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「京都文教大学海外学術研究助成金」交付による海外

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「京都文教大学海外学術研究助成金」交付による海外
「京都文教大学海外学術研究助成金」交付による海外出張報告書(1頁)
2015 年 2 月 16 日提出
申 請 年 度
2014年度 (平成 26 年度)
所 属 学 科
海外出張内容
(種別に○)
臨床心理学科
目的
報告者・職 氏名
間
上記出張期間
の研究・調査等
活 動 経 過
平
15th International Neuropsychoanalysis Congress への参加
訪問国・地域:
アメリカ・ニューヨーク
期
准教授
助成額
300,000 円
2014 年 7 月 22 日(火)~2014 年 7 月 31 日(木)
尾
和
之
・ 学
・ 会
会
議
・ 調 査
・研修/セミナー
9 泊 10 日
7月24日-7月27日・・15th International Neuropsychoanalysis Congress への参加
心理療法家と脳科学者が集まる学際的雰囲気を肌で感じながら参加した。
今年のメインテーマは「Current Neuropsychoanalytic Research(今日の神経精神分
析研究)」であり、神経精神分析のはじまりの地の一つであるニューヨークで開催され
た。昨年度のメインテーマは「神経精神分析の臨床応用」で、神経精神分析の原点を
確かめる大会であったが、今年度はその後さまざまな方向に展開している神経精神分
析研究について、ある特定のテーマに限定せず、今日の研究状況を一堂に会する大会
であった。方法論的には、最先端のテクノロジーを用いた基礎研究から、脳損傷をも
つクライエントへの精神分析的アプローチや精神科薬物療法と精神分析の関係による
臨床研究まで、テーマとしては、うつと葛藤、愛着と依存、身体と自己など、幅広い
研究発表と神経科学と精神分析の視点を突き合わせる活発な議論が行われた。今年度
はとくに「私たちの心理療法に神経科学はどのような影響・恩恵をもたらすのだろうか」
というテーマを抱えながら、参加していた。
日本からの発信として、私たちは「Psychotherapy for an Elderly Woman with
研究・調査
発表等概要
Anosognosia ―Images of Trauma Expressed in Sandplay and the Baumtest」という
タイトルでの発表を行った。この臨床事例研究では、前年度の発表に引き続いて、脳
卒中・認知症により病態失認という神経心理学的症状を呈していた別の事例のイメージ
表現を提示し、神経精神分析的な観点から検討した。クライエントは自らの麻痺や記
憶障害などに無関心であったが、箱庭には病んでいる現実や過去のトラウマが表現さ
れているように見受けられた。バウムテストもまた、無力で傷つきやすい自己像を露
わにした。クライエントの無頓着と見える振る舞いは、自己像の傷つきに耐えがたか
ったクライエントの自己愛的な防衛であるとセラピストは捉え、背後にあるクライエ
ントの悲しみに共感し、コミットした。箱庭やバウムテストでのイメージ表現は幾分
エネルギーを増していき、クライエントは退院となった。本ケースは、神経心理学的
症状を自己愛の傷つきに対する防衛として解釈できた点でKaplan-Solms&
Solms(2000)の『神経精神分析の臨床研究』の中の事例に類似しており、日本からの発
信として、そのようなケースに対するイメージ療法の可能性を発表した。聴衆にもイ
メージの力は伝わったようで、ディスカッションにおいてもこの領域におけるイメー
ジの役割について、新たな発展の可能性が感じられた。
「京都文教大学海外学術研究助成金」交付による海外出張報告書(2頁)
研究・調査発表等々の成果の概要
□ 心理療法と脳科学のコラボレーションについての発表から、この学際領域における最新の
知見を得た。
□ 各国の心理療法家や脳科学者との議論、交流の中から、新たなアイデア・コラボレーション
の可能性が生まれてきた。
□ われわれの活動・発表については、共鳴してくれる臨床家・研究者もおり、帰国後も共同研究
を進めている。
□ 今回の経験を、臨床実践レベルでの臨床心理学(臨床心理士)と精神医学(精神科医)の
実りあるコラボレーションに結びつけていきたい。
研究・調査等の成果発表予定
雑誌論文: 学会で発表したpaperを論文化し、国内外の雑誌に投稿する予定である。
図
書: 本出張に参加した研究グループメンバーによる『ニューロサイコアナリシスへの招
待』が刊行予定である。
シンポジウム・公開講演会等の開催:
今回の学会参加を踏まえ、心理臨床学会の自主シンポジウムや心身臨床学研究会で報
告を行う予定である。
授業時の活用: 本出張で得られた知見を、精神医学やゼミの授業で、大いに活用する。
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