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一般演題5-1 スキューバダイビング時の循環生理学的指標 の変化—健常

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一般演題5-1 スキューバダイビング時の循環生理学的指標 の変化—健常
第 48 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 プロシーディング
一般演題 5-1
スキューバダイビング時の循環生理学的指標
の変化—健常女性の1例
佐々木千穂1) 伊佐地 隆2, 3)
1) 熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリテーション学科
はSD時>日中活動時>睡眠時血圧
(収縮期,拡張期)
ではSD時>日中活動時=睡眠時,酸素飽和度は日中
活動時>SD時>睡眠時であった(図1)。
【考察】
心拍数と血圧は,最大値,最小値の出方も,日常
2) 帝京大学医学部 リハビリテーション科
生活との関係も,これまでに報告した男性と同様の傾
3) NPO法人 日本バリアフリーダイビング協会
向であった 1, 2)。酸素飽和度は平均値では男性のSD時
>日中活動時>睡眠時と異なったが,SD時体動による
【はじめに】
と思われる低値が多く出た影響と考えられた。しかし
スキューバダイビング(以下SD)は,誰にもできるレ
100%を記録する頻度は男性データ 1, 2)と同様に多かっ
クリエーション,スポーツとして,多くの人に親しまれ多
た。従って循環動態に対するSDの影響の性差は,大
くの利点があるが,水圧や呼吸制限,重力変化など
きくないという印象である。
の負荷がかかり,リスクを伴うものでもある。しかし
身体への影響や,有疾病者,障害者がSDをするにあ
(本研究はJSPS科研費 23650332の助成を受けた
ものである)
たって,許可または制限の根拠となる研究は少ない。
そこでSD時の循環生理学的指標を測定し,日常生
活時と比較することによって,SDが身体に及ぼす影響
を知る目的で本研究を行っている。今回は女性 1例に
ついて検討,男性例と比較した。
【方法】
対象は 41歳の健常女性で,SD歴 10年 650本程度で
ある。携帯ホルタ記録器(フクダ電子社製FM-800)
を身体に装着し,防水のために特製のドライスーツ
図 1 日常生活時とダイビング時の比較
(ZERO社製)を着た。測定指標は心電図,血圧,酸
素飽和度,測定時間は当日11:58 〜翌日11:27である。
【文献】
SDポイントは沖縄県八重山地方海域で,気温 30℃,平
1 )Takashi Isaji et al:Circulatory physiological change
均水温 28.0℃であった。SDは1本目12:13 〜 58(深度
in scuba diving- Comparison between scuba diving
最大21.2m,平均12.8m),2本目15:38 ~16:23(20.6m,
10.1m)でいずれもボートエントリーである。SD以外の
時間は特に制限なく通常の生活を送った。データ解析
は専用プログラムSCM-6600で行った。
and daily living -.THE 4TH CONFERENCE ON
DI V I NG PH YSIOLOGY, T ECH NOLOGY A N D
HYPERBARIC MEDICINE ,2013;13-14.
2 )伊 佐地 隆 他:スキューバダイビングにおける循環生理
学 的 指 標 の 変 化─ 健 常 者 で の 検 討─.The Japanese
Journal of Rehabilitation Medicine 50( suppl ).2013;
【結果】
S337.
心拍数の最大値 148(bpm)は日中活動時に,最小
値 52は睡眠時に記録された。血圧は収縮期(最大値
~最小値)が207 mmHg ~ 92,拡張期が 97~39でど
ちらも最大値はSD時であった。酸素飽和度の平均は
どの時間帯とも97%で,最大値 100,最小値 82はい
ずれもSD時に記録した。各平均値の比較では心拍数
287
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題 5-2
スキューバダイビング時の循環生理学的指標
の変化
—潜水深度,潜水時間との関係—
伊佐地 隆1,3) 佐々木千穂2)
1) 帝京大学医学部 リハビリテーション科
2) 熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリテーション学科
3) 日本バリアフリーダイビング協会
【はじめに】スキューバダイビング(以下SD )時の循環生理学的
指標を測定し,日常生活時と比較することによって,水中の高
圧や呼吸制限などの負荷がかかりリスクを伴うSD の,身体へ
の影響を知るために本研究を行っている。
この報告では,潜水深度,潜水時間による指標の変化をみ
ることを目的とした。
【方法】対象は 40 代の健常男性インストラクター3 名で,いずれ
もSD 歴 20 年以上のベテランダイバーである( Table 1 )。
方法は,携帯ホルタ記録器(フクダ電子 FM-800 )を身体
に装着し,防水のために特製のドライスーツ( ZERO 社製)を
着て行うSDを含めて約 24 時間の血圧,心電図,酸素飽和度
( SpO2 )の連続データをとった。深度,時間はダイビングコン
ピュータの記録からとった。SD はボートエントリーで,5mごと
に停止しながら潜降し,最大 20mまで行った後に潜降と同様に
浮上する40 分程度のプロフィールで,2 本ずつ行った。SD 以
外は通常の生活を送った。
データ解 析は専用プログラムSCM-6600を用い,相 関は
Pearson の相関係数を用いた。
【結果】1.日常生活時との比較:心拍数,血圧
(収縮期,拡張期),
Table 1. Subjects & Diving conditions
Vol.48( 4 ), Dec, 2013
SpO2とも,平均値では SD 時>日中活動時>睡眠時の順であ
った。
2.潜水深度との関係:心拍数,収縮期血圧,ダブルプロダク
ト( DP)は深度とは負の相関を認めることが多く(例 Fig.1,
2 ),SpO2 は正の相関を認めた(例 Fig.3 )が,拡張期血圧,
平均血圧との相関はなかった。
3.潜水時間との関係:心拍数は,時間経過で下がる傾向があ
ったが相関はなかった。しかしエキジット直前の上昇部分を除
外すると負の相関となった。血圧,DP,SpO2 は時間との相関
傾向はなかったが,SpO2 は緩やかな上方凸のカーブを描いて
いた。
【考察】
1.深度との関係
心拍数は深くなるほど減少する傾向があったが,徐々に下がり
エキジット前に再上昇することから,水圧による抑制現象よりも
SDプロフィールの影響も考えられる。収縮期血圧は SD 時全体
に高い 1, 2 )中での変化であるが,深くなるほど下がる傾向は,心
拍数同様にSDプロフィールの影響が大きいと考えられる。DP
は心拍数と血圧の変化の相乗効果である。SpO2 は深度と相関
した。我々のデータなど 1, 3 )で SD 時の上昇は確認できているが,
深くなるほど高くなることも確認できた。高水圧による溶解の増
加という理論通りであるが,浮上時の減圧で急速に下がること
の確認でもあり,窒素の動態にも利用できるかもしれない。
2.時間との関係
どの指標もSD 経過時間との明らかな関係は認められなかっ
た。時間は深度変化とともに経過するプロフィールなので,心拍
数,SpO2 は深度因子に影響されたと考えられる。時間因子と
の関係をみるためには深度を一定にした条件設定が必要である。
いずれも限られた対象と条件での結果であり一般化はできな
いが,詳細なデータが得られているので,今後別の背景をもっ
た対象も含めて検討し,傾向の一般化を図りたい。
【結語】40 代健常男性インストラクター3 名のデータから,循環
生理学的指標の潜水深度,時間との関係を分析した。深度と
は心拍数,収縮期血圧,DPは負の相関,SpO2 は正の相関が
あった。時間とはどの指標も明らかな関係を認めなかった。ど
の指標も潜水深度,潜水時間を含むダイビングプロフィールと
の関係が推測された。
(本研究はJSPS科研費23650332の助成を受けたものである。)
【文献】
1 )I saji T, Sasaki C:Circulatory physiological change in
scuba diving- Comparison between scuba diving and
daily living-.THE 4TH CONFERENCE ON DIVING
PHYSIOLOGY, TECHNOLOGY AND HYPERBARIC
MEDICINE 2013:13-14
2 )宮 坂裕 也、他 :ドライスーツ潜
水における血圧の変化.水と健
康医学研究会雑誌 2011;14( 1 )
:21-32
3 )田 中博史,他 : スクーバダイビ
ング中における末梢血中酸素飽
和度及び心拍数.宇宙航空環
境医学 2008;45:61-67
Fig.1 Correlation between
Depth & HR
Subject M, 1st SD
288
Fig.2 Correlation between
Depth & SBP
Subject M, 1st SD
Fig.3 Correlation between
Depth & SpO2
Subject M, 2nd SD
第 48 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 プロシーディング
一般演題 5-3
骨壊死は慢性変化なのか?
来にて,MRIによる再検を行った。大腿骨および上腕
骨の骨壊死は一部bone island状の変化を認めるもの
の縮小しており,モザイク状の変化は消失していた。
1)
和田孝次郎 市川直紀
2)
【考察】骨壊死は不適切な減圧に関係した慢性病変と
1) 防衛医科大学校 脳神経外科
して知られている。しかしながら,不活性ガスを多く
2) 原田病院 臨床検査課 高気圧治療室
取り込むような減圧を要する潜水後に発症する可能性
があることも報告されている1)。また,動物実験にお
【はじめに】
以前当学会において,2001年1回のⅡ型減圧
いても減圧症を発生させることで,骨壊死ができるこ
症に関連した骨壊死の症例報告を行った。海外にて
とが報告されている 2)。我々の症例も,減圧症に関係
レクリエーショナルダイビングを施行した。55m10分滞
して起こった骨壊死症例と考えた。川嶌らは潜水漁
底時間の後 50分かけて減圧,2時間の水上休息の後,
民の検診において高率にbone island状の骨病変を認
40m15分の滞底時間の後 60分かけて減圧,水面到着
めることを報告しておりこの病変を特にtype Cと名付
後 20分にて下肢の異常知覚出現。脊髄型減圧症の
けている。今回の長期的な観察は最終的に川嶌らが
診断にて初日治療表 6と2日目治療表 5による再圧治
報告したtype Cの病変となっており,減圧に関連した
療をフィリピン海軍病院にて施行され,症状は軽快し
疾患とする川嶌らの報告を支持するものである。今回
た。帰国後に当院を受診した。精査にて両上腕骨お
の症例の病変はBMRC type Bであったため,運動の
よび両大腿骨の骨壊死が発見された。すべてBMRC
影響を受けにくい場所と考えられ,潜水適性上も経過
(British Medical Research Council’
s Decompression
観察とされている。しかしながら,実際に進行しない
Sickness Panel)type Bの病変であった。1年間の継
か否かについては,はっきりとした長期間経過を観察
時的MRI検査で骨病変の所見が改善していったこと
した報告は見当たらない。今回,10年を超えて継時的
より減圧症に伴った骨壊死ではないかと考えた症例で
な改善を示したことは,適切な潜水を行う限りにおい
ある。減圧症発症より12年経過し,骨壊死の状態を
てtype B骨壊死は進行しないことを示唆しているのか
MRIにより調べ興味深い所見を得たので報告する。
もしれない。いずれにしても,骨壊死は不適切な減圧
【経過】56歳男性,12年前に骨壊死の診断を受けた後
も,1月に2回程度無減圧潜水をレクリエーショナルダイ
ビングとして楽しんでいた。ただし,浮上中は 10mで
10分の安全停止を行い,潜水終了後,すぐに船上に
おいて酸素を20分間吸入するようにしていたとのこと
であった。12年間に減圧症への罹患はなかった。外
に関係した疾患と考えられるため,適切な潜水を行う
ような指導は必須と考えられた。
【参考文献】
1 )川嶌眞人:減圧症で入院した潜水士の骨病変について.
整形外科と災害外科 22:47-51,1973
2 )R eeve s E et a l:htt p: //w w w.ncbi.nlm.nih.gov/
pubmed/5009158 Radiographic and pathologic studies
for aseptic bone necrosis in dogs
incurring decompression sickness.
Aerosp Med. 43:61-66, 1972
発症時 MRI T1WI
12 年後 MRI T1WI
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