水溶液に変
えることにより亜鉛の溶出が抑制され、それらの特性が向上することを見出した。今回の発表では、改善したハイブリッドキャパシタ
における種々の電気化学測定の結果について報告する。
(P15) 臭化物イオンを利用した水系キャパシタの高容量化
○内藤匡、山崎穣輝、石川正司(関西大化学生命工)
水系電気二重層キャパシタでは、有機系電気二重層キャパシタに比べて大電流の放電が可能となることから高出力化が期待されてい
るものの、エネルギー密度は依然として低いままである。水系電気二重層キャパシタは水の電気分解によって作動電圧を制限されてい
るために、エネルギー密度を向上させるには静電容量を増加させることが要求される。当研究室では以前、高温定電位保持という処理
により主に高電位側の静電容量が向上することを報告した。以前は電極表面に存在する酸素含有官能基の効果について検討を行ってき
たが、これ以外の要素も容量増加に起因していると考えた。そこで一般的にはあまり使用されていない NaBr 電解質が、この処理に効
果があることを見いだしていたので、今回、この電解質の効果に特に着目した。そして高電位側の容量増加の要因となる反応を明らか
にすることができた。
(P16) CNT の集団的モルフォロジーの差異に基づく EDLC 電極特性の比較検討
○竹重雅之、吉田有希、本田裕一、石川正司(関西大化学生命工)
-1
電気二重層キャパシタ(EDLC)の活物質として一般的に使用される活性炭は、高比表面積(2000~3000 m g )を有する。しかしながら、
それ自身の持つ複雑な電極構造のために容量と抵抗に分布が生じる。その結果、充放電レートの増加に伴い容量が減少することが一般
に知られている。そこで我々は電子伝導性が高く、円筒形といった非常にシンプルな構造を有するカーボンナノチューブ(CNT)を電極材
料に採用することで、ハイレート EDLC の構築を試みた。その際、CNT の集団的モルフォロジーの違いに注目し、種々の EDLC 電極に
ついて比較検討を行った。
(P17) 電解液にフルオロハイドロジェネ-ト室温イオン液体を用いた電気二重層キャパシタの特性
○西村信吾、野平俊之、萩原理加 (京都大院・エネ科)
室温イオン液体は融点が室温以下にある塩で、不燃性・不揮発性・広い液相温度領域を持つなどの特長を有しており、有機合成用の
溶剤や電気化学デバイスへの応用などが期待されている。本研究室では、室温イオン液体であるフルオロハイドロジェネートを電気二
重層キャパシタ(EDLC)用電解液として検討している。フルオロハイドロジェネートとは、当研究室が開発した(FH)nF をアニオンに持つ
イオン液体の総称であり、イオン液体としては極めて低い粘性率及び高い導電率をもつ。 以前の研究では EMIm(FH)2.3F を検討したが、
この電解液を用いた EDLC の容量は一般的なイオン液体や有機電解液に比べて大きいものの、耐電圧は低く、その向上が課題とされた。
そこで、本研究では、より大きな電気化学窓を持つ EMPyr(FH)2.3F を用い、EDLC 用電解液としての評価を行った。EMPyr(FH)2.3F を用
いた EDLC の容量の最大値は、EMIm(FH)2.3F と比較して小さくなったが、耐電圧は向上し、その結果エネルギー密度の最大値は大きく
なった。
(P18) Pt/SnO2/CB 触媒のキャラクタリゼーションおよびアルコール酸化活性の評価
○宮田和昌、樋口栄次、野原愼士、井上博史(阪府大院・工)
直接形アルコール燃料電池(DAFC)は携帯機器用の電源として期待されている。しかし、一般的な Pt 触媒をアノードに使用すると、
燃料のアルコールを電気化学的に酸化する速度が遅く、純水素に比べてアノード性能が大幅に低下する問題点がある。DAFC ではメタ
ノールを燃料とした研究が数多く行われている。他方、エタノールはバイオマスから製造でき、安全性が高く、燃料としては優れてい
るが、これまでの研究例はメタノールに比べて少ない。本研究では、直接形アルコール燃料電池用の高活性なアノード電極触媒の開発
を目的として、コロイド法で作製した Pt 修飾 SnO2 触媒を CB に担持させ(Pt/Sn/CB)、そのキャラクタリゼーション及びアルコール酸
化活性を調べた。Pt/SnO2/CB 触媒は、Pt/CB 触媒よりも高いアルコール酸化活性を示し、特に、エタノール酸化活性に関しては大幅に
向上した。
(P19) 金超微粒子を用いた直接メタノール形燃料電池アノード触媒
○宮崎晃平、入山恭寿、安部武志、小久見善八(京都大院・工)
直接メタノール形燃料電池は小型・軽量化が可能であり、ポータブル機器用の電源としての用途が期待されている。現行の二次電池
に代わる電力源として注目される一方で、実用化までに解決すべき問題点は多い。その一つに、メタノールを改質せずに直接酸化する
過程で一酸化炭素のような被毒種が生成し、電極の触媒を被毒する現象(CO 被毒)が挙げられる。被毒種である CO はアノード触媒の白
金に強く吸着し、メタノール酸化に必要な活性サイトを占有し、ひいてはアノード分極を大きくする。そこで我々は CO 被毒を解決す
るために、金超微粒子に着目し、高 CO 被毒耐性を有するメタノール酸化触媒に関する研究を行った。金はバルクの状態では触媒不活
性とされているが、粒径を数 nm 以下のナノ粒子にすることで触媒作用を示すようになる。この特異的な性質を有する金超微粒子を用
いて種々のアノード触媒を作製し、耐 CO 被毒性およびメタノール酸化特性について調べた結果を報告する。
(P20) アルカリ形ダイレクトエチレングリコール燃料電池の正極特性
1
2
2
2
1
2 1
2
○椙村直嗣 、宮崎晃平 、入山恭寿 、安部武志 、松岡政夫 、小久見善八 ( 立命館大院・理工、 京都大院・工)
直接形メタノール燃料電池(DMFC)は、小型や軽量化が可能であり、携帯機器用電源として期待されている。しかし、白金を使用する
ことによるコストの上昇、さらには固体高分子膜を透過してきた燃料が正極の白金触媒上で反応することによるセル特性を低減させる
クロスオーバー等の問題があり、これらの問題を解決するために白金代替触媒の開発が盛んに行われている。我々は、卑金属や金属酸
化物が使用可能であるアルカリ形ダイレクトアルコール燃料電池に注目し、正極触媒に銀や La1-xSrxMnO3 を使用することで従来の白金
触媒に匹敵する性能を示すことを見出した。本発表では正極触媒として期待されている Pt、Ag、La1-xSrxMnO3 触媒上でのエチレングリ
コール存在下での酸素還元活性の評価を行った結果について報告する。
(P21) 心疾患マーカーの高感度測定のための電気化学的酵素シグナル増幅
○前川英治、安川智之、水谷文雄(兵庫県大院・物質理)
電気化学的な免疫センシングには、ターゲット分子の抗体に修飾された酸化還元酵素や加水分解酵素がよく利用されている。修飾酵
素としてβ-ガラクトシダーゼを用いた場合には、酵素反応生成物である p-アミノフェノール(PAP)を電気化学的にとらえることにより
ターゲット分子を定量するが、心疾患マーカーのような極微量ターゲットの検出では感度に問題がある。そこで PAP を高感度に計測す
るために、酵素サイクリングシステムを活用する。これは、PAP の電気化学的酸化反応により生成した p-キノンイミンをグルコースオ
キシダーゼ(GOx)などの酸化酵素で還元しシグナルを増幅させる方法である。今回、PVA-SbQ 膜を利用して GOx 固定電極を作製し、
その活性を評価した。また PAP を酵素サイクリングにより高感度化し、その検量線を作成した。酵素サイクリングを用いると、感度を
30 倍向上でき、250 nM の PAP が測定可能であった。
(P22) IrO2-Ta2O5/Ti 電極上での H2O2 および N3-の電極反応
○岡崎礼、盛満正嗣(同志社大・工)
電気化学式グルコースセンサの新たな電極材料として、チタン基板上に熱分解法で IrO2-Ta2O5 層を形成した IrO2-Ta2O5/Ti 電極を取り
上げ、H2O2 に対する検出感度や妨害物質である N3-の H2O2 反応に対する影響について検討した。IrO2-Ta2O5/Ti 電極上で得られた H2O2
酸化のサイクリックボルタモグラムには明瞭な拡散限界電流を示す広い電位域が観察され、この拡散限界電流は H2O2 濃度に比例するこ
とが判った。また、その傾きは従来用いられている Pt 電極よりも大きく、IrO2-Ta2O5/Ti 電極がより高い H2O2 感度を有することを明ら
かにした。さらに、グルコースセンサでは送液中の防腐剤として NaN3 が添加され、Pt 電極では N3-が H2O2 と同じ電位域で酸化反応を
生じるために H2O2 感度の経時劣化を引き起こしていたが、IrO2-Ta2O5/Ti 電極では N3-の酸化反応は起こらず、N3-の共存が H2O2 酸化
に対して全く影響を及ぼさないという特異な選択性を見出した。これらの結果から IrO2-Ta2O5/Ti 電極がグルコースセンサの電極材料と
して有用であることを明らかにした。
(P23) 分子鋳型過酸化ポリピロールを用いた ATP センサの開発
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○武田信太郎 、太田 至 、水口悟 、八木洋美 、舟橋均 、椎木弘 、長岡勉
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( 阪府大・先端科学イノベーションセンター、 アテクト)
ATP を指標とすることで、微生物残留評価が可能となる。本研究では、ポリピロールの過酸化により作製した分子鋳型を用いた電気
化学的測定法を開発し、簡便な ATP の定量を試みた。ATP を含むピロール水溶液中で、0.975V(vs Ag/AgCl)で定電位電解してポリピロ
ール(PPy)膜を修飾した。NaOH 水溶液中で電位幅 0~1.2V で 2 周掃引して過酸化 PPy(OPPy)膜を作製した。トリプルパルスアンペロ
メトリーにより ATP の定量を行った。過酸化処理による静電気的な反発および膜の硬化に伴う物理的な掃き出しを利用して、PPy 膜に
ATP の分子鋳型を形成した。この分子鋳型膜を用いて ATP の認識を行ったところ、1.6V において ATP の酸化に伴う電流ピークが確認
された。この方法による ATP の検出限界は 500pM であった。
(P24) NaTFSI-CsTFSI 系溶融塩の物理化学的性質とナトリム硫黄電池への応用
○金村祥平、窪田啓吾、野平俊之、後藤琢也、萩原理加(京都大院・エネ科)
ナトリウム硫黄電池は高いエネルギー密度や長いサイクル寿命を持ち、正極活物質である硫黄は、リチウム二次電池に用いられてい
るコバルト酸リチウム等よりも安価であるため、夜間余剰電力の貯蔵や非常用電源といった大規模用途での使用を目的として研究が行
われている。この電池は、電解質として高温において高ナトリウムイオン導電性を持つ固体セラミクスであるβ”-アルミナを用いてい
るが、β”-アルミナの高ナトリウムイオン導電性を得るためには電池を 300~350 ºC で作動させる必要があり、このような高温では正
極活物質による電池材料の腐食や、室温から作動温度の間での昇降温によるβ”-アルミナへの熱的負荷によって電池寿命が短くなるこ
とが課題とされている。そこで我々は、β”-アルミナに替わる新たな液体電解質として NaTFSI-CsTFSI 系溶融塩に注目し、その密度,
粘性率,導電率を測定した。また,実際にテストセルを組み開回路電圧測定,充放電試験を行ったので報告する。
(P25) リチウム二次電池への応用を目指した混合溶融アルカリ金属イミド塩の開発
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○渡會篤 、窪田啓吾 、玉木健一郎 、後藤琢也 、野平俊之 、萩原理加 、宇井幸一 、熊谷直昭
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( 京都大院・エネ科、 岩手大院・工)
当研究室において開発された溶融アルカリ金属イミド塩はアルカリ金属カチオンとビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドア
ニオンから成っており、高い電気化学的安定性、高いイオン導電性などの特長を持つと予想される。現在リチウム二次電池には更なる
エネルギー密度の向上等の性能面での要求だけでなく、安全性の向上が求められており、高い電気化学的・熱的安定性、不燃性・不揮
発性を有する溶融塩はリチウム二次電池の電解質として有望であると考えられる。本研究では、混合することで融点を下げた混合溶融
アルカリ金属イミド塩の電気化学窓、導電率、粘性率等の物性と、実際に電解質として応用したテストセルを作製し充放電試験を行っ
た結果、及びセル性能を改善するために正極活物質として炭素被覆 LiFePO4 を用いた際の結果についての報告を行う。
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