...

モルフォメトリー法を用いた病理組織における 角化性病変の定量化(1

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モルフォメトリー法を用いた病理組織における 角化性病変の定量化(1
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日皮会誌:106
(14), 1895-1902,
1996 (平8)
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角化性病変の定量化(1)
可知 久代
前田 学
北島 康雄
要 旨
緒 言
各種皮膚疾患の診断および治療効果の判定に病理組
皮膚病理組織学的な変化を客観的に定量化すること
織学的な変化を客観的に把握することは,必要不可欠
は,皮膚疾患の診断および治療効果の判定を行う上で
と考えられる.そこで,モルフォメトリー法を用いて
必要不可欠と考えられる.
角化性病理所見の定量化を試みた.角化性病変の組織
しかし,病理組織学的な変化を角質層,角質層以外
標本として,尋常性乾癖,日光角化症および老人性枕
の表皮,間質,膠原線維および皮膚附属器に分類し定
贅を選び,健常皮膚と比較検討した.方法については,
量化した報告はなく,個々の細胞(赤血球,血小板,
一辺が10mmの正方形を10×10個に区切ったグリッド
炎症性細胞)の体積および数を定量化した報告1)
ガラス板を顕微鏡の接眼レンズ下に挿入し,グリッド
あるのみである.そこで,我々は当教室で診断された
の4番目の線が表皮突起先端に当たる様にセットし,
尋常性乾癖,日光角化症,老人性睨贅および健常皮膚
目的とする組織成分(①角質層,②角質層以外の表皮.
③間質④膠原線維,⑤皮膚附属器,⑥その他の6項目
一一 と,グリッド内の組織成分が含まれない角質層上部の
の標本を用いて組織成分を定量化する試みと共に疾患
知見を得たので若干の文献的考察を加えて報告する.
空間部分上のグリッドの交点を数えて定量化した.そ
対 象
の結果,健常部皮膚では角質層,角質層以外の表皮,
対象は尋常性乾癖40例,日光角化症16例,老人性疵
間質,膠原線維,皮膚附属器,その他および空間の占
贅40例および健常皮膚28例の計124例の病理組織標本
める体積は,計測体積あたり各々3.2±5.4%,
2.4%,
16.0±5.4%,
35.4±12.9%,
3)が
別にその成分を比較・検討した.その結果,興味ある
3.7±
4.1±5.3%およ
を用いた.尋常性乾癖は治療前の皮疹を採取した標本
に限定した.これらの疾患の診断は臨床と病理組織所
び29.7±18.0%であった.角質層以外の表皮について
見により行った.健常皮膚として上肢(肘を除く上腕
健常皮膚上肢と疾患を比較したところ,健常皮膚の角
および前腕)より採取した1剖検例と母斑および良性
質層以外の表皮が3.7±2.4%に対し,尋常性乾癖上肢
腫瘍の手術時に得られた健常部の標本28例を用いた.
は9.2±3.0%,日光角化症は10.4±9.8%および老人性
健常皮膚と各疾患を比較するにあたって,年齢および
疵贅は角化型で17.9±5.8%,表皮肥厚型で23.5±
性別を一致させた標本を用いることを基本とし,標本
14.0%であった.これらの結果は,我々が病理組織所
はできる限り年齢,採取部位など忠実に選択した.
見から主観的に得ている情報と矛盾することなく,か
方 法
つより正確に表現していると考えられる.以上の結果
標本は,10%緩衝ホルマリン液で固定した生検試料
から,モルフォメトリー法は,主観的観察による病理
を通常の方法でパラフィン包埋し厚さ4μmで薄切し
所見すなわち表皮の肥厚所見を数量的に示し,かつ本
て作製した.皮下脂肪組織まで採取された生検組織を
方法によって病理組織所見も定量化できることが示唆
選んだ.なおヘマトキシリン・エオジン染色を施し光
された.
顕的に観察した.一辺が実寸10mmの正方形を10×10
個に区切ったグリッドガラス板(Olympus
micrometer
OC-M
⑧直径20.4mm面積10×10m
eyepiece
「)を
顕微鏡の胴体部分に挿入し,対物レンズを4倍に,接
岐阜大学医学部皮膚科学講座(主任 北島康雄教授)
平成8年6月25日受付,平成8年10月23日掲載決定
特掲
眼レンズを10倍にして検鏡した(図1:実際のグリッ
ドの線は極細で写真に撮ると認識できないため,組織
別刷請求先:(〒500)岐阜県岐阜市司町40 岐阜大学
上の線はコンピューター・グラフィックを用い作製し
医学部皮膚科 可知 久代
た).組織にグリッドを当てた時の標本が角質層から少
1896
可知 久代は力ゝ
図1 −辺が実寸10mmの正方形を10×
10個に区切ったグリッドガラス板を顕微
鏡の胴体部分に挿入し、対物レンズを4
倍に接眼レンズを10倍にして皮下脂肪組
織まで採取した生検組織検鏡しか(実際
のグリッドの線は極細で写真に撮ると認
識できないため、組織上の線はコン
ピューター・グラフィックを用い作製し
た).
なくとも脂肪織までがグリッドの中に存在することを
読みとる組織成分の交点の数PTo,
確認したうえで,基底層の表皮突起の先端を上の端か
グリッド内の交点の数FT,,
ら4番目のラインにおき,グリッドの上あるいは下の
測定視野n.
端までの皮膚構成成分を測定した.目的とする組織成
組織成分を角質層,角質層以外の表皮,間質,膠原
分上に位置するグリッドの交点の数を読みとり,合計
線維,皮膚附属器の他に,その他の項目に血管,リン
した数から各々計算式により実体積を求めた.グリッ
パ管,炎症性細胞(浸潤細胞)および皮下脂肪組織成
ドガラス板を顕微鏡の胴体部に挿入し観察するためグ
分を含め全部で6項目に分類し(表1),疾患別に比較
リッドの幅(d)の実寸は1mmであるが,検鏡時のd
した.限定した体積あたりの皮膚構成成分の割合を示
は, 1/40倍に縮小される.よって検鏡時のdは0.025
したため,組織成分の含まれない組織すなわち角層上
mm,グリッドの一マスの面積は,0.000625mm2(625
方の計測グリッド内に含まれる空間の割合を加えて示
μm2)に相当し,一視野あたりのグリッドガラス板の総
した.
面積は0.0625mm2(62,500μm2)となる.組織切片は
結 果
4μmの薄さで作製してあるため,一視野あたりの測定
各疾患の病理組織標本における皮膚構成成分の割合
体積は0.00025mm3(25000μm3)に相当する.測定体
を明確に評価するために,表皮は角質㈲と角質層以外
積あたりの組織体積の占める割合から各々の組織成分
の表皮の項目に分け,真皮は間質,膠原線維,皮膚附
の体積を算出した.1切片で4視野(1視野に100個の
属器に分類し体積を示した.その他の項目には,血管,
グリッドが存在)を測定した.一標本で484交点(ポイ
リンパ管,炎症性細胞(浸潤細胞)および皮下脂肪組
ント)を測定し,エラー係数は15%以下とした.ここ
織成分を含めた.
では, Weibel
y)の提唱した式を用い標本上に存在す
る交点(PT)の数から体積(SV)を求めた.
Weibel
(1)健常人皮膚
健常人において,採取部位により皮膚構成成分が異
らの提唱した理論を以下の式で示す.
なると推測されるため,皮膚前腕および上腕皮膚の2
Ao/A。■
= So/S。,=d2XPTo/n/d2
X PTソn
群に分けて皮膚構成成分を比較した(表2).その結果,
読みとる組織成分の面積A0.
両者間でいずれの成分でも採取部位による有意差はな
1切片の面積At,
かったので,両者のデータを合わせて上肢として,こ
読みとる組織成分の体積S0.
れを健常人皮膚コントロールにした.
1切片の体積s-,.,
角化性病変の定量化
表1 検鏡時に読み取った絹織成分
_
1897
た.
部位別による比較を行ったところ,皮膚附属器の成
l 表皮
a)角質層
分は躯幹で1.9±1.0%,大腿および下腿で2.3±1.6%
b)角質層以外の表皮
であり上肢の6.9±5.1%に比べ有意差がみられた
II 真皮
(p<0.05).下腿の皮膚構成成分のうちその他の成分
a)間質
b)膠原綿維(弾性繊維を含む)
-
は10,2±11.3%であり,上肢(3.6±4.1%)に比べ増
c)皮膚附属器(毛包,皮脂線,立毛筋,汗腺)
Ill その他
加傾向を示した(図3).
次に,尋常性乾癖患者の無疹部と健常皮膚の皮膚構
血管壁・血管内腔,リンパ管・リンパ管内腔,
一
成成分を比較を示しかところ,角質層,角質層以外の
炎症性細胞,皮下脂肪組織
表皮,間質,膠原線維および皮膚附属器において両群
下線は独立してカウントした6項目
間に有意差は見られなかった(図4).
(3)日光角化症
(2)尋常性乾癖
日光角化症と健常皮膚の皮膚構成成分を比較すると
尋常性乾癖の上肢と健常人の上肢におけるモルフォ
日光角化症では,標準偏差(SD)が大きいため日光角
メトリー法を用いた皮膚構成成分の比較では角質層以
化症をさらに病理組織学的診断より,著明な角質増殖
外の表皮成分は尋常性乾癖で9.2±3.0%(表3),健常
を伴う群(以下角質増殖著明群と略)と軽微な角質増
皮膚では3.7上2.4%
殖と伴う群(以下角質増殖軽微群と略)に分けた(表
(表1)であり,尋常性乾癖では
角質層以外の表皮成分は有意に増加していた(p<
4).各々の皮膚構成成分を健常皮膚と比較した.角質
0.001バ図2).尋常性乾癖の膠原線維は44.3±12.7%
増殖著明群と健常皮膚の両群では,角質増殖著明群の
であり健常皮膚の35.4±12.9%に比べ増加傾向がみら
角質層は15.5±11.4%および角質層以外の表皮成分は
れた(p<0.1).なお,尋常性乾癖のその他の成分は健
10.6±9.2%であるのに対し,健常皮膚の角質層は
常皮膚に比べ有意に減少していた.両者間においては,
3.2 + 5.4%,角質層以外の表皮成分は3.7±2.4%であ
角質層,問質および皮膚附属器成分は有意差はなかつ
り,角質層において前者が有意に増加していた(p<
表2 健常人上肢におけるモルフォメトリー法を用いた各皮膚構成成分の体積
表 皮
n
角質層以外の表皮
角質層
前腕
上腕
上肢
21
7
28
真 皮
間質
膠原繊維
皮膚附属器
その他
空隙
2.6士3.8
3、2土2.0
16.8土6.3
33.2土12.8
2.8土2.6
9.3土8.4
32.1%
1.0土1.0
3.2土5.4
5.8士I.4
13.7土4、7
16.0土5.4
46.8土9.2
35.4土12.9
4.2土3.1
4.1土5.3
1.7土1.5
26.8%
29.7%
3.7土2.4
7、9土8.0
(Mean
values土SD)%
表3 尋常成乾癖におけるモルフォメトリー法を用いた各皮膚構成成分の体積
表 皮
n
真 皮
その他
空隙
8.9土6.3
5.1土5.1
18.4%
1.7士1.1
44.3土12.7
4.4士1.2
6.9士5.1
19.2%
18.5%
江O士20.9
16.2土6.5
49.0土10.9
2.8士2.7
7.6土13.1 o%
44.8土n.8
1.9土1.0
2.3土1.4
19.8%
10.3土3.2
51.2土9.3
2.3土1.5
5.5士1.7
17.4%
12.1土4.1
44.8土12.8
2.3士1.6
10.2土11.3
14.9%
15.5土5.6
34.1士10.0
2.8士3.6
3.2土1.4
38.7%
膠原繊維
皮膚附属器
13.2土3.6
41.4士15.8
13.8土6.0
48.0士8.0
9.2土3.0
13.5土4.5
12.6土13.7
4 5.0土2.9
9.2土3.5
大腿
4
4.9土3,1
8.4土3,0
下腿
9
4.7土3.0
4
1.7土I.2
角質層
前腕
上腕
8
7
上肢
9
背
躯幹
8
乾癖無疹部
4.8土2.7
2.9土2.2
4.0士2.5
角質層以外の表皮
8.5士3.2
10.0土3.2
10.0士2.3
n.0士1.7
4.0土2.0
間質
3.6土4、1
(Mean
values土SD)%
1898
可知 久代ほか
「7¬¬健常人上肢
函匹ZI
‰O O 0 0 0 0
6 5 4 3 2 1
0 0 0 0 0 0
5 4 3 2 1
60
%
EΞΞΞΞΞΞΞヨ
a"::i:i'"s乾癖上肢
乾癩上肢
乾s躯幹
乾薗下肢
角質層 角質層以外間質 膠原繊維皮膚附属器 その他
表皮 真皮
*μ≪0.05.
角質層 角質層以外同質 膠原繊維皮膚附属器その他
表皮 真皮
(*)
図3 尋常度乾癖におけるモルフォメトリー法を用い
p<0.1,***p<0.001・
た各皮膚構成成分の部位別比較
図2 尋常住乾癖の上肢皮疹部と健常人上肢における
モルフォメトリー法を用いた各皮膚構成成分の比較
;こ;器雷雲]日−−
「 ̄ ̄¬健常人上肢
「 ̄' ̄ ̄¬健常人上肢
r二71乾解無疹部
O % 4
0 3
0
5
50%40 30
回¬
0 0
2 1
20
10
0
角質層角質層以外間質
膠原線維皮膚附属器その他
0
表皮 真皮
角質層 角質層以外間質 膠原繊維皮膚附属器その他
図4 尋常性乾癖の上肢無疹部と健常人上肢における
表皮
モルフォメトリー法を用いた各皮膚構成成分の比較
真皮
(*)μ<0.1,*p<0.05,*
*ρ≪0.01
図5 日光角化症(角質増殖著明群,角質増殖軽微群)
と健常人上肢におけるモルフォメトリー法を用いた
0.01).角質増殖軽微群の角質層以外の表皮成分は
各皮膚構成成分の比較
10.3±10.8%であり,健常皮膚に比べて増加傾向(p<
0.1)がみられ,表皮の肥厚所見がみられた.角質増殖
著明群の膠原線維は24,8±8.6%であり,一方角質増殖
表4 日光角化症におけるモルフォメトリー法を用いた各皮膚構成成分の体積
表 皮
n
角質層
角質層以外の表皮*
│ 真 皮
その他 間質
膠原線維
皮膚附属器
角質増殖著明群※
8
15.5士11.4
10.6士9.2
19.0士4.7
24.8土8.6
2.5土1.2
角質増殖軽微群#
8
7.8土14.5
10.3土10.8
18.5土5.6
21.4土12.4
5』土4.2
※角質増殖著明群:著明な角質増殖伴う群 *;角質層を除く未分化細胞十表皮細胞
#角質増殖軽微群:軽微な角質増殖伴う群
空隙
二言?ミ
(Mean
values土SD)%
角化性病変の定量化
1899
表5 老人性疵贅におけるモルフォメトリー法を用いた各皮膚構成成分の体積
表 皮
n
角質層以外の表皮*
角質層
角化型
表皮肥厚型
28
12
真 皮
19.9土9.9
17.9土5.8
23.5土14.0
7.7土3.5
間質
膠原綿維
皮膚附属器
18.2土6.2
16.6二6、3
29 5士4.9
35.3士13.8
4、4土5.0
3.2士3.7
*;角質層を除く未分化細胞十表皮細胞
その他
空隙
2.5二1.9
7.6%
7.9%
5.8土6.0
(Mean
values士SD)%
表6 健常人上肢におけるモルフォメトリー法を用いた年齢別各皮膚構成成分の体積
表 皮
n
角質層
ND
∼15歳
16∼30歳
31∼50歳
51∼70歳
71歳∼
4
真 皮
その他
角質層以外の表皮
ND
1.3土1.3
閣員
ND
膠原線維
ND
3.9士1.4
10.5二8.2
7
5
1.6士I.2
2.6土1.9
16.6土2.5
2.3土1.7
3.9士2.9
20.8ゴニ7.5
3
7.1土9.3
3.3土2.4
17.4土1.7
空隙
皮膚附属器
ND
ND
ND
27.8土6.0
37.7士9.7
4.3土2.6
11.0土9.4
41.2%
1.4土1.6
11.7土9.6
33.2土16.8
34.5土17.8
4.4土3.4
4.7土4.2
!.2土0.7
8.7土11.9
28.4%
30.7%
27.8%
ND:not done.
(Mean
values士SD)%
軽微群の膠原線維は21.4±12.4%となり健常皮膚の膠
れている.臨床皮膚科的には,病変部(皮疹)の大き
原線維成分(35.4±12.9%)に対して有意に減少して
さやそれらの輪郭の長さをグリッドの2点間を読みと
いた(p<0.05)(図5).
る評価法6)がある.
(4)老人性疵贅
モルフォメトリー法は皮膚科医にとっては,容易に
老人性吃贅についても同様に,角化型および表皮肥
臨床的に病変の実態を把握する手段としてとても有効
厚型に分類し(表5),各々皮膚構成成分を健常皮膚と
な方法であると推測される.しかし,より細かいグリッ
比較した.老人性吃贅の角化型と表皮肥厚型とも,角
ドを用いて原始的な2点間を読みとる方法を無限に繰
質層および角質層以外の表皮成分は,健常皮膚に比べ
り返す手技4)では,時間が多く費やされるため実際の
て有意に増加していた(p<0.05).特に,角化型では
臨床,特に診療においてはこのような古典的な方法で
角質層(19.9士9.9%)の増殖が著明で,表皮肥厚型で
は不適である.現在では簡易化されたポイントカウン
は角質層以外の表皮成分(23.5±14.0%)が増加して
ト法6)がよく用いられている.この方法は標本を用意
いた.角化型の膠原線組成分(29.5±4.9%)は,健常
しその上に定まった線で描かれたグリッドを載せ,そ
皮膚(35.4±12.9%)に比べ有意に減少していた(p<
のグリッドの交点に位置する成分のポイント数を読み
0.05) (図6).
とるという方法である6)
(5)健常皮膚の年齢別による皮膚構成成分の相違
た組織標本にグリッドを載せ,目的とする成分のポイ
年齢別による皮膚構成成分の相違を検討した結果,
ント数を読みとるという方法やオーバーヘッド上に引
31∼50歳代では角質層の体積が1.6±1.2%,
き延ばされた複写の上で測定する方法6)が施行される
代で2.3±1.7%,
51∼70歳
71歳以上では7.1±9.3%となり,角
8).なかには一度写真に撮っ
こともある.いずれの方法も概算ではあるが極めて実
質層の体積が有意に増加していた(pく0.05).しかし
際の面積および体積に近似している.
ながら,71歳以上群は他の年齢群と比較して膠原線維
皮膚科医が臨床的に応用するためには,より少ない
の成分は有意差はみられないものの加齢とともに増加
ポイントで面積および体積が把握できることが望まし
傾向がみられた(p<0.1)(表6,図7).
い.そこでより正確な定量化を効果的に行うために測
考 按
定する組織により適切なグリッドを多くの種類のグ
モルフォメトリー法は,主に地質学や治金学に応用
リッド4)から,選ぶ必要がある.そのためにJorgen
されていた非常に古い方法である.
Gundersen4)9)らの提唱したエラー係数が一般に用い
Weibelら叫こより
改良され,医学的にも応用されるようになった.医学
られる.本方法を用いると,今回の解析に最少限必要
的には主に組織標本の評価法5)のひとつとして用いら
な一標本あたりのポイント数が容易に算定できる.た
&
可知 久代は力ヽ
1900
UEIIItllll]角化型
コ
こ1;二;;;
老人性洸贅
厚型
¬健常人上肢
50
*
¬
rmm771
16∼30歳
1四国四四
31∼50歳
畷圖麗麗麗圖疆
51∼70歳
㎜
71歳∼
%
6S1
40
50
00000
432 1
0 0 0 0
3 2 1
角質層 角質層以外 間質 膠原線維 皮膚附属器 その他
角質層角質層以外 間質 膠原線維皮膚附属器その他
表皮 真皮
*ρ<0.05,**pく0.01,***μ<0.001.
表皮 盲皮
*p<0.05.
図6 老人比疵贅(角イヒ型,表皮肥厚型)と健常人上
肢におけるモルフォメトリー法を用いた各皮膚構成
図7 健常人前腕部におけるモルフォメトリー法を用
成分の比較
いた各皮膚構成成分の年齢別比較
とえば,1%の組織成分を%体積で示した時,エラー
係数を5%以下にするには本法によれば,
あった.しかし,病理組織全体の角質層,角質層以外
1,800ポイン
の表皮,間質,膠原綿維および皮膚附属器の成分をモ
トのグリッドの読みとりが必要となり,今回のモル
ルフォメトリー法を用いて三次元的に定量化した報告
フォメトリー法を簡易法として応用するには不適であ
は,調べ得た限りなく,今回我々が最初の試みである.
る.したがって,エラー係数が15%以下であれば必要
な定量化が可能oであることからJorgen
そこで再現性を持って臨床的に診断に役立ちうるかど
&
Gundersen4)9)らのエラー係数が15%以下になるよう
うかを検討した.
本来,モルフォメトリー法は1切片から無作為に選
に設定した.
んだ視野より解析され,全体像を把握する方法である
モルフォメトリー法を用いた病理組織の定量化は,
が,皮疹の一部分を採取した標本から全体像を把握す
これまでに腎生検標本5)や皮膚悪性腫瘍の腫瘍細胞の
ることは標本の採取状態すなわち生検の深さ,標本の
核の大きさ,成熟度の評価など1)2)にも使用されてい
大きさなどが様々であるため,標本の条件をある程度
る.早期の菌状息肉症やセザリー症候群における皮疹
制限しないと困難であろうと考えた.そのため,今回
は,慢性および良性疾患の皮膚局面と類似していて非
の試みは,設定条件を組織にグリッドを当てた時の標
常に区別しがたい.そのため,菌状息肉症の皮膚炎症
本が角質層から少なくとも皮下脂肪組織までがグリッ
部のリンパ球が良性か悪性か判断するのが困難な場合
ドの中に存在し,基底層の表皮突起の先端を上の端か
このリンパ球に対しモルフォメトリー法を用い核の直
ら4番目のラインに当たるようにした.この方法は基
径や辺縁の長さを解析した結果,モルフォメトリー法
底層より上層および下層の皮膚成分の容積が把握で
が早期診断に有効であったという報告3)もある.最近
き,また他疾患と比較する場合でも,主観的に選んだ
では乳癌における赤血球の分化を解析し,予後の評価
視野よりも再現性をもって測定できると考えた.
に有効であったとの報告lo)もある.また,モルフォメト
施行前に,採取部位や年齢に関して,皮膚構成成分
リー法を用いて腎細胞に発生した癌細胞の核をstage
に個人差がでてくることが予測された.これを解決す
lとstage
IIの各々の時期のlong-term-survivorおよ
るためにまず,前腕および上腕皮膚を比較したところ
びshort-term-survivorの細胞に分けモルフォメト
有意差はなく,上肢として統一できた.そこで,続い
リー法を用いて形態学的に解析し,重要な予後因子を
て年齢別の差をみたところ,表6に示すように若干の
見い出したとの報告11)もある.
差がみられた.一方,部位別の差においては,生検材
皮膚科における病理組織所見の客観的な評価に関し
料が比較的容易に得られる尋常性乾癖を用いて,尋常
ては,標本を二次元的に測定するという方法は報告3)
性乾癖の皮膚採取部位別に比較したところ,角質層と
されている.また,ひとつひとつの細胞の大きさ,核
角質層以外の表皮成分は採取部位により有意差はな
の大きさを光学顕微鏡を使って定量化した報告1)
かった.尋常陸乾癖の皮膚附属器は,上肢において躯
3)が
1901
角化性病変の定量化
表7 角質層対角質層以外の表皮成分および間質封膠原線維の体積比による比較
角質層対角質層以外の表皮
日光角化症
角質増殖著明群※
角質増殖軽微群#
二二万‥
老人性抗贅
角化型
1.2士0.4* ]…
0.4土0.4' 表皮肥厚型
健常人皮膚
間質対膠原線維
0.8土0.3**
1.3土0.9*
]
***
0.6 + 0.6{ ・)
0.G土0.2
0.5土0.3
0.8土0.7
※角質増殖著明群:著明な角質増殖を伴う群
#角質増殖軽微群:軽微な角質増殖を伴う群
(Opく0.1,
p<0.05,
**p<0.01,
・"p<0.001
幹および下肢に比べ増加していたが,部位別に差異が
老人性洸贅は,基底細胞と有縁細胞の増殖である.
あるかどうかは正常人皮膚において比較する必要があ
日光角化症と同様に古典的な分類かおるが,前述した
ろう.
同様の理由から本方法で分類可能な型は,角化型と表
尋常性乾癖と健常人皮膚を比較すると角質層以外の
皮肥厚型であると考えた.角化型では角質層肥厚が著
表皮成分に有意差がみられた.尋常│生乾癖の病態にお
明で表皮肥厚は軽度(角質層19.9±9.9%>表皮17.9±
ける角質層以外の表皮成分の増殖すなわち表皮肥厚の
5.8%)であった.一方,表皮肥厚型は表皮肥厚が著明
所見を裏付ける結果であった.
で角質増殖が軽度(角質層7.7上3.5%く表皮23.5±
目先角化症は病理組織学的診断に基づき,角質増殖
14.0%)であり,基底層の幅広い増殖であった.これ
著明群と角質増殖軽微群に分け,健常皮膚と比較した.
らの所見は,成書に記載されている病理組織所見に一
日光角化症は表皮内癌であり病期の進行に伴い,漸次
致するものであった.したがって病理組織所見と本法
異形成を示す細胞により置換される.本報告では,表
から得られた体積の定量分析はともに一致する結果と
皮成分は,角質層を除く未分化表皮細胞と正常表皮細
考えられる.
胞の和,すなわち病変部として評価した.日光角化症
日光角化症の角質増殖著明群と老人匠挽贅の角化型
は病理組織学的には,本来古典型(classical
を健常皮膚と比較した結果,角質層対角質㈲以外の表
type),ダ
リエ型①arier病型),ボーエン型(Bowen型),萎縮
型(atrophic
type),肥大型(hypertrophic
よび苔癖型(lichenoid
皮の比率は日光角化症の角質増殖著明群は1.5土0.9,
type)お
type)に分類12)される.本報告
老人性疵贅の角化型で1.2±0.4と健常皮膚に比べ有意
に増加していた(表7).
では各細胞のタイプや増殖傾向から病理組織学的な病
今回我々が検討した方法は,客観的観察ですでに確
型を把握することが困難と考えたため,角質増殖著明
認されている非定量的(主観的)病理組織所見と一致
群と角質増殖軽微群の2群で比較検討した.2群に分
するものであった.このことより本研究で用いたモル
けたことで角質層と角質層以外の表皮成分の占める体
フォメトリー法は病理組織所見も定量化できることを
積の差がはっきりと区別され,定量化された数字から
示唆していると考えられよう.今回は施行していない
組織標本のイメージか推測できる.しかし,たとえば
が,本法は,倍率・測定視野を変えることで,真皮の
日光角化症の角質層を健常人皮膚の角質層と比較した
血管成分や膠原線維の占める体積なども疾患別に比較
とき,角質層の体積の増減は把握できても,角質層の
できることも利点の一つと考えられた.
病理組織学的な詳細を知るには本方法では困難であろ
乾癖患者におけるレチノイドの治療効果を判定する
う.すなわち,角質増殖(hyperkeratosis)が不全角化
ために確立されたPASI
(parakeratosis)か表皮肥厚(acanthosis)なのか乳頭
検討した方法を用いて,レチノイド治療のみならずそ
腫様変化(papillomatosis)のいずれに起因するかの区
の他の治療における病理組織学的な経過を観察するよ
別はこの方法では困難であるため標本の形態学的な解
うな場合も使用できると考えられた.
析には不適当と考えられる.
scoreがあるが,今回我々が
1902
可知 久代ほか
献
文
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analysis of histopathological findings may
Analysis
1986, 170-172.
Diseases
Gifu University
diagnosis and evaluation of effects of treatments. We
23,1996)
provide us with substantial imformation
therefore tried to apply morphometry
tive analysis of the histopathological findings in hyperkeratotic
for
to quantita-
skin diseases. Biopsy samples
were taken
skin of patients with psoriasis vulgaris (n=16), and healthy controls (n = 40), verruca
senilis(n = 40), actinic keratosis (n = 16) and healthy control (n = 28). For morphometrical
divided the skin histologically into 6 compornents,
dermis, matrix, collagen fibers,appendages
eyepiece, micrometer
OC-M⑧diameter;
stratum
corneum,
square 10/10 ×10
of crossing points of the latticein each component
was
expressed
verruca senilis(17.9±5.8%)
The
as the percentage
morphometrical
mm2)inSerted beneath
of total layers. The
volume
actinic keratosis (10.4±9.8%),
method.
the ocular
of living cell layers of
hyperkeratotic
type of
than in normal
skin
analysis of histology used in this study will be useful for confirming
skin diseases and for evaluating the efficacies of treatments.
106: 1895∼1902, 1996)
words: morphometry
analysis, we
of epidぼmis,
layer were counted, and the volume
and acanthotic type of verruca senilis(23.5±14%)
the diagnosis of the hyperkeratotic
(Jpn J Dermatol
living cell layer
of the skin, and others. Using a regular lattice grid (Olympus
20.4 m/m
epidermis is larger in psoriasis (9.2±3.0%),
Key
fac-
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