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曲技飛行競技審査要領 JAC 日本エアロバティッククラブ 2013 年版 IAC 競技ルールに準拠 2013.6.29 無断複製及び無断使用禁止 著作権は以下の個人に帰属します 高木 雄一 4 章 競技会運営手順 4.1 場内放送設備の使用 競技会の場内放送設備に関して、以下に記述する制限があります。 4.1.1 ジャッジラインでは場内放送の音声がこてはなりません。例外として、4 ミニット フリープログラムの飛行で用いられる音楽はジャッジラインでも許可されます。 4.1.2 フィギュアに関する評価や意見がジャッジラインに対して放送されてはいけません。 4.1.3 競技者や競技役員の尊厳を傷つける発言が放送されてはいけません。 4.2 競技者の失格 4.2.1 競技規則や航空法規、安全維持に関する規則などに違反する行為は、その競技会に おいて競技者の参加を失格とする場合があります。 4.2.2 以下に記述する規則や禁止行為に違反した競技者は、陪審員の判断によって失格と なる場合があります。陪審員はこの件に関し、競技会責任者、安全委員、チーフジャッジ、 ジャッジ、整備技術担当者らの意見を基に判断を行います。すでに飛行を行った競技者の 失格には、7.5.4.4 に基づいて適切に処置されます。 1. スポーツマンシップに反する行為。 2. パイロットブリーフィング(以下ブリーフィング)に出席せずに競技飛行を行うこと。 3. 陪審員が認めた飛行以外の、競技会初日のブリーフィング終了後の飛行。 4. チーフジャッジから事前連絡を受けたものを除く、競技者の無線の使用。 5. アンリミテッドカテゴリーにおける 4 ミニットフリープログラムを除く、競技飛行中の 発煙装置の使用。 6. 全ての競技者及びセーフティーパイロットは、型式承認と定期検査を受けたパラシュー トを着用するか、バリスティックリカバリーシステムを装備した航空機で飛行すること。 1 7. 機械的な原因から、耐空性に適さないと判断された航空機の飛行。 8. 航空機の飛行規定に禁止された飛行。 9. 飛行規定に記載された、または航空局から特別に免除された燃料とエンジンオイルの搭 載量を下回る飛行。 10. トラフィックパターン内の違法行為、予定外の曲技飛行、危険な状況を引き起こし、 該当する飛行団体の品格を落とすような航空機の危険な操作や、そのように判断される操 作。このような行為が見られた場合は、その競技者は航空機の競技会会場からの移動を除 いて、以降の競技飛行を禁止されます。 11. 練習及び競技飛行が行われている時間内は、競技会会場内に酒類を持込むことを禁止 します。競技会関係者による時間内の飲酒はアルコール量に関わらず厳しく禁止されます。 違反があった場合は後の競技会の開催に影響する場合もあります。 12. 競技会に参加予定の競技者は、競技開始 24 時間以内にスクーバダイビングを行って はいけません。 13. 競技者の突然の健康状態の悪化から、以降の競技飛行を安全に行えないと判断された 場合は、飛行を即時中止します。 14. 競技者の薬物及び酒類の使用は政令違反の対象となります。 15. ジャッジライン、バウンダリージャッジ、デッドラインジャッジなどの範囲内に許可 なく立ち入ること。 16. 競技会関係書類に虚偽の情報を提供すること、内容に関わらず、第三者に対し誤った 情報を故意に与えること、不正、迷惑、威嚇などの行為。 17. 競技会参加者による、アンノウンフィギュアの練習飛行。ただし、これはアンノウン の飛行前に、通常の競技飛行を妨げるものではありません。 18. ジャッジの再承認を得ることなくフリーシークエンスの書式に変更を加えること。ま たは、ジャッジに関係書類への署名を強要すること。 2 19. 競技中のエアロバティックボックス(ホットボックス)に許可なく進入した場合、そ の飛行を無効とします。 20. リコールの指示に従わない場合。 21. 競技会関係者や他の競技者を収賄すること、または賄賂を受けること。 4.2.3 ジャッジの過半数が競技者の競技飛行の安全性に疑問があると認識すれば、チーフ ジャッジの権限で競技会の出場資格を取り消すことがあります。 4.3 競技不適格の判断 4.3.1 競技者自身が心身の状態から安全に飛行することができないと判断したときは、ス ターターにその旨を伝える義務があります。 4.3.2 陪審員による以降の競技飛行や再競技飛行の可否の判断には、医療担当者による健 康状態の確認が必要となります。 4.3.3 陪審員は競技者の健康状態の判断に医療担当者の診断と意見を尊重します。 4.3.4 陪審員は競技者の再飛行、または競技会への復帰に関する最終的な判断の権限を有 します。 4.4 競技の進行予定 4.4.1 競技の進行予定は競技会責任者により決定され、公表されます。 4.4.2 競技の進行予定の変更には陪審員の承認が必要です。また、関係者には十分な時間 的余裕を持って公表、伝達されなければなりません。 4.4.3 予定された競技飛行数が達成できない場合は、陪審員の承認を得た後に、競技会責 任者は競技飛行数を制限することがあります。全てのカテゴリーに公平に対処することが 優先となります。 3 4.5 飛行順序の判断 4.5.1 それぞれのカテゴリー内の競技者の飛行順序は、競技会責任者または責任者が指名 した担当者、または認可された方法を以って決定されます。 4.5.2 複数の競技者が同一の航空機を使用したり、または競技飛行直前の活動など時間的 制限の理由があれば、飛行順序を変更することがあります。 4.5.3 スターターまたはチーフジャッジの判断により、必要に応じ飛行順序を変更するこ とがあります。 4.6 ブリーフィング 全ての競技会関係者と競技者は競技開始前のブリーフィングへの参加が義務付けられてい ます。時間と場所の指定は前持って通知されます。 4.6.1 ブリーフィングは競技会責任者やチーフジャッジが主催します。ブリーフィングに は以下の内容が含まれます。 1. 競技者の出席の確認と飛行順序の発表 a. 出席確認は競技者本人が行います。確認ができない場合は欠席として、終了後 に個別に特別ブリーフィングを設け、競技者には以下に示すペナルティーが課され ます。 特別ブリーフィング代 5,000円 b. 特別ブリーフィング代が競技者の飛行の時点で支払われない場合は、以下のペ ナルティーが競技者に課されます。 プライマリー 10点 スポーツマン 25点 インターミディエイト 50点 アドバンスド 75点 アンリミテッド 100点 4 c. ブリーフィングの欠席が競技者の過失でないときは、陪審員の権限でペナルテ ィーを撤回することができます。これはチーフジャッジにより課されたペナルティ ーについての抗議を聴取するために召集された聴聞会において決定されます。 2. ジャッジ、陪審員、スターター、その他の競技会関係者の紹介。 3. 航空局代表者の紹介。 4. エアロバティックボックス周辺の予報、風向風速の情報など。 5. ブリーフィング時のオフィシャルウィンドディレクションの設定。チーフジャッジの判 断でオフィシャルウィンドディレクションが変更された場合は、競技者はスターターから の飛行前の最終ブリーフィングで連絡されます。(4.9.3、4.10.1参照) 6. エアロバティックボックスとデッドラインの詳細。 7. 競技の開始方法。 a. デッドプロップエリアの場所。 b. 地上移動、離陸、空中待機の方法。 c. 騒音を避ける地域と騒音対策の説明。 d. 競技者へのトラフィックパターンの指定。 e. 競技者の判断による飛行中止の方法。 f. 機材故障による退避エリア。 8. 無線交信と周波数の説明。無線交信を唯一の交信手段とする場合は、いかなる無線機の 故障も、飛行の即時中止と着陸が義務付けられます。 9. リコールシグナルの説明。この説明には、リコール時の交信手順と、他の航空機の回避 方法の種類が含まれます。リコールシグナルに用いる発煙装置の色と場所を指定します。 5 10. 曳航機による曳航と離脱の方法。 11. セーフティーチェックマニューバーの場所。 12. 競技会の開催時間。 13. ローラインチェックやウォームアップフィギュアの飛行方法の指示。 14. ウォームアップパイロットの指名。 15. ジャッジラインへの立ち入りを許可された人員の指名。 16. 必要に応じて、フィギュアとプレゼンテーションの判定基準と採点方法の確認。 4.7 バウンダリージャッジ及びデッドラインジャッジへのブリーフィング 4.7.1 チーフジャッジまたはその代理は、競技開始の適切な時点で、バウンダリージャッ ジ及びデッドラインジャッジの配置の指示をします。ブリーフィングには以下の指示が含 まれます。 1. アレスティ記号の解釈とフィギュアの開始と終了の判断。 2. サイティングデバイスを使用しての、エアロバティックボックス周辺のバウンダリー及 びデッドラインからの逸脱と進入の判定。 3. バウンダリージャッジがバウンダリーの逸脱と進入を確認したときの無線交信の方法。 4. 全てのバウンダリー侵害の記録の義務と、競技終了後の記録のチーフジャッジへの提出。 5. 競技に参加していない一般航空機のエアロバティックボックスへの進入、または接近が 見られる場合のチーフジャッジへの連絡。 6 4.8 ジャッジブリーフィング 4.8.1 ジャッジブリーフィングは競技会の本部、またはジャッジラインで行われます。ジ ャッジブリーフィングでは、参加する全てのジャッジ、アシスタントジャッジ、レコーダ ーの出席が義務付けられています。 4.8.2 ジャッジブリーフィングはそのカテゴリーの競技を担当するチーフジャッジによっ て行われ、以下が含まれます。 1. アシスタントジャッジの任務。 2. レコーダーの任務。 3. 疑問のある場合のジャッジによる伝達方法。 4. 安全に関する問題を認識した場合の、チーフジャッジへの明確かつ迅速な報告義務。 5. 判定と採点の範囲。 6. フィギュアの判定基準。 7. プレゼンテーションの判定基準。 8. 高度制限を逸脱した場合のA用紙への記録方法。 9. 0点の記録方法。 10. 臨時会議の手段。 11. フィギュアを視認できず、判定不能な場合のアベレージの判定。 12. 終了時のジャッジブリーフィングの時間と場所の通達。 13. ジャッジラインでは、携帯電話やタブレット、競技進行に必要な無線機を除く通信機 器の電源を切るまたは呼び出し音を切ること。休憩中やチーフジャッジに認められた場合 を除き、携帯電話の使用、E メールの作成や閲覧は一切禁止。 7 4.9 スターティングライン 4.9.1 競技者は競技飛行開始前の適切な時に、航空機と共にスターティングラインにいな ければなりません。これは競技者及びスターターの両者が飛行前の確認義務を行えること、 そして競技の円滑な進行を保つためです。 4.9.2 スターターからの許可を受けた後、競技者は航空機をスターティングラインに移動 し、シートベルト、ショルダーハーネス、及びパラシュートが安全に装備されていること の検査を受けます。 4.9.3 スターターは競技者に対し、オフィシャルウィンドディレクションを通達します。 スターターまたはランウェイフラッグマンからの指示が競技への出発許可となります。 4.9.4 競技者が適切な出発手順を遂行しない場合は失格処分となることがあります。 4.9.5 競技者が出発時間にスターティングポジションに現れない場合は、4.6.1.1.bに基い てペナルティが与えられ、チーフジャッジから新たな順番が指示されます。 4.9.6 4.9.5により与えられたペナルティが競技者の責任の範囲外であると認められれば、 陪審員の権限でペナルティを取り消すことができます。このようなペナルティポイントに 関する異議は、陪審員を招集しての会議で再考されます。 4.9.7 スターティングラインでは消火器が用意されていなくてはなりません。 4.10 オフィシャルウィンド 4.10.1 B 用紙または C 用紙の使用の判断 ジャッジに対するオフィシャルウィンドディレクション(右から左か、またはその逆か) はチーフジャッジによって決定されます。さらに、オフィシャルウィンドディレクション は飛行の判定に用いる用紙が B 用紙か C 用紙かを決定します。オフィシャルウィンドディ レクションを競技中に変更するときは、少なくとも 15 分前に残る全ての競技者に通達され ます。 8 4.11 エアロバティックボックス(競技空域) 4.11.1 バウンダリー(平面上の境界線) 競技飛行は主となる X 軸と Y 軸の交差する点を中心とする、マーカーにより明確に表示さ れた 1,000m(約 3,281ft)四方の空域を飛行して行われます。高度の上限と下限はカテゴリ ーにより異なります。(表 4.11.3.1、表 4.11.3.2) ジャッジは Y 軸の延長線上の、ボック スから 150m(約 492ft)から 250m(約 820ft)の間に配置されます。(図 4.11.1.1) 安全維持や騒音の低減を目的に、デッドラインがボックスのバウンダリーの一部として存 在することもあれば、また存在しないこともあります。もしデッドラインが設定されれば、 バウンダリーから最低 152m(500ft)の距離を保ち、競技の詳細事項に表示されます。バウ ンダリージャッジはバウンダリーから 50m (約 164ft)のバッファーゾーンを置いて位置し、 実際にはここがバウンダリー侵害のペナルティーを受ける境界線となります。全ての競技 会において、エアロバティックボックスは適切な着陸可能な場所を含むものとします。 9 4.11.2 ボックス軸 4 ミニットフリープログラムを除き、各フィギュアの開始と終了時の航空機の縦軸(機首方 向)は、常にボックスの X 軸または Y 軸に平行でなければなりません。軸からの逸脱がジ ャッジによって確認できれば、5 度につき 1 点の減点がそのフィギュアに与えられます。 X 軸はオフィシャルウィンドに平行に設けられ、シークエンスの大部分のフィギュアは、X 軸に沿ってアップウィンドかダウンウィンドで行われます。X 軸に沿って開始、そして終了 するフィギュアは、B 用紙または C 用紙に描かれた通りに、アップウィンドまたはダウン ウィンドの方向で行われます。 Y 軸は X 軸に対して直角に交わる軸で、飛行に方向性はありません。例えば、X 軸から Y 軸に移行する場合は、どちら側に飛行するかは競技者の自由です。ただし、Y 軸から X 軸 に再び戻るときは、シークエンスに描かれた通りに、アップウィンドまたはダウンウィン ドの方向に飛行することと規定されています。 フィギュアの開始と終了のどちらもが Y 軸に沿って行われる場合は、使用されている B 用 紙または C 用紙に描かれた通りに、終了時の方向は開始と同方向か、または反対方向で終 了するかのどちらかです。また、このようなフィギュアにおいて、フィギュア内に X 軸方 向のラインやパーシャルループがある場合は、その X 軸方向の部分は使用されている B 用 紙または C 用紙に描かれたように飛行する必要があります。ただし、この判定基準はファ ミリー2、5、6 には適用されません。 X 軸と Y 軸の飛行と判定の詳しい説明については、6.13.5 と 7.3.1.4 と 7.3.1.5 を参照して ください。 4.11.3 高度制限 表 4.11.3.1 パワーの高度制限 カテゴリー 上限 下限 プライマリー 3,500ft AGL 1,500ft AGL スポーツマン 3,500ft AGL 1,500ft AGL インターミディエイト 3,500ft AGL 1,200ft AGL アドバンスド 3,609ft (1,100m) AGL 656ft (200m) AGL アンリミテッド 3,280ft (1,000m) AGL 328ft (100m) AGL 10 表 4.11.3.2 グライダーの高度制限 カテゴリー 上限 下限 スポーツマン 4,000ft AGL 1,500ft AGL インターミディエイト 4,000ft AGL 1,200ft AGL アドバンスド 3,937ft (1,200m) AGL 656ft (200m) AGL アンリミテッド 3,937ft (1,200m) AGL 656ft (200m) AGL 4.12 デッドライン侵害 4.12.1 デッドラインの有無は競技会によって異なります。競技会の観客への安全維持がデ ッドラインの存在意義であり、競技会責任者からの指示、または関係機関から発行される 許可書に記述されます。 4.12.2 デッドラインを交差して飛行したフィギュア、またはフィギュアの一部については 0 点が与えられます。加えて、バウンダリー侵害のペナルティーも追加され、これらのペナ ルティーはチーフジャッジ席で記録されます。 4.13 ホットボックスシグナル 4.13.1 いかなる時も、エアロバティックボックスは常に管理下に置かれていなくてはなり ません。単にボックスへの進入を競技者へ許可するだけでなく、緊急時に伝達する、競技 者へのリコールの代替方法も準備しておくことが必要です。 無線交信をエアロバティックボックスを管理する第一の手段とし、リコールもこれをもっ て行われるものとします。 4.13.2 全ての競技者は受信及び送信を指定された VHF の周波数で行われなくてはなりま せん。送信または受信のどちらかに関わらず、いかなる無線機器の故障も、4.13.3 に則っ て対処されます。 4.13.3 無線交信はエアロバティックボックスへの進入を管理する唯一の手段とします。ブ リーフィングの確認事項の1つとして、無線機器の故障がエアロバティックボックスの進 入前に発生した場合は、競技者はエアロバティックボックスの外側に位置しつつ、速やか に着陸することを伝えられます。 11 4.14 リコールシグナル 4.14.1 リコールシグナルは、ブリーフィング時に伝えられた周波数を用いて、チーフジャ ッジにより無線交信にて行われるものとします。 4.14.2 リコールの方法は、ブリーフィングにて説明されます。 4.14.3 万一無線機器の故障があった場合は、リコールシグナルはチーフジャッジが用意す る煙幕を用いて行われます。煙幕の色や種類については、ブリーフィングで伝えられます。 4.14.4 リコールとは安全を維持するために、競技会において最も重要な行動です。発令さ れれば、競技者は周囲を警戒し、競技者の生命と航空機の安全のために迅速な対処が求め られます。リコールの意味に関わらず、競技者は直ちに飛行を中止し、周囲を警戒しなが ら速やかに着陸してください。 4.15 任意のセーフティチェック 4.15.1 シートベルトの再確認と、燃料及びエンジンオイルの背面飛行系統の作動確認を目 的に、競技飛行の開始直前に競技者の任意でセーフティーチェックが認められます。セー フティーチェックは通常飛行からの 1/2 ロールを 2 回行い、必要最小限の背面飛行を用いて 確認します。 4.15.2 セーフティーチェックはブリーフィングで指定された場所で行われ、またエアロバ ティックボックスへの進入をチーフジャッジより許可された後のみとします。セーフティ ーチェックがエアロバティックボックスへの進入が許可される以前、または指定された場 所以外で行われたり、または許可された 2 回の 1/2 ロール以外の曲技飛行を行った場合は、 インタラプションのペナルティが与えられます。 4.16 シグナルの種類 4.16.1 ウィングディップシグナル 1. ジャッジへのシグナルは、主翼を明確に振って行うウィングディップシグナルが基本で、 望ましいものは 45 度またはそれ以上のバンクアングルでのシグナルを 3 回繰り返すもので す。しかし、この方法から外れたとしても、チーフジャッジに対するシグナルが明確であ ればペナルティは与えられません。 12 2. ウィングディップシグナルは水平飛行、上昇または下降のいずれかで、エアロバティッ クボックスの内側または外側で行います。もし、フィギュアが背面飛行から開始されるも のであれば、シグナルも同様に背面飛行からとし、競技者は 1/2 ロールのみを用いて飛行姿 勢を背面飛行に変化してから行います。 3. チーフジャッジの指示による中断以外のインターラプションで、シグナルが不適切だっ たり、シグナルを出さずに中断した場合、チーフジャッジはそれぞれの不適切な中断にプ ログラムインタラプションペナルティを 1 つ追加します。1 回のインタラプション行為につ き与えるペナルティは最大 2 ペナルティまでです。例えば、シグナルの不適切な使用を伴 う中断では、実際に行った中断の分と、不適切なシグナルの使用の分で、合計 2 つのイン タラプションペナルティを与えます。 4.16.2 シークエンスの開始と終了 1. 競技開始の準備が整ったことを、競技者は上の 4.16.1 に説明したウィングディップシ グナルを用いて示します。競技者がこのシグナルを示し、しかしフィギュアの飛行を行わ ずにボックスを飛行した場合はペナルティは与えません。競技者は再び競技開始の準備が 整い次第、4.16.1 に説明したシグナルを新たに行います。 2. 競技者は競技を終了し、ボックスを離れる意思を 3 回のウィングディップシグナルで示 します。プログラムが背面飛行で終了した場合、競技者は背面飛行から 1/2 ロールを用いて 通常飛行に戻した後にシグナルを行うことも許可されます。また、プログラム終了時のシ グナルの欠如があっても、競技者にペナルティは与えられません。 4.16.3 エクスプリシト インタラプションと競技飛行の再開 エクスプリシト インタラプションとは、競技者の意思でプログラムを中断する行為を指 します。 1. エクスプリシト インタラプションは、4.16.1 に示されるウィングディップシグナルで 行われます。もし、プログラムのインタラプションを背面飛行の状態で行われる場合は、 競技者は背面飛行から 1/2 ロールを用いて通常飛行に戻した後にシグナルを行ってもかま いません。 2. エクスプリシト インタラプションにてプログラムを中断した後のプログラムの再開 は、4.16.1 のウイングディップシグナルで知らせます。 13 a. プログラムの再開するフィギュアは、インタラプションを行ったフィギュアの 1 つ前か、インタラプション時に飛行中だったフィギュア、またはインタラプショ ンを行ったフィギュアの次からのいずれからとなります。 b. プログラムの再開がこれらのいずれからでもない場合は、プログラム インタ ラプションに関するペナルティにさらに 1 ペナルティ追加されます。 3. ジャッジはインタラプションを行ったフィギュアの次から判定を再開します。 4. Y 軸方向で行ったインタラプションは Y 軸のどちらの方向からでも再開できます。 5. インタラプションによるペナルティは、チーフジャッジまたはアシスタントチーフジャ ッジによって記録、管理され、適切なペナルティが与えられます。1 回のプログラムインタ ラプションに与えられるペナルティは最大 2 つまでです。例えば、シグナルの不適切な使 用を伴うインタラプションがあれば、実際に行ったインタラプションと、不適切なシーク エンスの再開の、合計 2 つのインタラプションペナルティを与えます。 6. グライダーのインタラプション中に、サーマリングを利用しての高度の獲得が故意に行 われた場合の飛行は 0 点とされます。 4.16.4 インプリシト インタラプションと競技飛行の再開 インプリシト プログラム インタラプションとは、その行為自体がインタラプションと 同じ意味を持つものを指し、以下が該当します。1 つでも該当する行為があれば、インタラ プションを示すシグナルの有無に関わらず、インプリシト インタラプションとしてチー フジャッジよりインタラプションペナルティが与えられます。競技再開を示すウィングデ ィップシグナルは強制されません。 ただし、旋回や 1/2 ロールなど、1 及び 2 に該当するインプリシト インタラプションがフ ィギュア間で行われたとしても、 フィギュアの追加ではないため 0 点とは判断されません。 (7.3.1.2 参照) 1. フィギュア間で飛行方向の修正のために、90 度、またはそれ以上の旋回を行うこと。 2. フィギュア間で姿勢の修正のために、1/2 ロールを用いて、通常飛行から背面飛行、ま たは背面飛行から通常飛行へ飛行の変更を行うこと。 14 3. フィギュア間またはフィギュアにおいて、上昇による高度の獲得が明らかであるもの。 もしこの行為が不明瞭であれば、インタラプションペナルティは与えられません。 4.17 高度制限、バウンダリー、インタラプションに関するペナルティー 表 4.17.1 パワー カテゴリー プライマリー スポーツマン インター アドバンスド アンリミテッ ミディエイト バウンダリー ド 無し 5 10 20 30 5 5 15 50 90 低高度制限 0 0 60 120 150 侵害(LOW) プログラム プログラム フィギュア毎 フィギュア毎 フィギュア毎 全体 全体 (1-200ft) (1-328ft) (1-164ft) (1-200ft) (1-200ft) 低高度制限 0 0 0 0 0 侵害 プログラム プログラム プログラム プログラム プログラム (LOW-LOW) 全体 全体 全体 全体 全体 (200ft 超) (200ft 超) (200ft 超) (328ft 超) (164ft 超) 5 5 10 25 30 侵害 インタラプシ ョン 高高度 制限侵害 表 4.17.2 グライダー カテゴリー スポーツマン インター アドバンスド アンリミテッド ミディエイト バウンダリー侵害 5 10 15 20 インタラプション 5 15 30 70 低高度制限侵害 0 60 70 100 (LOW) プログラム全体 フィギュア毎 フィギュア毎 フィギュア毎 (1-200ft) (1-200ft) (1-328ft) (1-328ft) 低高度制限侵害 0 0 0 0 (LOW-LOW) プログラム全体 プログラム全体 プログラム全体 プログラム全体 (200ft 超) (200ft 超) (328ft 超) (328ft 超) 15 4.17.1 プライマリーカテゴリーではバウンダリー侵害によるペナルティーは与えられま せん。しかし、シークエンスの飛行中の 1,500ft AGL の最低高度制限侵害は該当するプログ ラムの飛行は 0 点となります。 4.17.2 最低高度制限の侵害の認定は過半数のジャッジによる判定によって行われます。そ の場合、ジャッジはレコーダーに侵害のあった個々のフィギュアの侵害について A 用紙に 明確に記載することを伝えます。表 4.17.1 及び表 4.17.2 の規定に従い、「LOW」または 「LOW-LOW」と記載することが一般的です。 4.17.3 バウンダリー侵害はバウンダリージャッジが判定し記録、その都度無線を用いてチ ーフジャッジに伝えられます。 1. バウンダリー侵害の判定にはサイティングディバイスを用い、航空機全体がボックス外 部に逸脱することで判定されます。それぞれのフィギュアに与えられるバウンダリー侵害 のペナルティは 1 つのみです。 2. ボックスの外部で飛行したそれぞれのフィギュアにはペナルティーが与えられます。 4.18 競技機の機械的不具合について 4.18.1 競技機の機械的不具合が飛行開始前に発見された場合は、競技者は直ちにスタータ ーに報告し、整備技術担当者の検査があるまで競技機と共に待機します。 操縦席内の所持品の落下を含む、機械的な不具合が競技中に起きた場合は、競技者は競技 飛行を中止し着陸します。可能であれば隔離区域へ移動し、スターターまたは整備技術担 当者が到着するまで競技機と共に待機します。 該当するプログラムの飛行の終了前に、競技機の修理が完了するか、または代替競技機の 準備があれば、チーフジャッジの許可により再飛行が可能です。 4.18.2 競技飛行の中断が機械的な不具合によるもので、競技者の責任外であると整備技術 担当者から判断された場合は、競技者はペナルティーを受けることなく再飛行を行うこと ができます。この判断に対して異議の申し立ては認められません。再飛行の飛行順序の調 整はチーフジャッジに委ねられます。しかしながら、競技飛行の中断をした競技者は、不 具合が解決され次第、可能な限り早い時期の再飛行が求められます。 16 該当するプログラムの終了前に不具合を解決することができない場合は、チーフジャッジ の許可次第で次のプログラム中に 2 回の飛行を行うことで埋め合わせをすることができま す。 4.18.3 整備技術担当者が競技飛行の中断が機械的な不具合によるものではないこと、また は問題が競技者の責任によるものと判断されれば、競技者はインタラプションペナルティ ーを受けた上で再飛行を許可されます。インタラプションがフィギュアの飛行中に行われ た場合はそのフィギュアについては 0 点が与えられます。 再飛行では、競技者はシークエンスの最初から行いますが、判定は問題が発生したフィギ ュアからとなります。しかし、飛行中に行われたインタラプションは、判定の再開となる フィギュアの前後に無関係に通常通りに取り扱われ、ペナルティが与えられます。 4.19 気象条件 4.19.1 曲技飛行の実施に関する最低気象条件は、競技空域に与えられた許可に基づくもの とします。 4.19.2 雲からの最低限の距離を保ちつつ、少なくともパワーは 3,500ft AGL、グライダー は 4,000ft AGL までの高度を得られる状況が理想的です。 4.19.3 陪審員の判断による場合を除き、風速が 20KTS を超える状況では競技飛行を行わ ないことがあります。 4.19.4 陪審員の判断による場合を除き、降水が視認できる状況では競技飛行を行わないこ とがあります。グライダーの競技中はボックス内の降水があってはいけません。 4.19.5 上の 4.19.2 に示す気象条件が得られないときは、陪審員の承認と通達の後、飛行 中のオプショナルブレイクを、インタラプションペナルティを受けることなく行うことが 認められます。このブレイクにより、競技者は高度と場所を再調整することができ、競技 飛行の続行が可能となります。 陪審員の判断によってオプショナルブレイクが認められるときは: 1. 競技飛行の開始の少なくとも 10 分前には競技者に対してオプショナルブレイクの使用 が可能との通達があること。 17 2. プログラムの飛行中、競技者は 1 回のオプショナルブレイクをペナルティを受けること なく行うことができる。B/C 用紙に記載されたオプショナルブレイクの位置は無視される。 3. チーフジャッジは競技者によって行われた全てのインタラプションをペナルティ用紙 に記録する。最初のインタラプションはオプショナルブレイクとして競技者にペナルティ は与えられず、続いて行われたインタラプションはペナルティとして通常通りに扱われる。 4. オプショナルブレイク中に行った着陸はブレイクとしては認められない。グライダーに ついては 4.19.6 を参照すること。 5. 4.19.2 よりも気象条件が改善されたときは、陪審員はオプショナルブレイクの使用許可 を解除することがある。 競技飛行の少なくとも 10 分前に該当する競技者に対して通達され、 以降はブレイクにはペナルティが与えられる。 4.19.6 グライダーにおける雲高が 2,500ft AGL を超え、4,000ft AGL 未満であれば、陪審 員はプログラムの短縮を許可することがあります。判定されるフィギュアはブリーフィン グにて通達されます。フリープログラム中に雲高が原因でインタラプションがあった場合 は、競技者の選択した時点を隔てて 2 つに分けて飛行されます。 4.20 気象条件の悪化 4.20.1 競技者は気象条件の悪化を理由に競技飛行を棄権することができます。これは競技 開始前に限らず、競技者は離陸前または飛行中の、いかなる時でも中止することができま す。 4.20.2 競技飛行の棄権または中止の後、競技者は地上または空中での待機、または着陸の いずれも許されます。状況に関わらず、競技者は即座にチーフジャッジにその旨を連絡し てください。競技者が着陸した場合は、スターターまたはブリーフィング時に指示された 係員を通し、チーフジャッジと連絡を取ります。 4.20.3 気象条件の悪化が競技飛行の棄権または中止の理由に適切なものであるかは、判定 するジャッジの多数決によって判定されます。 18 4.20.4 1. ジャッジが競技飛行の棄権または中止の理由が適切なものであると判定すれば、ペナル ティなしに再飛行が許されます。チーフジャッジは競技者に対し、可能な限り早い飛行順 序を与えます。競技者はシークエンスの最初のフィギュアからの飛行を行いますが、判定 は飛行していない、または飛行を完了していないフィギュアからとなります。 例えば、競技者がハンマーヘッドのバーティカルラインで競技を中断した場合は、再飛行 での最初の判定はハンマーヘッドからです。しかし、再飛行のいかなる時点のインタラプ ションも、判定開始のフィギュアの前後に関わらず、通常通りに取り扱われます。 2. ジャッジが競技飛行の中止の理由が適切なものと判定すれば、空中待機する競技者に対 しペナルティなしに競技飛行の続行が許されます。競技者は飛行していない、または飛行 を完了していないフィギュアから、または飛行を完了しているインタラプション直前の最 後のフィギュアからの飛行となります。この場合は上の 1 に例にしたように、判定は飛行 していない、または飛行を完了していないフィギュアからとなります。 3. ジャッジが競技飛行の棄権または中止の理由が適切でないと判定すれば、競技者に対し インタラプションペナルティを与えた上で、競技飛行を行うことが許されます。これはジ ャッジが判定する時点で、競技者が地上かまたは空中待機しているか、上の 1 または 2 の どちらかによる判定となります。 もし競技飛行がフィギュアの飛行中に中断された場合は、そのフィギュアには 0 点が与え られます。再飛行ではシークエンスの最初から行い、判定は前飛行で中断されたフィギュ アの直後から行われます。再飛行中のインタラプションペナルティは判定を開始するフィ ギュアの前後に関わらず規定通りに取り扱います。 4.20.5 雲や太陽との位置関係によりフィギュアを視認できないときは、ジャッジはジャッ ジブリーフィングで伝えられた方法でその旨をチーフジャッジに伝え、該当するフィギュ アに A(アベレージ)と記載します。もし、ジャッジ全員が採点できなかった場合は、チー フジャッジは無線を通じて競技者にブレイクを要求します。競技者は状況次第で競技ボッ クスに再進入し、チーフジャッジに指示されたフィギュアからシークエンスを再開します。 採点されるフィギュアは未採点のものからとし、競技者に対するインタラプションペナル ティは与えられません。 19 4.21 ジャッジラインでの人員制限 4.21.1 チーフジャッジから許可を受けた者を除き、ジャッジラインには競技会責任者、チ ーフジャッジ、ジャッジ、アシスタントジャッジ、レコーダー、陪審員、スターターなど、 その他競技会の運営に関わる者のみが立ち入りを許可されます。 4.21.2 競技飛行が継続されている間は、チーフジャッジから許可を受けた場合を除き、そ の競技カテゴリーに出場する競技者がジャッジライン、バウンダリージャッジポジション、 デッドラインジャッジポジションに近付くことは競技会の参加の失格処分となります。 4.22 曳航及び離脱操作 4.22.1 曳航機は 5,000ft AGL を超えず、また 2,500ft AGL を下回らない範囲の、競技飛行 に適した高度へグライダーを曳航します。 曳航機は、オフィシャルウィンドディレクションのダウンウィンド側の、X 軸に直角のベー スレグ上にグライダーを位置させます。もし、競技者が最初のベースレグ通過で離脱操作 を行わなければ、曳航機は先と同様の方法でベースレグへ再進入します。このとき、曳航 機は可能な限りボックス近くを飛行し、ボックスと反対方向への旋回を行います。 チーフジャッジの曳航継続の許可がない限り、離脱の指示を受けた後は、競技者は 2 回目 のベースレグの通過では離脱を行わなければなりません。 4.22.2 離脱の後、競技者は競技開始前であれば位置を再調整することが許されます。しか し、上昇気流を利用して高度を故意に再上昇する行為には、そのプログラムの飛行に 0 点 が与えられます。 4.22.3 曳航機とグライダーのそれぞれの操縦士は、当日のブリーフィングでチーフジャッ ジから指定された周波数を聴取し、競技ボックスの進入時はチーフジャッジの指示に従わ なくてはなりません。曳航機またはグライダーの無線故障には、適切な方法で互いの意思 を確認し対処します。 4.22.4 曳航機またはグライダーの無線故障や、天候の悪化により競技ボックスへの進入が 難しくなったときは、グライダーの競技者は曳航機から離脱し着陸します。グライダーの 競技者は競技飛行の中止の理由をチーフジャッジに速やかに連絡し、4.18(機械的不具合を 理由とする)または 4.20(天候の悪化を理由とする)に基づいて再飛行を判断します。 20 5 章 競技飛行プログラム 5.1 競技飛行プログラムの種類 競技会は以下の表 5.1.1 または表 5.1.2 に示すプログラムを終えて完了となります。 表 5.1.1 パワーの競技飛行プログラム カテゴリー ノウン フリー アンノウン プライマリー ○ スポーツマン ○ ○(5.1.3 を参照) インターミディエイト ○ ○ ○ アドバンスド ○ ○ ○ アンリミテッド ○ ○ ○ アンノウン 表 5.1.2 グライダーの競技飛行プログラム カテゴリー ノウン フリー スポーツマン ○ ○(5.1.3 を参照) インターミディエイト ○ ○ ○ アドバンスド ○ ○ ○ アンリミテッド ○ ○ ○ 5.1.1 アンリミテッドには、4 ミニットフリープログラムが行われることがあります。こ の結果は 5.1 の最終結果には影響せず、別枠でのプログラムとして扱われます。 5.1.2 プログラムの進行順序は、ノウン、フリー、アンノウン、そしてアンリミテッド 4 ミニットフリーです。ただし、フリーとアンノウンは必要により順序の入れ替えが可能で す。 5.1.3 パワーとグライダーのスポーツマン競技者は、フリープログラムの代わりにノウン プログラムを任意で飛行することができます。 5.1.4 競技会責任者により、表 5.1.1 と表 5.1.2 に示されたプログラムに新たにプログラム を追加することがあります。 1. プライマリーの 2 回目または 3 回目のプログラムと、スポーツマンの 3 回目のプログ ラムは、JAC 本部の承認を受けることなく、競技会責任者の判断で行うことができる。 21 2. スポーツマンの 3 回目の飛行では、競技者は 2 回目のプログラムで行ったシークエンス を行うこと。 5.1.5 天候、時間、その他の予期しない理由による競技の中断がない限り、最終結果は競 技者が行った全プログラムの結果の合計からとなります。 5.1.6 天候などの理由により競技会が完了しなかった場合は、それぞれのカテゴリーに参 加する全ての競技者の飛行が完了したプログラムのみを用いて最終結果とします。カテゴ リーに参加した全競技者が飛行したシークエンスを用いて平等化するか、または途中で終 了としたプログラムを取り消して得点を無効とするかのどちらかが選択されます。 5.1.7 パワーとグライダーが同じ競技会で飛行するときは、安全性に問題がない範囲で、 効率のよい競技会の進行を求め、プログラムを混成することがあります。もし、曳航機が 複数あれば、可能な限り、グライダーをボックスへ順序よく連続的に送り込むようにしま す。しかし、曳航機の数が十分でない場合は、競技会責任者はジャッジの組み合わせを保 ち、パワーとグライダーを混成する飛行順序を作成します。プログラムの進行順序の判断 は競技会責任者が行い、パワーとグライダーの両方に平等な飛行となるよう努めます。 5.2 クオリフィケーションフライト (Q フライト) それぞれのカテゴリーにおいて、最初のノウンプログラムの飛行は Q フライトとなります。 そのカテゴリーの過半数のジャッジから、競技者の安全な競技飛行に疑問があると判断さ れれば、該当する競技者はそのカテゴリーへの出場について失格処分となります。(4.2.3 参照) 5.3 ノウンプログラム パワーのノウンプログラムは、アレスティエアロバティックカタログのフィギュアを用い てのシークエンスとなります。グライダーのノウンプログラムは、アレスティカタログの グライダーエアロバティックフィギュアズ(GAF)を用いてのシークエンスです。これら GAF に設定された K ファクターはアレスティエアロバティックカタログのものとは異なる ことがあるため注意が必要です。また、アレスティエアロバティックカタログのフィギュ アが全て GAF にも存在することはありません。 5.3.1 飛行方向について プライマリーカテゴリーのノウンプログラムの最初のフィギュアは、そのカテゴリーのチ ーフジャッジの定めたオフィシャルウィンドに向かう形で開始します。 22 5.3.2 プライマリーカテゴリー プライマリーのノウンシークエンスは、年毎の変更は通常は行われません。(5.7 参照) 5.3.3 スポーツマン及びインターミディエイトのノウンシークエンス スポーツマンのパワー及びグライダーのノウンシークエンス、そしてインターミディエイ トのパワー及びグライダーのノウンシークエンスは、提案または過去に使用されたノウン シークエンスから選ばれます。これらのノウンシークエンスは、新年度の競技会開催前に JAC 代表者会議が承認します。 5.3.4 アドバンスド及びアンリミテッドのノウンシークエンス アドバンスドとアンリミテッドのパワー及びグライダーのノウンシークエンスは、毎年 FAI (国際航空連盟)傘下の CIVA(国際曲技飛行委員会)に参加する各国代表者からの提案を 元に代表者会議により選ばれます。通常、これらのシークエンスは JAC 代表者会議の承認 によって適切であるとされれば、JAC の競技会でも使用されます。 5.4 フリープログラム フリープログラムは競技者の自己表現の機会です。競技者は 6 章に指定されるアレスティ エアロバティックカタログを基にフリープログラムを作成します。 5.4.1 飛行を開始する方向 X 軸のアップウィンドやダウンウィンド、または Y 軸からのフリープログラムの開始が許 可されます。もし、X 軸のダウンウィンド、または Y 軸からの開始となる場合は、B 用紙 及び C 用紙にその旨を記載してください。 5.5 アンノウンプログラム 5.5.1 飛行カテゴリーに用いられるアンノウンプログラムは、JAC 本部がそれぞれの競技 会の競技会責任者へ提供します。 5.5.2 アンノウンプログラムを構成するフィギュアについては、パワーでは本ルールブッ クの補則 3、グライダーについは補則 4 から選択されます。ここに掲載されないフィギュア をアンノウンプログラムに使用することはできません。全てのカテゴリーを通して、アン ノウンプログラムに用いるフィギュアは以下のようになります。 1. フィギュア内に設けられるスナップロール(ファミリー9.9、9.10)は 1 つまでとする。 23 2. ホリゾンタルエイト(ファミリー7.8.1 から 7.8.8)は 1 つまでとする。 3. スピン(ファミリー9.11、9.12)は 1 つまでとする。 5.5.3 アンノウンプログラムの開始フィギュアは X 軸のアップウィンド、またはダウンウ ィンド、または Y 軸からの、いずれかからとなります。X 軸のダウンウィンド、または Y 軸からの開始の場合は、その旨を B 用紙及び C 用紙に注釈として記載します。 5.5.4 アンノウンシークエンスは飛行開始予定時間の 12 時間以上前に競技者に配布され ます。ただし、この配布時間は該当するカテゴリーに参加する競技者全員の同意を下に短 縮することもあります。アンノウンシークエンスの練習飛行は許可されません。 5.5.5 提示されたアンノウンシークエンスが補則 3、または補則 4 の指定に基づき、また 5.5 に示す必要事項を満たして適切に構成されたものであれば、異議は安全性を理由とする もののみを受け付けます。 5.5.6 アンリミテッドにおけるアンノウンシークエンス アンリミッテッド パワー: パワーによるアンリミテッドのアンノウンシークエンスでは、フィギュア数は 10 から 14 までです。最大 K ファクターは 400 です。使用されるフィギュアについては以下の条件が あります。 1. スナップロールは最大 6 つまでとし、同じファミリー(ファミリー9.9 または 9.10)か ら用いる場合は最大 4 つまでとする。 2. 少なくとも 1 つのバーティカルスナップロール(ファミリー9.9.1.x、9.9.6.x、9.10.1.x、 9.10.6.x)が含まれていること。 アンリミッテッド グライダー: グライダーによるアンリミテッドのアンノウンシークエンスでは、フィギュア数は 7 から 9 までです。最大 K ファクターは 190 とし、各フィギュアの最大 K ファクターは 40 です。 5.5.7 アドバスドにおけるアンノウンシークエンス アドバンスド パワー: 24 パワーによるアドバンスドのアンノウンシークエンスでは、フィギュア数は 10 から 14 ま でです。最大 K ファクターは 275 です。使用されるスナップロール(ファミリー9.9)は 2 から 4 までです。 アドバンスド グライダー: グライダーによるアドバンスドのアンノウンシークエンスでは、フィギュア数は 7 から 9 までです。最大 K ファクターは 145 です。各フィギュアの最大 K ファクターは 35 です。 5.5.8 インターミディエイトにおけるアンノウンシークエンス インターミディエイト パワー: パワーによるインターミディエイトのアンノウンシークエンスでは、フィギュア数は 6 か ら 12 までです。最大 K ファクターは 175 です。 インターミディエイト グライダー: グライダーによるインターミディエイトのアンノウンシークエンスでは、フィギュア数は 6 から 9 までです。最大 K ファクターは 130 です。 5.6 アンリミテッドにおける 4 ミニットフリープログラム 5.6.1 参加資格 競技会責任者はアンリミテッドカテゴリーに参加した競技者、またはアドバンスドカテゴ リーに参加し、かつ FAI スポーティングライセンスまたは JAC の許可を受けた競技者に対 し、それぞれのカテゴリーにおいて 4 ミニットフリープログラムを行うことがあります。 5.6.2 プログラム シークエンスの構成に用いるフィギュアは、アレスティエアロバティックカタログからと 限定せず、またフィギュア数や K ファクターの制限もありません。 5.6.3 提出書類 シークエンスを描いた書類など、飛行前に提出する書類は必要ありません。 5.6.4 スモークシステムと音楽の使用 スモークシステムや音楽は競技者の任意で使用できます。 25 5.6.5 開始時と終了時における飛行姿勢 競技飛行の開始時と終了時の飛行姿勢は、通常または背面状態での水平飛行、または水平 から 45 度を超えない範囲での上昇または降下の飛行からとします。これらの規定から逸脱 した場合は、 不適切なウィングディップ行為として 150 点のペナルティーが与えられます。 開始時と終了時の高度は 328ft AGL と 3,280ft AGL の間となります。 5.6.6 バウンダリー及び高度制限 このプログラムにはバウンダリー侵害に関するペナルティーは与えられません。高度制限 侵害についてはペナルティーが与えられます。デッドラインを交差し飛行した場合は、そ の都度 300 点のペナルティーがあたえられます。 5.6.7 K ファクター K ファクターの合計は 400 点となり、ジャッジにより以下に示す 3 つのカテゴリーの判定 基準の下に採点が行われます。 1. 技術的評価 K=160 点 2. 芸術的評価 K=160 点 3. ポジショニング K=80 点 合計 K=400 点 5.6.8 判定基準 それぞれの判定基準には以下に示したように K ファクターが定められています。採点は 10 点から 0 点まで、0.5 点刻みで行われます。 1. 技術的評価 K=160 点 技術的評価に関する判定には、以下の 4 つの基準があります。 a. 飛行性能を最大限に用いての飛行であること。 K=40 点 競技者は使用する航空機の飛行性能を最大限に用いて飛行することとされています。 これは、許容された飛行速度の領域と、荷重制限(G 制限)の限界まで広く用いた 飛行を行うということであり、つまり飛行中は、高速度と低速度、高荷重と低荷重、 そしてポジティブ G 及びネガティブ G 下の飛行が均等に配置されていることが求め られます。 26 さらに、この飛行には失速の領域を超えオートローテーションを含めた飛行や、高 迎角での飛行を演技に含められなければなりません。もしこれらの要素が見られず、 また十分に行われていないと判断されれば減点対象となります。 b. 航空力学及びジャイロの摂動を利用し飛行していること。 K=40 点 競技者は通常の航空力学的な運動と、回転するプロペラから発生するジャイロの摂 動の両方を用いて航空機の 3 軸の運動を表現します。これらの効果を最大限に利用 し、飛行姿勢とフライトパスを幅広い範囲で行った飛行は得点が高いものとなりま す。同様の効果を用いた飛行を、重複または似通った飛行姿勢で行えば、減点対象 となります。 c. マニューバーに鍵となる重要な要素が存在すること。 K=40 点 飛行するマニューバーは競技者が意図したものであり、また確実な制御下にあるこ とが明確でなければなりません。この判定基準では、マニューバーの開始と終了が 正確な方向で、また明確な姿勢で行われることが高得点を得る飛行となります。例 えば、ジャイロスコピックマニューバーでは、不正確な飛行、及び不安定なオート ローテーションという点では許容されても、その遂行が不出来なものであれば減点 対象となります。また、競技者が操縦を放棄したと見なされた場合も減点されます。 d. 様々な飛行方向やフライトパスで、多様性に富んだ飛行があること。 K=40 点 与えられた時間内で、多種多様なフィギュアが行われることも求められます。これ には様々な種類のマニューバーの要素が含まれると、そして豊富なフライトバスと 軸周りの運動があるかということです。つまり、単純な軸周りの運動のみを用いる 競技者は低い得点となります。しかしながら、加えられた新たな機軸は、明確なも のであるべきで、無計画で反射的な行動は避けなければなりません。また、同じよ うな要素を含むマニューバーを何度も繰り返すこと、また延々と継続することも減 点の対象です。例えば、2 回転のフラットスピンに別のマニューバーを加えたもの は、時間稼ぎを目的にした同じスピンを何度も繰り返すものよりも得点が高いもの になります。 2. 芸術的評価 K=160 点 芸術的評価に関する判定には、以下の 4 つの基準があります。 a. フィギュアが連続的に、また軽快に行われていること。 K=40 点 27 高度に完成されたシークエンスでは、各フィギュアの終了時には航空機の動作が一 時停止し、またある飛行姿勢が短時間の間保たれています。航空機の場所の調整や、 競技者による場所の再確認などで不必要な休止がなく、フィギュアは連続して行わ れることが望ましいものです。フィギュア間の長時間の水平飛行や、休止などがあ る場合は減点の対象となります。 b. 力強さと優雅さの運動の対比を表現した飛行であること。 K=40 点 音楽に例えれば、聴取者の感動とは、音楽の速さの変化に大きく影響を受けるもの です。4 ミニットフリーも同様に、何らかの感動が与えられた飛行には特別な扱い をすべきでしょう。仮に、あるマニューバーは高速度で、飛行姿勢の急激な変化と 速い回転速度があり、続いて低速度、また緩やかな飛行が行われたとします。これ ら飛行の対比の要素を加えたシークエンスには高得点が、またこのような特徴のな い単調な飛行には減点が与えられます。 c. フィギュアの飛行が最適な飛行方向で行われ表現されていること。 K=40 点 フィギュアは飛行する場所が変わることで評価が大きく変わります。例えば、上昇 中の背面フラットスピンなどでは、機体の上面が地上から見えることで印象的なも のになります。また、ループの面が 45 度傾いたフィギュアでは、Y 軸上で行うこと で判定がし易いものとなります。このような、フィギュアに適した方向への飛行が 見られない場合は、減点の対象となります。 d. フィギュアの表現が視覚的に最適な場所で行われていること。 K=40 点 フィギュアを判定するには、それぞれに常に視覚的に最適な場所が存在します。例 えば、ジャッジの直上で行ったループは、仮に同じ大きさのループであっても、あ る程度の距離を保って行ったものよりも得点は低くなります。同様に、ボックスの 上限高度での飛行でも、ジャッジに近いものは苦しい姿勢での判定が強いられ、ま た低高度での水平系フィギュアは遠くよりも近いほうが判定が易しいものです。各 フィギュアが判定に適した場所で行われれば高得点を与え、反対にフィギュアが適 切に配置されていないものは減点が与えられます。 3. ポジショニング K=80 点 a. 対称性のある飛行であること。 K=40 点 全体として見たシークエンスが、ジャッジラインから左右に均等に、パフォーマン スゾーン内で行われているものは対象性が高いものとして判定されます。シークエ ンスの構成が風などの影響を受けるなどして、明らかに左右に偏ってしまうことは 減点の対象になります。偏りが大きなものほど減点は大きくなります。 28 b. パフォーマンスゾーンでの飛行となっていること。 K=40 点 シークエンスの対称性があっても、パフォーマンスゾーンから外れた飛行というも のも考えられます。シークエンスの配置はジャッジからの距離も考慮する必要があ ります。フィギュアがジャッジラインから遠く、明らかにパフォーマンスゾーンか ら外れた飛行であれば、それぞれにつき 0.5 点刻みで減点とします。 5.6.9 制限時間 プログラムの制限時間は 3 分 30 秒から 4 分の間です。制限時間を越えた、または未満とな った場合は、端数は切り上げとして、1 秒につき 10 点の減点を行います。例えば、演技時 間が 3 分 29.5 秒だった場合は減点は 10 点、4 分 1.3 秒では減点は 20 点です。 5.6.10 開始時及び終了時のシグナル 1. プログラムの開始時と終了時のシグナルは、ウィングディップシグナルを 45 度以上の 角度で明確に 3 回行うことで表現します。この規定から外れ、シグナルを行わなかった場 合は、150 点の減点が与えられ、その都度減点が追加となります。もし、終了時のシグナル を行わなかった場合は、タイムキーパーの補助の下、チーフジャッジが終了の判断を行い ます。 2. プログラムの開始の判断は、3 回のウィングディップシグナルの後の主翼が水平になっ た時点とし、また終了の判断も同じとします。時間計測とペナルティの記録はチーフジャ ッジ席で行います。 5.7 プライマリーカテゴリー 5.7.1 プライマリーカテゴリーは、初級者が飛行性能の低い航空機で飛行する場合や、飛 行性能に制限のある航空機で飛行する場合などを目的に設定されています。プライマリー カテゴリーに参加する競技者は、一競技会で複数回の飛行が行われたとしても、補則 1 に 指定されたシークエンスのみの飛行となります。 5.7.2 バウンダリー侵害 プライマリーカテゴリーではバウンダリー侵害に関するペナルティーは与えられません。 5.7.3 シークエンスの構成 プライマリーカテゴリーのシークエンスは、補則 1 に示すように合計 6 つのフィギュアで 構成されます。天候による任意のフリーブレイクと、機械的な故障を原因とするブレイク 29 を除き、シークエンス中のブレイクには 1 回につき 5 点の減点が与えられます。シークエ ンスはチーフジャッジの定めたオフィシャルウィンドの方向に従って行われます。 プライマリープログラムに含まれるフィギュアは、45 ラインアップ(1.1.2.1)、1 回転のスピ ン(1.1.6.3+9.11.1.4)、ハーフキューバンエイト(8.5.6.1+9.1.4.2)、ループ(7.4.1.1)、180 度 ターン(2.2.1.1)、スローロール(1.1.1.1+9.1.3.4)となっています。 5.7.4 プレゼンテーション プライマリーカテゴリーにはバウンダリー侵害の判定はありませんが、ボックス内のフィ ギュアの配置に対し、プレゼンテーションとしての判定が行われます。 5.8 プレゼンテーション K 5.8.1 パワープログラム 動力機の各カテゴリーのプレゼンテーション K は以下の通りです。 プライマリー 3K スポーツマン 6K インターミディエイト 8K アドバンスド 12K アンリミテッド 20K(ノウン、アンノウン)、26K(フリー) 5.8.2 グライダープログラム グライダーの各カテゴリーのプレゼンテーション K は以下の通りです。 スポーツマン 15K インターミディエイト 15K アドバンスド 25K(ノウン、アンノウン)、35K(フリー) アンリミテッド 25K(ノウン、アンノウン)、35K(フリー) 30 6章 フリー 構成制限と書類 6.1 フリー フリーは競技者がそれぞれの演技構成技術と実演する能力を表現する機会です。 6.2 フィギュア数とKファクターの制限 表 6.2.1 パワーのフィギュア数と K ファクターの制限 カテゴリー スポーツマン 最大 最大合計 プレゼンテー 最大 フィギュア数 フィギュア K ション K プログラム K 制限なし 現行ノウンに 6 現行ノウンに 同じ インター 同じ 15 190 8 198 アドバンスド 12 300 12 312 アンリミテッド 9 420 26 446 ミディエイト 表 6.2.2 グライダーのフィギュア数と K ファクターの制限 カテゴリー スポーツマン 最大 最大合計 プレゼンテー 最大 フィギュア数 フィギュア K ション K プログラム K 制限なし 現行ノウンに 15 現行ノウンに 同じ インター 同じ 制限なし 140 15 155 アドバンスド 10 160 35 195 アンリミテッド 10 230 35 265 ミディエイト 表 6.2.1 と表 6.2.2 に示すように、フリーに含まれる最大フィギュア数と最大合計フィギュ アKが制限されます。最大合計フィギュアKはプレゼンテーションKを含まず、B/C 用紙に 記載された各フィギュアの K ファクターの合計となります。 6.2.1 パワーのフリー 競技者は構成したフリーを妥協せずに許可された最大合計フィギュア K にするために、最 も大きな K ファクターを有するフィギュアから、 「フローティングポイント」としてパワー では 1 点以下に限り減じることができます。その際には A 用紙の K ファクター欄に元の K ファクターとフローティングポイントを減じた後の K ファクターを記載し、カタログナン 31 バー欄に「F.P.」と追記してください。 6.2.2 グライダーのフリー グライダーのスポーツマンカテゴリーのフリーの合計フィギュア K は、現行のノウンシー クエンスの合計フィギュア K を超えてはいけません。ただし、合計フィギュア K は 3 点を 限度に超えることは許されており、この場合は最も大きな K ファクターを有するフィギュ アから順に 1 点ずつ、最大合計フィギュア K に達するまで減じていきます。A 用紙の K フ ァクター欄に元の K ファクターとフローティングポイントを減じた後の K ファクターを記 載し、カタログナンバー欄に「F.P.」と追記してください。 グライダーのインターミディエイトフリーの合計フィギュア K は 140 です。合計フィギュ ア K は 143 を限度に許容され、140 に達するまで最も大きな K ファクターを有するフィギ ュアから順に 1 点ずつ減じていきます。A 用紙の K ファクター欄に元の K ファクターとフ ローティングポイントを減じた後の K ファクターを記載し、カタログナンバー欄に「F.P.」 と追記してください。 グライダーのアドバンスドフリーの合計フィギュア K は 160 です。合計フィギュア K は 163 を限度に許容され、160 に達するまで最も大きな K ファクターを有するフィギュアから順 に 1 点ずつ減じていきます。A 用紙の K ファクター欄に元の K ファクターとフローティン グポイントを減じた後の K ファクターを記載し、カタログナンバー欄に「F.P.」と追記して ください。 グライダーのアンリミテッドフリーの合計フィギュア K は 230 です。合計フィギュア K は 233 を限度に許容され、230 に達するまで最も大きな K ファクターを有するフィギュアか ら順に 1 点ずつ減じていきます。A 用紙の K ファクター欄に元の K ファクターとフローテ ィングポイントを減じた後の K ファクターを記載し、カタログナンバー欄に「F.P.」と追記 してください。 6.3 多彩な構成要素 フリープログラムにおいては、各カテゴリーの必須構成要素を満たすために、アレスティ カタログのファミリーから以下のフィギュアを最低数含まなくてはいけません。 6.3.1 グライダー 6.3.1.1 スポーツマン ファミリー2(ターン) 、ファミリー7(ループ) 、ファミリー9.1(スローロール)の各ファ 32 ミリーから少なくとも 1 つずつ。 6.3.1.2 インターミディエイト ファミリー2(ターン)、ファミリー5(ハンマーヘッド)、ファミリー7(ループ)、ファミ リー9.1(スローロール) 、ファミリー9.11(アップライトスピン)の各ファミリーから少な くとも 1 つずつ。 6.3.1.3 アドバンスド ファミリー2(ターン及びローリングターン)から、サブファミリー2.1.1、2.2.1、2.3.1、 2.4.1 のいずれかから少なくとも 1 つ。ただし、2.1.3 を代替としての使用も可。 ファミリー5 からファミリー8 までの各ファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー9(ロール及びスピン)から、サブファミリー9.1 のハーフスローロールを少な くとも 1 つ。 サブファミリー9.2、9.4、9.8 のヘジテイションロールから少なくとも 1 つ。 6.3.1.4 アンリミテッド ファミリー2 の 2.1.3、2.2.2 から 2.2.6 まで、2.3.2 から 2.3.5 まで、2.4.2.から 2.4.8 までの いずれかのサブファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー5 からファミリー8 までの各ファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー9.1 からハーフスローロールを少なくとも 1 つ。 ファミリー9.2 から 9.8 までのいずれかのサブファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー9.9 と 9.10 の各サブファミリーから少なくとも 1 つ。 6.3.2 パワー 6.3.2.1 スポーツマン ファミリー7 の 7.2.1 から 7.2.4 まで、7.4.1 から 7.4.6 までのいずれかのサブファミリーか ら少なくとも 1 つ。 ファミリー8 から少なくとも 1 つ。 ファミリー9 のエルロンロールは、サブファミリー9.1 から 9.8 までのいずれかから少なく とも 1 つ。 ファミリー9 のスピンは、サブファミリー9.11 または 9.12 から少なくとも 1 つ。 6.3.2.2 インターミディエイト ファミリー5 から少なくとも 1 つ。 ファミリー7 の 7.2.1 から 7.2.4 まで、7.4.1 から 7.4.6 までのいずれかのサブファミリーか 33 ら少なくとも 1 つ。 ファミリー8 から少なくとも 1 つ。 ファミリー9 のエルロンロールは、サブファミリー9.1 から 9.8 までのいずれかから少なく とも 1 つ。 ファミリー9 のスナップロールは、サブファミリー9.9 または 9.10 から少なくとも 1 つ。 ファミリー9 のスピンは、サブファミリー9.11 または 9.12 から少なくとも 1 つ。 6.3.2.3 アドバンスド ファミリー1 から少なくとも 1 つ。 ファミリー2 の 2.1.2 から 2.1.3 まで、2.2.2 から 2.2.6 まで、2.3.2 から 2.3.5 まで、2.4.2 から 2.4.8 までのいずれかのサブファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー5 から少なくとも 1 つ。 ファミリー7 とファミリー8 の各ファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー9 のエルロンロールは、サブファミリー9.1 から 9.8 までのそれぞれから少なく とも 1 つ。 ファミリー9 のスナップロールは、サブファミリー9.9 または 9.10 のいずれかから少なくと も 2 つ。 ファミリー9 のスピンは、 サブファミリー9.11 または 9.12 のいずれかから少なくとも 1 つ。 少なくとも 1 つのフィギュアにオポジットロール(逆方向のロールコンビネーション)が あり、サブファミリー9.1 から 9.10 までのいずれかを用いていること。 6.3.2.4 アンリミテッド ファミリー1 から少なくとも 1 つ。 ファミリー2 の 2.2.3 から 2.2.6 まで、2.3.2 から 2.3.5 まで、2.4.2 から 2.4.8 までのいずれ かのサブファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー5 からファミリー8 までの各ファミリーから少なくとも 1 つ。 ファミリー9.9 のポジティブスナップロールと 9.10 のネガティブスナップロールは、各サ ブファミリーから少なくとも 2 つ。 ファミリー9 のスピンは、サブファミリー9.11 または 9.12 から少なくとも 1 つ。 少なくとも 1 つのフィギュアにオポジットロール(逆方向のロールコンビネーション)が あり、サブファミリー9.1 から 9.10 までのいずれかを用いていること。 6.4 開始時と終了時の飛行姿勢 フリーの開始と終了は通常姿勢、背面姿勢を問わず、水平飛行でかつ X 軸か Y 軸のどちら 34 かに平行でなければなりません。 グライダーのスポーツマンとインターミディエイトのフリーでは、競技飛行の開始と終了 は通常姿勢の水平飛行で行われます。グライダーのアドバンスドとアンリミテッドのフリ ーでは、競技飛行の開始は通常姿勢か背面姿勢のいずれかで行われますが、終了は通常姿 勢でなくてはなりません。 競技者はフリーの開始を、X 軸アップウインド、X 軸ダウンウインド、Y 軸の中から選択出 来ますが、X 軸ダウンウインド、Y 軸での演技開始は B/C 用紙にその旨記載します。 6.5 選択可能なフィギュア パワーのフリーはアレスティカタログのフィギュアを用いて構成されます。加えてスポー ツマンのフリーにおいてはクウォータークローバー(8.5.2、ファミリー0.1 – 0.2 参照)を 使用できます。ファミリー1.1.1.1 と 1.1.1.2 のフィギュアはファミリー9 のロールとの組み 合わせにおいてのみ使用できます。 グライダーのフリーはアレスティカタログのグライダーエアロバティックフィギュアズ (GAF)にあるフィギュアも用いて構成されます。加えて、グライダーのスポーツマンと インターミディエイトのフリーにおいては、ウィングオーバー(8.5.1、ファミリー0.0 参照) とクウォータークローバー(8.5.2、ファミリー0.1-0.2 参照)を使用できます。ファミリ ー1.1.1.1 と 1.1.1.2 のフィギュアはファミリー9 のロールとの組み合わせにおいてのみ使用 できます。 6.6 フィギュアの書式 フリーに選択したそれぞれのフィギュアは、単独のフィギュアか複数のフィギュアの組み 合わせたものかに関わらず、A 用紙に正確にアレスティカタログ番号、K ファクター、シン ボルを記載します。 6.7 決定的基準 B/C 用紙に描かれたシンボルに錯誤や疑問が生じた際には、A 用紙に書かれたアレスティカ タログ番号が決定的基準となります。フィギュアの K ファクターを算出する際もこのカタ ログ番号を基準として算出します。例外は以下の 2 つです。 6.7.1 直線飛行中の連続しないロールの回転方向が同方向か反対方向かは B 用紙または C 用紙(飛行方向によって決定)のシンボル図によって決定されます。 35 6.7.2 チーフジャッジの指示により、スターターがカテゴリーの最初の競技者をタキシン グさせた時がカテゴリーの開始となりますが、この時点でジャッジが判定用に持つ B/C 用 紙が飛行方向や適切なフィギュアの決定的基準となります。 (7.3.1.3 参照) 6.8 フィギュアの重複 以下の例外以外は、アレスティカタログ番号のいずれも重複しての使用はできません。 6.8.1 パワーのスポーツマンとインターミディエイト、またグライダーの全カテゴリーで は基礎となる 1.1.1.x は制限なく使用できます。 6.8.2 グライダーのスポーツマンとインターミディエイトでは、異なるファミリー9 のフ ィギュアを使用する限り、同じベーシックフィギュアを重複し使用することが許可されま す。例えば、グライダーのインターミディエイトで、8.5.6.1 と 9.1.4.2 の組み合わせと、 8.5.6.1 と 9.4.4.2 の組み合わせを、同じフリーシークエンスに用いても許可されます。 6.8.3 グライダーのアドバンスドとアンリミテッドでは、ファミリー1.1.1.x とファミリー 9.1.x.x は制限なく使用できます。 6.9 複合フィギュアの合計フィギュア K 6.9.1 複合されたフィギュアの K ファクターは単純にそれぞれ成分の得点を加算して算出 します。例えば、図 6.9.1.1 の水平直線飛行での 1 回転スローロールでは、水平直線飛行の 1.1.1.1 が K=2、スローロールの 9.1.3.4 が K=8 となり、合計 K ファクターは 10 となりま す。 1.1.1.1 K=2 +9.1.3.4 K=8 合計フィギュア K=10 6.10 適切なスナップロールのカタログ番号の決定 6.10.1 ポジティブスナップロールは正荷重状態(正の迎角)から 行う方が容易です。同様に、ネガティブスナップは負の荷重状態(負の迎角)から行う方 が容易です。そのため、ポジティブスナップロール(9.9.x.x)、ネガティブスナップロール (9.10.x.x)は、どの飛行方向においても、スナップロール開始時の荷重状態によって変化す 36 る 2 つの異なる K ファクターが設定されています。スナップロールがループ成分の直後に ある場合は、スナップロール開始時には直前のループ中の荷重を保っていると考えます。 スナップロールが水平、45 度あるいはループ成分中で他のロール成分の後にある場合は、 荷重に関して注意深く考えねばなりません。最初のロール成分の後、スナップロールまで の間にフライトパスを維持するために必要な荷重を基本に考えます。スナップロール開始 時の荷重を、アレスティ記号の線の種類(実線か破線か)を基に判断してはいけません。 (図 6.10.1.1) 7.2.1.1 K=6 +9.1.3.2 K=4 +9.10.8.2 K=15 合計フィギュア K=25 *9.10.3.2 の K=13 ではないことに注意 6.10.2 迎角がゼロの場合(垂直姿勢)とナイフエッジ(90 度バンク)の 2 つの状況では、 主翼の荷重状態を明確に判断することが出来ません。 1. 垂直ラインでは理論的には迎角は無揚力角のはずですが、以下の例にある迎角が明確に 無揚力角であると判断される状況以外では、垂直ラインの特性はアレスティ記号の線が実 線であればポジティブ、破線であればネガティブと判断してスナップロールのカタログ番 号を決定します。迎角が明確に無揚力角と判断されるのは次の 4 つです。 a. 垂直ラインでエルロンまたはスナップロールを行った後 b. ハンマーヘッドの後の垂直降下 c. テールスライドの後の垂直降下 d. スピンの後の垂直降下 このケースではスナップロールの K ファクターの低い方と関連するカタログ番号を用いま す。 (図 6.10.2.1) スピン後の迎角は無揚力角と判定されるため、K ファクターの高いフ ァミリー9.9.10.4(K=13)は用いず、ポジティブスナップでは K ファクターが低いファミ リー9.9.5.4(K=11)となります。 37 8.4.2.3 K=17 +9.11.1.4 K=5 +9.9.5.4 K=11 +9.9.6.2 K=17 合計フィギュア K=50 注意: スピンの後の迎角は 0 と規定されているため、図のダウンライン上のインサイドス ナップロールは、9.9.10.4(K=13)より K ファクターが低い 9.9.5.4(K=11)を用います。 2. 90 度バンク、あるいはナイフエッジ状態からのスナップロールは、奇数回の 90 度ロー ルの終了直後に続いて行われる場合のみとなります。この場合のカタログ番号の決定は、 最初のロール方向とは無関係で、どちらのラダー(トップラダーかボトムラダーか)をナ イフエッジからのスナップロールに使うかによって決定します。トップラダーを使うスナ ップロールでは低い K ファクターとなるカタログ番号を、ボトムラダーを使うスナップロ ールでは高い K ファクターとなるカタログ番号を用います。 以下の表 6.10.2.1 と図 6.10.2.2 は、ナイフエッジからのスナップロールに対して、適切な カタログ番号を選択するためのものです。 表 6.10.2.1 ナイフエッジからのスナップロール時に必要なラダーの方向 ロール前の ナイフエッジ 姿勢 へのロール 同方向 逆方向 同方向 逆方向 通常姿勢 1/4、1 1/4 ボトムラダー トップラダー トップラダー ボトムラダー 高K 低K 低K 高K トップラダー ボトムラダー ボトムラダー トップラダー 低K 高K 高K 低K トップラダー ボトムラダー ボトムラダー トップラダー 低K 高K 高K 低K ボトムラダー トップラダー トップラダー ボトムラダー 高K 低K 低K 高K 3/4、1 3/4 背面姿勢 1/4、1 1/4 3/4、1 3/4 ポジティブスナップ 38 ネガティブスナップ 6.11 フィギュアと K ファクターの構成 フィギュア構成の方法と難易度の計算は、FAI(国際航空連盟)の CIVA(国際曲技飛行委 員会)が管理しているアレスティエアロバティックカタログに記載されています。 6.12 A 用紙 競技者採点表 6.12.1 競技者は各自のフリーを所定の用紙で準備し、参加登録時に競技委員長が要求する 枚数を準備して提出しなければなりません。 6.12.2 A 用紙のカタログ番号、K ファクター、フィギュアシンボルは明瞭に判読出来なく てはいけません。 6.12.3 A 用紙には構成する各フィギュアの合計 K ファクターを記載します。 6.12.4 A 用紙にはカテゴリーに設定されたプレゼンテーション K を記載します。 6.12.5 A 用紙に記載するフィギュアシンボルは、ロールの方向や開始方向と終了方向とい った必要な変更以外は、アレスティカタログに記載されたものと同じになります。 39 6.13 B/C 用紙 6.13.1 シークエンスを構成する各フィギュアは B/C 用紙に描かれます。B 用紙、C 用紙は それぞれ別紙として、両面印刷は行わないでください。 6.13.2 B 用紙はジャッジの右から左に風が吹いている際に競技者が飛行するシークエン スが描かれています。 6.13.3 C 用紙はジャッジの左から右に風が吹いている際に競技者が飛行するシークエン スが描かれています。 6.13.4 競技者は B/C 用紙それぞれにオフィシャルウィンドに対して、どの飛行方向で飛行 を開始するか記載します。B/C 用紙には注記として、「Y 軸エントリー」、 「ダウンウインド エントリー」 、旋回角度については「90 度」、「180 度」、「270 度」、 「360 度」 、オプショナ ルブレイクのシンボルのみ記載が許されます。6.13.10 に述べる補助線を除き、上記以外の 記載は一切考慮されませんので、記載は避けてください。 6.13.5 B/C 用紙に記載するフィギュアシンボルは、アレスティカタログに記載されたもの と同じでなければなりません。ただし、フィギュアを見やすくするために拡大したり、カ タログ内で左方向からの開始として描かれているものを、右方向から開始するフィギュア として変更することは可能です。同様に、Y 軸に沿って開始、または終了するフィギュアと して、フィギュアを変更することも許容されます。フィギュアのラインを延長または短縮 して描き、シークエンスを判読し易く、明確であるように作成することは、競技者に委ね られます。 Y 軸から開始し、そして Y 軸にて終了するフィギュアでは、終了時のラインは開始時のラ インと平行に描かれ、また終了時のラインが開始時と同方向か反対方向か、競技者が予定 する飛行方向に描かれなくてはなりません。もし、競技者がフィギュアに表記されたよう に飛行しなかった場合は、該当するフィギュアに対し 0 点が与えられます。 (図 6.13.5.1、 及び 7.3.1.5 参照) 40 表記上、Y 軸のラインの方向は開始の飛行方向を指定しませんが、終了時の飛行方向が同方 向か、反対方向かを指定します。 加えて、開始と終了の両方が Y 軸で行われるフィギュアで、ラインやパーシャルループが X 軸に含まれる場合は、この X 軸の部分はジャッジが使用する B 用紙または C 用紙に表記さ れるように飛行する必要があります。(図 6.13.5.2、7.3.1.4) ただし、ファミリー2、5、 6 には該当せず、それらではアップウィンドとダウンウィンドのどちら側に飛行しても許容 されます。 (図 6.13.5.3) 41 6.13.6 ロール要素のあるフィギュアが加わることで、基礎になるフィギュアの特徴や構成 は変更があってはいけません。ロールの方向は既定されてはいませんが: 1. 360 度を超える連続したロール要素はロールを示す矢印の先を直線でリンクさせて表 現します。 (図 6.13.6.1) 2. 連続しない同方向へのロール要素は、シンボルの先端が線の同じ側に来るように描き、 先端はリンクさせません。 (図 6.13.6.2) 3. 反対方向へのロール要素は先端がお互い反対側を指すように描きます。(図 6.13.6.3) 6.13.7 同じ方向への連続しないロール要素は、違う種類のロールで構成されなければなり ません。その種類については以下の 3 つです。 1. エルロンロール(スローロールとヘジテーションロール) 2. スナップロール(ポジティブとネガティブ) 3. スピン(通常と背面) 6.13.8 Y 軸方向への飛行で開始して X 軸方向に終了するフィギュアでは、スピン方向、旋 回方向またはロール方向が終了方向を決定します。そのため B/C 用紙のフィギュアシンボ ルには適切なロール回転角度、旋回方向を描いてください。 6.13.9 B/C 用紙には飛行する順番にシンボルを配置 し、シンボルの開始を示す丸い点の上か、円の中にフ ィギュアの番号を記載します。 (図 6.13.9.1) 42 6.13.10 B/C 用紙には、ジャッジが競技者の飛行するシークエンスを容易に追えるように シンボルを配置してください。目で追いやすいように連続してフィギュアのシンボルを配 置出来ない場合は、読み取りやすい点線や連続する小さい円で、ジャッジの目が次のシン ボルを容易に追えるよう誘導してください。 6.14 フリーの承認 競技者はフリーに用いる A、B、C の 3 種類の用紙がルールに準じ適切かどうか、競技会の 前に JAC または FAI、IAC 公認の現役のジャッジから審査を受け、日付付きで承認のサイ ンを受けてください。フリーの構成に関してのルール改正が無い限り、このジャッジのサ インは過去の年度のものも使用できます。この規定に沿って承認を受けていない A、B、C 用紙を提出した競技者は参加を拒否されることもあります。ジャッジのサインは競技者の フリーの適法性や読み易さに対する責任を放棄、または軽減するものではありません。競 技者は自身のフリーの各用紙の審査承認はできません。 6.15 不適合 6.15.1 競技者のフリープログラムは、パイロットブリーフィングまたはフリーのブリーフ ィングの開始をもって最終決定とし、それ以降の変更は認められません。 最終決定されたフリープログラムに対し、異議の申し入れやルール不適合の指摘があった 場合は、陪審員によってジャッジチェックリスト(6.16 参照)を適用して確認します。不 適合と認められた場合は 6.16 に適合するペナルティーを競技者に課すことになります。 6.16 ジャッジチェックリスト 6.16.1 フリーのフィギュア選択に関しては競技者に責任があります。ジャッジはルールに 適合するか、読みやすいか、カタログ番号、K ファクター、描かれたシンボルが一致して正 確であるか確認します。A 用紙のカタログ番号がフリーのチェックに関しての最終的な根拠 となります。 以下に、ジャッジがフリーを確認する際のチェックリストと、フリーの適法性に対しての 異議に際して、ルール不適合と判断された場合のペナルティーを述べます。 (6.15.1 参照) 1. フリーを構成するフィギュア数はカテゴリーごとに規定された最大数を超えてはいけ ません。 (表 6.2.1、表 6.2.2) 超過したフィギュアにはペナルティとして 0 点が与えられ、 シークエンスの最後のフィギュアから 0 点とし、最大数に達するまで行われます。 43 2. 多彩な構成要素。そのカテゴリーのフリーに必須の構成要素(6.3.1、6.3.2 参照)を満 たしていなければなりません。必須構成要素が欠落していれば、ペナルティーとして K フ ァクターの大きなフィギュアから順に、1 つの欠落がある毎にフィギュアが 1 つ 0 点となり ます。 3. フィギュアの重複について、A 用紙のカタログ番号を確認します。6.8 で述べた例外を 除き、同一のカタログ番号の重複は認められません。B/C 用紙においてもフィギュアの重複 がないか確認します。しばしば認められる重複としては、ファミリー9 のロール、ファミリ ー8 のコンビネーションズ、ファミリー5 のハンマーヘッドがあります。グライダーのフリ ーの確認時には、6.8 に記述したグライダーに免除された特別事項を確認してください。 重複が認められたシークエンスでは、それに続く不適合な重複を含むフィギュアは 0 点と なります。例えば、9.1.1.1 のロールを含む最初のフィギュアは得点が与えられますが、そ れ以降の同じカタログ番号を含むフィギュアは 0 点が与えられます。 4. 不適合な構成。追加されたロールを注意して確認します。(6.13.5 とアレスティエアロ バティックカタログ Part 1 参照) a. 1/2 ロールのシンボルがある場合は、ロール姿勢が 180 度変化するものだけ使 用できます。基礎になったフィギュアの特徴は変化させてはいけません。 b. 360 度ロールのシンボルがある場合は、全くロールを用いずに姿勢を維持する こと、そして 360 度または 720 度のロールの使用が可能です。 c. 1/4、1/2、3/4、1、1+1/4、1+1/2、1+3/4、そして 2 ロールが垂直ラインの 90 度ロールシンボルのある場所で用いられます。 d. 連続したロールは同じ種類のロールにのみ許され、先端をリンクさせます。 e. 連続しない同方向へのロールは違う種類のロールでなければなりません。 f. 逆方向への複数のロールの組み合わせはフィギュアの中で複数回用いること が出来ます。但し 1 直線または 1 曲線の上に、1 対(2 つ)を超える逆方向ロール の組み合わせは許されません。 44 g. パーシャルロールは A×B の形で表現されます。A はパーシャルロールの回数 を、B は 360 度回転するのに必要なパーシャルロールの数を示します。つまり 90 度ロールを 2 回して 180 度ロールするのであれば 2×4 となり、180 度ロール(1/2 ロール)を 3 回であれば 3×2 となります。 h. ファミリー9.1 から 9.10 のロールと、ファミリー9.11 あるいは 9.12 のスピン がライン上に配置される場合は、スピンが先に配置されなければなりません。 i. ファミリー9.9 のポジティブスナップロール、ファミリー9.10 のネガティブス ナップロールにおいて、正しいカタログ番号を決定するのはスナップロールが配 置されたところでの機体の荷重であり、シンボルの線の種類ではありません。 (6.10、 アレスティエアロバティックカタログ Part 1 参照) 不適合に構成されたフィギ ュアは 0 点が与えられます。 J. Y 軸での開始と終了のラインが互いに平行に描かれていることを確認します。 (6.13.5 参照) 以上のフィギュアの構成の誤りには、それぞれにつき 0 点が与えられます。 5. A 用紙において、シークエンスを構成する各フィギュアのアレスティカタログ番号と K ファクターが正確であり、全フィギュアの合計フィギュア K に誤りがなく、カタログ番号 と一致する適切なシンボルが描かれていることを確認します。 フローティングポイントが使用されている場合は、K ファクターが最も高いフィギュアに用 いられ、パワーでは 1 点、グライダーでは 3 点を超えないことを確認します。A 用紙には 元の K ファクターと減算した K ファクターの両方を記し、また「F.P.」の注釈をカタログ番 号欄に記します。カタログ番号あるいは K ファクターが誤記載されたフィギュアは 0 点と します。 6. 計算によりフリー全体の合計フィギュア K が正確であることを確認し、各カテゴリー で許容される最大フィギュア K を超えていないことを確認します。(6.2 参照) 合計フィギ ュア K が超過した場合はシークエンス最後のフィギュアを 0 点とし、合計フィギュア K が 許容範囲に収まるまで、後ろから順に構成フィギュアを 0 点とします。 7. A 用紙のプレゼンテーション K がカテゴリーに合ったものか確認します。(5.8 参照) 45 8. B 用紙と C 用紙を並べて置いて、実際に競技を判定するときのように順を追って確認し ます。明確に判読出来るか、順を追ってフィギュアを見易いか、点線と実線、ロールのシ ンボル、フィギュアの番号、ロールの指定などそれぞれの重要な要素が、A 用紙のカタログ 番号と照らし合わせ一致しているかを確認してください。全ての不適合なフィギュア、カ タログ番号または K ファクターが違うもの、描かれたように飛ぶ事が不可能なフィギュア は 0 点とします。 9. 上記の全てに問題が無ければ(6.15 参照) 、A、B、C の各用紙に署名を行い、日付を書 いてください。署名や日付のないフリーの用紙で最終登録となった場合、4.6.1.1.b に基づ き減点を行います。 10. ジャッジによる再審査と再承認を受けない限り、A、B、C 用紙には変更も修正も認め られません。修正、変更を加えた用紙は署名を無効とし、用紙は不適合となります。(6.15 参照) 46 7 章 判定と採点 7.1 フィギュアの判定 ジャッジはシークエンスに示された各フィギュア及びその構成要素の質を 10 点から 0 点の 間で 0.5 点刻みで独自に判定します。アンリミテッドの 4 ミニットフリーの判定に関しては 5.6.8 に別途記載します。 7.1.1 ジャッジの視点から、フィギュアに定められた判定基準から逸脱が見られない場合 は 10 点を与えます。逸脱があればそのフィギュアは 10 点からの減点方法を用います。 7.1.2 フィギュアの判定に関して、ジャッジは以下の指針に基づくこととします。 1. フィギュアの図形(基本形、半径、角度、高度、飛行方向、機首方位、バンク角を含む) は判定基準に則っていなければなりません。 2. 飛行の判定に関しては、8 章に記載します。 3. フィギュアの開始と終了は明確な水平ラインとなります。 4. ボックス内の風向によってオフィシャルウィンドを決定し、ジャッジが B 用紙か C 用 紙のどちらを使用するかを決定します。飛行するフィギュアはシークエンスに指定された 順に行います。 5. 複数の要素が組み合わせられたフィギュアでは、それぞれの要素を判定し、最終的にこ れらを総合して採点結果とします。 6. 航空機の飛行特性によるラインの長さや半径の大きさは判定の対象ではありません。 7. ネガティブフィギュアの判定基準はポジティブフィギュアと同様です。 7.1.3 フィギュアが判定基準から逸脱した場合、それぞれについて減点を行います。すべ てのフィギュアの形状(高度、方向、進路、バンク角)、航空機のフライトパスまたは姿 勢の逸脱は 5 度につき 1 点の減点となります。同様に、2.5 度につき 0.5 点の減点も可とし ます。 47 図 7.1.3.1 のように、アップラインを 75 度の角度で行ったハンマーヘッドでは、3 点の減点 が与えられ、最大 7 点の採点となります。また、図 7.1.3.2 のように 7.5 度超えたスナップ ロールには 1.5 点の減点が与えられ、最大 8.5 点の採点です。 7.1.4 グライダーの競技飛行 いくつかの重要な違いはありますが、パワーとグライダーの判定基準の基本原則は同じで す。しかし、曲技飛行機と比べ、グライダーの飛行速度と荷重の運用制限はさらに狭く、 またエルロンロールやスナップロールのロールレートは遅いものです。グライダーの多く は非対称翼を持っているため、通常飛行と背面飛行での飛行特性の違いをもたらします。 これらグライダーに見られる特性の違いと飛行制限は、グライダーの曲技飛行のフィギュ アとシークエンスの採点に影響を与え、常に考慮する必要があります。 7.2 フィギュアの開始と終了 7.2.1 シークエンスの最初のフィギュアは主翼が水平かつ水平飛行となった時点で開始と なります。フィギュアの終了は再び主翼が水平かつ水平飛行となった時点です。例外とし て、アレスティカタログのファミリー7.4.3.x ら 7.4.6.x に見られるスクエアとオクタゴンス クエアがあります。 逸脱した姿勢や進路などを次のフィギュアの開始前に修正した場合は、直前のフィギュア にのみ減点が与えられます。修正しない場合は両方のフィギュアに減点が与えられます。 7.2.2 航空機はフィギュア間を直線、主翼を水平、水平飛行で通常姿勢または背面姿勢で 飛行します。ピッチ、ロール、機首方位などの逸脱がフィギュア間の直線で見られた場合 は、5 度につき 1 点の減点を次に続くフィギュアへ与えます。グライダーにおいては、フィ ギュア間の直線は指示されたフィギュアの飛行に妥当なものであればどのような角度も許 容され、また常に同一である必要もありません。 48 ここで言う妥当とは、グライダーの姿勢が次に来るフィギュアに適切であり、またフィギ ュアの基本形に逸脱していないことを言います。例えば、グライダーがループを行うには 中程度の速度が求められ、そして続く 1/4 のロールをアップラインで行うハンマーヘッドで は高速度が必要です。この時、ループ前には水平に近いピッチが見られ、ハンマーヘッド 前には急なピッチ角度がありますが、これらの差は妥当と言えるものです。 7.2.3 明確な直線、主翼を水平、水平飛行がフィギュア間で見られない場合は、前後のフ ィギュアから 1 点ずつ減点されます。(図 8.4.1.1 参照) 7.3 0 点の採点 7.3.1 以下が 0 点が採点される状況です。 1. プログラムに示されたフィギュアが見られないとき。 2. プログラムにないフィギュアが追加されたとき。この場合は、追加されたフィギュアの 次のフィギュアに 0 点が与えられます。フィギュアの追加があっても飛行方向を正しく保 てる場合はインタラプションの減点はなしとします。ただし、追加されたフィギュアがタ ーンや 1/2 ロールなど、方向や姿勢を修正するものであった場合は 0 点を与えず、代わりに インタラプションの減点(4.16.3 参照)を与えます。 3. フィギュアがジャッジの手にする B 用紙または C 用紙から逸脱したとき。 (6.7.2 参照) ただし、フィギュアが追加された場合は 7.3.1.2 が適用されます。 4. フィギュアを X 軸の間違った方向へ開始、または終了、またはその両方を行なったと き。これは、ファミリー2、5、6 を除き、開始と終了の両方が Y 軸で行われるフィギュア において、ラインやパーシャルループが X 軸方向に行われる場合でも当てはまります。こ の X 軸の部分はジャッジが使用する B 用紙または C 用紙に表記されたように飛行する必要 があります。 (4.11.2 参照、図 6.13.5.2) 5. フィギュアの開始と終了のどちらもが Y 軸に沿って行われる場合で、フィギュアの開 始方向に対しての終了時の方向が、ジャッジが使用する B 用紙または C 用紙に表記と異な るとき。(4.11.2 参照、図 6.13.5.1) 6. 減点の加算が 10 点またはそれ以上に達したとき。 49 7. エアロバティックボックスへの初期進入の前に開始されたフィギュア、または完全に外 部で行ったフィギュアなど。エアロバティックボックスの進入はバウンダリージャッジに より判定されます。0 点の採点はチーフジャッジにより与えられ、バウンダリー侵害の減点 はないものとします。これはプライマリーカテゴリーには適用されません。 8. チーフジャッジによって定められたジャッジラインより背後から開始されたフィギュ ア。 9. フィギュアの一部または全体がデッドラインの外側で行われたとき。 10. スーパースローロールのロールレートが 10 秒/360 度以下であったとき。時間計測は チーフジャッジによって行われます。 11. 航空機の機械的な問題でフィギュアの飛行を中断されたが、競技者の責任によるもの と判断されたとき。(4.18.3 参照) 12. フリープログラムの飛行後、陪審員によってフィギュアの構成が不適合とされたとき。 (6.15 参照) 7.3.2 過半数による 0 点の採点 過半数を超えるグレーディングジャッジが該当フィギュアに 0 点を与えた場合、少数の採 点も 0 点に自動的に変更されます。万が一事実関係と判定との間に疑問がある場合は、チ ーフジャッジはスコアシートが回収される前に会議を開くことができます。(7.3.4 参照) 7.3.3 半数以下による 0 点の採点 グレーディングジャッジの半数または半数未満による 0 点の採点は成立しません。半数以 下による 0 点は自動的にアベレージとして他のグレーディングジャッジの平均点に変更さ れます。万が一事実関係と判定との間に疑問がある場合、チーフジャッジはスコアシート が回収される前に会議を開くことができます。(7.3.4 参照) 例 1: 5 人のジャッジによる採点: 8.5 - 7.5 - 0.0 - 0.0 - 8.0 2 人のジャッジによる 0 点は正立せず、以下のようになります。 (8.5+7.5+8.0)÷3=8.0 例 2: 4 人のジャッジによる採点: 6.5 - 0.0 - 4.5 - 0.0 2 人のジャッジによる 0 点は正立せず、以下のようになります。 50 (6.5+4.5)÷2=5.5 7.3.4 ジャッジによる会議 0 点かどうかの判断が困難になった場合は、チーフジャッジは出席するジャッジを召集し会 議を開くことができます。0 点の採点とそうでない採点とが混在した状況で、常に会議が必 要というわけではありませんが、事実確認が必要と認められる状況では行われるべきです。 満場一致の 0 点、または 0 点とアベレージの混在する状況では必要はありません。可能で あれば、競技者が空中待機または地上でエンジンを運転していない、休憩時に行うことが 望まれます。 1. 該当競技者のスコアシートは会議による最終決定が得られるまで、チーフジャッジが保 管します。 2. チーフジャッジは会議の内容を監督し、また事実関係について会議に参加することも許 されますが、ジャッジの認識に関わる内容に影響を及ぼしてはなりません。以下が事実関 係に関することです。 a. ロールやローリングターンの方向や回数 b. ロールやスピンが複合し、それぞれの回転が同方向か反対方向か c. スナップロールの種類がポジティブがネガティブか d. フィギュアの要素の欠落や追加(たとえばヘジテーションの欠落や追加) 3. チーフジャッジは出席するジャッジたちに問題点を再検討することを確認し、いかなる 競技者のどの飛行に関してもフィギュアの質や採点に対する検討はしないことを伝えた後 に、スコアシートを各ジャッジに返却します。そして、次に述べる 3 つの処置の何れかを 採択することを伝えます。 a. スコアシートの元の採点を採用する。 b. 採点を 0 点に変更する。 c. 0 点の採点を C(カンファレンスアベレージ)とし、採点が会議によって結論付 けられたことを示す。C の表記は、残る A や 0 点の採点を計算する前に取り扱われ ます。(7.3.7 参照) 4. チーフジャッジは問題解決の手助けをジャッジにできますが、いかなるフィギュアやプ レゼンテーションに対するジャッジの個人見解を述べることはできません。 51 5. 会議の終了後は、以降の再検討を一切禁止し、チーフジャッジはそれぞれのジャッジに 対し、採点の変更は上の 3 に示された方法 3 つのうち 1 つを選択できることを伝えます。 さらに、後の異議に対処するために、変更した場合も元の採点が判別できるよう記録した ままとし、またジャッジのイニシャルをスコアシートに記入してください。 6. 各ジャッジが再検討を終えた後、チーフジャッジはスコアシートを回収し、スコアディ レクターに渡す前に確認します。 7.3.5 シークエンスの判定は最初のフィギュアから始めます。エアロバティックボックス への初期進入の前に開始されたフィギュア、または完全に外部で行ったフィギュアは、バ ウンダリージャッジにより判定されます。そして、0 点の採点がチーフジャッジにより与え られます。(7.3.1.7 参照) 例: 競技者が最初のフィギュアをエアロバティックボックスの外部で飛行。2 番 のフィギュアをボックスの外部と内部で飛行。3 番から 9 番をボックス内で飛行。 10 番をボックス外で飛行。 そして、11 番と 12 番がボックス内で飛行したとします。 この場合、最初のフィギュアが 0 点、バウンダリー侵害が 2 番と 10 番に与えられ ます。 7.3.6 アベレージ 万が一、ジャッジがフィギュア、またはフィギュアの一部を視認できず、正確な判定が困 難なときは、アベレージと判定することができます。ジャッジはレコーダーに A(アベレー ジ)と記入することを伝えます。このアベレージと記入されたフィギュアはスコア集計時 に平均値として計算されます。 7.3.7 フィギュアの採点に A と 0 点が混在した場合は、 得点集計時に一時的に A を除外し、 7.3.2 と 7.3.3 により 0 点として扱われます。もし 0 点と認められれば全ての採点が 0 点と なります。もし 0 点が認められなかったときは、アベレージの記入は 0 点以外の採点の平 均として扱われます。 例 1: 8.0 - 7.0 - 0.0 - A - 7.5 ステップ 1: まず A を除外する。0 点は少数であり成立せず、採点に加え ない。 ステップ 2: 少数の 0 点はアベレージとして、次のように計算する。 (8.0+7.0+7.5)÷3=7.5 ステップ 3: A はさらにその平均として、次のように計算する。 52 (8.0+7.0+7.5+7.5)÷4=7.5 例 2: 5.5 - 0.0 - 0.0 - A - A ステップ 1: 2 つの A を除外する。0 点は過半数であり成立する。 ステップ 2: 全ての採点は 0 点として扱われる。 例 3: 8.0 - 6.5 - 0.0 - C - A ステップ 1: A を除外する。 ステップ 2: C(カンファレンスアベレージ)を以下のように計算する。 (8.0+6.5)÷2=7.5 ステップ 3: 0 点は少数であるために成立せず、アベレージとして扱われ る。 (8.0+6.5+7.5)÷3=7.5 ステップ 4: A は以下のように計算する。 (8.0+6.5+7.5+7.5)÷4=7.5 7.4 プレゼンテーション プレゼンテーションは飛行の終了後、ジャッジの全体的な感想を元に判定されます。8.6 に 判定基準を記します。 7.5 得点の計算方法 JAC 本部が認可したスコアリングソフトウェア、または以下に示した方法に沿って得点の 集計を行います。 7.5.1 各フィギュアの得点は得られた採点に K ファクターを掛けることによって得られま す。全ての得点を合計し、さらにプレゼンテーションの得点を加えたものがそのジャッジ による最終的な得点となります。 7.5.2 エアロバティックボックスのバウンダリーや高度制限の侵害、競技飛行の中断、不 適切な競技飛行の再開や合図の使用、その他の競技飛行に該当するペナルティは、チーフ ジャッジまたはアシスタントチーフジャッジによって、チーフジャッジペナルティフォー ムに記録されます。(補則 7 に記載) 7.5.3 チーフジャッジペナルティフォーム、または 4 ミニットフリープログラムのチーフ ジャッジワークシートは A 用紙とともに集計係に届けられます。チーフジャッジの手から 離れた全ての用紙は、陪審員の指示がある場合を除き修正はできません。 53 フリープログラムに不正な構成があった場合は、チーフジャッジペナルティーフォームに その旨を記録し、チーフジャッジはその競技者に関する全ての用紙を陪審員に渡し判断を 求めます。陪審員が確認を終了し、ペナルティーが追加されると判断されれば集計係に手 渡され、得点の集計が行われます。(6.16 参照) 7.5.4 集計時の注意点 1. チーフジャッジペナルティーフォームに記録されたペナルティは競技者の総合得点か ら差し引かれ、最終的な得点が得られます。(7.5.1 参照) 2. フリープログラムの不正な構成が陪審員に認められたときは、6.16 に基いてペナルテ ィの追加または減点を競技者の総合得点から差し引きます。 3. ジャッジが何らかの理由で途中退席し判定を継続できなくなった場合は、そのジャッジ による採点は該当プログラムの全競技者の集計から除外されます。 4. 失格(DQ: ディスクオリフィケーション)となった競技者の飛行は、集計から除外 されます。 5. 無効となった競技飛行は、集計係により全てのフィギュアとペナルティを 0 点とされま す。この得点は除外せず、カテゴリーの最終結果の判定に用いられます。 6. 天候などの理由によりプログラムの全競技者の飛行が完了することができなかった場 合は、集計係は該当する競技者の飛行を行われなかったものとし、集計から除外されます。 7.5.5 集計係による作業が終了した後、競技会責任者は競技者へ回収した A 用紙とペナル ティフォームを公開します。ただし、異議の申し立てが可能な期間の間は競技会責任者の 管理下にあるものとします。(3.16 参照) 7.5.6 RI(ジャッジの判定能力指数)の査定がある場合は、競技全般が終了するまでジャ ッジに通達はしません。 54 8章 判定基準 8.0 序文 以下に、7 章で述べた曲技飛行のフィギュアを判定するための一般原則を解説します。 フィギュアの最終得点は多くの要素から決定されますが、最も重要な要素は、水平面とエ アロバティックボックスの軸に対して、競技飛行で得られる相対的なフライトパスと航空 機の姿勢の組み合わせとなります。 8.1 フライトパスと姿勢 8.1.1 フライトパス フライトバスは航空機の形を無視して重心位 置を点として考え、その点の軌跡を見て下さ い。航空機の姿勢によらずに地平線や目の前 にかざした定規などを参考に判断します。 (図 8.1.1.1) 8.1.2 垂直姿勢 垂直ラインは、フライトパスではなく航空機の垂直姿勢で判 断します。無風であればフライトパスも垂直になりますが、 重要なのは航空機の姿勢です。垂直姿勢はゼロリフト軸(ZLA、 無揚力角)と呼ばれ、主翼が揚力を生み出さない姿勢と規定 します。 1. ゼロリフト軸が図 8.1.2.1 のように機体の縦軸と一致しな い事もあります。ジャッジは各機体のゼロリフト軸を決定し、 それを基にして判定します。練習フライトなどの機会に観察 し、上昇、降下時の正しい垂直姿勢を決定します。 2. 航空機の垂直姿勢の確認は垂直ライン上でのロール時にできます。完璧な垂直姿勢では、 ロールを行った際の主翼は常に地平線に対して水平です。特に、90 度ロールした際に軸の ずれが最も良く見えます。 3. ゼロリフト軸が機体の尾部を通過しない機体では、垂直ロール時に正しくロールしても 機体が螺旋を描いているように見えることがあります。まるでロール中に尾部がずれ、縦 軸を狂わせたように見えるため注意してください。この場合は、主翼が地平線に対して水 55 平であるかを確認することで正確な 判定が可能です。 4. もし少しでも風が吹いていれば、 フライトパスは地面に対し垂直では なくなります。ジャッジは機体の姿勢 を基に判定し、風の影響を完全に無視 しなければなりません。 (図 8.1.2.2) 垂直飛行はフライトパスでなく機体の姿勢によって判定します。図 8.1.2.2 の 2 機はゼロリ フト軸の姿勢で飛んでいるため、共に減点なしです。 8.1.3 45 度の飛行姿勢 45 度の飛行姿勢は垂直姿勢から 45 度傾いたものです。45 度のラインの判定を正確にする のは難しく、判定は注意深く行わなければなりません。航空機は完璧な 45 度姿勢で飛行し ていても、風の影響があればフライトパスは変化します。例えば、風上に向かって飛行し ているときのフライトパスは 45 度よりも深くなり、反対に風下に向かえば 45 度より浅く なります。 (図 8.1.3.1) 垂直飛行と同様にジャッジは風の影響は無視して、45 度の姿勢 の正確さを判定します。5 度につき 1 点(2.5 度につき 0.5 点)の減点です。 45 度ラインはフライトパスではなく姿勢で判定します。図 8.1.3.1 の 2 機は共に正確な 45 度姿勢であり、ラインを描く間にこの姿勢を保てば減点はありません。 8.1.4 グライダーの水平飛行の判定 グライダーにおいては、フィギュア間の直線は指示されたフィギュアの飛行に妥当なもの であればどのような角度も許容され、また常に同一である必要もありません。ここで言う 妥当とは、グライダーの姿勢が次に来るフィギュアに適切であり、またフィギュアの基本 形に逸脱していないことを言います。例えば、グライダーがループを行うには中程度の速 56 度が求められ、そして続く 1/4 のロールをアップラインで行うハンマーヘッドでは高速度が 必要です。この時、ループ前には水平に近いピッチが見られ、ハンマーヘッド前には急な ピッチ角度がありますが、これらの差は妥当と言えるものです。ただし、ラインの維持や 変化に対しての判定基準は通常通りに扱われます。 8.1.5 30 度ラインの使用について グライダーのスポーツマンとグライダーのインターミディエイト、及びグライダーでパワ ーのプライマリーを飛行する場合は、45 度ラインは垂直姿勢から 60 度の角度のライン(30 度ライン)として飛行が可能で、また引き続き 45 度ラインと判定されます。 8.2 判定と採点の基本 8.2.1 飛行面の移行 一つの飛行面から他の飛行面への移行は、すべて適当な一定の円弧(パーシャルループ) を描かなければなりません。円弧(パーシャルループ)の半径の大小は判定や採点の対象 ではなく、また角ばったフライトパスや高 G 機動に対しての加点もしてはいけません。 8.2.2 採点方法 競技者が完璧な飛行を行うものと仮定して、ジャッジは 10 点満点からの減点法で採点しま す。フィギュアが開始されたら、そのフィギュアが終了するまでの間、逸脱を見つける都 度に減点していきます。減点の合計を 10 点から減算して、そのフィギュアの得点をその場 で行います。フィギュアを判定し終えた後にその印象から採点する方法は、採点が不安定 で一貫性が得られないため避けるべきです。 8.2.3 要約 ジャッジの仕事は競技者の飛行の逸脱を見つけることです。例えるなら、重箱の隅をつつ くように減点します。完璧な飛行は滅多にあることではありませんが、もし逸脱を 1 つも 見出さなければ 10 点を与えます。惰性で同じような採点を行わないように気をつけてくだ さい。フィギュアを注意深く判定し、丁寧に採点すれば、逸脱の多いフィギュアにはしば しば 2 点 3 点という採点がつくこともありますし、素晴らしいフィギュアには 9 点、10 点 が付くこともあるでしょう。くれぐれも全体の印象から採点をしないよう気をつけてくだ さい。 8 点 9 点と素晴らしいフィギュアを飛行し続けた競技者が、突然 2 点とされてしまうフィギ ュアを飛ぶことも十分に有り得ることです。また、4 点や 5 点という低い採点を重ねてきた 競技者が、完璧に近い 90 度旋回を行うこともあり、この場合は 9 点や 10 点という採点も 57 可能なはずです。 最後に、最も重要なこととして、自身が見たことだけを判定し、採点するということを大 事にしてください。逸脱を見出せなかった場合に、 「何かミスがあっただろう」、 「ミスがあ ったはずだ」と予想して減点するようなことがあってはいけません。 8.3 風に対する修正 風に対する修正には、フィギュアの形を整えるための修正と、エアロバティックボックス 内での位置取りのための修正があります。 8.3.1 修正の必要性 ループやパーシャルループを持つフィギュアでは、一定の円弧を描くために風に対しての 修正操作が必要です。ジャッジから見て正確な円弧が描かれなければ減点が与えられます。 8.3.2 ウィンドコレクター 競技者はエアロバティックボックス内で飛行 することが求められています。風がボックス の X 軸に対して角度を持っている場合は、修 正操作なしにボックス内で飛行を続けること が難しくなります。 (図 8.3.2.1) 横風成分に よる移動を防止する 1 つの策はウィンドコレ クター(横風修正フィギュア)をシークエン スに組み込むことで、つまりこれは Y 軸方向 に向いて飛ぶフィギュアです。競技者はこの フィギュアを用いて風上に位置を修正し、後 に続く X 軸での演技を続けることができます。 よく考慮されたフリーは少なくとも 1 つかそ れ以上の横風修正フィギュアがあります。し かし、ノウンやアンノウンには意図的に十分 な横風修正フィギュアが含まれないこともあ り、その場合でも競技者はボックス内に留ま って飛行をする努力をしなければなりません。 一般的な横風への対処としては、ボックスの 軸に対して角度(クラブアングル)を取り、 58 横風による偏位を修正することです。 (図 8.3.2.2) ただし、ジャッジがこのクラブアング ルを確認した場合は 5 度につき 1 点の減点を行います。他の手段としては、フィギュアの フライトパスを斜めに傾けて飛ぶことで横風を修正することも可能です。もし、ジャッジ がヘディングやバンクに逸脱を認めた場合、それぞれに対し 5 度につき 1 点の減点を行い ます。飛行中の機体がボックス内で明らかに片方向に移動したことが確認できたとしても、 ジャッジがその方法や姿勢のずれに気付かない限り減点は与えられません。 8.4 曲技飛行の2つの基本構成要素:ラインとループ 8.4.1 ライン 全てのラインは水平線とボックスの軸に基づいて判定します。水平のラインは姿勢ではな くフライトパスによって判定します。水平なフライトパスを描くための姿勢は速度によ って変化します。 (図 8.1.1.1) 水平のフライトパスを維持している間、機首はボックスの X 軸または Y 軸に平行で保たれていなければなりません。フライトパス、機首の方向、バ ンクのそれぞれが、5 度ずれるごとに 1 点減点します。 1. 全てのフィギュアは開始と終了に明確な水平のラインを含みます。競技者が慌てて次の フィギュアを行い、連続するフィギュアの間に明確な水平ラインを描かなかった場合、終 了のラインがないフィギュアから 1 点、そして開始のラインがないフィギュアから 1 点の 減点がなされます。 (図 8.4.1.1、8.5.14 ファミリー7.4.3-7.4.6) 図 8.4.1.1 のようなフィギュアの間にラインがない飛行では、それぞれのフィギュアから 1 点ずつ減点を行います。 59 2. ラインの長さは、前後にあるパーシャル ループの円弧の終了部分と次のラインの開始 部分の間と定義されます。 (図 8.4.1.2) 3. ファミリー3 と一部のファミリー7のフ ィギュアを除き、フィギュア内のそれぞれの ラインの長さは同じである必要はありません。そのためジャッジはラインの長さが採点に 影響するフィギュアについて熟知しておく必要があります。例えば、ハンプティバンブの ラインは揃う必要はありませんが(A≠B)、スクエアループのラインは全てが同じ長さ(A =B=C=D)で揃わねばなりません。(図 8.4.1.3) 4. スピンの後の垂直ラインにロールがあるものとグライダーのスナップロールがライン にある場合を除き、ロールの前後のラインの長さは揃わねばなりません。ラインの長さを 揃えるためには、速度の変化に応じてラインを描く時間を変える必要がありますが、ジャ ッジは注意深く判定してラインの長さのみを比べます。垂直上昇でロールの後に同じ長さ のラインを描くには、ロール前よりも速度が遅いために時間が長くかかります。 5. グライダーでは、ポジティブスナップとネガティブスナップの開始速度は比較的狭い許 容範囲に収まっているため、競技者がライン上のどこでスナップロールを開始するかとい う問題について、ある程度の自由度がなければなりません。この理由から、仮にスナップ ロールがライン上の中心に存在していなくても減点は与えられず、スナップロールの前後 にいくらかの長さのラインがあればフィギュアとして成立します。グライダーに設けられ ているスナップロールに関するこの免除項目は、この章に記述されている全てのアレステ ィカタログの判定基準に適用されます。 6. フィギュア内のラインの長さを揃えなければならない部分で、同じ長さにならなかった 場合の減点は以下のように行います。(図 8.4.1.4) 60 a. 僅かな長さの差が確認できる - 1 点減点 b. 長さの比が 2:1 - 2 点減点 c. 2:1 を超える長さの差がある - 3 点減点 d. ロールの前後どちらかのラインが存在しない - 4 点減点 e. ロールの前と後の両方にラインが存在しない - 2 点減点 ラインの長さの判定は最初に描いたラインが基準となります。ロールの前または後のライ ンが確認出来ないほど短い場合は、上の 3 に 1 点の減点を追加し、つまり合計 4 点の減点 とします。もし、ロールの前と後の両方にラインが確認できない場合は 2 点の減点です。 例: 図 8.4.1.4.d は 45 度の上昇ラインに 1 回転のロールがあるフィギュアです。ここで、 競技者はロールの後すぐに水平ラインに移行しました。ロール後のラインがないというこ とは、ラインの長さの比は 2:1 以上で 3 点の減点、さらにラインがないため 1 点の減点、 計 4 点の減点となります。 注:図 8.4.1.4 の例は、ロール前後のライン部分のエラーについての減点ですが、ファミリ ー3 とファミリー7.4.3 から 7.4.6 のヘジテイション・ループフィギュア内のラインについ ても同じ考え方が適用されます。 7. 90 度と 45 度のラインは全てパーシャルループに続いて行われます。このパーシャルル ープの間は迎角が非常に大きくなるため、機体の姿勢とフライトパスは一致しません。そ のためパーシャルループを止めてラインを描き始めたときも、フライトパスは迎角の大き 61 さの分だけずれることになります。このような理由により、90 度、45 度のラインの判定は フライトパスではなく姿勢に基づいて行われます。 8.4.2 ループとパーシャルループ ループはファミリー7 のフィギュアですが、パーシャルループは他の全てのファミリーに不 可欠な要素ですから、他のファミリーの説明の前にループについての説明を行います。 1. ループは一定の半径で円弧を描きます。例えば完全な 1 回転のループであれば、水平ラ インから始まり水平ラインで終わるというように、フィギュアの開始と終了は明確なライ ンを描きます。もちろんパーシャルループに伴う 45 度と 90 度のラインはフライトパスで はなく、姿勢でラインを判断されます。 ループやパーシャルループを飛ぶ間は、速度の変化に応じて、ピッチ変化の角速度も変化 させなければ一定の半径の円弧は描けません。速度が遅くなるにつれてピッチの変化率も 減らす必要があります。それゆえピッチの変化率はループが一定の半径で描けているか判 断する助けになります。もし、ループの上の方でピッチの変化率が変わらなければループ の半径が小さくなったことを示しています。この角速度の変化は、パーシャルループの間 にラインが入っているような場合に役にたつ判断材料です。 ループやパーシャルループの半径の変化に明確な判定基準はありません。ジャッジは客観 的でかつ一貫性のある判定基準を考えねばなりません。一つの方法としては、ラインの判 定と同様に(図 8.4.1.4) 、ループの最初の 1/4 を基準として、次の 1/4 ごとに、わずかでも 半径の変化があれば 1 点、半径が半分(2:1)になれば 2 点と減点するものがあります。 その他の採点方法であっても、客観性と一貫性が保たれた方法であれば問題ありません。 2. 全てのパーシャルループは円滑で明確な、一定の半径を描く必要があります。例えば、 図 8.4.2.1 のファミリー1 のフィギュアでは、水平ラインから 1/4 ループ、垂直ライン、1/4 ループで水平ラインへと移行するフィギュアです。8.4.3 で述べるように、頂上部分の 1/4 62 ループの半径 b が最初の 1/4 ループの半径 a となっていても減点はありませんが、 図 8.4.2.2 の頂上の 1/4 ループ B のように鋭角になってはいけません。 3. フィギュア内のループ部分の前後にロールがある場合は(ロールの記号がラインの中心 にないもの) 、ロールとループの間にラインが存在してはいけません。ロールとループの間 にラインが見えた場合、その長さに応じて少なくとも 1 点以上の減点をします。ただし、 これはロール(またはループ)が完全に終わる前に、次のループ(またはロール)を始め るという意味ではありません。逆方向へのロールなどと同様に、短い一拍は減点してはい けません。 4. ループまたはパーシャルループの円弧部分にロールが配置されているときは、円弧を引 き続き保ちながらロールします。ロール部分で直線を描いてしまった場合は少なくとも 2 点の減点です。 8.4.3 パーシャルループの半径の比較 8.4.2 で述べたように、全てのループまたはパーシャルループの半径は一定でなければなり ません。さらに、フィギュア内に複数のパーシャルループを含む場合は、それぞれのパー シャルループが互いに同一半径であることが求められているフィギュアも存在します。こ のため、競技者とジャッジは、フィギュア内のパーシャルループの半径が等しくなければ ならない場合と、その必要がない場合の、どちらも理解していなくてはなりません。いく つかの例外を除き、アレスティカタログの表示の方法で判断できます。(図 8.4.3.1) 1. パーシャルループが円弧で表示されているフィギュア フィギュア内に複数のパーシャルループがあり、それらが円弧で描かれている場合は、そ のフィギュア内において互いに同一半径でなければなりません。例外は、ファミリー8.8(ダ ブルハンプティーバンプ)で、これらについては上下のハーフループ部が互いに異なる半 径であっても許容されます。 2. パーシャルフープが角で表示されているフィギュア フィギュア内に複数のパーシャルループがあり、それらが直角や鋭角などの角で描かれて いる場合は、それぞれの半径が互いに同一である必要はありません。例外は、ファミリー3 (ラインのコンビネーション)と、ファミリー7.4.3.x から 7.4.6.x(ヘジテイションループ) です。 下の図 8.4.3.1 に、これらの判定基準が適用されるフィギュアを例として掲載します。同一 半径であることが求められるのは、ファミリー3 とファミリー7.4.3.x から 7.4.6.x のヘジテ 63 イションループです。また、これらは一部を例として掲載しており、アレスティカタログ の複数のパーシャルループを持つフィギュア全てに適用されます。 8.5 アレスティエアロバティックカタログの各ファミリーの解説 フィギュア内におけるパーシャルループの半径の比較についての判定基準(8.4.3 参照)は、 適用できるすべてのフィギュアに適用されますが、以下に述べるアレスティ・ファミリー とサブファミリーの個々の説明においては繰り返しになるので省略しています。 8.5.1 ファミリー0.0 ウィングオーバー ウィングオーバーはグライダーのスポーツマ ンとグライダーのインターミディエイトのみ に許可されたフィギュアです。仮カタログ番号 として 0.0 が与えられ、K ファクターは 8、ア レスティシンボルは図 8.5.1.1 に示します。 ウィングオーバーはコーディネイテッド(釣合い)された上昇旋回から始まり、旋回は上 昇の開始の直後から開始されます。上昇と旋回はバランスよく行われなければならず、上 64 昇旋回の頂上では、機首方向は 90 度変化し、主翼は水平線に対して垂直、そしてグライダ ーの縦軸は水平であることが判定基準です。採点には 5 度=1 点ルールが適用されます。ウ ィングオーバーは引き続き旋回を継続しますが、頂上以降は下降旋回となり、水平飛行へ 移行したときは機首方向は 180 度反対を向きます。この 180 度旋回の際のターンレートは 一定で、90 度地点でロールの切り替え時に僅かなロールの停止がある以外はバンク角の変 化は一定かつ滑らかでなければなりません。ロールレートやターンレートの変化や完全な 停止には 1 点を超えない範囲での減点とします。 8.5.2 ファミリー0.1-0.2 クォータークローバー クォータークローバーはパワーとグライダーのスポーツマン、及びグライダーのインター ミディエイトに使用されるフィギュアです。仮カタログ番号として、図 8.5.2.1 に示すよう に上昇 1/2 ループでロールするものをファミリー0.1、K ファクターは 16、図 8.5.2.2 のよ うに下降 1/2 ループでロールするものをファミリー0.2、K ファクターは 13 とします。 クォータークローバーはループの円弧を保ちながら、ループの前半で 1/4 ロールする(ファ ミリー0.1、図 8.5.2.1)か、後半で 1/4 ロールして(ファミリー0.2、図 8.5.2.2)、フィギュ アの終了時には開始時の機首方向から 90 度変化します。ファミリー0.1 のクォータークロ ーバーは、ピッチアップと同時にロールを開始し、一定のロールレートを保ち、頂上では 主翼は水平、ピッチも水平で機首方向は開始から 90 度変わっています。残りの 1/2 ループ は通常通りで、ファミリー7.4.1.1 のループの後半と同様に行います。 ファミリー0.2 のクォータークローバーの前半は 7.4.1.1 の前半と同じループです。前半の 1/2 ループが終わった瞬間から、一定のロールレイトを維持して 1/4 ロールで残りの 1/2 ル ープを行い、1/2 ループが終わった瞬間に主翼も水平となります。 ループ部分は一定の半径の円弧を保つために風に対する修正が必要で、開始と終了の高度 は一致しなくてはなりません。ロールレートの変化は見つけるごとに1点減点します。 65 8.5.3 ファミリー1 ラインとアングル ファミリー1.1.1 から 1.1.11 については前述の通りです。注記として、ファミリー1.1.1 を 除いたファミリー1 のフィギュアはアレスティシンボルに描かれた通りに飛行するという 意味ではありません。アレスティエアロバティックカタログでは、180 度未満のパーシャル ループは鋭角で描かれますが(図 8.5.3.1) 、実際の飛行では滑らかに半径を持って飛行する こととされています。 (図 8.5.3.2) ロールが 45 度または 90 度のライン上に設けられた ときは、ロールの前後のラインの長さは均等になるようにします。フィギュア開始時と終 了時の高度は同じである必要はありません。 ファミリー1.2.3.1 と 9.1.2.2 の複合フィギュアでは、 a、b、c それぞれの半径は異なっても許容され、A と B の高度差もまた許容されます。 8.5.4 ファミリー2 コンペティションターン 競技で行われるコンペティションターン(図 8.5.4.1)は通常の調和のとれたターンとは違 います。競技でのターンは次の 3 つの段階に分けることができます。 1. 機首方向を維持した状態で旋回方向へバンクする 2. 旋回によって、90 度、180 度、270 度、360 度のいずれかの機首方向の変化を行う 3. 最終的な機首方向を維持した状態でロールアウトし水平直線飛行に戻る 機首方向の変化は少なくとも 60 度のバンク角を確立した直後に開始されなくてはいけませ ん。ターン中はバンク角、ターンレート、そして水平飛行を維持します。しかし、ターン 中にウィンドコレクションは必要はなく、旋回半径が変化しても許容されます。仮に 360 度のターンを行った後に開始地点に正確に戻ることはありません。 一定のターンレートで旋回し、目標とする方向に到達したと同時に旋回を止め、最終的な 機首方向を維持したまま旋回開始時と同じロールレートでロールアウトし、水平直線飛行 へ移行します。ネガティブターン(背面飛行でのターン)の判定基準はポジティブターン (通常飛行でのターン)と同じく扱われます。 66 判定基準 1. バンクは 60 度以上が少なくとも必要です。5 度の不足毎に 1 点の減点となります。ロ ールイン時のロールレートは競技者次第ですが、ジャッジはこのロールレートを確認し、 下の 6 の判定時に用います。 2. 一度確立したバンク角は変更しません。ターン中のバンク角の変化には、5 度につき 1 点の減点です。 3. ターンレートは一定です。変化には 1 点を超えない範囲で減点します。しかし、強い風 が吹く中でのターンではターンレートが同じであっても変化したように見えることもあり ます。もしこの変化に対する確証がなければ、減点をするべきではありません。 4. ターン中は一定の高度を維持します。何らかの変化があれば、水平から 5 度の変化につ き 1 点の減点、または 100ft の高度差につき 1 点の減点とします。ジャッジはターン中に航 空機の移動が、まるで高度の変化のように見えることも認識し、注意深く判定しなくては いけません。 5. ターンの終了では、目標とする X 軸または Y 軸の方向に到達した後、確立したバンク 角を維持した状態でターンを停止します。機首方向が目標とする X 軸または Y 軸に対して 角度が確認できるときは 5 度につき 1 点の減点が与えられます。ターンの終了前にロール アウトを開始したときは、ロールとターンが混合した範囲に対し、5 度につき 1 点の減点と なります。 6. ロールアウト時のロールレートはターン開始時 のロールインと同じです。異なる場合は 1 点の減点 が与えられます。 8.5.5 ファミリー2 ローリングターン ファミリー2 の大部分はローリングターンから構成されます。ローリングターンは、目標と する方向へのターンと組み合わされたロール、あるいはターンに統合されたロールです。 ターンと同方向にロールするものは「ロールイン」 、または「インサイドローラー」などと 呼ばれ、ターンとは逆方向にロールするものは「ロールアウト」 、または「アウトサイドロ 67 ーラー」と呼ばれます。(図 8.5.5.1) また、1 つのフィギュアに両方が入り、交互に行われ ることもあります。 ターンとロールを調和させるということは、タ ーンレートとロールレートがローリングターン を通して一定であるということです。例外はロ ール方向が切り替わるときで、ここではロール は僅かに一時停止し、その後逆方向にローリン グターンを開始します。 ローリングターンの判定方法をイメージし易くするために、360 度ターンに 4 つのインサイ ドロールを含む、ファミリー2.4.7.1(図 8.5.5.2)を例にします。開始方向の水平直線飛行 からターンと同方向へロールが同時に始まります。ジャッジは機首方向が 45 度、135 度、 225 度、315 度となったそれぞれの方向で背面姿勢となり、また 90 度、180 度、270 度の それぞれの方向では通常姿勢になると予測できます。 ただし、この方法はあくまでジャッジがローリングターンを判定するときの補助のためで、 仮にこれらの方向と飛行姿勢が一致しなくても減点は行いません。ローリングターンの判 定基準は、ロールがインサイドかアウトサイドか、ロールレートの変化、ターンレートの 変化、そして高度変化に対してのみです。 ローリングターンにおけるロール方向の切り返しは、主翼は水平で一時停止した後に行わ れます。ロール方向の切り返しが主翼が水平となる手前、または水平を超えた後で行われ た場合は 5 度につき 1 点の減点となります。 ローリングターンの判定基準は以下の通りです。 1. ターン終了時にロール数が多過ぎたり少な過ぎた場合は 0 点となります。 2. ロール方向を間違えた(インサイドを指定されているフィギュアをアウトサイドにロー ルするなど)は 0 点になります。誤りに気付いて 45 度のバンクを超える前に正しい方向に ロールを切り替えた場合、5 度につき 1 点減点します。 3. ローリングターンではスローロール(エルロンロール)として行われます。スナップロ ールと確認できたものには 0 点が与えられます。 68 4. ロールレートの変化は 1 点以内の減点です。 5. ロール方向の切り返しを除いて、ロールの完全な停止には 1 点の減点です。 6. ターンレートの変化は 1 点以内の減点です。 7. 高度変化には 5 度につき 1 点または 100ft につき 1 点の減点です。 8. ロール方向の切り返しの際に主翼が水平でなければ、5 度につき 1 点の減点です。 9. ターンが終了したときにバンク角が残っていれ ば、5 度につき 1 点の減点です。 10. 最後のロールが終わったときに機首方向が外 れていれば、5 度につき 1 点の減点です。 8.5.6 ファミリー3 ラインのコンビネーション このファミリーのフィギュアのパーシャルループの半径 a、b、c は全て同じとし、またラ イン A と B も同じ長さとならなくてはいけません。 (図 8.5.6.1) 8.5.3 のファミリー1 の フィギュアに似ていますが、判定基準は異なるため注意が必要です。 8.5.7 ファミリー4 なし 8.5.8 ファミリー5 ハンマーヘッド 基本的なハンマーヘッド(図 8.5.8.1)は、1/4 ループに続く垂直ラインでの上昇から始まり ます。航空機は垂直ラインの頂上でヨー軸周りに 180 度のピボット旋回を行い、垂直ライ ンを下降します。その後、航空機が 1/4 ループを完了し、水平ラインを飛行して終了します。 69 ハンマーヘッドのフィギュアはファミリー5.3.1.x(図 8.5.8.2)にあるように、45 度ライン からの開始や終了を組み合わせたものも見られます。ハンマーヘッドのフィギュアではロ ールが垂直ラインの上昇や下降で見られたり、加えて 5.3.1.x から 5.4.4.x では 45 度ライン 上でロールが存在することもあります。 ファミリー5 の判定基準は以下の通りです。 1. 上昇と下降の垂直ラインはゼロリフト軸で飛行 していること。(8.1.2 参照) 2. 垂直ライン及び 45 度ラインの姿勢のずれには、 5 度につき 1 点の減点を行います。 3. 垂直ラインまたは 45 度ラインにロールがある 場合は、ロールの前後のラインの長さを同じとします。 (図 8.5.8.3) 長さが不均等な際の 減点は 8.4.1.6 を参照してください。 4. 垂直ラインや 45 度ラインの上昇と下降でのラインの長さは同一である必要はありませ ん。そのため、ハンマーヘッドの開始と終了の高度は必ずしも同一とはなりません。 5. 垂直ラインでの上昇と下降では、主翼が水平線に対し平行です。ヨー軸周りの 5 度につ き 1 点の減点を行います。 6. ピボット旋回する際は、垂直方向の動きが停止し、垂直面に沿ってヨー軸周りに転回し なければなりません。ハンマーヘッドの頂上で航空機が完全に停止し、静止した CG(重心 位置)を中心に転回することが理想です。この理想とするピボット旋回は航空力学的に不 可能ですから、主翼幅の 1/2 の長さを半径とする許容範囲内で行われることと規定していま す。 (図 8.5.8.4.a) ジャッジはピボット旋回の開始と終了の CG の位置を確認し、CG が 先の許容範囲の円を超えたとき、主翼幅の 1/2 の長さにつき 1 点の減点を行います。(図 8.5.8.4.c、及び図 8.5.8.4.d) CG が主翼幅の 1/2 以内に留まれば減点はありません。 (図 8.5.8.4.b) 70 71 ただし、この減点はヨー軸周りのピボット旋回に対するもので、その他のピッチやロール の動きが発生した場合は、5 度につき 1 点の減点が追加して与えられます。 ピボットの開始が理想の時点よりも早い場合(アーリーキック、またはフライオーバー)、 CG が描く軌道は上昇し続けます。(図 8.5.8.4.c) これも CG が主翼幅の 1/2 の範囲で留ま る限り減点はしません。 (図 8.5.8.4.b) ジャッジはそれが本当にフライオーバーなのか、風の影響によってそう見えているだけな のかを見極めなくてはなりません。風によるものと純粋なフライオーバーは、CG の動きを 見ることによって判断できます。例えば、ピボット旋回開始後の CG の上方移動が主翼幅 の 1/2 の長さ以内に収まっているにも関わらず、横方向への移動が主翼幅の 1/2 以上確認で きた場合、それは風による影響であってフライオーバーではありません。 反対に、ピボット旋回の開始が理想よりも遅い場合(レイトキック)は、主翼側から下方 向にスライドしたり、またはピボット旋回の前に機体尾部から下方へ落ちるような動きを 見せます。 これも CG の移動が主翼幅の 1/2 の範囲内に収まっている限り減点はありません。 もし許容範囲を超えれば、判定基準通りに 1 点以上の減点になります。(図 8.5.8.4.d) 8. 航空機のピボット旋回の速さは判定基準ではありま せん。 9. ピボット旋回時の主翼は垂直面に沿っていること、そ してピボットの前後の航空機の姿勢は垂直です。もしヨ ー軸周りの動き(ピボット)以外の動きがあれば、それ は一般的に「トルクした」 (図 8.5.8.5)と表現され、5 度 につき 1 点の減点が与えられます。 8.5.9 ファミリー6 テールスライド 垂直の上昇ラインの頂点での機動を除いて、このフィギュアの判定基準はハンマーヘッド に準じます。テールスライドでは、頂点で航空機が停止した後、機体が少なくとも胴体の 1/2 の長さを後退します。このフィギュアを滑空機で行うときは、その飛行特性のため後退 が目視できれば構いません。航空機が十分に後退しなかったとき、また後退せずハンマー ヘッドのようにピボットしたときは判定は 0 点となります。後退時の航空機の姿勢は垂直 で、かつ機首が前後左右に傾かずに行われなければなりません。姿勢の逸脱には 5 度につ き 1 点の減点が与えられます。 72 テールスライドによって後退した後、機体は前後に裏返って降下へと移行します。多くの 場合、裏返る際に機首が振り子のように大きく動きますが、この振り子現象の有無につい ての判定基準はありません。振り子現象の大きさは、後退量や航空機の型に左右されるた め、フィギュアの判定に影響がないように配慮されています。 テールスライドには 2 種類あり、1 つはホイールダウン(キャノピーアップ)、もう 1 つは ホイールアップ(キャノピーダウン)です。ホイールダウンテールスライドは図 8.5.9.1 に 示すように曲線部分が実線で描かれ、ホイールアップテールスライドでは図 8.5.9.2 のよう に曲線部分が破線となります。 テールスライドは正しい飛行方向と飛行姿勢が保たれて行われたとしても、テールスライ ドの方向、つまりホイールアップかホイールダウンかを誤って行われることがあるため、 注意深く判定しなくてはなりません。主翼は水平を保っていなければならず、横方向へ落 ちるようなものや、航空機のトルクによって姿勢を崩したものも減点が与えられます。ま た、チーティングと呼ばれる垂直上昇中の予備動作にも注目してください。これは指定さ れた方向へのテールスライドを失敗無く行うための競技者による予備動作の一つで、後退 直前に行われることがあります。(図 8.5.9.3) これらには 5 度の逸脱につき 1 点の減点が与えら れます。この垂直上昇中の予備動作は後退中にも 続くことが多いものです。後退も垂直面に沿って 行われるべきものですから、後退中に垂直姿勢か らの逸脱が見られれば同様の減点を与えます。開 始と終了の 1/4 ループは同じ半径であることが 求められますが、開始と終了の高度の変化に減点 はありません。 これらファミリー6 に属するフィギュアにロール要素が追加されるときは、ロールの開始前 と終了後のラインの長さは均等でなければなりません。垂直降下ラインでは、ロールの開 73 始前に垂直降下の姿勢を確立して、ダウンラインを設定することが求められます。 以上を要約すると、テールスライドでは航空機が垂直上昇ラインへ滑らかに移行し、主翼 は水平を保ち垂直姿勢を保ったまま完全に一時停止します。指定された量を後退した後、 主翼が片方へ落ちたり、機首が縦軸周りに回転することなく、指示された方向へ裏返り、 垂直降下姿勢になります。その後ダウンラインを飛行し、1/4 ループを描いて水平飛行へと 移行して終了となります。 8.5.10 ファミリー7 ループ、S、エイト ループの半径の大きさは航空機の飛行性能に左右されるため、判定基準ではありません。 小さなループが高い得点、または低い得点とされることはなく、ループの半径の変化が判 定の対象とされています。 8.5.11 ファミリー7.2 ハーフループ ハーフループは風の影響を考えて半径を一定でなくてはなりません。 ハーフループがロールに続いて行われるときは、ロー ルの直後にハーフループを行います。間に直線が見え た場合は 8.4.2.3 に基づいて減点します。ハーフルー プをロールの完了前に始めた場合は、残ったロールの 角度 5 度毎に 1 点の減点です。 ハーフループの後にロールがある場合も間に直線は描きません。直線が見えた場合は 8.4.2.3 に基き減点します。ハーフループが完了前にロールを始めた場合は、残されたルー プ部分の 5 度につき 1 点減点します。(図 8.5.11.1) 8.5.12 ファミリー7.3 3/4 ループ 通称ゴールドフィッシュとも呼ばれます。45 度ライン の長さは 3/4 ループの半径に関連はありません。このた め、2 つの 45 度ラインが異なることも、また開始と終 了高度が 3/4 ループと一致していなくても許容されま す。45 度ライン上のロールはラインの中心にあること が必要です。 (図 8.5.12.1) 8.5.13 ファミリー7.4.1 - 7.4.2 フルループ ループは半径が一定である必要がありますから、常に風に対して修正操作を行います。 74 この修正はループの円形状を保つためのもので横風の影響は無視して構いません。ループ の終了地点が風下側に横移動しても減点とはなりませ ん。フルループでは開始と終了の高度が同じとなって おり、高度差があれば減点します。 (図 8.5.13.1) ループ中は横風に対しクラブは取らず、主翼は水平を 保ちます。これらも逸脱があれば 5 度毎に 1 点の減点 法を用いて採点します。 ループの頂点にロールが設けられた場合は、開始から終了までがループの頂点で均等に行 われ、ループの半径はロールの間も維持されます。もしロール中にループが直線となって しまった場合は少なくとも 2 点の減点です。ロールの中心がループの頂点にない場合は、5 度につき 1 点減点します。ロールコンビネーション(複数のロール)がある場合、ロールコン ビネーション全体の中心がループの頂点に来る必要があります。2 つのロールが配置されて いても、ロールの内容によっては二つのロールの中間は頂点に来ません。 ジャッジに求められるものは、常に同じ基準でループを判定する方法を確立することです。 ループを 1/4 ごとに分割して変化を見定めてループの半径を判断する方法もその一つです。 もしループの半径が直前の四分円から変化した場合は、その度合いに応じて減点します。 一般的な失敗として、縦方向の直径が横方向よりも大きくなるというのがあります。これ は L シェイプなどと呼ばれます。(図 8.5.13.2) ループが横方向に大きいこともあり、これ はエッグシェイプ、またはパンプキンシェイプなどと呼ばれます。(図 8.5.13.3) 他の一 般的な失敗例に、最後の 1/4 円の半径が広がりeシェイプとなるものがあります。 (図 8.5.13.4) どのような判定基準であれ、一貫性のある採点をしてください。 8.5.14 ファミリー7.4.3 - 7.4.6 スクエアループ、ダイアモンドループ、オクタゴンルー プ スクエアループ、ダイアモンドループ、及びオクタゴンループなどはヘジテイションルー プと呼ばれ、ループに均一な長さのラインと、同一の半径を持つパーシャルループが含ま 75 れたものです。その中に含まれる水平ラインはフライトパス、またバーティカルラインと 45 ラインは航空機の姿勢で判断します。無風時を除いて、これらのフィギュアが開始と同 じ場所で終了となることはありません。 スクエアループとオクタゴンループの最後の水平ラインはフィギュアの終了部分です。も し、長さに関わらず水平ラインが存在すれば、図 8.4.1.1 に示すフィギュア間のラインの欠 落に関する減点は与えられません。ただし、最後の水平ラインで描かれるラインの長さは 最初の水平ラインのものと同じでなければなりませんから、この長さの水平ラインを描く まではフィギュアは継続されているものと考えます。 (図 8.5.14.1) 次に続くフィギュア、 またはインタラプションや競技終了を意味するウィングディップが、最後の水平ライン上 で最初の水平ラインの長さを描き終える前に行われた場合は、8.4.1.6 に示すようにライン の長さの不一致として減点が行われます。仮に、スクエアループの最後の水平ラインが完 全に欠落したフィギュアでは 4 の減点が、また次に続くフィギュアには開始時の水平ライ ンの欠落として 1 点の減点が与えられます。 1.ラインの長さは A=B=C=D です。 (表記上、C のラインは長く描いています) 2. 判定は最後の D のラインが A と同じ長さを 描くまで継続します。 3. ライン D が A よりも短い場合は、8.4.1.6 に 則り減点されます。 スクエアループやダイアモンドループにロールが含まれる場合は、ロールはラインの中心 で行われるものとします。これらのヘジテイションループでは、パーシャルループの角速 度の変化と、ラインを描く時間に変化があることが見えます。ジャッジはラインの長さだ けに注視するのではなく、飛行速度の変化がパーシャルループの半径にも影響を及ぼすこ とにも注意を払わなくてはなりません。 8.5.15 ファミリー7.4.7 - 7.4.14 リバーシングホールループ リバーシングホールループとは、1/4 ループまたは 3/4 ループのどちらかを終えた後に、飛行方向を逆にして 終えるフィギュアです。 (図 8.5.15.1) 3/4 ループと 1/4 ループの半径は互いに等しく、また 2 つのループ 76 部分は連続して行われ、目視できる直線が間にあってはいけません。2 つのループ間に直線 が確認されたときは 2 点の減点が与えられます。また開始と終了の高度は同一となるよう にします。 このフィギュアにはロールが開始と終了のライン、そしてループの頂上に設けられること があります。開始と終了のライン上にロールが設けられたときは、ロールとループの間の ラインには 8.4.2.3 に基いて減点が行われます。もしロールがループの頂上に設けられてい れば、ロールはループの頂上から均等に、またループの形状を維持したまま行われます。 ループ頂上でのロールの判定基準についてはファミリー7.4.1 - 7.4.2 を参照してください。 8.5.16 ファミリー7.5.1 - 7.5.8 ホリゾンタル S 2 つの 5/8 ループは同一半径で、それらの間のラインは飛行姿勢が 45 度であることで判定 されます。ホリゾンタル S のフィギュアで難し いことは、ループ部分の高度が開始と終了の高 度と一致することです。ロールが開始と終了の ラインに設けられた場合の判定基準は 8.4.2.3 を、また 45 度ライン上にロールがある場合は 8.4.1.6 の判定基準を用います。 (図 8.5.16.1) 8.5.17 ファミリー7.5.9 - 7.5.10 バーティカル S バーティカル S は 2 つのハーフループが反対向きに組み合わさったものです。 (図 8.5.17.1) これら 2 つのハーフループの間にロールがない場合は、間に直線を設けずに、連続してハ ーフループが行われます。 ロールが 2 つのハーフループの間に設けら れた場合は、ロールの前後にラインはありま せん。このロールは最初のハーフループが終 了した時点ですぐさま開始され、またロール が終了した時点ですぐに次のハーフループ が行われることが必要です。もし、ラインが ロールの前または後に見られた場合は、ラインの長さによって少なくとも 1 点の減点が与 えられます。 8.5.18 ファミリー7.8.1 - 7.8.8 ホリゾンタルエイト ホリゾンタルエイト内の 5/8 ループと 3/4 ループはそれぞれの半径が同じで、高度もまた揃 うことが必要です。開始と終了の高度は同一でなければなりません。例外として、サブフ 77 ァミリー7.8.1 から 7.8.4 の最後の 45 度ラインにロールが複数設けられた場合(図 8.5.18.1) と、サブファミリー7.8.5 から 7.8.8 の最初の 45 度ラインにロールが複数設けられた場合に は、45 度ラインを延長し、開始または終了のラインが 3/4 ループ部分の上または下に位置 してもよいことに(短縮は不可)なっています。 もし、ロールが 45 度ライン上に設けられた場合 は、ロールの前後のラインの長さが同じとなるよ うにします。判定基準と採点には 8.4.1.6 を参照 してください。 グライダーでは、5/8 ループと 3/4 ループ、そし て開始と終了の高度が同一でなくても許容されます。 8.5.19 ファミリー7.8.9 - 7.8.16 ホリゾンタルスーパーエイト ホリゾンタルスーパーエイトにはロールの設定も有り得る 3 つの 45 度ラインがあり、判定 基準も極めて特徴的です。パワーとグライダーで判定基準が異なる点を以下で説明します。 1. パワーの判定基準 図 8.5.19.1 に示すように、開始と終了時のホリゾ ンタルラインは 3/4 ループと一致することとされ ていますが、これには 3 つの例外があります。最 初の 45 ラインか最後の 45 ラインのどちらか、ま たはその両方に、複数のリンクされたロール、リ ンクされていないロール、またはオポジットロール(それぞれ異なる方向へのロール)が ある場合は、これら複数のロールが含まれる 45 ラインについて、図 8.5.19.1 に OK マーク の点線で示すように、3/4 ループの上方または下方へ延長することが許容されます。しかし、 短縮することには 2 点までの減点が与えられます。 2. グライダーの判定基準 グライダーでは、このフィギュアは 7.3.1 から 7.3.4 の 3/4 ループが 2 つ組み合わさったも のと考えられます。それぞれの 45 ラインの長さが異なるものであっても許容されますが、 ポジティブ及びネガティブのスナップロール(8.4.1.5)を除き、ロールはラインの中心に あることが求められます。フィギュア内の 3/4 ループがそれぞれ同じ高度で行われる必要も なく、また開始と終了のホリゾンタルラインと、3/4 ループとの高度に厳密な基準もありま せん。 78 8.5.20 ファミリー7.8.17 - 7.8.22 バーティカルエイト バーティカルエイトは 1 つのループの上にもう 1 つが重なることで完成します。サブファ ミリー7.8.17 から 7.8.20 は 2 つのループが 2 つとも開始高度から上側、または下側に描か れます。サブファミリー7.8.21 から 7.8.22 は 1 つのループが開始高度から上側、もう 1 つ は下側に描かれます。どちらも開始した高度と同じ高度で終了することが求められます。 ロールが 2 つのループの間に設けられた場合は、ロールの前後にラインはありません。こ のロールは最初のループが終了した時点ですぐさま開始され、またロールが終了した時点 ですぐに次のループが行われることが必要です。もし、 ラインがロールの開始前または終了後に見られた場 合は、ラインの長さによって少なくとも 1 点の減点が 与えられます。このフィギュアの判定はフルループと 同じ判定基準で行われます。また、間にロールが設け られた場合を除き、適切に風の影響を修正したものは、 2 つのループが上下に互いに接していることになりま す。(図 8.5.20.1) 8.5.21 ファミリー8 ライン、アングル、ループの複合 このファミリーにあるフィギュアは異質に見えますが、判定に関しての基準は同じです。 これらのフィギュアは水平、45 度、90 度のラインと、パーシャルループの組み合せです。 ラインとループの判定基準は変わらず、組み合わせに関しての判定基準を個別に述べます。 8.5.22 ファミリー8.4 ハンプティバンプ 垂直または 45 度ラインで行われるこのフィギュアは、ラインとループの組合せによって判 定されます。他のパーシャルループと同様に、1/2 ループは一定の半径である必要がありま す。(図 8.5.22.1、図 8.5.22.2) このため、垂直ラインからのハンプティバンプでは、1/2 ループの開始高度と終了高度は同一とならなければなりません。 79 8.5.23 ファミリー8.5 5/8 ループ、ファミリー8.5.1 - 8.5.8 ハーフキューバン フィギュアのループ部分の直前または直後にロールがある場合、ループとロールの間に目 に見えるラインがあってはいけません。もしライ ンが目視できれば、長さに応じて少なくとも 1 点 の減点を行います。ただしこれは、遂行中のロー ルやループなどが完了する前に次を開始するとい う意味ではなく、ロールとループの間の僅かな停 止は減点しません。ロールが 45 度ライン上にあ る場合は、ラインの中心で行われるようにします。 (図 8.5.23.1) 8.5.24 ファミリー8.5.9 – 8.5.24 バーティカル 5/8 ループ ティアドロップとも呼ばれるこれらのフィギュ アでは、垂直ラインや 45 度ラインに設けられた ロ ールは 、ラ インの 中心 で行わ れま す。(図 8.5.24.1) 8.5.25 ファミリー8.6 6/8 ループ 一般的に、P ループ(図 8.5.25.1) 、リバーシング P ループ(図 8.5.25.2)と呼ばれるこれ らのフィギュアには、垂直ラインと 6/8 ループ(3/4 ループ)が組み合わさっています。 どちらのサブファミリーに属する場合でも、垂直ラインに設けられたロールはラインの中 心で行われます。ループの頂点にロールが設けられた場合は、開始から終了までがループ の頂点で均等に行われ、ループの半径はロールの間も維持されます。もしロール中にルー プが直線となってしまった場合は、少なくとも 2 点の減点です。ロールの中心がループの 頂点にない場合は、5 度につき 1 点減点します。ループ部分がロールの前、または後に行わ れるときは、ループ部分とロールの間にラインがあってはならず、目視できるラインには 長さに応じて少なくとも 1 点の減点が与えられます。 80 リバーシング P ループでは、 パーシャルループが接している部分ではラインはありません。 万一ラインが描かれた場合はラインの長さに応じて少なくとも 2 点の減点です。 8.5.26 ファミリー8.7 7/8 ループ Q ループとも呼ばれ、7/8 ループが 45 度ラインから 開始、または 45 度ラインで終了するフィギュアです。 (図 8.5.26.1) 45 度ラインやループの頂上に設け られたロールは中心で行われなければなりません。ル ープ部分がロールの前、または後に行われるときは、 ループ部分とロールの間にラインがあってはならず、 目視できるラインには長さに応じて少なくとも 1 点の減点が与えられます。 8.5.27 ファミリー8.8 ダブルハンプティーバンプ ダブルハンプティバンプには 3 つの垂直ラインと 2 つの 1/2 ループが組み合わさっていま す。 (図 8.5.27.1) このフィギュアでは、それぞれのパーシャルル ープでの速度の差が大きいため、全てのパーシ ャルループの半径は一定であればよく、それぞ れがが同一でなくても(a≠b≠c≠d)許容されま す。また、全ての垂直ラインの長さに関連性は なく、このため開始と終了の高度が異なっても 減点はありません。 8.5.28 ファミリー8.10 リバーシング 1 1/4 ループ 3/4 ループと 1/2 ループを含むこのフィギュアのパーシャルループは、それぞれの間にライ ンを描かず連続して行われます。 (図 8.5.28.1) パーシャルループが接している部分には ラインはなく、 ラインが描かれた場合はラインの長さに応じて少なくとも 2 点の減点です。 ロールが水平ラインと 3/4 ループの間に設 けられた場合は、ロールと 3/4 ループの間 にラインがあってはならず、もしラインが あれば長さに応じて少なくとも 1 点の減 点になります。 81 8.5.29 ファミリー9 ロールとスピン ファミリー9.1 から 9.10 のロールは、水平、45 度、垂直のライン上で、ループの頂上、複 数のパーシャルループ間、パーシャルループとラインの間、そしてスピンの後に続いて行 われます。 これらのロールは、1/8、1/4、1/2、3/4、1 回転(360 度)の回転を最大 2 回転で行われま す。ファミリー9.1 から 9.10 ではロールレートが均一でなければなりません。また、ファ ミリー9.1 から 9.8 は、ロール中も重心位置がフィギュアに示された通りの水平ラインやル ープの曲線、または垂直ラインと 45 度ラインではゼロリフト軸を基準にした姿勢を維持し ます。ただし、ファミリー9.9(ポジティブスナップロール、またはインサイドスナップロ ール)と 9.10(ネガティブスナップロール、またはアウトサイドスナップ)では、オート ローテーションの特性からスナップロール中のフライトパスの変化は考慮しません。 ロールが複数設けられた場合は、それぞれのロールはリンクさせたり、またはリンクさせ ずに逆方向へのオポジットロールとして行われます。 1. 複数のロールが連続して行われる場合は、それぞれのロールの記号の上部を直線でリン クさせます。リンクされた複数のロールは、途中で停止しません。(図 8.5.29.1) 2. リンクされていないロールには次に述べる 3 つの種類があります。 a. エルロンロール (スローロール及びヘジテイションロール) b. スナップロール (ポジティブとネガティブ) c. スピン (アップライトとインバーテッド) 3. それぞれのロールが同方向へ回転するとき は、エルロンロールとスナップロールなど、異 なる種類のロールを組み合わせます。この場合 82 は、同方向に記号が向いていてもリンクさせず、間に短い停止を行って個別にロールが行 われます。(図 8.5.29.2) 4. それぞれのロールを逆方向へ行うオポジットロールは、同じ種類のロールか異なる種類 のロールか、どちらでも行われます。記号の先端は互いに逆を向いており、それぞれを逆 方向へ行うことを指示しています。 (図 8.5.29.3) 最初のロールは競技者の任意でどちら の方向でも行えますが、次のロールの方向は最初のロールとは逆方向に行います。また、 オポジットロールの間ではジャッジがロールの切り替えを確認に十分な短時間の停止を行 います。 5. エルロンロールやスナップロールはファミリー9.11 または 9.12 のスピンに続いて行わ れることもあります。スピンとロールが同じ垂直降下ラインで続けて行われる場合は、リ ンクされず、同方向か逆方向か指示される通りにロールします。また、設けられるロール は最大で 2 つまでです。(図 8.5.29.4) 例えば、スピンに続いて 2 つの逆方向へのエルロン ロールがあるものはロールが 3 つとなり認められません。(図 8.5.29.5) 8.5.30 ファミリー9.1 エルロンロール (スローロール) ロールレートの変化は、変化につき 1 点の減点が与えられます。スローロール中の一時停 止はヘジテイションロールと判定され、0 点となります。 ロールの停止は可能な限り、歯切れよく正確でなくてはいけません。ロールが徐々に遅く なって止まるとロールレートが変化したとされ、減点が与えられます。 83 主翼は指定されたロールが終了した時点で正確に停止しなくてはなりません。停止する角 度を過ぎ、またそこへ戻ることは減点となります。これはバンプと呼ばれ、少なくとも 1 点の減点がバンプの量に応じて与えられます。 8.5.31 ファミリー9.2 - 9.8 ヘジテイションロール ヘジテイションロールのカタログ番号の 2 番目の数字はポイントの数を示します。ファミ リー9.2 は 2 ポイントロールを、ファミリー9.4 は 4 ポイントロール、そしてファミリー9.8 は 8 ポイントロールです。 ヘジテイションロールの判定はスローロールと同様で、航空機は指定された回数のロール の停止を行います。ヘジテイションロールの停止は、180 度、90 度、45 度などの指定され た角度において、同じ時間間隔と同じロール角度で行われます。万一それぞれの角度での 停止が正確でなかった場合は、5 度につき 1 点の減点が与えられます。 ロールレートと停止のリズムは 1 つのヘジテイションロールでは一貫していなくてはなり ませんが、同じリズムを別のヘジテイションロールでも用いる必要はありません。どのよ うなロールレートと停止の時間間隔を行うかは競技者次第で、最初のロールで行ったロー ルレートと停止はそのヘジテイションロールが終えられるまで維持します。 判定基準は、最初に確認したロールレートを基準にして、続くロールレートに変化があれ ば 1 点の減点となります。また同様に最初に確認した停止の時間間隔を基準にし、続くヘ ジテイションに変化があれば 1 点の減点です。ヘジテイションロールでは、ジャッジが認 識できるように十分な時間の停止が必要です。停止が明確でない場合は 0 点となります。 8.5.32 ファミリー9.9 ポジティブスナップロール スナップロール(またはフリックロール)はジャッジにとって最も判断の難しいフィギュ アの 1 つと言えます。これには 2 つの要素があります。1 つはスナップに関する特性が航空 機の型式それぞれによって異なること、もう 1 つはスナップロール自体が高エネルギーを 持った機動であり、非常に速く行われるからです。 スナップロールを判定するには、ジャッジはまず 2 つの要素があることを確認しなくては なりません。機首がフライトパスから逸脱し、ポジティブまたはネガティブのどちらか指 定された方向へ向かい、そしてオートローテーション(自転)が発生していることです。 ジャッジにこれらの要素が見えない場合は 0 点が与えられます。 ポジティブスナップロールでは、航空機の機首が着陸装置のある方向とは逆向きへ動くこ 84 とで行われます。 (図 8.5.32.1) 航空機の迎角が臨界 迎角近くまで増加することで開始し、機首が動いた直後、 または機首が動くことと同時にヨーイングが発生し、片 翼が失速することでオートローテーションへと移行し ます。もし、ロールやヨーの動きが、機首がフライトパ スから逸脱する前に見られれば、5 度の動きにつき 1 点 の減点となります。 スナップロールでは、スナップロールの回転軸が競技ボックス内の指定された面に沿って、 また指定された方向へ向かって行われなければなりません。しかし、スナップロールにお ける迎角や角速度は航空機の型式によって異なり、これはスピンの特性が航空機によって 異なるためです。もし、スナップロールの特性がフィギュア毎に異なるようであれば、そ のフィギュアには減点が与えられるべきです(ファミリー9.1 参照)。 ロールレートに変 化が見える、または機首の動きがフライトパスに近いためにスローロールのようである、 これらはしばしば見られるスナップロールの特性の変化です。しかし、全ての航空機にお いてスナップロールの停止に関する判定基準は一貫しており、スナップロールの開始前と 終了後の飛行姿勢は同じであることと、またベーシックフィギュアの形状にスナップロー ルが追加されたことによる変化がないことです。 競技者がエルロンを用いた「エルロニング」をすることがないように、スナップロールの 判定には特に注意を払わなくてはいけません。速いロールレートを発揮する高性能機では、 時折ジャッジの目をごまかしてスナップロールを行うことがあります。正しくスナップロ ールが行われているかどうかの判断に、オートローテーションの直前に機首がフライトバ スから逸脱する動作が行われているかは重要な判断材料です。どのようなフィギュアであ っても、疑問点が見られない飛行には減点を行うべきではありませんが、万一ジャッジが スナップロールでないと確信できるものであれば、0 点が与えられます。もう 1 つの一般的 な失敗例は、オートローテーションが指定された角度まで継続せずに途中で停止してしま うもので、これには残された角度の量に応じて 5 度につき 1 点の減点となります。もし、 オートローテーションが 45 度の角度を残して終了した場合は、残りをエルロンを用いてロ ールを継続させたとしても、スナップロールとしての判定は 0 点です。 8.5.33 ファミリー9.10 ネガティブスナップロール ネガティブスナップロールに関する判定基準は、航空機の迎角がネガティブであることを 除き、ポジティブスナップロールに記述された判定基準に同じです。つまり、ネガティブ スナップロールでは、航空機の機首は着陸装置の方向へ向かって動き、フライトパスから 逸脱することで行われます。 (図 8.5.33.1) 85 この機首が動く方向を判断することは、ネガティブスナ ップロールがポジティブスナップロールと異なるもの と定めるものですから、注意が必要です。また、ポジテ ィブスナップロールの項で記述したように、もし機首が 指定された方向への動きが見られない場合には、ネガテ ィブスナップロールとは判定できず、フィギュアには 0 点が与えられます。 8.5.34 ファミリー9.11 - 9.12 スピン スピンはファミリー1 のフィギュアとファミリー8 のオプショナルスピンの組み合わせによ って構成されます。 (図 8.5.34.1) 開始は必ず水平飛行からとなります。まず航空機が失 速し、主翼が水平の状態で重心位置が下降します。航空機は失速速度以下まで減速し、慣 性による前進が見られます。 この動きは風下側への飛行ではさらに顕著に見られ、反対に風上に向かっての飛行では目 立たなくなりますが、この変化は判定基準にはありません。(図 8.5.34.2)。 航空機が失速しスピンに移行するとき、航空機には三軸の運動が同時に発生しなくてはな りません。それらは: 1. ピッチの運動として、機首が地上に向かって下がる。 2. 機首がスピンの方向へヨーの運動を起こす。 3. 主翼のどちらかの翼端が、ロールの運動としてスピンの方向へ下がる。 これらの三軸の運動が同時に発生しなかったときには、5 度の逸脱につき 1 点の減点を与え ます。例えば、10 度のピッチの運動と 10 度のロールがヨーの運動が発生する前に確認され た場合は、4 点の減点になります。 86 もし航空機が失速せず、スピンとならなかった場合は 0 点です。まれに、スナップロール などの方法を用いてスピンを模倣したものが見られることがあります。しかし、どのよう な開始方法を用いたとしても、ジャッジが航空機の失速がスピンによるオートローテーシ ョンが見られないと判断した場合は 0 点となります。 スピンによる旋転中、機体によって水平近くから垂直近くまで様々なピッチ姿勢のスピン が見られますが、この差は判定基準にはありません。また、スピン中のロールレートは一 定である必要はありません。 指定された数のスピンが終了した後は、航空機は X 軸または Y 軸に沿う適切な方向へ向か って飛行します。スピンが予定よりも早く停止し、エルロンで進路が調整される場合に注 意してください。この場合は、エルロン操作の角度に応じ、5 度につき 1 点の減点が与えら れます。例えば、1 回転のスピンが指定されていて、オートローテーションが 345 度のとこ ろで終了し、残りの 15 度をエルロンで修正したとすると、3 点の減点が与えられ、7.0 が このフィギュアにおいての獲得可能な最高点となります。 指定されたスピンのローテーションから回復した後は、航空機は主翼が水平の状態で垂直 降下ラインを保つようにします。これには 2 つの方法が許されます。1つはローテーショ ン停止直後に、機首を垂直ラインに合わせ、主翼を水平姿勢にすること。もう1つは垂直 ラインと主翼の水平の状態をスピンの停止と共に確立することです。この場合、指定され た回数のローテーションを終えた後、垂直ラインと主翼の水平姿勢とを同時に確立します。 ジャッジはこの方法とエルロンを使用したスピンと混同しないように注意してください。 ロールがスピンの後に続くときは、スピンとロールの間に一時停止が必要です。スピンの 直前には垂直ラインが存在しないため、スピン単体、またはスピンとロールの複合がライ ンの中心ある必要はありません。 スピンとロールの複合では、ロールをスピンと同方向に行うか、逆方向に行うか、フィギ ュアの表記に従います。スピンとロールの複合がある場合、ジャッジはまずスピンの回転 方向を確認します。これによって、続くロールが同方向なのか、または逆方向であるかが 決定されます。 スピンではヨーイングとローリングの要素が存在します。アップライト(ポジティブ)ス ピンでは、ヨーとロールの方向が同方向にあり、ジャッジが混乱する可能性はとても少な いものです。しかし、インバーテッドスピンではヨーの方向がロールの方向とは反対にな ります。この場合もロールコンポーネントがジャッジによってスピンの回転方向を判断す 87 る指標であり、続くロールが正しい方向に行われているか、それが同方向か逆方向かを判 断するものとなります。 全てのスピンの判定基準は以下のようになります。 1. 水平飛行状態から、明瞭なスピンへの移行があること。 2. ピッチ、ロール、ヨーの三軸の運動が水平直線飛行から同時に発生していること。 3. 完全に失速した状態でのオートローテーションがあること。 4. 指定された方向での停止となっていること。 5. バーティカルダウンと主翼の水平姿勢をスピン停止後に確立していること。 6. スピンの回転方向はロールの方向によって決定されること。 8.5.35 ファミリー9.13 スーパースローロール このフィギュアはグライダーにのみに設けられるもので、 ファミリー9.1 のスローロールと同じ判定基準が用いら れます。ロールレートは、1/2 ロールでは 5 秒以上の時間 があること(ファミリー9.13.3.2) 、1 回転のフルロールで は 10 秒以上(ファミリー9.13.3.4) 、そして 1 1/2 ロール では 15 秒以上(9.13.3.6)と規定されています。(図 8.5.35.1) 時間計測はチーフジャッジ席で行われます。 8.6 プレゼンテーション 楽譜通りに完璧な演奏するだけでは良い交響曲にならないように、曲技飛行も完璧なフィ ギュアを飛ぶだけでは不十分です。理想の飛行とは、演技空域をバランス良く使い、ジャ ッジが判定しやすく、調和が取れたものです。全体の演出、それがプレゼンテーションで す。 プレゼンテーションはジャッジが受ける競技飛行の感想から、0 点から 10 点の範囲で 0.5 点の刻みで採点されます。プレゼンテーションの判定と採点方法は下記の基準を基に各ジ ャッジの判断に委ねられます。大切な事はどのような判断で行うかよりも、一貫して公平 に判定し採点する事です。 88 プレゼンテーションの判定では、 ジャッジは各フィギュアの技術的な面以外にも目を向けま す。基準の1つは各フィギュアが行われる場所と、演技全体のボックス内での配置です。曲 技飛行は Y 軸に対し左右にバランスよく行われるようにします。ノウンやアンノウン競技 では競技者に制限がありますが、理想はシークエンス全体のバランスが取れたものです。ジ ャッジは難易度の高いシークエンスや風の状態に対し酌量をせず、競技者が行った飛行のみ を元に判定します。例えば、強い向かい風があるという判断を誤り、演技の大半を風下で行 った場合は減点します。 フィギュアによっては距離に関係なくジャッジに適切に見せる事ができるものや、距離が離 れた方がよく見えるもの、近くで見せた方が正しく判断されるものなどがあります。競技者 は各フィギュアが最適な位置で飛行出来るようにシークエンスを計画し飛行します。 フィギュアを適切に判定させるには距離だけでなく高度も求められます。 安全を犠牲にさせ る事は絶対に認められませんが、 理想の飛行とは各カテゴリーの許容範囲でジャッジに対し 視覚的に最適な角度となるよう、 各フィギュアの距離と高度の組み合わせが最適なように飛 行したものです。悪い例の 1 つとしては、競技者が横風の影響を誤り、シークエンスの大 半をボックスの境界線のすぐ近くで行った場合があります。 理想のシークエンスには常に配置とバランス以上に調和があります。 各フィギュアの間隔が 明確で、一定のリズムがあるものが調和のあるものです。フィギュア毎に違う所要時間と空 間を考えて各フィギュアの間隔を設け、 フィギュア内のコンポーネントにリズムを持たせま す。これは、ただ単純に連続してフィギュアを飛ぶよりも優れたプレゼンテーションです。 調和の取れた飛行はそれぞれのフィギュアに自然な間隔があり、 フィギュア間のラインが長 すぎたり短すぎたりすることがありません。 プレゼンテーションは主観的なものです。エアロバティックスの演技に関する多くの側面を 客観的に定義する事はできず、素晴らしいシークエンスを披露した競技者は称えられ、対し て、精密な演技を行った競技者であっても、位置取りや、調和、主観的な見た目の美しさを 欠く演技は減点されるべきです。プレゼンテーションの判定は、技術の伯仲した競技者間で も差を生み出すことができます。 プレゼンテーションに関するジャッジの判断は単純なものではありません。 各フィギュアの 位置、全体的なバランス、そして調和を検討して採点します。各フィギュアの判定を公正に 行う様に、プレゼンテーションの判定にも多くの要素を検討する必要があります。 89 最後に 最後に、ジャッジとして、あなたは常に一貫した判定基準で、完璧で公平な判定、採点をす ることを期待されています。機体の性能や、フィギュアの難易度、自分の経験や主観が採点 に影響することがあってはなりません。 競技者が誰であれ、どのような名声や経歴があったとしても、恐れずに失敗を見つけてくだ さい。それがあなたのジャッジとしての責務です。 ャッジとしての責務です。 90