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平成25年度摂食・嚥下リハビリテーション初級研修

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平成25年度摂食・嚥下リハビリテーション初級研修
「平成25年度摂食・嚥下リハビリテーション初級研修」の質問・回答集
埼玉県社会福祉事業団
嵐山郷
○はじめに
この質問・回答集は平成25年7月23日(火)に実施された、「平成25年度摂食・嚥下リハビリテー
ション初級研修」の受講者からの事前質問と各講義の質問票に対して回答したものです。なお、次の要領で
作成しております。
1. 同じ趣旨の質問についてはまとめて回答しています。
2. 講義を理解する上でポイントとなる質問に対する回答です。
3. 講習内容に関係する質問にのみ回答しています。
4. 実際の利用者等の状況はそれぞれに違います。よって、回答はあくまで質問票から読み取った範囲で
の回答となります。
○事前質問《研修にて学びたいこと》への質問及び回答
Q:〈正しく嚥下したことを確認する方法を教えてください〉
A:口腔内に食物残渣が残っていないか、また喉頭の動きに注目し、しっかり上方に上がり下がってくるか
確認しましょう。
Q:〈食事介助時の介護者の立ち位置について教えてください〉
A:できるだけ座位で、目線が介助者と同じか下の位置にしましょう。お互いに疲れない姿勢が大切です。
Q:〈食事の形態の選び方と変えていくときのポイントを教えてください〉
A:本人の機能にあった形態を選ぶには、食塊形成ができるかどうかがポイントです。段階を上げる場合は
一度にすべて上げるのではなく、一品のみ段階を上げて対応できるか確認してから移行してください。
Q:〈リクライニング車椅子での食事の姿勢について教えてください〉
A:送り込みが難しい場合、患者の状態にもよりますが床から上体が 30 度~45 度くらいの範囲で考えた方
が良いと思います。また円背の方の場合はティルトの調節が必要なケースが多いです。
Q:〈身体機能からだけではなく、咀嚼をほとんど行わず飲み込んでしまうような習慣がついてしまってい
る様子です。高齢になっても習慣の改善は図れますか〉
A:丸呑みの場合、窒息、誤嚥の危険性を考えれば食形態の調整、食事介助法を工夫しながら咀嚼の動きを
出すような支援が必要です。年齢にもよりますが、できるだけ早期からの対応が望まれます。
○講義 1《摂食・嚥下機能のメカニズム》の質問及び回答
Q:〈重度心身障害を持つ方ですが、口の中にハブラシを入れるだけで嘔気をもよおしてしまい、食後のハ
ブラシケアーが全くできません。本人も電動歯ブラシを買い工夫していますが、嘔気をもよおしてしま
います。良い口腔ケアーを教えてください〉
A:年齢、本人の全身状態、定頸の有無等が不明ですが、嘔吐反射が強い方なので喉の奥まで器具を入れず、
手前からブラッシングして慣れさせる必要があります。口腔ケアを考えれば、ブクブクうがいは口腔機能
の訓練にもなるため、可能ならば試してみてください。
Q:〈食事を始めると「くしゃみ」を連発する方がいます(高齢・マヒあり)。摂食・嚥下運動の一連の閉
鎖の中で鼻咽頭閉鎖が十分でない場合、くしゃみをする事は考えられますか〉
A:可能性があります。
(食物が奥にまわる)
Q:〈舌が前後のみに動きがある時の介助方法について、指示が入っていかない時にはどうしたらよいでし
ょうか〉
A:基本的には食形態はペースト的なものになります。介助の場合、舌をスプーンで押し込んで口唇閉鎖さ
せるように介助します。
Q:〈スプーンを噛んでしまう方がいます。しっかり口に入れると嫌らしく、すぐに噛みついてしまいます。
シリコン製のスプーンを利用しているのですが、特に機嫌が悪いと、スプーンを噛み、口腔内に食物が
入ったまま声を出したりスプーンを奥に押し込もうとしてむせることがあります。こちらの話を理解で
きる時とできない時があるので心配です。噛まないようにするには、素早く口からスプーンを出すしか
方法はないのでしょうか〉
A:現場を拝見してないのではっきりお答えすることはできません。介助をする場合は、できるだけ平らな
スプーンを使用してください。口唇に沿ってスプーンを横にあて、スープ等をすする動きができるか試し
てみてください。その時はスプーンは金属製のもので結構です。
Q:〈障害児(知的3歳)
、月1~2回原因不明の高熱を出します。食形態は「軟食、きざみ」ですが、よ
く食べるお子さんです。誤嚥性肺炎の可能性はあるのでしょうか。その場合には医師(内科)に相談す
るのが良いのでしょうか〉
A:1~3 ヶ月間程熱計表(1 日 3 回)を付けていただき、主治医に相談すると良いでしょう。
Q:〈障害児(機能障害、脳性まひ、5歳)、食形態(おかゆ、きざみ又はミキサー)食事後半でむせるこ
とがあり、時々むせると同時に吐いてしまいます。筋力を訓練させていくことが必要でしょうか。言葉
は「アッー」程度です。成長と共にむせなくなるのでしょうか。むせた場合、今までは落ち着いてから
水を飲ませていましたが、それでよかったか。また、むせている最中に首の後ろあたりをトントンして
いた(又は背中をさする)
、それも良かったか。むせた場合の適切な対応を教えてください〉
A:むせた場合はいつ、何でむせたかを記録してください。また、むせた時は食事を中止し、首の後ろ辺り
を手をカップ状にして叩いたりさすってあげてください。
食事の後半でむせる場合は、喉頭蓋谷、梨状陥凹に留まっていることが多いのでゼラチンゼリーを最後の
方に提供することも試みてください。
Q:〈知的障害者の利用者が食事や水分を噛まずに丸呑みしている。小さく切り職員が見守りしているが噛
むことをどのように教えたら良いか(今のところかき込んでもむせない)
〉
A:口唇にかっぱえびせんを触れさせ、捕食できるか確認し、その後、口腔内に取り込み咀嚼の動きができ
るか観察してみてください。
Q:〈実際に唇やほお、唇の機能が低下している利用者に対してどんなこと(口腔体操やそれを兼ねたゲー
ム)などで、低下を予防することができるかなどを教えてほしいと思いました。
機能低下を発見した際のその後の対策、施設としての取り組み方法、流れなども・・・よろしくお願い
致します〉
A:施設(高齢、障害)によって異なり一概には答えられません。
Q:〈うちの施設では経腸栄養の方で痰のからみが多くいつもガラガラゴロゴロの方や発熱を繰り返す方が
います。何をしてあげられるのでしょうか。吸引ばかりしてかわいそうです〉
A:経腸栄養の方でも唾液は絶えず嚥下しています。ということは誤嚥の危険が絶えずあります。まずは口
腔ケアをしっかり行ってください。
Q:〈入れ歯と摂食・嚥下機能の関係を教えてください。合わなくなっていたり、又は体調で食事中(介助
中)口の中で遊んでしまう場合には、入れ歯を外して介助するようにしています。嚥下機能の問題が多
くなってきたお年寄りの場合、入れ歯は調整や作り直しでできる限り使い続けたほうが良いのでしょう
か〉
A:一概に入れ歯を最後まで使い続けるのは難しいと思います。場合によっては外したほうが嚥下しやすい
ケースもあります。
Q:〈食事をされていて鼻から食べ物が出てきたり、鼻水が出てくる利用者の方がおります。軟口蓋がうま
く機能するにはどのようなことに取り組めばよいのでしょうか〉
A:鼻咽腔に炎症がある場合、軟口蓋に障害が出るケースもあるので、耳鼻科に通院してみてください。ま
た、指示の通る方であればブローイングなどの訓練も有効かと思います。
Q:〈円背の方がむせやすいのは分かったのですが、どういう姿勢で首の傾きだとむせづらくなるのか知り
たいです〉
A:円背の方は舌骨の動きが悪く送り込みが困難でむせるケースがあります。車椅子で食事を取る場合は少
しティルトをかけて上体を寝かせ送り込みしやすくしたり工夫が必要です。
Q:〈鼻腔チューブを使いながら、口から食べる練習を・・・とのことでしたがその時の注意点を教えてく
ださい〉
A:少量の水分又はペースト、ゼリーなどであまりむせない食形態を探してください。
Q:〈交互嚥下に使用する食品(水分)は、ゼリー状でないといけないですか。お茶の強トロミの形状では
適さないですか。又、ゼリー状が強い場合は、ゼラチン添加何パーセントが良いですか。凝固剤は最近
様々な種類があるので、添加量も商品によって異なると思いますが、出来上がりの形状はどんな感じが
良いですか〉
A:ゼリーにこだわる必要はないと思います。ゼリーは送り込みがしやすい食品ですが、口腔内に留まると
水になってかえってむせてしまうケースもあります。強トロミでもそのような場合はいいと思います。ま
た、ゼラチン添加は 1.2~1.5%位が適切かと思いますがトロミ具合も患者の状態によって異なります。
Q: 〈児童を担当している中で、あごの発達など成長段階の子供達であえて噛むように子どもにとっては
大変かもしれませんが、その子に少し噛ませることも行っています。嵐山郷さんでの子どもの成長に合
わせた(特にあごの発達など)食事の工夫を行っていましたらぜひ参考にさせて頂きたいので教えて頂け
たら有難いです〉
A:発達段階にある児童の場合は食塊形成を導くような食品(かっぱえびせん、赤ちゃんせんべい等)を適
時提供するようにしています。
Q:〈食事形態について一人ひとりの状態は異なるため、たくさんある食形態の中でどこに合てはまるとい
う見極めはどうされているのでしょうか。(食形態のちょうど中間にあたるような方の場合など) 〉
A:食形態に関しては医師が診査・診断して本人の機能にあった段階食を決定しています。中間にあたるよ
うな場合は、リスクを考えリスクが高い場合はあえて下の段階の食形態を提供するケースが多いですが、
食事介助方法で対応できる場合は一つ上の段階食を提供することもあります。
講義2《食事介助技術について》質問及び回答
Q:〈摂食リハ委員のメンバーについて教えてください。またどのように医師や栄養課、現場と連携してい
るのか〉
A:医師、歯科衛生士、PT、栄養士、支援員などのメンバーで構成されています。寮ではケース担当や摂
食リハ委員、給食担当などから、問題提起をし、各職種へ相談していきます。摂食リハ委員会は年に6回
程度行われており、症例研究などを行い、職員の知識の向上や情報の共有に努めています。
Q:〈水分を摂りたがらない方がいる。どういう工夫をしているか〉
A:食事の前にまず 1 杯摂ってもらったり、0カロリーの飲料を提供したり、またゼラチンでお茶ゼリーな
どを作り提供しています。
Q:〈むせる人への食事介助の工夫を知りたい〉
A:まず何でむせやすいのか、むせているのかを知る必要があります。そして必要に応じてトロミを付けた
り、姿勢の保持を行ったり、むせやすい食材は省くなどしています。
Q:〈トロミなしで汁をすすれるようになるには、どのような訓練が必要ですか〉
A:スプーンを横にして自分ですすれるようになることが必要です。安全のため、現在トロミを付けている
のではないかと思いますが、どのくらいの濃度が適切か知っていく必要があります。
Q:〈口の中に溜め込み、声掛けをしても飲み込まない方に対してどのような介助をしたら良いか〉
A:どうして溜め込んでいるのかを検証する必要があります。空嚥下や少量の水分で飲み込んでもらうこと
もひとつです。また円背の方は胸も開いておらず、顎も引きすぎになってしまい飲み込みづらいというこ
とも考えられます。食物を喉に落としていくことで嚥下反射が起きるため、ティルト機能を使用し倒して
角度をつけ、送り込みを助ける工夫をすることもあります。
Q:〈食事が目の前にあると手が出てひっくり返してしまう時にはどうしたら良いか〉
A:食事をサイドテーブルなど手の届かない所に置き、ご本人には一皿ずつ手渡すようにすることもひとつ
の方法かと思います。
Q:〈舌の動きはどのようなものがありますか〉
A:乳児期は前後に動きますが、食物を摂るようになると左右の動きも出てきます。
Q:〈眠気が強い人に対して首を反らして与薬していますが、良い方法なのでしょうか?どこに注意をして
服薬すべきですか〉
A:眠気が強い方は食事などにおいても誤嚥しやすいため、気をつけなければなりません。しっかりと覚醒
していだだけるように、声掛けを行ったり、顔を拭く、歯磨きなどをすると良いと思います。
Q:〈摂食指導について、専門的、具体的な助言を受けるための相談先として地域の歯科医以外により良い
相談機関はあるでしょうか〉
A:摂食嚥下指導のできる歯科医に相談すると良いかと思います。
Q:〈静かに食事が摂れるという環境は作れません。また複数の方を一人で食事介助をする場合はどうした
ら良いでしょうか〉
A:静かに摂っていただくために時間をずらす、座席の変更をするなど嵐山郷では各生活寮で工夫していま
す。現在、複数の方を一人で介助するのは極力避けています。一人ひとり介助をした方が、スムーズにそ
の方のペースで介助できるので早く食事を終えることができます。
Q:〈食事が速い方(他の方の食事を摂ってしまったり、待たせると興奮したりもする)の介助で、できる
だけスムーズにする方法があれば教えてほしいです〉
A:食事の順番を再考する、食事の前に居室へ誘導する、などの工夫も必要かと思います。また小鉢に1~
2口ずつ乗せて渡すことでペースを作りながら介助をすることもできます。
Q:〈口を大きく開けてくれない、入れても少量であったり、舌で押し出してしまう方へはどうしたら良い
でしょうか〉
A:その方の口に合ったスプーンの形状、大きさを選びましょう。また押し出してしまうのは嫌なのか、少
量のため食塊が作りづらいのか、舌の機能によるものなのか見ていく必要があります。
Q:〈むせ・窒息時の対応・対処について教えてください〉
A:タッピング(背部叩打法)の他にもハイムリック法などもあります。器具などについてはさまざまな物
があり、インターネットなどで検索すると見ることができます。
Q:〈重症心身障害を持つ方で、水分はもちろん一日中むせ込み、食事の時もむせながら普通食を食べてい
ます。今の食事介助のままでも大丈夫でしょうか〉
A:食事形態、食事姿勢なども含め、相談した方が良いかと思います。
Q:〈嚥下障害の方で、ベッドまたはリクライニング車椅子で食事を摂っていますが、食物を舌上に乗せた
方が良いでしょうか、頬の内側に乗せた方が良いでしょうか〉
A:その方の機能的なものもあるかと思いますが、できれば舌上に乗せ、送り込んでもらった方が良いかと
思います。
Q:〈リクライニング車椅子を使っている方で、体が硬く体がずり落ちてきてしまいます。どうしたら良い
でしょうか〉
A:食事前のストレッチができる方であればしてください。クッションなどを腰・足元にもはさむなどして
体位保持をすることが必要です。
Q:
〈顎をかなり引いた状態で食事をする方がいますが、その場合はどのような介助が良いのでしょうか〉
A:顎を引きすぎても苦しくなります。車椅子のティルト機能を使うなどすると良いと思います。
Q:〈不顕性誤嚥の見分け方を教えてほしいです〉
A:ワンピークで熱が出る場合と、慢性的に微熱が出る症状の方もいます。また食事を続けていると声が変
わる(湿性嗄声)
、呼吸が苦しくなることもあります。
Q:〈口に入れることを嫌がる偏食の方への対応はどうすればよいですか〉
A:口腔周辺に過敏があるかどうかをチェックし、過敏があれば脱感作から行う。過敏がなければ食感覚を
増やすために好きな食形態を key-food としてバリエーションを増やしていくと良いでしょう。
Q:〈筋緊張から食具を噛み切ってしまい誤飲してしまう恐れがある。歯に当たると緊張が起こる方への対
応を教えてください〉
A:筋緊張が出現しないような姿勢を取らせ、また食具はできるだけ口唇で触れさせ、手前で取る訓練をす
ると良いでしょう。
Q:〈食事介助の口唇閉鎖を促すスプーンでの介助法、口が開いたままの人、もう一度説明をしてください〉
A:口が開いたままになる方や口唇閉鎖を促すには、介助者が唇を抑えて閉じてあげることも有効です。
Q:〈咀嚼をせずにすぐに丸飲みをするような習慣のついてしまっている人に対して、咀嚼を促すために良
い方法があれば教えてください〉
A:日常的にかっぱえびせんをガーゼに巻いて、咀嚼を促す訓練をしてみてはいかがでしょうか。噛むこと
によって味が出てくる楽しさを感じていただけると思います。
Q:〈嚥下に問題のある方で、おかゆの上に味の合うおかずを乗せて提供していますが、危険なのでしょう
か〉
A:嚥下に問題がある方の場合ですと、おかずの形態がおかゆと違う物の場合、危険と考える方が良いでし
ょう。できればおかずは、ペースト的な物がいいと思います。
Q:〈刻んだ漬け物をお粥と一緒にするのはどうですか。また、喉越しの合わない食べ物とはどんなもので
すか〉
A:基本は別です。喉越しの合わないものは、一つはかまぼこです。介助者が、皆さんが通常食べられてい
る食事を試食し、何が食べにくいか、合わないかを考えてみるのもいいと思います。
Q:〈嚥下に問題のある方で複数の方を食事介助しなければならない時、嵐山郷ではどうされているのでし
ょうか〉
A:基本的に複数の方を食事介助することは行っていません。理由は、1人でも、2人でも、危険度は大き
くなることはあっても、時間は大きく変わらないことがわかったからです。
Q:〈施設で提供される食事その物が嫌いな場合、どうすればいいですか。その利用者の方は毎回、食事の
時間帯に状態が悪くなるため、どうにか食の楽しみを知っていただきたいと思っています〉
A:施設の食事を改善することが必要です。難しい場合、その方の好む食べ物を1つでもいいので食事に入
れてみてはいかがでしょう。
Q:〈水分ゼリーはゼラチンで固め、水分のとろみはトロミ剤で固めますが、使い分けはどうしていますか〉
A:水分ゼリーはトロミをつけても水分の摂取が出来ない(困難な)方、また、口の中に食物残渣が多く、
交互嚥下ゼリーを必要とする方に使用します。トロミ剤は、水分が摂取できても、嚥下反射がうまくいか
ずにムセてしまう方に使われます。水分の拒否がある方にも、水分ゼリーは有効です。
Q:〈水分でムセが見られるような方が、お粥の上に食感の違う副食を乗せたり、混ぜたりして召し上がっ
ていることが多いのですが、危険度はどのくらいですか。どんぶりの状態にした方が自力摂取しやすい
が〉
A:むせることが出来る場合、混ぜて召し上がる中でムセが無ければ危険度は低くなります。しかし、むせ
ているのであれば、危険度は高いです。どんぶりの状態にして自力摂取しても、美味しさはわからず、危
険度も上がると考えると、対応を考えた方が良いと思います。
Q:〈よだれが多いが、水分摂取がなかなか摂れず、大好きな牛乳を水分として確保していましたが、牛乳
を水分とみなして良いのでしょうか〉
A:良いと思います。
Q:〈食事以外での捕食訓練、咀嚼訓練で何に意識してかっぱえびせんを食べてもらうといいか、また、注
意するべき点を教えてください〉
A:かっぱえびせんをガーゼに巻いて、咀嚼をすれば味が出てくる楽しみを知ってもらうこと、また、舌や
頬の筋肉を使って食塊形成を行えるように、ガーゼを持って、咀嚼しながら口の中を動かしてもらうこと
を意識してください。
Q:〈「食べるメカニズム」の「口・喉・食道の3つの部屋についている「ドア」が中枢の働きでコントロ
ールされ」のところがよく理解できなかったので、もう一度説明してください〉
A:飲み込む際に反射が起こり、その刺激を受けて中枢神経から筋肉へ信号が送られ、口唇、軟口蓋は閉じ、
喉頭蓋は開いて気管・声門は閉じ食道が開くということが起こります。
Q:〈半介助(介助の方)の口腔内によく残留物があります。本人はお茶を要求し飲んでいますが、出来れ
ば空のスプーン等を入れて残留物を除去した方がいいですか。時々喘鳴が聞かれます。上下義歯です〉
A:残留物が少量であれば、空のスプーンでも飲みこめると思いますが、極少量の水分(スプーンをお茶等
に入れて引き出してついている程度)を入れたスプーンを入れてもいいと思います。ゼリーを使うのも有
効です。
Q:〈口の中に残留物が残るため、お茶をゼリー状にしたものを食べてもらった場合、どの程度口の中がき
れいになるのでしょうか。咀嚼はたくさんできますが、飲み込みに時間がかかります〉
A:ゼラチンなので、溶けながら残留物を集めるため、結構きれいになります。しかし、咀嚼をたくさんさ
れる方の場合、ゼラチンが溶けすぎると危険なので、上の質問の回答を参考にしていただけたらと思いま
す。
Q:〈食後30分ぐらいでソファやリクライニングチェアに座って休息(昼寝)をとる場合がありますが、
横になっていなくてもダメでしょうか〉
A:横になっていなければ、逆流の危険は少ないため、問題ありません。
Q:〈食後(昼食)の歯磨きが出来ていません。うがいだけでも大丈夫ですか〉
A:出来れば行った方が良いと思います。しかし、難しい場合もあると思います。1日のうちで、しっかり
口腔ケアを行う時間をとるようにして、食後は必ず口腔内に残渣物が無いように注意してください。
Q:〈口を開いてくださらない方に、何か良い方法はありますか〉
A:key-food となる食事を探し、食事の合間に入れるようにしています。食事がなかなか取れない場合、量
の少ない高カロリーの食事に変更や、食事回数を増やすなどいかがでしょうか。
Q:〈2時間かけて自分で食べたり、途中から職員が入ったりしますが、1回の食事時間はどのくらいが適
当ですか〉
A:30~40分が基本です。
Q:〈頭部が前後、体幹が左右へ傾いてしまう方に、タオルやヘッドレスト等で姿勢矯正を行っていますが
うまくいきません。良い姿勢修正方法がありましたら教えてください〉
A:嵐山郷では、そのような方は食事介助を本人の横から行っています。介助者は隣に座り、頸部後ろに腕
を回し、頭の固定や体幹を支え、口腔内や飲み込みに留意しながら介助を行っています。
Q:〈手づかみで食事を召し上がる方がいます。手づかみで食べることはよいのでしょうか。全介助にした
方がいいか悩んでいるため、意見を聞かせてください〉
A:本人は感覚を楽しんで、美味しく食べているのかもしれません。介助をすることで、自分で食べること
や自分で食べる楽しみを奪ってしまったり、食の楽しみが減ってしまうことを考えれば、摂食嚥下の状態
が良好であれば、見守ってもいいのではないでしょうか。ただし、詰め込みやすいため、注意してくださ
い。危険と判断する要素が表出しているのであれば、介助が良いと思います。
Q:〈食事介助中に寝てしまい、介助に1時間ほどかかります。その場合30分で切り上げ、食事回数を増
やした方が良いのでしょうか〉
A:寝てしまうと危険であり、時間をかけるのも危険です。食事回数を増やした方が良いと思います。食事
が難しければ、捕食などを間食に召し上がっていただいても良いのではないでしょうか。
Q:〈筋ジストロフィーの方がほぼフラットの状態で食事を召し上がっていますが、もっと上げた方が良い
のでしょうか〉
A:30~60 度は基本的なお話である為、その人に合っている状態であれば無理にしなくてもいいと思います。
Q:〈管理栄養士から、食べにくいものはお粥と一緒に混ぜて食べるといいと言われていますが、みんな食
べにくそうにしています。お粥と一緒ではなく食べるいい方法はありますか〉
A:食べにくそうにしているのであれば、食べやすい食形態を考え提供することをお勧めします。
Q:〈メカニズムの話でごっくんの時に話し掛けると誤嚥につながるとのことでしたが、その前は話し掛け
て大丈夫とのことでしょうか〉
A:ダメです。飲みこみが終わってから話し掛けてください。答えようと口に入っているものをあわてて飲
みこんで嚥下の動作が崩れて誤嚥したり、口に入れたままお話をして喉に食物が落ちて窒息するなどの危
険があります。
Q:〈食事の際、覚醒していただくために顔のマッサージ等が有効とのことでしたか、具体的にどのような
マッサージが良いのか教えていただきたいです〉
A:声を掛けてください。頬や耳下腺(耳の下)
、顎下腺(顎の下)は唾液の分泌も促し、食事を摂る準備に
もなるため行っています。冷たいタオルなどを使用してマッサージも刺激になり覚醒を促します。
Q:〈シリコンスプーンが2種類ありましたが、どの様に使い分けていますか〉
A:深さは介助する食べ物に合わせて、幅は介助される方の口の大きさに合った物、柄の長さは介助の方法
で使いやすい物と使い分けをしています。
Q:〈自宅では、水分でむせるため取り上げてしまいます。脱水が心配であり、最近では褥瘡が出来たとの
こと。お茶よりアクエリアスのようなものを飲ませた方が良いのでしょうか。また、家族にどうアプロ
ーチをしてよいか迷っています。嵐山郷では、重度でうまく嚥下が出来ない方にどのような支援を行っ
ていますか〉
A:飲みたい気持ちがあれば、お茶にとろみをつけると良いでしょう。脱水が心配でも、とろみやお茶ゼリ
ーなどで水分が摂れていれば、問題はないと思います。もちろんアクエリアスなどでも大丈夫です。栄養
補助ドリンクや補助食品等も販売されていますので、出来る限り活用し、家族全員で負担の無いように援
助してください。在宅ですと色々難しいですが、ケアワーカー等に相談するのも良いと思います。
Q:〈むせこみ時に、背部タッピング施行とのお話でしたが、高齢者は心疾患があったり、タッピングの刺
激で気管が攣縮すると聞いたことがあります。むせこみ時、他に良いサポートがありますか〉
A:緊急性を考えると、まずは喀出です。しっかりとムセて喀出しているのであれば、落ち着くまで待つこ
とも可能だと考えます。
講義3《安全でおいしい食形態について》質問及び回答
Q:〈常食の方がパンでなくても毎日毎食パン粥を提供されているのですか〉
A:主食の食形態として、パン粥が適しておられる方(ご本人の希望も含め)は毎食パン粥を提供していま
す。
Q:〈普段の汁物はどうしていますか〉
A:軟食の方の汁物は粒のないものを提供しております。
Q:〈ビタミン C を up するためにミキサーの方のフルーツはどうしていますか〉
A:ペースト食の方の食事は、軟食Ⅰの食形態をミキサー等にかけて提供しております。ビタミン C が足り
ないことはありません。もし不足しているときは、何らかの栄養補助食品で補います。
Q:〈見た目に関してどのように対応しているか教えてください。現在試行錯誤中です〉
A:軟食Ⅰ・Ⅱは使用できる食材に限りがあるため、見た目が同じものになりがちです。サラダなども三色
の野菜をそれぞれ柔らかくし、食べやすい状態にしてからゼリー寄せ(それぞれの色を無くさないように)
にしています。栄養士と調理師が相談して、いろいろチャレンジされれば良いと思います。
Q:〈1 品100kcal ゼリーどのような食材を使用して作られていますか〉
A:高栄養流動食や果汁などをゼリーにしてます。
Q:〈とろみが嫌いなご利用者様にはどのような工夫をされていますか〉
A:ゼリー状のものが苦手でなければゼリーにして提供します。
Q:〈厨房が小さく、ほとんど給食外注のような施設は、どんなことができるでしょうか〉
A:市販のものを上手に使うことをお勧めいたします。
Q:〈高熱に伴い常食のおかずが食べられない時にどのように対応していますか〉
A:ゼリーやプリンなどの、のど越しのよいものを提供します。
Q:〈歯がない人が肉や魚を食べることが難しくなかなか呑み込めません。食堂の設備も整っておらず、ふ
つうの家庭用の調理台での調理では肉や魚を食べてもらうのは難しいですか〉
A:いろいろな食材のメーカーから、肉や魚のペーストやすり身が出ています。それをうまく活用すればよ
いと思います。
Q:〈白飯をペーストにトロミをつけて摂取している方がいますが、日によってペーストが弱くだまになっ
てたり、トロミが強くなってしまう時があります。どのような対応がいいのでしょうか〉
A:粥ペーストは物性の均一の調整が難しいです。また、咽喉に張り付くなどの点も気になります。嵐山郷
では、粥ペーストを召し上がれない方にパン粥を提供しております。
Q:〈軟飯にぎり寿司を現在は市販品に変更したと伺いましたが、理由は何だったのでしょうか。また、現
在使用のメーカー名なども教えて頂けますか〉
A:軟飯に卵白やゼラチンなどを添加し固めるので、すべりが良く食べやすいですが、ゼラチン添加後の加
熱や冷却が難しく、また、卵白をメレンゲにして使用するために、卵の加熱ができない等の理由で市販品
の軟飯にぎりに変更しました。
Q:〈握り寿司軟飯が咀嚼・嚥下できない方はどのように主食をたべているのでしょうか〉
A:握り寿司軟飯に代わり、手作りカステラプディングを主食とし、ゼラチンで固めた具材を上にのせて握
り寿司としております。
Q:〈嵐山郷の食形態でみると軟食Ⅰ程度で食べている方ですが、水分の摂り方に苦慮しています。以前は
麦茶をゼリー状(たぶん寒天)にしたものをくずして提供していましたが、ムセが多くなり、今はとろ
み(とろみ剤)を援助者がつけていますが、まれにムセがでます。何か良い水分摂取方法があれば教え
てください〉
A:寒天は噛まないと食べられません。また、食塊形成が難しい食べ物です。水分が固形になっているから
むせずに食べられるというのは間違いです。くずして提供しても食塊形成ができなければ上手に飲み込
めません。また、いろいろなとろみ剤(増粘剤)も出ております。濃度によりトロミの付き具合が違っ
てきます。これもただトロミがつけばよいというものではありません。つけすぎると「のり」のように
口腔内に張り付き上手く飲み込みができなくなります。使用の際は十分注意したほうが良いと思います。
一番飲み込みやすいのはゼラチンで作ったお茶などの飲み物ゼリーが適しています。ただし、すぐ飲み
込まず口腔内にため込んでしまう方には体温で溶けてしまうため、向いていません。
Q:〈手づかみで食事を召し上がる方のごはんが常食の場合、おにぎりなどにしています。しかし、その方
が最近、軟飯~ペーストになってしまいました。食事介助をしていますが、本人は自分で食べたいよう
です。よい方法がありますか〉
A:本人が自分で食べたいと思う意志を大切にして、半分でも食事介助を取り入れる方法もあります。その
時は手で持って食べられる食べやすい形態の工夫をして下さい。
Q:〈厨房職員との関係、連携をよくするにはどうしたらいいでしょうか。会議など行っても平行線になっ
てしまいます〉
A:厨房の職員と何かを検討したり、開発したりして物を作り上げていく過程を一緒に行っています。ひと
つの事で成果が出ると一から物を作り上げていく喜びを得られ、互いに良い関係を築くことができていま
す。
Q:〈現在、刻み食は行っていないとのことですが、例えば煮物であれば段階別に別料理(別鍋で)を行っ
ているのでしょうか〉
A:煮物であれば食材の切り方、調理方法など段階食に応じた調理を行っています。
Q:〈粥ペーストはべたつくため、あまり良くないとのことですが、増粘剤でプルンとなるタイプであれば
物性という点ではまだよいのでしょか〉
A:対象の方に合った物性であれば良いでしょう。
Q:〈刻み食はどうして危険なのでしょうか〉
A:刻み食は、口腔内でバラけてしまうので食塊形成が難しい食形態です。飲み込みが上手くいかず誤嚥性
肺炎を引き起こす危険性があります。
Q:〈ミートペーストとはどんな物ですか〉
A:食材メーカーと嵐山郷給食委託会社と嵐山郷で開発したお肉のペーストです。それを使用しミートムー
スやミートバーグ、メンチカツなどを作ります。
Q:〈魚のムースは自分の所で調理できますか〉
A:食材メーカーで販売している魚のすり身を使用してムースを作ります。
Q:〈段階食と名付けた理由は何かあるのですか〉
A: 開始食から始まり、階段のように食形態が上がっていくことをイメージしてます。下がっていくのでは
なく上がってほしいという想いで作りました。
Q:〈水分補給ゼリーの作り方を教えてください〉
A:緑茶や麦茶をゼラチンで固めます。
(ゼラチン濃度は 1.2~1.5%)
Q:〈102 歳の入所者が、飲み込みが悪くなり薬も錠剤から粉末に変更しました。口へ直接入れますが、粉
がゴホゴホとなってしまったり、コップの水の中へ戻してしまったりします。どのようにすればスムー
ズに服薬ができますか〉
A:医師にご相談されたほうが良いと思います。
Q:〈水分制限の方が、今脱水に近い状況です。体重も4か月で 10kg 減少です。何か対策はありますか〉
A:医師にご相談されたほうが良いと思います。
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