Comments
Description
Transcript
木原生物学研究所
研究所紹介 木原生物学研究所 Kihara Institute for Biological Research 注目研究領域の1つに 木原生物学研究所について 所長メッセージ ― 「植物科学研究」 (Web of Science 2008より) 感染症・免疫研究 門の 他、2014 年からは新たに植物エピゲノム科 学 伝学や進化学の 偉大な業 績でゲノムの概 念を世界 部 門が加 わり 4 部 門となりました。 これらの 研 究 に先 駆けて提唱した木原均博士が設 立した財団法 部門では、約 6000 系統のコムギや約 800 系統の 人木原生物学研究所を源流としています。その後、 トウガラシの遺伝 資 源を有 効に活用する研 究、そ 横浜市立大学への移管の際に財団法人研究所の伝 れらのリソースをゲノム情 報に置き換える研 究、ゲ 統は引き継がれましたが、公立大学法人化に伴い、 ノム情 報をもとに現 象を解明し実 社 会等で役 立て る研 究などを行っています。 また、 研 究 所 の 教 員 エンスの新たな役割を果たすための挑 戦を開始い は横 浜市立 大学大学院 生命 ナノシステム科 学 研 究 たしました。 科の専任教 員を兼ねており、大学院博士前期およ 本研 究 所には研 究中核として、植物遺伝 資 源 科 肥満研究 再生医学研究 脳・神経研究 ナノサイエンス ポスト ゲノム研究 化学 び後期課程の学生の教育に携わっています。 物性研究 新たな科学の進展をみせると共に、応用への展 の自然が保存されている舞岡リサーチパーク内 開がはかられています。木原生物学研究所では、 の丘陵にあります。研究所は、自然に溶け込ん 主に木原博士のグループが世界中から収集し、 だ斬新なデザインの建物で、研究に打ち込める 保存しているコムギ・トウガラシの遺伝資源を 環境が整っており、小規模ながら、分子生物学 用い、ゲノム科学的方法を活用した研究を展開 から圃場まで整備された植物研究のメッカとい しています。これらの研究は、世界的に権威の えます。 木原生物学研究所は、個人の名前を冠 ある学術雑誌に多数掲載され、高く評価されて した日本では珍しい研究所です。これは日本が います。最近では、理化学研究所を始めとした 誇る近代遺伝学の創始者の一人である故木原均 内外の著名な研究機関と積極的に連携し、国際 博士が 1942 年に創立した財団法人木原生物学 協力を積極的に推進しています。 特に、 常にフィー 研究所を 1984 年に横浜市立大学に移管したこ ルドの人であった木原博士が収集したアフガニス とによります。横浜市の地域振興と産業発展の タンコムギの里帰りプロジェクトは大いに注目さ ために、1995 年舞岡の地に新しい建物を建設 れています。 し、国際文化都市横浜にふさわしい研究所とし これらの研究を通して、食料の安定供給と環 て再出発しました。 境保全に貢献する世界規模の研究所をめざすと 木原博士の最大の功績は、コムギの染色体群 ともに、横 浜市にふさわしい産業振 興に貢献 を詳細に分析することにより、ゲノムの概念を確 することや、地域社会との交流にも力を注いで 環境 学、 植 物ゲノム科 学、 植 物 応 用ゲノム科 学 の 3 部 立したことにありま 保 有 する遺伝 情 報 の偉大な業績をふまえてさらに前進しよう) 」で の 解 析 はそれぞ れ しょうか。ユニークな研究を基盤として有意な人 :横浜市立大学の Top1% 論文がある の 生物を 特 徴付け 材を世に送り出す全人的理科教育にも尽力して :注目研究領域に該当 るため の 必 要 不 可 ▲ 植物応用ゲノム科学部門 植物科学に特化 います。 提供:政策研究大学院大学 欠 な 科 学 的 手段と 出展:文部科学省 科学技術・学術政策研究所、 サイエンスマップ 2010&2012、NISTEP REPORT No.159、2014 年 7 月を 基 に、 株式会社シーケンが加工・作成。 なっています。重要 木原生物学研究所 所長 高山 光男 植物ゲノム科学部門 ▲ 遺伝子の改変、改良 植物応用ゲノム科学部門 ▲ 生物資源の育種利用 トウガラシ 400種以上 横浜からの 地域・国際社会貢献 人材育成 学部・大学院 高 大 連 携 、地 元 小 学 校 へ の 授 業協力など 外部との連携 外部との連携 コムギ 6,000種以上 植物機能性物質の開発 地域への貢献 一日施 設公開、市民向け講座、 植物エピゲノム科学部門 ▲ 連携大学院 植物の遺伝子発現制御機構の解明 ● 理化学研究所 環境資源科学研究センター(CSRS) ● 農業生物資源研究所 昭和 59 年(1984 年) 横浜市立大学の附置研究所として再発足 ( 南区六ッ川,中村町 ) 研究所など ギ 育 種 素 材 開 発 プ ロジェクト 昭和 17 年(1942 年) 昭和 32 年(1957 年) 京都にて財団法人木原生物学 研究所の設立 横浜市南区六ッ川に研究所を 移設 1950 1960 平成 7 年(1995 年) 新しい横 浜市立大学木原 生物学研究所のオープン 平成 5 年(1993 年) 舞岡リサーチパークの中核 施 設として木 原 生物学 研 究所新研究棟の着工 平成 20 年(2008 年) 理化学研究所および農業生物資源 研究所との連携大学院協定の締結 平成 17 年(2005 年) 横浜市立大学の公立大学法人化に 伴い木原生物学研究所を植物科学 の先端的研究所に特化することに 平成 22 年(2010 年) 天皇皇后両陛下ご訪問 昭和 57 年(1982 年) 平成 26 年(2014 年) 財団法人木原生物学研究所設立 40 周年を 機に公的機関への寄託を検討開始 1970 1980 植物エピゲノム科学部門を加え 4 部門体制に 1990 2000 2010 2020 横浜市立大学 木原生物学研究所 | 2 木原記念室 木原記念室 1 国際社会への貢献 持 続 的 食 糧 生 産 のため のコム 地域貢献 地域貢献 昭和 60 年(1985 年) 1940 外部機関との連携 理 化 学 研 究 所 、農 業 生 物 資 源 など 研究所と連携してライフサイエンス研究を支援する財団法人木原記念横浜生命科学 振興財団の発足、横浜市が戸塚区舞岡地区にリサーチパークを構想 沿革 植物エピゲノム科学部門 植物遺伝資源科学部門 ▲ 植物エピゲノム科学部門 有用作物の作出 木原生物学研究所が保有する 遺伝資源の活用 植物応用ゲノム科学部門 「Forward with the heritage from Kihara(木原 植物科学研究 木原生物学研究所 いきたいと願っています。キャッチフレーズは、 す。現在、ゲノムが 植物ゲノム科学部門 植物ゲノム科学部門 21 世紀に期待される植物学 研究によるライフサイ がん研究 な生命について全ゲノム情報が次々と決定され、 立大学の附置研究所です。横浜市南西部の里山 植物遺伝資源科学部門 植物遺伝資源科学部門 本研 究 所は、コムギなどの高等植物に関する遺 心臓・血管疾患研究 木原生物学研究所は、公立大学法人横浜市 木原生物学研究所について 木原生物学研究所について 横浜市立大学 研 究 所 紹 介 研 究 部 門 紹 介 植物遺伝資源科学部門 植物ゲノム科学部門 生命ナノシステム科学研究科 生命ナノシステム科学研究科 研究室の構成(2014 年 4 月現在) (博士前期課程、博士後期課程) 坂 智広(教授) Tel. 045-820 -2404 / 1902 E-mail 研究室の構成(2014 年 4 月現在) 生命環境システム科学専攻 (博士前期課程、博士後期課程) tban@yokohama- cu.ac.jp 教員 荻原 保成(教授)、川浦 香奈子(准教授)、 佐久間 俊(助教) Tel. 045-820 -2405 / 2401 E-mail ホームページ ht tp: //pgsource.sci.yokohama- cu.ac.jp/ 植物遺伝資源科学部門 植物遺伝資源科学部門 生命環境システム科学専攻 教員 木原生物学研究所について 木原生物学研究所について 研 究 部 門 紹 介 yogihara@yokohama- cu.ac.jp ホームページ ht tp: //pgenome.sci.yokohama- cu.ac.jp/ 研究内容 研究内容 れまでのすぐれた研究成果、また原産地中央アメリカで採集されたトウガラシの貴重な遺伝資源を保持し 植物は、環境の変化に応答して遺伝子の発現を調節して、成長・ ています。これらの広範な遺伝資源を類型的に増殖・管理し、有用形質を評価・選抜して遺伝資源を有 分化・再生を繰り返し、地球上の様々な環境に適応するように進 効に活用し、また国際トウモロコシ小麦改良センター (CIMMYT)や国際乾燥地農業研究センター (ICARDA) 化してきました。世界の最重要作物であるコムギは異質倍数化に などの国際農業研究機関や国内農業研究機関との有機的連携・研究ネットワークを活かして実社会で役 より進化してきたことを特徴とします。倍数化の結果、世界中の 立てる植物遺伝資源の素材・表現型・遺伝子型研究 ・ 教育を進めています。アフガニスタンの復興支援 様々な環境に適応して栽培されてきました。倍数性は植物の特徴 国家プロジェクト等を推進し、国際的な共同研究を通じて、広範なコムギ遺伝資源を世界の様々な環境 でもあります。私たちは、倍数種であるコムギの複雑な遺伝子制 条件下で、環境ストレス耐性、耐病性、食品安全性、持続的安定生産性、有用代謝産物 ・ 新機能性生産 御システムに興味をもって研究してきました。近年のゲノム科学の など有用形質を評価と遺伝解析(QTL 等遺伝解析と DNA マーカー開発を)により、有用遺伝子のクロー 進展により、植物科学は個別の遺伝子解析から、遺伝子制御ネッ ニング・遺伝子解析に向けた有効な育種素材の選抜と実験系統の育成に関わる開発研究を行っています。 トワークの比較機能ゲノム解析にシフトしてきています。これらの 植物応用ゲノム科学部門 植物応用ゲノム科学部門 植物は自ら移動できないため、生育が環境に大きく影響されます。 植物ゲノム科学部門 植物ゲノム科学部門 木原生物学研究所はイネ・トウモロコシと並ぶ三大主要作物のコムギの遺伝的実験系統・遺伝資源とこ 状況を踏まえ、私たちの研究室は作物であるコムギを主な材料と し、比較機能ゲノム科学的手法を駆使して、環境に応答した遺伝 られた基礎的知見を分子育種に応用することを目指しています。 ⹅⹅ コムギ・トウガラシ遺伝資源の系統保存と活用 パンコムギを材料にして、 発 現 遺 コムギ の 種 子 形 成 過 程 の 発 現 遺 歴 史 的にも価 値のあるコムギとト トウガラシ遺伝 資 源を活用してカ 伝子を体系的・網羅的に解 析する 伝子を網羅的に解析し、小麦粉成 ウガラシ遺伝 資 源を保 有していま プ サイシノイド による 抗 肥 満、 抗 トランスクリプトーム解 析を行って 分の改良や食品アレルギーを低減 す。これらの広 範な遺伝 資 源を類 高 血 圧や 有用なカロテノイド成 分 います。EST 解析、マイクロアレイ した小麦粉の作出をめざしています。 型的に増殖・管 理し、有用形質を などの遺伝的変異を解明し、健 康 解析等の解析手法を用います。コムギの草型の改良、収量 評 価・選 抜して、 遺伝 資 源のパス 効果の高い品種の選抜と育種に向 増産、環境耐性、病害虫抵抗性に関連する遺伝子を特定し、 ポート情 報・特 性 情 報を整 理して けた研究をしています。 これらの遺伝 子を活用することにより、コムギの品種改良 コムギ は 遠 縁 な 異 種 植 物 の 染 色 を目指しています。 体 を 保 持 で きる 特 徴 が ありま す。 データベース整 備と種子 等の有 効 利用の研究をしています。 ⹅⹅ 内 戦 による戦 火と混 乱 の 影 響で、 ⹅⹅ 作物における機能ゲノム科学の展開 ⹅⹅ ⹅⹅ 低 温・高温、乾 燥、塩といった環 コムギにおける機能性物質の集約的集積 オオムギ 染 色体 導入コムギをモデ コムギにおける環境ストレスに応答した遺伝子発 現調節 アフガニスタンの人々の主 食であ 小麦粉の品質向上の遺伝子工学 ルにして、ゲノム間相互作用により 産生される機能性物質を網羅的に 解 析し(オミックス研 究)、機能性 物質を小麦粉に集約して利用する技術を開発しています。 るコムギの生産が危機的状況にあ 境 ストレスを与え たコムギ の 遺 伝 りま す。 また 内 戦 によって、 アフ 子 発現 パターンの解 析を網羅的に 性の向上のために、コムギ病害 抵 ガニスタン在 来のコムギの 遺伝 資 行っています。 この 遺伝 子 発 現プ 抗性の遺伝育種学研究及び病原菌 源 が ほとんど失わ れてしまったこ ロファイルをシロイヌナズナやイネ 穂の形態や草型は、作物の栽培の との相 互作用メカニズムの 解 析を とも大きな問 題です。 木 原 生物 学 研 究 所で は、 独 立 行 政 など他 の 植 物と 比 較 することで、 しやすさや収 量に関 わります。 自 進 めています。 また 野 生オオムギ 法 人科 学 技 術振 興 機 構(JST) と 独 立 行 政 法 人 国 際協 力 植物に共 通または独自のストレス応答遺伝 子制御システム 然 変 異 系 統 や、EMS や 重 イオ ン Hordeum bulbosum の球茎形成 機 構 (JICA) が 共 同で実 施している「 地 球 規 模 課 題 解 決 の解明に役立つことが期待されます。 ビーム処 理による人為的突 然 変 異 の 遺伝 的メカニズムを解 明して多 のための研 究プログラム」に採 択され、アフガニスタンの ⹅⹅ ムギ類植物のかたちの改良 系 統のムギ 類 植物を用いて、植物 年生コムギ・オオムギの開 発を目 コムギの育成プロジェクトに 取り組み、持続的な食 糧 生 の「かたち」に関わる遺伝子について機能の解明を進めて、 指しています。 産の基盤づくりとコムギ 研究者の育成に取り組んでいます。 作物の改良に応用しています。 横浜市立大学 木原生物学研究所 | 4 木原記念室 木原記念室 品種改良による食料の安定生産と マイコトキシン耐 性 など食 の 安 全 地域貢献 地域貢献 3 地 球 温暖 化・気候 変 動に対する食 料生 産のため の遺伝資源の利用 持 続 的 食 糧 生 産 のため のコムギ 育 種 素 材 開 発 (SATREPS)への取り組み ⹅⹅ ⹅⹅ 外部との連携 外部との連携 木原生物学研究所は、世界的にも トウガラシ遺伝 資 源を活用した新機 能性育 種 素 材の開発 ⹅⹅ 植物エピゲノム科学部門 植物エピゲノム科学部門 子制御ネットワークを体系的・網羅的に解析しています。また、え 研 究 部 門 紹 介 植物応用ゲノム科学部門 植物エピゲノム科学部門 生命ナノシステム科学研究科 生命ナノシステム科学研究科 研究室の構成(2014 年 4 月現在) (博士前期課程、博士後期課程) 嶋田幸久(教授)、中村郁子(助教) Tel. 045-820 -24 45 / 2421 E-mail 研究室の構成(2014 年 4 月現在) 生命環境システム科学専攻 (博士前期課程、博士後期課程) yshimada@yokohama- cu.ac.jp 教員 木下 哲(教授)、一色 正之(准教授) Tel. 045-820 -2428 / 2436 E-mail ホームページ ht tp: //pbiotech.sci.yokohama- cu.ac.jp/ 植物遺伝資源科学部門 植物遺伝資源科学部門 生命環境システム科学専攻 教員 木原生物学研究所について 木原生物学研究所について 研 究 部 門 紹 介 tkinoshi@yokohama- cu.ac.jp ホームページ ht tp: //tetsu-kinoshita.jp/ 研究内容 研究内容 コムギやイネをはじめとする穀類の胚乳組織は我々人 類が食料として利 ジーの手法を活用し、成長制御の分子メカニズムに植物ホルモンがどのように関わるのかを研究して 用している組 織であり、 その成り立ちを理 解することは大 変 重 要です。 います。また、モデル植物を活用した先端的なゲノム研究を行っています。さらに、イネ、トマトやイ また、胚 乳は、植物にとっては胚や 発芽 後 の幼 植物への栄養供給を担 チゴなどの普段食卓に上る作物を用いて、植物ホルモン研究の農業的な応用展開をめざした研究を行っ う組織でもあります。古典遺伝学的な解析から、胚乳においては、オス ています。 由来のゲノムは胚への栄養供給を増大させようとし、逆にメス由来のゲノ 植物ゲノム科学部門 植物ゲノム科学部門 植物の成長は光などの外的環境を介した厳密に制御されています。本研究部門ではケミカルバイオロ 植物応用ゲノム科学部門 植物応用ゲノム科学部門 ムは栄養供給を減少させるよう働くと考えられています。故木原均博士 もこの現象に興味をもち故西山市三博士らとともに先鞭をつけています。 自殖する植物では、 オス・メスのゲノムが、 胚 乳発 生に対して全く逆の 役割を果たしているという古典 遺伝学の知見は、DNA 塩基配列が生命 の設 計図であるとする分子生物学の基 本原理 “ セントラルドクマ ” と矛 盾する現象でした。現在では、DNA の塩基配列以外に遺伝子の働きを いはエピゲノム)として注目されています。本研 究部門では、主に以下 植物ホルモンのオーキシン ( 左 ) と ブラシノステロイド ( 右 ) ⹅⹅ 植物ホルモンオーキシンの生合成や生合成阻害剤 に関する研究 のような課題に取り組んでいます。 シロイヌナズナの植物ホルモン変異体 ⹅⹅ 植 物 の 環 境 応 答 機 構 と植 物 ホ ル モン を 介した⹅ 成長制御機構 ⹅⹅ DNA メチル 化を介したゲノムインプリンティング の制御機構 ⹅⹅ 種間、倍数体間の胚乳における生殖隔離機構 同 一種 内で の 交 配で は、 オス・メスのゲノムのバランス が 植物の胚乳では、ゲノムのオス・メスの由来の違いにしたがっ 正常なためその効果 が分かりにくいですが、異なる種や異 る場 面 で 制 御しているもっとも重 で、その場所で一 生を過ごさねば て、片親性の遺伝 子 発現を示すインプリント遺伝 子と呼ば なる倍 数 性を用いた 交 配ではオス・メスゲノムの 効 果 が胚 要な植物ホルモンです。その 作用 なりません。このため、外部 環 境 れる遺伝 子がいくつも見つかっています。 この課 題では主 乳に現れてきます。ここでは、どのような分 子機構を介し は農 業 現 場でも広く活用されてい に応答する様々な機能を発 達させ にシロイヌナズナを用いて、DNA 脱メチル 化を介したイン てオス・メスゲノムの 効果 が 現れるのか、特にゲノムインプ ます。当研 究室では、モデル植物 てきました。 このうち、 光 や重 力 プリント遺伝子の制御機構の研究を行っています。 リンティングとの関連を栽培イネと野生イネを用いて解析し の網羅的な遺伝子発現応答データ などの 外 部 環 境 に応 答 する際 に、 の大 規 模 解 析を元にして、 世界で 植 物ホル モン・オーキシンやブラ 初 めてのオーキシン生合成を阻害 シノステロイドがどのように植物の 剤開発することに成功しました。また、さらに高機能なオー 成長を制御しているのか、その生理作用の分子機構や、生 ミトコンドリアや葉緑体には DNA にコードされた遺伝情報 キシン阻害剤の開発と、その植物に対する作用の解析や農 合成経路について分子レベルで研究を行っています。 が 存 在しています。 我々は、 こうした 細 胞 質のゲノム が 母 ⹅⹅ モデル植物のゲノム・トランスクリプトーム研究 の上に植 物の営みが成り立つことに着目しています。 細 胞 質と核ゲノムの協調性を解 析するために、両者の 組み合わ 植物は種により様々な特性を持っ モデル植 物シロイヌナズナは、 植 せを様々に変えた細胞質置換系統 作成して、その分子機構 ています。当研 究 室で開 発した阻 物で最初に全ゲノム DNA 配列が決 を紐解くことを目指しています。 害 剤などを利 用し、 イネ、 トマト 定された植物で、遺伝子の発現パ やイチゴなど様々な植物 種で共 通 ターンや 機 能を調 べる 材 料として 適しています。シロイヌナズナを用 の 種 で 独 特 な作 用を 明らか にし、 いて、植物ホルモンに関連する遺伝 子 発現 パターンを網羅 植 物の成り立ちについて解 明を進 的に明らかにしたり、遺伝子発現制御機構を大規模に解明 めています。 するための研究を行っています。 木原記念室 木原記念室 の植 物ホルモンの 働きとそれぞれ 5 植物の細胞質ゲノムの役割 地域貢献 地域貢献 有用作物での植物ホルモンの作用研究 ⹅⹅ 性 遺伝すること、さらには核ゲノムとのコミュニケーション 業分野での利用方法に関する研究も進めています。 ⹅⹅ ています。 外部との連携 植物は発芽すると移動出来ないの 外部との連携 オーキシンは植物の成長をあらゆ 植物エピゲノム科学部門 植物エピゲノム科学部門 規定する要因があることがわかってきており、エピジェネティクス(ある 横浜市立大学 木原生物学研究所 | 6 木原生物学研究所について 木原生物学研究所について 外部との連携プロジェクトなど 植物遺伝資源科学部門 厳しい自然条件と内戦後復興途中 小麦6B 染色体の全ゲノム塩基配列の決定⹅ (国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC) + 農林水産省) ⹅⹅ パンコムギゲノム解読国際コンソーシアムにおける染 色体分担 2010.1. 新学術領域研究「ゲノム・遺伝子相関」⹅ (文部科学省) ⹅⹅ 領域代表:高山誠司(奈良先端科学技術大学院大学) 嶋田研究室では大 規模なゲノム情報を活用し、世界で初 計画研究:木下哲(横浜市立大学) めてオーキシンの生合成阻害を発見、改良することに成 功 「 イネ属 胚 乳における父・母ゲノムのエピジェネティックな の 社 会条 件にあるアフガニスタン オーキシン生合成 阻害剤を活用した植 物 制 御 技 術の開発 ⹅⹅ 植物遺伝資源科学部門 アフガニスタン・コムギ 遺 伝 資 源の里 帰り計 画 (JST/JICA 地 球 規 模 課 題 対応国際 科 学 技 術 協力 事業〈SATREPS〉) ⹅⹅ しました。これら阻害剤を処 理することにより、果 実の鮮 に対して、木原 生物学 研 究 所の 保 調和と軋轢の分子機構」 度保 持、 花きの開 花制御、 主根 の 伸 長 促 進や、 花 芽 形成 有する貴重なコムギの遺伝 資 源と 領域ホームページ : http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/genetics/ の制御など、新たなオーキシンの 作用が明らかになり、阻 害剤の農業利用の可能性を見いだしました。 研究成果を用い、国内外の連携を 植物ゲノム科学部門 植物ゲノム科学部門 リードして持 続 的 食 糧 生 産に向け た若手研究者の人材を育成する国際共同研究開発プロジェ クトを展開しています。 これら植物遺伝 資 源の収 集・維持 管理、評 価と解 析の植物ゲノムと育種への応用に向けた植 物 遺 伝 資 源 科 学 研 究 を 通じ、 地 域・国 際 社 会 へ貢 献と、 国際舞台で活躍できる若手研究種の育成を行っています。 ≪植物遺伝資源科学部門 坂教授≫ 異 種 染 色体 導入コムギが産生する新機能性物質 の利用技術の開発(生研センター) の 一 環として、 日本 は パンコムギ6B 染 色 体全ゲノム塩 基 持ったモデル生物において急 速に解読が進みました。しか すが、食品としての利用価 値 が限られています。一方、コ 配列決 定に参加しています。当研究室では、パンコムギ発 しながら一方で、自然 界の生物集団のゲノムは、複 雑な対 ムギは、加工適性に優れ、幅広い食品に用いられます。本 現 遺伝 子を網羅的に収 集・解 析してゲノム中の転写 領域を 立 遺伝 子構成や多様なエピゲノム情 報を有していることが プロジェクトは、 オオムギ 染 色体 導入コムギを用いて、 遠 体系的に解 析しています。現在までに、発現 遺伝子(EST) 明らかとなっています。 このため、 自然 界でおこる高 次の 縁なコムギ・オオムギゲノム間の相 加的 効果、相乗的 効果 の約 90%をカバーしていると見積もった約 90 万の EST を 生命 現 象は、 複 雑に絡 み合う遺伝 子産 物の 組合 せによる をオミックス研 究により網 羅 的に解 析し、 コムギにおける 収 集しました。これらの EST を整 列化し、コンピューター 相互作用(ゲノム・遺伝子相関)を通じて決定されます。ま 機能性 成分を飛 躍的に増大させ、応用化することを目的と 上で、どの 遺伝 子がどの 発 生時期、どのストレスに応答し た、 このような相 互作用によって、 外 的 要 因( 例えば 環 境 しています。小麦粉の加工適性を改良する形質、各種機能 て発現されるかを解 析できるシステムを開 発しました。ま など) に対する頑 健 性や、 相手方( 例えばオスとメス、 宿 性物質を飛躍的に増大させる遺伝子を発見し、コムギ 改良 た、 パンコムギの 完 全長c DNA、22,519 クローンの 完 全 主とパラサイト等)に対する可塑性、多様 性を生み出して に応用しています。また、小麦粉中に血流改善効果、肉体 解読を行い、公表しました。さらに、これらの発現 遺伝子 いることが 理 解されつつあります。しかしながら、その 分 疲 労緩和、神 経 突 起伸展促 進、坐骨神 経再生促 進、神 経 を再グルーピングして、パンコムギ発現 遺伝 子の標 準セッ 子メカニズムを体系的に理 解しようという試 みは殆どなさ 細胞の酸 化障害 抑制、脳障害 抑制、皮 膚角化 細胞の増殖 トを確立しました。ゲノムの遺伝子発現領域のアノテーショ れていません。 本 新 学 術 領 域 で は、 このような「 ゲノム・ 促 進作用があることを新たに発見し、原因 物 質を特定し、 ンに貢献しています。 遺伝 子相 関 」 を対 象とする先 進 的な遺伝 学的 研 究を集 約 利用技術を開発しています。 ≪植物ゲノム科学部門 荻原教授≫ し、 様 々な 生 命 現 象 の 根 幹 を 支 えるゲノム・遺 伝 子 相 関 機構の普 遍性、 多様 性を明らかにすることで、 ポストゲノ ⹅⹅ ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)・ コムギ(文部科学省受託事業) ※オーキシンは発生、細胞分裂、細胞分化、成長 促 進、環境応答など、 ほとんど全ての成長 過程の制御において極めて重要な役割をになう 植物ホルモンです。 ム時代の新たな学術領域を先導することを目指しています。 ( 領域の目的より抜粋 ) 動 植物を問わず、オス由来のゲノムは胎 盤や胚 乳といった 論文 Topics ) 組 織を通じ、胚への栄養供給を促 進し、メス由来のゲノム コムギは倍 数性を特 徴として進化 は胚への栄養供給を促 進しようとしていると理 解されてい しました。 ゲノムの 概 念を確 立し ます。オス由来とメス由来のゲノムの機 能に違いが 存 在す た 記 念 碑 的 生 物 材 料 で も ありま るために、こうした現象には片親性の遺伝子発現制御機構 す。日本は、多様な遺伝 資 源の収 これらの 研 究 成 果は、 今後 の農 薬 開 発 や農 業の国 際 競 争 であるゲノムインプリンティングが関わると予想されていま 力の向上が期待されます。 集、染 色体 解 析、オルガネラゲノム研 究、EST 解 析などで すが、 その詳 細な分 子機 構 はまだ良く分 かっていません。 世界をリードしてきました。NBRP「コムギ」ではその実績 私達は、イネ属の種間交雑や倍数体間交雑を用いてこのこ を生かし、多様性とオリジナリティーに富んだ系統の維持・ とを明らかにしようとしています。 配布 (系統リソース)、遺伝子解析ツールの提 供(DNA リソー 界で初めて発見」 (Plant Cell Physiol , March 16, 2010 doi: 10. 1093 /pcp / pcq032) ≪植物応用ゲノム科学部門 嶋田教授≫ ≪植物エピゲノム科学部門 木下教授≫ 木原記念室 木原記念室 ス)を中心に活動しています。 ≪植物ゲノム科学部門 荻原教授≫ 横 浜市立 大学木 原 生物学 研 究 所では、 中核 機 関である京 都大学と連携し、NBRP・コムギの活動に貢献しています。 ≪植物ゲノム科学部門 荻原教授≫ 7 地域貢献 地域貢献 ( 「植物ホルモン『オーキシン』の生合成阻害剤を世 世界三大作 物のひとつであるパン 外部との連携 外部との連携 生物の設 計 図であるゲノム情 報は、 均 一 化されたゲノムを 植物エピゲノム科学部門 植物エピゲノム科学部門 国際コムギゲノム DNA 塩基配列決定コンソーシアムの活動 オオムギは、多くの機 能性物質を含むことが知られていま 植物応用ゲノム科学部門 植物応用ゲノム科学部門 ⹅⹅ 横浜市立大学 木原生物学研究所 | 8 一日施設公開・講演会 講演会 木原記念室 開館時間 木原生物学研究所の創立者である木原均博士の功績を示す資料や遺 「科学映画と講演の会」 ⹅⹅ 生命科学分野への興味を高めていただくため、幅広 いテーマのもと、市民向け講演会を実施しています。 過去に実施した演題 品を展示し、さまざまな角度から博士を紹介しています。平成 22 年 には天皇皇后両陛下が行幸啓されました。一般の方にも公開していま <火曜・木曜> 10時~16時 < 第 3 土 曜 > 13時~16時 植物遺伝資源科学部門 植物遺伝資源科学部門 木原生物学研究所では毎年1回、生命科学分野、特に 植物への理解を深めていただくために、研究所の施設 の公開をしています。本研究所の研究部門がそれぞれ出 展し、研究紹介のほか、子供向け実験プログラムや本 研究所所属の教員による講演会なども実施しています。 木原生物学研究所について 木原生物学研究所について 木原生物学研究所が取り組む地域貢献 すので、お気軽にお越しください。 「深 海に漂う生物の世界へ ようこそ」 「植 物の 体 づくりの 柔 軟 性 に魅せられて」 植物ゲノム科学部門 植物ゲノム科学部門 「チョウの眼から見た世界」 など ⹅⹅ 市内小・中学校との連携事業 施設の開放 舞岡小学校「総合学習の時間」への協力 本研 究 所 の施 設について、 大学 の 使 用がない場 合 に、一 般の方々への貸し出しをしています。詳 細に ついてはお問い合わせください。 ⹅⹅ 施設詳細(有料) ・ホール…定 員 150 名。付帯 設備あり(スクリーン、 プロジェクター、マイクなど)。 ・会議室…定員 30 名。付帯設備あり。 ゲノム説の先駆者 木原 植物応用ゲノム科学部門 植物応用ゲノム科学部門 均 博士(1893―1986) 木原均博士は、20 世紀における高等植物の遺伝学・進化学の研究で数々の業績を残しました。 特に、ゲノム説の提唱、パンコムギの祖先の発見、スイバによる高等植物の性染色体の発見、 倍 数性を利用したタネナシスイカの作出は、世界的な研究成 果として知られています。また、 植物エピゲノム科学部門 植物エピゲノム科学部門 舞岡小 学校との連携により、 「総合学習の時間」へ の協力をしています。これは 1 年間かけて、コムギ の歴史や特性など、コムギに関する勉強をしていく プログラムになっています。5 月に研究所内の見学、 夏にはコムギの収穫をし、刈り取った穂を十分に干 してから秋に実を取り出して挽きます。 その小 麦粉を使って、グルテンを取り出す実 験やう どん作りなどをし、調べ学習などを行いながら、最 後 に 1 年 間 のコムギ につ いての 学 習の成 果 をポス ター発表会で行っています。 細胞遺伝学をはじめ、さまざまな分野で多くの後 継者を育てるとともに、海外に植物探索行 を重ね、日本のフィールド科学の道を拓きました。さらに、日本のスキー草創期の一人でもあり、 二度の冬季オリンピック選手団長を務めるなど、スポーツ界にも足跡を残しました。 『木原記 念室 』は、興味や好 奇心の赴くままに日々の疑問を科 学することを楽しんだ、博士の限りな い探究心を伝えていきます。 所内見学 ンスプログラム、横浜サイエンスフロンティア高校での出張 授 業、木原記念財団主催の「高校生実習会」、日本学術振 興会主催のサイエンスプログラム「きらめき☆ときめきサイ エンス」への協力など、様々な分野で活動しています。 コムギを使った実験 ⹅⹅ コムギの収穫 9 生物の歴史は染色体に記されてある (1946) 木原記念室 木原記念室 近 隣 中 学 校 より生 徒 を 受け入れ、 「 研 究 者」 と しての職業体験を実施し ています。 最初に実験器具の使 い 方 な ど を 教 わ り、 イ ネ の DNA の 抽 出 と PCR(Polymerase Chain Reaction; ポリメラーゼ連 鎖 反 応 ) による遺伝 子解 析など、研究者が実際に行っている実験を体験する ことができます。 地球の歴史は地層に 地域貢献 地域貢献 舞岡中学校・日限山中学校から「職業体験」の受け入れ The History of the Earth is recorded in the Layers of its Crust; The History of all Organisms is inscribed in the Chromosomes. 外部との連携 外部との連携 その他、外部機関と連携した講座開催、国際サマーサイエ 横浜市立大学 木原生物学研究所 | 10 研究所へのお問い合わせについて 横浜市立大学木原生物学研究所では、植物研究の中でも、世界でも有数のコムギ 研究機関として、 様々な研究機関と共に研究を行っています。また、地域に根付いた研究所として、地元小学校を始めとした 教育への協力など、社会貢献も積極的に行っています。 研究、講演会、その他事業のご提案などございましたら、お気軽に本研究所事務室までご連絡ください。 また、木原記念室の見学も随時受け付けておりますので、ご利用ください。 (舞岡キャンパス) 舞岡キャンパス 木原生物学 研究所 舞岡小 ↑至国道1号 至 横浜 東 → 京 鶴見キャンパス ↓ 至下永谷 ★ 急坂 階段有り ←至戸塚 飲料 販売店 ↓至横浜 急行 京浜 市営地下鉄 舞岡駅 市営地下鉄 ブルーライン 金沢八景 キャンパス 附属市民総合 医療センター 福浦キャンパス 附属病院 〒244-0813 横浜市戸塚区舞岡町641-12 TEL:045-820-1900 / FAX:045-820-1901 WEBSITE:http://www.yokohama-cu.ac.jp アクセス:横浜市営地下鉄ブルーライン「舞岡」駅 徒歩10分 Kihara Institute for Biological Research