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日産自動車(株)における品質工学活用状況と実施事例紹介
日産自動車(株)における品質工学活用状況と実施事例紹介 日産自動車株式会社 R&Dエンジニアリング・マネージメント本部 車両品質推進部 品質向上推進グループ ○奈良 敢也 大工原 友幸 1. 日産自動車(株)における活用状況 日産自動車では、 1989 年に信頼性技術センターを設立 し、品質工学の開発業務への適用を進めてきた。当初は 顕在化した個別の技術課題を解決するツールとして活用 していたが、 近年は、 開発の標準ツールとして位置づけ、 ばらつきが問題となる性能項目の達成に必須のプロセス として戦略的に活用している。具体的には、対象となる 性能項目に対しては、技術開発段階でパラメータ設計を 適用することで、対象性能に対する設計パラメータの感 度を定量化し、これらの情報を技術標準としてストック する。製品開発段階ではストックした技術をもとに性能 設計を実施する。このようなコンセプトを全社的に導入 することで、効率的に製品品質のばらつきを抑制するこ とを可能にした。 2. 適用事例 :機能性評価による小型 DC モータの最適化 品質工学の創始者である田口玄一博士は、 「品質を良く したければ、品質そのものを評価してはいけない。機能 を評価しなさい」と言われた。本事例はその教えの実践 として、DC モータの騒音が問題となった際に、騒音で はなく、DC モータの機能の改善に取り組んだ。具体的 には、DC モータに入力される電力と出力となる動力の 関係に着目し、その関係の改善に取り組んだ。取り組み の結果、機能の向上はもとより、取り組みのきっかけと なった騒音問題も大幅に改善することができた。 本事例を通じて、 製品の機能を評価することの重要性、 品質問題そのものを評価することのリスクについて説明 し、品質工学の基本コンセプトの重要性を解説する。 また、品質工学では、ばらつきの評価測度として SN 比、複数のパラメータを同時に評価するための方法論と して直交表を活用する。これらの特徴についても簡単に 説明する。 3. 適用事例 :鍛造用金型の加工時間半減への取り組み 生産技術への具体的適用例として、切削加工の事例を 示す。 お客様に高品質で低価格な商品を迅速に供給するため、 弊社では高速直彫り加工機を順次導入し、型製作期間の 短縮及び型製作費の低減を図ってきている。しかし、中 長期計画の実現や市場の様々な環境変化に対応すべく、 より一層の型製作期間の短縮、および、型製作費の低減 が課題である。 これまでは現場の技能による調整や、単因子の実験か ら改善を進めることが多かったが、品質工学を適用する ことで、多くの製造条件のパラメータから、寸法精度や 加工面品質は現状レベルを維持しつつ加工時間を大幅に 短縮する条件を見い出すことができた。本事例は、クラ ンクシャフトの型加工を題材にしているが、コンロッド 等関連の型への展開も図っている。 本事例のポイントは 3 つある。 一つは多くの製造条件のパラメータに関し、直交表を 用いて同時に検討したことである。 二つ目は評価の方法であり、機能を評価するという観 点から、 従来の面粗度や加工寸法精度等の評価ではなく、 切削抵抗を測定しその安定性を評価した。 三つ目は実験に用いたテストピースおよび実験方法で ある。クランクシャフトには薄肉部,厚肉部が存在しそ の金型となる非切削物の剛性変化に対応させるため、剛 性違いのテストピース(図 1.)を用いた。また、加工形態 を考慮したパス方向(加工方向)を工夫した。 (図 2.) この取組みの結果から、加工時間を従来の 50%以下に 低減するという大幅な改善を図ることができた。 図 1. 剛性を考慮したテストピースの例 図 2. 加工形態とパス方向の例