...

スライド 1 - 防衛省・自衛隊

by user

on
Category: Documents
27

views

Report

Comments

Transcript

スライド 1 - 防衛省・自衛隊
平成22年度
総合評価
防衛政策・自衛隊運用についての企画、立案及び実施
防衛政策・自衛隊運用についての企画、立案及び実施
№
1
施策名
事業名
キャパシティ・ビルディング支援
安全保障対話・防衛交流
評価時期
平成23年2月
担当部局
【事業の概要】
近年、国際的な安全保障環境は、相互依存関係の一層の進展により主要国間の大規模紛争の
蓋然性は低下する一方、ある国・地域で生じた混乱や安全保障上の問題が直ちに世界に波及する
リスクが高まっており、こうした国際的な安全保障環境に影響を与える可能性のある問題は一国で
対応することが極めて困難であり、利益を共有する国々が平素から協力していくことが重要。
このような状況の下、国際社会における軍事力の役割も一層多様化し、各国では、民間部門のみ
ならず軍の能力の活用により、軍隊又は関係機関に対する人材育成、技術指導等を実施し、当該
国の統治能力の向上や大規模災害等への対処能力の向上を図る活動(「キャパシティ・ビルディン
グ支援」(以下「キャパ・ビル支援」))に取り組んでいるところ。
防衛省・自衛隊では、PKOセンターへの自衛官講師派遣や防衛大学校等における留学生受入れ
といった、キャパ・ビル支援としての側面も有する施策を実施。
(1)従来の施策のうちキャパビル支援的側面を有するもの
①PKOセンターへの自衛官講師派遣
アフリカPKOセンターの機能強化により、アフリカの平和と安定への寄与を目的とし自衛官を講師
として派遣。アフリカ諸国自らが問題を意識し、その解決に取り組んでいく自助努力の分野における
支援を重点的に実施。
主に、自衛隊の国際平和協力活動等の経験を踏まえ、軍民協力に関わる教訓事項について指導、
助言を行いながら、アフリカ諸国の平和維持能力向上の支援を実施。
②防衛省への留学生の受入れ
留学生に対し、防衛・安全保障に関する高い水準の教育を実施し、各国国防当局の組織基盤の
強化・向上に役立てるもの。また、教育訓練履修給付金制度により、アジア地域を中心とした開発
途上国の陸海空軍等が容易に防衛省の教育訓練機関に対し留学生を派遣できるような環境を整
備。
(2)今後新たに取り組むべき施策
近年、地震・洪水等の大規模自然災害の多発や海賊行為の凶悪化などにより、深刻な物的被害
や多数の犠牲者が発生。こうした国際的な安全保障環境の不安定化につながる可能性のある非伝
統的安全保障分野における問題が数多く見受けられる。
このため、ARFや拡大ASEAN国防相会議といった多国間の枠組みなどにおいても、非伝統的安
全保障分野におけるキャパ・ビル支援の重要性が繰り返し言及され、特に国際社会が協力してキャ
パ・ビル支援を行うことの重要性の認識が共有。 実際に、非伝統的安全保障分野における防衛当
局の役割が拡大しつつあり、各国では、一般の行政機関、国際機関、NGO等の民間部門のみなら
ず、軍の能力を活用することにより、関係国の統治能力の確保・向上や大規模災害等への対処能
力の向上を図る活動に取り組みつつあるところ。
防衛政策局国際政策課、運用企画局国際協力課、人事教育局人材育成課
【評価の目的・視点】
キャパ・ビル支援は、地域的あるいは国際的な安全保障環境の一層の安定化を実現する上で極めて重要な施策。非伝統的安全保障分野における取組の必要性や、各国からの
支援要請を踏まえ、防衛省・自衛隊として、新たにどのようなキャパ・ビル支援に取り組むのか。また、PKOセンターへの自衛官の講師派遣や防衛大学校等における留学生受入
などキャパ・ビル支援としての側面を有する現行の施策も含めて、防衛省・自衛隊の今後のキャパ・ビル支援の在り方について、ア.開発途上国の対処能力の向上、イ.国際的な
安全保障環境の安定化、ウ.ASEAN諸国等の発展途上国との関係強化、エ.我が国の国際的な発言力の増大という4つの視点から総合的に整理・検討し、その課題・問題点に
係る原因・要因を分析し、今後の政策立案や概算要求等に反映。
【評価の方法】
キャパ・ビル支援については、政策の性質上、定量的な評価が困難であり、外部
有識者、支援対象国・対象者やNGOをはじめとする支援実施者などの部外者の
意見や所見、国際社会における取組みの状況、各国からの要請内容、昨年12月に
策定された「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」(以下「22大綱」)などを参考
にしつつ、定性的な政策評価を実施。
防大の国際交流
-東ティモールからの留学生-
防衛大学校には約90名の留学生がいる。
1958年のタイを皮切りにアジア諸国から防大へ
の留学が伝統となった。近年、研究科(大学院)
への留学も増え、交流は多角化し拡大するとと
もに双方向化している。同盟国アメリカの陸海
空士官学校とは毎年6名を互いに4ヶ月派遣し
合っている。フランスをはじめいくつかの士官学
校とも交換留学について話が進んでいる。
本年、防大は新たに東ティモールから男女4名
を迎えた。(中略)東ティモールといえば自衛隊
がPKO活動を行った地である。住民に銃口を向
けるのではなく、住民のお役に立つことを進んで
行う有能で軍紀の確かな自衛隊、その評判を得
た活動あればこその要請であろう。民主主義時
代の軍幹部を養成するには日本留学がよい、そ
うした期待に応える4人のよき防大留学となるこ
とを望みたい。
(防衛大学校長 五百籏頭 眞)
【総合的評価】
現在、防衛省が実施しているアフリカPKOセンターへの講師派遣及び留学生の
受入れは、22大綱における「国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が
協力して行う活動への積極的な取組み」に該当するものであり、その有用性に鑑
み、今後、規模の拡大も視野に入れて継続的に実施していくことが適当。
しかし、これらの施策はキャパ・ビル支援としての側面を有するに過ぎず、今後、
非伝統的安全保障分野における脅威が拡散・深刻化していく可能性があることに
鑑みれば、キャパ・ビル支援を正面から位置付け、実施することが必要。
現在実施している施策に加え、今後、新たに、災害救援、海賊対処、防衛医学、
地雷・不発弾処理などの非伝統的安全保障分野における教育訓練といった関係
国の対処能力の向上に資するキャパ・ビル支援に取り組んでいくことが、ASEAN
諸国等の開発途上国における関係強化、我が国の国際的な発言力の増大等にも
つながるものであり、国際安全保障環境の安定化のため必要であると評価。
平成22年度日本の防衛より抜粋
過 去 5年 の 教育 訓 練 履修 給 付 金支 給 実 績(国 別 )
エジプトPKOセンターへの講師派遣の模様
タイ
インド
インドネシア
フィリピン
パキスタン
マレーシア
中国
モンゴル
ベトナム
ルーマニア
カンボジア
東ティモール
合計
18年度
18
2
10
0
2
0
2
10
14
3
4
0
65
19年度
17
2
12
0
4
0
2
8
12
2
6
0
65
20年度
15
4
12
0
7
1
1
10
12
0
8
0
70
( 単 位: 人 )
21年度
15
6
13
1
6
1
1
11
13
0
9
0
76
22年度
8
7
13
3
4
0
2
11
13
0
12
2
75
合計
73
21
60
4
23
2
8
50
64
5
39
2
351
【政策等への反映の方向性】
①PKOセンターへの自衛官講師派遣
今後、我が国が国際平和協力活動等で蓄積してきた経験・教訓などを、域内の諸問題を自己の力で解決しよう努めているアフリカ諸国と共有し、国際的な安全保障環境の改善を
図っていくためには、アフリカPKOセンターへの講師派遣を積極的に行うことが必要。現在、講師派遣はマリとエジプトの2カ国にとどまっているため、派遣先国の拡大が必要。
アフリカPKOセンターへの講師派遣は、これまでの派遣の継続を基本としつつ、講師派遣のニーズを踏まえた派遣先国の拡大が重要。(平成20年度より行っているエジプトへの
派遣に加え、22年度に講師派遣の依頼があったガーナへの派遣を要求)
②防衛省への留学生の受入
防衛省は今後、開発途上国の人材育成分野における対処能力向上を促進することを目的とする支援施策を検討することを考えており、具体的には、東ティモールやカンボジアの
ように国家・国軍建設に対する支援を希望している国に対して、当該国のニーズに応じた受託が出来ないかを検討。
以上のことから、平成23年度の教育訓練履修給付金の概算要求においては、継続して11ヶ国から防大等へ受け入れるための要求を実施。
③能力構築支援の実施
非伝統的安全保障分野における脅威が拡散・深刻化していく可能性があることに鑑みれば、国際平和協力活動への累次の活動を通じてこうした脅威への対処に必要な専門知
識・経験を蓄積してきた防衛省・自衛隊が、国際的な安全保障環境の改善のためにこれまで以上の役割を期待されるのは自然な流れであるところ。また、各省庁やNGO等は様々
な分野で既にキャパ・ビル支援を実施しており、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを任務とする防衛省・自衛隊としても、実力組織としての自衛隊が保有する技能、
知識、組織的な機能といった他の組織にはない独自の能力を活用して関係国の軍隊に対するキャパ・ビル支援に取り組むことが、責任ある国際社会の一員として我が国が目指す
方向であると思料。
そこで、国際社会においてその重要性が認識され、22大綱にも明記されたキャパ・ビル支援を具体化し、充実させていく体制を整えるため、本事業実施のための予算要求を行い、
平成23年度中に防衛政策局国際政策課に「能力構築支援室(仮称)」を新設するとともに、上記の従来から実施されているキャパ・ビル支援の側面を有する施策も含め、防衛省・
自衛隊として能力構築支援事業を効果的・体系的に実施していく資とするため、ASEAN諸国等において現地での調査や具体的なニーズの把握・分析などを行い、今後、防衛省・
自衛隊が実施すべき分野及び態様に関する調査研究などを実施。
【企画評価課の意見】
・本施策は、既に実施しているアフリカPKOセンターへの講師派遣及び留学生の受入れについて、各国からのレターや会談等において累次わたり謝辞が延べられているとともに、
留学生受け入れ規模拡大や、自衛官派遣の地域増大の要請が寄せられ、各国から高い評価を受けていることから、有効と評価。
・また、新たに、災害救援、海賊対処、防衛医学、地雷・不発弾処理などの非伝統的安全保障分野における教育訓練を行う能力構築支援も、22大綱に防衛力の役割として謳われ
ている「アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化」及び「グローバルな安全保障環境の改善」に合致し、新たな視点での施策の拡大が必要。
・他方、防衛省・自衛隊によるキャパ・ビル支援は、関係省庁と調整の上、日本政府として行うキャパ・ビル支援の全体像を見据え、また、相手国の全体的なキャパ・ビル支援の中で
の国防分野の能力構築の在り方を勘案し、防衛省・自衛隊として何ができるのか、また何をすべきか検討し、個々の施策に結びつけることが我が国として効果的にキャパ・ビル支援
を実施するうえで、大切であると考える。
・関係省庁・相手国と調整を取りつつ、既存のキャパ・ビル支援的要素を含む施策を包括し、多岐にわたる施策の中から、防衛省が行う支援策を選択し中長期的な計画をまとめ、総
合的に実施する必要があり、調査研究を通じてこうした防衛省としての考え方を取りまとめることが必要。
・評価の実施方法について見れば、複数の課にまたがる幅広いテーマであり、国際政策課が中心となり国際協力課及び人材育成課が協力し、よく調整され、とりまとめられており、
今後も幅広いテーマでこのような態勢による評価が望まれる。
平成22年度
総合評価
防衛政策・自衛隊運用についての企画、立案及び実施
防衛政策・自衛隊運用についての企画、立案及び実施
№
2
施策名
事業名
調達・補給・管理
装備品等の取得改革
評価時期
平成23年1月
【事業の概要】
○ 防衛上の所要に対応した装備品等を適切かつ効率的に取得することは、我が国の防衛力整備に
とって極めて重要であり、装備品等にかかる真に必要な生産・技術基盤を国内に平素から保持してお
くことは、安全保障の主体性を確保するうえでも必要不可欠。
装備品等取得を巡る悪循環
厳しい財政事情
○厳しい財政事情
平成22年度当初予算
一般会計予算
約92兆円
○装備品等の高性能化
装備品の高価格化
○市場は国内限定
74式→90式戦車
約3.9億円→(2.1倍)→約8.3億円
公債発行額
約44兆円
国及び地方の長期債務残高
約862兆円
○調達数量の減少
調達数量の減少
平成8年度~平成12年度
と平成18年度~平成22年
度の各5年間の平均調達
数量を比較。
戦車<90式、10式>
約17.5両→約10両
○装備品等の高価格化
F-4EJ →F-15J/DJ戦闘機
約38億円→(3.2倍)→約122億円
○装備品等の延命・近代化
護衛艦・潜水艦
約2.4隻→約2隻
○防衛産業の基盤弱体化
戦闘機<F2、F15>
約10機→約2.5機
○我が国として対策が必要
2,800
こんごう型→あたご型イージス護衛艦
約1,223億円→(1.2倍)→約1,475億円
○整備維持経費の増加
整備維持経費の増加
=
○ さらに、近年、装備品等取得の悪循環に起因して、我が国の防衛関連企業も厳しい状況に直面。
今後、こうした企業が防衛事業から撤退ないし倒産した場合、我が国の防衛力整備に深刻な影響を
もたらすことが想定されるため、今後の取得改革の推進に際しては、防衛生産・技術基盤の重要性に
も十分配慮することが必要。
経理装備局装備政策課
悪循環
○ その一方、厳しい財政事情と社会保障関係費の急増を受け防衛関係費が抑制傾向に推移する中
で、装備品等の高性能化・高価格化が進展してきており、結果として、調達数量の減少と更なる取得
単価の上昇を招来するという装備品等の取得をめぐる悪循環が生じているところ。
これに加え、新しい装備品の高性能化・ハイテク化、現在保有している装備品の老朽化といった要
因などにより、メンテナンス等に要する経費(整備維持経費)が、約20年前と比較して約80%増加
(平成元年度⇒平成22年度)し、平成17年度以降、主要な装備品等の契約額を整備維持経費が上
回っているという現象が生じている。また、安全保障環境の変化に伴う自衛隊の実任務の多様化・拡
大に効率的に対処していくためには、装備品等の可動率や安全性にこれまで以上に留意していくこと
も重要であり、整備維持経費の増加の問題を考慮しつつ、維持・整備の在り方についても見直しを
図っていくことも重要な論点となっているところ。
担当部局
○平成元年
4,400億円
80%増
○平成22年
7,923億円
防衛関連企業の工場にかかる年間操業時間の推移
~防衛省による関連企業61社へのアンケート調査に基づく合計値~
2,709 万時間
2,700
2,600
○ これらの背景を踏まえると、装備品等の維持・整備の在り方の見直しも含めた新しい取得改革の
推進が必要であり、平成22年9月に総合取得改革推進委員会を開催し、「取得改革の今後の方向
性」を取りまとめたところ。他方、昨年末に閣議決定された「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱
(以下、「22大綱」という。)」においても、我が国を取り巻く新たな安全保障環境の下、防衛力の整
備・維持を効率的・効果的に行うために、装備品等の運用基盤の充実、装備品取得の一層の効率化、
防衛生産・技術基盤の維持・育成、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する施策の検討など、
取得改革にかかる施策による防衛力の基盤整備を重視することが決定されており、また、平成22年
12月の「防衛力の実効性向上のための構造改革の推進に関する大臣指示」の中でも、これを更に
推進することとされている。
180万
時間以
上減少
2,500
2,400
2,300
0
平成15年度
平成16年度
平成17年度
平成18年度
平成19年度
平成15年以降に撤退・倒産した戦闘機・艦船・戦闘車両
関連外注企業(防衛省把握分)
<戦闘車両関連企業(35社)>
○ 以上の事情に鑑み、装備品等取得の更なる効率化と防衛生産・技術基盤の維持・育成を進めるた
めの方策を講じることが必要となっており、防衛省では「取得改革の今後の方向性」、22大綱、平成
22年12月の大臣指示を踏まえ、「装備品等取得の効率化」と「防衛生産・技術基盤の維持・育成」と
いう2つの観点から、各施策に取り組んでいるところ。
2,525 万時間
<戦闘機関連企業(21社)>
<艦船関連企業(26社)>
A社(アルミ鋳物部品の生産)
事業撤退
B社(アルミ鋳物部品の生産)
事業撤退
C社(アルミ鋳物部品の生産)
事業撤退
D社(パイプ類の生産)
事業撤退
E社(油圧部品の生産)
A社(プロペラ装置の製造)
事業撤退
A社(レドーム・燃料タンク等の生産)
事業撤退中
B社(ガスタービン機関の部品製造)
事業撤退
B社(スチール鋳物部品の生産)
事業撤退中
C社(ディーゼル機関の部品製造)
事業撤退
C社(レドーム用樹脂の生産)
事業撤退中
生産辞退
D社(護衛艦用鋼板の製造)
事業撤退
D社(碍管(がいかん)の生産)
事業撤退
E社(潜水艦用器材の生産・整備)
撤退表明
E社(鍛造品の生産)
撤退表明
F社(ガスタービン機関の部品製造)
生産辞退
F社(鋳造品の生産)
撤退表明
G社(揚錨機、係船機の製造)
倒産
G社(構成品の生産(ワッシャーなど)
撤退表明
F社(ギヤの生産)
生産辞退
G社(ギヤ・シャフト類の生産)
生産辞退
H社(板金部品の生産)
自主廃業
I社(鋳物部品の生産)
自主廃業
上記の他26社が撤退(撤退表明等含む)
上記の他19社が撤退(撤退表明等含む)
上記の他14社が撤退(撤退表明等含む)
【取得改革の取組】
(1)装備品等取得の効率化
○ ライフサイクルコスト(LCC)管理
LCC管理は、装備品等の取得コストを量産単価だけでなく、構想、開発、量産、
運用・維持、廃棄に至る過程に必要な総経費として考えることで、装備品等の開発
や量産への着手等の結節点で、費用対効果の判断を踏まえた意志決定可能にす
るもの。
○ 調達手法の改善
防衛省では、調達手法の改善施策の一例として、複数年にわたって装備品等を
調達する数量を1年にまとめて調達する短期集中調達等や、民間企業の努力によ
り製造コストの低減が生じた場合に低減額の一部を企業側に付与するインセン
ティブ契約制度を導入。
○ PBL(Performance-Based Logistics)の導入に向けた検討
PBLは企業との契約形態をメンテナンスの作業量に応じて対価を支払うのでは
なく、可動率や安全性といった装備品等のパフォーマンスに対して対価を支払う形
態。
(2)防衛生産・技術基盤の維持・育成
厳しい財政事情の中、国内において全ての防衛生産・技術基盤を保持すること
が極めて困難であるため、どの分野の防衛生産・技術基盤を国内に保持すべきか
について、安全保障上の重要性や国内産業の競争力の観点を踏まえて具体的に
検討し、その分野の維持・育成に注力する「選択と集中」の考え方に基づいた「防
衛生産・技術基盤戦略(仮称)」を策定することが必要。防衛省では、昨年11月か
ら次期中期防(平成23年度~平成27年度)の戦略策定を目標として、産官学の
実務者レベルの構成員からなる「防衛生産・技術基盤研究会」を設置し、検討を開
始したところ。
【評価の視点】
評価にあたっては、次の4つの視点
から装備品等の取得改革の成果を検
証する。
①コスト抑制
②業務の効率化
③公正性・透明性の確保
④防衛生産・技術基盤の維持・育成
ライフサイクルコスト管理のメリット
ライフサイクルコスト管理のメリット
(装備品のライフサイクル)
開発着手 量産着手
▼
▼
構想
開発
量産
左記のようなライフサイクルコストの算定を行うことで、例えば、
「装備品Aの単価は量産段階では高いものの、維持運用段階以
降の経費も踏まえた累積コストは、装備品A´よりも安いため、装
備品Aの選択が効率的である」といった意思決定が可能となり、
費用対効果に優れた装備品が調達できる
運用・維持
廃棄
ライフサイクル全体に要するコスト
→ライフサイクルコスト(LCC)
従来の契約形態
一般的なPBL
契約内容
作業量に応じた対価を支払い
パフォーマンスに応じた対価を支払い
契約額
作業に要した額
(固定価格が原則。ただし(従来方式)>(PBL方式))
契約期間
原則として1年
複数年(~25年程度)
顧客と契約相手方
目的や情報を共有するパートナー
官民の関係
官の主な業務
企業側の主な業務
企業側のコスト削減の
インセンティブ
自律的に対応できない全ての業務
作業に要する額
達成すべき目標の管理
(自己完結性を追求)
(業務の効率的な役割分担を追求)
作業の遂行
パフォーマンス達成のための作業
(重整備等)
(業務管理・点検・在庫管理・部品調達・修理・重整備等)
なし
あり
(作業量に比例して売上は増加)
(作業量の増加は利益を減少)
企業側にペナルティが
課される場合
契約不履行・納期遅延時など
パフォーマンスの未達成時
企業が作業を行う場所
原則として自社工場
自社工場+部隊の整備拠点・補給処など
官民のコスト
―
官のコストは削減
民は売上減少・利益増加
従来の契約形態とPBLの契約
形態の比較
【総合的評価】
○ 厳しい財政事情、装備品等の高価格化、増加し続ける装備品等の維持整備経費などの状況を踏まえると、取得数量等の大幅な
増加は見込めず、費用対効果の点で優れた装備品等を取得するための方策をさらに検討していくことが必要。
○ そのためには、LCC管理の徹底・調達手法の改善・PBLの導入により、経費の節減、契約事務負担の低減、公正性・透明性の
確保等の装備品等取得に係る施策のさらなる推進が必要。また、このような装備品等を取り巻く厳しい環境においても、防衛生産・
技術基盤の維持・育成を図ることは、我が国の安全保障のために必須。このためには、「選択と集中」の考え方に基づき、安全保障
の観点から重点を置いて育成・維持すべき防衛生産・技術基盤の明確化を図り、「防衛生産・技術基盤戦略」を策定することが必要。
○ 加えて、諸外国で行われている防衛産業政策や諸外国の民間企業で活用されている先進的な知見、取り組みを積極的に取り入
れることも必要。特に民間企業の世界は日進月歩であり、民間における知見を継続的に取り入れ、官においても応用可能なものが
あれば、その適用を迅速に検討するなどの姿勢も必要。
○ 「装備品等取得の効率化」と「防衛生産・技術基盤の維持・育成に向けた取り組み」はいわば車の両輪であり、我が国の安全保
障を支える防衛力の整備におけるベースラインを形成することになる。これらの取り組みを着実に推進し、我が国の防衛に必要な
基盤を提供することが、今後とも求められる。
【政策等への反映の方向性】
(1)装備品等取得の効率化
① LCC算定要員の教育と拡充、組織横断的な協力関係による情報共有、そして過去の装備品等に関する各種データを収集・整理・蓄積してデータベースとして一
元的に管理することが必要。
② 調達の優先順位が高く、かつ大規模なまとめ買いによって大幅なコスト抑制効果が期待できる装備品等については、財政法によって制限されている国庫債務負
担行為の年限延長が必要であるなど、より効果的・効率的な調達手法の実現に向けて財政当局も交えた検討を行うことが必要。
また、インセンティブ契約制度については、提案件数の増加を目指し、インセンティブ提案の有効期間を現行の最大5年から延長、インセンティブ提案を採用した
案件について次回以降の契約は随意契約とするなど、これらの事項も含め現行制度の改善を検討。
③ PBLの導入に向けた契約面での課題については、具体的な問題点等について明確化した上で、必要に応じて契約制度研究会の枠組みを活用しつつ検討し、そ
の解決を図っていくことが必要。
また、PBLの実施に関しては、対象となる装備品等の本体及び構成品毎の可動率や故障率などを適切に把握・分析し、精度の高いコストパフォーマンスの分析
等を行うことが、当該装備品等を用いる任務の達成率向上に寄与するものと考えられることから、膨大なデータの収集・管理や分析に注力していくことが必要。
(2)防衛生産・技術基盤の維持・育成に向けた取組み
① 22大綱でも記述されているとおり、防衛関連企業にとっての予見可能性を高め、その収益リスクを抑制し、長期的な視点からの投資、研究開発、人材育成に寄
与し、効果的かつ効率的な防衛力の維持・整備を図るためにも「防衛生産・技術基盤戦略」の策定・公表が必要。従って、次期中期防衛力整備計画期間中(平成2
3年~27年度)の策定・公表を目途として作業を開始。
また、「防衛生産・技術基盤戦略」の中で示される中長期的なビジョンの策定やビジョンの実現に向けて取組みを進めていくためには、防衛生産・技術基盤の実
態を恒常的に把握することも重要。そのため、防衛生産・技術基盤の現状認識を目的とした「防衛生産・技術基盤白書(仮称)」を定期的に策定することを検討する
などして、関係省庁とも協力しつつ、現状の把握に努めることが重要。現状の把握のため、防衛生産・技術基盤研究会の枠組みで、防衛生産・技術基盤の実態調
査を行うこととしており、防衛産業の実態(企業データ等)、分野別の特性、強み・弱み(キーテクノロジー等)、装備品等の維持・整備における防衛関連企業の活用
状況等について、調査を実施する予定。
② 防衛生産・技術基盤に係る情報の調査・分析のためには、既存の体制を活用しつつ、人員の充実や実態把握のための体制の充実が不可欠。国内企業などを対
象とした防衛生産・技術基盤の実態調査に関しては、技術研究本部、装備施設本部等の防衛省の各機関が保有している技術資料、契約関連情報を一元的に集
約・分析してデータの整理が必要(23年度中に契約情報分析官(仮称)を設置予定)。
情報調査・蓄積・分析能力の拡充のため、防衛生産・技術基盤の調査・分析を担当する防衛省職員の在り方についても検討が必要。これらの業務は、一度情報
を収集すれば終わりではなく、継続的な情報収集や調査分析が必要な分野であり、体制の拡充に向けて必要な措置を講ずることが必要。外国企業などを対象とし
た国外防衛関連企業の実態調査に関しては、公刊資料等の恒常的な分析や現地への訪問調査を積極的に進め、情報の調査・分析・蓄積の恒常化を図っていくこ
とが必要。
なお、一部の取組については、平成22年12月の大臣指示を受けて、総合取得改革推進委員会の枠組みの下、更なる検討を推進しているところであり、平成23年6月を目途とし
て、その検討成果等の中間報告を行う予定。
【企画評価課の意見】
・22大綱において、「装備品の取得の一層の効率化」、「防衛生産・技術基盤の維持・育成」は「防衛力の能力発揮のための基盤」として明確に位置づけられるなど、動的防衛力の
構築のために取り組まなければならない課題。この重要なテーマについて、経緯と現状、その課題を整理するとともに、それに基づく今後の具体的方向性を明示したことは評価。
・現在、総合取得改革推進委員会の枠組のもと検討が進められているが、装備品の取得は、防衛力整備の視点を十分に踏まえた検討が必要不可欠であり、防衛力整備部門との連
携を十分に確保した上で検討が必要。
・装備品の取得改革は、防衛省だけでは成し得ないものだが、防衛装備品のユーザーたる防衛省がまずは方針を作成した上で、その実現のために関係省庁や企業に積極的に働き
かけていくことも必要。また、既にPBLは政府の公共サービス改革の検討対象となっているが、こうした政府全体の取り組みも、取得改革の推進のために活用していくことが必要。
・防衛生産・技術基盤の調査・分析機能については、今後の戦略の策定に当たり、特に将来の技術動向の把握が重要であり、体制強化に当たってはこの点に留意が必要。また、情
報収集のためには、改革の実績を有する関係国の国防当局との間で定期的な意見効果の実施など、関係を強化していくことが重要。
・取得改革を推進していくための体制については、内局、各幕、技本、装施本それぞれの役割を明確にした上で、最も効率的な体制を構築していくことが必要。
・平成23年度以降に多くの進展が期待されるため、平成23年度以降もこの問題について総合評価方式に関する評価を実施すべき。
平成22年度
総合評価
自衛隊の人的資源の効果的な活用
自衛隊の人的資源の効果的な活用
№
3
施策名
事業名
教育・訓練
多国間共同訓練について
評価時期
平成23年2月
【事業の概要】
○ 防衛省・自衛隊による多国間共同訓練への取り組みとして、これまで様々な訓練に参加。
○ アジア太平洋地域における多国間共同訓練は、平成12年度以降、それまで行っていた本来の目的である
戦闘を想定した訓練に加えて、PKO活動、災害救援、非戦闘員退避活動等への対応を取り入れた多国間で
の訓練の取り組みが始まっており、米国・タイ共催の地域紛争における平和執行活動、国連平和維持活動及
び人道支援活動に焦点をあてた多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」に参加。また、グローバルな問題である
大量破壊兵器等の拡散を阻止するため、参加国が共同してとり得る措置を検討する「拡散に対する安全保障
構想(PSI)訓練」に参加。
○ こうした状況に加え、ARF災害救援実動演習等の地域の協力枠組みによる新たなタイプの多国間共同訓
練が実施されるようになってきたことから、その対応について、既存の多国間共同訓練への対応を含め、種々
の要素を考慮しつつ、積極的かつ効果的な訓練参加(日本主催を含む)を検討することが必要。こうした多国
間共同訓練を取り巻く状況の変化を踏まえ、これまでの取組についてフォローアップを行うとともに、多国間共
同訓練に参加することの重要性について改めて検討し、問題点を把握し今後の政策に反映するもの。
担当部局
運用企画局運用支援課
拡散に対する安全保障構想(PSI)訓練
PSI海上阻止訓練 イメージ 図
PSI航空阻止訓練 イメージ 図
容疑船の捜 索・追尾
空港での 貨物検査
容疑機
容疑船
ARF災害救援実動演習
多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」
ARF(ASEAN地域フォーラム)
(26か国+EU)
ASEAN
多国間共同訓練(一例)
○ 拡散に対する安全保障構想(PSI)訓練
PSIとは、大量破壊兵器等の拡散を阻止するため、参加国が共同してとり得る措置を検討する構想であり、
2003年(平成15年)より始まり、これまで、PSI支持国(2010年(平成22年)12月現在98か国)は陸上、
海上、航空における大量破壊兵器等の輸送阻止に重点を置いた各種訓練を実施。
○ 多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」
「コブラ・ゴールド」は、米国・タイの二国間訓練として、1982年(昭和57年)から実施され、現在は地域紛
争における平和執行活動、国連平和維持活動及び人道支援活動に焦点を当てた多国間共同訓練として実施。
防衛省・自衛隊は、2005年(平成17年)から、国際平和協力活動に必要な各種能力の向上を図るとともに、
参加国間の相互理解の促進や信頼関係の強化のために参加し、2010年(平成22年)2月に実施された「コ
ブラ・ゴールド10」では、主催国である米国・タイに加えて、日本、シンガポール、インドネシア及び韓国が参加。
○ ARF災害救援実動演習
本演習は、第1回は米国・フィリピンの共催で2009年(平成21年)5月に実施された。「大型台風による大
規模な被害がフィリピン・ルソン島において発生し、フィリピン政府の要請を受けて、ARF各国が人道支援を提
供する」との想定に基づき、各国が人員や装備等をフィリピンに派遣し、海上における捜索救難訓練、医療活
動、建設活動、被災者の後送訓練等を行った。
本演習には、共催国である米国・フィリピンに加えて、インドネシア、シンガポール等ARF25か国+EUとと
もに、防衛省・自衛隊のほか外務省及び国際協力機構(JICA)が参加。
本演習を通じて、ARF参加国間の相互理解及び協力関係が更に進み、地域の災害対応能力が高まること
が期待されており、第2回のARF災害救援実動演習は本年3月に日本・インドネシアの共催により、インドネ
シア・マナドにて実施予定。
ブルネイ インドネシア マレーシア タイ
フィリピン シンガポール ベトナム ラオス
カンボジア ミャンマー
日本 韓国 中国 豪州 ニュージーランド インド
米国 ロシア カナダ EU モンゴル 北朝鮮
パキスタン 東ティモール バングラデシュ
スリランカ パプア・ニューギニア
国連PKOの指揮所演習
司令部における幕僚活動
国連PKOの実動訓練
パトロール(巡察)
医療活動
民生支援活動(医療)
医官による診察
給水(浄水)活動
海上における救難訓練
在外邦人等輸送訓練
在留邦人の航空機への誘導
【評価の目的・方法】
本施策については、平成20年度に評価を実施しているが、その際に、多国間共同訓練について、引き続き主体的・積極的に取り組むとしているが、今回はその後の多国間
共同訓練を取り巻く状況も踏まえ、平成20年度の評価のフォローアップを行うことにより今後の取り組みの資とするため、評価を行う必要がある。
多国間共同訓練への参加により、自衛隊の技量向上、関係国との相互理解・友好関係の増進及び積極的かつ効果的な訓練参加についてどのような成果をあげることができ
たのかを分析。
ア 平成20年度及び平成21年度の過去2年間で、自衛隊が多国間共同訓練にどれだけ参加し、どのような技量向上及び関係国との相互理解・友好関係の増進が得られたの
か、また、積極的かつ効果的な訓練参加を行っていたのかについて、過去の参加実績から分析。
イ 過去の参加実績に関する外務省等の関係省庁等の意見を聴取し、第3者の客観的な意見として、本評価書に反映。
ウ 防衛大綱の見直しを踏まえて、多国間共同訓練の在り方について評価書に反映。
【総合的評価】
【評価の視点】
評価にあたっては、次の4つの視
点から多国間共同訓練の成果を
検証する。
① 多国間共同訓練を通じた自衛
隊の技量向上
② 多国間共同訓練を通じた関係
国との相互理解・友好関係の増
進(防衛交流から防衛協力へ)
③ 非伝統的な安全保障分野にお
ける地域の対処能力の向上
④ 積極的かつ効果的な訓練参加
の効果(日本主催を含む)
○ 自衛隊の多国間共同訓練への参加は、自衛隊の各種技量向上(評価の視点①)による我が国の防衛力の維持・発展のみならず、
関係国との相互理解・友好関係(評価の視点②)の増進にも繋がるもの
○ 近年、国連平和維持活動や人道支援・災害救援、海賊対処等の非伝統的安全保障分野における多国間共同訓練(評価の視点③)
が増加。これらの多国間共同訓練を通じて、関係国と相互理解・友好関係(評価の視点②)の増進という点から、防衛交流から防衛協
力を行う段階への発展・深化に寄与するものとなっているところ(「コブラゴールドなど」)
○ さらに、新たなタイプの多国間共同訓練として、地域の対処能力の向上にも資する取り組みとして、平成21年5月には、ARFの枠組
みで初めて災害救援にかかる多国間実働演習が行われ、自衛隊は主催国フィリピンに次ぐ人員・装備品を派遣する等、本演習に積
極的に参加・貢献。第2回ARF災害救援実働演習は、我が国はインドネシアと共催で平成23年3月に実施する予定
○ 新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会の報告書、IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会議)における北澤防衛大臣の
スピーチ、さらには昨年12月に策定された「平成23年度以降の防衛計画の大綱」(以下「22大綱」)を踏まえると、防衛省・自衛隊が
ARF災害救援実働演習などへの多国間共同訓練の参加を通じて、非伝統的安全保障分野における地域の対処能力の向上に貢献し
ていくことが期待されているところ(評価の視点③、④)
○ また、ARF災害救援実働演習や他の多国間共同訓練等の参加した他の国の政府職員、日本政府の関係省庁の職員、防衛省・自
衛隊の職員の意見は、防衛省・自衛隊の積極的な参加について総じて好意的であり、その意義・重要性を認めるもの(評価の視点
④)
○ このため、評価の視点①から④を総合的に勘案して、今後の自衛隊の多国間共同訓練への更なる積極的な参加を可能にしていく
ための方策を検討することが必要
新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会による報告書「新たな時代における日本の安全
保障と防衛力の将来構想-『平和創造国家』を目指して-」(2010年8月)より抜粋
防衛当局は、地域における安全保障協力枠組に積極的に参加し、地域の平和と安定に貢献する役割を担うべきである。特に、
人道支援・災害救援、テロ対策、海上安全保障に関する多国間会議や各種の多国間共同訓練は、域内各国間の信頼醸成や
地域における対処能力の向上に有効であり、こうした非伝統的安全保障分野における具体的な協力の発展・深化をさらに促進
すべきである。この点で、地域的安全保障枠組であるARFが、その災害救援実動演習の実施に見られるように、具体的協力
の段階へ深化を始めていることに鑑み、日本もこうした協力に積極的に参加すべきである。(中略)
平和創造国家を目指す日本の防衛力は、国際社会に安定的な秩序を生み出す努力に積極的に関わらなければならない。ア
ジア太平洋地域においては、国際秩序の武力による現状変更や、グローバル・コモンズへの平等なアクセスを阻害するような
動きを許容しない意図を示すため、米軍やパートナー国の軍隊と連携し、平時からの常続的な警戒監視活動等をさらに充実さ
せるほか、多国間の共同訓練をより積極的に実施することとし、それに必要な体制を備える必要がある。
IISS「アジア安全保障会議」で
の北澤防衛大臣スピーチより抜
粋
自衛隊は潜水艦救難訓練、掃海訓練、捜
索救難訓練、PSI関連訓練などの各種訓練
を、アジア・太平洋地域の各国と実施してき
ています。(中略)海上自衛隊が実施してい
る各国との共同訓練は、相手国との信頼関
係の向上はもちろんのこと、自衛隊及び相
手国海軍の能力向上、運用上の協働という
大きな効果があります。
【政策等への反映の方向性】
(1)新たなタイプも含め多国間共同訓練への積極的かつ効果的(主体的)参加
非伝統的な安全保障分野における地域の対処能力の向上に資する新たなタイプの多国間共同訓練も含め
て、我が国の防衛、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化、グロバールな安全保障環境の改
善のための重要なツールとして、様々な多国間共同訓練に積極的かつ主体的に参加していくことが必要
(2)国際平和協力活動等に資する多国間共同訓練に積極的に参加
国際平和協力活動が自衛隊の本来任務と位置づけられ、22大綱においても積極的に取り組む方針が確認
されていることから、PKO活動や国際緊急援助活動に資する多国間共同訓練に更なる積極的な参加が必
要
(3)多国間共同訓練に取り組むための体制の充実
平成23年3月に実施予定の第2回ARF災害救援実働演習は、我が国がインドネシアと共催で実施すること
としており、そのため、インドネシア政府との合同会議、参加国政府との調整、外務省及び国際協力機構(JI
CA)との調整会議など多岐にわたる業務を実施。今後、我が国として同様の訓練につき、その主催も含めて
積極的に取り組んでいくためには、適切な予算の確保や企画・調整のための人員の確保などの体制の強化
が必要
多国間共同訓練に参加した隊員の声より
抜粋(諸永3等陸佐)
私は、昨年5月、フィリピン共和国ルソン島で開
催されたASEAN地域フォーラム災害救援実動演
習(ARF-VDR)に陸上自衛隊から参加した部隊
の企画・連絡調整担当として参加しました。(中略)
今回の経験を通じて、文化や風習の異なる各国の
軍隊や民間組織が協力して演習を計画・実施する
一連のプロセスの積み上げが、関係各国との防衛
協力を推し進めることにつながることを実感すると
ともに、
日本を代表し
て活動するこ
との誇りを肌
で感じることが
できました。
平成22年度日本の防衛より抜粋
【企画評価課の意見】
・ 新たなタイプのものも含め多国間共同訓練の参加の意義・重要性は認められるが、今後の参加検討に当たって、何らかの基準、方針が必要と思料
・ 多国間共同訓練は、安全保障協力のパートナー国との間の協力強化のための有効なツールとして活用できるものであり、政策部門との緊密に連携の上、他国間関係の
全般的な方針の下、多国間共同訓練に取り組んでいくことが必要
・ 特に、PSIやARF災害救援実働演習などの非伝統的な安全保障分野における多国間共同訓練は、外交・法執行部門も含めた国全体としての対応が求められることから、
外務省、海上保安庁や国際協力機構(JICA)等との関係で、防衛省・自衛隊が果たすべき役割を明確にした上で、一体的な検討体制を構築していくことが必要。また、そう
した体制の下に実施した多国間共同訓練の成果を実際の業務要領や業務実施体制にフィードバックさせていくことが必要
・ 体制の強化については、非伝統的な安全保障分野の多国間共同訓練への参加の機会が増大していくことを踏まえると、専門知識と語学力を兼ね備える総合調整能力を
持った人材の確保も必要
・ なお、評価の実施方法については、定量的な評価が難しい中、多国間共同訓練の参加国職員、我が国の政府職員からの意見聴取等により評価を実施し、その客観性を
担保していることは評価できるもの
Fly UP