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外気冷房併用型置換換気 システムの設計法の開発

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外気冷房併用型置換換気 システムの設計法の開発
外気冷房併用型置換換気
システムの設計法の開発
羽 山 広 文[北海道大学大学院工学研究科/教授]
菊 田 弘 輝[北海道大学大学院工学研究科/助教]
福島
明[北海道立北方建築総合研究所・居住科
学部/居住科学部長]
加 藤 祐 一[恒星設備株式会社/常務取締役技術部長]
背景・目的
工場など生産施設において、場内に設置されている機
器は発熱量が大きな場合が多い。さらに、部品工作工場
においては切削油などのオイルミストが多量に浮遊し、
印刷工場においてはインクの溶剤や紙粉の発生量が多
い。本研究開発では、このような生産施設の空気調和設
備に対し、北海道特有の冷涼な外気を活用した外気冷房
方式と、室内で発生する排熱およびオイルミスト・イン
ク溶剤・紙粉などの汚染物質を効率良く排出する置換換
気システムを併用した
『外気冷房併用型置換換気システ
ム』
の設計方法・運用方法の確立を目的とする。
置換換気システムの特性を評価するには、機器が設置
されている領域の基準化居住域温度 kv=
(機器吸込み領
(空調還気温度 θRE−空
域温度 θi−空調給気温度 θSA)/
調給気温度 θSA)を用いる。この値 kv を小さくすること
は、空調給気温度 θSA と機器吸込み領域温度 θi の温度差
を小さくすること、同時に空調還気温度 θRE−空調給気
温度 θSA を拡大することである。もし、空調給気温度 θSA
を高くすることができれば、外気冷房の利用期間が長く
なる。また、基準化居住域温度 kv が小さくなることで、
空調給気量が減少し空調システムのエネルギー消費量
が削減できる。実測の結果、夏期から中間期の基準化居
住域温度 kv は、0.7∼0.8 程度となり、当初の予想通りの
結果になった。
この基準化居住域温度 kv を用いた空調システム評価
モデルを作成し、実測結果との比較から、十分精度の高
い評価モデルであることを確認した(図 1)
。
内容・方法
置換換気システムは、従来の空調システムのように部
屋全体の空気を混合せず、室内の温度成層を活用し汚染
物を排気する方式である。このため、作業員の健康で安
全な作業環境を維持しつつ、空気調和に必要な循環風量
を減少でき、送風機のエネルギー消費量を削減する。一
方、発熱量の大きな生産施設の場合、冬期を除き室内に
冷房負荷が発生する。そこで、年間を通じ冷涼な外気を
導入し冷凍機の稼動を減少させる。
本研究開発では、以下の事項を明らかにする。
(1)オイルミスト・インク溶剤・紙粉などの汚染物質の
発生量を実測調査により明らかにする。
(2)空調設備の運転データから機器の発熱・発塵状況と
排熱効率・換気効率の関係を明らかにし、外気冷房併
用型置換換気システムの設計方法および運転制御方
法を確立する。
(3)年間運転データを計量し、従来方式と比較し省エネ
ルギー効果を確認する。
(4)空調システムの評価モデルを作成し、他の地域に導
入した場合の効果を推定する。
結果・成果
(1)汚染物質の発生量の把握
実際に機器が稼働している状態で、工場内の外気導入
量を変化させながら室内の汚染物質濃度を塵埃計およ
びにおいセンサーを用い計測した。その結果、置換換気
方式を採用することで、居住域の濃度が減少することを
確認した。
(2)機器の冷却特性を示す基準化居住域温度 kv の把握
図1
実測結果とシミュレーション結果の比較
(3)運転制御方法の把握
室内の発熱量が高く、冷房負荷が大きな場合、冷涼な
外気を室内に給気することは、冷房用エネルギー消費量
の削減に有効である。しかし、その導入量、還気との混
合比率の決定は、基準化居住域温度 kv などにより判断
し適切な制御が必要になる。ここでは、実測結果から外
気冷房と冷凍機による冷房の切り替えの条件、風量制御
の条件を明らかにし、空調用エネルギー消費量を最小化
するアルゴリズムを見出した。
(4)室内環境および省エネルギー効果の検証
シチズン夕張北工場(夕張市)
は微細な部品を製造す
る床面積 755 の生産施設である。本申請者らは共同で
外気冷房併用型置換換気システムを設計・施工し、2008
年 11 月より稼働させている。本実施例の実測調査から
室内汚染物質濃度、機器運転状況および室内温熱環境、
空調システムのエネルギー消費量を把握し、その性能を
検証した。なお、エネルギー消費量の評価には PUE :
Power Usage Effectiveness
(施設全体のエネルギー消費
量/工作機器のエネルギー消費量)
を用いた。
その結果、本方式は室内空気を混合する従来の空調シ
ステムと比較し、①十分な外気量の導入により、オイル
ミストの濃度、においの強度ともに約 50% 以下に削減
し、より良い作業環境を確保した。②外気冷房、置換換
気、適正な制御により年間空調用エネルギー消費量を約
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!
64% 削減した
(図2、図3)
。③冷涼な寒冷地では温暖な首
都圏と比較し、外気冷房および置換換気の効果が大きく、
今回検討した規模の工場の場合、札幌では東京と比較し
18%∼40% の空調システムの省エネルギーが可能にな
ることを示した。
図2
図3
本システムの工場のエネルギー消費量
従来システムの工場のエネルギー消費量
今後の展望
今回の事業では、実際の工場に適用した外気冷房併用
型置換換気システムの実測評価から、本システムの有効
性を検証した。その結果、予想を上回る好結果と運転制
御方法などのノウハウを得た。今後、本システムを同種
の工場だけでなく、大規模な印刷工場の空気調和設備の
更新に際し導入を検討しており、各種の生産施設での導
入実績を積むことで、汎用性の高い設計方法・運転制御
方法が確立できると考えている。これらが確立されるこ
とで、北海道内に立地する生産施設において空気システ
ムに関わるエネルギー消費量が削減でき、生産施設の誘
致に有利になると考えられる。
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