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事業事前評価表 1.案件名 国 名:チュニジア共和国 案 件 名:ラデス

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事業事前評価表 1.案件名 国 名:チュニジア共和国 案 件 名:ラデス
円借款用
事業事前評価表
1.案件名
国
名:チュニジア共和国
案 件 名:ラデス・コンバインド・サイクル発電施設建設事業
L/A 調印日:2014 年 7 月 17 日
承 諾 金 額:38,075 百万円
借 入 人:チュニジア電力・ガス公社(Société Tunisienne de l’Electricité et du Gaz :
STEG)
2.事業の背景と必要性
(1) 当該国におけるエネルギー・セクターの開発実績(現状)と課題
チュニジアでは、アラブの春の発端となった 2011 年の革命後、2011 年はマイ
ナス成長となったが、2012 年には 3.6%と持ち直し、IMF は今後、年 3%程度の
成長を見込んでいる。経済成長に伴い、国内での電力需要も増加しており、チュ
ニジア政府は新規電源開発に積極的に取り組んでいる。チュニジア政府は再生可
能エネルギーの導入にも取り組んでいるが、現時点では総発電容量(3,496MW)に
対して、火力発電が大部分を占めている(火力発電 97%、水力発電 2%、風力発
電 1%)。
STEG によるチュニジア全体の電力需要予測によれば、2012 年から 2016 年に
おいて、年平均 7.1%の需要増が見込まれている。今後の電力需要増に対応する
ため、STEG は 2014 年及び 2015 年の稼働を目指してチュニジア中部のスース
に 2 基の新規火力発電所の建設を進めている(下記(4)参照)。しかし、同発電所
が稼働しても、近い将来には電力供給不足が見込まれており、電力供給不足の解
消には既存発電所の近代化及び新規電源開発を更に進めていくことが不可欠と
なっている。STEG は本事業の緊急性に鑑み、既に運転しているラデス発電所と
同じ敷地内の土地をサイトとして選定した。
(2) 当該国におけるエネルギー・セクターの開発政策と本事業の位置づけ
チュニジア政府は、「第 11 次経済開発 5 か年計画(2007 年∼2011 年)」にお
いて、また 2011 年に策定された「社会経済開発 5 か年計画(2012 年∼2016 年)」
においても「資源の効率的な活用と環境保全」を重点分野として掲げている。高
効率で二酸化炭素排出量が少なく、国産エネルギーを活用するガス・コンバイン
ド・サイクル発電を首都近郊のラデスにて実施するラデス・コンバインド・サイ
クル発電施設建設事業(以下、本事業という)は、チュニジア政府の開発政策に
合致する。また、2012 年 5 月の「新しいチュニジアの開発プロジェクトに対す
るファイナンスに関する国際会議」においても本事業が投資計画として掲載され
ており、チュニジアにおける本事業の優先度は高い。
(3) エネルギー・セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績
我が国は、対チュニジア共和国国別援助方針(2013 年 3 月)における重点分野と
して「持続可能な産業育成」を掲げており、本事業は環境保全や省エネといった
分野での協力を実施するとしている同重点分野と合致する。チュニジアの電力セ
クターに対するこれまでの我が国の支援実績は、「ラデス火力発電所建設事業」
(1982 年、6,840 百万円)及び「太陽光地方電化・給水事業」
(2005 年、1,731
百万円)がある。
(4) 他の援助機関の対応
2010 年に欧州投資銀行及びアラブ経済社会開発基金がスース 3 号機建設プロ
ジェクトに約 412 億円を、2012 年にイスラム開発銀行、サウジアラビア開発基
金及び国際開発 OPEC 基金がスース 4 号機建設プロジェクトに約 397 億円の借
款を供与しているほか、2010 年に欧州投資銀行及びイスラム開発銀行が送電網
強化プロジェクトに約 552 億円の資金協力を行っている。
(5) 事業の必要性
上述のとおり、新規の電源開発を行わなければ、2016 年以降、チュニジアで
は電力不足が見込まれており、全国規模で大規模な停電が発生するリスクが高い。
2011 年の革命後は、公共サービスに対する社会の目は厳しくなっており、仮に
大規模な停電が発生すれば、社会的な影響が非常に大きく、民主化の途上にある
チュニジアでは、大規模停電は社会不安が発生するリスクとなりかねない。
このように、新規の電源開発が喫緊の課題となっていることから、本事業の必
要性は大きい。
3.事業概要
(1) 事業の目的
本事業は首都チュニス近郊のラデスに高効率ガス・コンバインド・サイクル発
電施設を建設することにより、発電能力の強化及び電力の安定的な供給を図り、
もって同国の持続的な経済発展に寄与するもの。
(2) プロジェクトサイト/対象地域名
ベンアルース県ラデス市
(3) 事業概要
出力 430MW−500MW のガス・コンバインド・サイクル発電設備及び関連設
備の建設。
(4) 総事業費
45,828 百万円(うち、円借款対象額:38,075 百万円)
(5) 事業実施スケジュール
2014 年 7 月∼2019 年 4 月を予定(計 58 ヶ月)。コンバインド・サイクル発電
施設の仮引渡(商業運転開始後 4 ヶ月)をもって事業完成とする。
(6) 事業実施体制
1) 借入人:チュニジア電力・ガス公社(STEG)
2) 保証人:チュニジア政府(The Government of the Republic of Tunisia)
3) 事業実施機関:チュニジア電力・ガス公社(STEG)
4) 操業・運営/維持・管理体制:チュニジア電力・ガス公社(STEG)
(7) 環境社会配慮・貧困削減・社会開発
1) 環境社会配慮
① カテゴリ分類:A
② カテゴリ分類の根拠:本事業は、
「JICA 環境社会配慮ガイドライン」
(2010 年
4 月公布)に掲げる火力発電セクターに該当するため。
③ 環境許認可:本事業に係る環境影響評価(EIA)報告書は 2014 年 2 月に環境
保護庁(Agence Nationale de Protection de l’Environnement)により承認済み。
④ 汚染対策:工事中の大気質、水質及び騒音については、散水の実施・沈砂池の
設置・低騒音型機械の使用、昼間作業への限定等の対策をとることで影響の緩
和を図る予定である。供用後の大気質、水質及び騒音については、低 NOx 燃
焼法の採用、排水処理設備の設置、低騒音型設備の導入等により、同国国内の
排出基準を満たす見込みである。また、ステークホルダー協議では、大気汚染
物質や温排水の拡散による影響への懸念が寄せられたため、STEG は既存施設
を含めた累積的影響を考慮した上でも大気及び水質の排出基準は超過しない
ことを説明し理解を得られた。参加者から事業に係る特段の反対意見は出てい
ない。
⑤ 自然環境面:本事業対象地域の西側 6 ㎞に Chikly Island(文化遺産及び水鳥の
保護地)及び東南 8km に Bou-Kornine Natinal Park(Barbary Sheep の保護地
区)が存在するものの、当該保護地区への大気汚染物質の拡散は限定的である
ことが確認されており、保護区周辺の大気環境への望ましくない影響は最小限
であると想定される。
⑥ 社会環境面:本事業対象地は STEG の既存施設敷地内での発電所建設であり、
用地取得及び住民移転は発生しない。
⑦ その他・モニタリング:工事中は施工業者が水質、騒音等についてモニタリン
グし、供用開始後は STEG が大気、水質、騒音等についてモニタリングする予
定。
2) 貧困削減促進:特になし
3) 社会開発促進(ジェンダーの視点、エイズ等感染症対策、参加型開発、障害者
配慮等):特になし
(8) 他ドナー等との連携:特になし
(9) その他特記事項:特になし
4. 事業効果
(1) 定量的効果
1) 運用・効果指標
指標名
運用指標
発電端最大出力 (MW)
設備利用率(%)
稼働率 (%)
所内率(%)
発電端熱効率(%)
停止回数(人的原因)(回/年)
停止回数(機械故障)(回/年)
停止回数(計画停止)(回/年)
効果指標
発電端最大出力(MW)
送電端発電量 (GWh/年)
基準値
(2013 年)
目標値(2020 年)
【事業完成 2 年後】
N/A
N/A
N/A
N/A
N/A
N/A
N/A
N/A
430 (ISO 基準)
70.0
90.0
3.0
57.0
0
2
20
N/A
N/A
430 (ISO 基準)
2,637
2) 内部収益率
以下の前提に基づき、本事業の経済的内部収益率(EIRR)は 21.77%、財務的内
部収益率(FIRR)は 7.33%となる。
【EIRR】
費用:事業費(税金を除く)、運営・維持管理費(燃料及びその他)
便益: 電力供給量増、天然ガス消費量の削減、二酸化炭素排出量削減
プロジェクトライフ:25 年
【FIRR】
費用:事業費、運営・維持管理費
便益: 売電収入
プロジェクトライフ:25 年
3) 温暖化ガス削減効果:年間約 63 万 t (CO2 換算)
(2) 定性的効果
国レベルでの持続的な経済発展への寄与。
5. 外部条件・リスクコントロール
特になし。
6. 過去の類似案件の評価結果と本事業への教訓
(1)類似案件の評価結果
チュニジアで過去に実施した「ラデス火力発電所建設事業」、モンゴルの「ウラ
ンバートル第 4 火力発電所改修事業」の事後評価等では、発電案件では維持管理
要員の確保、トレーニングのあり方に十分配慮する必要があり、必要に応じてソフ
ト支援を行うべきとの指摘がなされている。
(2)本事業への教訓
STEG は 1962 年の創設以降、発電施設の建設及び維持管理業務に従事し、知識
と経験を蓄積し、能力を向上させている。2006 年以降は STEG-IS を通じて、近隣
諸国に技術支援を行う等、職員の技術能力が十分に高いことを審査時に確認してい
る。また、本事業の運営維持管理に必要な人員が確保されること、本事業の本体契
約の中に運営・維持・管理についての研修が組み込まれるとともに、本体受注企業
が長期保守契約(6 年)を締結することで、安定的な発電施設の運転を担保されて
いることを確認している。
このことから、類似案件での教訓事項については、STEG が適切に対応している
と判断される。
7. 今後の評価計画
(1)
1)
2)
3)
4)
今後の評価に用いる指標
発電端最大出力 (MW)
設備利用率(%)
稼働率(%)
所内率(%)
5) 発電端熱効率(%)
6) 停止回数(人的原因)(回/年)
7) 停止回数(機械故障)(回/年)
8) 停止回数(計画停止)(回/年)
9) 送電端発電量 (GWh/年)
10) 経済的内部収益率
11) 財務的内部収益率
12) 温暖化ガス削減効果(t) (CO2 換算)
(2) 今後の評価のタイミング
事業完成 2 年後。
以
上
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