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2013年3月号 Mitsubishi Fuso Truck of America, Inc.
シリーズ 米国拠点のキーパーソンに聞く グローバル時代を生きる多様性マネジメント 新興国台頭による市場拡大、国境を越えたパートナーシップ、働き方の多様化、マイノリティの登用など、 多くの企業はダイバーシティ(多様性)に富んだ企業環境におかれている。本シリーズでは、各社米国拠点 のキーパーソンへのインタビューを通じ、多様性に対するマネジメントの考え方や取り組みについて、現地 での貴重な体験談等を交えて紹介する。 【第 3 回】 Mitsubishi Fuso Truck of America, Inc. オープンコミュニケーションで組織改革 ブルーム氏は、26年間、商用車業界を経験、中でも在米日系商用車ブランドでのマネジメント経験が評価 され、MFTAのトップとして就任。三菱ふそうトラック・バス株式会社(三菱ふそう)のセールス・アフター セールス本部長であるカイ・ウーヴェ・ザイデンフース氏も「ブルーム氏のリーダーシップの下、MFTAはさ らにビジネスを発展させ、ブランド力を強化していくことができるだろう」と絶大な信頼を置いている。 MFTAに入社して2年。外部から就任した同社の社長として、どのような改革を行ってきたのだろうか。ブル ーム社長にお話を伺った。 ◆MFTAは1985年にアメリカ市場に参入しまし た。その後の変遷について教えてください。 ブルーム:三菱ふそうは日本で1932年に創業、 1985年にアメリカに進出し、2011年に25周年を迎 えました。アメリカ市場参入当初は中型トラック を販売していましたが、現在では小型トラックを 扱っています。2004年にはダイムラーグループの トッド・ブルーム氏 Todd Bloom Mitsubishi Fuso Truck of America, Inc. プレジデント兼CEO シラキュース大学パブリックコミュニケー ション学科にてマーケティング・広告の学士 号取得。1984年から1997年までイタリアの トリノに本社を置くイヴェコのアメリカ支社、 イタリア支社、イギリス支社にて、物流、マ ーケティング、オペレーション等の業務に携 わる。その後1997年にいすゞに入社、アメリ カン・イスズモーターズ・インクの副社長、 ゼネラルモーターズ・イスズ・コマーシャル トラックのマーケティング担当副社長、イス ズ・コマーシャルトラック・オブ・アメリカ のマーケティング&フリートオペレーション 担当副社長を歴任。 2010 年 7 月 に Mitsubishi Fuso Truck of America, Inc.(MFTA)に社長として就任、現 在に至る。 一員として新たな出発をしました。その後、リー マンショックの影響で経済状況が悪化、市場全体 がとても厳しい状況となり、中小企業のオーナー たちもトラックへの投資は控えるようになりまし た。2009年の売上高は、リーマンショック前の 2007年と比べると75%も落ちてしまいました。 2010年には25%上昇しましたが、まだ過去最高レ ベルの売上高には追いついていません。 しかし、われわれはこれからも成長していきま す。なぜなら、三菱ふそうの優れた顧客理解力、 そしてその顧客の期待に常に応える姿勢がありま す。その証となるのが2011年に行われた、ブラン ド別商用トラックの顧客満足度調査で、三菱ふそ うは堂々の3位でした。 現在、ダイムラーのトラックグループには、メ ルセデスベンツ、三菱ふそう、そしてフレートラ イナーの3ブランドがありますが、各ブランドが 占める売上高は三菱ふそうがトップで40%、次に JAMAGAZINE 2013. March 13 3,000ドルも高いじゃないか」と言う顧客がいた とします。そんなとき、このコスト試算を一緒に 行うと、「競合と比べ、7年間で18,687ドルものコ スト削減ができる」ということがひと目でわかり ます。ですから私は冗談で、「3,000ドルしか違わ ないのですか! うちのトラックは18,687ドルも のコスト削減ができるわけですから、うちも値上 げをしなければ!」と笑って言うことができるの メルセデスベンツで38%、そしてフレートライナ です。説得力があるでしょう? ーが22%です。三菱ふそうはダイムラーに対し、 つまり、われわれのメッセージである「ランニ 3つの重要な強みを提供しています。それはアジ ングコストの低さ」をいつなんどきでも貫かなけ ア市場での強み、軽量トラック市場での強み、そ ればならないのです。もしわれわれがこのメッセ してHEVテクノロジーの強みです。三菱ふそう ージを掲げながら、それに見合わない商品を市場 は業績の面でも、ダイムラーグループにはなくて 投入してしまったら、ただちにブランドの信頼が はならない重要な位置を占めているのです。 脅かされてしまいます。どんな素晴らしい商品で 2011年、われわれは商品ラインナップを一新し も、どんな素晴らしい会社でも、どんな素晴らし ました。これから市場は伸びていきます。テクノ いディーラーでも、明確なメッセージとそれを伝 ロジーもどんどん進化していきます。われわれも えていく首尾一貫した道のりがなければ意味を成 アグレッシブに成長していきます。 しません。 ◆アメリカにおける三菱ふそうブランドの差別化 ◆ブルーム社長は、米系以外の商用車メーカーで ポイントはなんでしょうか。 経験を積んでこられました。ドイツが親会社の日 ブルーム:三菱ふそうというブランドの価値、そ 系メーカー三菱ふそうのアメリカ社の社長という れは「ランニングコストの低さ」です。私のバッ ポジションは、どのような点が魅力だったのでし クグラウンドはマーケティングですので、その観 ょうか。 点からお話すると、この点はいかなる場でも徹底 ブルーム:私の商用車メーカーでの経験はフィラ して繰り返し顧客にもディーラーにも伝えていか デルフィアで始まりました。イヴェコというイタ なければならないメッセージです。 リアに本社を置く会社です。イヴェコには1997年 例えば営業を行う際、営業マンはiPadの営業ツ までの14年間勤めたのですが、1989年にEUが統 ールを顧客と一緒に見ながら具体的にコスト計算 合された際には、イヴェコのワールドワイドマー をし「ランニングコストの低さ」を強調します。 ケティングを任されヨーロッパに渡りました。そ 「あなたのドライバーは年間何マイルくらい走行 の後、アメリカに戻り、アメリカンイスズのマー しますか? 30,000マイルですね。トラックのラ ケティングのヘッドとして採用され、同社には イフサイクルは何年くらいですか? 7年ですね。 2010年 初 頭 ま で 勤 め ま し た。 そ し て そ の 年、 ディーゼル燃料のコストは? 1ガロン5ドルです MFTAに入社し、社長兼CEOに就任しました。 ね。トラックにかけるメンテナンスコストはどれ MFTAには、大きな機会があると感じたので くらいですか? 200ドルですね。トラックを何 す。ちょうど三菱ふそうは商品ラインナップを一 台持っていますか? 10台ですね。」 新したタイミングで、私はそれら新商品の展開を このような調子で数字をどんどん入力していく 任されることになっていましたので、大きなチャ のです。 レンジでした。また、私は日系商用車メーカーで 「三菱ふそうのトラックは他のメーカーよりも の経験もありましたし、三菱ふそうのカルチャー 14 JAMAGAZINE 2013. March シリーズ:グローバル時代を生きる多様性マネジメント 解し、行動できるようにすることが大切です。価 値観がグローバルに共有されることで、企業とし ての強みが一層強化されます。ですから、出版物 でも、プレゼンテーションでも、年次総会でも、 あるいは普段の職場でも、常に価値観を隅々まで 浸透させていかなければならないのです。われわ れが直面しているチャレンジについて、その事実、 対応策、従業員の貢献などすべてをオープンにコ ミュニケーションします。 グローバルな環境において非常に大切なのは、 との相性もとても良いと感じていました。さらに 異なるものを理解する能力、異なるものを併せる は、三菱ふそう、そして三菱グループが持つ長い 実現力、そして受容力だと思うのです。これらの 歴史と伝統は、アメリカのみならず世界中で尊敬 要素を最大限活かし、グローバル市場の各地域に されているものですから、MFTAの社長という 適応させ、グローバル全体で底上げしていくこと 機会は私にとって大変エキサイティングなもので が大切なのです。そのためには、密接かつオープ した。 ンなコミュニケーションを欠かしてはいけませ 三菱ふそうというブランド、そして同社の代表 ん。 的なトラック、キャンターという名前は、ブラン ◆ブルーム社長がMFTAに来られてから、どんな ド認知度の高さはもちろんのこと、 「信頼性」や「耐 チャレンジがありましたか? また、特に何か変 久性」 、そして「顧客へのコミットメント」を象 わったことはありますか? 徴するものでした。それはとても特別なことです。 ブルーム:私は、ずっと米国以外の企業で働き、 商用トラックにとって、この信頼性と耐久性とい 海外でも9年間仕事をしました。その経験があり う要素は非常に重要なものです。 ましたので、現地採用のマネージャーと本国の本 ◆三菱ふそうがダイムラーグループの傘下となっ 社との間の関係性をとてもよく理解していまし た際、2つの大きく異なる文化を統合する鍵とな た。ですから、私は現地スタッフのマネジメント ったのはどんな要素でしょうか? やオペレーションの運営のみならず、本社との重 ブルーム:私が三菱ふそうに入ったのは2年前で 要な橋渡し役となることができました。特段、チ すので、この2つの大きく異なる文化の統合は当 ャレンジだと感じたことはないのですが、本社と 時は外部者として見ていました。文化統合に際し、 のコミュニケーションについては意識して強化す まず問いかけるのは次の点です。 るように努めました。この点が私が三菱ふそうに “異なる文化は、障害となるのか機会となるの 来てから変わったことでしょうか。 か?” 何らかの課題・問題を持っている場合、国境に 機会としていくためには、オープンなコミュニ 関係なく密接な対話の継続に努めています。解決 ケーションが絶対的に必要となります。 に向けた良好な関係構築を行うためには、やはり 三菱ふそうのCEOはアルバート・キルヒマン パーソナルなレベルでの人間関係が必要だからで ですが、彼はコミュニケーションを非常に大切に す。今日のビジネス社会は、非個人的になりがち しています。工場や営業拠点を訪れ、従業員たち ですが、ビジネスのすべては個人間の関係づくり 一人ひとりと会話をしています。文化統合でも組 に行き着くのです。トラックを販売するのもそう 織運営全般でも言えることですが、まず組織が向 です。同僚との交流もそうです。われわれ現地と かうゴールや目的について、すべての従業員が理 日本本社間の関係づくりも同様で、個人レベルの JAMAGAZINE 2013. March 15 関係づくりから始まるのです。 2つ目は洞察力です。周囲で何が起こっている ですから、努めて、オープンコミュニケーショ のか、察知し、聴く耳を持ち、鋭敏に対応するこ ンを促進するようにしています。 とができる力です。そのためには、ただ「聞く」 ◆商品開発や改善を行う際、現地の市場ニーズを のではなく、本質を理解し、解決につなげること いかに吸い上げて適合させていくかが重要になっ のできる積極的傾聴が必要です。 てくると思いますが、三菱ふそうは、アメリカ現 最後にコミュニケーション力です。特にグロー 地では開発や生産はしていませんね。アメリカ市 バル社会において、人はあらゆる場所から情報を 場のニーズにとって鍵となるような情報を日本本 収集します。リーダーとして、価値観やめざすゴ 社に伝え、商品開発のような重要意思決定プロセ ールなど、継続的にコミュニケーションを続けて スに影響を与えるためにはどのような努力があり いかなければ、従業員は不必要な情報に気をそら ますか。 されてしまいます。組織としてどんな方向を向い ブルーム:そこがまさにわれわれの弱い点でした。 ているのか、従業員は知りたがっているものです。 例えば「ドライバーはこのトラックをどう思って ですから、例えば噂やニュースで何らかの情報が いるか?」というような基本的な情報の共有さえ 流れた場合、リーダーはそのことについてオープ 不十分でした。アメリカのドライバーは130kg、 ンに、自らの言葉で従業員に伝え、対話をしてい 140kgの巨体で日本製のトラックを運転するわけ かなければいけません。そうすることで、社内に です。彼らにとって座席の快適さはどうでしょ 安心感と自信がよみがえるのです。 う? 私がMFTAの社長に就任したときのエピソー 各市場で必要とされていることがらを、より明 ドです。エクゼクティブオフィスは二階にあり、 確・精緻に伝え、具体的に商品に反映できるのか とても素晴らしく、広々としたオフィスです。そ がポイントです。例えば、アメリカのドライバー こが私のオフィスになると言われました。しかし のニーズに関する情報をグローバルチームで共有 私は言ったのです。「ここでは問題があります」 した場合、オーストラリアやインドネシア、タイ と。すると「なぜですか? 歴代の社長は皆この など、他の地域のマネージャーたちも、それが彼 席に座ってきました」と言われました。そこで私 らの市場でもアドバンテージになる機能だという は尋ねました。「この階に従業員は上がってくる 「気づき」につながることもあるのです。各地の ことがあるのですか?」回答はこうでした。「い マネージャーたちがグローバルに連携して情報を えいえ、誰も上がってきませんから邪魔されるこ 共有すればするほど、良い結果につながります。 とはありません、ご心配なく。」、 「私にとっては、 ですから積極的に、かつ率先してオープンな対 それこそが問題なのです。」 話を促進させる努力が功を奏するのです。 びっくりされましたよ。しかしこれが私のスタ ◆グローバルでのコラボレーションが加速すると イルです。つまり、オープンコミュニケーション さまざまな多様性にも直面します。多様性を活か を促進し、良き聴き手になるためには、自らを孤 しながら組織運営していくためには、グローバル 立させてしまっては有言実行できないのです。こ リーダーはどのような資質を持ち合わせている必 こから私の組織内改革が始まりました。 要があるとお考えですか。 ◆ブルーム社長はとても人を大切にし、積極的に ブルーム:成功するリーダーが持ち合わせている 対話しながら従業員を育成していることが良くわ 資質は3つあると思います。ひとつ目は受容性で かりました。次世代のリーダーを育成するために す。組織のどの役職の人たちとも触れ合い、理解 はどのような点に気を使っていらっしゃいます し合い、共鳴していくことのできる力だと思いま か。 す。 ブルーム:オープンコミュニケーションが有益で 16 JAMAGAZINE 2013. March シリーズ:グローバル時代を生きる多様性マネジメント あることを、身をもって示すことに尽きます。私 です。 が社長として就任したばかりのころは、自身の階 一方でひとつ危険性もあるのです。コミュニケ 級以外の従業員とオープンに対話をするという慣 ーションをオープンにすると、一人ひとりが自分 習はなく、タブーにさえ感じられました。例えば、 自身の言動に責任を持つ必要が出てくるのです。 レベル5の従業員がレベル2の従業員と直接話すと つまり、ゴールや目的を明確に定義すると、それ いうことはなく、レベル2の上司がその上司と話 ぞれの従業員の役割も明確に定義されることにな し、さらにその上司と話し…、という具合でした。 り、ある人が、あるタスクを達成できなかったり ですから、外部者だった私が入社してからは、私 した場合、それははっきりと明るみに出てしまう が社内を歩き回るだけで、従業員たちから「自分 わけです。そのような状況を不快に感じる人もい は何かしでかしたのだろうか?」という警戒心す ます。 ら感じられました。 ◆それを従業員が受け入れたときには組織として しかし私はこのスタイルを止めませんでした。 の生産性が向上するのですね。 むしろ、先ほど述べた通り、受容性を忘れずに相 ブルーム:はい。非常に大きく向上します。しか 手に対して聴く耳を持ち、話の本質を見極めなが し受け入れられず、不快に感じる人たちにとって ら対話を行い、オープンコミュニケーションがい は、残念ながら、この会社は相性の良くない会社 かに怖いものではなく利益となるものであるかを だということになります。そのような人がいた場 見せ続けることに注力しました。 合、その人は組織にとっての弱連結箇所となり、 管理職は従業員にとって威圧的なものであって 他のチームメンバーからも同様に見られることに はいけないのです。受容性が大切だとお伝えした なります。リーダーとしてはそれを認め、対応を のはそういう意味からです。 しなければならない場合もあるでしょう。改革に 例えば業績の上がらない従業員がいたとしま はつきものです。めざすのは、同じような価値観 す。その際、社長が自らその人に電話をして注意 を共有することができるチームを構築していくこ したとしたら、それはとても威圧的に感じられて とですから。そのようなチームが構築できていれ しまうでしょう。このような場合、その従業員の ば、難しい時期でも皆が目的をひとつにしてチャ 直属の上司とその部門のリーダーも含めてミーテ レンジを楽しみながらゴールに向かっていくこと ィングを行い、なぜこの従業員が成功していない ができるのです。 のか、そしてどうしたら「われわれがチームとし ◆商品におけるグローバルでのコラボレーション て」この従業員を支援し伸ばしてあげることがで はいかがでしょうか。国境を越えた他社とのパー きるのかというアプローチで対話をするのです。 トナーシップがトラックという商品に何か反映さ 組織のリーダーであるということは、組織の環 れている特徴はありますか。 境を作るということでもあります。しかしこれは ブルーム:三菱ふそうでは、最良の品質を提供す ひとりではできません。リーダーは、従業員たち るとともに、「ランニングコストの低さ」という を鼓舞し、彼らと対話をし、チームが一丸となっ ポジショニングを徹底するため、グローバルな供 て同じ方向に向かっていくことができるような環 給プラットフォームを実践しています。 境づくりをするのです。そうすることで、次世代 エンジンは非常に小さく高性能な4P10型ディ のリーダーもおのずと育っていくのです。 ーゼルエンジンを使用、これはイタリアのフィア このようなオープンな環境づくりは時間がかか ットと共同開発したものです。排出ガス後処理シ りますから、継続的に一貫した姿勢で行わなけれ ステムはドイツのダイムラーの商標であるブルー ばいけません。しかし、それを重荷と感じるので テックを使用しています。燃料噴射装置はドイツ はなく、対話をエンジョイするという姿勢が大切 のボッシュ製です。トランスミッションは日本の JAMAGAZINE 2013. March 17 三菱ふそうが開発したデュオニックと呼ばれてい け、問題なく動くという安心感から生まれ、それ るものです。これは2つのクラッチが働くのです が何年も続くという安定感から耐久性が証明され が、商用車で使われたのはわれわれのキャンター ます。 が初めてです。組み立てそのものは日本です。こ トラックを運転する人たちは、実は「トラック のようにグローバルな供給パートナーからわれわ 専門家」ではないのです。彼らは、食品業者や物 れのトラックに最適な部品を集積し生産している 流業者などですから、彼らにとってトラックは取 のです。この結果、「ランニングコストの低さ」 り扱うモノを確実に運ぶための必要道具でしかな が実現できているわけです。 いのです。今年の初めに私はオレゴンのベーカリ 例えば競合トラックと比較すると、キャンター ーを訪れたのですが、その担当者は、パンを1斤 の燃費は20%優れています。サービス期間は通常 焼くためにかかる材料費を1/10セントのレベルま 6,000マイルごとですが、キャンターは18,000マイ で正確に知っていましたが、トラックのランニン ルごとで十分です。クオリティにも絶大な自信が グコストについてはほとんど知らないのです。彼 ありますので、保証期間も5年という長期間です。 らにとって、トラックは2番目に高い経費である また、これは新技術ではありませんが、ドライバ というのにです。われわれの顧客は、それぞれの ーの目の前にはマルチ機能ディスプレイが装備さ 専門分野に集中することを求めていますから、ト れ、スピードからエンジン回転数、燃費、その他 ラックの専門家であるわれわれが、トラックに関 ドライバーに必要な情報が、シンプルなフォーマ するすべてのことに対応するという姿勢を貫くの ットですべて表示され、使いやすさの面でも非常 がわれわれの姿勢です。 に優れています。 ◆最後に、ブルーム社長にとってトラックと乗用 【あとがき】 車の大きな違い、特徴はどんな点でしょうか。 確固たるブランドを構築するためには、商品そ ブルーム:トラックは乗用車に比べて情緒面では のものはもちろんのこと、市場に伝えるメッセー なく機能面がすべてという点が大きな特徴です。 ジ、市場へのコミュニケーション方法、ブランド 商用トラックは、モノをA地点からB地点に効率 を代表する従業員やディーラーの一人ひとりの価 よく運ぶことが目的ですから、信頼性と耐久性が 値観に至るまで、一貫したストーリーが描かれな 最も重要な要素です。信頼性は毎朝エンジンをか ければならない。だからこそマーケティング畑の ブルーム氏は、一貫して「ブランドの価値」と「オ ープンコミュニケーション」の大切さを繰り返し 強 調 し て い た の だ。 現 地 生 産 を 行 っ て い な い MFTAにとって、優れたマーケティング・モデル を構築することこそが、成長に繋がる鍵だと言え よう。 (JAMAGAZINE編集室) 18 JAMAGAZINE 2013. 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