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日本の外国語教育を変える 2012年度の事業が決定しました
TJFニュースでは、 TJF(国際文化フォーラム)の 活動や、事業に関連する さまざまな動きを ニュースとしてまとめ、 お伝えしていきます。 理事会報告 2012 年度の事業が決定しました 第 5 回通常理事会が 3 月13日TJF 会議室で開かれ、2012 年度事 業計画と予算案が承認されました。新しくスタートする事業を中心 を開発します。中国各地で、 「 『好朋友』 で日本語を使えるようになっ た」 「ことばを学ぶ楽しさを体験した」 という生徒が一人でも増えるこ とを願ってやみません。 日本の文化や人びとの生活に関する情報を多角的、多面的な切 り口、多様な視点で発信するウェブサイト 「くりっくにっぽん」を、大幅 にリニューアルします。リニューアルにあたっては、Facebookなどの に、主なものについて紹介します。 ソーシャルメディアを活用することを検討しながら、日本のなかから 中高校生の交流事業 見つけた日本の姿も紹介します。視点を増やすことで、より豊かな の発信だけでなく、海外から旅行や留学で日本を訪れた人たちが 楽しかった、参加して良かったと毎年大好評の「互いのことばを学 日本の紹介をめざします。さらに、高校生や大学生による行事のリ (通称「サマキャン」 )を定期事業とし ぶ日中高校生のサマーキャンプ」 ポートなど新しいコーナーも用意しています。 林省長春市の日章学園高校の寮で日中の高校生が一緒に生活し イトや「つながーる」 など、ここではご紹介しきれなかった定期事業も て今年もまた行います。7 月23日から8月2日までの11日間、中国吉 ながら共同活動に取り組むとともに、買い物体験や高校生のお宅 そのほか、教師研修や教育代表団の派遣・招聘、隣語ウェブサ 引き 続き 行 って いきます。事 業 一 覧 はwww.tjf.or.jp/jp/ 訪問をするなど盛りだくさんなプログラムです。2012 年度はこれに加 program/plan.htmlをご覧ください。 文化財団と協力して実施します。日本語を学ぶ韓国の中高校生と もらい、参加して楽しんでもらうことです。そのために、わかりやすく ばを使いながら、一緒にK-POPの振り付けを考えるなど共同作業 参加してくださる皆さまや、力を貸してくださる方々のサポートを得 えて、 「サマキャン韓国版」を韓国文化の海外普及を促進する秀林 韓国語を学ぶ日本の中高校生の交流プログラムです。互いのこと を予定しています。 新しい外国語教育を広める 6 年の歳月を費やし、皆さまのお力添えで『外国語学習のめやす 2012 高等学校の中国語と韓国語教育からの提言』を作成するこ とができました。学習者の関心を高めるとともに、コミュニケーション を重視した授業は、新しいことばを学ぶ楽しさを創り出すと信じてい ます。この冊子とウェブサイトで、先生の授業実践をサポートしていき 今年度の大きな目標は、一人でも多くの人にTJFの事業を知って 興味をもっていただけるような広報活動をしていきたいと思います。 て、これらの事業を実り多いものにしてまいります。本年度もどうぞよ ろしくお願いします。 (内藤裕之) 外国語教育関連事業 日本の外国語教育を変える TJFは『外国語学習のめやす 2012 高等学校の中国語と韓国語 ます。中国語、韓国語の先生方はもとより、ほかの外国語の先生方 (以下「めやす」 )の完成を機に、上智大学国際言 教育からの提言』 にわたり東京で開催していた研修も、会場を初めて大阪に移し、関 ための外国語教育に挑む」を開催しました。これからの時代に必要 にも 「めやす」を活用していただければと考えています。これまで 3 年 西大学との共催で 8 月3日から5日間の予定で行います。どうぞ皆さ ま奮ってご参加ください。 将来は、全国各地でワークショップを開くことを視野に入れ、 2012 年度に「めやす」を使った研修用教材を作成します。 海外の日本語教育を促進 中国東北三省を中心に第二外国語としての日本語教育ですでに 「未来を生きぬく 語情報研究所と共催で 3 月3日(土)にシンポジウム な外国語教育とは何か、外国語を学ぶことそのものの意義や使命と は何かを参加者とともに考え、新しい外国語教育の実現のために 必要な方策を探ることをめざしました。 200 名収容の会場は、高校や大学で外国語教育に携わってい る教員、学校の管理職、国際交流に関わるNPO 関係者などの参 加者でほぼいっぱいとなりました。公益財団法人かめのり財団の助 成をうけ、外務省、経済産業省、文部科学省、財団法人日本私学 使用され、評価をいただいている日本語教材『好朋友 ともだち』は、 教育研究所の後援と、各国の言語普及政策を所管する8 機関に ウエブサイトも立ち上がりました。中学だけでなく高校でも、また授業 加え、各言語および関連分野の学会・研究会など24団体の協力を 以外の課外クラブで使用されたりと実施スタイルは多様です。そこ 得て実施したシンポジウムは、TJFにとってこれまでにない大規模な で、いろいろな利用方法に応えられるよう、モデルとなるカリキュラム イベントとなりました。 国際文化フォーラム通信 no. 94 2012 年 4 月 11 シンポジウムの冒頭に あいさつをする渡邊幸治 TJF 理事長、 司会は水口景子 TJF 事務局長 場を訪れ、 もっと直接学生と触れ合う機会をつくるべきだと 提案しました。 3 人めのパネリストである上智大学教授の吉田研作氏 は、日本の外国語(英語)教育政策にずっと関わってこられ パネリストからの提言 た方です。10 年以上前に、これからの日本人には国際対 話能力の向上が必要であるとして、英語教育の改善が進められて 午前の部は、 「めやす」完成の発表から始まりました。 「めやす」は、 きたにもかかわらず、若い人たちの間に内向き志向が見られ、その するグローバル社会になると考えました。その社会を生きぬく力を育 自信をつけることが肝要だと話しました。 ながりの実現」を教育理念に掲げて、新しい外国語教育の目標、 ではなく、英語だけでは足りないことを自覚すべきであると指摘し、 21 世紀の社会を、多様なことばや文化的背景をもつ人びとが共生 「他者の発見 自己の発見 つ 成する鍵は外国語教育だと考え、 内容、方法を提案しています。 続いて、 「めやす」の監修者である、カリフォルニア大学サンディエ ゴ校教授の當作靖彦氏をモデレーターに、4 人のパネリストがそれ ぞれの立場から、日本の外国語教育に対する問題提起と提言を行 いました。 解決には、国際的な環境のなかで外国語を学び外国語に対する また、英語は汎用性のあることばであっても、どこでも通じるわけ 複数言語を学べる体制をつくるために、学習指導要領では、小学 校から始める言語を第一外国語とし、中学や高校から始める言語 を第二外国語と区別することが必要ではないかと提案しました。 最後のパネリストである千葉県立市川昴高等学校の齊藤孝校 長(当時)は、英語嫌い、日本から出たくないという生徒を育ててい 20 年間人材ビジネスに関わってきた橘・フクシマ・咲江氏は、グ るのが、今の高校教育の現状であると話しました。この状況を打開 います)を考えるうえで大事なことの一つは、多様性=ダイバーシティ 目を向けることを重視し、現任校の校長として、県内ではじめてユネ ず、国籍、性別、年齢、人種、宗教もその人個人の一部として見る 本語学校と連携して、アジアからの留学生を同校に招くなどさまざま (橘氏は人は宝であるとして「人材」ではなく 「人財」 を使って ローバル「人財」 に対応する力であると指摘しました。 「アメリカ人」 「女性」 などとくくら ということです。また、経済の中心も、必要とされる人財も、アジアに 移りつつあるという現状を考えると、 これからのグローバルリーダーに は、数字、論理、戦略を強調する欧米型と人間関係や現場、感情 を重視するアジア型を合わせたハイブリッドなリーダーシップが必要 になること、予測不能な危機を乗り越えるための危機管理能力、創 造的問題解決能力、コミュニケーション能力をもった人が求められ ていると話しました。 次に登壇した可越氏は、日中コミュニケーション株式会社の取 締役として、日本の魅力を中国の人たちにわかりやすく伝えるなど、 両国間のコミュニケーションを円滑にするための活動を行っていま というネット放 す。その原点は、2001 年に立ち上げた「東京視点」 送局です。日中間の情報不足を解決すること、一般の市民がメディ アの送り手、発信者になることをめざし、日中の学生が一緒に、身 近な日本・中国を伝える試みを行っています。こういった仕事を通 するために、英語圏ではなくアジアの国々、中国、韓国、ベトナムに スコスクールに加盟するほか、韓国の学校と姉妹校となったり、日 な実践をしています。より多くの学校でこうした活動を進めるために は、グローバル人材を育成するという意識をもち、そのための活動の イニシアティブがとれる校長の育成が急務であり、校長が集まる会 議などでグローバル人材育成のための具体的な方策が検討できる 体制をつくるべきであると提案しました。 4 人の報告を受け、モデレーターの當作氏からは、米国の言語 教育に携わる立場から、日本の外国語教育に対して次のような提 言がありました。 ( 1 )選択肢のある外国語教育 中国語で伸びる生徒もいればロシア語で伸びる生徒もいる。複数 の外国語が学べる環境を整え、生徒たちの多様性に応え、力を伸 ばしてあげることが必要である。 ( 2 )外国語教師が力をあわせて外国語の地位を高める 米国でも全教科のなかで外国語は弱い立場にある。外国語教育 じて、ことばはコミュニケーションの道具の一つであり、ことばの裏側 という組 の団体、教師たちが集まり、ACTFL(全米外国語教育協議会) 化コミュニケーションのギャップを超えるには、自分と他者の差異を し、その地位を高めてきた。日本でも同様の取り組みが求められる。 にある人間の思想や人間のあり方そのものが重要であること、異文 認識して、相手に遠慮して言わないのではなく、徹底的にディスカッ ションすることの大切さを学んだといいます。若い人たちの異文化コ ミュニケーション能力を高めるために、日本にいる外国人が教育現 12 織をつくって、連邦政府や州政府に外国語教育の意義をアピール ( 3 )効果的な外国語教育の実施 米国では外国語を学ぶことが認知能力の向上、母語の能力の向 上に資することが立証されている。そのような効果を上げるためには、 国際文化フォーラム通信 no. 94 2012 年 4 月 左から、 當作氏、 フクシマ氏、 可越氏、 吉田氏、 齊藤氏 高度な思考力や 21 世紀型スキルの育成も視野に入れた効果的な 交流学習部会が 1 年かけて取り組んできた「異なる背景をもつ同世 外国語教育を行うべきである。 代とコミュニケーションする力、協働する力および ICTリテラシーの 外国語教育を変えるために 公益財団法人パナソニック教育財団の「平成 23 年度第 37 回実践 育成をめざした外国語教育のモデルづくり」の実践研究の一環で、 午後は「ネットワーク」 「アドボカシー (決定権をもつ人たちへの働 研究助成」を受けて実施しています。TJFは企画、実施に協力して きかけ) 」 「制度」 「教育環境」の四つのテーマごとに七つのグループ います(『国際文化フォーラム通信』第 93 号 13 頁もご参照ください)。 体的な方策についてディスカッションしました。限られた時間でした つの地域のつながりについて調べてきました。それをもとに、11月に に分かれて、日本の外国語教育が抱える課題を解決するための具 が、お互いの授業を公開して経験を共有する、実践報告会や勉強 会などの場をつくっていくなど直ちにできることから、外国語教育関 係者の全国的ネットワーク組織の設立や外国語教育振興法の制 定、学習指導要領の改訂など時間をかけて取り組んでいくべきこと まで、四つの分科会から、多くの提案、提言がなされました。 「みんなの意識を変えていくには制度を変えていく必要があり、そ 3 校の生徒はそれぞれの学校で、7月から、身近なところにある三 「ライフヒストリー」 「観光」 「ポップカルチャー」にテーマをしぼり、3 校 の生徒が混合グループに分かれて本格的にインタビューや材料集 めを行い、 「つながーる」を利用してウェブサイトで情報を共有してき ました。 台湾では、グループごとに、コンセプトとコピーづくり、素材選び、 映像制作に取り組みました。最初は、中国語や英語を使ってのコ のためには人とのつながりを大切にし、働きかけていく必要があると ミュニケーションにとまどったり、緊張したりしている日本の生徒もいま らない。その基盤が外国語、言語運用能力である」 「外国語教育 ドリーさに安心したり、自分のことばが伝わったのをきっかけに自信 言語力が向上するというデータを集め、理論的に証明する必要が 見を落ち着いて聞こうとするようになっていきました。間違うことをお 思った」 「本当の意味の多文化共生ができる人材を育てなければな した。しかし、積極的に話しかけてくれるKIHSの生徒たちのフレン の意義をアドボカシーするためには、複数の言語を学習することで、 をもったりして、次第に自分の言いたいことを何とか伝え、相手の意 あると思う」 「校長から一教員まで異文化に対する理解を深め、真 それずに、中国語や英語を使って、自分の考えを伝え、お互いのア の国際化に適応した学校の雰囲気をつくる必要がある」などの感 イディアをすりあわせながらCMをつくりあげていくことの楽しさや難 想や提案が参加者から寄せられました。 しさ、達成感を味わう様子が見られました。参加した日本の生徒た れています。一人が起こす動きは小さいものかもしれませんが、それ バーはCMの仕上げの作業を続けています。完成後は、それぞれ こうしたコメントには、一人ひとりが行動を起こしていく決意が表 が合わさることにより、日本の外国語教育を変えていく大きな力に なっていくことを予感させる、そんな一日でした。 シンポジウムの参加者間でメールを通じた情報交換が翌日から 行われるなど、すでに新たな外国語教育に向けての動きが始まって います。 (水口景子) 沖縄・大阪・高雄(台湾)の高校生共同プロジェクト 自分たちのつながりをCMで表現 2011 年 12 月25日から3日間、沖縄県立向陽高校と、大阪・私立の 羽衣学園高校の生徒が台湾高雄市の市立高雄高級工業職業学 校(高校に相当、通称 KIHS )を訪問し、生徒の家にホームステイしなが ら、 「沖縄・台湾・大阪の三つの地域のつながりのよさ、深さ、豊か さ」を自分の地域の人たちに伝えるCMづくりに取り組みました。 このプログラムは沖縄県高等学校中国語教育研究会 ICT 国際 国際文化フォーラム通信 no. 94 2012 年 4 月 ちの感想から、多くの学びがあったことがわかります。その後もメン の学校で上映を予定しています。 (室中直美) 日本の生徒たちの感想: 最初、KIHS の子がなにを言ってるかわかんなくてこわかった。緊 張していたのかも。自分がなにか意見を出して、それが受け入れ られたあたりから、しゃべれるようになった。楽しくなった。外国人 と話すって意外とこわくない、普通に通じるんだなって。 自分の意見が言えるようになった。言わざるを得ない状況もあっ たし、自分の意見が誤解されてたらそうじゃないって言いたくなっ た。自分のアイディアがちゃんと理解されて、取り入れられるのが すごくうれしかった。 今までは教科書を見て中国語の文章を唱えてた。実際に自分が 使うことを考えてなかった。CM づくりで、伝えないとっていう気 持ちが出てきた。あきらめたら終わり、もっとコミュニケーションし たいと思った。自分が伝えられることは伝えたかった。ことばだけ じゃなくて手の動きとかいろいろ使って伝えられるようにがんばっ た。必死に伝えようとする気持ちが大切。 13 沖縄・大阪・高雄の三つの都市の観光地を 比較してつながりを見つける、 那覇で台湾料理屋を営む台湾出身の女性と 高雄で日本語を教える日本出身の男性の ライフヒストリーを伝えるなどの アイディアが生まれた。 域に広げていくために、TJFは各省の教育学院と共同で教師研修 を実施してきました。これまでは、コミュニケーション能力を育むため の生徒参加型の学習活動をどう授業に取り入れるかなどについて の意見交換が中心でしたが、そのなかで、このことは一外、二外に 人と話すための語学、受験のために勉強するんじゃない。ちょっ と考えが違ってたかなあ。今までは、なんで勉強してるかわかん なかった。勉強してもいかさないと意味がないと思った。これから も、英語、中国語をいかす機会があるから、そのためにも勉強し て備えておきたい。 自分の意見を言うのは日本語でも難しい。外国語だともっと難し い。KIHS の人と意見が違ったとき、自分はこういう理由でこれが いいと思うって伝えるのが大変だった。でも、とにかく伝えた ! あきらめずに言い続けた。 意見がなかなかまとまらなくて、どうしたらいいかいっぱい考えた。 最初はそれぞれの意見をうまく混ぜあわせたいと思った。でも、そ のうち内容に矛盾が出てきて。いろんな人の意見を全部いれれ ばいいわけじゃないなって。似たような意見をしぼって一つにまと めたり、組み合わせたりした。 もともと人に関わっていくのが苦手。でも、人任せにしないで自分 がやらなきゃって考えるようになった。今は中国語の授業のときだ けでも、自分の意見をちゃんと言おうとしてる。 関係なく必要である、また実際にどう行うのか実践報告や模擬授 業・教案を見たいとの声が多くあがっていました。 そこで、 これらの声に応えるべく、12月23∼25日に遼寧省瀋陽市 で教師研修を実施しました。1日めは二外教師、2、3日めは一外、 二外教師を対象にし、3日間で東北三省(吉林省、黒龍江省、遼寧省) から延べ 65 名が参加しました。 「ゴール型」 と 「つまみぐい型」 の実践例 1日めの「東北三省二外日本語教師研修」では、 『好朋友 ともだち』 を使っている中学の教師 4 名が、音声や動画、ゲームを授業に取り 入れた実践報告を行いました。 選択授業や課外授業で実施されることの多い二外日本語は、 必修に比べてコマ数が少ないことから、教材を順番に教えるのでは なく、 まず目標を設定し(例えば、友好校の日本人生徒と簡単な日本語で交 流できるようになること) 、その目標達成のために、教材のどの巻のどの 課のどの学習活動を取り入れるかを決める 「ゴール型」がこれまで の研修でも提唱されていました。 中国の日本語教育関連事業 日本語教師研修を実施しました (全 5 巻)が 第二外国語(二外)教育用日本語教材『好朋友 ともだち』 2009 年に完成して以降、大連で始まった二外日本語教育を他地 今回は、この「ゴール型」の実践報告に加えて、生徒の状況や季 節に合わせた学習活動(例えば、運動会が近ければ「応援」に絞った学習 活動) を取り入れる 「つまみぐい型」の実践報告もありました。具体的 な実践例を聞いて、多くの教師が自分もすぐに実践してみたいと、 発表者のワークシートやパワーポイントの資料をコピーする姿が見 られました。 何のために日本語を教えるのか 2日めの「遼寧省日本語教師研修」では、まず「外国 語の授業で大切なこと」をグループで話し合いました。 「生徒の興味や関心を育てる」 「自主学習できる姿勢 を養う」 「実際の場面を用いた会話を取り入れる」 「生徒同士が協力できるグループ活動などを用いる」 「文化に関する内容を取り入れる」 「日中同世代間の 交流を取り入れる」 などの意見があがりました。 これらを踏まえて、その後グループで話し合いを重 ね、中国の学校を訪問した日本の生徒を案内する 学習活動や、雪遊びをしながら環境問題を考える学 1日めの研修では、グループごとに 二外日本語の意義と目標を発表。 14 国際文化フォーラム通信 no. 94 2012 年 4 月 韓国魂を書いた受賞エッセイを静かに、 しかし力強く読む大村さん。 写真:駐日韓国大使館韓国文化院提供 習活動が発表されました。こういった活動を通じて、文法や語彙の 知識を身につけることを重視していた一外教師も、受験科目にはな らないことからただ楽しいだけの授業を志向しがちな二外教師も 「何のために日本語を教えるのかということを忘れていた」 とふだん の授業を振り返っていました。 学習活動づくりに取り組むときには、頭ではわかっているものの、 た。高校では、ほとんど一人で韓国語の勉強をしていたのですが、 たまたまインターネットで世宗学堂の講座を見つけ申し込んだのだ いざ授業に取り入れようとすると、掲げた目標を達成するために、ど 「一人きりで勉強し そうです。最後の授業で、講座の22人の仲間に のように生徒参加型の学習活動を取り入れたらいいのか戸惑う教 てきた韓国語をみんなと一緒にできたのが本当にうれしかった」 と 「高校の中国語・韓国語教師研修」 でも同様に見られます。理論を とも親しくなり、3月には韓国を訪れ、ヤン先生のお宅にホームステイ 師が多くいたようです。こういったことは、TJFが毎年開催している 実践に移すには、実際に学習活動づくりに取り組むことが必要であ り、そのためにも継続的な研修の実施は必須といえます。 そこで、2012 年度は、各地を訪問する巡回指導などを取り入れ て頻繁な意見交換や研究活動を行っていきます。 (森本雄心) 韓国語教育関連事業 韓国語で生まれたつながり クムホ・アシアナ杯「話してみよう韓国語」高校生大会の本選が 3 月 17日(土)に韓国文化院ハンマダンホール(東京・四谷)で開催されま した。本大会には、韓国語の文章力と発表力を競う 「韓国語スピー チ部門」 、韓国語の単語を1 語以上入れて、韓国に関するテーマを 伝えました。講師を務めたヤン・ミンチョル先生とキム・ヘジン先生 したそうです。 優秀賞の副賞として、夏には1 週間の韓国ツアーに行くことになっ ています。時間があれば、江原道にある金得九のお墓を訪れてみ たいという大村さん。この旅行で韓国語を学んでいる全国の仲間 や、韓国の人びとと新たなつながりができることでしょう。帰国後の 彼の報告が今から楽しみです。 (中野敦) 2012年1月・2月・3月 実施事業一覧 U 拓殖大学第一高等学校の課外授業「韓国語講座」に協力 [ 2011 年 9 月∼1 月/東京] 取り上げて書くことが課題の「日本語エッセイ部門」 、決められたス U「中高校生のための韓国語講座 2011 」 を駐日韓国大使館韓国 ト部門」があります。 U「第 29 回全日本中国語スピーチコンテスト全国大会」を後援[ 1 (台本)を二人一組になって演じ、表現力を競う 「韓国語スキッ キット 今回、日本語エッセイ部門で最優秀賞に続く優秀賞受賞者 2 名 のうちの一人に選ばれた大村和也さんは、TJFが駐日韓国大使館 韓国文化院、駐日韓国文化院世宗学堂と共催で、昨年 5月から今 年 2月まで実施した「中高校生のための韓国語講座」の受講生で 文化院、同世宗学堂と共催[ 2011 年 9 月∼2 月/東京] 月/東京] U『国際文化フォーラム通信』第 93 号を発行[ 1 月] U「話してみよう韓国語」地方大会を後援[ 1 月/愛知、東京(中高生 大会) 、2 月/大阪、新潟、鹿児島、3 月/福岡] した。趣味としてボクシングジムに通っている彼は、エッセイのテー U 遼寧省教育代表団を招聘[ 2 月/東京、埼玉] 。ボクシ ました。タイトルは、 「ボクシングから感じた80 年代の韓国」 U『外国語学習のめやす 2012 高等学校の中国語と韓国語教育 マに、1980年代の韓国を代表する伝説のボクサー、金得九を選び ング雑誌で知った彼の最後の試合を動画サイトで見て強くひかれ U「第 3 回山陰地区高等学校中国語発表会」を後援[ 2 月/鳥取] からの提言』を発行[ 3 月] たといいます。アジアの嚙ませ犬ともいわれた彼は、世界チャンピオ U シンポジウム「未来を生きぬくための外国語教育に挑む」を上智 つがえして互角以上に闘います。結果はKO 負け。リングで意識を U クムホ・アシアナ杯「話してみよう韓国語」高校生大会に協力[ 3 ンのアメリカ選手とアメリカのリングで闘志をむきだしに、下馬評をく 失い、数日後に還らぬ人となりました。リング上での姿から韓国人の アメリカや日本に対する恨(한)を感じたと大村さんは書いています (作品はwww.asiana.co.jp/speechに掲載される予定です) 。 大村さんはこの3月、東海大学付属浦安高等学校を卒業しまし 国際文化フォーラム通信 no. 94 2012 年 4 月 大学国際言語情報研究所と共催[ 3 月/東京] 月/東京] U「第 12 回北陸地区高校生中国語発表会」を後援[ 3 月/石川] U 米国ウィスコンシン州メナーシャ市教育代表団を招聘[ 3∼4 月/ 東京、高知] 15 お知らせ 共催....................関西大学大学院外国語教育学研究科 特別共催 ..........駐日韓国大使館韓国文化院、在日本中国大使館教育処、 駐日韓国文化院世宗学堂 L「第 6 回:漢語橋日本の高校生サマーキャンプ」参加者募集! 下記ウェブページをご覧のうえ、6 月25日(月)までにご応募ください。 中国の高校生と共同生活をしながら、最終日の「サマキャン☆文化祭」をいっ link.tjf.or.jp/kenshu2012 しょに企画し、つくりあげます。授業で学んだ表現を使って市場で値引き交渉 をしたり、家庭を訪問したりと、盛りだくさんな体験ができるサマーキャンプです。 日程 ....................2012 年 7 月23日(月) ∼8 月2日(木) L「日本の教育代表団の中国派遣」参加者募集 ! 教育関係者に、中国の教育現場を視察するとともに、現地の教育関係者と交 場所....................中国吉林省長春市 流することを通じて、中国や中国語教育への理解を深めてもらうことをねらい 対象....................日本語を母語とし、授業または課外で中国語を学んでいる高 としています。 校生(その他の条件は下記ウェブページの募集要項をご覧く 日程 ....................2012 年 11 月20日(火) ∼24日(土) ださい) 場所....................中国山東省青島市 定員....................92 名(うち東日本大震災特別枠 6 名) 主催....................中国国家漢弁 実施....................国際文化フォーラム( TJF ) 対象....................中国語・中国理解教育に取り組む高校の責任者(理事長、校 長、副校長、教頭) 、中国語教育推進地域の教育行政関係者 定員....................40 名 後援....................外務省(申請中)、在日本中国大使館教育処 主催....................中国国家漢弁 協力....................文部科学省 実施....................国際文化フォーラム( TJF ) 特別協力 ..........ANA 後援....................在日本中国大使館教育処、在中国日本大使館(申請中)、在青 参加費 ...............81,000 円 + 燃油特別付加運賃 島日本総領事館(申請中) 下記ウェブページをご覧のうえ、5 月18日(金)までにご応募ください。 協力....................文部科学省 link.tjf.or.jp/sc2012 特別協力 ..........ANA L 外国語担当教員セミナーと中国語・韓国語教師研修、初の大阪開催 ! TJFが 3 月3日に公開した「外国語学習のめやす2012 」の背景となっている言 語教育の基礎理論を解説するセミナーとワークショップ型の研修を関西大学 で開催します。今回は「学習者の人間的成長を促す外国語教育̶学習動機と 学習効果を高める評価」がテーマです。 日程 ....................2012 年 8 月3日(金) ∼7日(火) 下記ウェブページをご覧のうえ、8 月31日(金)までにご応募ください。 ※外国語担当教員セミナーは 8 月3日(金)から5日(日)の 3日間 参加費 ...............60,000 円 + 燃油特別付加運賃 link.tjf.or.jp/kc2012 L『外国語学習のめやす2012 』を先着 1,500 名の方に寄贈します! 中国語・韓国語をはじめとする外国語教育の新たな理念、教育目標、学習目 標、それらを達成するためのカリキュラムデザインや授業設計の方法、さらに具 体的な学習活動や学習内容を掲載した冊子『外国語学習のめやす2012 高 場所....................関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市) 等学校の中国語と韓国語教育からの提言』を発行しました。 講師....................當作靖彦・カリフォルニア大学サンディエゴ校教授ほか 下記ウェブページにサンプル版を掲載しています。入手ご希望の方は、申し込 受講料 ...............1日単位:4,000 円、5日間参加:18,000 円 みフォームよりお申し込みください。www.tjf.or.jp/meyasu/ 主催....................国際文化フォーラム( TJF ) 国際文化フォーラム通信 94 号 編集後記 トのある税額控除適用を受けたいと考えたのです。 ◉ TJFは PST(パブリック・サポート・テスト)の基準 寄付のお願いをしたものの、いったい何人の方が行 「 3,000 円以上の寄付者 100 人」をクリアするという 動に移してくださるのか不安でしたが、お願いをした 2011 年度の目標を達成しました。年度末までわずか その日から寄付金が振り込まれ、多くの人たちに支え 10日というところで、厚かましいことを承知のうえで られていることに感謝するとともに感激しました。 寄付のお願いをしました。本来は、これまで協力して くださったすべての方々にお願いしようと思ったので 「 TJF へ寄付したい! これから自分たちのように、 すが、時間的な制約があり、一部の方にしかご連絡 素晴らしい経験ができる子どもたちが増えると嬉しい できませんでした。 です!」 という中国派遣事業参加者のOGをはじめ ◉ PSTはもともと、1969 年に米国でつくられた制度 多くの方々から温かいメッセージが寄せられ、大いに で、ある組織の公益性の高さを、市民の支持の多さ 勇気づけられました。 で測るものです。日本では 2001 年度より認定 NPO ◉税額控除適用法人になるには、PSTの基準を二 法人の要件の一つとして導入されました。当初の基 年度にわたってクリアしなければなりません。誌面で 準では、 「事業収入のうち寄付が 5分の1以上である もお願いしましたように、TJFのミッションにご賛同い こと」 と規定されていましたが、このハードルは高く、 ただける方に寄付をお願いするとともに、さまざまな 認定 NPO 法人は NPO 法人全体の1%にも満たな かたちで TJFの活動に参画するTJFコラボレーター い状況が続いていました。2011 年の法改正により、 になっていただきたいと思っています。今後、私たち 「 3,000 円以上の寄付をした人が 100 人以上いるこ とコラボレーターの皆さんとのつながりの場を積極的 と」 と大幅に基準が緩和されたといえます。また、課 につくっていきます。 税前の所得から [寄付金額− 2,000 円]を差し引く ◉ TJFは小さい組織ですが、一人ひとりがもちうる力 「所得控除」 しか認められていなかったのが、所得税 を余すことなく発揮し、ミッションを達成するために進 額から [ (寄付金額− 2,000 円)× 40%]を差し引く んでいきたいと思います。今後とも 「税額控除」 も選択できるようになり、寄付者にとって TJFをどうぞよろしくお願いいたし メリットが大きくなりました。 ます。 ◉ TJFも自立した財政をめざし、より多くの方から寄 水口景子 付をしていただけるよう、寄付者にとって大きなメリッ 2012年4月 発行人 ……………………………………… 内藤裕之 編集人 ……………………………………… 水口景子 アートディレクション ………………… 鈴木一誌 デザイン+DTPオペレーション…… 大河原哲 出力・印刷・製本 ……………………… 凸版印刷(株) 校閲・校正………………………………… 天山舎 表紙写真…………………………………… 大木茂 〒 112-0013 東京都文京区音羽 1-17-14 音羽 YKビル 3 階 Phone: 03-5981-5226 Fax: 03-5981-5227 E-mail: [email protected] www.tjf.or.jp