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少子化を止めろ(23) ミクロの視点から見たフランスの少子化対策 一昨年

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少子化を止めろ(23) ミクロの視点から見たフランスの少子化対策 一昨年
少子化を止めろ(23)
ミクロの視点から見たフランスの少子化対策
一昨年、昨年と、フランスで計一カ月強の取材をした。フランスはしばしば「子育て支
援大国」と言われるが、その多くは「国の制度がこんなに整っている」、「これほど多くの
財政投入がなされている」というマクロの視点による言説が多く、生活者・勤労者のミク
ロの視点によるものは少ない。そこで、フランスの一般家庭や従業員および自治体の取り
組みについてヒアリング調査した次第である。
まず、現在わが国で都市部を中心に問題となっている「待機児童」は、パリ周辺でも問
題となっていた。長らく出産ブームが続いており、主に〇~二歳児向けの保育施設の供給
が追い付かないことが背景にある。
では、フランスではこれをどのようにして解決しているのか。自治体が認定する「保育
ママ」が自宅などで一人当たり最高三人までの子どもを預かっている。現在、〇~二歳児
の約二割が保育ママに預けられている。
次に、三歳から五歳までの児童の九五%は、「保育学校」(日本での幼稚園に当たる)に
入学しており、義務教育に近い状況である。働いている親を持つ子どもは保育学校や小学
校の授業が終了した後、放課後児童クラブ(学童保育)や余暇センターと呼ばれる自治体
が運営する受け入れ施設に行くことも出来る。フランスの保育学校や小学校は週休三日制
のため、休みの水曜日や土日、そして長期休暇中にもそれらの施設は提供されている。
パリ市を例にとると、保育学校の放課後には「おやつの時間」があり、市の派遣職員が
子どもの世話をしている。また、小学校では放課後に二つのプログラムを提供している。
一つは、教員などが宿題の指導をしてくれる「エチュード」。もう一つは、音楽、絵画、ス
ポーツなどの専門的な課外活動プログラムである「アトリエブルー」。これらの活動には、
外部の専門指導者など多様な人材が関わっており、その謝礼は市が給付する。
親の負担費用は、参加費およびおやつ代のみで、収入に応じて八段階に分けられている。
例えば、低所得層では一学期に一ユーロ(百三十五円)、高所得層は四十六ユーロ(六千二
百円)だ。その他の経費は、すべて自治体が負担している。例えば「アトリエブルー」一
講座一回につき、指導者に四十ユーロ(五千四百円)支払うことになっている。また、各
自治体は、児童一人当たり年間二十五ユーロ(三千四百円)を助成しており、親は助成金
で文具などを購入しているという。
さらに、保育学校から大学まで、公立であれば教育費は無料だ。こうしたことから、所
得が低い家庭、あるいは親がシングルであっても、子どもを産み育てやすい環境となって
いる。
フランスの男女千二百人を対象とした「生活時間調査」をみると、帰宅時間は半数以上
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の女性が午後六時前、男性でも半数が午後七時頃までに帰宅していた。食事の後片付けは
夫の五割が毎日しており、保育学校の送り迎えも交代でやっていた。
勤労者にとっては、給与と社会保険料の割合は重要な問題だ。フランスで給与百の勤労
者に対して被雇用者(本人)負担は十、会社の社会保険料負担は三十三となっている(日
本では各十三)。本人負担が低いうえに子育て支援サービスも手厚いため、子育てをしてい
る人たちから不平の声は聞こえなかった。
もちろん、フランスにも課題がないわけではない。フランスでは働いている女性の割合
は六四%と高い(日本は四九%)。しかし、男女の平均月収には二五%の差があり、パート
労働者の八〇%は女性だ。フランスでも、男女均等待遇は課題とされている。
最近、日本でもフランスにならって、保育ママの活用により待機児童の問題を解決しよ
うという動きがある。筆者は、基本的には賛成だが、日本では成功しない可能性もあると
考えている。というのも、日仏では安全面に対する親の意識が大きく異なるからだ。わが
国は、消費者が商品・サービスに求める安全水準が諸外国と比べて高いのはしばしば指摘
されるところだ。保育サービスについても同様で、保護者が保育サービスに求める安全水
準はきわめて高い。フランスでは、万が一、事故や怪我があった場合は、保育ママを選任
した親の責任という認識が一般的であり、それでうまく機能している面もあるという点を
念頭に置き、日本に合った制度設計をすべきだ。
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