Comments
Description
Transcript
ハワイ研修 - 早稲田大学
【ハワイ研修】 Ⅰ目的 夏休期間を利用して、SSH 海外研修の一環として JST・早稲田大学自然科学教育研究会の支援のも とで自然科学分野,とくに天文・地質・地形などの観察を中心とした野外調査研究(巡検)である。 巡検を通して自然環境とその変遷について興味を深め、諸自然現象への科学的解明に意欲的に取り組 むことを目的する。自然科学分野に限らず、その他太平洋を中心とする政治・経済・ハワイアン文化 など考察することで、国際交流や国際社会情勢などの分析に学習効果をあげることも目的としている。 巡検効果をあげるため、事前学習として箱根火山巡検・研究会などを実施した。現地の指導(例え ば天文講義、天体観望実習,キラウエア火山観察実習,ハワイ文化、日米の歴史について)は、早大 高等学院地学科・早稲田大学自然科学教育研究会の会員と天文台研究者・現地学芸員などが行う。 巡検は、SSH 海外研修企画の一貫として行われるものであるため、生徒は事前学習の時から、ハワ イ巡検に対して自分なりの研究テーマを持って参加し、成果を小論文としてまとめ発表している。 Ⅱ概要 実 施 日:2013 年 8 月 19 日から 8 月 28 日 8 泊 10 日 巡 検 地:ハワイ島、マウイ島、オアフ島 参 加 者:9 名 2 年生 4 名、OB 2 名 引率 3 名 指導協力:本校地学科、早稲田大学理工学部、OB(大学院生)、国立天文台ハワイ観測所、 National Tropical Botanical Garden、Hawaii county Civil Defense Agency、 NELHA(国立エネルギー研究所)、IMILOA 天文館、Pacific Tsunami Museum 交 通:航 空 機 国際線 日本航空 国内線 ハワイアン航空 陸上交通 貸し切りバス 及び 4 WD車 宿 泊:ハワイ島 ヒロ市 4 泊、コナ市 1 泊 オアフ島 ホノルル市 3 泊 巡検履歴:第 1 次;2000.8.23 ~ 29 5 泊 7 日 ハワイ島、オアフ島 10 名 第 2 次;2001.8.22 ~ 28 5 泊 7 日 ハワイ島、オアフ島 8名 第 3 次;2002.8.26 ~ 9.1 5 泊 7 日 ハワイ島、オアフ島 15 名 第 4 次;2003.8.27 ~ 9.2 5 泊 6 日 ハワイ島、オアフ島 6名 第 5 次;2004.8.25 ~ 31 5 泊 7 日 ハワイ島、オアフ島 5名 第 6 次;2005.8.24 ~ 31 6 泊 8 日 ハワイ島、オアフ島 10 名 第 7 次;2006.8.23 ~ 31 7 泊 9 日 ハワイ島、オアフ島 14 名 第 8 次;2007.8.22 ~ 31 8 泊 10 日 ハワイ島、カウアイ島、オアフ島 13 名 第 9 次;2008.8.24 ~ 9.2 8 泊 10 日 ハワイ島、オアフ島 14 名 第 10 次;2009.8.23 ~ 9.1 8 泊 10 日 ハワイ島、オアフ島 13 名 第 11 次;2010.8.22 ~ 8.31 8 泊 10 日 ハワイ島、オアフ島 12 名 第 12 次;2011.8.22 ~ 9.1 8 泊 10 日 ハワイ島、カウアイ島、オアフ島 11 名 第 13 次;2012.8.20 ~ 8.29 9 泊 10 日 ハワイ島、カウアイ島、オアフ島 11 名 第 14 次:2013.8.19 ~ 8.28 9 泊 10 日 ハワイ島、マウイ島、オアフ島 9 名 Ⅲ指導および日程 ①事前学習 5 月下旬に参加生徒が決定されてから、例年通り巡検に際して参加者各自がハワイで学ぼうとする 研究目標を考えてもらった。海外巡検安全のための巡検ガイダンスを開き、パスポートの取得・外貨 の交換・荷造りの要領・海外での行動など紹介した。さらに参加者各自の研究テーマに沿う文献など の資料集めの方法を指導した。6 月中旬に入り、第 13 次巡検参加者と今回参加者が一同に会し巡検期 間中の諸注意・研究に関係する現地の場所など意見交換をした。 6 月から 7 月には、本巡検が天文と地質と植生が中心となる巡検であるため、教室にてハワイ現地 で想定される天体運動を簡易プラネタリウムで学習した。火山地形と地質に関しては、箱根火山と丹 那活断層に注目して、野外実習を行った。火山地形の形態学的特徴に関しては富士山・箱根外輪山・ 愛鷹山・箱根駒ヶ岳などから火山体の相違について習得した。さらに地形判読に関して地形図の読み 方と利用方法を習熟した。 7 月に入り、次年度に引き続き東北地方の震災がらみで自然災害と防災に関して若干の勉強会を開 催した。さらにエネルギー問題に注目し、ハワイにおける自然エネルギー利用について、日本のエネ ルギー開発の現況と比較しつつ学習を行った。 8 月上旬になって、計測機器の習熟練習と航空機・ホテル・巡検中の諸注意などをし、最終的な打 ち合わせをした。 ヒロ市 C.D.A.にて防災に関するプレゼンを予定しているので、そのリハーサルを実施した。 ②指 導 学院の巡検指導は、他校と異なり原則として全行程の指導と研修に関して引率教員が行う。極力旅 行社からのガイドなどは減らし、交通関係の手配に限定する。 フィールドワークについても、引率の教員が主として指導にあたる。現地での質疑応答の時間を有 効にするためにも、1 名の指導者(TA を含む)に 2 ~ 3 名の生徒が絶えず組むように行動する。 巡検地はほとんどが合衆国の国立公園になっているので、サンプリングに際しては細心の注意をは らっている。 すばる望遠鏡天文台における指導は、国立天文台ヒロ観測所の職員の方の指導を受け、観測所内に て講義をして頂き質疑の時間を設ける。現役の研究者とのやりとりによって、最新情報を学び研究者 の研究の様子など理解する。天文台は、マウナケア火山山頂の標高 4000 m以上の高所に所在するため、 高山病予防の対策を練った。一つは、呼吸法である。できるだけ多くの酸素を体内にためる呼吸を練 習させる。もう一つは、現地での生活習慣を規則正しいものにするよう、なるべく規則正しい時間割 で行動するよう心がけるが、生徒の体調が悪い者がいた場合、宿舎にて待機・休養を指示する。夏期 であるため、全行程において水分補給に努めるように指示するが、一方で暴飲暴食を避けるように指 導する。なお、マウナケア山山頂天文台を見学するための確認書と注意書が事前に渡され、サインを 必要とする。 携行する観測機材に関しては、現地でのトラブル発生を 防ぐため、数回に渡りその取り扱いの練習を重ねた。さら に参加者に割り振られた観測機材を自宅に持ち帰り、出発 日までその取り扱いの練習を指示した。 巡検終了後のデータの処理や論文作成の為の準備などを 指導する。 現地概図 ③日程と作業内容 2007 年度の巡検から現地滞在日数を 8 泊としている。生徒にとって現地にて個々に研究対象を観察 することが出来ないため、出来る限り日程にゆとりを持たせて調査できるようにした。必ずしも天候 が理想的な状態であるとは限らず、予備日の手配も必要になるためである。 マウイ島は初めて巡検を実施する島である。火山地形・地質と土地利用に限定して巡検を実施した。 巡検は 1 日巡検としオアフ島からの日帰りとした。巡検日程の概要は以下の通りである。 8 月 19 日 夜 午前 コナ着ホノルル(オアフ島) 経由 コナ(ハワイ島) 成田空港集合 渡米 ドールコーヒー農園研修:土壌・植生・土地利用を研修 午後 NELHA 自然エネルギー研究所:自然エネルギーの応用について研修 20 日 午前 カハルウ海岸-ハブナ海岸: 海岸地形・砂質調査 ポロル渓谷-ワイピオ渓谷:溶岩台地と海食地形観察 イミロア天文館:天体観測研修・天体観望準備 21 日 午前 国立天文台ヒロ観測所訪問、同所にて天文研修 午後 マウナケア山頂:天文台群視察、山頂火山地形観察 夜間 オニズカセンタ-:天体観望 22 日 午前 ハワイ郡 C.D.A.:自然災害対策研修、日本の防災についてプレゼン実施 午後 キラウエア火山地質調査 23 日 午前 カエラ、グリーンサンドビーチ、ブナルウ海岸:海岸地形観察、砂質調査 午後 キラウエア火山地形調査 24 日 午前 ホノルル移動 午後 北部海岸:海岸地形観察、砂質調査 25 日 中央高地:土地利用調査、土壌観察 午前 マウイ島移動 ハレアカラ火山:火山地形・地質調査、銀剣草の観察 午後 イアオ渓谷:地形観察 ラハイナ地区海岸地形・土地利用の観察 ホノルル帰着 26 日 午前 ハワイ大学ライアン記念植物園 植物研修 午後 マノア渓谷、マノア滝:地質調査 27 日 午前 マカプー岬:浸食地形観察 ラニカイ海岸:海岸地形観察、砂質調査 午後 ホノルル空港 離米 28 日 午後 羽田国際空港 帰国 解散 Ⅳ巡検成果発表活動 巡検終了後は、各自(各グループ)で巡検成果をまとめる作業に入り、研究成果発表という形で報 告する。帰国以降の活動としては、 ・11 月 16 日、学芸術研究発表会;ハワイ巡検研究(口頭高等発表およびポスター発表) ・2 月 9 日、稲門 Jr. 自然科学研究会;ハワイ巡検成果報告(口頭発表) ・2 月 22 日、3 校合同ハワイ巡検研究発表会;ハワイ巡検成果発表(口頭発表) ・3 月 23 日、SSH 関東近県研究発成果表会;ハワイ巡検成果発表 ・ハワイ巡検について、研究成果を英語化して国際化を図る。 Ⅴ成果 ・巡検の事前学習は、参加者個々のテーマに沿ってゼミ形式で行なわれた。地学的調査方法に慣れる ため、三浦半島南端の城ヶ島や箱根火山周辺で地学巡検を行なった。野外観察の仕方、地図の見方、 クリノメーターの使い方、野帳の記載の仕方など指導できたのでハワイ巡検地で混乱することはな かった。今年度は、ヒロの天文台で先生方と質疑を予定しているため事前に天文、特に太陽系につ いての疑問点を調べて意見交換を企画した。天文台では、きわめて好意的に対応していただき生徒 の知識向上に役立った。すばる望遠鏡天文台は、標高 4000 m以上のマウナケア山山頂にあるため、 出発前から高山病の問題がついてまわっていた。事前対策としての呼吸法や、睡眠時間の確保など 効果を期待していたが、2 名は軽い高山病にかかってしまった。常に巡検準備として、高山病への 問題に対応しなければならい。今回の巡検では、高濃度のスポーツ酸素缶を数缶用意して、実際に 山頂では、酸素缶を使用し一部参加者には効果があった。確実では無いが、応急対策として今後携 帯する方向である。 ・火山地域での資料採取は、国立公園内であるため場所に注意して採取するよう心がける必要がある。 今回も、アア溶岩とパホイホイ溶岩の見かけ上の違いについて習得できた。また、採取したオリビ ンについて分析するためには、生徒の能力と学校設備の関係から大学研究室の協力が必要である。 ・国際化については、今回の巡検では、3 回ほど英語での講義と研修を受ける機会があった。また、 英語でのプレゼンテーションの機会も持つことが出来た。参加者は、渡米当初は英語で懇談するこ とが困難であったが 2 回目以降は進展が見られ、プレゼンテーションもほぼ問題なく行えた。 ・マウイ島を今回巡検ルートに加えたことは、ハワイ諸島の新旧形成時期の違いによる島の火山形態 と解析地形の違いがよく分かり教育効果が高かった。土地利用形態は、特にコーヒー栽培や果樹園 などの生産に偏っている中でタマネギやその他野菜の生産が見られため、土壌との関係を次回にそ なえて観察した。 ・オアフ島のハワイ大学の屋外展示施設でライアン記念植物園がマノア渓谷にあるため、植物研修地 として同所を訪問し、成果を得ることが出来た。 Ⅵ巡検写真 成田空港出発前 NELHA でのエネルギー研修、コナ コーヒー農園、学院のコーヒーの樹前、コナ 津波警報発生機、ハプナ海岸 ポロル渓谷の解析谷 すばる望遠鏡山麓施設、ヒロ レインボー滝、ヒロ アカカ滝、東海岸 コレコレ海岸、海食崖 位置確認、マウナケア山 3 合目 オニズカセンター、公園レンジャーと すばる望遠鏡天文台 ハレマウマウ火口、キラウエア火山 溶岩流の観察、キラウエア火山 国際交流、C.D.A. 防災について、英語プレゼン、C.D.A. ライアン植物園、ハワイ大学マノア地区 銀剣草、ハレアカラ火山 マウイ島 ハレアカラ火山山頂、マウイ島 ラハイナ海岸、マウイ島 マノア渓谷植生観察、オアフ島 マノア滝水質調査、オアフ島 ラニカイ海岸砂の観察、オアフ島 アメリカンモンキーポット、モアナルア公園 オアフ島 SSH 学外活動 海外研修 【台湾国際交流・研究発表会】 自然科学の分野で国際的に活躍できる研究者を育成することは、本校の SSH のテーマである。その ための取り組みのひとつとして、国外での英語による研究発表を生徒に行わせる機会を設けている。 2009 年度はシンガポールのいくつ かの私立学校や国立教育機関を訪ね たが、2011 年度と 2012 年度は台湾の 高級中学校を訪問した。台湾の高級 中学校とは、日本の高等学校に相当 する。 2012 年度に訪問した学校は、台湾 国立武陵高級中学校と台湾国立政治 大学附属高級中学校である。両校と も、台湾のトップクラスの学校で、 優秀な生徒を育てている。本校はこ れらの 2 校と、それぞれ教育交流協 定を結んでおり、台湾国立政治大学 附属高級中学校は本年度の春季と秋季に、生徒と教職員が来校した。 2012 年度のこのプロジェクトに参加した本校生徒は、3 学期の期末試験がない高等学校 3 年生 3 名 であり、2013 年 2 月 29 日から 3 月 2 日の期間で台湾の両校を訪問した。彼らは、卒業論文や所属し ている自然科学系の部活動でこれまで研究してきた内容をまとめて英語で発表した。発表のテーマは 「Paleoclimate and Environment - Case study of oxygen isotope measurement -」、「A study on the walking track of a bipedal robot」、および「The environmental effects of an earthquake on a nuclear power plant」であった。訪問先の高級中学校の生徒からの英語発表もあり、活発な質疑応 答を行うことができ、この訪問で、参加生徒たちは有意義な時間を過ごすことができた。また、台湾の 商工会議所を訪問した。そこでの所員との議論を通して、台湾における工業や産業についても学ぶこと ができた。 2013 年度も台湾研修を行い、3 名の 3 年生が参加。台湾国立武陵高級中学校と台湾国立政治大学附属 高級中学校を 2014 年 3 月 5 日〜 7 日の日程で訪問し、それぞれの研究を英語で発表した。