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4.2適応策に関するヒアリング 気候変動への適応策について、文献や

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4.2適応策に関するヒアリング 気候変動への適応策について、文献や
4.2 適応策に関するヒアリング
気候変動への適応策について、文献やインターネットから得られる情報は限られ
る。そこで、3 月 12 日~3 月 17 日にフランス・マルセイユにて開催された「第 6
回世界水フォーラム」への参加に先駆け、現地での有識者及び行政関係者よりヒア
リングを行った。ヒアリングのスケジュールおよび概要は以下のとおりである。
4.2.1 気候変動が森林に及ぼす影響について
・ヒアリング対象者;Claude Millier 氏
(森林生態と公共利益に関する科学委員会委員長、元森林大学校の副学長、フラ
ンス気候変動に関する影響管理の科学委員会委員長)
・ヒアリング実施場所;ムーゼ、Millier 氏自宅
・ヒアリングテーマ;気候変動が森林に及ぼす影響
・ヒアリング概要;
(1)はじめに
・1999 年 12 月2日間にわたる暴風は、フランス北部域を中心に大きな被害を
もたらした。当時、オルリー空港の風速計は 48m/秒の風速を観測し、ロレ
ーヌ地方では常時 40m/秒以上の連続風が何時間も吹き荒れたという。全国
で 80 人の犠牲者を出し、3 百万世帯が停電した。この暴風によってフランス
全土の森林の約7年間の収穫量が無くなったといわれている。
・2003 年夏フランスに熱波が襲い、約 15,000 人が死亡。
・この二つの事件が気候変動の始まりの前兆と言われている。
・気温上昇等の統計値の有意性は未だ不確定的であるものの、多発する洪水、
頻繁な熱帯夜・乾燥・サイクロンなど、温暖化に伴う気候変動は現象面で顕
在化している。
(2)森林への影響
・温暖化の影響は、大気中の CO2 濃度の増加で光合成を増やし、森林の生産能
力を高める一方で、温度上昇が春の始まりを早くし、秋の終わりを遅くして
いる。
・また、温度上昇が森林の蒸発散量を増加させているにかかわらず、降水量の
減少が植物への水不足(乾燥害)を招いている。トウヒをはじめ、林縁の木
の枯死が観察され始めている。
・この点、樹木気候学的観点から森林・樹木の成長と気象要素の関係をすでに
長期間観測してきている。
・また、炭素循環、水循環、物質循環に関しては長期間の観測体制をとってい
る。
・そのほか、水ストレスや病虫害に耐性を有する品種改良にも取り組んでいる。
149
図 4.2.1 乾燥害によるトウヒの枯れ
(3)生態系への影響
・気候変動により生物界では異変が生じている。象徴的なのがドクガの一種が蔓延
し、マツを枯らすばかりか、人にアレルギー障害をもたらしている。この種は-
16 度で死滅し、巣の維持には昼間は 9 度以上、夜間は 0 度以上の気温が必要で
ある。気温上昇という生存条件が全土に広がったためと解釈されている。
・マツに関しては、マツクイムシが介在し、フランス海岸マツなどに被害が顕在化
し、他のマツ類まで及びつつある。病虫害の対策としては、単純林から混交林へ
の転換を検討している。
・このほか、冷水性のサケ科の魚が激減しているという報告もある。
・生態系の変化として、植物相の観察を行っている。温度・降水量・日射量・蒸散
量・雪氷期間等との関係をモデル化して予測している。このことから、将来の樹
種の地理的分布の変化を例えば地中海の常緑カシ類のロワール河までの北上、ブ
ナの分布範囲の減少等を可視化している。
図 4.2.2 ドクガの幼虫
150
(4)水への影響
・水とカーボン吸収に関する生理学的研究が継続され、2100 年時点での降水量の
大幅な減少が、南と西フランスで起きること、反対に中部・北東フランスでは増
加することが予測されている。
・水と森林に関しては、冬季に落葉する広葉樹の方が針葉樹より、水ストレスに強
いことが分かってきた。
・いずれにしろ、乾燥による森林への影響は免れないものとして、針葉樹から広葉
樹への転換、低成長樹種の選択、間伐強度の適正化等の対策を講じることが検討
されている。
・ただし、35 度を超える熱波の襲来(2003 年以上の)に対しては、取るべき対策
が今のところない。
(5)風対策
・風に対する林分の安定といえば間伐のことを忘れてはならない。これには二つの
相反した影響がある。急に開けたことによる防御作用の消失がまずあげられる。
この不安定性は一時的なもので 3-5 年かけて樹冠が覆われるまで続く。林分高
が高いほどその効果が現れる。
・また、間伐の効果は直径を太らすこととなり、すなわち安定性を増す:この現象
は作業が早い時期に行われるほど成果が出る。林齢が同じ針葉樹林では高さと直
径の比(形状比)のグラフを用いて、安全ゾーンを定義し、林分の現状に応じた
間伐作業を行うべきである。
・通常、安定した林分を保つには、林分のもつ集団抵抗効果を維持できるように、
早期収穫と小径木生産を行うか(イギリスの大西洋林業)、森林の動態管理(ダ
イナミック林業)によって安全ゾーンでの個々優れた林分の育成を行うか二つの
選択肢がある。
表 4.2.1 単純林と複層林の利欠点比較
安定性における利点
単純林
複層林
-
+
+・-
+
木が風に晒されていない(林縁を除く)
+
-
林分がブロック効果で安定している
+
-
+・-
+・-
-
+
+・-
+・-
-
+
林分構造の不ぞろいさ
個々の樹木の安定性
生産性
ドミノ影響を避けるための構造
経済性
生態的的効果(更新苗や若木の存在)
151
(6)低生産域のバイオマス利用
・水消費の少ない森林の形成と利用のため、低生産域のバイオマス利用が実施さ
れている。
図 4.2.3 ヤナギ類の 2~7 年皆伐
図 4.2.4 欧州カラマツの列状間伐
152
4.2.2 植生が水循環に与える影響について
・ヒアリング対象者;Andre Granier 氏
(INRA フランス国立農業研究所 水門整備主任研究員 エネルギー循環専門)
・ヒアリング実施場所;シャンプヌー(ナンシー郊外)、
INRA フランス国立農業研究所
・ヒアリングテーマ;フランスの水循環、植生の水源に与える影響について
-森と草原の役割の比較
・ヒアリング概要;
(1)フランスの水循環
フランスでは、国土の多くを占める平地・丘陵で年間約 800mm の降水量があり、
そのうち森林からは蒸発散として 490mm が大気に還元され、表流水が 130mm、地
下水に 180mm が供給され、海までの間で、蒸発となって大気に還元される。概ね
降水の約半分が大気へ、残る 1/4 ずつが地表水と地下水となって流れるという水
循環を形成している。降水量の多い我が国では、森林からの蒸散量も多くなり、
表流水・地下水ともに多くなることは自明のことである。降雨量、気温、地質等
の諸条件によって森林の水消費も変わってくるものであるが、概ね年間降水量が
500mm 以上ないと豊かな森林は形成されない。
雲
蒸発散
490mm
降雨
800mm
蒸発
表流水
130mm
海
地下水
180mm
出典:L’environnement;Cecile Geiger(1998)
図 4.2.5 フランスにおける平均水収支
153
(2)植生の水源に与える影響について
以下の 2 つの課題が存在している。
・水文学的アプローチ:土地利用の違いによる増水緩和と渇水緩和、水質・水量に
与える影響
・樹種選択・土地管理等による水利用の最適化について
フランスの土地利用と影響要因
・影響要因は、生物地理、汚染物質移動、生物多様性、再生能力と多岐にわたる。
土地利用は以下に示すとおり農地が 3 割と最も多く、次いで森林が多く分布してい
る。
建物
5%
半自然
(湿地・水面)
10%
農地 30%
森林 26%
混合地帯 13%
草原 16%
図 4.2.6 フランスにおける土地利用の割合
(3)草原と森林の蒸発散量の違いについて
森林
草原
日数
図 4.2.7 ヨーロッパの森林と草原の実質蒸散量(ETR)
154
蒸発散量(mm/日・m 2)
森林
草原
日射量(メガジュール/m 2)
図 4.2.8 日射量と蒸発散量の関係
(4)集水域での流量の年・季節変化(降水量と関係して)
・流量は年降水量とも関係するが、森林は流量のピークを遅らせる。
月流量(mm)
森林
図 4.2.9 植生と関連した集水域の流量変化
炭素量(炭素 g /水ℓ )
(5)植被による水消費の影響
農地
草原・森林
図 4.2.10 植生タイプによるカーボン吸収量の違い、蒸散量との連動
155
(6)森林、草原、農地の機能分類
・流量の変化は森林に比べて草原と農地が大きい。
・透水性は草原と森林の方が農地に比べて高い。森林と草原は土壌の物性を保ち、
流量を安定化させる。
表 4.2.2 植被との関係性
森林
草原
農地
葉量( LAI)
根系
土壌多孔性、
有機物量
蒸散
樹冠遮断量
土壌水分の消費
ただし、 +が多いほど植被との関係が強い
(7)結論
・大きな水循環は、葉量で決まる→伐採・間伐・耕作などの土地利用管理が重要。
・水循環は、気候、土壌、根系等に影響される。
・流域の土地利用等管理に関しては、気候、植物地理と水文の協力関係が必須であ
る。
・飲料水の研究も含めて、関連する他分野と連携するプロジェクトの立ち上げが必
要である。
156
4.2.3 水源地に適した植被管理について
・ヒアリング対象者;
André Granier(INRA:フランス国立農業研究所生態生理学主任研究員)、
Nathalie Breda(INRA:フランス国立農業研究所生態生理学研究員)、
Julien Fiquepron(IDF, CNPF 森林開発研究所、国立森林所有者協会研究員)
・ヒアリング実施場所:Nancy、CNPF
・ヒアリングテーマ:飲料水の水源地に適した植被管理-水文学的アプローチ-
・ヒアリング内容:飲料水の水源地に適した植被管理について。詳細を以下に示す。
(1)はじめに
-森が雨を降らせるか:どちらかといえば NO
-森は水を生産するか:量については 「しない」
質については 「場合によってはすることもある」
-森は地下水をかん養するか→「場合によってはすることもある」
(2)研究目的
森林空間の管理/飲み水の供給
-地下水層への流入と森からの水供給の評価
-自然への影響分析、森林構造の分析→森林管理が流量に関係するか?
(3)森林の中の水循環
降雨
蒸散
遮断
蒸発
地上到達雨
地表流
利用率
土壌
地下浸透
地下水流
地下
地下水脈
図 4.2.11 森林と水循環
157
遮断率(%)
(4)林分ごとの降雨遮断率
・年間での葉量LAIが重要である。
ブナ・ナラ類
マツ類
モミ・トウヒ
図 4.2.12 樹種別にみた降雨遮断率
(5)水供給量と消費量との関係
・湿性地における着葉種が蒸発散の能力も実消費量も高い。
湿性地着葉
乾燥地落葉
落葉
湿性地
着葉
実蒸散量
乾燥地
落葉
落葉
潜在蒸散量
図 4.2.13 潜在蒸散量と実蒸散量との関係
158
(6)気候と林分構造の違いによる樹木の蒸散量
春
秋
夏
潜在蒸散量
夏
秋
春
葉量
図 4.2.14 各季節における葉量と潜在蒸散量との関係
(7)水収支のモデル化
・水文の収支には、気候条件を基に、植被・土壌等をパラメータにして流量のモデ
ル化を図ることができる。
図 4.2.15 実測値によるモデルの検証
(8)飲料水への応用
・植被によって水量の異なる 2 つの試験サイトを選定
i)マズボー森林:降水量の多いボージュ地方の針広混交林(広葉樹林 45%)
ii)ヘス森林:降水量の少ないロレーヌ地方のブナ林
(ヘス森林)
(マズボー森林)
図 4.2.16 試験サイト位置図
159
(9)樹種の違いによる着葉期・着葉量の差(モデル)
広葉樹葉多
広葉樹葉中
広葉樹葉少
冬
葉量
秋
針広混交林
夏
春
針葉樹林
日 数
図 4.2.17 樹種による着葉期・着葉量のモデル
(10)各年降雨量別・着葉期の樹種別水量の変化(各年 4/1~10/15)
降雨量
水量
図 4.2.18 降雨量と水量の経年変化(着葉期)
(11)各年降水量別・渇水期の樹種別水量の変化
・各年 7/1~8/31 の変化を示しているが、乾燥対策として針葉樹から広葉樹の樹種
転換の試みが為されている。
図 4.2.19 降雨量と水量の経年変化(渇水期)
160
(12)対照的な 3 カ年の比較-その 1
・図は、いずれもマズボーにおける着葉期(7/1~8/31)の水量を示している。
各年の特徴は以下の通り。
2003 年:乾燥,1996 年:中庸,2000 年:湿潤
混交林
図 4.2.20 マズボーにおける着葉期の水量
(13)対照的な 3 カ年の比較-その 2
・図は、いずれもヘスにおける着葉期(4/1~10/15)の水量を示している。
各年の特徴は以下の通り。
2003 年:乾燥,2005 年:中庸,2007 年:湿潤
図 4.2.21 ヘスにおける 4/1~10/15 の水量
(14)結論
・水循環:樹種間で変化、ただし気候や土地利用等の影響も大。
・飲料水の生産のためには、適切な森林管理、そのための経済的支援や、また重要
な水源域の確保と維持が必要である。
・水文分析モデルに関しては水源利用上の森林の取扱方に関する検討を重ねること
が必要である。
・将来は、地中海地方のような乾燥気候を想定した予測も行わなければならない。
161
4.2.4 森林の持つ水浄化機能の効果について
・ヒアリング対象者;Julien Fiquepron 氏
・ヒアリング実施場所;ナンシー、INRA フランス国立農業研究所
・ヒアリングテーマ;フランスの森林率等と飲み水需給メカニズム
・ヒアリング概要
森林率から、様々な要因をインデックスとして用いモデル化を行い、飲料水の
値段との相関関係を分析した。その結果、森林率の高い地区の水質は比較的良好
であり、そのため水道料金が安いという相関関係が見られた。ここから、森林の
持つ水浄化機能の効果が示唆される。
また、アンケートを実施し、良質の水への支払いによる貨幣価値換算を試みて
いる。
(1)はじめに
・森林の新しい機能として飲料水供給が特徴づけられている。
・そのための森林管理の在り方を最適化させる。森林官の水源に対する認識促
進。優先すべき環境サービスの具体化と市場価値の喚起。
(2)いくら払うか
・汚染物質処理水から森林由来の飲み水を確保するのに、ナンシー市民は 50
ユーロ/年払うと答えた。
・そして森があると、水道料金が安くなる。このことから森のもつサービスを
価値化できる。
汚染水
自然水
(3)INRA と CNPF-IDF との協同研究
・環境サービスにいくら払うかは、清冽な飲料水を得るために森林の機能の価
値化を図らなければならない。
・両研究機関は、「森と水」をキーワードに活動を開始した。
・目的は、このサービスに経済的指標を与えることである。
162
(4)サービスの目的
・自然水の供給
・飲料可能から優良な質を有する飲み水提供への貢献
・水源地の環境保全
・水質に関する消費者の信頼回復
(5)森林は水質を守り、森林官はその環境を守る(森林は、大規模農地に比べて、
農薬の影響がはるかに少ない)
・森林生態系機能は基本的に水質に寄与する。
・森林管理は、人間活動の負の影響(農薬、肥料、土壌固化等)を軽減する。
農地等影響源の縮小も意味する。
・以上の 2 点から、森林は水質に対してプラスの効果を有する。
農地
草原
森林
図 4.2.22 根系下土壌に含まれる硝酸塩濃度(mg/水 l)
(6)森林官はどのようにして水を守るのか
・森林から作られる水の水質全体は、必ずしも空間的・時間的に保証されたも
のではないが、日常的な水の安定供給には寄与している。
・水源地には、長期間の持続性を考慮した森林管理が求められる。
・水源地の森林については、伐採時の化学物質汚染・水質汚濁等に対する注意
が払われている。
(7)水源地上流における森林管理支援のための資金提供について
・ボージュ地方マズボーにおいては、山地での水源地保護のための森林管理援
助例について検討され、現在 33~75€/ha/年の追加資金が飲料水確保のた
めに必要であるという結果が出ている。
163
森林管理費用
飲料水のための森林活動
-放置物の整理
-伐採残存木の整理
33€/ha/年
-植物性オイルの使用
-伐採準備
-化学物質汚染防止キット整備
75€/ha/年
-架線集材設備設置
(8)水を守るための森林の造成
・森林の造成による水源地保護サービス
・集水域での汚染地帯の植林による回復
・水質浄化のための希釈行為
・レンヌの水源地の 70ha を対象に植林、このための費用が 6,300€/ha かか
り、土地代も入れると 14,700€/ha となり、この結果、硝酸塩が減少した。
・上記と同じ手法で、西部地域 80 箇所、1,226ha について引き続き実施さ
れ、経費はレンヌとほぼ同額であった。
・水源地における植林による林相の改善は成果があったものの、実務として
は私有林所有者との良好な関係を築かなければならない。
図 4.2.23 レンヌの水源地での広葉樹等植林例
164
(9)森林を管理するのにいくらかかるのか
Prix EP
Taux de Boisement
€/m3 (200 4)
% (2004)
1,55 à 2,1 8 (22 )
1,39 à 1,5 5 (25 )
1,24 à 1,3 9 (17 )
37,4
27,9
17,1
3,5
1,06 à 1,2 4 (29 )
à
à
à
à
67,9
37,4
27,9
17,1
(22)
(23)
(23)
(25)
図 4.2.24 飲料水の値段と森林率
・飲料水の値段は森林率が低いと高くなるという、負の相関がある。
・これは、集水域の土地利用分布に起因し、汚染源である農地が森林に置き
換わっていることが大きな要素の一つである。
・森林そのものは飲料水の浄化経費を軽減し、自然水を流出させる水源であ
ることが分かる。
(10)水の値段を規定する要素を決定するモデル
土地利用等
水の質を決める指標
管理 様式の選択
飲料水改良手法選択
図 4.2.25 水の値段を決定する要素
165
飲料水改善の
ための費用
(11)森林は水質を規定するか(多変量解析)
水質について、管理法・硝酸塩・農薬がマイナスの働きを、森林率がプラス
の働きをしており、これが水の値段との相関に寄与している。
Var iable à expliquer
Variable ex plicative
Impac t
Pr ix d’alim entation en eau potable
Longueur de réseau
++ +
% débits eaux souterraines
---
Mode de gestion
++ +
Mode de gestion
(% de délégation de s erv ice public)
Pestic ides
Nitrates
Nitrates
++ +
Volum e distribué
++ +
Densité de population
++
Longueur de réseau
+
Bilan clim atique
---
Population m aximale
++ +
Pesticides
++ +
% s urfaces boisées
---
% s urfaces en prairies
---
% s urfaces en grandes cultur es
+
% s urfaces en vignes arboriculture maraîc hage
++ +
% s urfaces en zone de m ontagne
n.s .
% débits eaux souterraines
---
% s urfaces boisées
---
% s urfaces en prairies
--
% s urfaces en grandes cultur es
++ +
% s urfaces en vignes arboriculture maraîc hage
--
% s urfaces en zone de m ontagne
---
Nb porcs par ha
++ +
% débits eaux souterraines
++ +
(12)私有林管理の必要性
・フランスの森林の 74%が私有林であり、所有者の 90%が 4ha 未満の森林を
保有している。
・25ha 以上の広大な私有林で全私有林面積の約 50%を占める。
・小規模林家の森林のほとんどが手入れが遅れている低質二次林。
・小規模私有林が飲料水水源に相当する場合には、経済的・技術的援助が必
要である。
166
4.2.5 私有林管理の実際について
・ヒアリング対象者;Jaques Magaud 氏(元リヨン大学 人口学教授、私有林管理)
Paul Magauad 氏 (グルノーブル、林業研究所研究員、私有林管理)
・ヒアリング実施場所;リヨン、Magaud 氏自宅
・ヒアリングテーマ;ジュラ地方の森林と水、その他有機農法による水質改良
・ヒアリング概要;
ジュラ地方独特の石灰岩地帯における水循環の不規則性と、森林の成り立ち、
土壌条件の成り立ち方や(氷河における侵食)や水循環について焦点を当てて
研究をしている。その結果、水循環は土壌のみでなく、地質の成り立ちが関わ
っていることが分かっている。
(1)はじめに
・ジュラ地方は広域にはスイスとの国境からリヨンにかけてのソーヌ河沿いの
地域を指す。
・地質学における地質時代名の一つである「ジュラ紀(英語:Jurassic period
[Jurassic Geologic period])」の「ジュラ(Jurassic;ジュラシック)」
は、ジュラ山脈の名を語源としており、石灰岩を主とするこの地の堆積層が、
この地質時代を代表させている。
・標高 350~500m間はナラ類を主体にカエデ類が混じる。500~650mではナラ
類とブナ、800m付近ではモミ、800mを越すとトウヒが混じる。このあたり
がジュラの代表的な背景となり、牧場と森林とが相半ばする。そして、尾根
沿いの風衝地ではお花畑となる。
・この石灰岩の透水性が清冽な水を地下の水脈に供給するが、表流水はほとん
どなく、土壌は乾燥し、貧養であることが特徴である。
・また、氷河で削られた地形と地層が堆積しており、低地部では最後の氷河が
作ったモレーン混じりの粘土質土壌が、湿性土壌を形成している。
・いずれにせよ、森林の形成には土壌条件が厳しいが、落葉のナラ類・ブナ、
またはトウヒ、移入されたダグラスモミが育っている。
・このような貧養な土壌を有する立地条件が良くないところに小規模な林家の
森が集まっており、日本同様、所有者や境界の分からない森が増え、手入れ
不足の低質な二次林が多い。
・この低質二次林の改良がフランス林業の長年の課題であり、また水源地管理
の焦点ともなっている。
・収穫材は主に薪に利用。ちなみに、フランスでは、収穫材積の 1/3 が用材、
1/3 がパルプ、1/3 が薪で、利用率は 100%に近い。
167
(2)ジュラ地方の地形
石灰岩、崖錐が当地域特有の地形であり、雨裂などによる侵食地形はみられない。
図 4.2.26 ジュラ地方の石灰岩堆積層および崖錐
(3)私有林としての購入
・Magaud 家はリヨンより東のスイス側に 60km に居を構え、父の Jacques と、グ
ルノーブルの林業研究所の研究員である息子の Paul がラオン・ル・ソニエの西
約 50km の位置に 72ha の山林を購入し、週末林業を展開している。また、最近
リオン周辺の低湿地にも 50ha の林地を購入し、林相改善を図っている。
(4)林相改善の方法
・荒廃林であるため、定性間伐は一部で、多くは列状間伐。森林はオルソ航空
写真により林相区分され、原林相図と将来の目標林型図として整理されてい
る。
トウヒ林無間伐林
ダグラスモミ定性間伐林
トウヒ・広葉樹混交林及びトウヒ林列状間伐
図 4.2.27 林相改善状況
168
(5)森林施業の現状
伐採は当初地元の素材生産業者を使っていたが、最近はチェコからの外国人
労働者を使用。フランスでも林業労働者人口が減っている。林道開設・林内作
業には補助金が出る。
動く製材所。熱心な私有林を回り、柱材・板材に挽く
「将来の木」を決め、その周辺の劣勢木を伐採
図 4.2.28 伐採、間伐手法
169
4.2.6 有機農法による水質改善について
有機農法がいかに水質を良くするかについて実証し、水質改善のための活動を地
方自治体が取り組んでいる。取り組みの背景、実施内容等についてヒアリングを行
った。
ヒアリング対象者;Jaques lancon 氏
(ジュラ地方 Gouthierbillais 町副町長
環境担当部長)
ジュラ自然環境及び水とエネルギー
(1)はじめに
・ラオン・ル・ソニエは、フランス本土の中で最も海から遠い町であって、そ
のため半ば大陸性の気候を持つ。
・夏は暑く湿度が高いが、冬は温暖で降雪は多くない。
・ジュラ地方特有の地形と地質、石灰岩地帯の山地・丘陵が広がる。
・スイスに近く観光と商業の交差点とも言われるが、ブドウ栽培や牧畜、チー
ズ造りなど農業も主産業である。
(2)有機農法への転換(10 年前~)
・1980 年代に硝酸塩と農薬の増加が顕在化し、そのため水質の改善が問題視さ
れ、1993 年に有機農法への転換が始まった。
・最初は従来のトウモロコシ栽培を休耕し、草原にして除草する方法で硝酸塩
の含有量を低下させ、安定化させた。
・2008 年には、水源域全体の除草による汚染物質の除去に努めながら有機農法
の定着を行った。
・2002 年からは有機農法から得られた生産物の流通を行い、環境的に優れ、水
質改善への意識づけを行ってきた。
・フランスでは、ほぼすべてのレストランで有機栽培の小麦からできたパンを
使用しているほか、その他の有機農産物・加工品も普及している。
・そして、水質改善プログラム実施にかかる値段は 0.01/m3 にまで下がり、ラオ
ン・ル・ソニエはその先進モデルとして成果を収めた。
・それでも、フランスでは化学肥料による農業が主体で、補助金で守られてい
る分有機農法はまだ割高であるのが現状である。経費の差は徐々に少なくな
っており、有機農法は広まりつつある。
170
(3)ラオン・ル・ソニエの農地
比較的肥沃な土地は、農地として利用されている。
図 4.2.29 ラオン・ル・ソニエの農地
(4)消費者意識の高揚
図 4.2.30 産地証明と有機農法のロゴ(AB:Agriculture Biplogique)
(5)水質等改善効果
硝酸塩は、1991 年をピークに下降傾向にある。
・硝酸塩:
-43%(14→8mg/l)
・植物検疫で検出されている有害物質:
-54%(0.065→0.03g/l)
図 4.2.31 土壌中の硝酸塩類の経年変化
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【ヒアリング参考資料】
・La Foret Francaise face au Changement Climatique 気候変動に直面するフランス
の森林; INRA, 2011
・Forets et milieux naturels face aux changements climatigues 気候変動に直面する森
林と自然環境; INRA,ONF,2007
・L’environement ‘Le Cylecle de l’eau’ 環境(水循環); Cecile Geiger,NATHAN, 1998
・Impacts du couvert végétal sur la ressource en eau : rôle comparé de la forêt et des
prairies 水資源に与える植生の影響(森林と原野の比較);André Granier UMR
1137 INRA-UdLEcologie et Ecophysiologie Forestières, 2012
・Gestion du couvert pour la disponibilité de la ressource en eau potable ; modèles
de bilans hydriques 飲料水源の利用に関する土地管理について(水文モデル);
André Granier, JulienFiquepron et Vincent Badeau,2010
・Des forêts pour l’eau potable :l’eau paiera ? 飲料水に寄与する森林とは(水にいく
ら払いますか?);Julien FIQUEPRON, Ateliers Regefor, Olivier PICARD, 2011
・Foret et Eau Potable 森と飲料水; Cetef Hautes-Normands, Disponibilite en
Bois-Energie, 2010
・Lons-le-Saunier のHP;http://fr.wikipedia.org/wiki/Lons-le-Saunier, 2012
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4.3 我が国への適応
前節までの情報収集結果を踏まえ、以下のように整理した。
4.3.1 水分野における海外の適応策
・ 将来護岸を必要とするような建設行為を禁止(アメリカ合衆国)
・ 海面上昇を考慮し、当初予定よりも高い位置に施設を建設(アメリカ合衆国)
・ 洪水管理計画において、小~中規模の洪水流量が約 40~50%増加、100 年確
率の洪水が 15%増加することを考慮に入れた(ドイツ)
・ 高潮堤等では、50cm の海面上昇を考慮に入れた設計がなされている(オラ
ンダ)
・ 堤防建設時、60cm の海面上昇を考慮する(ベルギー)
4.3.2 森林分野における海外の適応策
・ 種内変異多様性維持のため、天然更新の促進、林業的な管理を通じた遺伝的
多様性の維持、混交林の造成(インド)
・ 生態系維持のため、「新たな郷土樹種の林」を造成し、自生種と非自生種の
混交が考えられている(ドイツ)
・ 下層植生は生態系の重要な構成要素であり、これらを考慮した新たな林業的
な施業体系が議論されている(フランス)
・ 乾燥化への適応として、強間伐や樹種転換の効果を実験している(フランス)
・ 風倒被害を防止するためには、早期収穫による小径木生産を行うか、形状比
を踏まえた森林管理を行うか、二つの選択肢がある(ヒアリング)
・ 林業労働者人口が減っているフランスでは、伐採等の森林施業に外国人労働
者を雇用(ヒアリング)
4.3.3 我が国への適応
以上の事例から、わが国への適応について以下のように整理した。
① 気候変動によってもたらされる災害発生リスクの高い土地への利用制限
② 降水量や洪水流量の増加に伴う、設計因子の再検討
③ 下層植生が発達した森林施業の推進
④ 単層林の針広混交林化
⑤ 早期から間伐を行い形状比を低く抑えた森林施業の推進
以上の適応策は、気候変動の影響リスクに基づいたものであるべきであり、まず
は、気候変動における影響を適切に評価することが必要と考えられる。
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