...

-1- 児童生徒の心に響く道徳教育推進事業 ~命を大切にする心を

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

-1- 児童生徒の心に響く道徳教育推進事業 ~命を大切にする心を
児童生徒の心に響く道徳教育推進事業
~命を大切にする心をはぐくむ教育の推進に関する研究~
井川町立井川小学校
1
校長
丸山
研究主題
「共に学び合い,豊かな心と確かな力を身に付けた子どもの育成」
◎「豊かな心」「確かな力」とは
豊かな心(生命尊重の観点から)
○自分のよさを知り,よりよく生きようとする心
○他を思いやり共に生きようとする心
○美しいもの,真実なものに感動できる心
○自他の生命を大切にしようとする心
(自分の命)
(身近な人の命)
(すべての命)
(すべての命)
確かな力(児童に身に付けさせたい力)
○自主・自律の力
○思考・判断力
○コミュニケーション能力
○道徳的実践力
2
◎
道徳教育研究主題
「生命の輝きを豊かに感じ,よいことを進んで実践しようとする子どもの育成」
生命をどうとらえるか(7つの命)
生まれ育つ命
・誕生の喜び
・命があることへの感謝
・自分を生んでくれた両親への敬愛
・命が育まれる環境を大切にする思い
⑵ 共存する命
・人間自体が動物の命
・命の力によって命が育つ…感謝をして「いただく」
・自然へのやさしさは自分へのやさしさ
⑶ つながっている命
・命は命から誕生する(まれな偶然性)
・命をつなげていくことの大切さ…文化,伝統の継続
⑷ 支え合う命
・命は多くの命の中で支えられている
・集団の中での人と人との共生…高め合い,分かち合う
・互いに手を取り合い,支え合って生きる社会
⑸ かがやく命
・自分らしさを見付ける
・自分のよさに気付く
自己実現・生きがいのある人生
・自分の夢をふくらませる
⑹ 守り抜く命
・安心でき,安全で,自分らしさに向かうことのできる場づくり
・自分の健康や生活の在り方を見直す
・自分のことを自律的に行う
⑺ 限りある命
・命には必ず終末がある(生の有限性)
今の命がいとおしくかけがえの
・死の厳粛さ
ないもの
⑴
-1-
陽二
◎各学団でのとらえ(関連価値項目)
生 ま れ育つ 共存する命 つ なが って 支え合う命 かがやく命 守り抜く命 限りある命
命
いる命
低 生 き ている み ん な生 き 支 えら れて 支 え られて 生き てい る だいじな命 生 き ている
喜び
ている
いる命
いる命
喜び
喜び
関
連
価
値
項
目
・ 生 きてい
る 証 を実感
する
3-⑵
・ 元 気に生
活 で きるこ
と を 喜び,
生 命 を大切
にする
3-⑵
・ 自 然の 美
し さ に感 動
し , 動植 物
に 優 しい 心
で接する
3-⑴⑵
・ 家族 の役
に 立つ 喜び
を知る
4-⑵
・ 友 達と仲
よ く し助け
合う
2-⑶
・ 日 ごろ世
話 に なって
い る 人に感
謝する
2-⑷
・素 直に の
びの びと 生
活する
1-⑷
・よ いこ と
と悪 いこ と
の区 別を つ
ける 1-
⑶
・ 健康 や安
全 に気 を付
ける
1-⑴
・ 自分 でや
る べき 事は
し っか りと
行う
1-⑵
中 大切な命
命 の すば ら 支え合う命 支え合う命 今を 大事 に 今 を大 事に 大切な命
しさ
生きる
生きる
関
連
価
値
項
目
・ 生 命の す
ば ら しさ や
不 思 議さ を
知る
3-⑴
・ 生 命ある
も の を大切
にする
3-⑵
・ 家族 みん
な で協 力し
合う
4-⑶
・ 回 りの人
へ の 思いや
り , 信頼,
尊 敬 と感謝
の 気 持ちを
もつ
2-⑵⑶⑷
4-⑴⑷⑹
・自 分で や
ろう と決 め
たこ とは 粘
り強 くや り
遂げる
1-⑶
・正 しい こ
とは 勇気 を
もって行う
1-⑷
・ 自立 ,節
度 のあ る生
活をする
1-⑴
・ 自 分の生
命 の 尊さを
知る
3-⑵
高 か け がえの 命 の すば ら 命 のつ なが 支え合う命 より よく 生 よ りよ く生 か け がえの
ない命
しさ
り
きる
きる
ない命
関
連
価
値
項
目
・ 自 他の生
命 を 尊 重
し , 力強く
生 き 抜こう
とする
3-⑵
・ 自 然環 境
を 保 護し ,
自 然 に学 ぶ
態 度 を身 に
付ける
3-⑴
・ 家族 の幸
せ を求 め,
進 んで 役に
立 つこ とを
する
4-⑸
・ 思 い や ・誠 実, 個
り , 信頼, 性の 伸長 を
友情,寛容,図る
尊 敬 ,感謝 1-⑷⑹
の 気 持ちを ・真 理を 追
もつ
究し ,尊 重
2 - ⑵⑶⑷ する 態度 を
⑸
もつ
・ 人 々の支 1-⑸
え 合 いや助 ・人 間と し
け 合 いで社 ての 在り 方
会 が 成り立 を見 つめ 直
っ て いるこ す
と を 理解す 3-⑶
る
・希 望を も
4-⑶
つこ との 大
・ 国 際理解 切さを知る
と 親 善の大 1-⑵
切 さ を理解
し , 平和を
願 う 心をも
つ
4-⑻
-2-
・ 自分 の生
活 を振 り返
り ,節 制あ
る 行動 を取
る
1-⑴
・ 自分 の責
任 を踏 まえ
た 規律 ある
行動をとる
1-⑶
・ 生 命がか
け が えのな
い も のであ
る こ とを知
り , 生命に
対 す る畏敬
の念をもつ
3-⑵
◎
学年のテーマ
自分の命
3
→
身近な人(家族・友達)の命
→
すべての命
低
学
年
生きていることを実感し,元気に生活しようとする児童
生きている喜び
支えられている命
みんな生きている
だいじな命
中
学
年
命のすばらしさを知り,命あるものを大切にしようとする児童
いまを大事に生きる
支え合う命
命のすばらしさ
大切な命
高
学
年
命のかけがえのなさを知り,自分や回りの人の命を大切にしようとする児童
よりよく生きる
支え合う命
命のすばらしさ
かけがえのない命
命のつながり
研究課題
⑴「道徳の時間」の充実
心の触れ合いを大切にしたり,共に学び合ったりする体験を生かした道徳の授業過程の工
夫や,児童の生命尊重の心情を揺さぶる資料の開発
⑵総合単元的な道徳学習の工夫
児童の意識の流れを大事にした各教科・領域・行事などでの体験を通して,自信や希望を
もって物事に取り組んだり,道徳的実践力を高めたりするための工夫
⑶地域連携と道徳的環境の充実
家庭や地域との連携を深めながら,生命の尊さを実感し,他者への共感や理解を深めたり,
お互いのよさを伝え合ったりすることができる環境づくり
4
研究課題の設定理由
近年の様々に揺れ動く社会情勢の中,「心の豊かさ」が更に重要視されなければならない時
代が訪れている。学校教育においても,「心の教育」や「日常生活における基本的生活習慣の
育成」「望ましい人間関係の確立」が重要視され,道徳教育に求められている課題は大きいと
いえる。自分で判断し,主体的に対処し,道徳的実践のできる児童を育て,課題を解決してい
くことが肝要である。
そこで本研究は,生命尊重を中心に掲げ,全教育活動を通し,各教科の学習活動や様々な領
域での体験活動などとの関連を図りながら,生命の輝きを感じさせたいと考えた。児童に優し
さとたくましさを備えた豊かな心がはぐくまれるよう,きめ細かな支援に努め,そこで培われ
た心を基に,よいことを様々な場面で進んで実践しようとする児童の育成を目指して,本研究
課題を設定した。
<第1年度 研究のポイント>
体験活動等を生かした心に響く道徳教育の推進
<第2年度 研究のポイント>
体験等を生かした心に響く道徳教育を進め,生命を大切にする心をはぐくむ。
(総合単元的な道徳学習の推進)
5 研究計画の概要
<平成17年度>
⑴ 研究体制の確立
⑵ 児童の意識及び実態(道徳性)に関する諸調査・教師の児童観及び願いの収集と分析
⑶ 年間指導計画及び道徳教育全体計画の見直し,学年別の重点指導内容項目,総合単元的
な道徳学習の検討
⑷ 「道徳の時間」の充実(工夫・改善)
⑸ 実践の場の充実(体験活動)
⑹ 心の触れ合いを大切にする家庭・地域との連携
⑺ 道徳教育の評価の方法についての検討
-3-
<平成18年度>
⑴ 研究体制の改善
⑵ 児童の実態(道徳性)の把握及び前年度との比較・分析
⑶ 年間指導計画及び道徳教育全体計画の改善
⑷ 「道徳の時間」の効果的な指導法の研究
⑸ 道徳的価値と各教科・領域,行事等のねらいとの関連を生かした実践活動の推進
(総合単元的な道徳学習の推進)
⑹ 心の触れ合いを深める家庭・地域との連携の推進
⑺ 道徳的環境の充実
6
平成17年度の研究の成果及び課題
仮説
児童たちは,体験活動を重視した活動や,交流の場面や練り合う場面をより充実させた
学習に取り組んだりすることで,他への思いやりや協力,意欲,ねばり強さ,また自他の
命を大切にするなどの「豊かな心」や思考・判断力,表現力,コミュニケーション能力な
どの「確かな力」を身に付けていくことができるのではないだろうか。
⑴
研究体制の確立
道徳の時間,また単元学習的な道徳学習の研究を進めるため,授業研究会,先進校の研究会
への出張,道徳に関する講話や,心のノートの活用についてなどの研修会を中心に行い,職員
内の共通理解を図った。
⑵
児童の意識及び実態(道徳性)に関する諸調査・教師の児童観及び願いの収集と分析
家庭・児童へのアンケート,また道徳性検査の結果から,地域社会や人とのかかわりの中か
ら,生きる喜びを実感できる体験の場を全学校教育の中で設定し,自分のことを好きになるこ
と,自分の存在が大切なものであることを感じられる児童を育てていく必要があるのではない
かと考えた。また,このような自己肯定感を育てていくことが生命尊重の心を育てる土台にな
っていくのではないかと考えた。生命尊重については間接体験が重要となることからも,より
児童の心を揺さぶる資料の開発や授業研究のあり方について探ることの必要性が感じられた。
⑶
年間指導計画及び道徳教育全体計画の見直し,学年別の重点指導内容項目,総合単元的な
道徳学習の検討
学年別に道徳教育の経営案を作成した。項目は各学団のテーマとその設定の理由,具体的方
策についてなどである。また,道徳の時間において児童に身に付けてもらいたいことと,教科,
また総合的な学習や特別活動,学校の行事や地域との交流のねらいをお互いに関係付けながら
学習活動を進めていく取り組みとして,総合単元的な道徳学習を行った。道徳の時間で学んだ
道徳的価値や児童の思いを,更に深めていけるような体験を仕組んでいくことで,自分の思い
を実行に移すことができる力を高める場にしていきたいとも考え,取り組みをしてきた。また
計画表を作成し,各教科や領域内でのかかわりが見えるようにした。
年間指導計画及び道徳教育全体計画については,生命尊重という観点がよりはっきりと関連
付けられるような更なる改善が必要なことが課題となった。
⑷
「道徳の時間」の充実(工夫・改善)
ねらいとする道徳的価値に迫り,授業を魅力あるものにするために,地域の方をゲストティ
ーチャーに招いての授業を実践した。
また,道徳の時間の中で学校や地域での活動で自分がしてきた様々な体験を想起していく場
を設定することで,児童が「命はたった一つしかない大切なものだから元気に生きていこう」,
「自分は様々な人たちに支えられて生きているんだ」「自分の命も,他の人や動物や植物など
生き物の命も大切にしよう」といった道徳的価値や思いを広げていくことができた。
⑸
実践の場の充実(体験活動)
生活科や理科などでのアサガオやサツマイモ,バケツ稲などの栽培活動や,メダカ,昆虫な
どの飼育活動を通して,生命について触れる場を多くすることを心掛けることにより,生命を
大事にする心,また思いやりの心が言動に表れるのを目にすることが多くなった。
⑹
心の触れ合いを大切にする家庭・地域との連携
福祉施設や,こどもセンターなど地域の施設の方々との交流を通して,自分より小さい児童
や,お年寄り,また体の不自由な方が,どんな小さな事でも自分がしたことを喜んでくれたと
いう感動を体験することができた。また,クラブ活動では学習サポーターとして地域の方に指
-4-
導していただくことで,他学年の児童と一緒に活動することの楽しさや目上の方を尊重する態
度を育てることができた。
⑺
道徳教育の評価の方法についての検討
道徳ファイルを準備し,今まで学習したシートなどを保管して,自分が学習したことを振り
返ることができるようにした。また,事前のアンケートや前時での道徳の時間での評価などか
ら評価項目とその方法を具体的に設定し,1時間での児童の変容を見取ることができるように
した。
総合単元的な道徳学習を進めていく上で各教科などとの関連付けが必要になってくるが,そ
の教科独自のねらいと評価からずれがないように,更に指導過程の工夫を図ることの必要性が
感じられた。
<農業委員の方々と田植え(H17)>
7
<サポートチームの方々との安全マップ作り(H18)>
平成18年度の研究の成果及び課題
仮説1
日常の体験活動を生かした道徳の時間の中で,自己の内面を自覚したり,自分と他者と
の考えを比較し,自分の考えを確かめたりするなどの自己を見つめる場を設定することに
よって,児童たちは自分のよさを知り,自信をもってよりよく生きようとする心(自己肯
定感)や,自分の力で思考したり判断したりする力などが身に付くのではないか。
仮説2
学年・学級内でのかかわりの中で,児童たちが自分の思いを素直に表現できる温かな雰
囲気づくりの工夫を行ったり,教科・領域のねらいと道徳的価値(生命尊重)との関連を
図ったりすることを通して,児童たちはお互いの考えやよさを尊重しようとする気持ちを
大切にでき,他を思いやり共に生きようとする心や,お互いに伝え合い,高め合おうとす
る力(コミュニケーション能力)などが身に付くのではないか。
仮説3
学校と家庭,地域が一体となって心の触れ合いを大切にした道徳教育を推進していくこ
とを通して,児童たちは豊かな感性を身に付けたり,自分を取り巻くかかわりの中で自分
が生きていることを実感したりしながら,美しいもの,真実なものに感動できる心,自他
の生命を大切にする心や,よいことは進んで実践しようとする力(道徳的実践力)などが
身に付くのではないか。
⑴
研究体制の改善
昨年度,地域とも連絡を取り合いながら,児童を町全体で育てていくための協力体制や校内
での体制を更に検討していくことが課題として挙げられた。そこで平成18年度は,新たに授
業研究部,教科連携部,環境広報部と3つの研究専門部会を起こし,それぞれ仮説にかかわる
ところの作業を分担し,進めていく体制を取った。それぞれの部会とは常に連絡を取り合い,
調整しながら研究を進めていくことで,道徳の時間のみならず,教科や校内行事,また家庭・
地域との連携や校内環境の工夫など,様々な方向から道徳教育についての推進を図ることがで
きた。
また,授業研究については学年部単位で進め,学団共通のテーマに基づいての検証授業(総
-5-
合単元的な道徳学習)を各学年2回ずつ計12回行った。指導計画や道徳の時間の指導案など
の検討は,奇数学年,偶数学年に分け,学年の縦のつながりを重視しながら支援と指導の在り
方を検討できるようにした。
教師側からの研究の評価(最高4で評価)では,
「研究によって,教師の資質が向上したか。」
という問いに評価3.3,
「研究組織は,各人の能力が十分生かされるしくみになっていたか。」
でも評価3.3であった。また「学校全体が生命について共通に考えることができた。道徳の
時 間 を 大 事 に し た 実 践 が で き た 。」「 授 業 を 見 合 う こ と で , 優 れ た 資 料 に 出 会 う と と も に , 授
業改善に役立てることができた。」といった成果が挙げられた。
※校内組織
専門部
井川町道徳教育研究推進協議会
井川町道徳教育研究推進委員会
校長
教頭
全体研修会
研究推進委員会
学団部
授業研究部
教科連携部
環境広報部
低学団部
中学団部
高学団部
特 学 部
⑵ 児童の実態(道徳性)の把握及び前年度との比較分析
平成17年10月に実施した児童と家庭を対象とした道徳についてのアンケートの結果で
は,全般的に児童がよいという評価している項目に対して,家庭からの評価にずれがあること
が分かった。さらに,基本的な生活習慣,善悪の判断と勇気などで「よい」と答えている児童
が少なかった。このことから,児童の自己評価の力を高めたり,自主・自律の力を身に付ける
ための指導や支援が必要であることが分かった。
「自分のことが好きですか」という問いに対しては,全体のほぼ半数が「分からない」「ど
ちらでもない」と答えている。自分のことをはっきりと好きとは言い切れない気持ちの児童,
今一歩自分に自信がもてない児童が多いということが分かる。自分を臆せず表現できる温かい
雰囲気づくりの工夫や,地域社会や人とのかかわりの中から,生きる喜びを実感できる体験の
場を全教育活動の中で設定することで,自分のことを好きになること,自分の存在が大切なも
のであることを感ずることができる児童を育てていくことができるのではないか。このような
自己肯定感を育てていくことが生命尊重の心を育てる土台になっていくと考えた。
また,大多数の児童が「命は大事なものである」ととらえているが,その体験の内容につい
ては,本,テレビ,ニュース,映画などを通しての間接体験をほぼ半数の児童が挙げている。
「死んだ人は生き返ると思いますか」との問いに26%の児童が「思う」と答えているのにも,
それらの影響があるのではないだろうか。生命尊重については間接体験が重要となることから
も,より児童の心を揺さぶる資料の開発や授業研究のあり方について探ることの必要性が感じ
られた。
【平成18年度 道徳性検査の結果より(H18.12.18~22に実施)】
A 道徳性の発達水準
全校においては道徳性 SS の平均 53.0
※ 全国平均よりも上回っている (昨年度は53.2)
B
道徳的心情・道徳的判断のABCの出現率
道徳的心情 ・・・ 59 (昨年度67)
道徳的判断 ・・・ 64 (昨年度62)
※ 全校においては道徳的心情・判断とも全国平均を上回っているが,昨年度との比較で
は心情は-6,判断は+2となっている。
C 各視点におけるABC ・・・全国平均値より高かったもの
<学校全体>
○ 主として自分自身に関すること(視点1) 62
○ 主として他の人とのかかわりに関すること(視点2) 62
○ 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること(視点3) 50
○ 主として集団や社会とのかかわりに関すること(視点4) 59
※ 平成18年度は視点3の項目が全国平均より高くなった。(昨年度42)
-6-
【平成18年度
児童・家庭への道徳アンケートの結果より
(H18.11.20~24に実施)】
1 2 3 4 5 6 7 8 910
図1
平 成 18年 度 児 童 の 実 態
勤 労 ・奉 仕
約 束 や 決 ま りを守 った 生 活
生命尊重
自然愛
礼儀
思いやり
善悪の判断と勇気
あ い さ つ ・言 葉 遣 い
勤 勉 ・努 力
42
基本的生活習慣
0%
1 2 3 4 5 6 7 8 910
図2
136
121
159
149
146
179
97
121
162
113
133
131
146
40%
20%
49
12
44
12
33 6
39
17
34 7
23 8
64
18
49
11
112
26 10
92
30
80%
100%
112
105
123
100
129
60%
とてもよい
よい
よ くな い
と て も よ くな い
平 成 17年 度 児 童 の 実 態
勤 労 ・奉 仕
約 束 や 決 ま りを守 った 生 活
生 命 尊 重
自 然 愛
礼 儀
思 い や り
善 悪 の 判 断 と 勇 気
あ い さ つ ・言 葉 遣 い
勤 勉 ・努 力
基 本 的 生 活 習 慣
0%
108
124
144
143
148
116
194
104
117
160
50
20%
159
40%
17
40 10
132
24 8
118
31 13
116
36
8
80
23 11
128
63
12
133
43
15
114
25 9
73
26
60%
80%
100%
134
67
と
よ
よ
と
て もよい
い
くな い
て も よ くな い
前年度の児童へのアンケートと比較して評価がよくなったものは「勤労・奉仕」(+8%),
逆に悪くなったものは「基本的生活習慣」(-6%)「自然愛」(-4%)の項目であった。
総合単元的な道徳学習で,自他とのかかわりを大事にしながら体験的な活動を意識付けて取
り組んだことにより,自分の考えで活動することへの達成感,満足感が育まれ,それが自己評
価を高くしたことにつながったのではないかと考えられる。また,児童の評価が悪いとした項
目については,道徳の時間等で自分の生活や行動を振り返る機会を多く設けたことにより,徐
徐に自己を客観視できるようになってきたことの表れではないかと思われる。<図1・2>
図3
図4
<平成18年度>
<平成17年度>
1 あな た は 自 分 の ことが 好 き で すか
1 あ な た は 自 分 の こ とが 好 き で す か
33%
53%
14%
すき
きらい
どち ら で も な い
44%
48%
すき
き らい
どちらで もな い
8%
「あなたは自分のことが好きですか」という問いに対しては,「きらい」という項目が6%
増,「どちらでもない」という回答が5%増となっている。その理由として「きらい」につい
ては,「分かっているのによくないことをしてしまう」,「弱い立場の人を気遣うことができな
い」,「どちらでもない」については,「好きなようで好きではない」や「好きなところも嫌い
なところもある」といったことが挙げられた。一見結果が悪くなっているようではあるが,こ
のことからも自己を客観的に見つめ,よりよい自分になろうと考えている児童の姿が分かる。
<図3・4>
-7-
1 2 3 4 5 6 7 8 910
図5
平 成 18年 度 家 庭 より
勤 労 ・奉 仕
約 束 や 決 ま りを守 った 生 活
生 命 尊 重
自 然 愛
礼 儀
思 い や り
善 悪 の 判 断 と勇 気
あ い さ つ ・言 葉 遣 い
勤 勉 ・努 力
基 本 的 生 活 習 慣
0%
74
81
102
107
69
190
179
151
48
189
147
80
75
90
178
163
151
45
20%
図6
1 2 3 4 5 6 7 8 910
154
176
40%
60%
12
32 4
23 2
44
7
66
9
137
201
46
3
63
9
58
9
75
17
80%
100%
とて もよい
よい
よ くな い
と て も よ くな い
平 成 17年 度 家 庭 より
勤 労 ・奉 仕
約 束 や 決 ま りを守 った 生 活
生 命 尊 重
自 然 愛
礼 儀
思 い や り
善 悪 の 判 断 と 勇 気
あ い さ つ ・言 葉 遣 い
勤 勉 ・努 力
基 本 的 生 活 習 慣
0%
64
156
93
113
90
46
136
84
69
92
47
20%
64
5
30 4
158
1 80
155
44
0
174
68
1
140
1 30
162
43
1
161
55
3
140
48
9
166
61
15
40%
60%
80%
100%
162
と
よ
よ
と
て もよい
い
くな い
て も よ くな い
児童と家庭のアンケートを比較してみると ,児童よりよい評価となっていた項目は,「善悪
の判断と勇気」(+11%)「思いやり」(+3%)「自然愛」(+3%),「約束や決まりを守っ
た生活」(+8%)である。悪い評価になっていた項目は「基本的生活習慣」(-16%)「勤
勉・努力」(-8%)「礼儀」(-9%)「勤労・奉仕」(-5%)であった。<図5>
また,同時にアンケートでとった「4月当初と比べよくなったところ」は,「思いやり」「生
命尊重」(15名)「 あいさつ・言葉遣い」(12名)であった。
前年度の家庭からのアンケートと比較してみると,よくなった項目は「約束や決まりを守っ
た生活」(+2%)であった。<図6>
道徳学習を通して,価値に対する心情面は育ってきているが,それを実践に移す力はまだ不
十分であると家庭ではとらえているのではないかと思われる。
児童の自主的な活動を推進し,日常生活の場面においても感謝の気持ちで他の人のために自
分から進んで物事に取り組めるよう,機をとらえて働きかけたり,よい行いをした児童は称揚
したりするなどし,自他のよさに気付き,それを生活の中でも実践化できるように,今後も継
続して指導や支援をしていくことが重要であろう。
図7
<平成18年度>
図8
3 命は大事だと思ったこと
<平成17年度>
2 命は大事だと思ったこと
5%
5%
ある
ない
ある
ない
95%
95%
「命は大事だと思ったこと」については前年度とパーセンテージはまったく変わらない。し
かし,その理由の内容については「道徳の時間」「テレビ,新聞等のニュース」がどの学年も
多くなっている。更に「回りの人に自分が大切にされていると感じるとき」「友達が励まして
くれたとき」に命の大事さを考えている児童も見られるなど,回りにも目を向けられるように
-8-
なってきている。<図7・8>
図9
2 自分の考えをみんなの前で話すのは
40%
60%
得意
苦手
総合単元的な道徳学習を通して,自分の考えを
深めたり,友達の考えを聞いたりしていく中で,
「 前 よ り あ ま り 緊 張 し な く な っ た か ら 」「 み ん な
に 考 え を 分 か っ て ほ し い 」「 み ん な の 意 見 を 聞 け
ば納得できる」「自分のためになると思っている」
という理由から発表が得意だとしている児童が増
え て き た 。 し か し,「 緊 張 す る」「 話 し 方 が よ く 分
からない」といった理由から発表に苦手意識をも
つ 児 童 も い る 。 ま た ,「 間 違 っ て い た ら 何 か 言 わ
れそうだ」など,発表の際に聞き手側の態度を非
常に気にしている実態も分かる。このことから,
話し方だけでなく聞き方の指導も重要性をもって
いるということも分かった。 <図9>
⑶
年間指導計画及び道徳教育全体計画の改善
本校で研究のポイントとして掲げている「総合単元的な道徳学習」を推進していくためには,
道徳教育全体計画,また各学年での道徳教育年間指導計画との関連付けの工夫を行うことが必
要となる。
そこで,道徳教育全体計画を見直し,各教科・領域等と道徳の時間の計画や各学団の重点指
導内容項目がはっきりと分かるようにした。各学年では道徳教育経営案を作成し,各学団のテ
ーマ,重点事項と具体的施策,各学期における総合単元的な道徳学習の計画の概要を明記し,
1年間を見通して目指す児童の姿に向け,学習活動を行うことができるように工夫した。
またそれを受けて,各学年の道徳年間指導計画には総合単元的な道徳学習との関連を明記し,
生命尊重以外の価値や他教科・領域とも関連させながら,計画的に学習を進めていくことがで
きた。
<添付資料①・②>
⑷
「道徳の時間」の効果的な指導法の研究
道徳の時間では,価値についてどれだけ自分のこととして考えることができるかが重要にな
ってくるが,「生命尊重」の価値については実体験の伴わないことが多いため,想像したり考
えたりするのは容易ではない。しかし映像や具体物など提示方法を工夫することによって,学
習に対して興味関心をもつことができた。更に身近な体験や生き方を自作資料として提示した
り,学習の導入段階で体験について触れ,そのときの気持ちから学習を展開することで,実践
意欲を高めることができた。
教科の中での話し合いは個々の能力に違いがあるので難しいが,道徳の時間はどの児童も積
極的に意見交換ができる場となっていると感じているようである。体験を生かした学習過程の
工夫や資料の工夫など,道徳の時間が楽しいものとなるように,各学級担任が工夫していった
ことで,児童に自分の考えが認められる達成感や充実感が生まれていったのではないか。
今後は学年の発達段階を踏まえた資料を選択したり,日常体験そのものを資料にしたり,実
物に触れる活動を取り入れたりする学習を更に推進していきたい。また,道徳的価値の理解が
更に深まるよう,道徳の時間のみならず他の学習活動においても,心のノートを適宜活用して
いきたいと考えている。各時間での評価についても,この時間で評価できるものと長い期間で
の評価が必要なものを見極めて行うことの必要性を感じた。
実践例:道徳の時間「でてくるちから」(1年生)
この時間では実際の体験を基にそのときの気持ち
から学習を展開した。
導入では,体を動かしながら「手のひらを太陽に」
を歌い,資料の動作化にスムーズにつながるように
留意した。資料「でてくるちから」は紙芝居の後模
造紙で提示し,体を動かしながら音読した。おんぶ
やタオルしぼりなど一つ一つの動きを実際にやって
もらい,体のどこに力が入るか,全員で確認した。
肩・うで・手首など自分たちの体のことなので,
たくさんの発言が得られた。
「この力はどうやって出てくるのか」という発問
<タオルをしぼってみるよ>
には,「がんばろうと思って」「力を入れて」「ふんばって」という声があった。
しかし,力を出すことがよく分からないという児童も多かったので,マラソン大会の写真や
作文を紹介したところ,自分の気持ちが鮮明によみがえって「もう少しと思って力を出した」
-9-
「どうすれば1位になれるか考えて走った」という発言も出てきた。力というのは筋肉から出
てくるだけでなく,自分で思ったり考えたりして,心や身体からわき出てくるものであると感
じることができた。資料ではこれを「ふしぎなちから」と表している。
展開後段では,この「ふしぎなちから」で「いつも自分たちがしていること」
(できること)
や「もっとやってみたいこと」を聞いてみた。はじめはとまどっていた児童も,日常の様々な
ことだと気付くと「朝元気に起きている」「おいしくご飯を食べる」「本を読むこともできる」
などと話していた。これがすなわち「生きている」ことである。児童は,自分たちがもってい
る様々な力で何でもやってみようとする気持ちを自分なりに考え,表現することができた。
終末には,心のノートにある「元気パワーカード」を紹介して,元気に活動できたときに記
入することを知らせ,事後の日常活動や学級活動の時間にも継続して取り組んだ。
実践例:道徳の時間「弱気は最大の敵」(5年生)
この時間では,自作資料(津田投手の生涯)を基にし
て学習過程を展開した。
授業の導入では,今回の甲子園大会に出場した津田投
手の母校南陽工業の紹介ビデオを見て,略歴や「脳腫瘍」
について押さえたことで,主人公に対して真摯な気持ち
をもちながら資料に入ることができた。
展開前段では,中心発問で十分に時間をとり,主人公
の 気 持 ち の 変 化 を 考 え た 。「 絶 望 し た 津 田 投 手 に が ん ば
ろ う と 思 わ せ た も の は 何 か 。」 と 聞 い た と こ ろ ,「 も う
一 度 野 球 が や り た い か ら 」「 一 緒 に が ん ば っ て く れ た 奥
さんのため」「かつてのチームメイトが励ましてくれ
<主人公の気持ちを考える活動>
たから」などが出てきた。ここから一歩踏み
込んで「自分の気持ちや回りの人の支えだけ
で 本 当 に が ん ば り 切 れ る だ ろ う か 。」 と 問 い
け,資料を振り返る時間をとったところ,「高
校時代の苦しい経験が生きている」という意
見が出された。この意見によって,日々の努
力が生きる支えになることに気付くことがで
きた。
展開後段では,前向きにがんばった経験を
振り返ることで,主人公の生き方が自分とか
け離れたものではなく共感する部分もあるこ
とや自他のよさにも気付くことができた。
終末では主人公の生涯を短くまとめたビデオ
を視聴し,シートにまとめることで,命を大
切にすることについての考えを深めることが
できた。
<児童の考えを学級通信で紹介>
⑸
道徳的価値と各教科・領域,行事等のねらいとの関連を生かした実践活動の推進
(総合単元的な道徳学習の推進)
昨年度から継続して総合単元的な道徳学習を設定し実践してきたことにより,道徳の時間と
教科や特別活動との関連が明確になり,道徳的価値についての理解をより効果的に深めること
ができた。また,様々な角度から命の大切さを感じ取る活動を仕組むことで,新しい視点から
自分の身の回りを見ることができるようになった。その中での児童の変容を様々な場面で長期
的に見取ることができた。
しかし,積極的に発言できるようになった児童の姿も見られる反面,教師側の考えを想定し
て答えるようにしようとしている姿も見受けられる。自分なりの考えを表現したり,友達の考
えに関心をもって聞いたりするなど,お互いの意見を聞き合える効果的な場の設定が必要とな
ってくる。児童が自由に話し合える雰囲気づくりや自分の考えをもって話を聞いている児童か
ら聞き出す手だての工夫を積み重ねていくことが今後重要となってくるのではないか。
実践例:総合単元的な道徳学習「みんなみんな生きているよ」(2年生)
第1学期には「いのちの大切さをかんじとろう」という総合単元的な道徳学習を設定し,心臓
- 10 -
の音を聴診器で聞いたり,自分が誕生したときの様子
を家族から書いてもらった手紙で読んだりする活動か
ら,命を感じ取り,大切にしていきたいという心情を
培った。一人一人が大切な存在であり,かけがえのな
い命をもっていることを知り,新鮮な驚きと喜びを味
わっていた。
第2学期は,懸命に生きようとする動植物や児童の
の話を通して,命のすばらしさを感じ取り,生きるこ
とを大切に生活していこうという気持ちを育てたいと
考え,「みんなみんな生きているよ」という総合単元
的な道徳学習を設定した。身近に接している小動物や
資料のハムスターについて,絵やペープサートを用い
<学習シート>
ながら考え,動植物も懸命に生きているのだという思
いを深めてきた。
毎日行っている読書タイムでは,「走れ たいよう 天国の草原を」(池田まき子著)を持っ
てきて読む児童がいた。他にも動物たちが懸命に生きている様子が書かれてある本を見付け出
し,友だちに教えたりしていた。道徳の時間では,「命があってよかった」という資料から,か
けがえのない命として存在する自分自身について第 1 学期で学んだことと合わせて,より考え
を深めていくことができた。
実践例:総合単元的な道徳学習「輝く人々PART2 そして自分」(4年生)
体育で取り組んだ「跳び箱運動」では,
今まで一度も跳び箱を跳んだことのない子
どもが,自分の目標をもち目的意識をもっ
て何度も練習したことで,見事跳ぶことが
できた。自分のめあてをもって課題解決の
仕方を工夫しながら最後まで努力しようと
いう態度が育ってきた表れである。
学 習 発 表 会 で は ,「 輝 い て 生 き る と い う
こ と を 伝 え た い 。」「 自 分 も 輝 き た い 。」 と
いう児童の思いから,今まで以上に積極的
に取り組む児童の姿が見られた。せりふや
立居振舞を何度も改善しながら,休み時間
も練習していた。本番では,自分が輝くと
いうことは,回りの友達や見ている人たち
までも幸せな気分にさせることを体全体で
感じることができた。
<総合単元的な道徳学習の計画表>
<学習発表会で>
⑹
心の触れ合いを深める家庭・地域との連携
総合的な学習,また特別活動ではゲストティーチャーに写真や具体物を提示しながらお話し
していただくことで,児童の興味・関心が高まり,総合単元的な道徳学習に対しても積極性が
見られるようになった。
福祉施設やこどもセンターとの交流,また4年生以上の「ふれあい学習(クラブ活動)」な
ど,どの学年でも学習活動の中で交流活動の場を多く仕組むことができた。
また,学習後に自主的に施設を訪問してお年寄りと触れ合う活動を行った児童がいた。よい
行いをしている児童は称揚したり紹介したりすることなどから,自他のよさに気付き,それを
- 11 -
日常生活の中でも生かすことができるように,今後も継続して支援や指導を行っていきたい。
心のノートも十分に活用していくことによって,児童の心情面の高まりを実践力につないで
いくことができるようにしたい。そのためには道徳の時間のみならず,さまざまな学習活動の
場面でより一層活用できるような手だてが必要である。
実践例:学級活動「看護師さん,ようこそ!」(3年生)
学級活動「看護師さん,ようこそ!」の学習では,3大
生活習慣病のことを知り,今から自分自身気をつけること
を理解してもらうことをねらいとした。井川町診療所に勤
務している看護師さんに来ていただき写真や血管の模型を
提示してもらいながら講話をしていただいた。また,道徳
の時間(本時)で使用する資料について理解を深める意味
で,血液のがんや具体的な治療や症状のことも話していた
だいた。写真や具体物等を提示しながら専門的な話をして
もらうことにより,その後の道徳の時間の学習にも,ゲス
トティーチャーのお話を聞いた体験を生かして,積極的に
取り組む姿が見られた。
実践例:総合的な学習「井川のやさしさ再発見~今,わたしたちにできること~」(6年生)
<添付資料③~⑤>
地域の福祉施設について調べたり,施設を訪問し利用者
との触れ合いの時間をもつことによって,様々な立場の方
々を理解したり,ともに生きることの大切さを実感するこ
とができた。
社会科「わたしたちのまちの福祉」で,井川町ではどの
ような考えを基にして,福祉政策が行われているのかを調
べた。道徳の時間では,自分の回りの人々へ目を向けると
ともに,自分のボランティア体験を想起し,身近な人々に
自分ができることはないか考えることができた。学級活動
では「交流の輪を広げよう」をテーマに,交流した福祉施
設へ感謝の気持ちを表すとともに,体験したことや感じたことについて各自でまとめた。
また,児童と施設利用者との交流は単発的なものではなく,継続したものになるよう学習過
程を工夫したことで,今後のボランティア活動にもつなげていこうとする意欲を喚起すること
ができた。
⑺
道徳的環境の充実
総合単元的な道徳学習で児童が感じたことや学んだことを,学年の道徳コーナーで常時掲示
した。また,各学年の総合単元的な道徳学習や行事の様子については,全校の道徳コーナーで
紹介するようにした。
児童は掲示された写真や学習シートを見ながら,自分の活動の様子や友だちの考えをもう一
度確かめるなど,このコーナーは学習後に考えを深めたり,次の学習への意欲を高めたりする,
学習と日常の実践化をつなぐ場となっていた。
そのほかにも児童が友達の意見と比較したり考えを深めたり,家庭にも児童の考えを紹介し
たり,現在学習していることを知らせたりするため,学級通信や事前調査を活用した。限られ
た時間で多様な意見や情報を提供することができ,学習にも効果的に活用することができた。
<全校の道徳コーナー>
<学年の道徳コーナー(1年)>
- 12 -
添付資料④
第6学年1組
道徳の時間学習指導案
指導者
1
主題名
世界の平和を守る
2
資料名
3
主題設定の理由
山田
4-(8)国際理解と親善 (関連価値3-⑵
「義足の聖火ランナー」(出典
東京書籍
副読本
なおみ
生命尊重)
※一部修正)
⑴
価値について
小学生などの未成年者が,被害者や加害者となる人の命を軽んじた悲惨な事件が連日の
ように報道される現在において,自分や周りの人々の命や存在を尊重することはとても重
要なことである。
日本は比較的治安がよく,子どもたちは食糧不足等に苦しむこともなく,何不自由無い
生活を送っている。しかし,世界中には貧困や戦闘などの恐怖に怯えて暮らしている人々
がたくさんいる。中でも,同じ年頃の子どもたちが,貧しさから労働にかり出され学校に
も通えなかったり,戦争の恐怖に震えたり,日々の食事も十分に与えられず栄養失調で命
を落としたりしていることに衝撃を受ける。将来,国際社会を担っていく子どもたちが,
こうした世界の人々の現状に目を向けていくことは不可欠となってくる。
自分が日本人として世界の平和のために何ができるのか国際理解と親善について考え,
進んで実践しようとする心情を育てていくことが大切である。
⑵
子どもについて(男子12名,女子13名,計25名)
本学級の子どもは,比較的穏やかであり,最高学年となって学校行事や縦割り班の活動
などで,会の運営や下級生のお世話などをがんばる姿が見られる。与えられた仕事には,
最後までがんばってやり遂げようとする子が多い。しかし,中には適当なところであきら
めてしまう子もいる。生活の中で自己中心的な言動が見られることがあり,周りの人々を
思いやる気もちや,誰かのために精一杯がんばろうという意識はあまり高まってはいない。
5年生の道徳の授業には,「奇跡の命」という題材で,昨年の新潟県中越地震で,家族
3人が生き埋めとなり,男児が奇跡的に救出された事件を取り上げた。この事件で,多く
の人々が一人の子どもの命を救うために懸命に救出作業に取り組んだことや,助け出され
た時の人々の歓喜の様子から,命の尊さについて考えている。
また,1学期は,「尊い命~つながっている命~」という総合単元的な学習で,国語の
「イースター島にはなぜ森林がないのか」理科の「生き物のくらしとかんきょう」等で生
き物が生きていく上で,自然環境や生態系のバランスが大切であることや,道徳の「サケ
の一生」や「へそのおの話」などで生命のつながりについて学習してきた。
今年度8月に実施した「命に対するアンケート」の結果からは,ほとんどの子どもが「命
は大切なものである。」と感じている。また,曾祖母などの家族の死に直面した経験があ
る子は,全体の3分の2以上いることが分かった。しかし,子どもたちの普段の会話から
は,「 死 に そ う。」「 死 ん で し ま え。」 な ど 簡 単 に 「 死 」 と い う 言 葉 を 口 に し たり , 相 手を
思いやる心に欠けるような言動も見られる。
このような実態から,もっと自分の周りや世界の人々に目を向け,平和を願いながら苦
しんでいる人々を助ける活動に献身的に取り組んでいる人々の生き方にふれることで,自
分たちも,全ての人々の命を大切にし,自分たちにできるボランティア活動等を進んで実
践しようとする心情を育てていきたい。
⑶
資料について
この資料の主人公は,地雷を取り除く活動に献身的に取り組むイギリス人のクリス・ム
ーン氏である。地雷を取り除く作業中に,地雷を踏んで自分の右手足を失ってしまうが,
義足をつけて翌年のロンドンマラソンに参加し,そのことがマスコミに取り上げられるこ
とで,地雷を駆除するためのチャリティーマラソン開催へと広がりを見せることになる。
こうして,たくさんの募金を集めることができ,その後も色々な国でチャリティーマラソ
ンを続けながら,平和の大切さを呼びかけている。
この資料を取り上げることで,戦争の恐ろしさや地雷という恐怖を抱えながら生活して
いる人々の存在に気付かせたい。また,主人公の平和を願い,現在も地雷に苦しめられて
いる人々を救いたいという強い思いにふれさせたい。そして,大きな事故に遭いながらも
くじけずに,過酷なマラソンに挑戦する様子を読みとりながら,なぜそんなにがんばれた
のか,主人公の思いに共感することにより,周りの人々のために自分自身を奮い立たせて
強く生きることについて考えさせたい。さらに,世界のさまざまな困難に苦しむ人々を取
り上げ,こうした人々を救う活動に一生懸命取り組む人々の姿から,自分にもできること
を考えて進んで実践しようとする態度を育てていくことができるのではないかと考える。
⑷
○
支援について
道徳の時間の充実
本時の導入では,長野オリンピックの開会式で最終区間聖火ランナーとして走るクリ
ス・ムーンさんの写真やビデオを提示して,義足を付けていることやどうして彼が聖火
ランナーとなったのか等,問題意識をもたせる。
展開の前段部分では,主人公が右手足を失う原因となった地雷について,写真やデー
ターなどを提示し,地雷の恐ろしさを具体的にイメージして感じることができるように
する。また,義足をつけてマラソンに参加することで,地雷に苦しむ人々を助けようと
する主人公の姿について,どうしてそこまでがんばれるのか,主人公の思いを,自分を
奮い立たせようとするプラス面ばかりでなく,挫けそうになるマイナス面にもスポット
をあてながら共感的に考えさせたい。その際,自分の考えを発言しやすいように,まず
隣の席の児童など2人ぐらいの少人数で話し合い,次にグループや全体で確かめるよう
にする。
展開の後段では,地雷に限らず,世界でさまざまな事情で苦しんでいる人々がいるこ
とを紹介することで,世界の人々の現状へと視野を広げていきたい。
終末では,これらの人々を助けるためにがんばっている他の人々を紹介することによ
り,自分にできることをやってみようとする実践意欲を高められるようにしたい。
○
○
豊かな人間性をはぐくむための活動の推進
これまでに総合的な学習や道徳の時間を中心に,自分の周りの人々へ目を向け,さま
ざまな立場の人を思いやる気もちや,自他の生命の大切さについて考えてきた。
ここでは「地雷」の恐ろしさについて考える際に,まず戦争について理解を深めたい。
そのために,国語の「ヒロシマのうた」や社会の歴史の学習で取り上げる「戦争」など,
各教科と関連させて戦争の恐ろしさについて考え,平和の大切さや命のかけがえなさを
感じることができるようにする。
総合的な学習の時間では,「井川のやさしさ再発見」をテーマに,井川町の福祉につ
いて学習することにより,さまざまな困難にくじけず力強く生きる人々に接したり,こ
れらの施設で働く人々の思いにふれることで,「自分も周りにいる人のために何かやっ
てみたい。」という思いをもたせていきたい。
さらに,心のノートと関連させたり,昨年度,本校で講演を頂いたNPOの活動をし
ている神田先生の「飢餓についての話」を思い出しながら,世界の人々にも目を向けて
国際理解や世界の平和を願う心情を育てることができるようにする。
家庭・地域との連携
児童は,井川町の福祉について,まず家の人に福祉の現状や知っていることについて
話を聞くことにより,関心を高めるようにする。それから施設の見学や交流などの体験
学習を加えることにより,親近感をもって調べ活動等に取り組むことができるようにす
る。
また,学習の様子を通信などで家庭に知らせることにより,家庭の理解と協力を得る
ことができるようにようにする。調べる対象を地域の福祉にすることにより,より身近
な人々に関心を持ち,助け合って生きることの素晴らしさに気付いたり,自らも自分の
周りの人々のために自分にできることを考え,進んで実践しようとする心情を育てるよ
うにする。
4
⑴
⑵
本時の実際
ねらい
地雷を取り除く運動に献身的に取り組む主人公の姿を通して,命の尊さや平和の大切さ
に気付くことができる。
学習の展開
子どもの活動
導
○主な発問
・子どもの思考
教師の支援と評価
1「義足の聖火
ランナー」の
写真を見て話
し合う。
○この写真を見てどんなことに気
付きましたか。
・オリンピックの聖火ランナー
・靴下の色が左右で違う。
・義足をつけている。
・どうして聖火ランナーとして
走ったのだろう。
2
○ 地 雷 に つ い て , ど ん な こ と が 分 ・写真やデータ等の資料を提
かりましたか。
示し,戦争の遺物である地
・地雷は地面に埋められていて,
雷が世界にはまだたくさん
その上を通ると爆発する。
埋められており,それが爆
・戦争が終わっても,まだ地面
発したときの恐怖について
に埋められていて,今でも多
実感できるようにする。
くの人々の命が奪われたり,
体が傷付けられたりしている。
入
資料「義足
の聖火ランナ
ー」を読んで
話し合う。
・長野オリンピックの開会式
で,最終区間聖火ランナー
として走るクリス・ムーン
さんの写真やビデオを提示
して,義足を付けているこ
とやどうして彼が聖火ラン
ナーとなったのか等,問題
意識をもたせる。
○ 地 雷 を 除 去 す る 作 業 中 に , 自 ら ・自分の右手足を失った主人
地雷を踏んで手足を失ったクリ
公の思いについて,自分の
スさんは,どんなことを考えた
考えを発言しやすいよう
でしょうか。
に,まず隣の席などの少人
・自分まで地雷の被害に遭うな
数で話し合うようにする。
んて・・・。
・地雷の恐怖や苦しみがよく分
かった。まだ,やめられない。
展
○ ク リ ス さ ん は , ど う し て ロ ン ド ・挫けそうになるマイナス面
ンマラソンに出場しようと決め
の心情にもふれて,葛藤し
たのでしょうか。
ながらも,地雷に苦しむ人
・このままあきらめたくはない。
々のために,義足を付けて
でも,右手足を失った自分に
懸命にがんばる主人公の強
何ができるのだろう。 ・
い思いに気くことができる
・このまま寝ているより,何か
ようにする。
頑張れる目標が欲しい。
開
○なぜ,クリスさんは過酷なチャリティーマラソンに挑み続けているのでしょうか。
・自分が走ることで,世界中の
人々に戦争や地雷の恐ろしさ
を知って欲しい。
・もっと平和な世界になってほ
しい。
○世界には,その他にもいろいろ
な事情で苦しんでいる人々がい
ます。みなさんはどんな人たち
を知っていますか。
・食糧不足で餓死する人々
・戦争に巻き込まれた難民
・エイズなどの難病と闘う人々
終
末
3教師の説話を
聞く。
○世界平和のために貢献している
人々を紹介します。
・主人公の気持ちを学習シー
トに記入して自分の考えを
確かめ,なぜクリスさんは
そこまで頑張れたのか,平
和を願う強い思いに気付く
ことができるようにする。
評価:義足になっても苦
しんでいる人々のためにが
んばって走り続けるクリス
さんの姿から,命の大切さ
や平和の大切さに気付くこ
とができたか。
(学習シート,表情など)
・地雷以外にも世界中で苦し
んでいる人々の様子が伝わ
るような写真やデータを提
示する。
・さまざまなボランティア活
動を行っている人々にふ
れ,実践意欲を高めるよう
にする。
5
資料分析
<主な場面>
<心の動き>
長野オリンピ
ックの開会式会
場に,義足をつ
けた聖火ランナ
ーが現れる。
この人は,足
に義足を付けて
いるよ。どうし
て聖火ランナー
として走ったの
だろう。
地雷について
の説明。
地雷を取り除
く活動に参加し
ている主人公が
自らも地雷を踏
んでしまい,右
手足を失う。
義足をつけて
チャリティーマ
ラソンに挑み続
ける主人公。
戦争が終わっ
ても,地雷はま
だ地面に埋めら
れたままになっ
ていて,今でも
多くの人の命が
奪われたり,体
が傷付けられた
りしている。
自分まで地雷
の被害に遭うな
んて。このまま
あきらめたくは
ない。でも,右
手足を失った自
分に何ができる
のだろう。
こうしている間
にも地雷に苦し
む人たちがいる。
何とかしたい。
義足をつけて
過酷なマラソン
を走り続けるな
んてすごいな。
どうしてそこ
までがんばれる
のだろう。
それだけ人々
を助けたいと強
く思っているの
だろう。
平和って大切
なことなんだな。
<主な発問>
<道徳的価値>
○この写真を見て
どんなことに気付
きましたか。
福祉
○地雷について,
どんなことが分か
りましたか。
生命尊重
○地雷によって,
右の手足を失っ
たクリスさんは,
どんな気もちに
なったのでしょ
う。
○どうしてロン
ドンマラソンに
出場しようと決
めたのでしょう
か。
○なぜ,クリスさ
んは過酷なチャリ
ティーマラソンに
挑み続けたのでし
ょう。
国際理解・親善
Fly UP