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地 域 薬 局 の 存 在 意 義 を 訴 え 続 け た い
Interview ④ アッセンハイマー慶子 「Central Apotheke」開設者 ドイツ在住薬剤師 薬剤師免許は取得したその国でしか行使できないライセンスだが、 薬剤師に課せられた本来の任務とマインドに国境はない。 日本の薬科大学を卒業し、薬剤師資格取得後、ドイツに渡り、 チュービンゲン大学薬学部大学院を卒業、さらにドイツでも薬 剤師資格を取得し、今、ドイツ南部の小さな町で薬局を経営する アッセンハイマー慶子さん。10年ぶりのインタビューでも、彼女 の強くて確かな薬剤師マインドは健在だった。 ─ 10 年 前 に 慶 子 さ ん の 経 営 す る 環境は大きく変わりました。今、日本 「Central Apotheke」で 初 め て お 目 に も少子高齢化をはじめとする社会背景 かかってから、その後も何度かお会い の影響を受けた医療環境の変化に伴い、 していますが、お変わりありませんね。 町の薬局の在り方が厳しく問われてい と思います。私自身はそもそもそうい る時期にあると聞いていますが、ドイ う考えで、開設した当初から売り上げ アッセンハイマー慶子■ありがとうご ツでも 5、6 年前に似たような状況に 比率如何にかかわらず、処方箋調剤を ざいます。そうおっしゃっていただけ なりました。その後、それぞれの薬局 はじめ OTC 医薬品、化粧品、その他 るとうれしいのですが、 「10年ひと昔」 が模索、試行錯誤を続け、幾分の改善、 をすべて柱と考えて取り扱って薬局を と言いますからねえ(笑)。変わってい 解決の道を見つけながら今日に至って 運営してきましたから、少なくとも見 ないのは、私の地域に根ざした薬局運 いるという感じです。 かけ上は、薬局が厳しい状況にあった 営に対する思い入れぐらいのものです。 チュービンゲン大学の薬学部大学院 の門戸を叩いてドイツに移り住み、そ 時も現在もそんなに変わったというこ ─薬局バッシングのようなものが あったのですか? の後、ドイツ南部のロッテンブルクと 4 地域薬局の存在意義を 訴え続けたい Special いう小さな町で薬局を開設したいき アッセンハイマー慶子■ さつについては、10 年前の『MIL』 ドイツの薬局でも薬局経 のインタビューでお話ししたとおり 営は基本的には処方箋依 で す が、そ れ か ら ま た 10 年 が 経 っ 存の割合が大きかったの て、ドイツに渡って 28 年、「Central ですが、そのあたりに対 Apotheke」開 設 か ら 17 年 と、ず い する風当たりは強かった ぶん時間が経ったなと実感しています。 ですね。本来、薬局が地 なにしろ薬局は娘と同じ「歳」ですか 域でその役割を果たすこ ら…。 とを考えると、処方箋に いずれにしてもここ 10 年の間に、 依存しない体質に転換し ドイツの人口動態とか薬局を取り巻く ていかなければならない MIL vol.60 2014 Summer とはありません。 ただ、売り上げ全体の 8 割を占める 処方箋調剤の利益率が下がったことか に勤務し、学生時代に大 ら経営的に楽にはなっていません。し 学の研究室で知り合った かし、これ以上に処方箋依存体質から 主人(薬剤師)と結婚し 抜け切らないドイツの薬局は、今、と て、主人が経営していた ても苦戦を強いられています。これか 薬局とは別にロッテンブ らの薬局は、本来のあるべき姿をもう ルクに薬局を開きまし 一度考え直し、ここからの脱出を図っ た。この間、どれだけ多 ていく必要があると思います。 くの方々にお世話になっ たことか……。 ─それに対して何か手を打たれてい るのでしょうか? こうした自分自身の経 歴を顧みると、やはり私 は、これからもずっと薬 アッセンハイマー慶子■私の薬局では、 剤師として可能な限り働 ①薬局が地域医療にとってとても大切 き続け、地域の薬局の機 な存在なのだというキャンペーン、② 能を十分に発揮して、地 薬局の仕事の性格からして経営的に大 域の人々の健康づくりや 変であることの積極的なアピール、③ 医療の一翼を担えるよう 「薬局の日」(6 月第二木曜日)を活用 な取り組みをしていきた したプロモーション─を中心にして いと思います。その上で、 地域薬局としての存在を積極的にア 地域社会における薬局の ピールしています。①では定期的にパ 存在意義を訴え続けたい ンフレットを配布していますし、②に ですね。これについては、 ついては薬剤費の仕組みや薬局が存在 私が理事を務めることに しなければならない理由を来局者にこ なった日本コミュニティ とあるごとに説明しています。また、 ファーマシー協会の活動 ③の「薬局の日」は全国の薬局が同一 を通じても実践していき テーマでキャンペーンを繰り広げます。 たいと考えています。 今年は「食品と医薬品との相互作用」 でしたので、店頭でこのテーマに則っ ─日本の若い薬剤師、 たパンフレットを配布しました。 薬学生にメッセージを。 日頃はとにかく患者さんやお客さん の質問に対して、薬の専門家である薬 アッセンハイマー慶子■薬剤師の資格 するとなると、職場においては学んだこ 剤師の立場から必ずこまめに答えるよ を取得したからには、国民のためにも とを応用して対応することが多くなりま うにしています。薬の安全性に関する 生涯、しっかりとしたマインドに裏打ち すが、この場面で役立たない学校での 質問が多いのですが、最近は話題になっ された薬剤師でいてくださいと申し上 勉強はありません。ぜひ一生懸命に勉 たアルミニウムに関する質問が多く、 げたいです。そして医薬品に関すること 学に励んでくださいとお伝えしたいです。 生活者というのは実にその時々のメディ については、きちっとモノが言える薬剤 私自身、今でもいろいろな局面で「もっ アによる健康情報に敏感に反応するも 師になってほしいと思います。 ときちんと勉強しておけばよかった」と のだと思います。薬局薬剤師はそうし 薬学生には、将来、薬剤師として活躍 思うことが少なくないですから(笑)。 た問いかけに、まずは最初の相談窓口 となって専門家として適切に、懇切丁 寧に答えていくことが必要でしょう。 ─これからの抱負をお聞かせくだ アッセンハイマー慶子/Keiko Assenheimer ドイツ・ロッテンブルク セントラルアポテーケ開設者 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会 理事 科大学を経て、さらにドイツの大学院 1986年神戸薬科大学を卒業後、ドイツのチュービンゲン大学薬学部に入学。 大学院卒業後、ドイツの薬局で1年間の実務実習を受け、ドイツの薬剤師国家 試験に合格。製薬メーカー勤務の後、1997年に南ドイツのロッテンブルクに薬 局を開設。地域に根ざした薬局づくりに奮闘中。 (一社)日本コミュニティファー マシー協会の理事としてドイツ薬局視察の受け入れとドイツ薬局関連情報を提供。 で薬学を学びました。そしてデュッセ 連絡先: (一社)日本コミュニティファーマシー協会 http://www.ja-cp.org/ さい。 アッセンハイマー慶子■私は日本の薬 ルドルフの日系製薬会社の欧州駐在所 MIL vol.60 2014 Summer 5