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加工用たまねぎの機械化体系における収量確保技術
No.260号 No.2 平成25年2月13日 発行: 加工用 加工用たまねぎの たまねぎの機械化体系における 機械化体系における収量確保技術 における収量確保技術について 収量確保技術について はじめに 家族構成の変化や共働き等で「食の外部化」がすすむ中、国内で流通する野菜の6割は 加工・業務用途となっています。その中で実需者―加工業者、惣菜業者、業務卸などか らは他社との差別化や安全・安心の観点から、国産原料を求める声が強くなっています。 全農にいがたが推進している加工用たま たまねぎ面積、取扱額の推移(全農にいがた扱い) 取扱額(千円) 面積(ha) ねぎは出荷規格が簡素(直径7㎝以上、 25,000 40 根切りは不要など)で、調整選別の大幅な 20,000 30 面積 省力化・コスト削減が見込める一方、一般 15,000 取扱額 20 10,000 的に生食用よりも取引価格が安いため、 10 5,000 ある程度の規模(面積)での取り組みが 0 0 必要になります。 H22 H23 H24 また一定規模以上では、省力・作業時間短縮のため「機械化」が必要になってきます。 (本県でのたまねぎ定植時期は降雨日も多く、定植適期を逃しやすい) そこで、平成23年度からは全農が機械を取得して「園芸農機の貸出し」をおこない、 うね立て~定植~収穫までの各作業の省力化・規模拡大の支援に取り組んできました。 『 “たかが”たまねぎ』でなくなる機械化体系 機械化の取り組みをすすめる中で、機械化栽培においては、慣行栽培と「苗」 「定植前 の葉切りの有無」 「定植方法」等が違うことから、慣行と同じ播種時期・定植時期では越 冬率や越冬後の肥大等が芳しくなく、期待する 収量が得られにくいことが判ってきました。 庭先の自家用栽培では立派に普通にたまねぎ を作れるのに、一定規模以上での機械定植では うまくいかない。機械化体系の場合【 “たかが” たまねぎ】ではなく、慣行との違いをしっかり 押さえ、機械化に応じたポイントを見極めた 移植機でのたまねぎ定植 栽培が必要となります。 1 ※掲載内容の無断使用・転載を禁じます。 機械化体系における栽培のポイント ≪ポイント①≫:苗と育苗について ○ セル苗の場合 セルトレイの「上げ床」 「直おき」また「ハウス内」 「ハウス外」によって管理方法 が違ってきますが、ハウス育苗では苗が伸び倒伏するので「葉切り」が必要です。 「葉切り」は、早期の根鉢形成のためには逆効果となりますが、倒伏する前に苗丈 20cm程度に切ることを複数回おこなうのが最も影響が少ないやり方です。 ハウスは伸びて倒伏 葉切り 20㎝ 15㎝ 10cm ○ 地床苗の場合 充実した太さ(6㎜程度)の苗を目指し、定植前の葉切りによる生育停滞を考慮 して、慣行の手植えより5日早く播種します。 ≪ポイント②≫:機械定植に適した定植時期、苗質について セル苗・地床苗ともに、効率良く機械植えができるよう、定植前に苗丈18~20㎝ 程度に「葉切り」をおこないます。 ○ セル苗の場合 288穴セルの場合、8月25日~9月1日播種⇒10月15日~25日定植 (50日以内の育苗で根鉢形成⇒10月25日までに植え終わり)とします。 根鉢をしっかり形成させ、細くても早く植え付けます。植え付けが遅いほど (育苗日数が長いほど)減収します。 6 収量 100 適期は種 (9/1頃) 越冬率 80 4 60 40 2 遅いは種 (9/9) 20 0 0 10月 10 月 11日 11 日 10月 10 月 18日 18 日 10月 10 月 21日 21 日 11月 11 月 2 日 11月 11 月 10日 10 日 は種が遅い → 年内の生育量を確保する期間が短い → 葉鞘径が細い状態で越冬 = 越冬率の 越冬率の低下 定植時期と越冬率・収量(県園芸研究C) (9/11は種、288穴セル、露地直おき育苗) ○ 地床苗の場合 苗床でしっかり太らせてから植え付けます。地床苗も機械定植前に「葉切り」を 2 ※掲載内容の無断使用・転載を禁じます。 おこなうため、植え傷みは避けられません。よって、慣行の手植えよりもやや早く 植え付け、降雪前までの生育量を確保します。植え付けが遅いほど活着不良となり ます。 ≪ポイント③≫:機械での正確な定植のために(直立した植え付け姿勢の実現=活着促進) ○ ほ場の選定 機械定植の場合は、より砕土性が高く、表面排水がしっかりできるほ場選定と準備 が重要です。重粘土土壌での転作では、大豆など畑作物が前作に入っていたほ場が望 ましいです。 ○ 砕土の徹底 機械定植では、砕土が悪いことで正確なうね整形ができずに「うね面の凹凸」 「通路の凹凸」 「ゴロ土」がある状態で植え付けると、植え深さが一定しない、株元 への土寄せが不十分などで直立した正確な植え付け姿勢とならず、減収につながる ので注意が必要です。 耕耘時の土壌水分が適切な時に、耕耘同時うね立て~定植の一連作業をおこなうの が最も効果的です。 アップカットロータリー耕耘同時うね立て すぐに定植 直立で植え付け姿勢良好 ≪ポイント④≫:越冬率を高めるために ○ 活着促進=越冬前に「根張りを確保」 越冬後に苗が消滅したりするのは、越冬前までの根張りが確保されなかったこと (秋の生育不足)が原因です。根の伸長温度の限界は5℃とされているので、葉切り= 植え傷みが前提となる機械植えでは、早期定植が重要となります。 セル苗では、10月下旬以降の定植では 越冬率・収量とも不安定となる結果が出て 適期定植(10/下) おり、収量確保のためには10月中旬を中心 とした定植が望まれます。 ※機械定植では 機械定植では 遅い定植 + 葉切りによる 葉切りによる植 りによる植え傷み + 低温 ↓ 遅い定植(11/中) 活着遅れ 活着遅れ、生育不足( 生育不足(根張り 根張り不足) 不足) ↓ 越冬率の低下 3 ※掲載内容の無断使用・転載を禁じます。 ○ 雪解け水の排水対策 越冬に成功しても、雪解け水の滞水があると、湿害により欠株となる場合がありま す。 「均平うね面」 「高うね」 「排水路の設置」で消雪時の表面排水を促すようなほ場 にしておくことが重要です。 周囲明きょ 排水路をつなげる 低いうねは、うね面 まで滞水する おわりに これまであげてきた点を要約すると、 「積雪前までの生育が越冬率・収量に大きく影響 する」ということです。 機械植えの場合は慣行と比べ、セル育苗や葉切りといった生育確保条件に不利な点があ ることから、 「早期播種・早期定植」や「正確な植え付け姿勢となるほ場準備」でカバー するしていくという考え方です。 これらができれば、機械化による一定規模以上での栽培でも、計算できる収量確保が実 現できると考えています。 またこのほか、施肥管理、重粘土土壌での表土固結対策(もみがら施用)等といった 技術も併用し、更に安定的な収量確保対策をはかることも重要です。 (全農新潟県本部 園芸部 青果販売課) 4 ※掲載内容の無断使用・転載を禁じます。