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ここをクリック! - 缶詰技術研究会
「豫園商城と近代建築」中国(上海)KT 目 次 随 想 缶詰の「顔」……………………………………………<髙井陸雄>… 658 解 説 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第14回) DFAⅢ(飼料への利用) …………………………<佐藤 忠>… 660 解 説 シリーズ解説:米の話(第15回) 米の加工利用(4)無洗米………………………<鈴木敬子>… 667 連載エッセー:食の遠近画法 論争……………………………<五明紀春>… 674 海外技術・マーケット情報 食体験に左右される食品の選択…………………………………………… 676 2010年新製品トップ10の傾向……………………………………………… 678 食品産業の研究・開発動向に関する第40回調査結果…………………… 680 シニア世代の食を考える…………………………………………………… 682 リンゴ上に接種した大腸菌O157:H7とサルモネラスタンレーを 減少させる抗菌剤入りポリ乳酸コーティング ……………………… 684 リサイクルとグリーンのジレンマに打ち勝つパウチ…………………… 687 フレーバーに関するEUの新しい規制…………………………………… 688 外食産業のヘルシーメニューの行方……………………………………… 690 飲料ペットボトルへのバイオプラスチック採用競争…………………… 692 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰 特別解説:植物培養細胞を活用して新規の食品とサプリメントの素材開発 ……………………………………………………<濱田博喜>… 業界トピックス:缶コーヒーに本来の勢い戻る…………………………………… 特別解説:赤外線・紫外線殺菌と超微細ミストを用いた青果物の 輸出促進技術…………………………<内野敏剛・田中史彦>… 技術用語解説:RFID ………………………………………………………………… 業界の話題……………………………………………………………………………… 今月の統計……………………………………………………………………………… 最近の技術雑誌から…………………………………………………………………… 野菜・果物を巡って(第三十五話)きのこ狩りを楽しんだ頃 …………………………………………………<吉田企世子>… FOOD & PACKAGING 缶詰技術研究会 http://kangiken.net/ 694 701 702 707 708 712 714 719 直接きれいな印刷をほどこし,魅力的で,食欲を 随 想 そそる画を印刷し販売促進をはかる。缶詰は中が 見えないだけに外装に工夫をこらすことになる。 缶詰の「顔」 店頭にその缶詰が積まれるとあそこの会社のだ! と“通”は分かる。金線が入ったカニ缶,サケが 日の出の中で踊っているとか,緑の牧場に白と褐 たか い りく 色模様の牛がこちらを向いているとか,こんな缶 お 髙 井 陸 雄 ( 東京工業大学 「ぐるなび」食の未来創成 寄附講座 特任教授 詰の様子を語り続けると,この雑誌の読者から, ) 「それしか知らないんですか」と言われるだろう。 冒頭で述べた「缶詰の顔」は外装の話ではあり 缶詰には顔がある。缶詰のふたを開けたとき, ません。缶詰はやはり中身で買います。人手で, 飛び込んでくる内容物の状態,表情こそがその缶 一個,一個の缶に詰めていく時代は終わったのか 詰の顔だ。 もしれませんが,それでもなお開缶したときの快 世の中には様々な缶詰があり,それぞれの特徴 感は,中に詰められている内容物の詰まり具合や, を誇示し,買う人の心をそそるように工夫されて その詰め方の上手,下手で決まる。 いる。 ☆ ☆ ☆ ☆ 缶詰の発明はナポレオンが懸賞金をかけて戦闘 私が勤務していた東京海洋大学海洋科学部の食 支援用の長期間保存が可能な食品の製造方法を募 品生産科学科や,その前身である,東京水産大学 集したことにはじまる。これに応え1804年,フ の食品系の学科では食品製造実習を学生に課して ランス人ニコラ・アペールは長期保存可能なビン いる。缶詰製造実習,魚肉ソーセージ製造実習, 詰を発明,応募しこの賞金を獲得した。パスツー レトルト食品製造実習,カツオ節製造実習,など ルが低温殺菌法を提案したのが1866年であるか を行い製造を体験する。私も缶詰実習に参加した。 ら,アペールの方法は画期的である。 学生は熟練した良き指導者の下で丁寧な作業を進 ビン詰は中が見えるので品定めは比較的易しい。 めることで,すばらしいできばえの缶詰を自分た 割れやすく,重たいガラス瓶から,金属製容器の ちの手で次々と作り出すことができるようになる。 缶(can)に変わり,遮光性と強度の優れた缶詰 この実習で生産されるマグロ油漬け缶詰は天下一 は汎用性の高い保存食品となった。しかし,もう 品,引っ張りだこの製品である。優れた原料,丁 中は見えない。 寧な仕事が良品を生む。鮮度の良い原料冷凍マグ ☆ ☆ ☆ ☆ ロはしかるべきすじから素性のはっきりした物を 缶詰技術は,缶の材料開発,製缶技術,内部塗 仕入れる。マグロを解凍し,さばき,四つ割りに 装・外部塗装技術,プルトップ,イージーオフ, して高圧釜で適度に蒸煮する。この肉が缶に詰め ツーピース缶という容器まわりの技術革新や,人 られ,再度加熱殺菌されるので最初の蒸煮時の熱 の手で内容物を丁寧に一個一個に詰めていく方法 の通り具合の管理は重要である。蒸煮した四つ割 から,秒単位で連続的に缶詰内容物を充填し,連 りの肉塊から丁寧に骨,皮,血合等々を取り除き, 続真空巻締めができる機械等の開発へと飛躍的に さらし布で表面を清浄にしながら丁寧にロインを 進歩した。金属製の入れ物の“缶”となり,中に クリーニングする。この作業は人海戦術である。 詰められているものがよく分かる目立ちやすい絵 先の曲がった包丁で白身に食い込んでいる血合を を付けた紙レッテルが現れ,さらに進化し,缶に 丁寧に取り除く。毛抜きで小骨を抜く。きれいな 食品と容器 658 2011 VOL. 52 NO. 11 ビンチョウマグロの白身の山がいくつもできると, 高温高圧殺菌して作った缶詰を開けたとき,それ いよいよ缶に肉を詰める作業に入る。ツナ2号缶 は芸術的な製品だったことを思い出す。その 「顔」 の深さに合うように,切断ゲージに肉をのせ,マ をぜひ見たかった。しかし,私の見たい,会いた グロ筋肉方向に対して直角方向に,つまり胴体を いと一心に念じた思いは無残にも写真2に示すよ 輪切りにする方向で肉を切断する。この肉のかた うな結果となってしまった。1985年製造であり, まり大凡200gをアルミの皿に秤取り,詰める材 26年前の物語です。そりゃ,昔の面影残ってい 料を準備する。次にこの肉を空缶にきっちりと詰 ますが,「ねえちょっと」,という感じです。こん める。蒸煮したマグロ肉の切断面は木の年輪模様 なことってありますね。 であり,これを崩さないよう,缶の中に隙間がで ツナ缶詰とイワシ水煮缶詰,この二つの缶詰の きないように丁寧に詰める。この作業で年輪を崩 違いは何か? マグロ缶詰は蒸煮後缶に詰め,サ してしまうと商品価値は低くなる。指導の先生は ラダ油を入れて加熱殺菌。一方のイワシ水煮缶詰 厳しくこれをチェックする。竹べら(今は何を使 は,きれいに詰めたにもかかわらず,生肉を詰め っているのでしょう)を上手に使い丁寧に肉を詰 て加熱殺菌するので,魚に含まれるタンパク画分 めていく。最後はツナ2号缶の直径を持つ木製の が加熱凝固しカードとなってかたまってしまう。 スタンプで丁寧に肉を押し込む。この段階で開缶 同じ傾向はサクラマス水煮缶詰でも起きている 時の顔はほぼ決まる。これにサラダオイル,食塩 (写真3) 。缶詰の「顔」を作るのはなかなか難 を加え,ふたをして真空に巻締め,高圧釜で蒸気 しい。 殺菌してできあがる(写真1)。 カニ缶の顔はどんなもんですか? オイルサー 6カ月程ゆっくりと寝かせ味がよくしみ渡った ディンは満員電車状態? パイナップルの缶詰 ところで,開缶。「顔」を眺めビンチョウマグロ は? ホワイトアスパラ缶はどんな顔? の肉の美しさ,年輪のような肉のすがたに,おー 人の手が加わった缶詰には表情があります。 ー,とびっくり。食べてさらにびっくりです。 こんな楽しみを求め,缶詰を買ってみましょう。 ☆ ☆ ☆ ☆ 私が気にしていたもう一つの缶詰の顔はイワシ 「謝辞:貴重なイワシ水煮缶詰の写真は東京海 水煮缶詰である。イワシを缶の深さの長さにぶつ 洋大学海洋科学部食品生産科学科石崎松一郎先生 切りにし,菊花の形に詰め,食塩を加え,巻締め, から頂きました。有り難うございます」 写真1 東京海洋大学海洋科学部 食品科学科謹製ビンチョウ マグロ油漬け缶詰 写真2 東京水産大学食品工学部謹製 1985年製造イワシ水煮缶詰 写真3 市販サクラマス水煮缶詰 (カラー写真はHPに掲載 C057∼C059) 食品と容器 659 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第 14 回) ◆解説◆ DFAⅢ(飼料への利用) さ と う・ た だ し 帯 広 畜 産 大 学 卒 業。 現在,日本甜菜製糖 株式会社総合研究所 上席研究員。 佐 藤 忠 ささ の意を捧げる。 ◆1.はじめに◆ DFAⅢは,食品素材として開発されたフラク 東日本大震災から5カ月が過ぎた。今日(8月 トースが2分子結合したオリゴ糖である。ミネラ 24日)届いた酪農情報誌に,「夏休みが明け,学 ル,特にカルシウムの吸収亢進に優れた効果を持 校給食が始まるので,東北では牛乳不足が深刻化 ち,健康食品分野で使用されているが,乳牛にお する」と書かれている。原因の1つに昨年の猛暑 いてもすばらしい効果を発揮する。牛を対象とし こう べん による乳牛の分娩の遅れが示されている。しかし, た研究は10年足らずであるため,今後も新たな 一番の原因は震災とその後の原子力発電所の放射 機能の発見や見直しはあるだろうが,これまでに とう た 能汚染に起因する。いまだに多くの牛が淘汰され, 生 産 さ れ た 肉 や 牛 乳 の 廃 棄 を 聞 く。DFA 得られた知見について紹介する。 ◆2.牛に利用するための条件◆ (Difructose Anhydride)Ⅲの研究を通して長年 関係した牛たちの悲哀に心が痛む。被災された 牛には4つの胃があり,そのうち人の胃と同じ 方々はもとより,多くの動物たちに対しても哀悼 2 +2+& &+ 㱍 2 2 2 +2+& ¶㱎 &+2+ ¶ 機能を持つ胃は第四胃だけである。第二と三胃は 第一胃の作用を助けたり,栄養素の吸収を行う。 すう 食道直下にある第一胃(反芻 胃)は容量100∼ 150L,多様で大量の微生物が飼料を分解する巨 大な発酵槽になっている。その分解能力は非常に かす 高く,乳牛は牧草,トウモロコシ,大豆粕など植 物性飼料を乾物で20kg食べ,650kgの体を維持 し,1日に30kgの乳を生産する。DFAⅢは腸管 においてカルシウムの吸収を亢進する。このため, 第1図 DFAⅢの構造 DFAⅢはフラクトース2分子が1,2'と2,3'で DFAⅢが牛に対して効果を持つためには,第一 結合した二糖類である。 胃微生物に分解されずに小腸に到達しなければな 食品と容器 660 2011 VOL. 52 NO. 11 DFAⅢ(飼料への利用) らない。DFAⅢは第1図に示したようにごく簡 の分娩を目標に繁殖管理される。乳牛はこの分娩 単な構造であり,感覚的には微生物に分解されや 時に血中カルシウム濃度が低下し,低カルシウム す い 感 じ を 受 け る。 し か し,DFAⅢ は 血症になることが多い。原因は泌乳の再開であり, Bifidobacteria,Lactobacilli, 泌乳能力の向上が拍車をかけている。 spp. など,主要な腸内細菌に資化されない 1) という, 牛乳1kgには1gのカルシウムが含まれてい 牛にとって特別な特徴を持っている。 る。このカルシウムはすべて血液を介して牛乳に 牛の第一胃微生物を使った による培養 移行する。成牛の血漿は約30Lでカルシウム濃度 試験2) において,第2図に示すようにDFAⅢは は8.5∼10.5mg/100mLで あ る た め, カ ル シ ウ ム 24時間で分解されず,一緒に培養したスクロー 量としては3gしかない。これは牛乳3kg分で ス,ラフィノースおよびラクチュロースもそれぞ あり,泌乳中は副甲状腺ホルモンやビタミンDの れ分解速度は異なっていた。この差異は単糖間の 働きで,血液中のカルシウム濃度が維持される。 結合方法と,それを分解する酵素量によるものと 分娩前の約60日間は乾乳期といい,搾乳を休 考えられる。DFAⅢを構成するフラクトースは 止する。この間,胎児を含め母牛が必要とするカ 2カ所で結合し,2,3'のαフラクトシド結合の分 ルシウムはわずかであり,副甲状腺ホルモンやビ しょう せん 3) 解はDFAⅢ加水分解酵素により行われる 。こ タミンDの分泌は低下する。分娩による泌乳の再 の酵素を生産する微生物としては 開によってカルシウム要求量は一気に増加するが, 3) が報告され ,大腸内の資化生菌としては ಽ⸃₸㩷㩿䋦㪀 が発見 4) されているが, 牛の第一胃微生物の多くはDFAⅢを資化できな いものと考えられる。 十二指腸カニューレを装着した去勢牛にDFA Ⅲを経口投与し,十二指腸内容液中のDFAⅢ濃 度を調査した 5)。第3図に示したように,DFA Ⅲは投与1時間後には十二指腸に出現し,42g 投与した牛では6時間後でも存在が確認された。 第2図 牛第一胃内容液によるDFAⅢ (■) ,スクロース (◆) , ラフィノース (●) ,ラクチュロース (▲) の分解 これらの結果,DFAⅢは牛でも小腸に到達する චੑᜰ⣺ౝኈᶧਛ 䌄䌆䌁㸉ỚᐲJP/ ことが確認され,ミネラル吸収に対する効果はラ ットやヒトと同様,牛でも発現する可能性は高い と考えられた。 ◆3.分娩牛の血中カルシウムに 対する効果◆ 乳牛の産乳量は分娩後40∼60日で最大(1日 当たり40∼50kg)に達し,その後は減少し,分 娩から300日くらいたつと10∼20kgになる。乳 䌄䌆䌁㸉៨ขᓟᤨ㑆䋨ᤨ䋩 第3図 DFAⅢ経口投与(0g;●,21g;▲,42g;■) 後の十二指腸内容液中DFAⅢ濃度の変化 量を回復させるのは分娩であるため,1年間隔で 食品と容器 ၭ㙃ᤨ㑆㩷㩿ᤨ㪀 661 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 副甲状腺ホルモンやビタミンDの分泌と働きは遅 乳牛の低カルシウム血症対策はこれまで,ビタ 延する。これが乳牛が低カルシウム血症になる主 ミンDの給与や活性化により細胞内通路からのカ 因である。 ルシウム吸収を増やそうとするものであった。一 ⚦⢩ౝㅢ〝 䉦䊦䉲䉡䊛䊘䊮䊒 䉺䉟䊃䉳䊞䊮䉪䉲䊢䊮 ⚦⢩㑆ㅢ〝 ⣺ౝ ⊹⚦⢩ &D ')$㸉 ')$㸉 &D 方,DFAⅢによるカルシウム吸収亢進はタイト ⴊ▤ ジャンクションへの作用により細胞間通路からの 吸収増加を図る6)もので(第4図),副甲状腺ホ ルモンやビタミンDの影響を受けない。そこで, DFAⅢの分娩牛に対する効果を検討した7)。 DFAⅢは分娩予定日の20日前から分娩まで, 1日50gを配合飼料に添加して給与あるいは無 給与とした。また,分娩直後とその6時間後の2 回,すべての牛にDFAⅢ90gと炭酸カルシウム 第4図 腸上皮細胞からのカルシウム吸収 カルシウムは上皮細胞の中を通る細胞内通路と細胞間隙を 100gを経口投与した。DFAⅢを分娩前に給与す 通る細胞間通路で吸収される。 ると,分娩直後の血清カルシウム濃度は高く,そ の後の回復も早かった(第5図)。さらに,DFA ⴊᷡ&DPJG/ 㪁㪁 㪁㪁 Ⅲを給与しなかった牛の分娩直後の血清カルシウ ム濃度は出産回数(産次数)が多いほど低下した 㪁㪁 が,DFAⅢ給与牛にはこのような低下は見られ なかった(第6図)。 分娩時の血中カルシウム濃度低下は腸管内と血 こう 液間の濃度勾 配を高める。さらにDFAⅢのタイ トジャンクションに対する作用が加わり,細胞間 ಽᇂᓟᤨ㑆㩷㩿ᤨ㪀 通路からの吸収が促進され,血中カルシウム濃度 第5図 分娩前DFAⅢ給与牛(●,n=13)と,無給与牛 (○,n=13)の分娩後の血清カルシウム濃度 低下が抑制されたものと考えられる。 0時は分娩直後 **:p<0.01 低カルシウム血症の症状に採食量の低下や起立 不能がある。これはカルシウムが体の中で筋肉の し ಽᇂ⋥ᓟ䈱 ⴊᷡ&DPJG/ 㩷㩷㩷㩷 㩷㩷㩷㩷 収縮や弛緩に関係しているためである。このため, 㪁 血中カルシウム濃度の低下が少ないと,消化管の 㪁 動きが良く,採食量が増加してカルシウムの吸収 量も多くなり,血清カルシウム濃度の回復が改善 されたものと考えられる。 出産回数(=加齢)と分娩直後のカルシウム濃 度の関係はビタミンD受容体の減少により説明さ ↥ᰴᢙ れている8)。ビタミンDがカルシウム吸収を促進 第6図 分娩前DFAⅢ給与牛( ●,n=13)と,無給与 牛( ○,n=39)の産次数(出産回数)と分娩 直後の血清カルシウム濃度 *:p<0.05 食品と容器 する機序は以下のようになる。活性型ビタミンD がビタミンD受容体と結合し,これらが上皮細胞 662 2011 VOL. 52 NO. 11 DFAⅢ(飼料への利用) の遺伝子に作用し,カルシウム結合タンパク質合 ◆4.低カルシウム血症による損失と DFAⅢの周産期疾病に対する効果◆ 成を促進する。カルシウム結合タンパク質は上皮 細胞内のカルシウム輸送に関与しており,カルシ ウム吸収が促進される9)。しかし,加齢によりビ 低カルシウム血症の定義は明確ではないが, 8) タミンD受容体は減少する 。これが活性型ビタ Goff10) は血中カルシウム濃度7.5mg/100mL未満 ミンDが十分にあっても出産回数の多い牛の血中 を低カルシウム血症,5.5mg/100mL未満で起立 カ ル シ ウ ム 濃 度 が 低 下 し や す い 原 因 で あ る。 不能を伴う時には乳熱と名称を分けている。佐藤 DFAⅢにはこのような制約はなく,出産回数が と村山11) による家畜共済を対象として集計した 多くても血中カルシウム濃度の低下が見られなか 低 カ ル シ ウ ム 血 症 に よ る 治 療 牛 は, 分 娩 牛 の ったものと考えられる。 4.6%で,死亡および廃用牛は合わせて0.6%であ これまでの調査で,DFAⅢ給与牛の分娩前血 った。また,その損失は死亡および廃用した牛の 清カルシウム濃度は無給与牛とほぼ同じで,8.5 牛代と搾れなかった乳代,および治療費で,発症 ∼10.5 mg/100mLの正常範囲を維持した。これ 牛1頭当たり159,000円となり,分娩牛100頭当 はDFAⅢが亢進する細胞間通路からの吸収が濃 たりでは830,000円になった。一方,私たちの試 度勾配による受動輸送であり,血中カルシウム濃 験において,血中カルシウム濃度が7.5mg/100 度が高く維持されている場合濃度差は小さくなり, mL未満になった経産牛は60%に達し,その内5.5 吸収されにくいこと,過剰に吸収されたカルシウ mg/100mLを下回った牛は5%であった7)。これ せつ ムは骨中への蓄積や,尿中への排泄により速やか 9) に処理されること,などによる らから,低カルシウム血症であっても症状は軽度 と考えられる。 で,治療の対象にはならない牛は多いと考えられ る。 第7図は低カルシウム血症によって低下する平 ૐ䉦䊦䉲䉡䊛ⴊ∝ ᐔṖ╭ᯏ⢻ૐਅ ሶች䈱ㆇേᕈૐਅ ᶖൻ▤䈱ㆇേᕈૐਅ ሶች䈱࿁ᓳㆃᑧ ⢝⋚ṛ 㘺ᢱ៨ข㊂ૐਅ ╙྾⢗ᄌ ⽶䈱䉣䊈䊦䉩䊷䊋䊤䊮䉴 ሶችౝ⤑Ἳ ↥㊂ᷫዋ ⢽⢌േຬ ❥ᱺᚑ❣ᖡൻ 䉬䊃䊷䉲䉴䊶⢽⢌⢄ 第7図 低カルシウム血症が分娩前後の周産期疾病,産乳量や繁殖に及ぼす影響 食品と容器 663 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 滑筋機能の影響を示したものである12)。平滑筋 乾乳期の乳牛にDFAⅢ添加配合飼料を分娩前20 機能低下の影響は子宮や消化管であり,外観から 日間給与した。試験はほぼ1年間実施し,その間 だけでは判然としない。しかし,子宮の運動性低 に4戸で合計304頭が分娩した。試験前年を対照 下は胎盤停滞,子宮内膜炎の発症に影響し,子宮 年(分娩牛295頭)として,分娩直前から分娩7 機能の回復を遅らせ,繁殖が悪化する。また,消 日後までの疾病発生状況を農業共済組合の家畜診 化管の運動性の低下は第四胃変位,ケトーシス, 療データで調査した。 脂肪肝の発症に影響し,飼料摂取量の低下が産乳 結果を第1表および第8図に示した。乳熱は低 量の減少や繁殖成績を悪化させる。低カルシウム カルシウム血症と同義で日本では使用されており, 血症が軽度でもこのような状態にある牛は少なく カルシウム剤の静脈内投与によってほとんどの場 ない。 合回復する。ダウナー症候群の原因は特定できな いが起立不能の症状を呈する疾病で,カルシウム 4戸の一般酪農家の協力を得て,DFAⅢ添加 13) 配合飼料による分娩前後の疾病を調査した 。 剤投与による反応は弱い。分娩時の神経,筋肉, じん 靱帯損傷が関与するとされるが,低カルシウム血 が 第1表 分娩前のDFAⅢ添加配合飼料給与が分娩前後 の疾病に及ぼす影響(頭) 症による起立不能であっても,長時間横臥した状 ひ 態だと,筋肉が麻痺して起てなくなる。この点が 試験年 対照年 304 295 曖昧であり,ダウナー症候群の半分程度は低カル 乳熱 9 13 シウム血症が原因であるといわれている。これら ダウナー症候群 2 6 の疾病は対照年を100とするとDFAⅢ添加配合飼 胎盤停滞 1 4 第四胃変位 4 11 ケトーシス 1 15 脂肪肝 0 6 病として,分娩後,1日以上胎盤が排泄されずに 難産 8 10 残る胎盤停滞,腹底にある第四胃が移動し消化管 産褥熱 10 11 が閉塞する第四胃変位,糖や脂質の代謝障害で, 分娩牛 あいまい 料を給与した試験年はそれぞれ69および33に減 少した。さらに,低カルシウム血症が影響する疾 そく * 対照年は DFA Ⅲ添加配合飼料を給与した試験年の前年である。 ケトン体が増加し食欲不振になるケトーシス,お よび採食量低下のため体脂肪が使用されその脂肪 ↥ⶖᾲ 㩷ᾲ が肝臓に蓄積する脂肪肝は,対照年と比較しそれ ぞれ25,36,7,および0と著しく減少した。 䉻䉡䊅䊷∝⟲ 㔍↥ この調査では分娩後のDFAⅢと炭酸カルシウ ムの経口投与を行っていない。このことが乳熱が ⢝⋚ṛ 対照年の69と,他の疾病の減少よりも少なかっ じょく ⢽⢌⢄ た原因かもしれない。なお,難産と産 褥 熱は対照 ╙྾⢗ᄌ 年とほぼ同じ水準だったが,これらの疾病は血中 䉬䊃䊷䉲䉴 カルシウム濃度低下と因果関係は少なく,DFA 第8図 分娩前のDFAⅢ添加配合飼料給与が分娩前後 の疾病に及ぼす影響 Ⅲ投与の影響を受けなかったものと考えられる。 DFAⅢ添加配合飼料を給与する前年(対照年)の疾病を100と してDFAⅢ添加配合飼料を給与した試験年を指数表示した。 食品と容器 664 2011 VOL. 52 NO. 11 DFAⅢ(飼料への利用) 同様,ほとんどないと考えられた。 ◆5.子牛の免疫グロブリンG 移行に対する効果◆ 上皮細胞間からのカルシウム吸収は出生後早い 時期ほど良く吸収され17),タイトジャンクショ 免疫は感染や病気から体を守る生体防御機能で ンのバリアー機能はタイトジャンクションを形成 あるが,新生子牛は免疫抗体を持たずに出生する。 子牛は出生後,母牛の初乳を飲み免疫抗体を獲得 する。免疫抗体は分子量が大きく,そのままの形 では通常吸収されないが,新生子牛は出生から 36∼48時間後の間だけ,抗体をそのままの形で 吸収することができる。この吸収は小腸上皮細 胞のエンドサイトーシスによるといわれてい る14)。DFAⅢの作用はタイトジャンクションに 対し発現する上皮細胞間からの吸収亢進であり, エンドサイトーシスのような上皮細胞の中を通る 吸収に対する効果は知られていない。そこで, DFAⅢを初乳に混ぜ,免疫グロブリンG(IgG) の吸収に対する効果を調査した15)。 試験は出生直後のホルスタイン種子牛を17頭 使用し,母牛の初乳約3.5Lを出生直後1.5Lとそ の10時間後2Lの2回に分け給与し,血清IgG濃 度を調査した。DFAⅢはほ乳ミルクに3g混ぜ ⴊᷡ㪠㪾㪞Ớᐲ㩷㩿PJP/㪀 第2表 初乳摂取量と摂取時間,採血時間, IgG摂取量,体重および血液量 DFA Ⅲ 対照 頭数 8 9 初乳摂取量(L) 3.4±0.1 3.4±0.1 初乳摂取時間(hr) 1回目 1.5±0.3 1.5±0.3 2回目 10.5±1.7 9.3±1.5 採血時間(hr) 24.3±2.4 23.1±2.7 IgG 摂取量(g) 235± 27 230± 18 体重(kg) 43.3±1.7 41.1±1.6 血液量(L) 4.0±0.1 3.8±0.1 これは母牛の胎盤が免疫抗体を通さないためで, 㪁 ↢ᓟ䈱ᣣᢙ 8頭の子牛に給与した。 第9図 初乳にDFAⅢを添加し給与した子牛 (●) とDFA Ⅲ無給与の対照子牛(○)の血清IgG濃度の変化 DFAⅢ給与子牛とDFAⅢを給与しない対照子 牛の間で,初乳摂取量と出生後の初乳摂取時間に *:p<0.05 差異はなく,IgG摂取量,体重,および体重と採 (第2表)。DFAⅢ給与子牛の血清IgG濃度は第 㪠㪾㪞ๆ₸㩷㩿㩼㪀 血時間から求めた血液量 16) にも差はなかった 9図に示したように出生1日目以降,対照子牛よ り高い値で推移した。また,第10図に示したIgG 吸 収 率( = 血 液 量×24時 間 目 の 血 清IgG濃 度÷ IgG摂 取 量×100) はDFAⅢ給 与 子 牛 が45%で, 対照子牛の30%よりも有意に高く,DFAⅢはIgG 吸収率を高めると考えられた。一方,血清IgG濃 第10図 初乳にDFAⅢを添加し給与した子牛 (■)と DFAⅢ無給与の対照子牛(□)のIgG吸収率 度はDFAⅢ給与子牛も2日目に低下しており, **:p<0.01 出生24時間以降のIgG吸収に対する効果は対照と 食品と容器 㪁㪁 665 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 するタンパク質:クローディンの組み合わせや量 ため,カルシウムの吸収は亢進されると報告さ ことが報告されている。こ れている22)。従って,ヒトにおいては多種類の れらから,IgGの吸収はこれまでエンドサイトー オリゴ糖がカルシウム吸収を亢進し,それは日常 シスで行われるといわれているが,新生子牛にお 的な現象であると考えられる。しかし,牛では第 いては上皮細胞間からも吸収されている可能性が 一胃微生物がこのようなオリゴ糖を分解するため, 高いと考えている。 ヒトやラットで得られる効果が牛では発現しない。 比によって異なる 18) 第一胃微生物に分解されにくいDFAⅢはこの点 ◆6.おわりに◆ で特別なオリゴ糖であり,牛での効果が顕著な理 DFAⅢ と 同 様, タ イ ト ジ ャ ン ク シ ョ ン に 作 由であろう。私たちのDFAⅢ研究はこれまで, 用するオリゴ糖はDFAⅣ,ラフィノース,フラ 乳牛のカルシウム吸収を中心に行ってきたが,出 クトオリゴ糖,マルチトール,メリビオースなど 生子牛のIgG吸収といった全く異なる効果も得ら 19∼21) 。また,多くのオリゴ糖は腸内細菌 れている。今後も新しい機能と,さらに新たな畜 により分解され,その際に産生される揮発性脂肪 種での効果についても検討し,畜産経営と家畜の 酸が腸内を酸性化し,カルシウムをイオン化する 健康に貢献したいと考えている。 がある 参 考 文 献 1)Saito K. et al.: . April 8-9,(1997) 64: 13)佐藤 忠ら,家畜臨床誌,30: 31-38,(2007) 1321-1327,(2000) 2)佐藤 忠ら,日本畜産学会報,77; 395-399,(2006). 14)Staley T. E. et al.: 3)Sakurai K. et al.: 15)佐藤 忠ら,北海道畜産学会報講演要旨,pp44, . 61: (2007) 989-993,(1996) 16)Quigley J. D. et al.: 4)Minamida K. et al.: 17)Pansu D. et al.: 5)中井 朋一ら,日本畜産学会報,78: 57-61,(2007) 18)Furuse M. et al.: 8)Goff J. P. et al.: 19)Mineo H. et al.: 74: 4022-4032,(1991) 153:263-272,(2001) , 131:3243-3246, (2001) 9)西沢良記・他編「カルシウム その基礎・臨床・栄養」 , 20)Mineo H. et al.: (社)全国牛乳普及協会, pp.61-67,(1999) 21)Suzuki T. et al.: . 80: 176-186,(1997) , 132: 3394-3399,(2002) , 92: 751-755, (2004) 11)佐藤 繁ら,臨床獣医,22: 15-18,(2004) 22)佐久間 慶子,腸内細菌学雑誌,16: 11-19,(2002) 12)Beede D. K.: 食品と容器 . 244(Gastrointest. Liver Physiol. 7):G20-G26,(1983) 132: 3394-3399,(2002) 7)佐藤 忠ら,日本畜産学会報,78; 37-43,(2007) 10)Goff J. P.: . 81:1308-1312, (1998) 70: 332-339,(2006) 6)Mineo H. et al.: 68:184-205,(1985) 666 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:米の話(第15回) ●解説● 米の加工利用(4)無洗米 す ず き・ た か こ お茶の水女子大学家 政学部食物学研究科 修了。現在,特定非 営利活動法人全国無 洗米協会事務局長。 鈴 木 敬 子 いしくなさそうだから」 「お米をとがないと不衛 ●1.はじめに● 生な気がするから」「値段が高いから」などで, 「米を洗わずに炊けるので便利。とぎ汁を出さ 無洗米に対する情報不足が原因と考えられる。一 ないので,環境保護にも貢献している」等の理由 方,環境負荷を低減するエコライフに関心が高 から無洗米の販売,生産量が増加している(第1 まる中,環境省の事業「我が家の環境大臣 エ 図)。 コファミリーウェブサイト第1回グリーンコンシ しかし,一般家庭だけでなく給食や外食産業へ ューマーになろう!」のホームページで,無洗米 の普及が進む一方で,その製法や栄養価,おいし には大きく分けて4つの加工方法があり,その中 さ,環境への影響,経済性などについてよく知ら でヌカでヌカを取るBG精米製法のように製造過 ないために,無洗米に対して誤解を抱いている消 程で環境負荷が少ないものがあることなどが紹介 費 者 も 多 い よ う だ。NPO 法人全国無洗米協会(以下 全国無洗米協会と記載)が 米の消費量(kg/年・人) 実施した調査 1) によると, 約44 % の 家 庭 で 無 洗 米 が 購入されている。 しかし,無洗米を購入し ている人に,無洗米の具体 的な製法を聞いたところ, 知っている人は約30%で, 約70 % の 人 が 知 ら な か っ た。また,無洗米の購入意 向がない人の理由は, 「お 食品と容器 第1図 全国無洗米協会認証無洗米の生産量と1人当たりの米消費量 667 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:米の話 の負荷削減(とぎ汁による水質汚染,下水処 理費用)という大きなメリットがある。その ためにも無洗米についての現状,正しい情報 を提供する必要があると考えられ,また,そ うすることが,米離れが進む中での消費拡大 に大きく貢献していくことになると考える。 本稿では,無洗米について分かりやすく解説 することで,一人でも多くの方に正しい理解 を頂き,無洗米の正しい普及につながれば幸 いである。 第2図 無洗米の製造工程 (カラー図表をHPに掲載 C060) ●2.無洗米とは● されたが,無洗米の正しい選び方に関する情報提 供も積極的に行われるようになってきた。 (同ホ 精白米は,炊く前にとぎ洗いするが,これは, ームページは,平成21年5月∼平成22年7月まで 精白米の表面に残っている,肌ヌカという粘着性 掲載。「我が家の環境大臣」事業は,平成23年3 の強いヌカを除くためである。とがずに炊くと, 月31日で終了。) ヌカ臭く,おいしいご飯にはならない。無洗米と 無洗米は,一般家庭では家事の軽減,給食・外 は,この肌ヌカをあらかじめ工場で取り除いた米 食産業ではコスト削減(上下水道代,人件費)や のことであり,第2図のように,玄米→精白米→ 炊飯作業の統一化などの観点からますます需要が 無洗米という工程を経て作られる。 伸びると予想される。さらに,社会的には環境へ ●3.無洗米加工の方法● 無洗米の加工方法には,大きく分けて下記のよ うな4つの方法がある。全国無洗米協会の調査で は,BG精米製法が約7割,NTWPが約2割と推 定されている。 1)BG精米製法 肌ヌカの強い粘着力を利用したもので,加工の ❶小突起で米粒をはじ くと肌ヌカが金属壁 に付着する。 際には水も何も加えないのが特長。精白米を高速 ❷この肌ヌカに他の米 粒の肌ヌカが次々付 着し,無洗米になる。 で円筒内壁に接触させ,肌ヌカをはがし取る製法。 BGとは,Bran:ヌカ,Grind:削る,の頭文字 ❸大突起で米を押し, 金属壁に付着した肌 ヌカをはがし取る。 で,この方法で作られたものをBG無洗米という (第3図)。 ❹無洗米と肌ヌカが混 ざったものが「仕分 け機」に送られ分離 される。 2)NTWP(Neo Tasty White Processの略) ぬ 少量の水(米の約5%)で濡らした精白米に, ボイラーで約100℃に加熱したタピオカ粒(直径 第3図 BG無洗米の製造方法 (カラー図表をHPに掲載 C061) 食品と容器 1∼2ミリ位)を熱付着材として米重量の約 668 2011 VOL. 52 NO. 11 米の加工利用(4)無洗米 50%混ぜ込み,肌ヌカをタピオカに吸着させて 規定されている。 取る方法。この方法で作られた無洗米は,TWR 例 え ば, ①「 濁 度28ppm以 下 」 で あ る こ と (Tasty White rice)という。 (それは肌ヌカが完全に取り除かれている数値を 3)水洗い式 示すものである),②「製造時に何一つ添加され かくはん 米を水と共に撹拌して肌ヌカを洗い落としたの ていないこと」(安全性を重視している),③「製 ち,高速乾燥させ,とぎ汁は別途処理する。水量 造時のCO2 発生量は無洗米1kg当たり18.5g以下 は,機械によりさまざまで,米重量の15∼100% であること」 ,④「無洗米の処理工程では,富栄 である。この方法で作られた無洗米としてSJR 養化等の水質汚染をもたらす汚水がでないこと」, ⑤「副産物は食品リサ (スーパージフライス)などがある。 4)研磨式 イクル法を尊重し,継 ブラシや不繊布を使用し,それらをセットした 続的に循環活用されて 機内に米を通して,表面の肌ヌカを取るという方 いること」など,具体 法や,精米機と同じ原理の装置を研磨式無洗米機 的内容を定めているこ として使用するケースもある。しかしこの方法で とである。現在,製法 は,肌ヌカは取りきれない。 として,これらの基準 に合格しているのは, ●4.無洗米の品質基準● BG精米製法のみであ 第4図 全国無洗米協会 の認証マーク 現在,国で定めた無洗米の品質基準はない。そ る。 のため,どの程度の肌ヌカを取ると無洗米といえ このような2つの基準があるのでは,消費者の るのかといった定義はなく, (社)日本精米工業会 混乱を招く恐れがあるため,平成15年,食糧庁 と全国無洗米協会が,それぞれの基準で「品質保 (当時)は,品質基準の「濁度」(米粒の肌ヌカ 証マーク」「認証マーク」(第4図)を発行してい の取れ具合を判定するために,米を水に入れて撹 るのが現状である。 拌した時の懸濁水を濁度計にかけた数値。それが 日本精米工業会では,濁度のみを規定しており, 少ないほど,肌ヌカが取れていることを示す)の それも「濁度40ppm以下」と,比較的甘い基準を 上限値と懸濁水の作り方を統一することを検討し 設定している。これは,安全性や環境問題は,精 た。その結果,懸濁水の作り方は統一されたが, 米業者が自主判断すべき,という考え方に基づい 上限値については両団体の折り合いがつかず,統 2) 。これに対して,全国無 一化できなかった。そのため,現在,無洗米の濁 洗米協会は,便利さだけではなく,無洗米の目的 度基準は,前述のように2つの基準が存在する。 は本来,安全で,とぎ汁がもたらす汚染を無くし, 実際に流通されている通常の精白米と3種類の さらに副産物の肌ヌカが循環型農業に大きく寄与 無洗米の濁度を測定した結果,通常の精白米でも することにあるというゼロ・エミッションの考え 濁度40ppm以下のものが17検体中,14検体もあ 方に基づいている。つまり,消費者サイドで環境 ることが報告3)されており,40ppm以下という基 に良くとも,製造工程で環境に悪影響があれば無 準では,とがずに炊けるほどに肌ヌカが取れてい 洗米の存在意義はない,ということである。 るかどうかの無洗米の品質基準にならないのでは そのため,多くの規格を設け,それぞれ細かく ないかと思われる。 ていると考えられる 食品と容器 669 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:米の話 ●5.無洗米の栄養価● ●6.無洗米のおいしさ● 無洗米は,米の主成分である炭水化物やタンパ 無洗米の食味について,同じ原料玄米から製 ク質については,精白米を手でとぎ洗いしたもの 造した精白米と無洗米で試験した結果,「洗米し と変わらない。ただし,水溶性ビタミンは,無洗 ないで炊飯した無洗米の食味は,洗米した普通精 米のほうが若干多くなる。ビタミンB1,B2, 米の食味と同じだった」という報告5)がある。 ナイアシンなど水溶性ビタミンについては,菅野 精白米の表面には無数の凹凸があり,その凹部 4) らは ,製法の異なる無洗米7検体について,す に「肌ヌカ」がぎっしりと詰まっている。この肌 べての検体が普通米をといだものに比べ,高い値 ヌカを取り除くためにとぎ洗いするのであるが, であったと報告している。 手際良く上手にとがないと,精白米がヌカ分を含 んだとぎ汁を吸収したり,米の表面の凸部にある 写真1 洗米後の精白米 写真2 BG無洗米 写真3 米1カップのとぎ汁中にある 肌ヌカ量 (カラー図表をHPに掲載 C062) 第5図 とぎ汁中の汚濁物質8) (カラー図表をHPに掲載 C063) 食品と容器 670 2011 VOL. 52 NO. 11 米の加工利用(4)無洗米 うまみ層6)を削り取って,その米のおいしさを充 は,下水処理しても完全には除去できずに河川を 分に発揮できないことになる。おいしいご飯を炊 汚すうえ,下水処理するときにCO2を多く排出す くには,うまみ層を壊さずに肌ヌカだけを除くこ る。とぎ洗いの不要な無洗米を使用することは とが重要である。写真1は,家庭で洗米後の精白 環境負荷の減少に効果的ではあるが,無洗米の 米の表面であるが,まだ多くの肌ヌカが残ってい 環境負荷を論ずるには,製造過程や肌ヌカ処理 る。写真2は,BG無洗米の表面の写真だが,肌 まで含めたトータルな視点で検証することが必要 ヌカは取れているうえに,表面のうまみ層も破壊 となる。 されずにきれいに並んでいる。 ●8.無洗米の経済性● ●7.無洗米と環境● 3カップ(約450g)の米をとぎ洗いするのに, 排水には,家庭から出される生活排水と工場な 約4.5Lの水を使う(全国無洗米協会調べ)。家庭 どからの産業排水があり,東京湾では生活排水が で1日3カップの米を炊く場合,無洗米を使った 7) 全体の7割を占めるという調査結果 もあるほど, 生活排水は河川の汚染源になっている。米を4回 と す る と, 年 間 で 約1,656Lの 水 が 節 約 で き る (2Lのペットボトルにすると828本分)。 と い だ 場 合,BOD 4.4g, チ ッ ソ182mg, リ ン また,普通の精白米5kg袋には,約0.15kgの 218mgとなり,これを魚が生息できる水質(BOD 肌ヌカがついているので,とぎ洗いすると実際に おけ 5mg/L)にするために必要な水の量は風呂桶 食べられるのは4.85kgである。無洗米では,正 に2.9杯分にもなる。 味5kg袋をすべて食べることができるので,こ さらに,第5図は,日本人が1日当たり摂取す の点においても経済性が高いといえる。 る米161g 9) について,とぎ汁中の汚濁物質を比 ●9.無洗米の炊き方● 較したものである。この中で,BODやCODは, 下水処理場でほとんど除去できるが,リンやチッ 無洗米の炊き方は,とぎ洗いする必要がないと ソは完全に取り除くことができず,下水処理され いう以外は,基本的には精白米と同じである。浸 ていても約50%位が河川や海に垂れ流されてい 水も精白米と同様,夏は30分,冬は1時間程度行 る。このリンやチッソが,赤潮やヘドロなど,水 った方が良い。 質汚染の大きな原因になっているのである。 但し,同じ1カップの米を炊飯するとしても, 一方,第6図はBG無洗米の製造エネルギーと 普通の精白米はとぎ洗いの際,約3∼5%の肌ヌ 普通米をとぎ洗いするための上水製造,およびと カが流失してしまうのに対して,無洗米はとぎ洗 ぎ汁を下水処理するエネルギーからCO2排出量を いが必要ない分実質的な米の量が多くなるので, 比較したものである。無洗米加工時のCO2排出量 加水量を増やす必要がある。「無洗米はおいしく は,普通米をとぎ洗 いし,とぎ汁を処理 する時の約1/5で あった10)。 以上のように,と ぎ汁中の汚濁物質 食品と容器 第6図 普通米と無洗米のCO2排出量比較11) 671 2011 VOL. 52 NO. 11 シリーズ解説:米の話 ない」という場合,加水量を増やしていないこと の炊き出しメニューについて共同研究12)した中で, が最も多い原因である。 とぎ洗いする手間がなく,節水に役立ち,とぎ汁 の排水が不要な無洗米は作業効率も優れており, ●10.広がる無洗米利用● 災害時に使用することが推奨されているが,東日 無洗米は外食企業を中心に広がり,徐々に家庭 本大震災の際には,某企業がBG無洗米(金芽米 用にも浸透してきた。開発当初は水環境を守るた =下記に詳述)10万食分と業務用炊飯器を拠出 めに開発したなどというと,誰も相手にしなかっ し,社員を長期の炊き出しに派遣するなどの支援 たが,近年では,環境保全に対する意識も高まり, を行ったが,水が極めて貴重であった状況におい 無洗米開発の本来の目的である環境保全やとがず て,無洗米の最大の特長が発揮された場面であっ に炊ける特長を生かした場面で脚光を浴びるよう た。ちなみにこの取り組みは,東日本大震災被災 になってきている。 地域の復旧・復興に向け貢献された中小企業とし 環境省直営国民公園新宿御苑のレストランでは, て公表され,平成23年8月に経済産業省より表 買い物から料理,片付けまで環境に配慮したエ 彰された。 コ・クッキングによるメニューを提供しているが, 無洗米はメニューを構成する主力となっており, ●11.付加価値の高い無洗米の登場● BG無洗米のカレーやハヤシライスは人気メニュ 無洗米は,確かに精米方法が進化したものであ ーとなっている。また,年間30万人が登山にチ り,従来の精米に比べて付加価値が高いというこ ャレンジする富士山や白馬などでも,山小屋で水 とは間違いない。しかし,米の機能性から見ると ねら の使用量を減らし,環境負荷を減らす狙 いから まだまだ進化の途中であった。そこで,平成17 BG無洗米が採用されている(写真4)。 年に登場し,米の機能性である栄養とおいしさ 日本調理科学会とNPOキャンパーが,災害時 を兼ね備えた米として,注目を集めている無洗米 新宿御苑レストランゆりの木 ドライカレー(下写真) 富士山山小屋(太子小屋) カレーライス(下写真) 白馬山荘 写真4 新宿御苑ゆりの木,富士山山小屋などの写真 (カラー写真をHPに掲載 C064) 食品と容器 672 2011 VOL. 52 NO. 11 米の加工利用(4)無洗米 が金芽米(きんめまい)である。金芽米は,新精 13) 89歳という高齢の入居者様の健康改善を目的に, はい により,胚芽の基底部(金芽)と亜糊粉 2010年10月から3カ月間,主食に金芽米を提供。 層(あこふんそう=うまみ層ともいう)を残した その結果,7割の方に,健康状態改善効果や便通 米で精白米に比べ,健康糖質といわれるマルトー 改善,血液検査における中性脂肪値やコレステロ スは約60倍,グルコースは約5.5倍,ビタミンB1・ ール値の低下といった,プラス効果が得られたと Eは約2倍,食物繊維,オリゴ糖は約1.5倍含まれ いう。 ている。 本来,米は日本人の主食として健康維持の根幹 米技術 最近の研究からこの亜糊粉層には,心臓血管疾 を成してきたものである。食の欧米化や多様化に 14) 患予防効果があることも判明した 。 より,次第にその地位も揺らいでいる。しかしな また,介護現場・専門職に定評のある介護経営 がら,精米技術の進歩により,環境保全の一翼を 専門誌「介護ビジョン」9月号(8月20日発売) 担う無洗米や,現代人にマッチした食べやすく玄 の特集“介護現場の食事サービス:食と健康にこ 米に近い栄養価を享受できる金芽米まで登場する だわる企業・施設紹介”で,金芽米を取り入れ, など,近年その進歩は目を見張るものがある。こ 入居者様の健康維持に尽力されている介護老人保 のことが多くの日本人に理解され,米について改 健施設やよい苑(和歌山県岩出市)の事例が紹介 めて興味を持って頂くきっかけになれば幸いであ された。同誌によると,やよい苑では,平均年齢 る。 参 考 資 料 土壌協会(2003). 1)特定非営利活動法人全国無洗米協会,http://www. 9)食料需給表平成18年度米の1人1年当たり供給量よ musenmai.com/. り計算,農林水産省. 2)相子清造,無洗米の衝撃,旭屋出版(2005-12) 10)鈴木敬子,無洗米,普通米の製造・利用におけるラ 3)美味技術研究会誌第5号(2004-6). イフサイクルCO2 排出量,日本調理科学会誌,42, 4)無洗米の品質等に関する研究・調査,静岡県環境衛生 科学研究所第42号,(1999). 342-348(2009). 5)どこがちがうの?無洗米と普通精米の品質および貯蔵 11)無洗米,特定非営利活動法人全国無洗米協会発行. 特性,FOOMAJAPAN 2004アカデミックプラザ研究 12)僕たちの使い方マニュアル,2006年∼2010年版. 発表. 13)第59回日本栄養・食糧学会大会要旨集. 6)雜賀慶二,米飯粒表面の高含水性膜(保水膜)と食味 14) ア メ リ カ 実 験 生 物 学 会(EXPERIMENTAL の関係,日本栄養・食糧学会誌,43(1990-6). BIOLOGY2010,アメリカカリフォルニア州アナハ 7)とりもどそうわたしたちの川を海を,平成14年東京 イムで開催)で発表。アメリカ高血圧学会の学会誌, 都環境局. 24,530-533, (2011-55) (AMERICAN JOURNAL 8)無洗米と普通米の環境影響評価(その1) , (財)日本 OF HYPERTENSION)に掲載. 「食品と容器」年間予約購読申し込み受け付けについて 平成24年度の「食品と容器」の年間予約申し込みの受け付けをしております。 例年通り,本誌は前払い予約(1∼12月号)購読制となっております。新年号の発送を12月末に予定しており ますのでお申し込み,ご送金はお早目にお願いいたします。 〔平成24年度年間購読会費〕 年間12冊 8,000円(消費税・送料共) 缶詰技術研究会 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町1−8−4 TEL 03(3663)7251 FAX 03(3663)7253 食品と容器 673 2011 VOL. 52 NO. 11 ○ 食の遠近画法 昨今,筆者の学生時代には思いもよらなかった 論 争 ご みょう とし グループワーク(GW)なる学習システムが盛ん はる 五 明 紀 春(女子栄養大学教授) である。これは単なる共同作業ではなく,数人の 小学生の頃,ひょんなことから,遊び仲間同士 学生同士が,その思考過程そのものを共有するこ で「天体問答」になった。「月は太陽よりも小さ とを目的としていると理解される。「思考の二人 い」と筆者がこともなげに言ったところ, 「馬鹿 三脚」だから,想像するだに難しい。 野郎,月の方が太陽より大きいに決まってるだろ 他人の意見を聞き,自らも率直に発言し,共同 うが。生意気言うな」と,突然怒り出した年長の で論点を整理し,これらを客観的な立場で取捨選 ガキ大将の剣幕に震え上がった。 択して, 「良い結論」に到達する―。しかし,こ こんなわかりきったことを,と内心思いつつ, れは建前である。多くの場合,「良い結論」に向 怖気づいた筆者は口を閉ざしてしまった記憶があ かって,懸命に「神輿」をかつぐ人もいれば,か じく じ る。その時の,理不尽を黙認したという忸怩たる ついだ振りだけで,ぶら下がる人も出てくる。一 思いは,その後大人になってから,折に触れて甦 種の駆け引きの場に堕してしまうことも珍しくな ってくるのだった。明白な事実誤認であるにもか い。 かわらず,自信たっぷりの大音声で他を圧する御 したがって,GWは,その意図するところと違 仁に少なからず出会って来たからである。それが って,学生たちの怨嗟の的になる場合も少なくな 目上の人となれば,多く沈黙を余儀なくされるの いのである。ディベートに積極的な価値を認める も世間普通のことである。 米国からの「輸入品」らしいが,日米文化の差異 しかし,年を経るに従い,近年は,筆者自身も を考えさせられる。だいぶ以前から,就職試験の その轍を踏んでいるのではないかと,時々,わが 場にもGWが取り入れられて,就活学生たちのト 身の背後をおそるおそる振り返ることがある。自 レーニング課題になっている。試験委員の面前で, 分も,あの時の田舎のガキ大将とひょっとして同 GWパフォーマンスを採点される,という具合で じように,誤った思い込みをしょっちゅう言った あるから,大方の学生には難関である。この方式 り書いたりして,平然としているのではないか, で,果たして良い人材が得られるのか,正直,筆 と。今思えば,彼は,筆者にとっての人生の反面 者にはよくわからない。 教師であり続けたことには間違いない。 デカルト(1596 − 1650)は,他人との論争で,得 きっと,あの愛すべきガキ大将は,じきに自ら るものは何もなかった,としてこう述べている。 えん さ の見解をあっさり撤回したと思いたいが,カソリ 「けだし,各人が勝つことに懸命になっている間 ックの本山バチカンともなると,歴史が示すとお は誰しも双方の論拠を考量するよりは,真実らし り,事実誤認の訂正は,そう簡単にはいかなかっ さを強調することに努力するからである。久しく たようだ。 優れた弁護士であったものが,そのために必ずし 2009 年2月 15 日,法王ベネディクト 16 世は, も,あとで良い裁判官になるとはかぎらない」(小 宗教裁判で有罪としたガリレオ・ガリレイ(1564 場瀬卓三訳「方法序説」角川文庫)そして,論敵 − 1642)にミサで謝罪,その地動説を公式に認め については「目明きと対等に闘うために,真っ暗 て,「ガリレオは現代科学の父であり,神聖な人 な洞穴か何かの奥に目明きを連れこもうとする盲 だ。彼の名誉は回復された」とした。何と判決か 人にそっくりだと思う」(同上)とも述べている。 ら,367 年後のことである。 彼によれば,論争によって「良い結論」に達す 食品と容器 674 2011 VOL. 52 NO. 11 る,などと始めから期待するな,というわけだ。 ○ ○ 中世の「普遍論争」は,高純度の「論争」では 「神学論争」といえば,現実離れした実りのな あったに違いないが,それでも学派が分かれ,厳 や ゆ い論議として,これを揶揄する風潮がある。たと しく対立して,当然のことながら,そこから師弟 え結論が出たところで,忙しい毎日の生活に何の や門下生の人脈が派生し,純理だけではない諸事 影響もないことに熱中する「暇人」はあまり上等 情が論争の行方に影響を及ぼしたことは疑いない。 とは言えない,と常識人は考える。その上,いく およそ派閥とは,そこに属する人々の相互評価の ら論争したところで,始めから着地点が想像もで システムでもあるから,議論にバイアスがかかっ きない,となればなお更である。 て不思議はない。 その想像もできない論争として,中世キリスト 後世,歴史家が整理したような具合には, 「普 教神学者を二分したと言われる「普遍論争」は, 遍論争」が進行したわけではない。数世紀に渡っ その白眉とされるだろう。「普遍」という概念は, て,中世の哲学者たちが入れ替わり立ち代わり, この世界に実在する,とする立場(実念論)と, いわばステークホルダーとして,「論争」に参入 それは単に言葉(名辞)としてのみある,とする し,その全貌は曖昧模糊としている(山内志朗「普 立場(唯名論)の対立である。まさに浮世離れし 遍論争」哲学書房)。 た論争ではあろうが,この論争を通じて,キリス 「論争」には動機があり,その動機が不純物と ト教神学は大いに深められたと言われる。 なって「良い結論」への道筋を歪める,としてデ 翻って,自然法則(普遍)の実在を信じること カルトは論争を毛嫌いしたのであろう。しかし, なしに近代科学の発展はありえなかった,と筆者 これはいささか無理な注文ではないだろうか? 立 には思われる。とすれば,科学者はひとしなみに, 場もなく,動機もなく,したがって利得もない「論 「普遍論争」における実念論の陣営に属していた 争」などありうるだろうか。 と言わざるを得ない。科学者たちの哲学は,呪術 いわゆる書生論は,地に足の着かない無責任な (言葉)で自然界の出来事はどうにでも操作でき 理想論,自己顕示のための未熟な若者の議論とし るとした「錬金術師」とは根本的に異なっていな て片付けられやすい。しかし,その純度において, ければならなかった。中世の「普遍論争」は,そ 書生論は,デカルト好みの「論争」 (好むとして れと知らずに近代科学を胚胎させていたと見るこ だが)にもっとも近いのかもしれない。「政治家 ともできるだろう。その意味で,「普遍論争」は, が書生論をしなくなったらおしまいだよ」と政界 転機を画した歴史的事件として筆者の眼には映る。 の酸いも甘いも味わい尽くした元総理の言葉が思 う えん 一見,浮世離れした迂遠な議論であっても,そ い出される。少なくとも「他人の顔色を気にしな れがモノゴトの本質に迫るものであれば,回避す い」議論は,若者に限らず,社会の要路にある人 ることはできない。たとえば政党には,綱領(プ 々にとって一際重要である。 ラットフォーム)があり,それに基づく公約(マ ○ ニフェスト)がある。綱領は,そもそも結社に至 今,ネット上には「書生論」が荒れ狂っている。 る哲学であり,党員たるものの「踏み絵」である グローバル現象のようだ。そのメッセージは尽き から,その策定には,時間をかけた「神学論争」 るところ「効率が悪い,生産性が低い,ただそれ がなければならない。これを省略して,数合わせ だけの理由で,人間を路頭に放り出して良いのか」 に奔ると,ご承知のように,不測の事態に遭遇し である。これを「書生論」として片付けるかは, て,迷走,立ち往生することになる。 その社会の根本(哲学)にかかっていると思われる。 食品と容器 675 2011 VOL. 52 NO. 11 食体験に左右される食品の選択 ( どのような要素が食品の購買意欲を刺激するの )p.59( 11・5)文献 №5692 り活性化させようとするもので,この作用はより し りょうが か? 何が食品を嗜好させるのか? たとえ健康 理性的な選択を凌駕する。 に良くないと知っていても,それを無性に食べた 食体験 いと思うのはなぜか? OreosやDoritosといっ ものを食べているとき,観測できる一連の決ま た製品が年々売り上げを伸ばしているのはどうし った事象が起きている。段階によっては経験によ たわけか? にわかには信じがたく,しかし単純 って覚えるものだが,そのうちに習慣的な行動と な真実は,食を動機づける生化学的仕組みを食品 なる。こうした流れはごく自動的に処理され,行 メーカーも市場も理解していないということであ 動する本人には自覚がない。食体験を評価する際 る。フレーバーは「嗜好される製品づくり理論」と は,脳内の分析野で起きる一連の事象を理解する も呼ぶべき説の,ほんの一部を構成するにすぎない ことが肝要である。そうすれば食品や飲料開発の し,概してこうした技術は直観的なものではない。 効率を最大限に高めることができる。 何千という種類がある中で,比較的少数の食品だけ 見た目: が現金を稼ぎ出す直接の理由はここにある。 第一に,ヒトは目で食べる。シェフであれば, 上記理論の応用方法をマスターするには,全体 このための修行を長年積む。色・大きさ・配置と 的視点から,際立った競争力を持つ製品の魅力を いった視覚的戦略に料理界での成功がかかってい 定義・設計することが求められる。 るといっても過言ではない。目の前に食物が置か 選択の秘密 れると,目はすぐさま評価作業に入る。なじみの 食品選択の秘密は複雑であり,また通常は食品 ある食物か? 色と形は正しいか? 以前食べた 科学の授業でも取り上げられることもないため, ことがあるか=信用できるか? こうした視覚的 メーカーや外食産業には食体験に関する基本的な 分析は遺伝のなせる業であり,食糧供給が常に変 理解が欠如している。技術と感情とを調和させる 動し,しばしば危うかった太古の昔に獲得された, 製品づくりが持つ力を体得できていないのである。 人類が生き残るための手段である。もちろん脳に 一方,成功する開発者はこうした要件をすべて組 食物に関する情報は蓄積されるが,食体験の第一 み込み,より優れた製品を生み出す術を知ってい 段階としての視覚的分析が世界共通であることは る。 確かだ。食の選択が行われるとき,脳は目を通し 食品選択・摂取原理を理解する鍵は単純な事実 て食物の摂取および消化の過程で得られる快感が の中にある。すなわち,遺伝が否応なく人々を食 どの程度であるかを計算し,直ちに「嗜好性」を の快感に反応するように仕向ける。ところが,こ 決定する。 の概念の前に知性という神話が大きな障壁として 期待感: 立ちはだかる。食の選択は脳内の意識野において, 食物の視覚的分析が肯定的な記憶に適合すると, 論理的かつ体系的プロセスで,分析・選定が行わ 食体験は次の段階へ移行する。しかしなじみがな れると一般に教えられる。しかしヒトは快楽を求 かったり,肯定的な記憶に結びつかなかったりし める生き物である。食の選択とは,主に脳内の潜 た場合は用心深くなる。これは重要な防衛作用と 在意識的な快感中枢を活性化させる神経反応にほ して後天的に獲得される。優れた開発者は,食物 かならない。ある食品の持つ特徴が強い生化学的 を観察し,受け入れるという第一段階において 反応の引き金となる。ヒトは快感中枢を可能な限 「正しい」色が果たす役割の大切さをよく知って 食品と容器 676 2011 VOL. 52 NO. 11 いる。色によって形成される期待感が食物と合致 環境指標であり,食物と危険とを探知する。例え すれば,その食体験は肯定的かつ満足感を与える ばバーベキューの煙は快適で唾液分泌のきっかけ ものとなる。食べ物も飲み物も期待に添うか,期 となるが,山火事の煙は快適どころか,一刻も早 待以上であれば成功する。以上の二段階を 「観察」 い避難を促す。ヒトは香りによってビタミンやミ 過程として無事通過し,さらに残る段階をうまく ネラル,脂肪酸といった栄養素の存在を知覚する。 こなした製品は繰り返し購入され,顧客の確保に 脳にあらかじめプログラムされているものもある 至る(嗜好性の確立)。 が,多くは食物の摂取を通じて後天的に獲得され, 温度: 食の記憶を形成する。香りの好みは一度形成され もうひとつの重要な防衛作用として,口唇が非 ると消えることはほとんどないので,肯定的な記 常に敏感な温度計の役割を果たす。視覚的分析に 憶を呼び覚ます香りを取り入れた食品開発は,稀 基づき,脳は体内に入ろうとしている食物の温度 でありながら非常に的を射ている。 を推測する。口唇が予想から外れた温度を感知す 筆者はこのほど食品包装材に香り成分を組み込 ると,危険信号が脳に送られる。食物が危険な温 み,熱によって活性化,放出させる実験を行った。 だ まれ こう 度であることはまずないが,一度口腔内に入り, 消費者と心理的なつながりを創出することを意図 予想と異なる温度だった場合は概して不快感とな したもので,素晴らしい香りが消費者を失望させ る。料理学校では「冷たいものは冷たく,熱いも ることなどあり得ない。視覚的段階に先んじて効 のは熱く」と教える。温かいビールや生ぬるいピ 果的に香りを前面に押し出すことに成功した。香 ザなどは失望感として記憶される。恐らく脳は本 りに対する信用は即時に確立される。多くの食品 能的に,食物は熱いか冷たいかのものであって, が価格や機能といった課題に直面するが,解決策 その中間は食中毒を引き起こす「危険領域」だと のひとつとして,消費者の感情に訴えかけること いう理解をしているのだろう。 が考えられる。 舌触り: 感覚: さ 食物が口腔内に入ると,舌と三叉神経が舌触り シェフや食品技術者が正しいフレーバーを出す の評価を開始する。実はここに,中途半端な食品 ことに投資することはよくある。フレーバーは大 開発の落とし穴がある。脳はメリハリのある舌触 切だが,食物が口腔内に入り,脳がフレーバーを りを好む。優れた食品は「触感協奏曲」を奏でる 感知さえしないうちに他の多くの官能的仕組みが もので,食事をしている過程で口の中にさまざま 絡んでくる。官能科学者以外でこの仕組みを理解 な触感があると快感が増す。世界的に人気の食品 している人は少数だが,優れた食品開発者にとっ には舌触りに変化のあるものが少なくない。ピザ ては売れ筋を作り出すための肥沃な土壌である。 か などはパリパリ感と噛み応えのあるクラストに柔 味覚野にある脳細胞のうち,味に反応するのは らかいチーズが組み合わされている。チョコレー わずか4%にすぎないとする研究者もいる。残り トは口の中に入る際は固いが,すぐに溶け始めて は何に反応するのかという疑問が当然湧くが,答 甘美かつぜいたくなクリーミーさが口腔内に広が えは口内感覚である。口内感覚は三叉神経によっ る。冷たく,やや固いアイスクリームもすぐに溶 て探知,評価され,触感・温度・痛み・圧力とい かも けて温まり,乳脂肪と砂糖のおいしさを醸し出す。 ったさまざまな感覚を網羅する。学校ではヒトが そこにホットファッジやナッツなどが加われば舌 5つの感覚を持つと子供たちに教えるが,それは 触りの面白さがさらに向上する。脳の快感中枢が すべてを言い表していない。口腔内だけでも20 活性化し,アヘン剤のような脳内物質が放出され 以上の感覚がある。浸透圧濃度受容体は溶質濃度 て,しばし幸福感を味わうことになる。 を探知する。キャラメルの“伸び”を探知できる 香り: 受容体もあり,位置や方向を計算(窒息防止に有 あるものは生き残るための「プログラムされた」 効)する。他にMSG(グルタミン酸ソーダ), 食品と容器 677 2011 VOL. 52 NO. 11 コショウ,バニロイド成分,熱さ,冷たさによっ される。塩とグルタミン酸の組み合わせは強い て働く受容体もある。こうした感覚を活性化させ 快感をもたらす。人気のDoritos製品などは両 る食品の開発は,脳にとって殊更に興味深いもの 方を配合した典型例である。グルタミン酸は経 であろう。 年,乾燥,塩漬け,発酵,加熱などによって濃 味: 縮される。パルメザンチーズ,醤 油,魚醤, 上記の諸段階を終え,許容して初めて,脳は最終 MSG,オイスターソース,塩漬けハムやベーコ 段階としてフレーバー,より正確には味の評価に取 ンなどが広く好まれていることは決して偶然で りかかる。味には以下のようなものも含まれる。 はない。 しょう 食の魅力 ・味覚とは,化学物質が刺激となって口腔内の物 理的感覚を生じさせるものである。渋み成分, 塩とグルタミン酸の共演は,今日注目される減 アルコール,電気,アルカリ性物質などを例と ナトリウムの観点からは問題が多いが,MSGや して挙げることができる。四川料理の食材は噛 酵母自己消化エキス(AYE),加水分解タンパク むと弱い電気的「ショック」を感じさせ,少量 質を使って塩辛さの欠如を補えば,満足感の高い そう なら新しい爽快な食体験をもたらす。 ものができる。ナトリウムの含有量はMSG13%, ・水には味がある。 食卓塩40%なので,この方法はうまみも加わっ ・要注意:苦味や酸味の知覚は食中毒の可能性を て一石二鳥である。 示唆する防衛作用ともいえる。 新しい食品をつくるとき,開発者はマッピング し ・エネルギー:脂肪酸の味は嗜好性に結びつきや を行って新製品の特徴を目に見えるかたちにする すい。ポテトチップ,フライドポテト,フライ ことが多い。また「味活性価」を使って味の構成 ドチキン,ベーコンなどは世界中で好まれてい 要素を具体化する。味/フレーバーの組み合わせ る。 バランスや増幅のさせ方も検討する。上述の「食 ・快楽:脂肪や砂糖または生き抜くために不可欠 体験の諸段階」をテンプレートとするのも有効だ のアミノ酸複合体の存在は,強力な快楽信号と が,成功するか否かは使う側の力量次第である。 なる。例えばグルタミン酸はうまみとして知覚 (力丸みほ) 海外技術情報 2010 年新製品トップ 10 の傾向 ( )p.39( 11・5)文献 №5690 ベストのタイミングであっても,新製品を市場 を考え直させている。年間売り上げが5,000万ド に出すのは容易なことではないが,経済の不安定 ル以上を達成した大ヒット新商品は,わずか3 が長引く間に,課題はさらに大きくなっている。 %であった。Coca-Cola社のPowerade Ion4(電 シカゴの調査会社SymphonyIRI Groupによる 解質を補給することで運動能力を高める)が1億 と 食 品 や 飲 料 新 製 品 の ト ー タ ル は,2008年 の 9,050万ドルを売り上げ,No.1となった(第1表) 。 859点に対して2010年は647点と減速した。 トップ10の内,4製品は飲料である。前出の 2010年,販売は一般的に改善されているもの Powerade Ion4 に 加 え,Glaceau Vitaminwater の,CPG(consumer packaged goods) 企 業 は, Zero,Tropicana Trop50,Budwiser Select 55 大不況と消費者の消費行動の大きな変化による課 がリストに入っている(第1表) 。なお,トップ 題を抱えている。現在,買い物客の行動の構造変 10リストには見当たらないが,興味ある製品に 化が,製造業者,小売業者に対して,どのように Monster Nitrous(5,000万ドルを販売)がある。 製品を開発,包装,価格設定,販売,陳列するか 亜酸化窒素(nitrous oxide)技術を特徴とする初 食品と容器 678 2011 VOL. 52 NO. 11 第1表 2010年新製品ペースセッター:トップ10 めてで唯一のエネルギー飲料である。 今年のテーマは 「経済後退下での革新的な成長」 売上高 (単位 100 万ドル) ブランド で あ る。SymphonyIRI社 のNew Products Pacesetters 2011リポートによると,2010年に 発売された最も成功した新食品および飲料は, 「家庭での消費」 「健康と幸福」「味が良いこと」 「バラエティーに富んでいること」そして「少し だけぜいたくであること」を強調しているという。 ジュース,ミルク,ウオーター(41%アップ) およびコーヒーや紅茶飲料(14%アップ)は健 全 な 成 長 を 示 し て い る。 こ れ に 対 し, ペースセッターの中に占める炭酸飲料のシェアは 32%降下し,ビールおよびワインも13%降下し Powerade Ion 4 190.5 Chobani 149.4 Wonderful Pistachios 114.1 Glaceau Vitaminwater Zero 110.3 Nature's Pride(line of breads) 80.8 Tropicana Trop50 74.4 Thomas' Better Start 74.2 Green Mountain Coffee-K Cups 62.1 Budweiser Select 55 59.9 Trident Layers 53.9 (2009 年2月∼ 2010 年1月発売の新製品) た。 新しいブランドの発売(もし,これらが成功す れば)は,歴史的に見てブランド拡張より利益が ・11%は抗酸化物質を含む 大きい。2010年,新ブランドの1年間の平均利 ・10%はトランス脂肪を含まない 益は 424億ドル以上であり,ブランド拡張(264 ・6%は低塩/ナトリウム 億ドル)を上回っている。これは基本的にいくつ 驚くことではないが,2010年の多くのペース かの大ヒット商品が発売されたためである。にも セッターはこれら利点の2つ以上を持っている。 かかわらず,昨年はブランド拡張が,新食品およ ホットなカテゴリー び飲料で88%であった。 朝食関連は例年の傾向の23%からアップし, T r o p i c a n a T r o p 5 0 ジ ュ ー ス と B u dw eis er 2010年ペースセッターの1/3を占めている。 Select 55ビールはより低カロリーのフレーバー これらには,ヨーグルトによる強力な成果が含ま を市場に持ち込んだ。Tridentは刺激的なフレー れる。塩味のスナックは25%を占め,例年の傾 バーとテクスチャーを持つシュガーレスチューイ 向の 9%から倍以上に増加しており,満腹感, ンガムである。“gumwich" と称し,ソフトなフ 健康,価値,持続性といった成長するための機会 ルーツフレーバーのセンター層を2つのフルーツ をフルに生かしている。 フレーバーガムでサンドイッチしたものである。 ジュース,ミルク,ウオーター分野における 消費者のオールナチュラルフードに対する感情 12の新製品の内4つは,Silk Almond Milkなど も 販 売 に 拍 車 を か け て い る。Wonderful Pista- の「あなたをより健康にする」ミルクであった。 chion,Nature's Prideブレッド,Chobani Greek また,同様な製品にApple & Eve Fruitables(若 ヨーグルトが,このようなカテゴリーに適合して 者をターゲットにした果実と野菜ジュース) , いる(第1表) 。 Yoplait Smoothie(スムージーが簡単にできる冷 人気のある新製品の内, 凍ヨーグルトドリンク),YoCrunch 100 Calorie ・27%はビタミン/栄養,高繊維/全粒穀物 Cup(カロリー計算が正確にできる)などがある。 を加えている 利便性は,昔から存在する十分に確立されたトレ ・25%はカロリーを減らし,低脂肪/無脂肪 ンドであり,しばしば要望を新しくしたり発展さ で発売されている せるため2番目の役割を演じている。 ・12%はエネルギー/タンパク質を提供して 今日,消費者の1/3は,スナックを食事の代 いる 食品と容器 わりに食べており,30%は行動しながら食べられ 679 2011 VOL. 52 NO. 11 るスナックを探している。 近くに見られる。 一口サイズや手で持って食べられる食品や飲料 古い製品も,Pepsi Throwback(先祖返りの意 が昨年は急上昇し,成功した新製品の1/4を占 味がある)やMountain Dew Throwbackとして める。ガム/キャンデーの分野では,Hershey's 再び新発売された。これらの製品は本当の砂糖で Pieces and Skittles Crazy Coresのような一口サ 作られており,パッケージや味が消費者の郷愁に イズの製品が利便性と刺激性を提供している。 アピールしている。消費者はぜいたく品に対して 味やバラエティーの刷新は非常にホットで,毎 は我慢しているものの,まったく魅力がなくなっ 日 の 食 事 に 楽 し み と 刺 激 を 与 え る。Stouffer's たわけではない。消費者は,今でも時々“ご馳走” Easy Expressシリーズは広範囲の食事形態を持 を購入する。しかし,用心深さは残している。彼 つ。 らは期待に背くかもしれない知らない新製品には 濃厚さやクリーミーからパリパリ感やさくさく お金を捨てたくない。2010年はそれが顕著であっ 感などのテクスチャーの刷新は,新製品の1/4 た。 (十時正義) 海外技術情報 食品産業の研究・開発動向に関する第 40 回調査結果 ( )p.28( 11・5)文献 №5689 経済の先行きが不透明な中,食品・飲料産業に 第1表 今年の研究・開発で最も重要な課題は? とっての研究・開発の重要課題ナンバーワンは今 新製品の開発 47% 年もやはり「新製品の開発」であったが,開発活 既存製品の改良 17% 動に対する各企業の姿勢は慎重さを増している。 コスト抑制 14% 「新製品の開発」は回答の47%で,前年より 既存製品の整理 9% 製品ラインの拡大 6% サステナビリティー関係 4% その他 2% 2%下がったものの3年連続で断然の第1位を占 めた。 次いで,第2位が「既存製品の改良」で前年よ り4%アップ,第3位は「コスト抑制」で前年の 第2表 今年の研究・開発予算はどうなったか? 第4位から1つランクアップした。反対に順位を 前年と同じ 53% 落としたのは「既存製品の整理」と「製品ライン 増えた 22% の拡大」の2つであった(第1表)。 減った 14% 節約に対して少なくとも幾分かの関心があり, 分からない 12% 予算は昨年とほぼ同じ傾向に落ち着いた。今年の 第3表 今年の研究・開発に最もインパクトを与える ものは? 研究開発予算は,「前年と同じ」が53%(昨年は 51%),「増えた」が22%(昨年と同じ),「減っ 1位票 た」が14%(昨年は15%)であった(第2表)。 (今年) (昨年) 最近のニールセン調査では,有機食品とか持続 食品安全 45.0% 46.0% 可能性といった「グリーン」商品の成長がスロー コスト削減 23.0% 24.0% ダウンしているものの,依然として企業の「グリ オーガニック/ナチュラル 9.2% 11.0% 健康管理(糖尿,肥満) 6.8% 8.1% 食に関するガイドライン 6.3% ― 健康予防/福祉 4.5% 6.0% サステナブル/エコ/公正取引 3.6% 5.3% ーン」への意欲は強いという結果が出ている。 では,なぜ今回のこの調査に対してはわずか 4%の回答者しか「持続可能性」に触れていない のだろうか? それにはいくつか理由が挙げられ 食品と容器 680 2011 VOL. 52 NO. 11 第4表 今後の研究・開発の大きな課題は? 第6表 今年最も重視する食品成分は何か? より健康的で体に良い食品 56% 減塩 49% 消費者のトレンド 50% 糖分の減少 26% 法規制 45% トランス脂肪の減少 25% 労務・人事関係 24% 繊維質の増加 24% グリーン化 22% 飽和脂肪の減少 23% グローバル化 18% 全粒穀物への代替 18% アウトソーシング 15% 野菜・果物の増加 15% ビタミン D の増加 9% 第5表 食に関する新ガイドラインの重要度? 第7表 開発チームの主要構成メンバーは? 適度に重要である 61% ほとんど影響しない 26% R&D 87% あらゆる面に影響を及ぼす 13% マーケティング 69% 製造部門 54% ゼネラルマネジャー 44% 購買部門 39% ようが,多くの食品会社にとって「持続可能性」 というのは研究・開発の対象というよりは経済上 財務部門 28% の問題と考えられているからであろう。 供給業者(多数) 23% 2011年∼2012年にかけて食品加工業者が種々 外部コンサルティング 13% の課題に遅れをとるまいとする際に,強いインパ 供給業者(1社) 2% クトを与えるものは何か? チームを持たない 2% 今回の調査では,7つのキーワードについて順 位付けしてもらったが,約半数の回答が食品安全 ムを持っており,当然ながらその主要メンバーは を第一に挙げ,次にコスト削減を挙げたが,これ 研究・開発担当者というのが最も多く,次いで多 は昨年と同じ傾向であった(第3表) 。 かったのがマーケティング担当者で,以下,製造 次に,今後の研究・開発の大きな課題となりそ 担当者,経営陣,購買担当,財務担当と続いた うなことは? という設問をしたところ,トップ (第7表)。 は「より健康的で体に良い食品」で56%,その 「研究開発の目標を決める者は誰か」という点 次に僅差で「消費者のトレンド」と「法規制」と については,会社トップすなわちCEO,CFO, いう結果が得られた(第4表) 。 社長,部長および研究開発チームが,昨年とほぼ ここでクローズアップされてくるのが農務省に 変わらないスコアで, “ 大いにかかわる”と“幾 よる「食に関する新ガイドライン」で,約2/3 分かかわる”という回答だった。多少の変化とし の回答者がこれを適度に重要と答えており,13 てはマーケティング&セールスチームのかかわり %の回答者がこのガイドラインについて膨大な 方が減ってきて,代わりに現場の人間の役割が増 影響を持つとみていて, 「あらゆる面にインパク しているということがみられた。 トを与えるだろう」と答えた(第5表)。そこで, 全体として,いまの経済状況が影を落として現 今年最も重視する食品成分について問うと,当然 状を維持することにこだわるという傾向があるも というべきか約半数が減塩という答えであった。 のの,研究・開発の方向性としては,「より健康 その後には糖分・トランス脂肪の減少,繊維質の 的で体に良い」モノへと食品メーカーの目は向い 増加などと続いた(第6表) 。 ていくものと思われる。 (大池静男) 調査対象10社の内7社が正式な製品開発チー 食品と容器 681 2011 VOL. 52 NO. 11 海外技術情報 シニア世代の食を考える ( )p.46( 11・2)文献 №5688 生理学的に食事要件はライフステージによって 向け食品の開発にはフレーバー強化やテクスチャ 変化し,シニア世代(65歳以上)の栄養ニーズ ー改良が重要になる。さらに,85歳以上の高齢 はユニークである。シニア世代は固定収入で生活 者は,歯や咀嚼力,嚥下力の衰え,不自由な身体 する場合が多く,味覚が衰えている場合もある。 活動,味覚のさらなる低下,付随してエネルギー 人口調査によると世界的に高齢化が進んでおり, 消費の低下と必要カロリーの減少,等々の健康問 栄養が豊富でおいしくシニア世代にも入手できる 題が加わる場合があり,新しい刷新的な強化食品 食品は多くの食品会社のターゲットである。 開発の恩恵を受けることになる」とCHAODHARI氏 シニア世代 は言う。 Fortitech社 の 上 級 副 社 長R.CHAUDHARI氏 は, 必要な栄養素 「今世紀半ばまでに世界人口の15%は65歳以上 年齢に関係なく,不適切な食事は病気の治癒力 になる。日本とヨーロッパ諸国は最も早く高齢化 に影響するだけでなく,慢性疾患の発症や悪化の が進んでいるが,65歳以上の人口は発展途上国 原因にもなる。年齢とともに身体の自然免疫シス でも増加しており,今世紀末には3倍になる。世 テムが衰えるため,食事と疾病の相関は高くなる。 界の高齢者人口の半分は中国,インド,米国,日 「高齢者の栄養ニーズや生活環境に適合する強 本,ロシアの5カ国で占め,現在6億人いる世界 化食品の開発は,高齢者の健康保護や強化のため の高齢者の内3億6,000万人が開発途上国に住ん の新しい機会の提供になる。高齢者市場を対象に で い る。2020年 に は 世 界 の 高 齢 者 人 口 は10億 した強化食品は,高齢者をいろいろなサブグルー 人になり,70%が開発途上国に住むことになる」 プに分けて開発される。例えば,活動的で健康な と言う。どこの国に住もうと人は皆, “健康で幸 高齢者層には,オンザゴーライフスタイルを訴求 せな老後(successful aging)”を過ごしたいと思 してエネルギー強化栄養素や健康促進栄養成分を う。これは年齢に伴う肉体的,精神的機能の衰え 強化した,持ち運びしやすいトロピカルフレーバ を最小限にすることで,死ぬまで衰えが全くない ーのリフレッシュ飲料を。一方,もっと高齢のグ か比較的短期間であって,活動的かつ生産的で有 ループにはフレーバーを強化した,少量で栄養豊 益な生活を維持することである。身体の遺伝特性 富な完全食事代替用飲料や柔らかいプリンを。ま や老化は不変でも,栄養摂取を適切に行えばより た多様性を考慮して,菜食主義者向けには動物ベ 楽しい老後にできる。 ース素材を一切使用しない食品など,いろいろな 年齢とともに,特に60歳を過ぎると,味覚や 文化的,宗教的制約に配慮した素材を用いた新し そしゃく えん ゆ きゅう 嗅 覚が衰えるのは当然のことである。味覚や嗅 い食品の開発も重要である」とC HAUDHARI 氏は 覚の衰えは生活の質に大きく影響し,食欲不振や 言う。 栄養不良の要因になったり,時には抑うつ症の原 ターゲットにする病気 因になることもある。味を濃くするために過剰に 食品開発者は,製品の対象グループや製品が提 食塩や砂糖を使って,高血圧や糖尿病の問題にな 供しようとする老化防止効果のターゲットを確認 ることもある。 する必要がある。製品効能を宣伝するヘルスクレ いき 「65歳以上の人のスクロースの閾 値は一般成 ームは国によって変わるが,通常,賢い消費者は 人の3倍であり,塩味や酸味,苦味の閾値も高い。 製品包装から内容物を理解することができる。 この加齢による味覚の減退を補うために,高齢者 例えば,ルテインやゼアキサンチン,オメガ3 食品と容器 682 2011 VOL. 52 NO. 11 脂肪酸などの栄養成分は目の健康維持に有効であ 影響を示すそのほかの食品素材に,コエンザイム ることを示す科学的エビデンスが多数あり,医者 Q10やイチョウ,ポリフェノール類,アセチル- やメディアを通じて高齢者に伝わっている。実際 L-カルニチン,緑茶,DHAなどがある。 に,国立衛生研究所眼科学会(the National Eye タンパク質の摂取 Institute of the National Institutes of Health) 2010年9月,ニースで開かれた第32回ヨーロ は,老人性黄斑変性の進行やそれに伴う視力喪失 ッパ臨床栄養・代謝会議(European Society for に対して,これらの栄養成分の効果を評価するた Clinical Nutrition and Metabolism Congress) めの研究を行っている。 「ルテインやゼアキサン で発表された新研究によると,高齢者は特にタン チン,オメガ3脂肪酸のサプリメントが目の健康 パク質とビタミンDの摂取に注意すべきである。 をサポートし,毎年数千人の視力救済に寄与して 「タンパク質とビタミンDは骨のミネラル密度を い る 」 と 北米DSM Nutritional Products社の栄 改善し転倒や骨折防止に重要な役割をする」とジ 養科学担当役員J.ELLIOTT氏は言う。 ュネーブ大学リハビリテーション&老人医学部の オメガ3脂肪酸は目の健康効能に加えて,心臓 R.RIZZOLI教授は言う。骨粗しょう症性骨折は高 にも有益な影響を持つ。心臓疾患は,ほとんどの 齢者,特に70歳以上の高齢者にとってリスクが 国でシニア世代の主要死因になっており,心臓疾 大きく,骨盤骨折は最も深刻である。実際に,骨 患の発症リスクを低減できる素材や食品成分は, 盤骨折患者の20%は合併症で1年以内に死亡し, シニア世代をターゲットにする食品処方者にとっ 30%は不治の障害が残り,40%は独自歩行が困 てますます魅力的なものになっている。 難になる。 葉酸の効能 ビタミンDの欠乏は,皮膚でビタミンを合成 葉酸を多く含む食物の摂取も,心臓疾患のリス するのに十分な日光浴がない場合,特に食事によ ク低減と関係がある。葉酸はまた別の役割を果た るビタミンDの低摂取が重なると起こる。高齢 いん こう している。Otolaryngology(耳鼻咽 喉 学)の 者が現在消費しているビタミンDの摂取量は低 2010年12月号で発表された新研究によると, く,推奨摂取量に比べてギャップが大きい。 老人性難聴と血清の葉酸濃度の低さとの間に相関 加齢による骨格筋減少症の予防 関係がある。老人は聴覚障害の発生率が高いにも ド イ ツ のErlangen-Nurnberg大 学 の 老 人 生 体 関わらず,老人性難聴の生物学的基礎はあまり分 臨床学研究所のD.VORKERT教授は,人は年をと かっていない。しかし,ナイジェリアのIbadan ると体重と代謝率が減少し,身体活動とともにエ 医科大学A.O.L ASISI教授の報告によると,老人 ネルギー需要量が減少すると言う。タンパク質摂 性難聴は微量元素の欠乏と関係があり,細胞代謝 取量は身体機能と骨格筋の低下予防の重要な鍵で や神経系,血管系における葉酸の役割は聴覚にと ある。 って重要である。 「食事やライフスタイルを変えることによって 記憶障害の予防 筋肉の衰えを防ぎ,骨格筋減少症の進行を遅らせ アルツハイマー病(認知症)などの記憶障害も ることができる」とイリノイ州の酪農研究所 しばしば老化に伴って起こる。この進行性の脳退 (DairyResearch Institute) の 副 所 長M.PIKOSKY 化症候群はあらゆる国で流行していて,まだよく 氏は言う。骨格筋減少症予防の鍵は日常の運動と 分かっていない老人性疾患の一つである。「栄養 食事による十分なタンパク質の摂取である。「ホ による認知症の予防研究はまだ初期段階である。 エータンパク質はロイシンの含量が高く,筋肉増 高ホモシステインが老人性認知症のリスク要因に 強に対してほかのタンパク質より有効である。9 なり,ビタミンB6やB12,葉酸,リボフラビン つの必須アミノ酸の中で,ロイシンは身体におけ などビタミンB類を多く摂取すると効果がある」 るタンパク質合成のスターター役である。脂肪組 とC HAUDHARI 氏は言う。ミトコンドリア機能に 織はエネルギーを蓄えるが,筋組織は代謝活性が 食品と容器 683 2011 VOL. 52 NO. 11 あるので,筋肉量を脂肪に置き換えるとカロリー する。科学者が決して見失ってならないものは食 消費が減少して結果的に体重が増える。十分なタ 品や飲料の官能特性である。シニア世代は,避け ンパク質摂取は高齢者にとって健康維持の秘訣で られないことが起こりつつあることが分かってい ある」と同氏は言う。食品処方者は“健康で幸 ながら,ほかの人と同じように食べることを楽し せな老後”に寄与できるあらゆる成分にアクセス みたいと願っている。 (合田芳宏) 海外技術情報 リンゴ上に接種した大腸菌 O157:H 7とサルモネラスタンレーを 減少させる抗菌剤入りポリ乳酸コーティング ( )p.M184( 11・4)文献 №5686 はじめに の包装材料として広く市販されている主要なバイ 生鮮果物や生鮮野菜の摂取による集団食中毒が オポリマーである(KALE氏他 2006)。PLAは賞 増 加 傾 向 に あ る(B EUCHAT氏2002)。 リ ン ゴ が 味期限の短い食品向けに惣菜容器,飲料用カップ, 食品由来病原菌に汚染されるのは畑において,ま サンデーおよびサラダ用カップ,ラップ用ラミネ た収穫作業中に野鳥のフンやハエ,排せつ物,水, ート加工フィルム,ブリスターパック等に使われ 機 械, 作 業 者 の 手 指 か ら も 汚 染 が 起 き る ている(ROYTE氏 2006;BONTEN氏 2009)。FDA (NGUYEN氏とCARLIN氏 1994;BEUCHAT氏 1998; もPLAの 食 品 接 触 容 器 へ の 使 用 を 認 め て お り BRACKETT氏 1999)。 (AURAS氏他 2004),小売市場における熱成形容 リンゴを丸ごと水洗いすることは,皮の表面に 器として新たに注目を集めている。 付着している微生物の数を減らすために,これま 実験素材と方法 で広く行われてきた。しかし,大腸菌O157:H7 微生物 2 は水洗いで約2log(CFU/cm )減少するものの 本稿実験で使用した大腸菌O157:H7 ATCC (W ISNIEWSKY 氏 他 2000; 43894とサルモネラスタンレーH0558は,農務省 KENNEY氏他 2001),塩素,過酸化水素,リン酸 農業研究事業団東部研究センターの培地で育成さ ナトリウム,過酢酸および酢酸を単独で,または れた。菌は液体培地(TSB)中に2℃で保存し,2 組み合わせて洗浄しても,大腸菌O157:H7やリ カ月ごとに移し替える。TSB中で一昼夜(18時間) , ステリア菌,サルモネラ菌を大幅に減らすことは 37℃で培養した培地(10mL)を実験に使用した。 できなかった(BEUCHAT氏他 1998;SAPERS氏他 菌体濃度は約109CFU/mLで,Butterfield社リン酸 1 9 9 9 ; L I A O 氏 と S AP E R S 氏 ,W I S NI E W S KY 氏 他, 緩 衝 液 中 に 段 階 希 釈 し,100μLず つ 寒 天 培 地 。 WRIGHT氏他 2000;ANNOUS氏他 2001) (TSA)表面に吹き付けた。 リンゴ産業においては,ワックスを表面に塗布 リンゴと接種 して見た目をよくするとともに,水分保持を重視 完熟でワックスを塗布していないゴールデンデ してきた(Lecos氏 1982)。こうしたワックスの リシャスを農家から購入し,4℃で保存した。表 中にはイソプロピルアルコールや樹脂のほか,表 面に打撲や切り傷,擦り傷がないものを選んだ。 皮上において抗菌効果を持つとされる界面活性剤 実験前に70%エタノールを10mL吹き付け,無 といった化学物質を含むものがある。また,病原 菌のキムワイプで約15秒間擦り,層流式フード 菌繁殖の栄養素となるカゼインや大豆タンパク質 で乾燥させた。無菌ナイフで半分に切り,切った が含まれるものもある。ワックスは果物表皮上の 面を下にして無菌のペトリ皿に並べた。3cm× 微生物数減少に効果がないと指摘する研究者もい 3cmの菌接種部分はフェルトチップマーカーで る。 表示した。約108CFUの大腸菌O157:H7およ デンプン由来のポリ乳酸(PLA)は生分解性 びサルモネラスタンレー培地を100μLずつピペ 食品と容器 他,W RIGHT 氏 684 2011 VOL. 52 NO. 11 8 流式フードで2時間寝かせてなじませた。こうし 7 てリンゴ表皮上の接種部分を完全乾燥させた。 6 LogCFU/cm2 ットで吸い上げ,リンゴ表面に落とし,室温の層 コーティング 抗 菌 剤 入 りPLAコ ー テ ィ ン グ 溶 液 を 作 る。 PLA 0.1g, 塩 化 メ チ レ ン10mLに 乳 酸(LA), 5 4 3 2 安息香酸ナトリウム(SB),ソルビン酸カリウム 1 (PS),エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム Control EDTA LA EDTA+LA 1 (EDTA)をそれぞれ0.25mgずつ混ぜ,あるい 3 7 14 Storage Time(d) は組み合わせる。スプレーガンを使い,リンゴ表 第1図 EDTA,LA単独およびEDTA+LA組み合わせ によるコーティング処理の4℃保存中リンゴ 表面の大腸菌O157:H7生存に対する効果 皮の接種部分にコーティング剤を2mLずつ均等 に吹き付ける。フードで30分乾燥して溶液を揮 発 さ せ, リ ン ゴ 上 に 薄 い フ ィ ル ム( 厚 さ 約 8 いリンゴを比較対象とする。どちらのリンゴもプ 7 ラスチック容器に入れ,4℃の冷蔵庫に14日間入 6 LogCFU/cm2 0.02mm)を形成する。コーティング処理をしな れておく。 微生物学的分析 1, 3, 7,14日間のサンプリング時間ごとに接種 5 4 3 2 部分を切り取り(約5gずつ),無菌ピンセット 1 でWhirl Pakに入れる。0.1%無菌ペプトン水を Control SB SB+LA SB+LA+EDTA 1 各バッグに20mLずつピペット注入し,200rpm 3 7 14 Storage Time(d) で 2 分 間 置 く。 サ ン プ ル を 1mLず つ 取 り, 第2図 SB単独およびSB+LA,SB+LA+EDTA組み合 わせによるコーティング処理の4℃保存中リ ンゴ表面の大腸菌O157:H7生存に対する効果 Butterfield社リン酸緩衝液で段階希釈し,100μL ず つTSA上 に 広 げ る。 全 プ レ ー ト を37℃で培 養し24時間後に菌数を測定する。 統計学的分析 第2図はSB単独,SB+LAおよびSB+LA+EDTA 測定はすべて3回ずつ行った。データはlog コーティング処理の大腸菌O157:H7減少効果を 2 CFU/cm ±標 準 偏 差 の 表 示 と し,SAS version 現す。3通りとも顕著な効果を示した。1日で菌 9.1 softwareによって分散分析した。平均値の有 数7.5logから4.9,4.1,3.3logへそれぞれ低下,最大 意差判定はDuncanの多重範囲検定を用いた。そ 4.2log減少を達成した。無処理のリンゴが14日 の他については 0.05で有意とした。 で1logしか下がらなかったのに対し,上記処理を 結果 行ったリンゴでは3.2,2.0,2.0logへ低下,最大4.6 第1図はEDTA,LAおよび両者を組み合わせた log減少となった。SB+LA+EDTAの組み合わせ コーティング処理の後,4℃で14日間置いたと は1日,3日の保存期間では最も効果的だったが, きのリンゴ上の大腸菌O157:H7減少効果を現す。 7日,14日ではSB+LAとの差がほとんどなかっ 2 コントロールと比べ1日で1.8∼2.2logCFU/cm 減 た。SB単独では他の2通りに比べて効果が小さ 少,14日 で2.5∼ 3log減 少 し た。LA単 独 で は かった。 EDTA+LAと類似の効果を示し,EDTA単独では 同様の実験をサルモネラスタンレーについても 他の2通りより大腸菌減少幅が明らかに小さかっ 行った。第3図はEDTA,LAおよび両者を組み た。 合わせたコーティング処理の後,4℃保存したと 食品と容器 685 2011 VOL. 52 NO. 11 LogCFU/cm2 8 表面や牛挽肉の病原菌汚染防止剤として使用され 7 て き た(IANNOTTI氏 他1999,2001)。PSとSBは 6 果物を使った食品のイースト抑制に威力を発揮し 5 て き た (C HIPLEY 氏 1993;S OFOS 氏 とB USTA 氏 4 3 2 1 1993)。ソルビン酸と安息香酸はアップルサイダ Control EDTA LA EDTA+LA ー中の大腸菌O157:H7抑制に役立つ(MILLER氏 とKASPAR氏 1994;SPLITTSTOESSER氏 他1996)。 EDTAはジナトリウム塩およびジナトリウム‐ 1 3 7 14 カルシウム錯体として50∼150ppmで食品に使 Storage Time(d) 用 さ れ る(SHELEF氏 とSEITER氏 1993)。EDTA 第3図 EDTA,LA単独およびEDTA+LA組み合わせ によるコーティング処理の4℃保存中リンゴ表 面のサルモネラスタンレー生存に対する効果 の抗菌作用は細胞壁中の2価カチオンとのキレー ト化によることが分かっている。 SBにLAを加えると相乗効果が大きかった。SB 8 と 酸 の 組 み 合 わ せ 効 果 と し て,FISCHER氏 ら は LogCFU/cm2 7 6 1985年,0.75%ク エ ン 酸+0.2%SB溶 液 の 4 ℃ 保 5 存卵における ,大腸菌および 4 菌 ) 数 抑 制 お よ び 繁 殖 抑 制 効 果 を,H WANG 氏 3 2 1 (黄色ブドウ球 Control SB SB+LA SB+LA+EDTA 1 とB EUCHAT 氏 は1995年,0.5%LA+0.05%SB溶 液の鶏手羽肉サルモネラ, 3 7 , 大腸菌O157:H7の不活性化および繁殖抑制効果を 14 Storage Time(d) 発表している。低pHのSB溶液は毒性抑制力が強 第4図 SB単独およびSB+LA,SB+LA+EDTA組み合わ せによるコーティング処理の4℃保存中リンゴ 表面のサルモネラスタンレー生存に対する効果 く,LA添加により抗菌効果が促進される。 リンゴのPLAコーティング処理が運搬,保存, 小売り段階において,紙やプラスチックフィルム きのリンゴ上のサルモネラスタンレー減少効果を で個包装するのと同様に汚染保護効果をあげるこ 表す。3通りとも1日で2log超,14日で2.5log とにも注目したい。従来の包装は加工や家庭での 超と著しい菌数減少効果を示した。 消費前に取り除く。しかしPLAコーティング処 SB単独,SB+LAおよびSB+LA+EDTAのコー 理をすれば半永久的に持続するフィルムをかけた ティング処理は,第4図のように有意な( <0.05) 状態になる。水分蒸発を防ぎ,成熟を遅らせてシ サルモネラスタンレー減少効果を示した。1日で ェルフライフ延長にもつながる。 それぞれ2.2,3.0,3.5log,14日で2.7,3.7,3.8log減 結び 少した。SB+LAが1日,3日では最も効果的だ 抗菌剤入りPLAコーティング処理はリンゴ上 ったが,大腸菌O157:H7の場合と同様にSB+EDTA+ の 病 原 菌 数 を 激 減 さ せ た。SB+LA ,SB+LA+ LAとの差はほとんどなかった。 EDTAは大腸菌O157:H7,サルモネラスタンレー 考察 いずれにおいてもほかの組み合わせより効果が高 抗菌成分は果物表皮の病原菌汚染抑制により, かった。生鮮果物が原因の集団食中毒は表皮の汚 食品安全性促進という重要な役割を果たす。LA 染から来る場合が多いので,効果的な抗菌剤の使 とそのナトリウム,カリウム塩は酸味料,乳化剤, 用が望ましく,さらなる研究が求められる。 湿潤剤および風味促進剤として食品に使用される (力丸みほ) (SHELEF氏 1994)。LAお よ び 熱 処 理LAは 畜 肉 食品と容器 686 2011 VOL. 52 NO. 11 海外技術情報 リサイクルとグリーンのジレンマに打ち勝つパウチ ( )p.65( 11・5)文献 №5691 衰えることのない,包装容器への利便性と持続 することができる。 可能性への要求により,パウチが,かつてない程 軽量で持ち運びも簡単だ。また,安全性にも優 幅広い製品の望ましいパッケージ(go-to-package れている。ガラスのように落としても壊れないし, style)になりつつある。 粉々に砕けて危険な状態になることもない。 ベビーフードの分野では,新たな展開として, マーケティングの見地からも,長方形のスタン レトルト可能でジッパー付きのスタンドパウチが ドパウチは素晴らしいブランド広告として機能し 登場してきた。 ている。パッケージには写真品質の輪転グラビア Sprout Foods社(ニューヨーク)はこのタイ 印刷が施されており,「グラフィックスも素晴ら プのパッケージを“スプラウト・オーガニック・ しく,文字通り商品棚の中で“際立つ”存在」と ベビーフード”に採用。子どもの成長段階に応じ DAVIS氏は言う。 て2.5オ ン ス,3.5オ ン ス,5.5オ ン ス の 3 つ の 最後に,持続可能性も重要な役割を果たしてい パウチサイズで販売している。パウチを供給する る。製品に占める容器の重量を比べてみると,蓋 のは,シンシナティのAmpac社だ。 付 き プ ラ ス チ ッ ク ト レ ー の14 %, ガ ラ ス 瓶 の Sprout Foods社ではこの商品ラインの立ち上 70 % に 対 し て, パ ウ チ は 6 % で, こ れ は, げにあたり,ガラス瓶や硬質プラスチック容器で Sprout社製品の二酸化炭素排出量削減にも役立 はなく,パウチを選択。フレーバー,利便性,環 っている。またパウチは平らな状態で加工工場に 境への配慮等がその理由だ。ガラス瓶や硬質プラ 運ばれるため,より多くのパッケージをパレット スチックトレーに入ったベビーフードを滅菌する やトラックに積むことができ,パッケージ1個あ と「加熱のし過ぎで間違いなくフレーバーが損な たりの炭素排出を抑えることができる。 われてしまう」と,同社CEOのR.DAVIS氏は言う。 しかし,パウチはリサイクルできない。対策と それに対してパウチは, 「温度は同じでも時間 し て,Sprout社 で は, 使 用 済 み パ ウ チ をTerra が短くてすむため,中身の殺菌のためにまわりを Cycle社(ニュージャージー州トレントン)に提 加熱し過ぎることがない。他の容器に比べて,パ 供するよう推奨している。そこでパウチは新しい ウチだと調理時間を25∼40%短縮できる」と言 製品に再利用される。 う。 サンキスト・プロテイン(Sunkist Protein) Sprout Foods社のパウチはラミネートフィル の大容量展開 ム製で,フィルム層にはアルミ箔が入っている。 利便性,品質,そして持続可能性は,Sunkist アルミ箔は酸素と光から商品を守るが,電子レン Proteinドリンク用として,大容量のスタンドパ ジの使用ができなくなる。だが逆にそこが重要で, ウチを選択する上でもポイントになった。2010 Sprout Foods社の製品は,フレーバーと栄養素 年10月に発売されたフルーツパンチフレーバー を損なわないためにできる限り再加熱しないよう の“Sunkist Protein”パウチ(1ガロン)は48 に作られているのだ。 回分入り。一方,1回分入りは硬質プラスチック さらに,パウチは利便性にも優れている。口が チューブとボトルで販売されている。 大きく,底にはマチがあるので簡単にスプーンを この1ガロンサイズは,“Sunkist Protein”を 入れることができ,直接食べさせることもできる。 日々飲用するレギュラーユーザーが,まとまった 中身が残った場合でも,口を閉めて冷蔵庫に保管 分量を購入するのに経済的な選択だ。また扱いや 食品と容器 687 2011 VOL. 52 NO. 11 すいので養護施設用にも便利だ。 では,商品の取り出しや分配が容易なジッパー付 “Sunkist Protein”のような高温充填製品は, きパウチに価値を見いだすことは簡単だ。 通常開封後は冷蔵保存しなければならないが,こ このようなニーズに応える新しいパッケージの の1ガロンパウチはその必要がない。ディスペン 形が,側面にマチがありジッパーが大きく最後ま サーが逆流を防ぎ,フレーバーや安全性を脅かす で開く広口パウチだ。 “Zip360”と呼ばれるこの 細菌汚染を防いでいるのだ。 パウチは,スタンド式で,直接食べるにも,計量 “ジ・アンサー(The Answer)”と呼ばれる スプーンですくい上げるにも,十分な開け口を持 こ の デ ィ ス ペ ン サ ー を 供 給 し て い る の が, つ。ジッパーを途中まで閉めるとジッパー部分が International Dispensing社( ニ ュ ー ヨ ー ク )。 注ぎ口にもなる。 一方,Fresco System USA社(ペンシルベニア “Zip360” はPrint-pack社( ア ト ラ ン タ ) と 州テルフォード)がSunkist Proteinパウチのパ Triangle Package Machinery社( シ カ ゴ ) の ッケージを製造している。 協力のもと,Zip-Pak社(イリノイ州マンテノ) パッケージ形状の選択に際して, 「スタンドパ により開発された。 ウチを選んだのは“The Answer”があったから Zip-Pak社 の マ ー ケ テ ィ ン グ 部 長E.SHEAFFER こ そ 」 とProtica社 長 のJ.D UFFY氏 は 言 う。「 安 氏は「他の多くの市場においても実用性が高い」 心して保存期間いっぱいまで商品を保てる点にお と言う。ポテトチップスや砂糖に加えて,シリア いて理想的」と言う。さらに, 「冷蔵を気にせず, ル,ミートスナック,クラッカー,クッキー,プ どこへでも持ち運べる点で,消費者には価値があ レッツェル,冷凍食品などの潜在的用途がある。 る」とDUFFY氏は付け加える。パウチ上部の3 「私たちがフォーカスしたすべてのグループ, つのダイカットの指穴が持ち運び用のハンドルに ま た す べ て の 消 費 財 に 関 す る 議 論 を 通 じ て, なるのだ。 “Zip360”は誰もが希望し,探していたパッケ そしてチップス袋に ージのように思える」とSCHEAFFER氏は語る。 (常盤恭徳) ポテトチップスやブラウンシュガーなどの食品 海外技術情報 フレーバーに関するEUの新しい規制 ( )p.30( 11・2)文献 №5687 香 味 料 に 関 す る E U の 新 し い 規 制 (E U に, (i)香味料特性を有する食品材料, (ii)香味料 Regulation on Flavorings)は,2011年の1月 や香味料特性を有する食品材料を含んでいる食品, 20日から始まっている。原則的な問題としてこ その他(iii)香味料特性を有する食品材料の原料 の規制はすべての加盟国に適用され,加盟国全体 にも適用される。これの導入にあたり大きな変化 の共通認識として統一した解釈がなされねばなら は,この規制の中で,現在の定義が見直されるこ ない。この規制は欧州委員会の管理と欧州裁判所 とである。その中でも“香味料物質”の定義にお の最終的な司法権の下で保証されている。 いて“ネイチャーアイデンティカル(化学的,官 ただ,そのようにいっても,実際にこの規制に 能的には天然香味料物質と同じだが化学的プロセ 関する法律の条文を運用するとなると解釈の仕方 スにより合成や分離されたもの)”と“アーティ に問題が生じる。事実,この新しい規制に移行す フィシャル(人工的)”といった区別をしないこ るために2年間の猶予期間が与えられているにも とは大きい。また, “天然香味料物質”の定義は, 関わらず,公式見解はまだなされていない。 その製法についても言及している。 この規制は,香味料および香味料の原料と同時 香味料を使用するには,その香味料が評価や承 食品と容器 688 2011 VOL. 52 NO. 11 認の必要なしと規則上認められたものか,そうで EFSAの評価に基づき,香味料物質のリストは なければ,承認されユニオンリストに登録された 遅くとも2010年の12月31日までには委員会に承 ものでなくてはならない。 認され,ユニオンリストに登録されなければなら 解釈に関する最も重要な問題は表示に関する要 ないのだが,いくつかの問題点とりわけ香味料物 求事項である。実際問題,香味料に用いられてい 質の内のいくつかについては,追加のデータが求 る“天然”という言葉の定義について,この規制 められている状況のため,リストはまだ採択され を適用する場合,食品会社あるいは一般の消費者 て い な い。 実 際 に は こ れ ら の 香 味 料 物 質 は, 向けの商品にも大きな変更が求められ,加えて食 JECFA(FAO/WHO Joint Expert Committee on 品の原料表示にも大きな変更が求められる。 Food Additives),FEXPAN(FEMA Expert 上市前の製造認証が必要な香味料とその原料に Panel)とCouncil of Europeなどのような他の科 ついては,EU Common Authorization Procedure 学研究機関からは肯定的な評価を得ていることを を受審し,この規則の別表Ⅰにあるユニオンリス 考えると,これらは,おそらく健康に危険をもた トに登載された場合のみ,市場での流通が可能と らすことは無く,そのためユニオンリストから削 なる。これは,以下のように分類される。(i)“香 除すると間違いなく他と不釣り合いになる。以上 味料物質” (ii)食品以外の原料から調製した“香 のことより,再評価が必要な物質は,過渡期の特 味料製剤” , (iii)熱加工香味料(Thermal process 例措置としてほとんどがユニオンリストに掲載さ flavouring:メイラード反応のように加熱処理で れると思われる。なお一旦委員会により採択され 得られるもの)の内,一部または全部が食品由来 てからも18カ月後にやっと法的拘束力を持つこ ではない,あるいは別表Ⅴで規定される製造要件 とになる。言い換えると,リストにない香味料物 や許容使用量に合わないもの,(iv)食品原料以 質を市販し食品に使用することが許されなくなる 外のものから得られる“香味料前駆物質” (v)こ のはユニオンリストの適用日から起算して18カ れらの分類にあてはまらない“その他の香味料”, 月後のことである。また,それ以上に遅れそうで (vi)食品以外の“原料物質” ある。 評価や許可の必要がないその他の香味料は,以 規制を導入するうえでの最も重要な問題は“天 下の条件を満たせば食品に使用できる。①科学的 然”の記載に関することで,これは香味料を製造 知見に基づき,人体に危害が無いことが証明され し,食品会社に販売する場合と消費者に販売する ているもの。②さらに,消費者がその利用を誤ら 場合の両方に問題となる。 ない保証があるもの。 この規制では“天然”との言葉を残しているが, 評価プログラムの完了後にはポジティブリスト 香味料成分の組成,およびフレーバーや味覚によ 化するのが原則となっている。これにより,まず り,天然香味料は以下の4つのタイプに記載が別 始めとして, 香味料物質のEU Registerにある約2,600の れる。 中からおよそ2,000の物質が, EU Scientific Committee 1.“天然香味料物質” on Food (2001年まで) と次にEuropean Food Safety この用語は,香味料成分が香味料物質のみを含 (EFSA)による評価の対象になっている。 Agency む場合に適用される。 2010年の初めに,EFSAは安全性審査の第1段階 2.“天然×香味料”(“天然レモン香味料”の が完了したことを公表した。EFSAのパネリス ような例)これは香味料成分が原料のみからなる トは,大多数の香味料物質が安全だとした一方 場合,あるいは少なくとも95%が原料(例えば で,約400の物質について追加データをメーカー レモン)である場合で,記載した原料を口に含 に求めており,EFSAはこれら400種類の物質に んだときに容易にそれと認識可能なもの。残りの ついて,受領したデータを基に最終的な評価を 最大5%は,製品の平準化のための製剤または, 終えなければならない(2014年末になるだろう)。 例えば新鮮臭,刺激臭,果実臭を与える製剤のみ 食品と容器 689 2011 VOL. 52 NO. 11 でなくてはならない。 “香味料”という包括的な言葉は,すべての種 3.“天然×香味料と他の天然香味料”(“天然 類の香味料を(それの組成やフレーバー感覚にか ラズベリー香味料および他の天然香味料”のよう かわらず)一緒に示すのに引き続き適用できるが, な例)。 消費者に“天然”かどうかに関しての情報を与え これは香味料成分の一部(95%以下)が記載 るものでは決して無い。今回の規制により“天然 された原料例えばラズベリー)からなり,そのフ 香味料”という一般的な用語を,さまざまな天然 レーバーが容易に認識できるもの。 香味料が含まれている場合に単純に用いることが 4.“天然香味料” できないということは,食品産業界にとって重大 これは,香味料成分が複数の異なる原料からな な懸念となっている。原料の記載なしに“天然香 る場合で,表示原料からは容易にフレーバーや味 味料”と表示することが規則の下で許されると, を認識できないもの。 原料からフレーバーや味を容易に類推することが 以上のように,“天然香味料物質”と“天然× できなくなる。 香味料と他の天然香味料”については,今回の規 さらに,今回の規制は,製品の原材料表の中の 制で新たに導入予定の表示であるが,既存の用語 香味料の表示を規制するのみであり,パックの前 である“天然×香味料”および“天然香味料” 面に“天然香味料使用”と称したり,図柄で香味 については,これまでとは異なる使用要件に従う 料の原料を示すことは,EUでの統一したルール ことになる。これら規制でもたらされる変化は, には無く,加盟各国の裁量に任されていて,この 食品会社に販売される香味料のラベルと,食品会 ことがEU内での歪みを生ずることになるかも 社がこれを使用して製造した商品のラベルに大き しれない。 (大迫一史) な影響を与える。 海外技術情報 外食産業のヘルシーメニューの行方 ( )p.28( 11・6)文献 №5695 安価なファストフードから美食体験を売りにす 自分が食べているものに何が入っているのか知 る高級店までレストランにも様々あるが,いずれ りたいという消費者の声に応えてレストラン業界 もこれまでは利便性やフレーバー,味に重点が置 もよく出る食物や飲み物トップ 20 をリストアッ かれ,健康という側面はあまり顧みられてこなか プし,その内6つが子供の健康に配慮したものと った。こうしたなか,食の健康を志向する団体や なっているとする調査結果を報告しているが,こ 市民グループは近年外食業界に対して異議を申し れはファストフード業界でも同様である。面白い 立て,業界がこぞってその改善に取り組むよう呼 ことに,ファストフード業界が健康メニューの課 びかけるようになり,これに押されるように業界 題として,塩分控え目とか低カロリー,低脂肪な もヘルシーメニューを加えるようになってきてい どを意識している一方,消費者の注文が多いメニ る。 ューはフライドポテトや,ハンバーガー,チーズ 子供の肥満防止を目指す“Let's Move”運動を提 バーガー,ソフトドリンク,チキンナゲット,ミ 唱するオバマ大統領夫人は,2010 年9月全米レ ルクセーキなどで,そうしたものを好きなのにも ストラン協会の理事会における挨拶で,これまで 関わらず,よりヘルシーなものを求める消費者が 外食産業が行ってきたヘルシーメニュー提供の努 ますます増えてきているというわけだ。 力に対し一定の評価を与えたが,やるべきことは 肥満は増え続けているが,そういう人の多くは まだまだあると注文することも忘れなかった。 その責任の一端が外食産業にあるとして業界全体 食品と容器 690 2011 VOL. 52 NO. 11 としてなんらかの措置を取るべきだと考えており, アップルジュースといった子供向けメニューをオ 業界としてもこの機にそのメニューにカロリーや ファーしている。この場合に大事なことは,斬新 栄養の情報を載せることによって肥満対策の一助 でクリエイティブな形で子供の関心を惹きつける とすべきである。 ことで,同じフルーツメニューであっても子供に 2011 年1月に行われたアメリカ調理学会とハ アピールするようなネーミングをすることが必要 ーバード大学によるイベントでよりヘルシーなメ である。 ニューのためのいくつかの具体的な提言がなされ フライドポテトやハンバーガーといった子供の た。すなわち,精製穀物の代わりに未精白の原料 好きなもの以外にも色々なメニューを揃えること を使うとか,消費者に告知することなく徐々に砂 も ま た 必 要 で, 例 え ば Chipotle Mexican Grill 糖や塩分を減らして代わりのものを使った料理を ではタコスのキットで子供に自分好みのタコスを 出す,あるいは牛肉の代わりにチキンや魚,豆類 作らせたりしている。すなわち,タコスの生地 を使ったメニューを増やす,とかいったことであ (柔らかいのか,クリスピーなのかどちらか)2 る。 枚に具を3つ選んで挟むことが出来るというもの。 1,500 人のレストランシェフに対する調査のな Unilever Food Solutions 社が米,英,中,独, かの「健康と栄養増進のために外食業界として何 露,ブラジル,トルコの7ヵ国,各 500 人,計 をなすべきか」という設問に対する回答は以下の 3,500 人に対して行った調査では,「外食時にそ ようであった。 の食べ物の栄養分について知ることは,それを選 「ダイエットメニューのオプションを増やす」 ぶことに影響するか?」という質問に大半の人が 21%,「生鮮食品のメニューを増やす」19%, イエス(ドイツの 49%から中国の 87%まで)と 「子供の食育活動に参加する」17%,「栄養情報 回答した。栄養成分や内容物表示は包装された食 を提供し,お客の選択に委ねる」16%,「ボリュ 品ではおなじみのもので,メーカーはその表示義 ームを減らす」16%,等々。 務があるが,レストランの場合,そうした情報の このためお客には黙って塩分,その他を減らす 開示は限定的で,開示するかどうかもこれまでは レストランもあれば,逆に客にどのメニューがヘ 店側の判断に委ねられてきた。しかし,2010 年 ルシーであるかを分かりやすくしているところも 3月に成立した「患者保護・医療費適正化」法に ある。現在では多くのレストランチェーンが名称 よって 20 以上の店舗を持つレストランはメニュ やマークでヘルシーな(つまり,低カロリー,低 ーへのカロリーなどの表示が義務付けられた。 脂肪,低炭水化物などの)メニューを提供してい FDA ではその施行細則を策定中で,2012 年夏 るが,例えば Applebee レストランチェーンは に実施の運びとなるといわれている。カリフォル 「 カ ロ リ ー 5 5 0 以 下 メ ニ ュ ー 」, N o o dles & ニア州など一部の州や都市では既にこうした条例 Company では 400 カロリー以下のメニュー 16 は実施されているが,消費者や外食産業の混乱を 品目を揃えたり,その他といった具合である。い 避けるためこうした既存の法令はこの新しい連邦 ずれの場合も分量は減らさずに,脂肪やカロリー 法のもとに統一されることになる。 を抑え,野菜やフルーツを増やす,というような この法律が成果を上げるかどうかについて肯定 ことを行っている。但し,いくら低カロリー,低 的な見方と懐疑的な見方と両論あるが,いずれに 脂肪といってもそれを言い訳に味をないがしろに しても消費者のニーズや嗜好につれてレストラン してはならないのは勿論である。 でのメニュー選択も変わっていくわけであるので, もうひとつ重要なこととして考えなければなら 外食業界としては消費者を惹きつけるためにはこ な い の は, 子 供 の 肥 満 の 問 題 で あ る。 れからもメニューのイノベーションを怠るわけに McDonald's など多くのファストフード店では, はいかない。 (大池静男) 子供の親に対してアップルスライスや低脂肪乳, 食品と容器 691 2011 VOL. 52 NO. 11 海外技術情報 飲料ペットボトルへのバイオプラスチック採用競争 ( )p.72( 11・5)文献 №5693 Coca-Cola 社の取締役の立場になって考えてみ 利用システムにも役立つのだ。 るといい。毎年世界中に供給されている何十億本 おそらく最も驚くべきことは,そのような潜在 もの清涼飲料は,60%は確実にペットボトルに 的見込みのある未来が既に実現可能である,ある 入っている。そのようなボトルが炭酸飲料に対し いは少なくとも実現に向かう途中であることだ。 て優れた容器であることは,何年もかけて証明さ 2009 年より,Coca-Cola 社の Dasani ウオータ れてきた。軽量で衝撃に強いため,消費者はどこ ーは,30% 植物由来(この場合はブラジルのサト へでも持っていける。そして,Coca-Cola 社は, ウキビ)のペットボトルを地方で販売している。 この再利用可能な材料の効率的な供給チェーンを さらに,同社のジュースの銘柄 Odwalla は,既 築き上げている。 に 100% 植物由来原料の HDPE(高密度ポリエ では,なぜ良いものを変えようとするのか。そ チレン)ボトルで販売を行っている。 れは,PET の原材料である石油がいずれ尽きて しかし,100% 植物由来原料のペットボトルは, しまうからである。その日がいつくるかは誰も正 商品レベルとしてまだとらえどころがない状態で 確に把握していないが,石油資源が尽きる前には, ある。しかしながら,今年の3月,PepsiCo 社は 資源不足の状態が徐々に悪化していき,値段が上 スイッチグラス(Panicum virgatum)とマツ樹 昇し,それに伴ってペットボトルの生産コストも 皮,およびトウモロコシの皮を用いた 100% 植物 上がっていくことだろう(今支払っているガソ 由来原料のペットボトルを開発したと述べ,商品 リンの値段を,何年か前の値段と比べてみるとい 化に近づいていると発表した。同社は今後,この い)。Coca-Cola 社や PepsiCo 社,あるいはその ボトルに使用したような再生可能資源の幅を広げ, 他の飲料メーカーにとって,莫大な量の容器を石 食品事業から得られるオレンジの皮,ジャガイモ 油由来の PET に頼ることは良いシナリオではな の皮,麦のもみ殻,およびその他の農業副産物も いはずだ。 使用したいとしている。“この画期的な技術革新 “市場における不足,あるいは逼迫について は,PepsiCo 社,および飲料業界にとって変革的 我々が話し合いをしたところで,資源に限りがあ 発展であり,研究を行い,開発していくという約 ることは明白だ。収益は近い将来さまざまな理由 束の結果である”と PepsiCo 社の社長,CEO で に よ っ て, 逼 迫 し 続 け て い く こ と だ ろ う ” と ある I.NOOYI 氏は述べた。 Coca-Cola 社のサステナブルパッケージングの主 ボトルを作るにあたっては,生物学的工程と化 任 S.VITTERS 氏はいう。 学 的 工 程 を 組 み 合 わ せ る こ と で, 石 油 由 来 の こうした事態を考慮し,大手の清涼飲料メーカ PET と同様の分子構造を作る方法を発見し,現 ー の Coca-Cola 社 と PepsiCo 社 は 双 方 と も, 在の PET 飲料容器と同様の見た目,感触,およ 100% 植物由来のペットボトルを先に市場に出そ び耐久性を持つ製品ができた,と PepsiCo 社は うと,最近まではひそかに取り組んできた。その いう。また,同社は 2012 年に新しいボトルの実 実現性について考えてみると,植物由来のボトル 験生産を試みる予定であり,成功すれば,総力を は,一夜にして,価格が不安定な石油由来のボト あげて本格的な商業化に取り組むとも述べている。 ルにとって代わることだろう。事実,技術開発が しかしながら,業界専門家は,研究所で作った物 なされれば,PepsiCo 社の食料製品の製造過程に を販売可能な商品にするには,大きな飛躍が必要 出る(トウモロコシから出るような)副産物の再 になると考えており,製品は商業生産用にかなり 食品と容器 692 2011 VOL. 52 NO. 11 のスケールアップを求められる。 ことを指摘した。 一 方,Coca-Cola 社 の S.VITTERS 氏 は,Coca- ま た 彼 は, “Coca-Cola 社 が 開 発 し, 現 在 市 場 Cola 社が,100% 植物由来ボトルを 2015 年から に 出 回 っ て い る 30% 植 物 由 来 原 料 の ボ ト ル 2020 年の間に商品化し製造する見通しであり,そ PlantBottle がまさにそれだ。もし 100% 植物由 の技術進歩に関してはかなりの自信がある,と述 来原料の PlantBottle を作ることができたら,す べ て い る。“Coca-Cola 社 は 昨 年, 世 界 10 カ 所 ぐにでもそれに取って代わるだろうと信じる理由 の市場で 30% 植物由来原料の PET 容器を 25 億 は あ る の だ ” と 続 け た(SCHOTLAND 氏 は Coca- 本展開し,今年はその生産工場の数を2倍以上に Cola 社 が BioPlastek2011 に て,PlantBottle 使 増やした。これは我々が考えていることではなく, 用の Dasani ウオーターを全国的に販売すると正 現在進行形で行われていることなのだ”とも言う。 式に発表するだろう,と述べている)。 今 年 の 6 月 27 ∼ 29 日 に ニ ュ ー ヨ ー ク の さらに彼は,“環境配慮への意識が高い消費者 Waldorf-Astoria ホ テ ル で 行 わ れ た Bioplastek への販売戦略として,再生利用可能な原料を用い 2011 の 主 催 者 で あ る R.SCHOTLAND 氏 は,“ も し た地球にやさしいモデルであるとアピールできる Coca-Cola 社や PepsiCo 社が,実際に 100% 植物 のは,明らかに有利な点だ。Coca-Cola 社および 由来原料のボトルを商品として世に出すことがで PepsiCo 社にとってと同様に,ボトル飲料業界に きたら,それは莫大な利益につながる。完全に石 とってもそれは非常に大きなマーケティングツー 油由来の PET にとって代わることで,バイオ ルになるであろう”と述べている。 PET は以前の PET と同じ形状に見え,同じ工程 SCHOTLAND 氏を含めた多くの者は,もし生物由 で生産される。そして,このボトルは現在のリサ 来のボトルが著しく市場に浸透するためには,大 イクル法と同じ方法で再生利用できるため,特別 手ブランドオーナー間の連携が必須であると信じ に新しくリサイクル法を作る必要はない”という ている。 (高橋希元 呂明媚) 第47回 日本食品照射研究協議会 教育講演会のご案内 期 日:平成23年12月2日(金) 会 場:アルカディア市ヶ谷(私学会館) 東京都千代田区九段北4-2-25 交通:JRまたは地下鉄(有楽町線・南北線・ 新宿線)市ヶ谷駅より徒歩2分 主 催:日本食品照射研究協議会 共 催:公益社団法人日本食品衛生学会 社団法人日本 食品科学工学会 日本食品化学学会 日本防 菌防黴学会 公益財団法人体質研究会 スケジュール: 9:30∼ 受付 10:00∼ 総会 10:30∼12:00 研究発表(ポスター発表) 12:00∼13:00 ポスター発表者との情報交換 13:30∼17:30 教育講演 Ⅰ.放射線・放射能の基礎とその計測技術−福島原発 事故の影響に伴う放射線計測− 中村 吉秀 (社団法人日本アイソトープ協会) Ⅱ.食品の放射性汚染と低線量被ばくの健康リスク 甲斐 倫明 (大分県立看護科学大学) 17:30∼20:00 懇親会 参加費:大会 会員 3,000円/非会員 6,000円 懇親会 一律 4,000円 参加申込:参加ご希望の方は,お名前,会員種別(正・ 団体・賛助会員,非会員) ,ご所属,弁当の 食品と容器 要不要,懇親会の出欠をE-mail(メール不 可の場合はFAX)にて当事務局までお知らせ ください。 その他: 1)ポスター発表者との情報交換等の時間を設けます ので,弁当を用意いたします(12:00配布予定) 。 弁当ご希望の方は参加申込時に「弁当要」とお知 らせください。 2)参加費および弁当代金(1,000円)は当日お支払 いください。会員金額は,当協議会の正会員, 団体会員(3名まで) ,賛助会員(6名まで)に 適用いたします。大会参加費にはポスター発表 要旨代を含みます。 3)このお申込みをもってご出席とさせていただきま すので,当日は直接会場にお越しください。 出欠等に変更がありました時は,必ずご連絡くだ さいますようお願いいたします。 4)大会の詳細につきましては後日,協議会ホームペ ージ(http://jrafi.ac.affrc.go.jp)にてご確認くだ さい。(事情により,内容等一部変更する場合 もありますのでご了解願います。) 申込締切:平成23年11月18日(金) 申込連絡先:日本食品照射研究協議会 事務局 E-mail :jrafi@naro.affrc.go.jp FAX :029-839-1552 693 2011 VOL. 52 NO. 11 特別解説 植物培養細胞を活用して新規の食品と サプリメントの素材開発 は ま だ・ ひ ろ き 広島大学理学研究科博士課程 前期修了,同後期課程中途退 学。岡山理科大学助手,オク ラホマ州立大学,テキサスA &M大学博士研究員,岡山理 科大学助教授を経て,現在, 岡山理科大学理学部臨床生命 科学科教授。2011年9月6日, 日本植物細胞分子生物学会 技 術賞 受賞。 博士(理学) 濱 田 博 喜 に,植物培養細胞が触媒する還元反応,加水分解 1.はじめに 反応,異性化反応,配糖化反応,エステル化反応, 筆者は食品および食材の有効成分(二次代謝 および水酸化反応について,変換研究の成果が得 物;人の体に役立つ生物が作る化合物)を活用し られている。この中でも,植物細胞が行う配糖化 て,予防医学の研究を行っている。ヒトは食品成 反応,エステル化反応,および水酸化反応は,細 分の機能性をうまく使って病気にかかりにくい体 胞内では代謝産物の活性化に関与する重要な反応 作りを行い,いつまでも健康で生活できる事が大 である。特に,配糖化反応はその特性から,種々 切である。本原稿では,筆者が行っている新規食 の生理活性化合物の安定化と生理機能の活性化と 品の素材開発の具体的な事実を報告する。 新規の食品素材開発へ応用できると考えられる。 培養細胞や酵素などの生体触媒が行う反応を, 筆者の研究室では植物培養細胞が触媒する配 有機合成プロセスの一過程に組み込んだ有用物質 糖化反応を,生理活性化合物の変換へ応用・展開 生産の試みが,近年,盛んに行われ,その成果は して,安定性と新規な生理活性を有する食品素材 医薬品や香料,食品添加物などのファインケミカ 化合物を合成する試みを行っている。本原稿では, ルズの生産へ利用されるに及んでいる。今日まで これまでに得られている植物培養細胞による生理 に利用された主な生体触媒は,微生物,菌体,酵 活性化合物の変換および活性化に関する研究成果 母,動物細胞,およびそれらの酵素系である。こ とこれらが新規の食品素材であることも紹介する。 れに加えて,近年,生体触媒としての植物培養細 2.トコフェロール類の配糖化 胞が有する物質変換機能が注目されている。陸上 に生息し,移動する手段をほとんど持たない植物 1)トコフェロールの変換 は,自己防衛および情報伝達のため,さまざまな トコフェロールには動脈硬化を防ぐ作用,血栓 二次代謝産物を生産する。このことから植物細胞 の生成を防ぐ作用,血行を促進する作用,および は多様の酵素を持ち,植物固有の物質変換,合成 ホルモンを調整する作用があり,医薬品,食品添 機能を有していると考えられる。筆者は,この植 加物,動物薬,動物用飼料など幅広く使われてい 物に潜在する有機化合物の物質変換機能を酵素的 る。しかし,トコフェロールは光に不安定であり, に解明する目的で,植物培養細胞による外来基質 水溶媒に対する溶解度も極めて低い。また,これ の変換反応に関する研究を行っている。これまで までに,植物培養細胞によるトコフェロールの変 食品と容器 694 2011 VOL. 52 NO. 11 換研究の報告はない。筆者らは種々の植物培養細 ィーにより単離・精製した後に,スペクトル測定 胞によるトコフェロールの変換を行い,より安定 により構造解析を行う。 的で生理機能を持つトコフェロール誘導体の合成 天然のトコフェロールのうち,α-トコフェロー を検討することとした 1,2, 3) 。 ルを基質として用いた。ヨウシュヤマゴボウ培養 実験で使用する植物培養細胞は,培養用フラス 細胞によるα-トコフェロールの変換の結果を第1 コ内の新鮮な寒天培地に植え継いで,3週間ごと 図に示す。基質α-トコフェロールは,対応するα- に継代培養を行う。特に,変換反応に用いる培養 トコフェリル6- -β-グルコシドへ変換された。ニ 細胞は,培養細胞の一部を寒天を含まない液体培 チニチソウ培養細胞による変換の場合にも同様に, とう 地に移植し,振盪 培養器内において25℃,120回 α-トコフェリル6- -β-グルコシドに変換した。こ 転/分の条件で培養することにより,2週間ほど れに対し,タバコ培養細胞でα-トコフェロールを で均一なサスペンション状態の培養細胞になった 変換したところ,α-トコフェリル6- -β-グルコシ ものを使用する。この培養細胞(約50g)を新鮮 ドに加え,対応するα-トコフェリル6- -β-ゲンチ な液体培地(100mL)に移植して,同じ培養条件 オビオシドが生成物として得られた。また,ユー で1週間前培養を行う。培養細胞への基質の投与 カリ培養細胞によるα-トコフェロールの変換では, はクリーンベンチ内において無菌状態で行う。基 α-トコフェリル6- -β-グルコシドとα-トコフェリ 質10mgを前培養した細胞に投与し,一定期間, ル6- -β-ゲンチオビオシドに加え,α-トコフェリ 同じ振盪条件で反応を行う。細胞部分はメタノー ル6- -β-ルチノシドが変換生成物として得られた。 ル浸漬し,メタノール抽出物を有機溶媒と水で分 一方,天然のトコフェロールのうち,δ-トコフェ 配し,培地部分は有機溶媒で抽出する。変換生成 ロールを基質として用いた場合にも,ユーカリ培 物をシリカゲルカラム,イオン交換カラム,TLC 養細胞はδ-トコフェリル6- -β-グルコシド,δ-トコ (薄層クロマトグラフィー),HPLC(高速液体ク フェリル6- -β-ゲンチオビオシド,およびδ-トコ ロマトグラフイー)を用いる各種クロマトグラフ フェリル6- -β-ルチノシドに変換した。以上,ヨ ࡛࠙ࠪࡘࡗࡑࠧࡏ࠙ +2 ࠾࠴࠾࠴࠰࠙ 2 52 2 >&+ &+&+ @ &+ >&+ &+&+ @ &+ D࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡠ ࡞ 5 *OFD࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ +2 52 ࠲ࡃࠦ 2 >&+ &+&+ @ &+ 2 >&+ &+&+ @ &+ D࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡠ ࡞ 5 *OFD࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪࢺ 5 *OF*OFD࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2Eࠥ ࡦ ࠴ ࠝ ࡆ ࠝ ࠪ ࠼ 5 5 +2 2 5 ࡙ࠞ 2 >&+ &+&+ @ &+ 5 5 2 >&+ &+&+ @ &+ 5 &+ D࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡠ ࡞ 5 &+ 5 *OFD࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 +G࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡠ ࡞ 5 &+ 5 *OF*OFD࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2Eࠥ ࡦ ࠴ ࠝ ࡆ ࠝ ࠪ ࠼ 5 &+ 5 *OF5KDPD࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2E࡞ ࠴ ࡁ ࠪ ࠼ 5 +5 *OFG࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 +5 *OF*OFG࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2Eࠥ ࡦ ࠴ ࠝ ࡆ ࠝ ࠪ ࠼ 5 +5 *OF5KDPG࠻ ࠦ ࡈ ࠚ ࡞ 2E࡞ ࠴ ࡁ ࠪ ࠼ 第1図 トコフェロール配糖化 食品と容器 695 2011 VOL. 52 NO. 11 ウシュヤマゴボウ培養細胞およびニチニチソウ培 メチル-6-クロマニル6- -β-グルコシド,2,2,5,7,8- 養細胞はトコフェロール類を単糖配糖体へ変換し, ペンタメチル-6-クロマニル6- -β-ゲンチオビオ タバコ培養細胞とユーカリ培養細胞はそれぞれ対 シド,および1位が加水分解された4-ヒドロキシ 応する二糖配糖体にまで変換する能力があること -3-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル2,5,6-トリメチ が明らかとなった。また,トコフェロール類をゲ ルフェニル6- -β-グルコシドへ変換した。このこ ンチオビオシドおよびルチノシドへ変換する機能 とから,ニチニチソウ培養細胞はクロマノール環 は,タバコ培養細胞およびユーカリ培養細胞のみ の2位にメチル基を持つトコフェロール類縁体の にみられる特徴的なものである。 6位をグルコシル化,ゲンチオビオシル化,およ 2)トコフェロール類縁体の変換 び1位を加水分解する機能を有することが分かっ 筆者は,クロマノール環の2位の側鎖の炭素鎖 た。さらにニチニチソウ培養細胞は2,5,7,8-テトラ 長をさまざまに変えたトコフェロール類縁体につ メチル-2-(4-メチルペンチル)-6-クロマノールと いて植物培養細胞による変換を行い,新規な生理 2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8-ジメチルノニル)-6- 1, 4) 活性化合物を合成しようと試みている 。市販の クロマノールを,それぞれ対応する6- -β-グルコ α-トコフェロール類縁体である2,2,5,7,8-ペンタ シドおよび6- -β-ゲンチオビオシドへ変換した。 メチル-6-クロマノールと,合成した2,5,7,8-テト この変換では1位が加水分解された生成物は得ら ラメチル-2-(4-メチルペンチル)-6-クロマノール, れなかった。このように植物培養細胞によって, および2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8-ジメチルノニ トコフェロール類縁体に対する異なる変換能力が ル)-6-クロマノールを基質として用いた植物培養 示されたことは興味深い。 細胞による変換の結果を紹介する。 3)トコフェロール配糖体の生理活性 ヨウシュヤマゴボウおよびニチニチソウ培養 最近,トコフェロールの配糖体は抗アレルギー 細胞によるトコフェロール類縁体の変換の結果を 活性を有することが報告されている 第2図に示す。ヨウシュヤマゴボウ培養細胞によ 細胞による変換で得られたトコフェロール配糖体 り,これら3種類のトコフェロール類縁体は,そ の生理機能は大変興味深い。筆者らはトコフェロ れぞれ対応する6- -β-グルコシドへ変換された。 ールおよびトコフェロール類縁体の各種の配糖体 これに対し,ニチニチソウ培養細胞は2,2,5,7,8- について,抗アレルギー活性を検討するため,ト ペンタメチル-6-クロマノールを2,2,5,7,8-ペンタ コフェロール配糖体を用いる抗体産生抑制試験を +2 +2 ࡛ ࠙ ࠪ ࡘ ࡗ ࡑ ࠧ ࡏ ࠙ +2 5, 6) 。植物培養 2 2 2+ 2 2 Q Q Q ࡍ ࡦ ࠲ ࡔ ࠴ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࡁ ࡞ Q ࡍ ࡦ ࠲ ࡔ ࠴ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࠾ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࡔ ࠴ ࡞ ࡍ ࡦ ࠴ ࡞ 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࡔ ࠴ ࡞ ࡍ ࡦ ࠴ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࠾ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࡁ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࠫ ࡔ ࠴ ࡞ ࡁ ࠾ ࡞ 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࠫ ࡔ ࠴ ࡞ ࡁ ࠾ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࠾ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࡁ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ +2 +2 2 2 +2 +2 2 2 +2 +2 +2 ࠾࠴࠾࠴࠰࠙ 2+ 2+ P 2 2 Q Q 2+ 2+ ࡔ ࠴ ࡞ ࡉ ࠴ ࡞ Q ࡍ ࡦ ࠲ ࡔ ࠴ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࡁ ࡞ P Q ࡍ ࡦ ࠲ ࡔ ࠴ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࠾ ࡞ ࡅ ࠼ ࡠ ࠠ ࠪ ࡅ䝍䝱䜱䜻 ࠼ࡠࠠࠪ Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࡔ ࠴ ࡞ ࡍ ࡦ ࠴ ࡞ 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࡈ ࠚ ࠾ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 㩷 㩷 㩷 ࠢ ࡠ ࡑ ࡁ ࡞ 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 P Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࡔ ࠴ ࡞ ࡍ ࡦ ࠴ ࡞ Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࠫ ࡔ ࠴ ࡞ ࡁ ࠾ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࠾ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 㩷 㩷 㩷 ࠢ ࡠ ࡑ ࡁ ࡞ 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 P Q ࠹ ࠻ ࡔ ࠴ ࡞ ࠫ ࡔ ࠴ ࡞ ࡁ ࠾ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ ࠾ ࡞ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ P Q ࡍ ࡦ ࠲ ࡔ ࠴ ࡞ ࠢ ࡠ ࡑ 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変換反応の経時的追跡は,通常の物質変換実験 フラボン類はフリーラジカルを直接除去する と同様にインキュベートさせた複数のフラスコに ことができる強力なラジカルスカベンジャーとし ついて,一定時間ごとにフラスコ1本から反応物 て知られている。クエルセチン,エピカテキン, を抽出することにより行う。生成物の相対量は, しゅよう カテキンなどのフラボン類は,抗菌作用,抗腫瘍 抽出物のHPLC分析により求める。変換の経時変 作用,血圧上昇抑制作用などの優れた生理作用を 化の様子を第4図に示す。この結果より,タバコ 有することから,医薬産業から食品に至るまで幅 培養細胞は,クエルセチンの3位の水酸基を位置 広い分野で利用されている。 および立体選択的に配糖化して対応するβ-配糖 筆者は植物培養細胞によるこれらのフラボン 体に変換することが明らかとなった。また,タバ 類の変換を行い,光酸化に対する色沢安定性や生 コ培養細胞はクエルセチン3- -β-グルコシドの 理作用,および天然 における希少価値の 高い水溶性フラボン (配糖化フラボンお 2+ 2+ 2 +2 2+ 2+ 2 2+ 25 ࠲ࡃࠦ 52 2 25 2+ 2 よびマロニル配糖化 ࠢ ࠛ ࡞ ࠴ ࡦ 5 5 +5 *OF ࠢ ࠛ ࡞ ࠴ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 5 +5 0DORQ\O*OF ࠢ ࠛ ࡞ ࠴ ࡦ 22ࡑ ࡠ ࠾ ࡞ Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 5 +5 *OF5KDP ࠢ ࠛ ࡞ ࠴ ࡦ 2E࡞ ࠴ ࡁ ࠪ ࠼ 5 5 *OF5 + ࠢ ࠛ ࡞ ࠴ ࡦ 2Eࠫ ࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 +5 5 *OF ࠢ ࠛ ࡞ ࠴ ࡦ 2Eࠫ ࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ フラボン)を合成し ようと試みている7)。 まず,タバコ培養細 胞によるクエルセチ ンの変換を調べた。 タバコ培養細胞は, クエルセチンをクエ ル セ チ ン3- -β-グ ルコシド,クエルセ チ ン3- -(6- -マ ロ ニ ル)-β-グルコシド, 食品と容器 2+ 2+ 2 +2 ࠲ࡃࠦ 2+ 2+ 25 2+ 52 2 2+ 25 56 ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 565 *OF5 㧞 5 + ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 55 ࠛ ࡇ ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 565 5 +5 *OF ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 565 5 +5 *OF ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 555 *OF5 㧞 5 + ࠛ ࡇ ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 555 5 +5 *OF ࠛ ࡇ ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 555 5 +5 *OF ࠛ ࡇ ࠞ ࠹ ࠠ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ ࡏ ♧ 第3図 フラボン類の配糖化,エステル化 697 2011 VOL. 52 NO. 11 糖の6位の水酸基を位置選択的にマロニ ル化することが分かった。 次に,タバコ培養細胞によるエピカテ キンの変換を調べた。その結果,タバコ 培養細胞はエピカテキンをエピカテキン 3'- -β-グルコシド,エピカテキン5- -βグルコシド,エピカテキン7- -β-グルコ シドへ変換した。同様にタバコ培養細胞 は,カテキンをカテキン3'- -β-グルコシ 7LPHK ド,カテキン5- -β-グルコシド,カテキ ン7- -β-グルコシドに変換した。以上の 第4図 タバコ培養細胞によるクエルセチン変換の経時変化 結果から,タバコ培養細胞はカテキンお −*− クエルセチン −○− クエルセチン3- -β-グルコシド −□− クエルセチン3- (6-マロニル) -β-グルコシド −●− クエルセチン3- -β-ルチノシド −×− クエルセチン3,4'- -β-ジグルコシド −△− クエルセチン3,7- -β-ジグルコシド よびエピカテキンの3,5,7位をそれ ぞれ立体選択的にβ-グルコシル化するこ とが分かった。また,タバコ培養細胞は クエルセチンを3種類の二糖配糖体へ変 +2 換したのに対し,エピカテキンおよびカテキンに *OF2 ࡛ ࠙ ࠪ ࡘ ࡗ ࡑ ࠧ ࡏ ࠙ + &2 ࠫࡦࠥࡠࡦ ついては単糖配糖体のみに変換することが明らか + &2 になった。 2 2 クエルセチン3- -(6- -マロニル)グルコシドは, *OF2 血中コレステロール低下作用,中性脂肪低下作用, + &2 2+ +2 および抗動脈硬化作用を有する生理活性化合物と +2 して知られている。また,カテキン3'- -グルコシ + &2 + &2 2+ ドは高いチロシナーゼ阻害活性を示すことが知ら 2*OF *OF2 れている。今回の研究により,タバコ培養細胞は フラボン類を,高い安定性や生理機能を有する水 + &2 2*OF 溶性フラボンへ変換する能力を持つことが明らか +2 になった。植物培養細胞によるフラボン類の変換 *OF2 ࡛࠙ࠪࡘࡗࡑࠧࡏ࠙ 研究における一層の展開が期待される。 2 2 ࠭ࡌࠤ࠻ࡦ 4.1-フェニルブタン-3-オン類の 水酸化,配糖化 *OF2 +2 が 2+ ジンゲロンは生姜の有効成分であり,血行を促 +2 進し,循環機能を高める効果があることが報告さ 2+ れている8)。一方,キイチゴに含まれるラズベリ 2*OF *OF2 ーケトンには脂肪燃焼効果があることが報告され +2 ている9)。これまでに,植物培養細胞によるジン +2 2+ +2 2+ ゲロンおよびラズベリーケトン等の1-フェニルブ +2 タン-3-オン類の変換研究の報告はない。 *OF2 2+ 筆者の研究室では,植物培養細胞によるこれら の1-フェニルブタン-3-オン類の変換を行い,より安 第5図 1-フェニルブタン-3-オン類の水酸化,配糖化 食品と容器 698 2011 VOL. 52 NO. 11 定性と生理作用の高い 誘導体を合成しようと 試みている10)。ここで はヨウシュヤマゴボウ 培養細胞によるジンゲ ロンとラズベリーケト ンの変換の結果を報告 する。ヨウシュヤマゴ ボウ培養細胞はジンゲ ロ ン を4'- -β-グ ル コ シドに変換した(第5 図)。3位のカルボニ 5 5 5 5 ࠲ ࡃ ࠦ 2 2 2 2 5 2+5 +ࡅ ࠼ ࡠ ࠠ ࠪ ࠢ ࡑ ࡦ 5 2*OF5 + ࠢ ࡑ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 +5 2+ࡅ ࠼ ࡠ ࠠ ࠪ ࠢ ࡑ ࡦ 5 +5 2*OF ࠢ ࡑ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 ࠲ࡃࠦ 5 2 2 +2 2 2 ࡅ ࠼ ࡠ ࠠ ࠪ ࠢ ࡑ ࡦ 5 +5 2*OF ࠢ ࡑ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 2&+ 5 2+ ࠬ ࠦ ࡐ ࠴ ࡦ 5 +2 ࠲ࡃࠦ 5 2 2 2 2 +2 ࠙ ࡦ ࡌ ࡈ ࠚ ࡠ ࡦ 5 2+5 2*OF ࠙ ࡦ ࡌ ࡈ ࠚ ࡠ ࡦ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ 5 2&+ 5 2+ ࠬ ࠦ ࡐ ࠴ ࡦ ♧ ル基が還元されたアル コール体について,4' 第6図 クマリン類の配糖化 位,3位,3,4'位をそれぞれ配糖化した。また, 深い生理活性があり,生体触媒によるクマリン類 ラズベリーケトンを基質として用いた場合には, の変換についても高い関心が寄せられている。わ ヨウシュヤマゴボウ培養細胞は対応する れわれはタバコ培養細胞によるヒドロキシクマリ 4'- -β-グルコシドに変換した。ラズベリーケトン ン類の変換を調べている11)。これまでの結果を第 はヨウシュヤマゴボウ培養細胞により3位のカル 6図に示した。タバコ培養細胞は3-ヒドロキシク ボニル基が還元され,3'位が水酸化された。一方, マリンおよび4-ヒドロキシクマリンの水酸基を配 ヨウシュヤマゴボウ培養細胞はラズベリーケトン 糖化して,それぞれ対応するβ-グルコシドに変換 の還元体について4'位と3位をそれぞれ配糖化 した。また,タバコ培養細胞は7-ヒドロキシクマ し,水酸化体について3'位と4'位をそれぞれ配糖 リンの7位の水酸基を配糖化してクマリン 化し,対応するβ-グルコシドへ変換した。以上の 7- -β-グルコシドに変換したほか,6位をメトキ ことより,1-フェニルブタン-3-オン類に対して, シ化して7-ヒドロキシ-6-メトキシクマリン(スコポ ヨウシュヤマゴボウ培養細胞は還元,水酸化,お レチン)に変換した。さらに,タバコ培養細胞は よび配糖化を生起することが明らかとなった。 6,7-ジヒドロキシクマリン(ウンベリフェロン) 1-フェニルブタン-3-オンの3'- -β-グルコシドは の7位の水酸基を配糖化してウンベリフェロン 水溶液中で強いラジカル消去活性を示す 抗酸化性化合物である。1-フェニルブタ ン-3-オン類の植物培養細胞による変換 反応は,有機合成化学において興味ある 反応であり,今後この変換研究の一層の 進展が期待される。 5.クマリン類の配糖化 植物界に広くみられる芳香族化合物 であるクマリン類のうち,スコポレチン やウンベリフェロンなどのヒドロキシク マリン類には,がん抑制効果や,血圧抑 制効果,脂質代謝の改善効果などの興味 食品と容器 52 &22+ ࠾ ࠴ ࠾ ࠴ ࠰ ࠙ 2+ ࠨ࠴࡞㉄ 5 5 &22+ ࠾࠴࠾࠴࠰࠙ 2+ ࡅ ࠼ ࡠ ࠠ ࠪ ᕷ 㚅 ㉄ &22+ ࠾࠴࠾࠴࠰࠙ +2 *OF2 &22+ 2+ + ࠥ ࡦ ࠴ ࠫ ࡦ ㉄ *OF ࠥ ࡦ ࠴ ࠫ ࡦ ㉄ 2Eࠣ ࡞ ࠦ ࠪ ࠼ &22*OF &22+ 2+ 2*OF &22+ &22*OF +2 ࡅ ࠼ ࡠ ࠠ ࠪ ᕷ 㚅 ㉄ 第7図 ヒドロキシ安息香酸類の水酸化,配糖化 699 2011 VOL. 52 NO. 11 7- -β-グルコシドに変換したほか,6位をメチル 対応するゲンチジン酸5- -β-グルコシドに変換さ 化してスコポレチンに変換した。この配糖化は7 れた。また,ニチニチソウ培養細胞は3-ヒドロキ 位において位置選択的に生起しており,6位が配 シ安息香酸および4-ヒドロキシ安息香酸をそれぞ 糖化された生成物は得られなかった。このことよ れ対応するβ-グルコシドとβ-グリコシルエステル り,タバコ培養細胞は,ヒドロキシクマリン類の に変換した。 7位を位置選択的に配糖化する機能と,6位を位 7.おわりに 置選択的にメチル化およびメトキシ化する機能を もつことが明らかとなった。 以上のように,筆者の研究室で行っている,植 このような変換の特徴はタバコ培養細胞のみ 物培養細胞による生理活性化合物の変換研究を紹 が持っているものであり,化学試薬ではできない 介した。立体選択的な配糖化反応を化学合成で行 制御である。植物培養細胞によるクマリン類の反 う場合には,多段階の行程を必要とし,一方,化 応が広く展開されることを期待している。 学合成による位置選択的な水酸化反応は制御が困 難な反応である。植物培養細胞はこれらの反応を 6.ヒドロキシ安息香酸類の 水酸化,配糖化 一段階で行うことができる。植物培養細胞が行う これらの効率的な酵素反応を,生理活性化合物の サリチル酸やゲンチジン酸などのヒドロキシ 安定化,水溶化,および高機能化に利用して,生 安息香酸類には,解熱作用や鎮痛作用,抗菌作用, 体触媒としての植物培養細胞を,新しい食材の素 抗酸化作用,肝機能を正常に保つ作用をもつもの 材開発とそれらの生理機能解明に展開していくこ があり,古くから利用されてきた。われわれの研 とも可能になると期待している。この実験事実の 究室では,ヒドロキシ安息香酸を投与することに 延長にはこれまでにない新規なサプリメントの創 より,植物培養細胞からの効率的なゲンチジン酸 製と人の健康維持に必要な新しい食品素材の発見 12) の生産を研究している 。ニチニチソウ培養細胞 が生まれる。筆者は社会貢献を目指して研究を行 は,2-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)の5位 っているので,筆者の研究成果が人の病気予防の に水酸基を導入して2,5-ジヒドロキシ安息香酸 一環に役立つ事は望外の喜びである。また最後に, (ゲンチジン酸)に変換することが分かった(第 食品素材と食品容器との関係も今後の大切な研究 7図)。ゲンチジン酸の5位はさらに配糖化され, テーマになると確信している。 参 考 文 献 7)Shimoda, K., Otsuka, T., Morimoto, Y., Hamada, H., 1)Shimoda, K., Kondo, Y., Abe, K., Hamada, H., Hamada, H., Hamada, H., , 2006, 47, 2695- , 2007, 36, 1292-1293. 8)Govindarajan, V.S., 2698. , 1982, 17, 189-258. 2)Shimoda, K., Kondo, Y., Akagi, M., Abe, K., , 2007, 9)Morimoto, C., Satoh, Y., Hara, M., Inoue, S., Tsujita, 3)Shimoda, K., Kondo, Y., Akagi, M., Abe, K., Hamada, 10)Shimoda, K., Harada, T., Hamada, H., Hamada, H., Hamada,., Hamada, H., T., Okuda, H., 68, 2678-2683. H., Hamada, H., , 2007, 68, 487-492. , 2007, 36, 570-571. 11)Hirata, T., Shimoda, K., Fujino, T., Ohta, S., 4)Kondo, Y., Shimoda, K., Takimura, J., Hamada, H., Hamada, H., , 2000, 10, 477-481. , 2006, 35, 324-325. 12)Shimoda, K., Yamane, S., Hirakawa, H., Ohta, S., 5)Uhrig, R.K., Picard, M.A., Beyreuther, K., Wiessler, M., , 2005, 77, 194-204. Hirata, T. , 2000, 325, 72-80. , 2002, 16, 275-281. 6)Satoh, T., Miyataka, H., Yamamoto, K., Hirano, T. , 2001, 49, 948-953. 食品と容器 700 2011 VOL. 52 NO. 11 業 界 ト ピ ッ ク ス ◇缶コーヒーに本来の勢い戻る アサヒ飲料の「ワンダ」は, 「モーニングショ 飲料業界は「昨年の記録的猛暑の翌年」と「未 ット」や「金の微糖」が牽引して増勢。9月から けん ぞ 曾有の震災」という二つの大きな壁を何とか乗り 11月にかけて「特製カフェオレ」 「ゼロマックス 切った。9月までの総販売量は前年比マイナスに プレミアム」も含めほぼ全品リニューアル。CM とどまったが,最終ランナーの「缶コーヒー」に キャラクターに人気アイドルグループのAKB48 たすきを渡し,残り2カ月に全力で望む。 を起用したことが奏功した。商品,CM,キャン 今夏は震災の影響で必需性の高い飲料に需要が ペーンの連動が相乗効果を発揮。20代全体の購 傾斜。業界でもミネラルウォーターやスポーツド 入本数が上昇するとともに,30 ∼ 40代の男性フ リンク等の増産に集中。春先には新製品発売やキ ァンが増えるなど意外な効果も出た。 ャンペーンも延期され,缶コーヒーは二重苦,三 キリンビバレッジは,「ファイア」ブランドで 重苦を経験した。 缶コーヒーとPETコーヒーの両軸戦略を展開。 だが,最需要期の秋需を前に寸断されたサプラ 30代以上には缶コーヒー「挽きたて」シリーズ, イチェーンはほぼ通常に回復。震災で発売が延期 20代までにはPETコーヒー「ネオ」シリーズを されていた新製品もコンビニや自販機に並び,広 アピール。若者の缶コーヒー離れにも手を打った。 告宣伝も再開されるなど,やっと本来の形に戻り, ダイドードリンコは,9月から「デミタスコーヒ それまで低迷してきた需要も9月以降やっと本来 ー」シリーズの「デミタスコーヒー」 「デミタス の動きが戻ってきた。 グランブルー微糖」 「デミタスサファイアブラッ 市場トレンドは引き続き微糖・無糖市場の拡大 ク無糖」を新発売した。 で,レギュラー(スタンダード)カテゴリーとの 続々と無糖,微糖カテゴリーに新製品 食い合いが焦点だが,カフェオレやラテ系の台頭 「ブラック無糖」のUCCは,ホットシーズン も目立っており,カテゴリー競争はブランドの争 を狙ったリキャップ缶入りホット専用製品「ブラ いと一歩も引けをとらない。こうした中で定番ブ ック無糖プラチナアロマホットリミテッド」を新 ランドの建て直しが最大のテーマとなっており, 発売。ポッカは,コクと香りを強調した「アロマ 各社は様々なマーケティング戦略を打ち出してい ックス」シリーズの「プレミアムゴールド」を9 る。 月からリニューアル発売。「リッチ&リラック 定番ブランドで広告サポートも ス」も10月末から発売し,ラインアップを強化。 コ カ・ コ ー ラ シ ス テ ム の「 ジ ョ ー ジ ア 」 は, 伊 藤 園 の「 タ リ ー ズ 」 は,10月 か ら ボ ト ル 缶 「エメラルドマウンテン」「ヨーロピアン」が好 「バリスタズチョイス」をリニューアルし,190 調。9月からは「ヨーロピアンコクの微糖」と グラム缶も装いも新たに「フォルテエスプレッ 「エメラルドマウンテン微糖」をリニューアル。 ソ」「エスプレッソ微糖」として全国発売し,キ 10月から待望のカフェオレも登場し,広告でも ャンペーンやテレビCMなども積極展開。「W」 しっかりサポートする。 シリーズに「衝撃ブレンド」を新たに投入した。 サントリーの「ボス」は,引き続き「レインボ ネスレ日本は,9月から「ネスカフェ香味焙煎」 ー マ ウ ン テ ン ブ レ ン ド 」「 贅 沢 微 糖 」「 ブ ラ ッ (微糖,ブレンド)を新発売し,更に「ネスカフ ク」「カフェオレ」の四天王が強力な柱だが,8 ェ香味焙煎」そのものも一新した。 ねら 月から発売した「ゼロの頂点」が好調で,下半期 (業界誌記者 井上拓郎) で絶対に取り戻すと強気だ。 食品と容器 701 2011 VOL. 52 NO. 11 特別解説 赤外線・紫外線殺菌と超微細ミストを 用いた青果物の輸出促進技術 う ち の・ と し た か 九 州 大 学 農 学 部 卒 業。 井関農機株式会社入 社。千葉大学園芸学部 助手,助教授,九州大 学助教授を経て,現在, 九州大学大学院農学研 究院教授。 農学博士 た な か・ ふ み ひ こ 九 州 大 学 農 学 部 卒 業。 同大学院農学研究院修 士課程,博士後期課程 修了。鹿児島大学農学 部助手,助教授を経て, 現在,九州大学大学院 農学研究院准教授。 博士(農学) 内 野 敏 剛 田 中 史 彦 された「新成長戦略」で修正され,2017年までに 1.はじめに 農林水産物・食品の輸出を1兆円水準にすること 食料農業農村基本法の第18条2項には「国は, を目指すとされている。東日本大震災と福島原発 農産物の輸出を促進するため,農産物の競争力を 事故による風評,また長引く世界経済の停滞と超 強化するとともに,市場調査の充実,情報の提供, 円高のため,修正された目標を達成することも現 普及宣伝の強化その他必要な施策を講ずるものと 状では厳しいものがあるかも知れない。しかしな うた する」と謳われ,わが国の農政は農産物の輸出に がら,逆にこのような状況であるからこそ,農家 力点を置いている。農林水産物の輸出は第1図に の経済や国内の農業情勢を鑑みると,農産物の輸 示 す よ う に,2003年 か ら2007年 ま で 毎 年11∼ 出増加に向けて努力することは必然的課題といえ 15%程度の伸びを示し,2013年までに輸出額を1 る。 兆円にするという2003年当初の目標を順調に達 農産物・食品は70%強がアジア地域に輸出され 成しつつあったが,2008年にはリーマンショック ており,この地域では近年の飛躍的経済発展から による世界的な景気後退や円高の影響を受け減少 富裕層が食の豊かさを求めるようになっている。 2) に転じている 。目標は,2010年6月に閣議決定 わが国の農産物の安全性と品質は非常に高く,ア ジアの富裕層の間には日本産農産物の需 㪍㪇㪇㪇 要が高まっている。一方で,2008年の中 㪌㪇㪇㪇 村ら3)の調査によると,バンコクにおけ 㪋㪇㪇㪇 る日本産イチゴの価格はタイ産のものに ャ㗵䋨ం䋩 比べ5から7倍強,香港では日本産ナシ 㪊㪇㪇㪇 は中国産の2から4.6倍と非常に高価格 㪉㪇㪇㪇 㪈㪇㪇㪇 である。また,著者らの2010年の台湾に おける調査4)でも,日本産イチゴの支払 い適正価格(消費者がその商品に対し適 㪇 㪉㪇㪇㪊 㪉㪇㪇㪋 㪉㪇㪇㪌 㪉㪇㪇㪍 㪉㪇㪇㪎 㪉㪇㪇㪏 㪉㪇㪇㪐 㪉㪇㪈㪇 から1/3で,高価格のために買い控え ᐕ 1) 第1図 農林水産物輸出額の推移,農林水産物輸出入概況 食品と容器 正と思う価格)は店頭販売価格の1/2 より作成 702 していることが予想される。販売価格が 2011 VOL. 52 NO. 11 下がれば,富裕層だけでなく中間層も日本産の農 る青果物の表面殺菌装置を開発した。IRは熱殺菌 産物を購入することが可能となり,これらの消費 の一種であり,殺菌メカニズムは酵素タンパク質 者に大量に販売できれば,輸出促進につながる。 の熱変性や失活,代謝異常等であるが,通常の蒸 青果物は現在,ナガイモ,ニンジン等の根菜類や 気殺菌や熱水による殺菌と異なり放射伝熱である キャベツ等の比較的鮮度保持が容易なものを除い ため,短時間で表面を高温にすることができる。 ては航空機で輸出されているのが現状である。こ IRの吸収は表面付近に限られ内部の温度が上が れは日本産農産物を高価格にする一因であり,船 りにくく,内部品質を保ちたい青果物等の殺菌に 舶を用いた大量輸送による価格の低減が期待され 有利である。UV殺菌のメカニズムは,殺菌に効 るが,輸送期間の長期化から,微生物の増殖や過 果のある波長帯(UV-C)がDNAの吸収帯と一致 度の蒸散による品質の低下が懸念され,敬遠され し,UVが照射されたとき,DNA(あるいはRNA) ている。また,アジア諸国ではコールドチェーン の同一鎖状のピリミジン塩基(とくにチミン)が の発達が十分でなく,荷揚げ後に品質が急速に劣 相隣る場合にこれらが二量体となり,複製機能を 化することも考えられる。著者らは,これらの問 失うことによる。UVも透過性は小さいため,表 題を解決し,高品質を維持したまま輸出対象国の 面殺菌に適する。IR,UVは他に,①残留性がな 店頭まで青果物を輸送する手法として,積み込み く殺菌後の青果物を摂食しても健康被害がない, 前の青果物の赤外線・紫外線殺菌技術,ナノミス ②環境に被害を及ぼさない,③取り扱いが容易, ト(超微細ミスト)発生装置によるコンテナ内の ④安価等の利点を持つ。IR,UVは単独でも殺菌 湿度制御技術,および同ミスト発生装置をリーフ 効果を持つが,例えばUV耐性のある微生物にIR ァーコンテナに取り付けたコスト低減可能な大量 とUVを併用照射した場合,IRの照射時間は単独 輸送技術につき検討したのでここに紹介する。こ の場合の半分で同等の効果が得られ,照射時間が れらは平成19年度∼21年度の農林水産省「先端技 短縮されることにより品質の維持が可能となる。 術を利用した農林水産研究高度化事業」 (平成20 逆にIR耐性のある微生物の場合も同様で照射時 年度からは「新たな農林水産政策を推進する実用 間の短縮による変色の軽減等が期待できる5)。 技術開発事業」)において実施した研究である。 試作したIR・UV殺菌装置を第2図に示す。装 あいとな 2.青果物の表面殺菌 わが国ではカット野菜の次亜塩素酸ソーダによ る殺菌を除き,一般に青果物の殺菌は行われてい ない。これは国内の流通経路が短く短期間で輸送 され,また,表面をクチクラで覆われた青果物は 微生物が増殖しにくい環境にあるからである。し かしながら,表皮に傷が付きやすいあるいは裂果 しやすい果実等はそこから微生物が侵入し増殖す る危険性がある。さらに船便による輸出では前述 のように輸送に時間がかかるため,微生物被害も 出やすくなる。このため,特にイチジクのように 柔らかく,裂果が生じやすい青果物については輸 出時に何らかの微生物対策が必要となるが,消費 者のポストハーベスト農薬への嫌悪感が強いこと から化学薬品の使用は困難である。そのため,筆 第2図 IR・UV殺菌装置 (カラー図表をHPに掲載 C065) 者らは赤外線,紫外線(以下IR,UV)照射によ 食品と容器 703 2011 VOL. 52 NO. 11 置は同形のネットコンベア2台からなり,一方は ましい。また,イチジクの呼吸活性,硬度,イチ IR, 他 方 はUVラ ン プ を 備 え て い る。 寸 法 は ゴのアントシアニン含量等にはIR・UV照射の影 1500mm(L) ×400mm (W) ×1500mm(H)でネット 響はなかった。 幅は200mmである。ランプはネットコンベア上 3.ナノミスト発生装置による加湿 の殺菌対象青果物の上方と左右,およびネットの 下 方 に 2 灯 ず つ 合 計 8 灯 を 配 し, 上 下 方 向 に 青果物の鮮度を保持するためには低温高湿環 70mm,左右方向に120mmの位置調整ができる。 境の維持が不可欠であるが,低温域での空調は難 また,照射強度,コンベア速度も可変で,これら しく,わずかな環境変動でも青果物や包装資材に はすべてタッチパネル式の操作盤で操作可能であ 濡れを生じる危険がある。濡れは微生物増殖によ る。本装置は基礎試験用のため,IR用,UV用の る腐敗を促す原因となり,また,包装資材強度の 2機を設けたが,実用的には1機のコンベア上に 低下による荷崩れの原因ともなることから,これ IR・UVランプを設置し,同時照射を行っても問 を抑制しつつ低温でも加湿が可能な新たなナノミ 題ない。 スト発生装置の開発を行った。ここで開発した装 本装置を用い,イチジク,イチゴ,モモ,温州 置はレナード式と呼ばれるもので,水を遠心力で ミカン等の殺菌試験を行った。結果の一例を第3 飛ばし,網に衝突させて微粒化後,空気流により 図に示す。IR,UVの30秒間単独照射でも無処理 微細なミストのみを噴霧する仕組みとなっている と比べ菌数は減少するが,IRとUVをそれぞれ30 (第4図)。噴霧されるミストサイズは装置の性能 秒ずつ照射することでイチジクに付着する真菌を と運転条件によって異なるが,ここでは平均粒径 けた 3桁以上減らすことができた6)。また,温州ミカ 82nmのナノミストを生成することが可能であっ ンではIR60秒+UV60秒の照射により,貯蔵2カ た。これは従来式の超音波式ミスト発生装置によ 月後の表在菌数は無処理に比べ,2桁程度少なか る粒径の1/4程度の大きさであり7),ミスト体 った。さらに,照射殺菌後に5℃に保存すると, 積で比較するとわずか8%程度の大きさでしかな イチゴでは10日間,温州ミカンでは60日間腐敗果 い。このため,気化は速やかであり,青果物や包 の発生を防止できた。一方で,照射による品質の 装資材の表面を濡らすことなく加湿が可能となる。 低下も見られ,モモではIRの照射時間が144秒を ミズナ,ナス,イチジクを同温湿度条件のナノミ 超えると赤色が減退して黄化が顕著になり,UV スト区と超音波区で保蔵したところナノミスト区 の照射時間が長いと黒変が生じた。イチゴではIR の減量率が小さくなることが示された(第1表) 。 照射はヘタ枯が生じるため,UVのみの照射が望 重量減少の原因となる水分蒸散はおもに気孔を通 して起こるため,両区におけるミズ ナ葉裏の気孔開度の違いをレプリカ 法によって観察した。その結果,保 存6日目における開口部面積はナノ ミスト区で64.5μm2,超音波区で 87.6μm2となった8)。農産物表面に濡 れが生じると気孔開度が大きくなる という報告もあり9),超音波区では 粒径の大きな水滴が気化せずミズナ 葉裏面に付着し,気孔を開かせた可 第3図 IR・UV照射がイチジク(桝井ドーフィン)表面に付着した 真菌数に及ぼす影響 同日調査の無処理区に対して,*は5%,**は1%水準で有意差あり6)。 食品と容器 704 能性もあるが,この機構の解明につ いてはさらなる追試が必要であろう。 つぎに,包装資材の濡れの評価とし 2011 VOL. 52 NO. 11 て両区に段ボール資材を1週間置いたときの吸湿 たところ,輸送前硬度8.32kgfであったものが,輸 量と強度の違いを比較した。この結果,超音波ミ 送後,ナノミスト区で7.96kgf,通常リーファー さら ストに曝 した段ボールの方が吸湿量は大きく, 区で6.95kgfとなり,硬度保持の面でナノミスト JIS Z0403-2による残留圧縮強度が小さくなるこ 区が優位であった。つぎに,IR・UV殺菌の有効 10) とが明らかとなった 。以上より,ナノミスト発 性については,イチジクを用いた航空機輸送によ 生装置による加湿は低温高湿環境下でも濡れを生 る予備試験では,カビ,とろけの発生が著しく抑 じにくく,鮮度保持に適した技術であるといえる。 制されることを確認したものの,本試験では明確 な差は認められなかった。このためIR・UV殺菌 4.輸送試験 による初発菌の抑制のみならず,輸送中のコンテ ナノミスト発生装置を冷凍機付きの20ftリーフ ナ内での微生物制御が今後の課題となろう。さら ァーコンテナに組み込み,適正な空調制御を行う に,船舶輸送されたイチゴの商品性を調査するた ことで低温高湿環境を長期安定的に維持できるナ め,現地の消費者による試食試験を行った。その ノミストコンテナを開発した。このコンテナを用 結果,船舶輸送されたイチゴの品質は航空便と比 いて福岡から香港までの輸送試験を行った。試験 較して遜色はなく,高い評価を得ることができた。 では,IR・UV殺菌とナノミスト調湿による有効 最後に,輸送価格について検討した。著者ら11) 性を検証することを目的とした。また,通常のリ が調査したリーファーコンテナによる船舶輸送コ ーファーコンテナ(船便) ,航空便を対照区として スト(1.9t積載)と航空輸送コスト(100kg積載) そん 比較試験も実施した。輸送期間は船便が10または の比較を第2表に示す。100kgあたりの輸送コス 11日間(2回試験を実施したため) ,航空便が2 トはリーファーで15,180円,航空便で86,900円と 日間であった。船舶による輸送 287 では,いずれも低温高湿環境を ᅇ㌿య 維持可能であったが,航空便で 䝣䜱䝹䝍䠉 は温湿度が4∼14℃,70∼95% と激しく変動した。船便による ,1 5品目(イチジク,イチゴ,ネ 䝣䜯䞁 ギ,ミズナ,ガーベラ)の減量 率については,両区とも概して ⤥Ỉ⟶ 航空便よりも高く,ミズナでは 䝇䜽䝸䝳䞊 1.7%,ガーベラでは2.7%高い 値を示したが,イチゴ,イチジ Ỉ⟶ Ỉᵴ クでは最大1%高い程度で,ネ 第4図 レナード式ナノミスト発生装置の概略7) (カラー図表をHPに掲載 C066) ギについては差が認められなか った。減量率は品目により異な るため,今後,船便輸送に向く 第1表 調湿法の違いによる減量率への影響8) 青果物を選定する必要があろう。 ガーベラの首曲を輸送前後で比 ナノミスト区 品目 較したところ,ナノミスト区で 平均温度 平均湿度 ℃ % 超音波区 減量率 平均温度 平均湿度 % ℃ % 減量率 % 11.2cm, 通 常 リ ー フ ァ ー 区 で ミズナ 5.7 95.7 3.7 5.7 96.6 7.3 17.6cm, 航 空 便 区 で13.8cmの ナス 5.7 95.9 5.3 5.7 96.6 8.5 変化があった。また,船便輸送 イチジク 7.1 93.8 8.8 7.0 93.8 14.8 したカキの硬度について比較し *それぞれの値は2回の試験の平均値を示す。 食品と容器 705 2011 VOL. 52 NO. 11 第2表 リーファーコンテナによる船舶輸送コスト(1.9t積載)と 航空輸送コスト(100kg積載)の比較11) 100kg 航空輸送関連コスト表 (福岡空港→香港空港) 100kg の場合 金額 航空運賃 60,000 通関料 5,900 書類作成料 2,000 取扱料 17,000 上屋料 1,800 AWB 200 計(100kg) 86,900 ① になると考える。最 終的な輸送コストは, 20ft リーファーコンテナ船舶輸送 関連コスト表(博多港→香港港) 1.9t リーファーコンテナ 金額 船舶運賃 150,522 通関料 5,900 取扱料 12,000 バンニング作業料 18,000 THC 11,000 ラッシング 31,000 ショートドレージ 28,000 仕様変更 13,000 B/L Fee 2,000 集荷料 14,000 立替手数料 3,000 計(1.9t) 288,422 100kg あたり 15,180 ② 取り扱い業社や青果 物の積載量,製品ロ スによって変わるた め,詳細な検討が必 要である。 5.おわりに 農産物の輸出は東 日本大震災に伴う福 島原発の事故により 大きな打撃を受け, 昨年に比し減少して ① ÷ ②= 5.7 倍 いるのが現状である。 なり,5.7倍のコスト高となった。ナノミストコン しかしながら,風評被害も含むこれらの輸入国消 テナによる輸送では,ナノミスト発生装置の開発 費者の対応も今後徐々に改善され,日本産農産物 費用等を10年減価償却として387,000円/年を加 への信頼性の回復は遠くないものと考える。その 算する必要があり,100kgあたり35,549円となる。 際に安全で高品質なわが国の農産物を安価に現地 ただし,本機については低コスト化が見込まれる の消費者に届けるために,ここに述べた技術は非 ため,航空輸送に比べ,コストの面でさらに優位 常に有用であり,普及が望まれる。 参 考 文 献 22(3-4), 375-380, 2011. 1)農林水産省大臣官房国際部国際政策課:農林水産物 7)Hung, D.V., et al.: Measurements of particle size 輸 出 入 概 況, http://www.maff.go.jp/j/tokei/ kouhyou/kokusai/houkoku_gaikyou.html#r21, distributions produced by humidifiers operating 2011. in high humidity storage environments. . ., 107(1), 54-60, 2010. 2)下渡敏治:日本の農産物・食品輸出とアジア市場へ 8)Hung, D.V., et al.: Controlling the weight loss of の挑戦,JOYO ARC,43(497) ,6-13,2011. fresh produce during postharvest storage under 3)中村哲也ら:栃木産にっこり・とちおとめ輸出に関 する海外消費者の評価−香港・バンコクにおけるア a nano-size mist environment. ンケート調査から−,共栄大学研究論集,7,89-106, 325-330, 2011. ., 106, 9)Lange, O.L., et al.: Response of stomata to 2009. Changes in humidity. 4)内野敏剛ら:電磁波殺菌とナノミストを用いた青果 物の高鮮度輸送技術の開発,農水技研ジャーナル, ), 100, 10)Hung, D.V., et al.: Preserving the strength of 34(4),48-51,2011. corrugated cardboard under high humidity 5)Hamanaka, D., et al. : Effect of combining condition using nano-sized mists. infrared heating with ultraviolet irradiation on inactivation of mold spores, ( 76-86, 1971. ., 70(14), 2123-2127, 2010. . 11)内野敏剛ら:電磁波殺菌とナノミストを用いた青果 ., 16(4), 279-284, 2010. 6)Hamanaka, D., et al. :Surface decontamination of 物の高鮮度輸送技術の開発,平成21年度新たな農林 fig fruit by combination of infrared radiation 水産政策を推進する実用技術開発事業事後評価用報 heating with ultraviolet irradiation. 告書,21,2010. 食品と容器 ., 706 2011 VOL. 52 NO. 11 ∼∼∼∼ 技術用語解説:『容器の事典』(缶詰技術研究会編)から抜粋 ∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼ ンテナからの供給電力と内蔵電池エネルギーで動 作し,交信距離が数cm∼数mのセミパッシブ方 RFID (Radio Frequency Identification) 式,内蔵電池のエネルギーで自ら動作し,交信距 離が数m∼数10mと長距離の交信を保証できるア RFIDとは,Radio Frequency IDentification クティブ方式がある。 の略で,電波を利用した認証(認識)技術の総称 である。現在では,ICチップと電波による非接 触通信とを利用した認証がRFID技術の主流に なりつつあるため,「RFID = ICチップを組み込 んだタグを物や場所に取り付けて,その判別や位 置認識を非接触で認証する技術」を意味するもの として使用されている。 RFIDの基本構成は,① ICチップが封入された IC タグ(電子タグ),② ICタグ上の情報を読み 書きするリーダー/ライター,③読み取った情報 ICタグは,周波数によって大きく4つ(135kHz を処理する管理システムからなる。 未 満,13.56MHz,2.45GHz,UHF帯 ) に 分 類 が できる。一般的に同一出力では,周波数が大きく なるほど通信距離も長くなる性質がある。それぞ れの周波数帯によって特徴があるので,目的・用 途等により最適な周波数帯のICタグを選択する 必要がある。電磁誘導方式(13.56MHz帯)のタ グは,通信距離が比較的短く,指向性はやや広く, 䍶䍎䍞䍼䍎㪆䍵䍐䍞䍎㩷 水分の影響を受けにくいといった特徴を持ってい る。このような性質を利用して,図書館の蔵書の ICタグは,実際のメモリーとして機能するIC ラベルに付与した事例では,貸し出し・返却の業 チップ部と通信内容の書き込みや読み出し等を行 務効率アップ,所在不明の書籍探索作業の効率ア う制御部,チップへの電源供給およびアンテナと ップなどの効果が報告されている。また,電波方 して機能するアンテナ部から構成される。 式のタグは,通信距離が長く,指向性がシャープ ICタグは,利用用途に応じてカード型,ラベル であり,水分の影響を受けやすいといった特徴を 型,キーホルダー型など,さまざまな形状に加工 持っている。フォークリフト等で搬入する際にゲ することができる。また,電源供給方式による分 ートに設置したリーダー/ライターによりパレッ 類では,アンテナからの供給電力のみで動作し, ト/ケースにはり付けしたタグの一括読み取りを 交信距離が数mm∼数mと短いパッシブ方式,ア 行うなどの利用例がある。 ご案内 缶詰技術研究会設立50周年記念として『容器の事典』を出版しました。 ・容器(缶,プラスチック,紙,ガラス)に関する材料から製造方法まで広範囲に解説 ・見出し語:約1,300項目(文中語はゴシックで示し,邦語索引から検索可能) ・A5版246ページで手軽なハンディータイプ,販売価格 4,800円 ご購入希望の方は,巻末の通信カードよりお申し込み下さい。 食品と容器 707 2011 VOL. 52 NO. 11 業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より 業界の話題 全国卸流通特集:商社主導の大規模再編が幕開け して効率化を追求するのに対し,国分の得意先口 (日食 2011/09/17日付) 座数は大手∼中小零細まで3万5000件と極めて ●三菱商事・伊藤忠商事がグループ卸を統合, 多い。この顧客数の多さを自社の財産と捉え,規 業界勢力図が変動 独立系トップの国分,商社系 模を問わず丁寧で密接な関係作りに努めるのが とは一線画す成長へ 「小商い」の意味するところだ。 総合商社の主導により,食品卸業界でかつてな 小規模店の構成比が高い取引構造はコストが嵩 い再編の火蓋が切られた。三菱商事は7月,筆頭 みがちだが,質の強化には手を抜かない。5年後 卸の菱食の商号を「三菱食品」へ変更し,同社を には経常利益200億円の達成を目指す。また農産 中核とする酒類食品,菓子,低温のグループ卸4 や水産物卸との提携,低温卸のM&Aなど独自の 社を順次統合する。来春には,国内初の売上高2 ネットワーク整備を進め,競争力を高めていく考 兆円を超える食品メガ卸が誕生する見込みだ。 えだ。 10月には伊藤忠商事も日本アクセスを軸にグル 卸業界が再編を軸に大きく動き始めたなか,懸 ープ卸4社の経営統合へ乗り出す。4社合算の事 念されるのは競争環境の行方だ。過去,卸業界は 業規模は1兆5,000億円を超える見通しで,アク シェア拡大に向けた過剰な競争を展開し,05年は セスが卸業界2位へ浮上する可能性も出てきた。 主要卸が軒並み減益となる深刻な収益不振に陥っ これまでも業界の競争をリードしてきた三菱, た。だがこの数年,各卸とも「量から質」のスタ 伊藤忠系の卸が矢継ぎ早にグループ再編へ乗り出 ンスで経営改善へ努めたことで,直近業績は増収 すインパクトは大きい。三菱食品の井上彪社長は 増益傾向へ回復している。ようやく持ち直してき 「事業上で必要とあれば,さらなるM&Aへ取組 た業界の収益環境を企業個々の努力で守れるか, むことも否定しない」と次なる再編劇を仄(ほ 正念場となりそうだ。 の)めかしており,市場では規模の論理がますま 介護食品特集:顕在化していない在宅市場 これ す台頭してきそうだ。 からが開拓のチャンス (日食 2011/09/28 日付) 少子高齢化や人口減で国内流通業界の競争環境 介護食市場はなかなか不透明だ。唯一正式な数 は一段と激しさを増している。企業が広がらない 字として発表されているのが日本介護食品協議会 市場で生き残るには,再編による規模拡大で競争 のUDF(ユニバーサルデザインフード)商品と 力を高め,限られたパイの獲得を有利に進めるこ いう83億円市場だ。ヘルシーフードの黒田誠社長 とが得策だ。 は「流動食市場は1,000億円と分析するが,在宅 小売業界でも6月にアークスグループ(北海 介護市場はまだ顕在化しておらず,これからの市 道)とユニバース(青森県)の強者連合が誕生し, 場」と言う。「あんしんサポートショップ」を展 地方発の新たな合従連衡時代が幕を開けた。両社 開するイトーヨーカドーも,介護食については本 は従来の商圏を超えて東日本エリアへも進出する 格的在宅介護に向けての品揃えも含めてこれから と表明しており,今後,同様の現象が全国の地域 の開発が鍵のようだ。まぎれもなく少子高齢化社 有力チェーンへ波及しそうだ。加速する商社系卸 会に伸びるのはシルバー産業だ。介護食の今を紹 の大型再編も,こうした小売業界の動きと無関係 介する。 ではないだろう。 ◆UDF,10年生産量・金額前年対比各2桁増 一方,長きに渡って業界首位に君臨してきた国 推移 価格は求めやすく 分の動向が注目されるが,ここへ来て商社系大手 日本介護食品協議会(会員企業47社=9月現 とは全く発想の異なる「小商い」の経営スタンス 在)10年会員企業対象のユニバーサルデザインフ を打ち出した。競合卸が顧客を数千社程度へ集約 ード(UDF)生産量は7,012t,生産金額は82億 食品と容器 708 2011 VOL. 52 NO. 11 業界の話題 9,300万円で前年比はそれぞれ19.3%増,14.8%増 い速度で進行 (日食 2011/09/28 日付) と前年に引き続き大きく増加,生産量に対して生 平成23年版「高齢社会白書」(内閣府)による 産金額の増加比率が低いことから,価格が高いと と,出生数は減少を続け2010年の94万人が55年に いう消費者の要望に応え求めやすい金額に市場が は46万人。生産年齢人口(15 ∼ 64歳)は12年に 是正されてきていることがうかがえる。 8,000万人を割り,55年には4,595万人,10年は高 区分別(1容易にかめる,2歯茎でつぶせる, 齢者(65歳以上)1人に対しての生産年齢人口2.8 3舌でつぶせる,4かまなくてよい)ではすべて 人が1.3人という比率になると推計している。 の区分で増加しているが,区分2と区分3の伸び 先進諸国の高齢化率(65歳以上の高齢者人口が が生産量,金額ともに著しい。区分2については 総人口に占める割合)を比較してみると,日本は 区分1とも共通するが,施設や病院の給食などで 1980年代までは下位,90年代にはほぼ中位だった 年齢・対象を問わず幅広く利用されるケースが増 が,05年には最も高い水準となり,世界のどこの えていること,価格低下を受けた取り扱い増加な 国もこれまで経験したことのない高齢社会を迎え どが要因とみられる。 ている。 区分3は最もアイテム数の多い区分だが,在宅 高齢化の速度について,高齢化率が7%を超え や施設などでも調理が難しく加工度が高いために, てからその倍の14%に達するまでの所要年数(倍 利用される機会が一層増加しているものとみられ 化年数)を比較すると,フランスが115年,スウ る。流通タイプ別に見ると乾燥,冷凍,常温とも ェーデンが85年,比較的短いドイツが40年,イギ 増加,販売先別でも,市販用,業務用ともに増加 リスが47年なのに対し,日本は1970年に7%を超 している。 えると24年後の94年には14%に達し,05年には20 数量増加率に対して金額が若干低くなっている %となり,2050年には40%と推測されている。こ が,これは製品当たりの単価が低下したためとみ のように,日本の高齢化は世界に例を見ない速度 られる。 で進行している。 またUDFの商品は635品目が登録され,年々増 アジア諸国も今後急速に高齢化が進み,特に韓 加し(11年5月末現在),当初はレトルト食品など 国では日本を上回るスピードで高齢化が進行,05 の常温食品の数が多かったが,近年では冷凍食品 年に9.3%の高齢化率が50年には34%に達すると の登録数増加が著しく,およそ6割を占めている。 みられ,シンガポールがこれに続く。 UDFは日常の食事から介護食まで幅広く使え 放射能測定情報発信は継続性重要 渡邊清孝・ る,食べやすさに配慮した食品だ。その種類もさ JUSE食品安全審査室長 (日食 2011/09/30 日付) まざまでレトルト食品や冷凍食品などの調理加工 食品メーカーの間で放射能測定器を導入,ある 食品をはじめ飲み物や食事にとろみをつける「と いは外部委託する形で原材料や使用する水などの ろみ調整食品」などがある。 放射能測定を実施し,結果を公表する動きが活発 高齢者の嚥下咀嚼(えんげそしゃく)困難によ になってきた。しかし,数値だけが独り歩きをし る誤飲や誤嚥を防ぐためにユニバーサルデザイン ている感も否めない。そこで日本科学技術連盟審 フードのパッケージには必ずUDFマークを記載 査登録センター(JUSE)の渡邊清孝食品安全審 して選びやすいように,どのメーカーの商品にも 査室長は結果を公表するにあたって重要なのは 「かたさ」や「粘度」の規格により分類された4 「本来に必要な情報を継続的に発信していくこ つの区分を表示して,利用に適した商品を安心し と」とし,あらまし以下のように語った。) て選べるようにしている。 食品メーカーに注意してほしいのは, 「セシウム 介護食品特集:日本の高齢化率,世界に例を見な 137の半減期は約30年」ということ。つまり,測定 食品と容器 709 2011 VOL. 52 NO. 11 業界の話題 を開始したら,それがかなり長期間にわたる取組 のは,リスクが不確かで専門家の間ですら評価が みとなることをまず覚悟してほしい。その上で, 分かれるなど影響を推定しにくいことだ。 自社で製造する商品の特性を十分に鑑み,検査方 しかし,食品メーカーは風評に惑わされること 法・意図を明確にする必要がある。例えば,乾燥 なく, 「緊急時における食品の放射能測定マニュア ワカメや椎茸,野菜や果実を濃縮するピューレや ル」 (厚労省)に則って,消費者に対して本当に必 ジャムといった類の商品は,加工の過程で原材料 要な情報を継続的に発信していくことが何より重 中のセシウム137が濃縮される恐れがあるために, 要だ。 最終商品段階での検査が重要となるだろう。 食品表示の一元化検討,波乱含みで開始 消費者 厚生労働省は,食品安全委員会(食安委)の緊 庁 急とりまとめを受けた食品中の放射性物質に関す 複数の法律が関係している食品の表示制度の一 る暫定規制値の取り扱いについて, 「わが国で初 元化に向けて検討が始まった。消費者庁の食品表 めての原子力緊急事態の発生に伴う放射性物質の 示一元化検討会(座長=池戸重信・宮城大学食産 放出が依然として収束していないことなどに鑑み, 業学部教授)は9月30日,東京・平河町の都市セ 当分の間,現行の暫定規制値を維持する」として ンターホテルで第1回の会合を開いた。検討会は いる。 表示に関する法律の一元化に向けて検討していく 食品からのセシウム137摂取に関する暫定基準 ほか,栄養表示の義務付け,いわゆる健康食品の 値は,飲料水,牛乳・乳製品が1kg 当たり200ベ 表示,加工食品の原料原産地表示の拡大も審議。 クレル,野菜類,穀類,肉・卵・魚・その他が同 12年6月までに合計10回の会合で報告書をまとめ 500ベクレルだ。この基準をもとにこれら5分類の る。会合では委員から原料原産地表示について分 食品を均等に摂取した場合,年間のセシウム137 科会を設けるべきなど運営についての意見が出る 摂取量は5ミリシーベルトとなる。5ミリシーベ など波乱含みのスタートとなった。 ルトは1985年に国際放射線防護委員会(ICRP) 消費者庁は09年に設置,表示については農林水 が出した「公衆の年間実効線量当量を5ミリシー 産省,厚生労働省などから移管され,特定保健用 ベルトから1ミリシーベルトに変更する」とした 食品の認可などを進めながら,栄養表示,健康食 パリ声明が国内法に組み込まれる以前の線量限度 品の表示,原料原産地表示の個別の制度も見直し で,緊急時の介入における全身への下限線量レベ てきた。一方で消費者庁内部で表示の一元化に向 ル。つまり,これを超えるような事態が発生すれ けて課題を把握,整理していたため,栄養表示, ば行政の介入が必要だという数値だ。 健康食品,原料原産地表示の検討も明確な結論が 今回の福島第一原発事故はある程度の被ばくは 出ないまま一元化検討会に申し送りとなった。 避けられない緊急時に相当するといってよい。 食品の表示にはJAS法,食品衛生法,健康増進 また,摂取量を考えた場合,農林水産省が発表 法などが関係している。食品以外も含めた全製品 した「食料需給表」を見ると,例えば1人が1年 を対象にする法律としては,景表法,不公正競争 間に食べる野菜の量は約95kg(08年)。これに対 防止法などがあるが,消費者庁は食品だけに絞っ して,5ミリシーベルトに達するのは1年間で550 て一元化を目指す考えだが,会合では委員から kg の野菜を食べることが必要。もっとも,野菜 「他の法律も検討すべき」などの意見が出ている。 だけではなくさまざまな食品を食べるので一概に 具入り調味料,拡大続く 各社参入で新たな市場 はいえないが,相当量を食べなければ5ミリシーベ 高い汎用性に支持 ルトに達しないのだ。 食べるラー油の登場から2年が経過し,現在は 放射能,特に低線量放射線の問題がやっかいな その簡便性,手軽さなどから具入り調味料はさま 食品と容器 710 (日食 2011/10/05 日付) (日食 2011/10/12 日付) 2011 VOL. 52 NO. 11 業界の話題 こともプラスに作用していく可能性が高い。 ざまなジャンルに拡大し新たな市場を形成しつつ 「アグリビジネス創出フェア2011」11月30日から ある。食べるラー油の登場は09年,それまでのラ ー油市場は年間約12億円(液体ラー油メイン)だ 幕張メッセで開催 ったが,現在では126億円を超える規模と10倍以 農林水産・食品産業分野の技術交流展示会「ア 上に急成長した。この急成長を受けて,メーカー グリビジネス創出フェア2011」は,11月30日から 各社は得意とするジャンルで続々と具入り調味料 12月2日にかけて,千葉県・幕張メッセで開催す を発売。現在もそれぞれの商品が好調な業績を残 る。優れた技術や研究成果を持つ179の研究機関 しており,今後の具入り調味料市場の拡大が加工 や民間企業などが出展し,東日本大震災からの復 食品業界をけん引していくか注目される。 旧・復興を支える技術や技術支援の取組みなどを 食べるラー油の発売以降,新たに販売された具 紹介する。 入り調味料はキユーピーの「具入りソース」 ,エバ 今回はビジネスマッチングをさらに強化し,イ ラの「黄金の味 具だくさん」 ,キッコーマンの ベント開催前からサポートを行うほか,会場内に 「サクサク食べる香ばし醤油」,カゴメの「うま辛 サポートデスクを設置して,コーディネーターに ドライトマト」など多岐にわたる。また若干ジャ よる「マッチングサポートツアー」も実施する。 ンルが異なるものの,ヤマサ醤油,ハウス食品, 今年で8回目となる同展は,農林水産・食品産 ミツカンが「ぽん酢ジュレ」を相次いで発売した。 業分野における最新の研究成果や技術シーズを公 これらに共通するのは,消費者の調理負担の低減 開する展示会で,公設試験場,独立行政法人など やタレを残さないこと,さらには冷蔵庫内の調味 179の研究機関や民間企業が参加し,共同研究や 料ボトルを減らす汎用性の高さなどが共通してい ビジネスマッチングなど今後の連携を図っていく。 る。 実際,同展は多くの連携実績を残しており,昨 この背景としては,家庭内食化傾向は続いてい 年のマッチング事例は520件(3月実施した出展 るものの手作り志向の中身に変化がみられる点が 社アンケート調査)にのぼる。今回はマッチング あげられる。近年は醤油,味噌などの基礎調味料 コーディネーターによる連携支援を一層強化。展 が減少傾向にあり,マヨネーズやシーズニングス 示会開催前から開催後までサポートを行うほか, パイス,ハーブソルトなどが増加基調にあった。 会場に設けたサポートカウンターでのコーディネ このような市場環境のタイミングで食べるラー油 ート相談に加え,コーディネーターによる「マッ が登場したことで,具入り調味料の可能性が一気 チングサポートツアー」を実施する。 に高まったといえる。 同時開催の「アグロ・イノベーション2011」と また,具入り調味料は既存の商品とカニバリが 合同し,東日本大震災復興企画展示を行うほか, 起こりにくいという点もメーカー側からの魅力と 参加大学の学生による技術プレゼンテーション いえる。基本調味料ではなく汎用性の高い商品で 「ステューデントカフェ」や,産学連携支援人材 あるため,調理にじっくりと時間をかける消費者 「マッチング・フェロー」などを通じ,多様な連 とのすみ分けができているようだ。 携・交流を促進する。 新たに具入り調味料を発売した各社の販売予測 「アグリビジネス創出フェア2011」開催概要。 などをもとにみると,具入り調味料の年間市場規 ▽開催日時=11月30日∼ 12月2日,午前9:30 ∼ 模は200億円を超え,そのペースによっては250億 午後4:00(開会セレモニー 30日午前9:15 ∼ 円規模を上回ることも考えられる。主要メーカー 午前9:30)▽会場=幕張メッセ展示ホール6▽入 の一部では具入り調味料のシリーズ化も進んでお 場料=無料▽予定入場者=3万人▽アグリビジネ り,バリエーションの豊富さが消費者を刺激する ス創出フェア2011HP=http://agribiz-fair.jp/ 食品と容器 711 (日食 2011/10/19 日付) 2011 VOL. 52 NO. 11 今月の統計 Υ ᖹᖺ್ ᖺ ᖺ ᖺ 㸯᭶ 㸰᭶ 㸱᭶ 㸲᭶ 㸳᭶ 㸴᭶ 㸵᭶ 㸶᭶ 㸷᭶ ➨䠍ᅗ䚷ᖹᆒẼ 䛾᥎⛣䠄䠍䡚䠕᭶䞉ᮾி䠅 ༓N/ ᖺ ᖺ ᖺ ᪂ศ㔝 ⓎἻ㓇 ࣅ࣮ࣝ 㸯᭶ 㸰᭶ 㸱᭶ 㸲᭶ 㸳᭶ 㸴᭶ 㸵᭶ 㸶᭶ 㸷᭶ ➨䠎ᅗ䚷᭶ู䞉䝡䞊䝹䞉ⓎἻ㓇䞉᪂ศ㔝ูㄢ⛯ᩘ㔞᥎⛣ ༓N/ ᖺ ᖺ ᖺ ࣅࣥ ᶡ ⨁ 㸯᭶ 㸰᭶ 㸱᭶ 㸲᭶ 㸳᭶ 㸴᭶ 㸵᭶ 㸶᭶ 㸷᭶ ➨䠏ᅗ䚷䝡䞊䝹䛾᭶ู䞉ᐜჾูㄢ⛯ᩘ㔞᥎⛣㻔ⓎἻ㓇䞉᪂ศ㔝㎸䜏㻕 食品と容器 712 2011 VOL. 52 NO. 11 今月の統計 ⟽ ᖺ ᖺ ᖺ ࡑࡢ ࢫ࣏࣮ࢶ' ⣚Ⲕ ࠾Ⲕ㢮 ᯝᐇ㣧ᩱ Ⅳ㓟㣧ᩱ ࢥ࣮ࣄ࣮ 㸯᭶ 㸰᭶ 㸱᭶ 㸲᭶ 㸳᭶ 㸴᭶ 㸵᭶ 㸶᭶ 㸷᭶ ➨䠐ᅗ䚷Ύᾴ㣧ᩱ⨁䛾᭶ู䞉せရ✀ู⏕⏘᥎⛣ ➨䠍⾲ ᖺ㸯㹼㸷᭶ ࣅ࣮ࣝㄢ⛯ᩘ㔞ࡢ๓ᮇẚ㺃ᵓᡂẚ㸪ᐜ㔞࣮࣋ࢫⓎἻ㓇࣭᪂ศ㔝㎸ࡳ ๓ᮇẚ ᵓᡂẚ ๓ᖺᵓᡂẚ ྜィ ᐜჾู㸣 ⨁ ᶡ ➨㸰⾲ᖺ㸯㹼㸷᭶ ๓ᮇẚ ᵓᡂẚ ๓ᖺᵓᡂẚ ྜィ ࢥ࣮ࣄ࣮ ➨㻌䠏㻌⾲ ࣅࣥ ๓ᮇẚ ᵓᡂẚ ๓ᖺᵓᡂẚ Ύᾴ㣧ᩱ⨁⏕⏘ᐇ⦼ࡢ๓ᮇẚ࣭ᵓᡂẚ㸪⟽ᩘ࣮࣋ࢫ ရࠉࠉ✀ ࠉู㸣 Ⅳ㓟㣧ᩱ ᯝᐇ㣧ᩱ ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ᭶㛫 ୗ᪪ ᭶㛫 㻝㻜᭶ ୖ᪪ ୰᪪ ࠉὀ㸧ᖹᖺ್ࡣᖺ㹼ᖺࡢ᭶㸪᪪ᖹᆒ್ 食品と容器 ࠾Ⲕ㢮 ⣚ࠉⲔ ᖹᆒẼ 㸪㝆Ỉ㔞㸪 ᪥↷㛫 ᖹ ᆒࠉẼࠉ 㸦Υ㸧 ᖹᖺᕪ ๓ᖺᕪ 㻞㻜㻝㻜ᖺ㻝㻜᭶ 㻝㻝᭶ 㻝㻞᭶ 㻞㻜㻝㻝ᖺ㻌㻌㻝᭶ 㻞᭶ 㻟᭶ 㻠᭶ 㻡᭶ 㻢᭶ 㻣᭶ 㻤᭶ 㻥᭶ ࣅ࣮࣭ࣝⓎἻ㓇࣭᪂ศ㔝ู㸣 ྜィ ࣅ࣮ࣝ ⓎἻ㓇 ᪂ศ㔝 713 ࠉ ࡑࡢ 㸦᭶୰᪪ࡲ࡛࣭ᮾி㸧 㝆ࠉỈࠉ 㔞 㸦PP㸧 ᖹᖺẚ ๓ᖺẚ ࢫ࣏࣮ࢶ' ᪥↷ࠉࠉ㛫 㸦㹦㸧 ᖹᖺẚ ๓ᖺẚ 2011 VOL. 52 NO. 11 最近の技術雑誌から ̍ᆍ᩻ʍంթ╖ᯨقጇΟඋᒓɫ៖ា̍ᆍ᩻ʊכ 国 ਈ 内 ဩ 編 ʩᎻʟᬫʊᄤੜɸʘɬΟ᮴ʇʎ╖ƃƃƃƃƃᐁᭂᧅ ɜព៥ɝ特集 ―食品施設を脅かす衛生管理の焦点― ಏԗ┠┙┛┛┨┄17─²±━µ²╖¶³─ ²²━┆ Ⱦᯨقఆឮʊྂۦɸʪ೮̀ˏ˅╖̍᧖ጫʉʈʍᆿ ʊᇗᆾɶɾ˞̎˕́ˋˡ˜̎ˍ˽̉╖ ခ ౸ ̡ ซ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ᱝͥᦿ Ⱦᯨقఆឮʍ˥̎˟ʍ໑̍๎ᗕ╖ᯨقఆឮʍᄉጫႾ ɜព៥ɝ米の炊飯過程における水分分布の視覚的・定量 ʍɔᆿɕʇ՞ೖᆔʉࡩጐА╖䈈䈈䈈䈈䈈ంװӍ 的把握 ᰖʞʈʩ┒ఖಢᯨقቿࠜँࠜϥ៕┄58─²±━¶±· ɜព៥ɝ年間特集―食品の品質保証技術― ╖¶²±─ ²²━┆ ᯨقീᝀᑝ┄48─²±━¶µ╖¶¹─ ²²━┆ ȾᯨقւᝀʍឮឞוʒᝒʊɩɰʪᯨࠪقӂʍɾʠʍԳ ۰ ᅋ ̡ ् ୯ϗ˭̃ˆ˿˶䈈䈈䈈䈈䈈䈈ށᡬদ̍ࢡף ֬ ɜព៥ɝポリフェノールはなぜ効くのか/Why polyphe- ู̡݈ᆎ nols are almighty? ᇻྙहवۭ̍ͫ ┒ˡ˻̎˫̎˟ʺ̉˖ˏ˞̀̎┄ ɜព៥ɝ特集―食品新素材Ⅱ/「売れる商品」に隠され 53─²±━µµ╖µ¹─ ²²━┆ た食品新素材の特徴と評価― ᯨँقඋ┄54─³±━µ¶╖¹¶─ ²²¯²±´±━┆ ɜព៥ɝ新鮮野菜および調理野菜の食する時点における ビタミンC量 ȾంຼᗗࠍᎫಲɔ˾̎ˆ́˞˰̎ˏ˞ɕ䈈䈈ປᨂ੶ͥ ށᑼ̍ࠍح༠ᦱዞࠍ̍Үᝃᑬ̍ಢᏯࠍ̍൛ࢡͪ Ⱦ˭̃˦ʺˀ˜ʹ˅ˏ/.0¶²³ʍ˳̀ʸ˵̉ʱςɶɾ вѪ՞ೖ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ೋಢҴ ֞┒ఖಢᯨقቿࠜँࠜϥ៕┄58─²±━µºº╖¶±µ Ⱦᱝᵱϥʊࡩড়ʆɬʪంɶɣᯨقᎫಲ╖Ζ᧦ᗕ+·² ─ ²²━┆ ʍᒐ֊ԧЀᄍʇɼʍၔ৷ʊʃɣʅ╖䈈䈈ಟҮू࠷ Ⱦˣ˄࢙ᯨಲʍంᄉϹᓧໍᄍʊʧʪᱝᓧᯨقʍᄉ ɜព៥ɝ健康素材シリーズ/脳機能改善素材の開発 ᄊ૮ᆌ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ಳআᜓ ᐁᭂᧅ┒ᯨقʇᆌ┄46─²±━·¶╖¸³─ ²²━┆ Ⱦ˼ˡ̎˅ʉၔᢑʱʡʂɾ፥ྛ፫ʍᆌʇԢᄍᓧ৷ ௴ ࿁ ۹ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ᙸᄑᇀࠍ ౡ Ⱦᵋށᡉኚᆣʾ˃ˏ─˅̃˴ˡ̉㼹²±━ʍᓧ৷┅ខ ᓧٴʇᑬࡄ՞ೖ┅ ɜព៥ɝ特集1―3つの事例から学ぶノロウイルス食中 毒・感染症対策― ɜព៥ɝ特集 ―価格競争で値上げも打ち消し?!/市場 ᡅףՏ┒ބᯨʇѪ॓┄55─²±━¹╖²º─ ²²━┆ 対応求められるみそ業界みそ/みそ本来の価値を見 /みそ本来の価値を見定め ɜព៥ɝ特集―いま食品安全を考える― 定めた訴求,販売へ― た訴求,販売へ− Ᏼᯨ┄ق35─¶━µ¸╖¶¸─ ²²¯²±━┆ ᯨقʇቿࠜ┄53─²±━·²╖¸´─ ²²━┆ Ⱦᯨࠪقӂʍˍˏ˜˶ʊࡩɸʪ០ព䈈䈈䈈䈈䈈ٙಟᖓన ɜព៥ɝ特集1―シーズニングとリアクションフレーバ Ⱦఖಢށ᭝࿔ʆࠜʕɲʇ┅ᯞើ᜴ʱʉɮɸɾʠʊ┅ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ປࢲح ー― ˫̎˟ˇ˵ˁ́┄27─²±━²¸╖µ¹─ ²²━┆ Ⱦ˗̎ːʍᰖʩʇᰖ௶ᆌ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ͼಢह ɜព៥ɝ特集 ―世界が注目する食品安全最前線∼GFSI Ⱦ̃̎ˏ˞ʱಐɸʪˀˡˀ̉ᰖ௶┄௶ءʍᆌ がもたらす変革とは∼― ಏԗ┠┙┛┛┨┄17─²±━²º╖´º─ ²²━┆ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ܝΥ ̎˅ %.ɕ┄ɔ˥ʺ˅˙˅˳̎˅ )-ɕʍᆌ ឮᑝʱ൮ឡ┇²±ಏ²²ఖʍɔ-DSDQ )RRG 6DIHW\ 'D\ɕ ʆ៍ᎲʱؙܫΜ࠳䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ˎʽ̉˅ ᠖ Ⱦɔᡐ˅ˋɴɕʊᇗᆾɶɾంɶɣ௶ءɔ˥ʺ˅˙˅˳ Ⱦɔ*)6,ఖಢ̃̎ˁ́̅̎˃̉ˆˆ́̎˭─ϔኋ━ɕ ˆ̃́ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ಡ ం̍༠ᦲᝃΓ Ⱦ̀ʸ˅ˍ˽̉᎘᧤๖ʾ˃ˏʍం૮䈈䈈䈈ࣽפᝃᒑ Ⱦӂ˲˞̀̉ˆँׄ̍ܬँܬʆ)66&³³±±±៖ ា ৃ כ ╖ׄಲ௶̍ࡄګւᝀˋ˭˿ʺ˺̎ʊʎ*)6,૭៖ ȾႾʍওɣˍ̎ːˡ̉ˆˀʺ́ʍ୯ഛ䈈䈈ࣽޠІͳ ഓʍ៖ាৃכʱКᯈ╖ƃƃƃƃࣃШς̍፥ྙᄒ໙ Ⱦʍˍ̎ːˡ̉ˆ̍̀ʸ˅ˍ˽̉˫̂̎˦̎ Ⱦ,62ᆍ᩻ʸ̉ˇ̎˞┇*)6,૭៖ഓʍ៖ា 食品と容器 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ᐁᭂᧅ 714 2011 VOL. 52 NO. 11 最近の技術雑誌から ɜព៥ɝ価値訴求で市場拡大を図る即席めん/需要期に ઍ 再加速できるかが焦点 ᧘ᯕᯨقᏎឞಏ┄ܫ53─¸━¶¸╖·µ─ ²²¯º━┆ ɜព៥ɝ第1特集―米ビジネスとマーケット― ᯨँقඋ┄54─²º━´´╖·µ─ ²²¯²±²¶━┆ ȾՒँ፥ᯮऐܬʍԔ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ᙸׄഘࠍ ɜព៥ɝ付加価値商品が伸長するベビーフード/新たな Ⱦʮɫ۔ʊɩɰʪ፥፫ᯨقʍᆌ̍וʗʍכʩᎻʞʇ 機能性の訴求に動く ɼʍੜᑵʊʃɣʅ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈፥ฮ௮ ᧘ᯕᯨقᏎឞಏ┄ܫ53─¸━¸²╖¸µ─ ²²¯º━┆ Ⱦ᳙ᢳᝒ፫ʍ፥፫ʗʍכʩᎻʞ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈уࡎຟᦿ Ⱦ፥௮֊ʍࡄݳ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ቾᨂు״ ɜព៥ɝ第2特集―これからの給食市場の考察Ⅱ― ᯨँقඋ┄54─²º━··╖¸²─ ²²¯²±²¶━┆ Ⱦىᯨܞɪʨݥͫʱɋ└Ѫ॓┖┄└შ݄┖ɫρা ర ઍ ̡ ඟ ઍ ʍᯨʍ˃̎˳ʺ̉˞䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈೫ᄑ ɜព៥ɝ特集―食肉・水産加工技術の近況― Ꮿ Ⱦ┟┥┧ͳᄟͥʍىᯨܞʱᆾବɶʅ䈈䈈䈈䈈䈈ᐁᭂᧅ ˎ˹˧̉˫̎˟ˋʺʾ̉ˏ┄50─²±━³²╖µ¹─ ²²━┆ Ⱦᯨᒿ̍ᄊՒँقʗʍށᡉɾʲᆏʍԢᄍ䈈䈈ᕷᄑ ᖚ ɜព៥ɝ段階的食事の共通化とユニバーサルデザインフ Ⱦ᧦᧦̍ءᔶʱɧɾ᧦ˠ˞̀ʼ˶ᝒԺɖ˵ˁ˅˫ʷ ード ʺ̉┲ɗʍᆌ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ໄᄑ᠖ᦿރ ށᢳʑʬ┒ᑉ៊ీ┄ܫ90─²±━²³╖³´─ ²²━┆ Ⱦᯨᒿ┄ᄊՒँقʍࠪӂ̍ࠪʱଉвɸʪ൮˃˙˞ ʊʃɣʅ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈൛ᄑ ᝃ ɜព៥ɝ特集2―第1回 Ⱦᯨᒿ̍ᄊՒँʊɩɰʪӲӻ̍ពӻᝀᑝʍᨁ৷ʍᱝ 食品技術セミナー 講演ハイ ライト― ʝʩ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ࣩᄑܛኤ ˫̎˟ˇ˵ˁ́┄27─²±━·¶╖¹±─ ²²━┆ Ⱦ᭙ពʇʎϺɪ┄᭙ពʱʈɥЋɥɪ䈈䈈䈈ቬ॓އ ȾᯨقીԔʊʧʪᄉໍᒂᅕʍΜ䈈䈈䈈䈈䈈ࡷࣃనࠍ Ⱦᯨᒿ̍ᄊՒँᝒ̍قګᎶς Ⱦˊ˴̍ˊ˴ຝʍᝒʇഅ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈 ۧؓ ȾᏃౘˑ́̃̎ˏɔˑˀ˿ˏ 㼹 ɕʍᓧʇᯊ፯ၤᯨقʗ ʍড়ᄍʊʃɣʅ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ΤءШͥ ۄᆎ ̡ ௧ ഉ Ⱦంᆌɔ˧́ˏ໐թ࢜፯Ηဤᝀᑝɕʊʧʪقᢑٴ ɜព៥ɝ初のマイナスに転じた家庭用R コ ー ヒ ー 市 場 ɩʧʒᄉᄊ৷ͫʊʃɣʅʍ୯ഛ䈈䈈䈈䈈ೋΥ ᕑ /巻き返しなるか,今年の市場 ᧘ᯕᯨقᏎឞಏ┄ܫ53─¸━³╖¸─ ²²¯º━┆ ɜព៥ɝ特集―これからの食品開発を考える― ᯨقʇᆌ┄46─²±━µ╖²¶─ ²²━┆ Ⱦɲʫɪʨʍᓧ৷ᯨقᆌʍ៨ᯌ䈈䈈䈈䈈䈈ఖᨂనࡔ ࠍѨ҈̡ӟһӞһ௴࿁ Ⱦ۔ᄊ᥄ᄊၑʍໍᄍୟʗʍ៨ᯌ䈈䈈䈈䈈䈈䈈ಳᑵన ȾᱝϊՒМђ֊ʍɾʠʍՒँ̍໐ᥱ૮ ɜព៥ɝタイ産パイン缶詰原料,生産回復で安定推移/ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈Τ֝ᧅ៝ͥᦿ 空缶・人件費増などコストアップを懸念 ᧘ᯕᯨقᏎឞಏ┄ܫ53─¸━µ´╖µ·─ ²²¯º━┆ ௴࿁݈ী̡ဲഇ ɜព៥ɝ総点検!!食品企業のイノベーション/「缶つま」 ɜព៥ɝ最近の食品照射の国際動向−欧州食品安全機関 で缶詰市場を活性化/国分のK&K缶詰販売戦略/脱 カテゴリーで新しい販促を展開 (EFSA)の見解を中心に− ᐁᭂᧅ┒Ᏼᯨ┄ق35─¶━´µ╖´¸─ ²²¯²±━┆ פᄑᭁͥ┒ᯨقဆ┄46─²━³¸╖´²─ ²²¯º━┆ ɜព៥ɝ特集―粉粒体機器― ɜព៥ɝ東日本大震災後の缶びん詰,レトルト食品の消 費動向Ⅱ−第2回 ᯨقീᝀᑝ┄48─²±━¶º╖¸·─ ²²━┆ 缶びん詰についての調査− Ⱦ፫ϹɰଶթΗဤʍၔ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ገᨂᖚ ©ªఖಢᑉ៊֩ϥ┒ᑉ៊ీ┄ܫ90─²±━³╖²²─ ²²━┆ ȾᯨقʍࠪӂʱвាɸʪంʍᄴၑᦦԠ૮䈈ᗔฮদ ௴ ࿁ ڵ ȾᯨܬँقʊɩɰʪᄉᆔᏋ፫ឮѹʊʃɣʅ䈈ͫಳдЀ ཥ ɜព៥〕野菜飲料の有機酸の静菌効果および官能評価 ɜព៥ɝ2011年度酒類食品産業の設備投資∼3年ぶりの プラス計画∼/震災の復旧・復興投資も見込む ᧘ᯕᯨقᏎឞಏ┄ܫ53─¸━²¸╖´³─ ²²¯º━┆ 58 ϥ៕┄¶¹─²±━µº±╖µº¶─ ²²━┆ 食品と容器 715 ࠹న̍Ւᙸͥᦿ̍ທಳдͥ┒ఖಢᯨقቿࠜँࠜ 2011 VOL. 52 NO. 11 最近の技術雑誌から Ⱦˌ̍ѻ┇Ւᥴɸʪ۔ᬫ৷ʍᱝɴʡᲃՏʍ┉ʃʊ┇ ┐ʃʍ࢘ʆܫʍžᱝࡋ्֊ſʱۑʪँބʊີᆾ ࡀ ̡ ކಈ ྐ Ⱦ˪˙˅ʸ˙˭Ԏ࢘Ϝඋ┇᭽ಟۓለኴ┳ˬ̃̎ીথ̍ ˲˞́ીথ˔̎̉┵┇࢘ቌϥթʍӑជϥʆીথ࠷ ɜព៥ɝ特集―食品機械用潤滑油の近況― ཱ┇ϥಜԳা؉ʟ┋ఖʊಢʆˑ˵ˠ̎ʡѻ ˎ˹˧̉˫̎˟ˋʺʾ̉ˏ┄50─²±━·²╖·µ─ ²²━┆ Ⱦ˪˙˅ʸ˙˭Ԏ࢘Ϝඋ┇௶ಲᆌ┳ˬ̃̎ીথ̍˲˞ Ⱦᯨقീᄍ྄ཛྷຝʍԢᄍʇʾˏ˜̃̎˿┞䈈ͫᄑ໙״ ́ીথ˔̎̉┵┇Ұܾँܬʊᦞʉ˲˞́ીথ Ⱦᱝ৷ᓧ˫̎˟ˆ̂̎˟྄ཛྷຝɖˁˍ̎˖ɗ ┇˼ˡ̎˅ʉˀ̀ˎˠ́ࡄګʍ˞̎˕́ࡩড়ʡ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈㻔ª̂˙˟ʸ̉˟ʺʾ̃̎ Ⱦ˪˙˅ʸ˙˭Ԏ࢘Ϝඋ┇˫̃̉˜ʹʸ┳ˬ̃̎ીথ̍ ˲˞́ીথ˔̎̉┵┇قݼኚ̍ᱝقᢑˡ̎ːࡩড় ɜព៥ɝ北陸CCBC社が導入した最新・無菌充填ライ ʍంኚ┇˫́̃̎˕̀̎ॾ┊ᤌ८Ϭˬ̃̎ʆ࠷ ンと環境対応 %HYHUDJH -DSDQ┄ Ɖ357 ·¸╖¸²─ ²²¯²±━┆ ཱʡ Ⱦ˪˙˅ʸ˙˭Ԏ࢘Ϝඋ┇˃̀̉˜˅ˤˍˏ˜˶┳ˬ̃ ̎ીথ̍˲˞́ીথ˔̎̉┵┇3 ( 7˲˞́ʍݹឍ ᄵ ࠰ ̡ ၆ ʱ൮┇ᱝᎃ्ʆʡԞಜᢁʎᱝᥴʍ֤Ԕ Ⱦ˪˙˅ʸ˙˭Ԏ࢘Ϝඋ┇˭˿ˉ̎┳ଆԎીথ˔̎̉┵ ɜព៥ɝ特集―深絞り包装機と包装材― ┇ˋ̎˲˸̎˕̎ʍߒՏʱᆌ୷┇ᯨګࡄقʍᄉᆔ ˎ˹˧̉˫̎˟ˋʺʾ̉ˏ┄50─²±━µº╖¶º─ ²²━┆ ȾᯨقՒँʗʍ༈ᏇʩւᝀԢᄍʍႻ䈈䈈䈈ຸ ʉીথʱ࠷Ⴛ ّ Ⱦ˪˙˅ʸ˙˭Ԏ࢘Ϝඋ┇ɲʍʚɪʍʊʉʪԎ࢘Ϝඋ Ⱦ༈Ꮗʩᄍւᝀಲʍ᥎䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ሃΥحቻ ┇ɔւᝀ̍ࡄګɕʍԎ࢘ʎ·±ϗ┇˧ˣ́ʍʞʣˋ Ⱦʍ༈Ꮗʩᄍւᝀಲ ̉˭́࢘ቌʱᦦ૾ɸʪϜඋʡ Ⱦీѻʺ˯̉˞┇ѻᒓϜᄘˑ˵ˠ̎ʎ┍˜̎˴┇ ɜព៥ɝ特集1 ―サステナブル時代の食品包装― ɔ˦ʺˀ˭˿ɕɔ˫ʹ́˶ʇւᝀɕʊᱝʝʪಜহ ᯨقւᝀ┄55─²±━²¸╖´²─ ²²━┆ Ⱦ˭̃˫ʽ˙ˋ̎̍ˏ˪̎˅ˏ┇žˉ˷ɪʨ˭˿ſ࠷Ⴛ ɜព៥ɝ特集─環境と包装─ ֊ʗʍ᎖˫┇ףʽ́˿᧦ɪʨʍᨁʊીՑ┄˦̀ʸ ւᝀ૮┄49─²±━´╖µ´─ ²²━┆ ৷ʡ൮ា䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈Υͥ༒ Ⱦทࣾʊɩɰʪᯯ௶ᄍ˭˿ˏ˗˙˅˲˞́ʍ̀ˋʺ˅́ Ⱦ់ᯌ˅̃̎ːʸ˙˭┇ఖಢᡉΖ֩ϥ┇ʸ́˵ϊɬᎧࡄ ̍̀˼̎ˏʍంթ ګʍˏ˩̎ˋיۋ߂┇ᡉΖᝒقʆɳʞʍ༜ʇᢁ ཆӖԢᄍʍށԕɴ٩ᘔ䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ྙүͥ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ᆏу ధ̍ᨦಟّΓ Ⱦˋ˞ʼ˃˩ɪʨЀʨʫɾ൧ၑᄒಿ˳̀ʾ˗̂̉˫ʹ́ Ⱦ់ᯌ˅̃̎ːʸ˙˭┇ᮂಟಲˆ̀̎̉֩ϥ┇ˀʺ́˧ ˶ɔ%LSUR®3(ɕ 䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈䈈ށᱞ ̎˶ᄊඋʍ࢘ಙʉʈᎶς┇შ݄ࡩড়ʗɔ˦ʺˀˉ̉ న ȾఖಢԞɋ˷ˁˡˁ́̀ˋʺ˅́ຫʊʧʪᯯ௶ᄍ3(7 ˭̂˙˅ˏ߆ىϥɕᆌᢷ ˲˞́वোშʍ࠷Ⴛ┅³±²²श┍ಏɪʨঞ٦قʊ Ⱦˬ˿̉˟ˀ̎ˠ̎ʍରૌ┇ˋ̉˞̀̎ᯨ̎˕̉ʺقˠ ž̀˰˙˞˲˞́ſʇɶʅࡶӁ┅䈈䈈䈈䈈ᱝᄑ࠰দ ˍ˽ˠ́┇˷ˁˡˁ́Ӗᄉ3(7˲˞́ʱ࠷ᄍ֊┇ Ⱦ3(7˲˞́ᄍˍ˻̀̉˅˿˯́┇Իɫɶʣɸɴٴʍ 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○フードエクスポにおけるパッケージアイデアと革新 Packaging Ideas & Innovations in the Spotlight The World of Food Ingredients (Neth.) Apr./May (2011) A.L.Brody ………………………………………112∼114 ○減塩ニーズとメーカーの戦略 Food Engineering (U.S.A.) Vol.83 Aug. (2011) On a“Sodium Drift”Strategy ○第三者監査による食品業界のオープンポリシー N.Childs ……………………………………………10∼13 Third-Party Audits : Adopting an Open-Door Policy ○甘味料による砂糖代替の現状と考察 K.T.Higgins ………………………………………34∼41 Coping with Sweetners ○生産ラインの高速自動ドアテクノロジー A.Birch ……………………………………………14∼17 Options Abound in High-Speed Door Technology ○ヨーロッパのビタミンD不足の現状と処方 J.Koel ………………………………………………43∼50 The Case for Fortifying ○期待される新充填ラインと技術 R.Wyers ……………………………………………46∼49 Expanded Expectaitions ○プロバイオティクスの現状と将来展望 K.T.Higgins ………………………………………53∼59 Future Probiotic Pathways P.Leighton …………………………………………50∼54 Food Processing (U.S.A.) Vol.72 Aug. (2011) ○食品・飲料会社の首位を走るPepsiCo社 The World of Food Ingredients (Neth.) Jun./Jul. (2011) Food Processing Top100 : Pepsico Makes a Splash ○ナノ食品・飲料における法規制の問題 ○新しい原料を利用したアメリカの朝食トレンド Nano-Food Legislation Turmoil Wake Up, America! D.Koltsov …………………………………………16∼18 D.Toops・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53∼60 ○ソース原料の革新 ○減塩食品の開発動向 Sauce Ingredient Secrets Salt Pinches Back D.Fusaro …………………………………………36∼39 T.Barker ……………………………………………19∼20 M.Anthony,Ph.D. and D.Feder,R.D. …… WF3∼WF6 ○パン原料の現在と将来のトレンド ○伸長するプロバイオティクス効能の利用 Baked to Perfection It’ s Alive! Probiotics Are Growing D.Beery ……………………………………………28∼30 D.Feder,R.D. …………………………… WF13∼WF14 ○アレルゲンの管理と機能食品 Allergens and Functional Food Food Manufacture (U.K.) Vol.86 Aug. (2011) R.Crevel ……………………………………………36∼39 ○サプライチェーンの脅威とトレーサビリティーの強化 Weakest Link Food Technology (U.S.A.) Vol.65 Aug. (2011) R.Addy ……………………………………………35∼36 IFT 2011 Annual Meeting & Food Expo Post-Show ○製造業でのエネルギーコスト削減と課題 ○フードエクスポ ハイライト:クリーンラベルと機能食品 Cut Reaction Food Expo Highlights Clean Labels & Functional P.Gander …………………………………………43∼44 Foods ○英国でのハーブ・スパイスの東西からの影響 A.E.Sloan …………………………………………48∼51 Western Promise ○機能性成分の次世代バージョン開発 F.Dawson …………………………………………47∼48 食品と容器 717 2011 VOL. 52 NO. 11 最近の技術雑誌から Prepared Foods (U.S.A.) Vol.180 Aug. (2011) ○シリアル食品のトレンド Food & Beverage Packaging (U.S.A.) Vol.75 Aug. (2011) Slipping Cereals ○飲料メーカートップ50 W.A.Roberts,Jr. ……………………………………19∼24 Caps off to Our Top 50 Beverage Pckagers ○世界の機能性食品の現状と将来 R.Lingle ……………………………………………18∼22 The Future of Physiologically Beneficial Foods ○飲料充填機の最新事情 …………………………………………27∼31 Filling Roundtable:Developments and Advice ○バーベキューの基本要素とスタイル R.Lingle ……………………………………………24∼26 What Makes it Barbecue? …………………………………………33∼39 Journal of Food Science (U.S.A.) Vol.76 Aug. (2011) ○プレバイオティクスとプロバイオティクスの研究 ○食品関連ナノ材料の使用,安全性レビュー Researching Prebiotics and Probiotics A Brief Review of the Occurrence, Use, and Safety M.Spano …………………………………………45∼48 of Food-Related Nanomaterials ○次世代の甘味料 B. A. Magnuson et al. …………………… R126∼R133 Sweetener Ingredients Systems ○ザクロジュースの化学成分,微量栄養素カチオンおよ E.Mannie …………………………………………51∼59 び抗酸化能 Pomegranate (Punica granatum) Juices: Chemical Composition, Micronutrient Cations, and Antioxidant Beverage Industry (U.S.A.) Vol.102 Aug. (2011) Capacity ○エネルギー飲料とショットドリンクの市場状況 Drink and Shots see Energized Sales C. E. Kar et al. …………………………… C795∼C800 J.Jacobsen ………………………………………12∼18 ○有機酸の使用による有機栽培の新鮮リンゴ,レタス上 ○サプライチェーンに求められるサステナビリティー の大腸菌O157:H7 ,ネズミチフス菌およびリステ Sustaining a more Responsible Future リア菌の不活化 Use of Organic Acids to Inactivate Escherichia coli J.Zegler ……………………………………………28∼32 O157:H7, Salmonella Typhimurium, and Listeria ○心臓病の予防に有効な機能性食品と飲料 monocytogenes on Organic Fresh Apples and Lettuce Prevention at the Heart of Health Concerns J.Zegler ……………………………………………50∼53 S. Park et al. ……………………………… M293∼M298 ○味を損なわない減塩飲料の開発 ○模擬的な給食作業条件下での微酸性電解水使用による レタスとトマト上の大腸菌O157:H7の殺菌,低減効果 Taking Down Sodium Content Efficacy of Slightly Acidic Electrolyzed Water in S.Hildebrandt・ ……………………………………54∼55 ○飲料会社の合理的な無人搬送車と自動倉庫 Killing or Reducing Escherichia coli O157:H7 on Warehouses Automate with AGVs Iceberg Lettuce and Tomatoes under Simulated J.Jacobsen ………………………………………64∼65 Food Service Operation Conditions P. Pangloli and Y. Hung Packaging Digest (U.S.A.) Vol.48 Aug. (2011) ………………………………… M361∼M366 ○服薬コンプライアンスのための革新的パッケージ ○クロロゲン酸の抗菌活性と作用メカニズム Compliance Packaging Keeps Patients on Course Antibacterial Activity and Mechanism of Action of D.Vaczek …………………………………………24∼27 Chlorogenic Acid ○パッケージデザインの新しい公募のしくみ(クラウド Z. Lou et al. ……………………………… M398∼M403 ソーシング) ○食用アゾ色素タートラジンがマウスおよびラットの記 憶学習機能に及ぼす影響とメカニズム And the Crowd Goes Wild ! ……………………47∼49 Effect of Food Azo Dye Tartrazine on Learning and Memory Functions in Mice and Rats, and the The Canmaker (U.K.) Vol.24 Aug. (2011) Possible Mechanisms Involved ○食料危機に対する容器包装の役割 Y. Gao et al. ……………………………… T125∼T129 Food for Thought M.Higuera …………………………………………30∼36 食品と容器 718 2011 VOL. 52 NO. 11 嬉しい食材であったし,それが沢山採取できるこ 野菜・果物を巡って と,雑木林の中を歩き回る自由感など,思えば快 適な伸び伸びとした学校生活であった。それまで に経験した戦争中の厳しい時代から解放された喜 (第三十五話) きのこ狩りを楽しんだ頃 びが大きかった頃である。 農家育ちの友人たちにとっては,このきのこが 珍しくもないようで,採取したものはすべて持ち 帰ることになり,豊かな気分で帰宅したものであ る。 表面にぬめりがあり,赤褐色で傘は中心部がや やくぼんだ形をしたきのこであると記憶する。正 式名称はどう呼ぶのか,図鑑で調べても把握でき よし だ き よ こ ずにいる。野生のえのきたけにも表面にぬめりが 吉田 企世子 (女子栄養大学名誉教授) あるので,その仲間かと推察されるが不明である。 人工栽培されている現在の市販えのきたけと野生 久しぶりにまつたけご飯をつくり,その香りと のものは全く異なる形状,色調であることを知る 味を楽しんだ。 人は少なくなっている。 「匂いまつたけ,味しめじ」といわれるように, 採取した「つるつる」はぬめりがあるためか, 食欲をそそる特有の香りが持ち味のまつたけであ 枯葉などが表面に多く付着していて,洗うのに手 るが,用いたのは輸入品でやや香りが弱かった。 間がかかるが食べる時の楽しみが待っているので, しかし,まつたけの美味しさを味わうことができ, それは全く苦にはならなかった。母親はその一部 少々豊かな気分になった。 をたまねぎその他の野菜と共に炒め物に用い,一 きのこは大好物の食材である。しいたけ,しめ 部は味噌汁の具に用いる。時には煮物やきのこご じ,えのきたけ,まいたけ,エリンギなどなど, 飯にと種々の料理をつくって美味しい食事を用意 菌床栽培の技術が進歩して,手ごろな価格で活用 してくれた。滑らかな舌触りと旨味を感じるきの できるのは有り難いことである。野生のきのこの こである。 風味とはかなり異なるが,それでもそれぞれにき 成人して暫くは母校を訪れることなく過ごして のこの風味がある。 いたが,ある時訪ねた折には校舎は新築されて見 きのこの季節を迎えると小学生最後の年のきの 違えるほど立派になり,懐かしい雑木林は全く失 こ狩りを思い出す。第二次世界大戦が終わって間 われて,家屋が立ち並ぶとういう変わりようであ もない頃である。田園の中に建つ校舎の後ろには った。まさに日本の経済高度成長期のたまものそ 雑木林が広がっていて,季節になると沢山のきの のものであった。雑木林がなくなってしまったこ こが顔を出す。きのこの名前はその土地によって とは,大切な思い出が失われたようで寂しい気持 特有の呼び方があるようで,この時採取したもの ちになったことである。 は「つるつる」と呼ばれているきのこで,この地 その後,きのこ狩りに出かける機会は一度もな 方ではこれが一般的であった。お昼休みや下校時 く,また食卓で「つるつる」にであうこともない。 間を利用して,数人のクラスメートと共に裏山に 日本は湿度が高く,気温の高い季節もあるので, 出かけ,きのこ狩りを楽しんだこと,そのきのこ きのこの生育に適しているのである。その種類は の美味しかったことは忘れられない。 多く,きのこと名のつくものは何千種もあるとの 現在の食生活からは全く想像できない,終戦直 こと。そのうち,食用となるのは数百種にのぼる 後の豊かではない時代のことで,野生のきのこは といわれる。毒きのこは更に種類が多く,きのこ 食品と容器 719 2011 VOL. 52 NO. 11 狩りに出かけて毒きのこを採取し,中毒事件を起 その前駆体であるレンチニン酸から生成される。 こす例は毎年耳にする。学生時代に学んだことで 生しいたけにはレンチニン酸が含有されるので, あるが,毒きのこは一般に色調が鮮やかで,漏斗 冷凍保存中に酵素作用によりレンチオニンに変化 状をしているという。しかし,いかにも食用にな するのである。冷凍庫の温度条件では酵素活性は りそうで,実は毒きのこでというものがあるので, 抑えられない。この原理は香りの変化に気づいて きのこ狩りに出かける際は野生のきのこをよく知 から学んだことである。 る人のアドバイスを得ることが必要であろう。 しいたけに含有するエルゴステロールに紫外線 東京で生活をはじめた頃は,きのこといえばし が当たるとビタミンDが生成されるので,干しし いたけで,料理には干ししいたけを用いるのが主 いたけはビタミンDの供給源になるとされてきた。 であった。生しいたけは高価で日常的ではなかっ しかし現在の干ししいたけは太陽の下で乾燥する たのである。干ししいたけも安価ではないが,常 のではなく,人工乾燥によるので,ビタミンDは 備食材として欠かせなかった。現在では生しいた 期待できないといわれる。そこで,家庭では太陽 けも容易に活用できる価格となっている。 の当たるところに1時間程度広げて置くと効果が しいたけは元来,しい,なら,くぬぎ,くり, 期待できるとの研究報告がある。この場合にはひ かしなどの幹に自然発生したのであるが,現在は だのある方,つまり裏側を太陽に当てるのが良い これらの木に人工的にしいたけ菌を植え付けた原 とされている。 木栽培によるものが普及している。中国から輸入 きのこ類には旨味成分のグアニル酸が含まれる される菌床栽培しいたけもかなり市販されている。 が,特に干ししいたけには多く含有するので,重 生しいたけには干ししいたけの有する香りは感 宝に活用している。煮干しで取るだし汁でも干し じられないが,これを冷凍保存すると干ししいた しいたけ1個入れると美味しさがぐんと深まる。 けの香りが生成される。 夏の間は素麺のつけ汁にしばしば用いた。 数十年前になるが,この香りの変化を知って大 しいたけにコレステロールや中性脂肪の上昇を 発見をした気持ちになったことである。生しいた 抑える作用があることは周知されているが,きの けを冷凍するなど,歯ごたえの劣化を思うと行う こ類全般に同様の働きが期待できることである。 べきことではないと思っていたが,冷蔵庫にスペ 鍋料理が美味しい季節を迎えたが,各種のきのこ ースがなく,やむを得ず冷凍したところ,このよ を豊富に用いて,その旨味や香りを楽しみたい。 うな変化を把握したのである。 あわせて健康維持につながるというのは有り難い 干ししいたけの香気成分は主にレンチオニンで, 素材である。 3月11日,東日本大震災が起こり, と地元の人が話していました。 津波で多くの被害が出ました。心が 色々ありながらも穏やかな日々を送っていますが,こ 痛みます。その時から7カ月過ぎた の平凡が有り難い!と改めて感じています。 (嘉) 10月中頃,現場に行き自分の目で確 かめよう!と出かけました。 食 品 と 容 器 第 52 巻 第 11 号 福島県いわき市小名浜,美空ひば FOOD & PACKAGING 平成23年 11月 1 日発行 りが「みだれ髪」で歌う塩屋埼の近くに行きました。瓦 発行所 缶 礫はきれいに片付けられ,穏やかな海が見渡せました。 津波により防波堤が決壊し,コンクリート製の防波堤の 定 価 1部 800円 年間 8,000円 (送 料 共) 一部やテトラポットが陸地内部に転がっていました。見 渡しが良かったのは,そこに建っていた家々が壊れ,土 台だけになっていたからです。 「自分の家が海沿いにあ −禁無断転載− り,流された。津波が押し寄せてくる時のゴーッ!とと 編 集 人 発 行 人 飯 田 塚 嶋 秀 一 夫 雄 印刷所 大和サービス株式会社 乱丁・落丁本はお取り替えいたします。 もに家々がつぶされていく初めて聞く音が衝撃だった」 食品と容器 詰 技 術 研 究 会 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町1−8−4 TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 Eメール:[email protected] 郵便振替 0 0 1 5 0 −0− 4 2 2 1 5 720 2011 VOL. 52 NO. 11