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Title 粉体圧縮時の応力緩和現象と錠剤強度に関する研究( Abstract_

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Title 粉体圧縮時の応力緩和現象と錠剤強度に関する研究( Abstract_
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粉体圧縮時の応力緩和現象と錠剤強度に関する研究(
Abstract_要旨 )
安茂, 寿夫
Kyoto University (京都大学)
1970-01-23
http://hdl.handle.net/2433/213321
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【117 】 一一
氏
名
安
茂
寿
あん
も
とし
夫)
お
学 位 の種 類
薬
学 位 記 番 号
論
学位授与の日付
5年 1 月 23 日
昭 和 4
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2項 該 当
学位 論 文題 目
粉体 圧縮 時の応 力緩和現象 と錠 剤強度 に関す る研究
論文調 査 委員
教 授 岡田寿太 郎
(主
学
薬
博
博
第
士
8
0号
査)
論
文
内
教 授 中 垣 正 幸
容
の
要
教 授 掛 見 喜一 郎
旨
医薬品錠剤に関す る研究の大部分は結合剤, 滑沢剤∴崩壊剤等の評価についてであったが, 最近にな っ
て圧縮時の医薬品粉体層の動的挙動を解明 しよ うとす る研究が発表 され るよ うにな って きた。 しか し打錠
について理論的に解明されている部分は極めて少な く, 打錠条件 (打錠圧, 打錠速度等) はほとん ど経験
と試行錯誤によ り決定 されているのが現状である。 医薬品粉体の圧縮成形の機序について も, 打錠時に起
こる現象 (スラッグ打錠による成形の強度の劣化, しま り, キャ ッピング等) の説明に して もまだ定説が
ない。
圧縮に際 し, 粉体層は粘弾性 的挙動を示すか ら, 圧縮粉体層の応力緩和を測定すれば, 応力の粘性成分
と弾性成分の大小を知 ることがで きる。
著者は応力緩和現象を詳細に解析す ることによ り, 粉体の圧縮成形機序 の解明を試みた。
まず圧縮粉体層の厚 さを変 えると観察 され る応力緩和量は著 しく変化 した。 本来, 粉体の応力緩和特性
値は粉体屑の厚 さに無関係で あるか ら, 厚 さによ って応力緩和壷が変化す るのは, 粉体 自体に起因す る応
力緩和 (粉体緩和) によるのではな くて, 船体 と臼壁 との問の摩擦に起因す る応力緩和 (摩擦緩和) に基
づ くものと考えた。 そこで圧縮粉体層の厚 さを数段階に変 えて応力緩和を測定 し, 厚 さを 0に外挿す るこ
とによ り摩擦緩和を消去 して粉体緩和を求めた。
つ ぎに粉体緩和の特性値 (粉体緩和量P2, 粉体緩和速度定数 k) が圧縮圧力の上昇に伴 っていかに変化
す るかを測定 した。 そ して粉体は一般の粘弾性体 とは異 な り, 圧縮圧力が増大 した とき, 必ず しも応力緩
和量が増加す るとは限 らず, 逆に減少す る圧力範囲があることを見 出したo そ して dP2/
dp>0の圧力範囲
/
dp< 0 の圧力範囲で粉体層は内部 に空隙を残 したまま, そ
で粉体は充填 され (充填期) これに続 く dP2
の構造が固定 され る (構造回定期) ものと解釈 した。 なお充填期 と構造間定期は圧力上昇に伴い交互 に出
現す る。
一方粉体の圧縮曲線か ら対数圧力対変位の関係を描いて, 粉体緩和特性値の圧力に対す る変化 と対比 し
- 33
3-
て, 上述の充填期, 構造固定期の存在を裏付 けた。 更に応力緩和実験 と同条件で圧縮後直 ちに抜圧 して得
た錠剤の強度, 充填率, 瞬間的弾性回復率を測定 し, 粉体緩和特性値 の圧力に対す る変化 と対比 させて以
下の結論を得 た。
1)
粉体 の圧縮過程について
粉体は圧縮に際 し, 充填期 と構造固定期の二 つの状態を繰 り返 しなが ら次第に圧密化 され る。
充填期では見掛 け密度は増大す るが粉体層の再充填が行 なわれ, 粉体粒子問の接触点は絶 えず移動 して
い るため, 強度はあま り増加 しない (む しろ減少す ることもある)0
一方構造固定期では, 粉体層の見掛 け密度の増加は少 ないが粉体粒子問の接触点が固定 して, この接触
点 に強い圧 力が作用す るため錠剤強度の上昇が著 しい。
2) 打錠圧力の上昇に伴 う錠剤強度の劣化について
第 2 回 目以後 の充填期において錠剤強度が劣化す るのは, 一度結合 した粉体粒子問の接 触点が充填期の
再出現による粒子 の移動のため破壊 され るか らであ り, エ トキシベ ンズア ミドの場合, この破壊 がキャッ
ピング発生の直接原因 とな ってい る。
3) 打錠時 「 しま り」 について
および k
微結 晶セル ローズのよ うに大 きな塑性変形性 を持 ってい る粉体では第 1 回 目の構造 間定期でP2
は直 ちには低下せず高 い水準を持続す る。 この間に粉体粒子の塑性変形によ り粒子間の接着面積が増 し,
緊密な圧密構造が出現す る。 この構造は強固で崩れを伴なわないため粒子 の塑性変形が終 了 した時点でP2
および k は急激に低下す る。 この時の錠剤強度 の上昇は著 しい. この状態が打錠 における理想的な 「 しま
り」 で ある。
4) ス ラッグ打錠 と錠剤 強度 について
微結晶セル ローズを打錠後, 再粉砕 した粉体粒子は塑性変形性が少な く, この粉体では前述の「 しま り」
現象は認 め られない。
緊密な圧密構造がで きず, 完全な構造固定が起 こらないので充填構造は絶 えず こまかな崩れを伴 ってい
る。 したが って同一打錠圧力 における錠剤強度 は原粉体 のそれよ り劣 っている。
5) キャッピングについて
3
0
0
kg/
c
m 以上の圧力で打錠す るとキ ャッピングを起 こし, 錠剤強度が劣化
エ トキシベ ンズア ミドを 1
す る。 キ ャッピングを発生す る最小圧力は第 2回 目の充填期の始 まる圧力に一致 してい る。 そ して第 1回
1
20
0
kg/
c
m)すなわち k の最小圧力において錠剤の瞬間的弾性 回復率 は最小
目の構造 田定期の終 了圧力 (
にな り, 強度は最大にな った。 そ して続 いて現 われ る第 2回 目の充填期において瞬間的弾性 回復率は急増
し, 同時にキ ャッピングが発生 した。
打錠圧力の上昇に伴 う弾性 回復傾向の増大が 内因 とな り, 第 1 回 目の構造固定期において完成 した粉体
粒子問の結合 が続 いて出現す る充填期において破壊 され, これに伴 ってそれ までに蓄積 していた内部歪 が
表面化 したためで ある。
以上の結論を総合 して適正打錠圧 につ き, つ ぎのよ うに考察 した。
通常, 適正打錠圧は錠剤の強度 と崩壊度 のかね合 いで決定すべ きで ある。 錠剤の強度 と崩壊度は打錠条
-3
3
4-
件だけでな く粉体 の種 々の特性の複雑 な関係において決 まるものであるが, それぞれの粉体において最良
の結合性 と崩壊性を那 寺す るためには打錠圧力をその粉体 の第 1 回 目の構造固定期の終了圧力に合致 させ
るべ きである。 なぜな らこの圧力で打錠 した錠剤は内部 に空隙を比較的多 く残 しているため崩壊性が優れ
ていると同時に錠剤強度が大 きいか らで ある。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
現在用い られている医薬品の剤型 として, 最 も重要なものの一つで ある錠剤の整型技術は, 主 として経
験 に依存 して きた感があ り, 打錠時における粉体層 の挙動を解明 しよ うとい う研究が最近表わ れ て 来 た
が, 未だ充分 とはいえない。
著者は, 粉体層を圧縮す るとき, その応力が時間 とともに減少す るとい う応力緩和現象に着 目して, こ
れを解析す ることによ り, 粉体層の圧縮成型過程の解明を試みた。
まず粉体の応力巌和量を, 器壁 との摩擦に起因す る部分 と粉体 自体に起因す る部分 とに分 け, 後者 に及
ぼす成型圧 の影響を調べた。 同時に各圧縮荷重における空隙率, 強度を測定 した。 そ して種 々の粉体につ
いて得た結果を整理 して, つ ぎのとお り, 圧縮時の粉体挙動を説明す ることがで きたので ある。
(1) 荷重の増大 とともに, 応力緩和量が増加す る時期が, 圧縮初期に表われ る。 これは粉体が, 粉体問
の空隙を埋めることを繰返 して, 充填 され る時期 (充填期) に相当す る。
(2)
さらに荷重が増大す ると, 応力緩和量がむ しろ減小す る時期が表われ る。 これは粉体が空隙を残 し
たまま, 互いに強 く圧着 され る過程に相当す る。 これを構造問定期 と称す る。
粉体の加圧整型は上述の充填期 と構造固定期 とを交互に操返 して進行す る。 すなわち一度構造が固定 し
て も, さらに強大な圧力よ り破壊 して再び充填が起 こり, 又固定 され るに到 る。 このよ うに圧縮過程を説
明 し得 たのが本論文の骨子である。
実際に使用 され る錠剤は, 或程度の機械的強度を保有す ると同時に, 消化管 内では速やかに崩壊す るこ
とが望ましいので, 上記 の過程 よ りいえば, 第一構造固定期の終了時が, 強度 も強 く且, 内部空隙を残す
ので, 理想的であることを明 らかに した。
以上の研究は錠剤製造上, 重要な指針を与えた もの とい うべ く, 本論文は薬学博士の学位論文 として価
値 あるものと認める。
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