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長崎県公営住宅等長寿命化計画 概要版
長崎県公営住宅等長寿命化計画 概要版 平成 24 年 3 月 長 崎 県 <目次> はじめに ................................................................................. 1 1. 計画の背景と目的 .................................................................. 1 2. 計画の位置付け .................................................................... 1 3. 計画期間 .......................................................................... 1 第2章 長寿命化に係る現況と課題 ......................................................... 2 1. 県営住宅の現況 .................................................................... 2 2. 長寿命化に係る課題 ................................................................ 3 第3章 長寿命化に関する基本的な考え方 ................................................... 9 1. 長寿命化及びライフサイクルコストの縮減に関する方針 ................................ 9 2. ストックの状態の把握及び日常的な維持管理の方針 ................................... 10 3. 県営住宅の供給目標 ............................................................... 10 第4章 長寿命化を図るべき県営住宅 ...................................................... 13 1. ストック活用の手法選定 ........................................................... 13 第5章 事業の実施方針 .................................................................. 16 1. 活用手法別実施方針 ............................................................... 16 2. 目標管理戸数の達成方策 ........................................................... 23 第6章 長寿命化のための維持管理計画 .................................................... 24 1. 概算事業費の設定 ................................................................. 24 2. 実施プログラムの作成 ............................................................. 25 3. 計画修繕の実施 ................................................................... 28 第7章 長寿命化のための維持管理による効果 .............................................. 30 1. 長寿命化型改善内容の検討 ......................................................... 30 2. ライフサイクルコスト(LCC)の算出 ............................................. 31 第8章 計画の推進に向けて .............................................................. 33 はじめに はじめに 1.計画の背景と目的 長崎県は、平成 22 年 10 月時点で 86 団地、管理戸数 12,531 戸の県営住宅を管理しており、 住宅政策の方向性を見直し、団地を長期的に活用していくための大規模改修や長寿命化型改善 等の具体的方策を検討し、県営住宅等長寿命化計画を策定することを目的とする。 2.計画の位置付け 本計画は、長崎県住生活基本計画の県営住宅における部門計画として、県営住宅の活用方策 や長寿命化に関する事業の指針となる計画として位置付けられている。 長崎県総合計画 住生活基本法に基づく 市町総合計画等 (H23∼27 年度) 住生活基本計画(全国計画) (H23∼32 年度) 長崎県住生活基本計画 高齢者 居住安定確保計画 市町住生活基本計画 公営住宅等長寿命化計画 (H23∼32 年度) (H23∼26 年度) 地域住宅計画(実施計画) 長崎県公営住宅等長寿命化計画 (H23∼32 年度) 住宅施策の展開 3.計画期間 本計画は、平成 33 年度までの 10 年計画とし、前期 5 箇年、後期 5 箇年の計 10 箇年の計画と して、団地ごとの事業手法、スケジュール等を定めるなど事業実施のプログラムを策定する。 なお、必要に応じて適宜見直しを行うこととする。 ■計画期間のイメージ 計画期間 10 年 計画期間後 前期 5 箇年 H23 H24 H25 後期 5 箇年 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33∼ 1 第2章 長寿命化に係る現況と課題 1.県営住宅の現況 (1)管理戸数 長崎県の県営住宅は、平成 22 年 10 月現在、86 団地、管理戸数 12,531 戸となっている。管理 戸数の大半は長崎地区に集中しており、全体の半数以上を占めている。また、世帯に対する割 合は約 2%となっており、長崎市、佐世保市、諫早市では 3%を超えている。なお、佐世保地区 の真砂団地、浜町団地は西海市で管理を行っている。 ■管理戸数 地区 市町 長崎県 − 86 511 12,531 556,895 世帯数に 対する割合 2.3% 長崎市 長与町 時津町 佐世保市 西海市 諫早市 大村市 35 1 1 28 2 10 9 244 3 5 147 4 73 35 6,603 58 120 3,513 94 1,587 556 187,685 15,478 10,787 104,583 11,875 50,989 34,044 3.5% 0.4% 1.1% 3.4% 0.8% 3.1% 1.6% 長崎 佐世保 諫早 大村 団地数 棟数 管理戸数 一般世帯数 資料:長崎県住宅課、国勢調査(平成 22 年) (2)入居状況 本県の県営住宅は、平成 22 年 9 月末日現在で 11,938 世帯が入居しており、空き家率は 4.7% となっている。地区別に見ると、空き家率が高いのは佐世保地区となっている(西海市が管理し ている真砂団地と浜町団地を除く、以下同様)。 ■地区別管理戸数と入居状況 地区 長崎県 長崎 佐世保 諫早 大村 資料:長崎県住宅課 管理戸数 12,531 6,875 3,513 1,587 556 入居世帯数 11,938 6,446 3,428 1,524 540 空き家率 4.7% 6.2% 2.4% 4.0% 2.9% 第2章 長寿命化に係る現況と課題 2.長寿命化に係る課題 (1)老朽化している住宅への早急な対応 本県の県営住宅の大半が昭和 40∼50 年代に建設された耐火構造で、耐用年限の 2 分の 1 を経 過して住棟が増えており、今後改善や建替の時期が集中することが予測されており、防災・防 犯等の安全性や居住性の面で早急な対応が求められている。また、耐火構造についても外壁の 爆裂など安全性に問題があるものも見られ、震災時に建物の被害が拡大するだけでなく、日常 生活においてもコンクリートの剥落などの危険性があることから、特に劣化が著しい住宅では 一刻も早い対応が必要である。 ■耐用年限経過状況別管理戸数割合 ■建設年及び耐用年限経過年別管理戸数 600 長崎県 総計 (戸) 83.8 16.2 500 長崎 81.6 18.4 400 0.1 佐世保 11.2 88.7 300 諫早 22.2 77.8 200 資料:長崎県住宅課 100% 2007 2004 2001 1998 1995 1992 1989 1986 1983 0 1980 80% 未経過 1977 60% 1/2経過 1974 40% 経過 1971 20% 100 1968 0% 95.7 1948 大村 4.3 資料:長崎県住宅課 ■外壁の劣化が著しい魚の町団地 3 (2)人口の動態を見据えた供給量の確保 本県の人口は減少傾向が続いており、これに伴い県営住宅需要も減少し、目標年度の要支援 世帯数は現況の県営住宅ストック数を下回ると予測される。一方で、県営住宅は市町営住宅を 補完する役割として、公営住宅入居基準を満たす世帯のなかでも、収入の低い世帯、高齢者単 身・夫婦世帯、子育て世帯など、特に住宅の確保に配慮が必要な世帯に対して供給を図ってお り、これらの世帯は社会経済情勢の変化等により予測よりも需要が増えることも考えられるた め、急激にストック数を減らすべきではないと考えられる。そのため、人口の増減に柔軟に対 応できる供給方策を構築する必要がある。 ■人口・世帯数・高齢化率の推移と将来予測(長崎県) (千人) (%) 今期計画期間(H23∼H32) 1,800 1,563 1,600 1,545 1,517 1,479 1,427 1,400 1,200 1,319 1,255 29.4 1,187 800 14.7 600 502 17.7 528 30.0 25.0 20.8 1,000 40.0 35.0 1,379 26.3 23.6 36.2 34.8 32.8 20.0 543 552 557 541 527 488 509 15.0 10.0 400 5.0 200 0.0 0 H2 H7 H12 総人口 H17 H22 H27 H32 H37 一般世帯数 H42 高齢化率 資料:H2∼H22 各年国勢調査、H27∼H42 国立社会保障・人口問題研究所推計値 ■高齢者世帯の現状(長崎県) その他高齢者 のみの世帯 0.7% 高齢夫婦 のみの世帯 高齢 9.9% 14.0 % 12.2 12.0 10.9 9.8 10.0 8.3 8.0 単身世帯 11.5% 高齢者との 同居世帯 21.3% ■高齢単身及び高齢夫婦のみ世帯率の推移(長崎県) 6.0 高齢者がいない 世帯 56.7% 6.4 6.6 4.8 4.0 10.3 9.1 9.2 7.8 11.4 10.7 9.2 7.9 7.6 6.3 6.5 5.0 4.0 2.0 0.0 H2 H7 全国高齢夫婦のみ 長崎県高齢夫婦のみ 資料:H22 国勢調査 資料:各年国勢調査 H12 H17 全国高齢単身 長崎県高齢単身 H22 第2章 長寿命化に係る現況と課題 (3)住宅困窮者への対応 本県では、減少は続いているものの、未だ最低居住面積水準未満の世帯が見られる。また、 高齢化率は約 24%となっており、高齢単身・夫婦世帯は約 2 割となっている。借家で暮らす高 齢者のみの世帯は、家賃の支払いが困難になったり、転居の際に入居を断られたりする場合が あるなど、居住に不安を抱えている。また、近年の不況などの影響もあり、場合によっては住 居を失うこともある。近年では東日本大震災などの大きな地震もあり、罹災者への対応を求め られることもある。障害者や子育て世帯、DV被害者なども居住に不安を抱えている場合もあ る。こうしたことから、その対応が可能な県営住宅ストックを形成する必要がある。 ■居住水準の推移(長崎県) H20 5.5 35.9 H15 4.0 H10 46.9 4.8 H5 58.7 49.1 51.6 7.5 43.6 54.5 0% 20% 38.0 40% 最低居住水準未満 60% 80% 最低∼誘導居住水準 100% 誘導居住水準以上 資料:各年住宅・土地統計調査 ■過去 5 年間の募集・応募状況(「−」は募集なし) − 62 206 3.3 14 197 14.1 14 105 7.5 7.3 730 5,603 7.7 582 4,262 7.3 727 5,312 7.3 3,672 31,327 8.5 796 10,245 12.9 860 6,297 7.3 792 5,809 7.3 596 4,459 7.5 741 5,417 7.3 3,785 32,227 8.5 103 314 60 900 倍率 応募数 募集数 倍率 応募数 募集数 倍率 応募数 募集数 倍率 応募数 募集数 倍率 応募数 − 6,297 14 113 計 − 674 8.0 22.4 − − − 31 3.3 13 181 13.9 2 76 38.0 238 3,567 15.0 272 2,167 8.0 205 2,058 10.0 85 964 11.3 219 2,049 9.4 1,019 10,805 10.6 252 3,881 15.4 11.2 1,145 11.7 1,079 11,479 10.6 272 2,167 8.0 236 2,161 9.2 98 221 2,125 9.6 8.7 − − − 31 103 3.3 1 16 16.0 12 29 2.4 53 182 2,551 14.0 187 1,555 8.3 157 1,389 8.8 139 1,248 9.0 121 1,323 10.9 786 8,066 10.3 191 2,629 13.8 187 1,555 8.3 188 1,492 7.9 140 1,264 9.0 133 1,352 10.2 839 8,292 − − − − − − − − − − − − − − − − 553 6.8 107 510 4.8 90 332 3.7 109 393 3.6 127 294 2.3 514 2,082 4.1 553 6.8 107 510 4.8 90 332 3.7 109 393 3.6 127 294 2.3 514 2,082 4.1 − − − − − − − − − − − − − − − − − 135 6.4 34 146 4.3 37 153 4.1 26 125 4.8 29 154 5.3 147 713 4.9 6.4 34 146 4.3 37 153 4.1 26 125 4.8 29 154 5.3 147 713 4.9 新築 − − 81 小計 81 新築 − 21 21 135 小計 H22年度 860 保 小計 大 空家 村 H21年度 17.0 佐 新築 世 空家 諫 空家 早 募集数 小計 H20年度 9,853 12.7 773 392 H19年度 倍率 新築 長 空家 崎 23 応募数 長 新築 崎 空家 県 小計 H18年度 募集数 種類 地 区 9 78 226 4.3 9.9 資料:長崎県住宅課 5 (4)世帯と住戸の“ミスマッチ”の解消 本県の県営住宅は、9%の世帯が最低居住面積水準未満となっている。特に、住戸の 4 割が 50 ㎡未満の小規模住戸となっており、 これは 4 人世帯の最低居住面積水準に満たない水準である。 また、40 ㎡未満の住戸への多人数世帯の居住が見られるなど、決して望ましい水準を確保して いるとは言えない。一方で、1 人世帯、2 人世帯が多く、これらの世帯が 50 ㎡を超える住戸に 住んでいる状況がある。このような世帯と住戸の“ミスマッチ”を解消し、世帯構成にふさわ しい規模の住宅に住めるようにすることが重要である。 ■居住水準別入居世帯割合 ■住戸面積別管理戸数割合 8.8 44.5 46.7 長崎 8.5 45.4 46.0 佐世保 8.7 諫早 9.8 大村 9.4 長崎県借家総計 7.9 県営住 長崎県 総計 長崎県 総計 2.1 12.2 長崎 3.3 42.5 29.8 15.5 24.2 46.4 諫早 0.4 49.1 37.4 33.0 19.1 30.7 60% 最低以上誘導未満 14.8 大村 2.4 54.7 40% 最低未満 37.9 27.9 43.8 41.5 20% 20.1 48.8 佐世保 1.1 7.2 0% 35.8 80% 100% 45.7 28.6 0% 40% 30∼39㎡ 40∼49㎡ 資料:長崎県住宅課、長崎県借家総計は住宅・土地統計調査(H20) 資料:長崎県住宅課 ■世帯人員別住戸面積別入居世帯数 186 50㎡未満 523 472 49 118 50∼60㎡未満 1066 60㎡以上 1183 560 207 2152 972 0 716 1000 2000 1592 3000 1人 資料:長崎県住宅課 1495 4000 2人 3人 5000 4人 5人以上 647 6000 8.9 54.2 20% 誘導以上 30.1 7000 8000 (世帯) 14.8 60% 50∼59㎡ 80% 60∼69㎡ 70㎡以上 100% 第2章 長寿命化に係る現況と課題 (5)誰もが快適な居住環境の整備 本県の県営住宅居住者においては、約 3 割が高齢者世帯となっており、特に 2 割が単身・夫 婦の高齢者のみとなっている。さらに、団塊の世代の加齢により高齢化がさらに急速に進むと 予想されている。県営住宅ストックは、高齢者・障害者対応の住戸が少なく、高齢者等の安定 居住には十分とはいえない状況にある。バリアフリー化を進めるなど、高齢者等が安心して暮 らせる県営住宅の整備が必要である。 ■高齢者の有無別入居世帯割合 県営住宅 総計 長崎県 12.0 長崎 12.7 8.7 佐世保 12.6 7.1 7.7 諫早 9.5 大村 7.8 5.6 69.5 11.6 67.0 9.9 70.3 4.9 9.1 10.8 長崎県総計 10.8 76.4 11.3 12.0 0% 75.4 20.5 20% 高齢者単身世帯 56.7 40% 高齢者夫婦世帯 60% 80% その他高齢者のいる世帯 100% 高齢者のいない世帯 資料:長崎県住宅課、長崎県総計は住宅・土地統計調査(H20) ■バリアフリー化状況別住戸割合 長崎県 総計 33.2 長崎 32.6 佐世保 11.1 17.8 42.9 諫早 18.3 大村 49.6 1.9 1.4 20.1 0% 55.7 55.2 80.3 17.1 20% 高齢化対応あり 62.8 40% 60% 高齢化対応あり(改善で対応) 80% 100% 高齢化対応なし 資料:長崎県住宅課 7 (6)高齢者への対応 高齢化率の最も高い団地では 7 割を超えているなど、入居者の高齢化が進んでいる一方で、 バリアフリー化は約 4 割にとどまっているため、バリアフリー化をさらに進める必要がある。 また、高齢者の大半が年金収入のみになっており、建替や住戸改善をした場合における家賃上 昇への対応が困難になることが予測されるため、入居者の実態に応じた柔軟な整備手法の選定 が求められる。 ■高齢化率が 5 割以上の団地一覧 地区 団地名 長崎 佐世保 長崎 魚の町 花園 竹の久保 建設年度 管理戸数 S23 H4 H8 高齢化率 24 24 12 76.5% 61.0% 54.2% 資料:長崎県住宅課 ■世帯主年代別入居世帯割合(年齢不詳を除く) 長崎県 総計 1.2 28.7 長崎 1.3 42.3 26.3 県営住 佐世保 1.1 27.7 42.0 30.5 30.4 41.7 26.8 諫早 1.2 33.8 44.2 20.9 大村 1.1 32.6 45.4 20.9 長崎県総計 2.7 22.1 0% 41.1 20% 34.1 40% 25歳未満 60% 25∼44歳 45∼64歳 80% 100% 65歳以上 資料:長崎県住宅課、長崎県総計は住宅・土地統計調査(H20) ■収入分位別入居世帯割合(不詳は除く) 長崎県 総計 70.0 40歳未満 71.6 40∼65歳未満 参考:収入分位別月収 6.2 4.5 4.5 4.8 3.23.0 3.9 0.9 8.4 5.5 5.0 4.32.61.7 60.0 6.8 5.3 5.7 6.5 4.5 4.6 6.6 65歳以上 87.2 0% 20% 40% 1.2 1.1 1.1 3.32.2 1.8 2.1 60% 80% 第Ⅰ分位 第Ⅱ分位 第Ⅲ分位 第Ⅳ分位 第Ⅴ分位 第Ⅵ分位 第Ⅶ分位 第Ⅷ分位 資料:長崎県住宅課 100% 分位 政令月収 第Ⅰ分位 0 から 104,000 円 第Ⅱ分位 104,001 から 123,000 円 第Ⅲ分位 123,001 から 139,000 円 第Ⅳ分位 139,001 から 158,000 円 第Ⅴ分位 158,001 から 186,000 円 第Ⅵ分位 186,001 から 214,000 円 第Ⅶ分位 214,001 から 259,000 円 第Ⅷ分位 259,001 円以上 第3章 長寿命化に関する基本的な考え方 第3章 長寿命化に関する基本的な考え方 1.長寿命化及びライフサイクルコストの縮減に関する方針 (1)耐火構造ストックの長期的活用 耐火構造のストックについては、剥落の見られる外壁の補修を行うなど劣化に対する改修を 行うとともに、バリアフリー化改修などによる整備水準の向上などにより、長く使用できるス トック形成を図る。 (2)供給量の適正化による事業コストの削減 本県では人口減少が続いており、これに伴い公営住宅需要が減少すると考えられる。また、 建替シミュレーションの結果を踏まえると建替時期が重なるため建替戸数の削減や実施時期の 平準化が求められる。そのため、老朽化している団地の用途廃止や、建替時に従前戸数から建 替後の戸数を減少させるなど、管理戸数を調整し、維持管理や改修などに係る事業費の削減を 図る。 (3)住み続けられる県営住宅の形成 県営住宅を長く使うためには、ハード整備にあわせて住戸の広さや設備に適した世帯が入居 することが重要である。入居者と住戸のミスマッチが見られるなかで、建替や全面的改善によ る型別供給により、世帯構成にあった住戸を整備することでミスマッチの解消を図るが、全て を型別供給で対応することは財政上難しいことから、住み替えなどの入居者管理を併せて行う ことで、型別供給の補完を図る。 (4)バリアフリー化の推進 県営住宅の長寿命化にあたっては、多様な世帯が住み続けられる居住環境の形成を同時に行 うことで、ハード整備との相乗効果で長期間の使用が可能になる。そのため、特に高齢者や障 害者が安心して入居できるようにバリアフリー化を推進する。 (5)財政負担の少ない事業計画の実施 県営住宅の長寿命化には、公営住宅事業としての継続性が重要である。そのため、建替から 全面的改善や個別改善への切り替えや、長寿命化型改善による維持管理コストの削減などによ る事業費の削減、事業実施時期の調整などによる事業費の平準化などにより、財政負担の軽減 を図る。 (6)整備手法の組み合わせによる柔軟な事業の実施 更新時期が近づいている大規模団地では、建替、全面的改善、個別改善の各種法を組み合わ せることで、入居者の実態や意向、財政状況、敷地条件等への対応を図り、柔軟な整備を行う。 9 2.ストックの状態の把握及び日常的な維持管理の方針 (1)計画的な修繕の実施 ストックの維持管理にあたっては、日常的な点検や入居者とのコミュニケーションにより、 不具合や劣化の発生状況等の把握に努める。また、計画的な修繕を行い、入居者の日常生活の 快適性と安全性を確保するとともに、想定外の大規模改修などの発生を未然に防ぐことで、事 業費の削減を図る。 (2)入居者管理の適正化 限られたストックの中で、長崎県内に住む最低居住面積水準未満の世帯の解消のため、県営 住宅への入居機会を創出する方策として、建替や新設などによって管理戸数を増加させること は、前述したとおり今後の需要を踏まえると厳しいことから、収入超過者や高額所得者の退去 により空き住戸を確保するとともに、入居者管理の適正化を中心に取り組むこととする。 3.県営住宅の供給目標 (1)要支援世帯の考え方と県営住宅と市営住宅の役割分担 現在の公営住宅の入居基準は、収入や世帯構成等によって定められており、収入分位Ⅰ∼Ⅳ の原則階層と、収入分位Ⅴ∼Ⅵの裁量階層がある。これらに該当する世帯のうち特に住宅の確 保に配慮を要する世帯に対して公営住宅を供給する必要がある。また、公営住宅には県営住宅 と市町営住宅があり、適切な役割分担によってこれらの住宅の確保に配慮を要する世帯に対応 することが重要である。 住宅の確保に配慮を要する世帯に対する取り組みは、市町の行財政事情や地域特性、住民属 性等に応じたきめ細かなものであることで、住民の居住ニーズを充足することが可能となる。 そのため、住宅の確保に配慮を要する世帯に対する公営住宅供給は、市町による取り組みを基 本とし、県はその補完を図るとともに、モデル的・先駆的な取り組みにより市町に対して政策 的誘導を図ることが重要となる。 県においては、収入の特に低い世帯、高齢単身・夫婦世帯、子育て世帯、障害者、DV 被害者 等について、特に政策的に支援が必要な世帯と想定し、県営住宅の供給により市町のセーフテ ィネットの補完を行うこととする。 ■県営住宅と市営住宅の役割分担のイメージ 市町営住宅 県営住宅 ○特に政策的に支援が必要な世帯 ○市町のセーフティネット補完 ○モデル的・先導的取り組み ○地域の住宅ニーズへの対応 ○セーフティネット対応 ○既存ストックの有効活用 民間賃貸住宅への支援による対応 ○福祉との連携 第3章 長寿命化に関する基本的な考え方 (2)公営住宅需要推計 ① 推計方法 上記の考え方を踏まえ、平成 32 年度末の 10 年間の公営住宅需要を推計する。 要支援世帯として、民営借家等に住む公営住宅階層(収入分位 25%未満世帯等)のうち、 「A: 著しい困窮年収世帯で最低水準未満または高家賃負担率世帯」と「B:高齢小世帯、子育て世帯、 DV世帯など政策的な対応が特に必要な世帯」とする。また、基本フレームとして、人口につ いては国立社会保障・人口問題研究所の市町村将来人口推計値、世帯数は、国立社会保障・人 口問題研究所の推計値より算出する。 ② 推計結果 推計の結果、現状の 12,531 戸の県営住宅に対して平成 32 年度末に約 12,000 世帯分が必要に なる。 ■公営住宅需要推計フロー H32 年全世帯数:515,000 世帯 ↓H32 公営住宅階層(収入分位 25%未満世帯等):238,800 世帯 非持家世帯:85,200 世帯 ↓公営住宅入居世帯:37,400 世帯 持家世帯:153,600 世帯 県営住宅:12,500 世帯 市町営住宅:24,900 世帯 ↓公営階層だが、公営に入居できない世帯 85,200-37,400=47,800 世帯 A:著しい困窮年収世帯で最低居住面積水準未満または高家賃負担率世帯 ・ 県が施策対象とする、民営借家等に住む著しい困窮年収世帯のうち (1)自力では最低居住水準以上の住宅に住むことが出来ない困窮世帯:3,100 世帯 このうち、県 (2)最低居住水準以上に住むが、月収に占める家賃が高負担の世帯:6,400 世帯 の施策対象と B:高齢小世帯、子育て世帯、DV世帯など政策的な対応が特に必要な世帯 する世帯は ・ 県が施策対象とする、公営住宅以外に住む (3)高齢小世帯、障害者、母子家庭を含む子育て世帯:2,500 世帯 今後 10 年間で発生する需要数 (1)3,100 世帯+(2)6,400 世帯+(3)2,500 世帯=12,000 世帯 11 (3)目標管理戸数 公営住宅需要推計で算出した要支援世帯数 12,000 世帯に対して、県営住宅と市町営住宅のシ ェアで分担するとともに、県営住宅入居者のうち著しい困窮年収未満世帯を引き続き支援する ため、平成 32 年度の目標管理戸数(10 年後の必要な県営住宅ストック数)12,300 戸と設定す る。 目標管理戸数:12,300 戸 ■今後の県営住宅供給、ストックの考え方 うち県営住宅でカバー ・ 公営住宅需要推計で算出した 12,000 世 帯のうち、1/3 を県営で、残りを市町営 住宅でカバーすると仮定する 12,000 世帯×33%=4,000 世帯 ※県下の公営住宅のうち、県営のシェアは 今後 10 年間で発生する需要数:12,000 世帯 約 33% H23 年度県営住宅ストックの全体:12,500 戸 うち著しい困窮年収未満 12,500 戸×95%×70%=8,300 世帯 ・ 県営入居者のうち、今後 10 年間で県営住 宅から他の民間賃貸に移転が困難な世帯 を著しい困窮年収未満世帯と仮定する ※県営入居者のうち、著しい困窮年収未満 世は約 70% ※全戸数のうち、現状を踏まえて 5%を空き 家住戸と想定 H32 年度県営住宅ストックの全体(12,300 戸) 県営住宅でカバーする需要数:4,000 世帯 県営入居者のうち著しい困窮年収未満:8,300 世帯 4,000 世帯+8,300 世帯=12,300 戸世帯 ・ 従って H32 年度目標管理戸数(10 年後 の必要な県営住宅ストック数)は、約 12,300 戸と考える 第4章 長寿命化を図るべき県営住宅 第4章 長寿命化を図るべき県営住宅 1.ストック活用の手法選定 (1)ストック活用の手法 ストック活用の手法は下表の通りである。 ■ストック活用の手法 手法 詳細 建替 既設の県営住宅を除去し、その土地の全部又は一部の区域、非現地に新たに県営住宅を建設す る。 複合整備 大規模な団地において、上記の「建替」に加え、躯体を残して住戸改善(居住性向上、高齢者 対応)、共用部分改善(高齢者対応、安全性確保)、屋外・外構部分改善(高齢者対応)につい て全面的又はそれに準ずる改善を行う「全面的改善」 、下記の「個別改善」について、入居者 の状況や意向、財政状況、敷地条件等に応じて、複合的・並行的に組み合わせて実施する。 県営住宅の質の向上のため、次のいずれかの改善を行う。 規模増改善(2戸1、3戸2、増築) 住戸改善 長寿命化型(耐久性向上 等) 居住性確保型(間取り変更、給湯設備の設置 福祉対応型(段差解消、高齢者対応建具の設置、流し台、洗面台更新 安全性確保型(避難経路確保、不燃化 等) 長寿命化型(耐久性向上 個別改善 共用部分 改善 等) 等) 等) 居住性確保型(給水方式の変更 等) 福祉対応型(段差解消、手摺り設置 等) 安全性確保型(耐震改修、外壁落下防止改修、防火区画、避難設備設置 長寿命化型(耐久性向上 等) 屋外・外構 居住性確保型(児童遊園の整備 等) 改善 福祉対応型(段差解消、通路の幅員確保 等) 等) 安全性確保型(避難経路確保、照明設備の照度確保 等) 駐車場整備 県営住宅の効用を維持するため、次の修繕等を行う。 保守点検 修繕対応 経常修繕(経常的に必要となる小規模な修繕) 計画修繕(修繕周期等に基づき計画的に実施すべき大規模な修繕) 空家修繕 用途廃止 県営住宅としての用途を廃止し、他の用途として有効活用する。 移管 県営住宅を市町に譲渡し、市町営住宅に変更する。 ■個別改善の細分化 個別改善① 長寿命化型と居住性確保型または福祉対応型または安全性確保型 個別改善② 居住性確保型または福祉対応型または安全性確保型 個別改善③ 長寿命化型のみ 13 (2)選定方法 国の公営住宅等長寿命化計画策定指針に基づき、手法選定を以下のフローに従って行う。 (3)判定結果 判定の結果は以下の通りである。 ■判定別戸数 3 次判定 建替 複合整備 個別改善① 個別改善② 個別改善③ 修繕対応 用途廃止 移管 総計 データ 棟数 戸数 棟数 戸数 棟数 戸数 棟数 戸数 棟数 戸数 棟数 戸数 棟数 戸数 棟数 戸数 棟数 戸数 長崎 14 460 23 646 49 1,153 25 483 51 1,335 77 2,327 14 377 0 0 253 6,781 佐世保 諫早 大村 総計 0 0 0 14 0 0 0 460 36 31 0 90 897 873 0 2,416 30 4 7 90 540 90 120 1,903 18 11 0 54 301 166 0 950 18 10 14 93 542 163 172 2,212 37 10 6 130 1,068 186 150 3,731 8 7 6 35 165 109 78 729 4 0 2 6 94 0 36 130 151 3,607 73 1,587 35 512 556 12,531 第4章 長寿命化を図るべき県営住宅 ■判定別戸数(3 次判定) 判定 建替 複合整備 個別改善① 個別改善② 個別改善③ 修繕対応 用途廃止 移 管 長崎 団地名 佐世保 棟数 戸数 団地名 諫早 棟数 戸数 深堀 13 410 滑石 1 50 滑石 2 56 新田 6 151 21 590 花高 30 746 深堀 4 145 十郎原 12 240 平野町 3 18 富士見 1 22 川口 2 110 本原 2 148 江川 1 8 城山 4 74 小江原 17 328 三重第2 11 274 平和町 4 26 愛宕 4 三重 9 矢上第1 7 矢上第2 4 魚の町第2 1 12 大橋 6 本原 20 城山 1 毛井首 吉岡第 2 団地名 西諫早 栗面 大村 棟数 戸数 31 873 4 90 団地名 棟数 戸数 玖島 4 48 桜馬場 3 72 2 50 10 140 崎岡 6 110 65 桜木 4 47 幸町 2 64 219 大野 5 84 福田 9 102 65 池野 6 122 122 広田 3 48 241 上町第 1 1 36 小栗 4 60 久原 10 120 583 折橋 1 42 小川 5 36 植松 4 52 9 十郎原 6 99 西諫早 1 67 泉福寺 7 295 須佐 2 35 上町第 2 1 35 若竹台 川平 1 16 矢上第3 9 223 石神 3 33 三重第3 7 156 竹の久保 1 12 野原台 3 62 中川 1 15 花園 1 24 宇都 7 86 久原第 2 2 60 江川 1 12 汐見 1 24 諫早西部 3 100 松山 4 90 愛宕 5 158 桜木 2 54 滑石 14 658 黒髪 3 92 小浦 4 95 天神 2 30 富士見 1 53 日宇 1 12 深堀 8 186 すみれが丘 2 63 東望 8 230 上本山 3 54 女の都 3 60 十郎原 2 62 横尾 14 410 新田 9 271 川平 1 16 矢峰 2 32 大手 1 25 もみじが丘 9 350 深堀北 4 120 磯道 4 100 たちばな 2 69 元村 6 120 魚の町 1 24 黒髪第 5 1 3 西郷 4 65 三城 4 54 滑石 1 30 吉岡 1 40 原口 3 44 本小路 2 24 深堀 6 210 皆瀬 3 60 本尾 2 50 下本山 3 62 女の都第2 3 45 矢上第1 1 18 浜町 1 30 常盤 2 36 真砂 3 64 15 第5章 事業の実施方針 1.活用手法別実施方針 (1)建替 ① 基本的な考え方 構造は耐火構造とし、中高層化により敷地の有効利用を図るとともに、建替の整備水準に基 づき事業を実施する。建替後の戸数は、敷地の広さや形状などの状況を踏まえるとともに、他 団地の建替や用途廃止の実施に伴う管理戸数全体の推移を見ながら適宜検討して決定する。 また、 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(公共建築物木材利用促進法)」 に対応し、可能な限り県産木材の活用を図る。 ② 整備水準の目標 建替にあたっては、公営住宅等整備水準に基づくとともに、別途、目標とする水準を下表の とおり設定し、この達成を図る。 ■建替における整備水準の目標 住戸 共用部分 屋外外構 構造 戸当り面積 給湯設備 床 出入口 廊下 台所 便所 浴室 洗面所 省エネルギー 電気容量 スイッチ等 安全性確保 給水設備 排水設備 エレベーター 共用廊下・階段 駐輪場 集会所 公園・緑地 駐車場 中層耐火構造または高層耐火構造 40 ㎡∼75 ㎡ 3 箇所給湯 段差の解消 玄関手摺り 手摺りの設置 流し W=1,500、コンロ W=700、シングルレバー水栓 手摺りの設置、コンセントの設置 ユニットバス(1216)、出入口の段差処理、手摺りの設置 シングルレバー水栓、手摺りが設置可能な下地 外壁面内断熱 30A 大型蛍スイッチ等 − − − 3 階以上の建物に設置 片側手摺り設置 必要に応じて設置 50 戸以上の団地に設置 設置 戸当り 1 台程度 第5章 事業の実施方針 ③ 型別供給の実施 住戸プランの検討にあたっては、入居世帯の約 2 割が高齢者単身・夫婦世帯であることを踏 まえ、高齢者単身・夫婦世帯向けの 2DK(40∼50 ㎡)と、家族世帯向けの 3DK(60∼70 ㎡)の住戸 を入居者の実態や意向に応じて整備する。 また、1 階の住戸については、身体障害者等へのニーズにきめ細かく対応するため、軽微な改 修で車いす生活に対応できる仕様とする。 ■軽微な改修で車いす生活に対応できる住戸例 扉はすべて引き戸とする。 間仕切りと扉を撤去することで、洗面 脱衣室と便所を一体的に使用すること ができるようにする。 物入れを撤去することで車いすが容易 に通行できる廊下幅にすることができ るようにする。 大半の間仕切り壁と扉を撤去すること で、家族構成や暮らし方に合わせた間 取りに変更できるようにする。 ④ 付帯施設の整備 建替にあたっては、駐車場、自転車置き場、集会所、児童遊園を団地規模に応じて設置する とともに、100 戸以上の団地については、高齢者福祉施設や子育て支援施設の設置について検討 する。 特に集会所については、団地内だけでなく地域の拠点として活用できるように、可動間仕切 りを使うなどフレキシブルな空間として使用できるようにする。 17 (2)複合整備 ① 基本的な考え方 複合整備が位置づけられた団地は、個別に整備計画を策定し、住棟毎に建替、全面的改善、 個別改善を位置づける。整備計画の策定にあたっては、エレベーターの設置可能性、ローリン グの効率性、入居者の属性(高齢単身夫婦世帯の状況)、入居者意向、事業費、老朽度、耐震性 等の視点に基づき建替、全面的改善、個別改善のどの手法により整備を行うことが望ましいか 判断する。 ② 全面的改善の実施方針 全面的改善については、躯体以外は全てリニューアルを行い、躯体についても耐震性が確保 されていないものについては耐震改修を行う。住戸については、2 戸 1 または 3 戸 2 等により居 住面積の確保と型別供給、需要に応じた戸数減を図る。 整備に伴い入居者の仮移転が必要になることから、移転を最小限に抑えて入居者負担の軽減 を図る。また、エレベーター設置については、団地単位で整備と管理を一括で発注するなど、 事業費と維持管理費の削減についても検討する。 整備水準については、公営住宅等整備水準に基づくとともに、別途、目標とする水準を下表 のとおり設定し、この達成を図る。 ■全面的改善における整備水準の目標 住戸 共用部分 屋外外構 構造 戸当り面積 給湯設備 床 出入口 廊下 台所 便所 浴室 洗面所 省エネルギー 電気容量 スイッチ等 安全性確保 給水設備 排水設備 エレベーター 共用廊下・階段 駐輪場 集会所 公園・緑地 駐車場 − 40 ㎡∼75 ㎡ 3 箇所給湯 段差の解消 玄関手摺り 手摺りの設置 流し W=1,500、コンロ W=700、シングルレバー水栓 手摺りの設置、コンセントの設置 ユニットバス(1216)、出入口の段差処理、手摺りの設置 シングルレバー水栓、手摺りが設置可能な下地 外壁面内断熱 30A 大型蛍スイッチ等 新耐震基準、2 方向避難の確保 6 面点検可能な受水槽または直結給水 公共下水または合併処理浄化槽 5 階以上の建物に設置 片側手摺り設置 住戸数に応じて設置 戸当り 1.5 台程度 − 戸当り 1 台程度 第5章 事業の実施方針 ③ エレベーター設置方法の検討 エレベーターの設置にあたっては、住棟タイプが外廊下型の場合はエレベーターの設置は容 易であるが、階段室型の場合は階段室ごとにエレベーターを設置するか、外廊下を増設するか を選択するなど、設置方法を検討する必要がある。階段室設置型は費用が少なくなるが、エレ ベーターが踊り場設置になるため完全バリアフリーにならない。また、エレベーターの数が多 いため共益費が高くなる。外廊下増設型は、外廊下増設に伴い設置費が大きくなるが、完全バ リアフリーとなり、エレベーターが 1 基で済むため共益費も安い。 本県では、個別改善において階段室設置型でこれまで整備を進めてきたが、全面的改善の実 施にあたっては、間取りの変更も伴うことから、外廊下増設型についてもメリット・デメリッ トを踏まえて設置を検討する必要がある。 ■階段室設置と外廊下増設型の比較 階段室設置 外廊下増設型 概要 スペース コスト 工期 バリアフリー 居住性 計画 現況の階段室に 階段室型小型エ レベーターを階 段室毎に1基設 置する。 現況階段側にす べての階段室を 結ぶ外廊下を新 設し、エレベー ターを1基設置 する。 ・ 小型エレベーターとなり増築面積自体は比較 的小さいが、EVシャフトが階段室の外側に 大きく張り出すため、隣棟間隔が必要。 ・ 停止階が少ない小さなタイプのEVとなり、 イニシャルコストが低い。 ・ 2 戸 1 や 3 戸 2 によってエレベーター設置基 数を減らし、コストダウンできる。 ・ 1基当たりのランニングコストは低いが、設 置基数が多いため戸当り費用が増大する。 ・ エレベーターの設置のみであり、数基同時施 工が可能なため、施工期間は短い。 ・ エレベーター昇降口は踊り場レベルとなるた め、住戸までの間に階段の昇り降りが発生し、 完全なバリアフリーの確保とならない。 ・ プライバシーは、従来の動線と同様のため大 きくは変化しない。 ・ 居室の日照を妨げることは少ない。 ・ 小型なためストレッチャーが搬入できない。 ・ 既存住棟への構造的負担は少ない。 ・ 階段室部分が開放廊下とみなされないおそれ があり、階段室に面した開口部の広さなどに ついて検討する必要がある。 ・ 外廊下の柱、EVシャフト、階段のスペースが 発生するが、比較的面積は抑えられる。 ・ EV1 基あたりのランニングコストは割高だ が、設置数は 1 基だけであるため、戸当たり費 用が安くなる。 ・ 隣接する住棟を外廊下で結ぶことで、EVを 共用化して設置数を減らし、コストダウンで きる。 ・ エレベーター設置工事に加え、廊下新設工事 などが発生するため、工事期間が長くなる。 ・ エレベーター昇降口はフロアレベルとなるた め、エレベーターから各住戸へ階段の昇り降 りが無く、住棟のバリアフリーが確保できる。 ・ 周辺への日影の影響は小さい ・ 外廊下による、プライバシーや騒音の影響が 考えられる。 ・ 階段室側の居室の採光が悪くなる。 ・ エレベーター廊下部分階段が住棟と一体型の ため、構造検討が必要となる。 ・ 廊下側に出入口や開口部を新たに設けるた め、住戸改善と合わせた計画が必要。 19 ④ 間取りの変更による型別供給の実施と階段室の活用 建替や全面的改善の際には、型別供給により住戸と入居者のミスマッチが生じないように配 慮する。 特に全面的改善については、2 戸 1 や 3 戸 2 などの規模増改善による間取り変更を行い、 居室や水回りの水準の向上を図るとともに、型別供給により多様な世帯に対応できるようにす る。また、これに伴い戸数を減少させるなど、供給戸数の調整を図る。 また、既存の階段室については、そのまま活用することで新たに階段を増設する費用を抑え ることや、エレベーターシャフトとして活用することも併せて検討する。 ■外廊下増設型で 4 戸を 3 戸に改善した例 3DK:約 40 ㎡ 2DK:約 40 ㎡ 3DK:約 40 ㎡ 3DK:約 40 ㎡ 3DK:約 55 ㎡ 3DK:約 40 ㎡ 2DK:約 50 ㎡ 第5章 事業の実施方針 (3)個別改善 個別改善は、対象住棟の安全性確保や居住性の状況、入居者の意向を踏まえて実施メニュー を設定し、個別改善の整備水準に基づき事業を実施する。 ■個別改善のタイプ別実施方針 手法 タイプ 長寿命 化型 居住性 向上型 個別改善① 福祉対 応型 安全性 確保型 居住性 向上型 個別改善② 福祉対 応型 安全性 確保型 個別改善③ 長寿命 化型 実施方針 ○屋上・外壁・配管の耐久性向上 ・ 屋上・外壁・配管の耐久性や耐水性、耐候性、メンテナンス性の向上に係る改修 によりグレードアップを図る。 ○給湯設備の設置 ・ 浴槽・風呂釜を入居者が設置する住戸またはバランス釜の住戸で、3 箇所給湯を 実施する。 ○エレベーターの設置 ・ 5 階以上の住棟で設置スペースのある住棟について設置する。 ○浴室、便所等への手摺りの設置 ・ 高齢化対応されていない住棟で実施する。 ○浴槽の高齢者対応 ・ 高齢者対応されていない住戸は、給湯設備の設置に合わせて実施する。 ○住戸内部の段差解消 ・ 高齢者対応されていない住戸で実施を検討する。 ○耐震改修 ・ 耐震性に課題のある住棟において、耐震改修工事等により躯体安全性を高める。 ○外壁落下防止改修・バルコニーの手摺りのアルミ化 ・ 外壁の剥落が著しい住棟について実施する。 ○給湯設備の設置 ・ 浴槽・風呂釜を入居者が設置する住戸またはバランス釜の住戸で、3 箇所給湯を 実施する。 ○エレベーターの設置 ・ 5 階以上の住棟で設置スペースのある住棟について設置する。 ○浴室、便所等への手摺りの設置 ・ 高齢化対応されていない住棟で実施する。 ○浴槽の高齢者対応 ・ 高齢者対応されていない住戸は、給湯設備の設置に合わせて実施する。 ○住戸内部の段差解消 ・ 高齢者対応されていない住戸で実施を検討する。 ○耐震改修 ・ 耐震性に課題のある住棟において、耐震改修工事等により躯体安全性を高める。 ○外壁落下防止改修・バルコニーの手摺りのアルミ化 ・ 外壁の剥落が著しい住棟について実施する。 ○屋上・外壁・配管の耐久性向上 ・ 屋上・外壁・配管の耐久性や耐水性、耐候性、メンテナンス性の向上に係る改修 によりグレードアップを図る。 21 ■社会資本整備総合交付金対象となる個別改善メニュー一覧(赤字は本計画で実施するメニュー) 長寿命化型 居住性向上型 福祉対応型 安全性確保型 住戸改善 共用部分改善 屋外・外構改善 ・ 浴 室 の 防 水 性 向 上 ・ 間取りの改修 に資する工事 ・ 給湯設備の設置 ・ 内 壁 の 断 熱 性 向 ・ 電気容量のアップ 上・耐久性向上に資 ・ 外壁・最上階の天井 する工事 等の断熱 ・ 配管の耐久性向上 ・ 開口部のアルミサ に資する工事等 ッシ化等 ・ 住 戸 内 部 の 段 差 解 ・ 台所壁の不燃化 消 ・ 避難経路の確保 ・ 浴室、便所等への手 ・ 住 宅 用 防 災 警 報 器 摺りの設置 等の設置 ・ 浴槽、便器の高齢者 ・ ア ス ベ ス ト の 除 去 対応 等 ・ 高齢者対応建具 ・ ピッキングが困難 ・ 流し台、洗面台更新 な構造の玄関扉の 等 錠、補助錠の設置、 破壊が困難なガラ スへの取替、防犯上 有効な箇所への面 格子等の防犯建物 部品の設置等 ・ 躯体・屋上・外壁・ 配管の耐久性向上 に資する工事 ・ 避難施設の耐久性 向上等 ・ 給水方式の変更 ・ 外壁断熱化対応 ・ 共視聴アンテナ設 備設置 ・ 地上デジタル放送 対応(当該建物に起 因する電波障害対 策の既設共聴アン テナ等の改修も含 む)等 ・ 廊下、階段の手摺り 設置 ・ エレベーターの設 置・機能向上 ・ 段差の解消 ・ 視覚障害者誘導用 ブロック等の設置 等 ・ 耐震改修 ・ 外壁落下防止改修 ・ バルコニーの手摺 りのアルミ化 ・ 防火区画 ・ 避難設備の設置 ・ アスベストの除去 等 ・ エレベーターかご 内の防犯カメラ設 置 ・ 地震時管制運転装 置等の設置等 ・ 配管の耐久性・耐食 ・ 雨 水 貯 留 施 設 の 設 性向上に資する工 置 事等 ・ 地上デジタル放送 対応(当該建物に起 因する電波障害対 策の既設共聴アン テナ等の改修も含 む) ・ 集会所の整備・増改 築 ・ 児童遊園の整備 ・ 排水処理施設の整 備等 ・ 屋外階段の手摺り の設置 ・ 屋外通路等の幅員 確保 ・ スロープの設置 ・ 電線の地中化等 ・ 屋外消火栓設置 ・ 避難経路となる屋 外通路等の整備 ・ 屋外通路等の照明 設備の照度確保 ・ ガス管の耐震性・耐 食性向上 ・ 防犯上有効な塀、 柵、垣、植栽の設置 等 第5章 事業の実施方針 (4)用途廃止 老朽化が著しい住棟については、入居者が退去次第公営住宅等としての用途を廃止後、解体 し、公有地として他の用途への活用や民間への売却について検討する。 老朽化があまり見られない住棟については、公営住宅の需要や、他団地の建替や全面的改善、 用途廃止による管理戸数の推移を見ながら、適切な時期を見定めて募集停止を行い、入居者が 退去次第除却する。 2.目標管理戸数の達成方策 用途廃止と移管により管理戸数を削減するとともに、建替と複合整備における全面的改善に よる整備水準の向上を行うことで、目標管理戸数の 11,500 戸に達成を図る。なお、建替につい ては現況戸数の確保を基本とする。 ■整備による管理戸数の増減 活用手法 建替 複合整備 個別改善① 個別改善② 個別改善③ 修繕対応 用途廃止 移管 整備前 整備後 整備前 整備後※ 整備前 整備後 整備前 整備後 整備前 整備後 整備前 整備後 整備前 整備後 整備前 整備後 長崎 佐世保 諫早 大村 総計 460 0 0 0 460 412 0 0 0 412 646 897 873 0 2,416 − − − − 2,292 1,153 540 90 120 1,903 1,153 540 90 120 1,903 483 301 166 0 950 483 301 166 0 950 1,335 542 163 172 2,212 1,335 542 163 172 2,212 2,327 1,068 186 150 3,731 2,327 1,068 186 150 3,731 377 165 109 78 729 0 0 0 0 0 0 94 0 36 130 0 0 0 0 0 6,781 3,607 1,587 556 12,531 6,348 3,290 1,420 442 11,500 ※複合整備については個別の整備計画の状況を踏まえ全体として目標戸数の達成を図る 総計 整備前 整備後 23 第6章 長寿命化のための維持管理計画 1.概算事業費の設定 概算事業費については、これまでの実績や他都市の事例を踏まえ、戸当たり単価を以下の通 り設定すると、総事業費は 430 億円となる。 ■事業費内訳 戸あたり 活用手法 単価 戸数 (千円) 建替 15,000 複合整備(全面的改善) 10,500 460 事業費 (千円) 6,900,000 2,416 25,368,000 個別改善①(戸当たり平均値) 3,192 1,903 6,075,320 個別改善②(戸当たり平均値) 1,639 950 1,557,000 個別改善③(戸当たり平均値) 1,400 2,212 3,096,800 長寿命化型(個別改善①・③) 個別改善の内訳 居住性向上型(個別改善①・②) 外壁の耐久性向上 600 4,043 2,425,800 屋上の耐久性向上 300 4,115 1,234,500 給水管の耐久性向上 300 4,115 1,234,500 排水管の耐久性向上 200 4,115 823,000 給湯設備の設置 500 2,163 1,081,500 20 2,811 56,220 浴槽の高齢者対応 400 2,811 1,124,400 流し台、洗面台更新 300 2,811 843,300 便器の高齢者対応 300 2,811 843,300 EVの設置・機能向上 1,200 567 680,400 耐震改修 3,000 110 330,000 300 174 52,200 浴室への手摺の設置 福祉対応型(個別改善①・②) 安全性確保型(個別改善①・②) 総事業費 外壁落下防止改修 − 42,997,120 第6章 長寿命化のための維持管理計画 2.実施プログラムの作成 (1)スケジュールの考え方 建替、全面的改善、個別改善の実施にあたっては、既に事業に着手している団地や整備計画 策定済みの団地を最優先で実施する。次に、耐用年限や改善後の標準管理期間(全面的改善は 30 年、個別改善は 10 年)を確保するために、残耐用年数が少ない団地を優先する。次に、老朽化 などにより入居者の安全性確保に問題があるなど緊急性の高い団地を優先する。 修繕については、一定の事業費を確保し、建替や改善等の事業の実施に関わらず計画に進め ていくこととする。 また、事業費の大きい建替、全面的改善の事業費が平準化するように実施時期を調整すると ともに、建替、全面的改善の事業費負担が小さい年度に個別改善を集中的に実施することで、 建替・改善事業全体においても事業費の平準化を図る。 ■実施スケジュールの優先度の考え方(上位ほど優先度高) ・ 既に事業に着手している、または整備計画策定済みの住棟 ・ 耐用年限や標準管理期間の関係で交付金が使える時期の期限が近い住棟 ・ 老朽化や耐震性など安全性に問題のある住棟 (2)年次計画の作成 これまでの実績を踏まえ、年間 20 億円を建替・全面的改善・改善・修繕にかかる予算と想定 し、平準化を図りプログラムを作成する。 なお、予算上などの問題により計画期間に実施が困難な団地については、計画期間後速やか に実施する。 ■年間事業費の目安 手法 事業費 建替 6 億円 複合整備 6 億円 個別改善 3 億円 修繕対応 3 億円 計 20 億円 25 ① 建替 計画期間内に滑石団地と深堀団地の建替事業の完了を図る。 ■建替の実施プログラム(実施戸数は計画戸数とし、事業費は整備期間で按分) 地域 住宅名 長崎 滑石 既存 計画 戸数 戸数 (戸) (戸) 計画期間実施戸数(戸) H23 前期 H24 H25 H26 50 24 長崎 深堀 410 388 ※ 事業費計(億円) 460 412※ 6.6※ 3.2 H27 H28 後期 H29 H30 H31 H32 24 ※ 88 64 − 70 8.4 計画 期間 後 7.1 70 5.3 5.3 96 5.3 4.8 − 4.8 4.8 − ※H22 建設(H24 竣工)の 88 戸を含む ② 複合整備 既に事業着手中の滑石団地と、整備計画策定済みの新田団地を前期に実施し、後期には花高 団地を最初に実施し、続いて毛井首団地を実施し、西諫早団地は計画期間後に実施する。また、 計画戸数については、団地単位ではなく県営住宅全体で達成を図る。 ■複合整備の実施プログラム(実施戸数は既存戸数) 地域 既存 計画 住宅名 戸数 戸数 (戸) (戸) 長崎 滑石 56 − 長崎 毛井首 590 − 佐世保 新田 151 − 佐世保 花高 746 − 諫早 西諫早 873 − 事業費計(億円) ※ 2,416 2,244※ 計画期間実施戸数(戸) H23 H24 前期 H25 H26 30 H27 H28 H29 後期 H30 H31 26 0 30 30 H32 30 計画 期間 後 30 30 31 30 30 30 30 30 500 0 30 30 30 566 873 0.0 0.0 5.3 5.9 5.3 5.3 5.3 5.4 5.3 5.3 210.9 第6章 長寿命化のための維持管理計画 ③ 個別改善 想定事業費の範囲内で年当たりの実施戸数を設定し、計画手に着手を図る。なお、入居者の 生活への影響や老朽化等に伴う緊急性の高い個別改善①と個別改善②について重点的の取り組 み、個別改善③はこれらの半数程度とする。 ■個別改善の実施プログラム 計画期間実施戸数(戸) 既存 計画 計画 戸数 戸数 前期 後期 期間後 (戸) (戸) H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 活用手法 個別改善① 1,903 1,903 60 60 60 60 60 60 60 60 60 60 1,303 個別改善② 950 950 60 60 60 60 60 60 60 60 60 60 350 個別改善③ 2,212 2,212 30 30 30 30 30 30 30 30 30 30 1,912 事業費計(億円) 5,057 5,057 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 73.6 ④ 修繕対応 想定事業費の範囲内で、部位毎に設定した修繕周期に応じて計画的に実施するとともに、突 発的に発生した修繕に対応する。 ■個別改善の実施プログラム 計画期間実施戸数(戸) 既存 計画 計画 戸数 戸数 前期 後期 期間後 (戸) (戸) H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 活用手法 修繕対応 3,731 3,731 − − 事業費計(億円) 3,731 3,731 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 − − − − − − − − − − (3)まとめ 上記をとりまとめると、事業費は年間 10∼21 億円となる。 ■年度別改善手法別概算事業費 活用手法 計画期間前期(億円) H23 H24 H25 H26 計画期間後期(億円) H27 H28 H29 H30 H31 計画 H32 計画 期間計 期間後 建替 6.6 3.2 8.4 7.1 5.3 5.3 5.3 4.8 4.8 4.8 55.4 0.0 複合整備 0.0 0.0 6.3 5.9 6.3 6.3 6.4 6.3 6.3 6.3 50.1 203.6 個別改善 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 3.3 33.0 73.6 修繕対応 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 30.0 − 事業費計 12.9 9.5 21.0 19.2 17.8 17.8 18.0 17.4 17.4 17.4 168.4 277.2 27 3.計画修繕の実施 修繕の実施にあたっては、部位ごとに定められている修繕周期を目安として実施することと する。 ■部位別修繕周期一覧 区分 部位 仕様 タイル 修繕周期 5年 40年 15年 30年 15年 10年 20年 5年 30年 3年 8年 25年 10年 20年 5年 30年 5年 10年 20年 修繕内容 補修 更新 補修・トップコ ート 高圧洗浄・塗替 更新 補修・トップコ ート 高圧洗浄・塗替 更新 更新 補修・貼替 更新 補修 更新 塗替 補修 更新 補修・貼替 更新 補修 更新 補修 トップコート 更新 15年 更新 15年 10年 16年 60年 5年 15年 30年 30年 5年 30年 30年 10年 30年 15年 更新 補修 貼替 更新 補修 貼替 更新 更新 塗替 更新 更新 補修 更新 更新 5年 吹き付けタイル 外壁 外壁 15年 30年 5年 アクリルリシン 隔て板 AEP クロス ビニールクロス ボード PB 外部天井 ケイカル板EP クロス ビニールクロス ボード PB 屋上防水 ウレタン塗膜防水シリコ ントップコート 内壁 天井 建築 防水 建具回シーリン 変成シリコン グ 打ち継ぎ目地 ポリサルファイド フローリング 内床 ビニールシート 建具 玄関扉 スチール塩ビ鋼板 鋼製建具等 SOP 集合郵便受け その他 掲示板 樋 VP 第6章 長寿命化のための維持管理計画 区分 部位 仕様 給湯器 WHG-116号 給水管 VA 流し台 洗面化粧台 便器 機械設備 給水・給湯等設 浴槽 備機器 UB 給水ポンプ 受水槽 量水器 検針盤 換気設備 天井扇 屋内配水管 D-VA 屋外配水管 VP 排水設備 ガス設備 ガス設備 共用主配電盤 電気設備 屋内 開閉器 住戸分電盤 灯具 廊下・階段室 エレベーター TV共聴設備 屋外 その他 屋外付帯 外灯 屋外配線 構内外線 フェンス アスファルト舗 装 修繕周期 5年 3年 10年 10年 30年 20年 5年 25年 5年 25年 5年 20年 1年 3年 5年 15年 7年 10年 20年 8年 16年 8年 10年 30年 5年 25年 30年 1年 10年 30年 15年 25年 3年 10年 30年 25年 3年 20年 10年 20年 30年 15年 5年 20年 修繕内容 部分修理 部品交換 更新 部分修理 更新 更新 部分修理 更新 部分修理 更新 ゴム栓交換 更新 部品交換 部品交換 部分修理 更新 部分修理 架台塗替 更新 更新 更新 更新 部分修理 更新 部分修理 更新 更新 定常修理 解体修理 更新 部分修理 更新 ランプ交換 安定器交換 更新 更新 定常修理 更新 定常修理 更新 更新 更新 補修 更新 資料:建築物の LC 評価用データ集(BELCA) 29 第7章 長寿命化のための維持管理による効果 1.長寿命化型改善内容の検討 現在の仕様よりも耐久性、耐候性、耐水性、メンテナンス性の高いものを使用し、長寿命化 を図る。改修例を以下にまとめる。 ■長寿命化型改善の例 改修項目 ねらい 改修例 従前より耐久性の高い塗装等 リシン吹付塗装から複層塗 外壁やバルコニ を使用し、外壁、バルコニー 材に変更 ーの改修 の改修を行うことで、耐久性 向上を図る。 従前より防水性能が高いもの 従前より防水性能の高い塗 を塗装することで、防水性の 装 向上と躯体保護を図る。 外壁の改修 外壁を剥落防止対策工法等で 剥落防止対策工法による外 改修することで、安全性及び 壁改修 耐久性向上を図る。 防水層断熱ブロック押さえ工 防水層断熱押さえ工法によ 屋上の改修 法等従前の屋上防水より耐久 る屋上改修 性の増すものに改修すること で、耐久性向上を図る。 従前より腐食防止効果が高い SOPからウレタン樹脂塗 鉄部の改修 ものを共用廊下やバルコニー 装に変更 の鉄部に塗装することで、耐 久性向上を図る。 亜鉛メッキ鋼管や炭素鋼管な 給水管を塩ビライニング鋼 給排水管等の配 どの給排水管を塩ビライニン 管に交換 管の改修 グ鋼管に交換したり、更正(ラ イニング)工事を行う。 ガス管を白ガス管(亜鉛メッ ガス管交換をポリエチレン ガス管の改修 キ鋼管等)からポリエチレン 管に交換 管やライニング鋼管等へ交換 を行う。 第7章 長寿命化のための維持管理による効果 2.ライフサイクルコスト(LCC)の算出 (1)基本的な考え方 長寿命化型改善を実施するにあたって、国の公営住宅等長寿命化計画策定指針の LCC 算出の 考え方に基づき、標準的な LCC の縮減効果を算出する。 改善事業を実施しない場合と実施した場合の年平均 LCC の差が LCC 縮減効果となる。改善事 業を実施しない場合の LCC は、建設から次回更新までの使用年数における修繕費と建替費を合 わせたもので、改善事業を実施した場合の LCC は、建設から次回更新までの使用年数における 修繕費と改善費、建替費を合わせたものとなる。 ■LCC 縮減効果の考え方 ○長寿命化型改善を実施しない場合) LCC改善額がプラスになる場合のみ長寿命化 ・LCCは小さいが、使用年数は短い の効果が高いものとなり交付金対象となる 修繕費 ○長寿命化型改善を実施した場合) ・LCCは大きいが、使用年数が長い 建設費 修繕費 年あたりに換算 建設費 年平均改善額 改善費 LCC 年平均LCC (2)算出方法 長寿命化型改善事業を実施する場合、実施しない場合、それぞれの場合について建設時点から次回 の建替までに要するコストを算出し、住棟単位で年当りのコスト比較を行う。 ・1 棟の LCC 改善効果=LCC(計画前)−LCC(計画後) ・LCC(計画前)=(累積修繕費+建替工事費)/使用年数 ・LCC(計画後)=(累積修繕費+長寿命化型改善工事費+建替工事費)/使用年数 31 (3)算出結果 算出の結果、全ての住棟で LCC 縮減効果があり、最小で 6 千円/棟・年、最大で 2,924 千円/ 棟・年の LCC 縮減効果となる。 ■LCC 縮減効果算出結果まとめ 全面的改善 ①計画前使用年数 ②計画前累積修繕費(円/戸) ③計画前建替工事費 ④計画前 LCC(円/戸・年) ⑤計画後使用年数 ⑥計画後累積修繕費(円/戸) ⑦計画後今後 10 年間の長寿 命化型改善工事費(円/戸) 長寿命化型個別改善 40 5,940,990 15,000,000 523,525 70 12,428,985 9,000,000 40 近年の実績より想定 5,940,990∼ 国のプログラムより 7,003,590 算出 15,000,000 近年の実績より想定 523,525∼ 550,090 0 善工事費(円/戸) ⑨計画後建替工事費(円/戸) ⑩計画後 LCC(円/戸・年) ⑪年平均改善額(円/戸・年) ⑫累積改善額(70 年・現在 価値化)(円/戸) ⑬年平均改善額(現在価値 化)(円/戸・年) ⑭LCC 縮減効果(円/棟・年) 15,000,000 520,404 3,111 (②+③)÷① 70 耐用年限を想定 10,569,435∼ 国のプログラムより 12,428,985 算出 800,000∼ 本計画に基づく棟別 1,400,000 概算事業費より想定 ⑧計画後今後 11 年目以降に 想定している長寿命化型改 根拠等 0∼2,800,000 残耐用年数に応じて 設定(15 年に 1 回) 15,000,000 近年の実績より想定 388,135∼451,843 (⑥+⑦+⑧+⑨)÷⑤ 98,247∼138,247 ④-⑩ ⑪を年 4%割引率で 72,773 2,298,443∼3,234,224 現在価値化し て 70 年分累積 1,040 6,000∼41,000 32,835∼46,203 ⑬÷⑤ 158,000∼2,924,000 ⑬×棟別戸数 第8章 計画の推進に向けて 第8章 計画の推進に向けて (1)公営住宅制度の見直し等への対応 「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する 法律」に基づき、公営住宅法が一部改正されたことにより、住戸面積や省エネ基準をはじめと した公営住宅の整備基準、現状 15.8 万円(裁量階層は 21.4 万円)で定められている収入基準、 同居親族要件が条例委任になる。当面は国の参酌基準を用いることとするが、今後必要に応じ て県独自の基準について検討する必要がある。 (2)入居者管理の適正化 ① 収入超過・高額所得者等への対策 収入超過・高額所得者に対しては、住宅困窮者への住宅供給機会の創出を図り、民間住宅へ の斡旋を行うなど、退去を促進する。特に高額所得者や悪質滞納者に対しては、期限を定めて 住宅の明渡請求を行い、必要に応じて強制執行の申立てをするなどの厳格な対応を行う。 ② 期限付き入居等によるセーフティーネット機能の強化 子育て世帯をはじめとした一定期間において特に住宅の確保に配慮が必要な世帯に対しては、 期限付き入居制度の導入について検討し、支援が必要な期間において適切な住宅セーフティネ ット形成を図るとともに、空き家供給の効率を上げ、入居機会の創出を図る。 ③ 住み替え等によるミスマッチの解消 県営住宅においては広い住戸に単身世帯が入居する一方で狭い住戸に多人数世帯が入居する 状況など、世帯と住戸のミスマッチが見られる。そのため、建替において型別供給を行うとと もに、ソフト施策として住替えの実施について検討する。 (3)事業の推進方策 ① 入居者との合意形成方策 長寿命化を含めたストック活用の実施にあたっては、入居者との合意形成が重要となる。そ のため、複合整備において建替や全面的改善、個別改善を組み合わせ、入居者の合意形成に資 する整備手法を選択する。 建替事業や改善事業の実施にあたっては、入居者を対象とした説明会やパンフレット配布等 による情報提供を行うなど、事業の概要を周知することで、効率的に計画を推進していく。 建替及び改善時の移転、仮住居については、入居者の負担の軽減を図り、入居者の意向に応 じた他団地への住替え、住み慣れた地区の近隣団地への仮移転を実施し、特に建替に伴う新築 住宅への入居については、家賃の負担軽減措置を講じるとともに、住替えを希望する入居者に ついては十分な説明を行い、家賃の支払いが困難な方には、住み慣れた地区の近隣団地への移 転など、柔軟な対応を行う。 用途廃止となる団地の入居者へは、早期に事業計画の概要の周知を図り、十分理解を得たう えで、統合される団地への移転や希望する団地への住替え等を進めていく。 33 ② 国及び市町との連携 国や市町の住宅政策の動向の把握に努め、連携を図りながらストック活用を推進する。特に 市町の公営住宅部局との連携を密にし、建替時期の調整や県営住宅と市町営住宅との需給バラ ンスの調整を図ることとする。 ③ 民間活力の導入 建替の実施にあたっては、事業費と維持管理費の削減、入居者サービスの向上に向け、民間 活力の導入について検討することが重要である。事業方式において代表的なものに PFI 事業が あり、PFI 事業には主なものとして BTO 方式・BOT 方式・BT 方式がある。また、その他の手法とし て、性能発注や設計施工一括発注、VA(バリューエンジニアリング)など発注時に民間活力を導 入する手法もある。必要に応じて事業方式を検討する。 (4)福祉施策との連携 ① 地域による見守り機能の強化 本県の県営住宅には高齢者が多く居住しており、緊急通報装置の設置などを進めているが、 すべての住戸で実施することは困難である。そのため、団地内の自治会や周辺地域等との連携 により高齢者の声かけや見守りを行うことで、安心して暮らせる居住環境の形成を図る。 ② 団地集会所を活用したコミュニティの活性化 県営住宅の集会所について、団地自治会や NPO 等が地域の高齢者や子育て世帯に対してサー ビス等の取り組みを行う場合、弾力的な活用により支援活動拠点の形成を図る。 ③ 空き住戸の目的外使用(グループホーム等への転用等) 県営住宅において空き住戸が長期的に発生し、今後も需要が見込めない場合は、グループホ ームをはじめとした目的外使用について検討する。 (5)災害時における公営住宅の活用 ① 被災者への公営住宅の提供 災害により住宅を失った被災者が発生した場合は、県営住宅の開き住戸を活用して生活の安 定確保を図る。