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643 - 財務省

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643 - 財務省
―相続税法等の改正―
消費税法等の改正
目 次
第一 消費税関係の改正…………………… 643
四 その他の改正………………………… 650
一 事業者免税点制度における免税事業
第二 輸入品に対する内国消費税関係の改
正………………………………………… 654
者の要件の見直し……………………… 644
一 輸出通関における保税搬入原則の見
二 仕入税額控除制度におけるいわゆる
「95%ルール」の見直し… ……………… 648
直しに伴う改正………………………… 655
三 罰則の見直し………………………… 650
二 その他の改正………………………… 656
第一 消費税関係の改正
経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図
はじめに
るための所得税法等の一部を改正する法律案」が
平成23年度税制改正においては、所得・消費・
同月10日に国会に提出され、同月22日に参議院本
資産等にわたる抜本改革の実現に向けて、経済活
会議において可決・成立し、同月30日に公布され
性化と財政健全化を一体として推進するという枠
ました。
組みの下で、特に、現下の厳しい経済状況や雇用
この「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対
情勢に対応して、経済活性化や税の再分配機能の
応して税制の整備を図るための所得税法等の一部
回復、地球温暖化対策などの課題に優先的に取り
を改正する法律」(平成23年法律第82号)では、
組むとともに、納税者・生活者の視点などに立っ
消費税に関する事項として、事業者免税点制度に
た改革に取り組み、全体として、税制抜本改革の
おける免税事業者の要件の見直し、仕入税額控除
一環をなす、緊要性の高い改革を実施することと
制度におけるいわゆる「95%ルール」の見直し等
され、その内容を織り込んだ「所得税法等の一部
を内容とする消費税法の一部改正が行われていま
を改正する法律案」は、平成23年1月25日に国会
す。
に提出されました。その後、同法案は衆議院にお
また、消費税の改正に関係する政省令は次のと
いて議決に至らないままの状態が続きましたが、
おりであり、いずれも平成23年6月30日に公布さ
同年6月8日に民主党、自由民主党、公明党の三
れています。
党において同法案の取扱いについて合意がなされ、 ・ 消費税法施行令の一部を改正する政令(平成
23年政令第198号)
同法案から合意できた事項を分離し、新たな法案
として国会に提出することとされました。この合
・ 消費税法施行規則の一部を改正する省令(平
意に基づき、内閣提出法案として「現下の厳しい
─ 643 ─
成23年財務省令第34号)
―消費税法等の改正―
一 事業者免税点制度における免税事業者の要件の見直し
1 改正前の制度の概要
2 改正の内容
消費税は、国内において財貨・サービスの販
個人事業者のその年又は法人のその事業年度の
売・提供などを行う事業者
(個人事業者及び法人) 「基準期間における課税売上高」が1,000万円以下
の売上げに対して課税されますが、小規模事業者
である場合において、当該個人事業者又は法人(課
の事務負担や税務執行面に配慮して、一定規模以
税事業者を選択しているものを除きます。)のうち、
下の事業者の納税義務を免除する事業者免税点制
個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係
度が設けられています。
る「特定期間における課税売上高」が1,000万円
すなわち、その課税期間の基準期間(法人につ
を超えるときは、当該個人事業者のその年又は法
いては前々事業年度、個人事業者については前々
人のその事業年度については、事業者免税点制度
年。以下同じです。
)における課税売上高が1,000
を適用しないこととされました(消法9の2)。
万円以下の事業者については、原則として、その
なお、この特例制度は、基準期間における課税
課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡
売上高が1,000万円以下である事業者に対して事
等につき、納税義務が免除されます(消法9①)
。
業者免税点制度を不適用とする特例ですので、当
(注) 「課税期間」とは、消費税の納付税額を計算
該基準期間における課税売上高がもともと1,000
する単位となる期間をいい、原則として、個
万円超である場合には当該特例制度の適用はなく、
人事業者は暦年、法人は事業年度とされてい
現行どおり、原則(消法9①)に基づき、事業者
ます(消法19①一、二)。
免税点制度の適用がないということになります。
このように、基準期間という過去の一定の期間
における課税売上高によって納税義務の有無を判
⑴ 特定期間の意義
定することとしているのは、消費税が転嫁を予定
「特定期間」とは、本特例において事業者免
している税であることから、事業者自身がその課
税点制度の適用の有無を判定するために用いら
税期間の開始前に判定できることが必要であり、
れる課税売上高等の集計期間ですが、具体的に
当該課税期間開始前に確定している直近の実績で
は次に掲げる期間をいいます。
ある基準期間における課税売上高を基にその判定
① 個人事業者(消法9の2④一)
個人事業者のその年の前年1月1日から6
をすることとされているものです。
この結果、例えば、1期目の課税売上高が3,000
月30日までの6月間が特定期間となります。
万円、2期目の課税売上高が5,000万円であった
(注)
個人事業者の課税期間は、原則として全
ような場合、1期目から相当の課税売上高がある
て暦年ですので(消法19①一)
、その特定期
にもかかわらず、実際に課税事業者となるのは3
間は、以下の法人のような複数の種類とな
期目からとなってしまうことや、こうした制度を
ることはなく、新規に事業を開始した場合
悪用した租税回避等も散見されていました。こう
を含め上記の一律の期間となります。
したことを背景として、平成23年度改正において
② 法人
は、課税の適正化の観点から事業者免税点制度に
次のイ又はロに掲げる6月間が特定期間と
おける免税事業者の要件を見直すこととされまし
なりますが、いずれにも該当しない場合には、
た。以下、その内容を具体的に説明します。
特定期間がありませんので本特例の適用はあ
りません。
─ 644 ─
―消費税法等の改正―
イ 「前事業年度」の6月間が特定期間とな
月の期間(当該前々事業年度が6月以下の
場合には当該前々事業年度開始の日からそ
る場合(消法9の2④二)
その事業年度の前事業年度がある法人は、
当該前事業年度開始の日以後6月の期間が
特定期間となります。
の終了の日までの期間)が特定期間となり
ます。
(注)
これに該当するのは、一般的には6ヶ
ただし、前事業年度があっても、次に掲
月決算法人のみと考えられます。
げる事業年度(以下「短期事業年度」とい
ただし、当該前々事業年度が、次に掲げ
います。
)である場合は、このイの特定期
る事業年度である場合は、このロの特定期
間に該当しないこととされますので(消法
間に該当しないこととされます(消法9の
9の2④二かっこ書)
、ロに該当するもの
2④三かっこ書)。
があるか否かという問題になります。
イ その事業年度の前々事業年度で当該事
イ その事業年度の前事業年度で7月以下
であるもの(消令20の5①一)
業年度の基準期間に含まれるもの(消令
20の5②一)。
ロ その事業年度の前事業年度(7月以下
なお、この場合は、基準期間があるた
であるものを除きます。
)で、上記の6
め、原則通り、当該基準期間における課
月の期間の末日(当該末日が月末でない
税売上高により事業者免税点制度の適用
場合等の下記⑵①の6月の期間の特例に
の有無を判定することになります。
該当する場合には当該特例による日)の
ロ その事業年度の前々事業年度(6月以
翌日から当該前事業年度終了の日までの
下であるものを除きます。)で、このロ
期間が2月未満であるもの(消令20の5
の6月の期間の末日(当該末日が月末で
①二)
ない場合等の下記⑵②の6月の期間の特
(注1)
このイ又はロに該当するのは、一
例に該当する場合には当該特例による
般的には、新設法人の設立1年目の
日)の翌日から当該前々事業年度の翌事
事業年度の場合や事業年度の途中で
業年度終了の日までの期間が2月未満で
決算期変更した場合のみと考えられ
あるもの(消令20の5②二)。
すなわち、「6月の期間の末日の翌日」
ます。
(注2)
下記⑵の6月の期間の特例がある
から本特例により事業者免税点制度の適
ため、前事業年度が7月超であれば
用の有無を判定する「その事業年度開始
8月未満の場合でも、6月の期間の
の日」までに2月間の期間が確保されな
末日の翌日からその終了の日までに
い場合です。
2月間確保されることから、一般的
(注)
下記⑵の6月の期間の特例があるため、
にこのロに該当することはありませ
前々事業年度が7月以下の場合でも「6
ん。
月の期間の末日の翌日」から「当該前々
ロ 「前々事業年度」の6月間が特定期間と
なる場合(消法9の2④三)
事業年度終了の日」までに1月間が確
保されることから、翌事業年度が1月
その事業年度の前事業年度が上記の短期
以上あれば、このロに該当することは
事業年度(イのイ又はロ)である法人につ
ありません。したがって、かなり特殊
いては、前事業年度に特定期間とすべき期
な場合にしか該当することはないと考
間がありませんので、さらにその前の事業
えられますので、一般的ではありません。
年度である前々事業年度の開始の日以後6
─ 645 ─
ハ その事業年度の前々事業年度(6月以
―消費税法等の改正―
(25日決算等の特殊な決算期の場合)
下であるものに限ります。
)で、その翌
当該前事業年度の6月の期間の末日がそ
事業年度(その事業年度の前事業年度)
の日の属する月の終了応当日(当該前事業
が2月未満であるもの
(消令20の5②三)
。
年度終了の日に応答する当該前事業年度に
⑵ 6月の期間の特例
属する各月の日をいいます。)でない場合
法人に係る「特定期間」については、上記の
には、当該前事業年度開始の日から当該6
とおり、原則としてその事業年度の前事業年度
月の期間の末日の直前の終了応当日(例え
又は前々事業年度開始の日から6月の期間とさ
ば、25日決算の法人で、1月15日に開始し
れていますが、新設法人の設立1年目の事業年
た場合の6月の期間の末日は本来7月14日
度の場合には、月の途中から事業年度を開始す
ですが、6月25日をその末日とするもので
る場合も一般的に考えられます。このような場
す。)までの期間。なお、イと同様に当該
合にも一律にその開始の日から6月の期間を
6月の期間の末日後に決算期変更した場合
「特定期間」とすると、その末日が月の途中と
でも、その変更前のものでこの特例の適用
なってしまい、当該月の途中までの売上高を把
の有無を判定します(消令20の6①二)。
② ⑴②ロの「前々事業年度」の6月の期間の
握しなければならない場合が生じます。このよ
うな問題を回避するため、制度の簡素化の観点
特例
から、特定期間となる6月の期間についてその
イ 予定している決算期末が月末の場合
上記①のイと同様です(消令20の6②一)。
末日が月末となるよう特例が定められています。
ロ 予定している決算期が月末でない場合
具体的には、次に掲げる場合の区分に応じ、そ
(25日決算等の特殊な決算期の場合)
れぞれ次に定める期間を特定期間である6月の
上記①のロと同様です(消令20の6②二)。
期間とみなすこととされています(消法9の2
⑤、消令20の6)
。
(注)
「前々事業年度」を特定期間とする場合に
① ⑴②イの「前事業年度」の6月の期間の特
おいて、当該前々事業年度が6月以下であ
例
る場合には、事業年度の途中までの6月間
イ 予定している決算期末が月末の場合
を特定期間とするのではなく、当該前々事
当該前事業年度の6月の期間の末日がそ
業年度全体を特定期間とするものであるた
の月の末日でない場合には、当該前事業年
め(消法9の2④三かっこ書)
、この②の特
度開始の日から当該6月の期間の末日の属
例の適用はありません。
する月の前月の末日(例えば、1月15日に
開始した場合の6月の期間の末日は本来7
⑶ 特定期間における課税売上高の意義
月14日ですが、6月30日をその末日とする
① 課税売上高による判定
ものです。
)までの期間。なお、当該6月
「特定期間における課税売上高」とは、特
の期間の末日の時点において予定している
定期間中に国内において行った課税資産の譲
決算期末が月末である場合ということであ
渡等の対価の額(税抜き)の合計額から、次
り、その後に決算期変更により、当該前事
のイに掲げる金額からロに掲げる金額を控除
業年度終了の日が月末でなくなったとして
した金額の合計額を控除した残額、すなわち
もその変更前の終了の日が月末であればこ
返品等の金額を差し引いた後のネットの税抜
のイの特例の対象となります(消令20の6
きの課税売上高をいいます(消法9の2②)。
①一)
。
なお、本特例は、特定期間における課税売
ロ 予定している決算期末が月末でない場合
─ 646 ─
上高が実績として1,000万円超である場合に
―消費税法等の改正―
事業者免税点制度を不適用とするものであり、
(注)
「給与等の金額」とは、所得税法施行規則
基準期間における課税売上高のように(消法
100①一に規定する支払明細書に記載すべき
9②二)
、特定期間が6月間であるからとい
給与等の金額をいいます(消規11の2)
。
って1年間分に換算する等の調整は行いませ
⑷ 特定期間における課税売上高等が1,000万円
ん。
を超えた場合の届出書の提出
イ 特定期間中に行った売上げに係る対価の
返還等の金額(消費税込みの返品等金額)
改正前の制度においては、その課税期間の
(注)
輸出取引に係る売上げについての対価
「基準期間における課税売上高」が1,000万円を
の返還等があった場合には、当該対価の
超えることとなった場合に、その旨を記載した
返還等の金額も含めて計算します(消令
届出書を所轄税務署長に提出することとされて
20の4)。
います。本特例により、「特定期間における課
税売上高」(⑶②の給与等の金額で判定する場
ロ 特定期間中に行った売上げに係る対価の
返還等の金額に係る消費税額(4%分)に
合には当該金額)が1,000万円を超えた場合にも、
100分の125を乗じて算出した金額(イの中
同様に、その旨の届出書を所轄税務署長に提出
に含まれる5%分の消費税相当額)
する必要があります(消法57①一、消規26①一)。
なお、上記の給与等により判定する場合にお
② 給与等の金額による判定
いて当該金額が1,000万円以下である場合には、
①の課税売上高に代替して、事業者がその
特定期間中に支払った給与等の金額の合計額
課税売上高が1,000万円を超えている場合でも
をもって「特定期間における課税売上高」が
事業者免税点制度が適用されますので(基準期
1,000万円超か否かを判定することができる
間における課税売上高が1,000万円以下の場合)、
こととされています(消法9の2③)
。
この届出書の提出をする必要はありません。ま
た、給与等の金額により判定したか否かについ
これは、給与等の金額であれば、売上高と
ても特段の届出書の提出義務はありません。
の相関性が高く、また、事業者は、所得税法
により給与支払明細書の交付義務があり(所
法231①)
、かつ、源泉徴収義務者は源泉所得
⑸ 法人課税信託の固有事業者及び受託事業者の
税を毎月あるいは6月ごとに納付しているこ
特定期間における課税売上高の特例
と等から、その支払額を把握することが一般
法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の
的に容易と考えられること等を踏まえ、事業
信託資産等(信託財産及びその信託財産に係る
者の事務負担に配慮する観点から設けられた
取引をいいます。以下同じです。)及び固有資
ものです。すなわち、当該給与等の金額によ
産等(法人課税信託の信託資産等以外の資産及
り判定する場合において当該金額が1,000万
びその取引をいいます。以下同じです。)ごとに、
円以下の場合には、①の課税売上高を把握し
それぞれ別の者とみなして、消費税法の規定を
ていない場合でも事業者免税点制度が適用さ
適用することとされています(消法15①)。こ
れますので(基準期間における課税売上高が
れによりみなされた各別の者、すなわち固有事
1,000万円以下の場合に限ります。
)
、本特例
業者(当該固有資産等の帰属する受託者をいい
の判定も一般的に容易であると考えられます。
ます。)としての受託者及び各法人課税信託の
なお、この場合、給与等の金額の合計額が
受託事業者(法人課税信託の受託者について、
1,000万円以下であれば、結果的に①の課税
その法人課税信託に係る信託資産等が帰属する
売上高が1,000万円を超えている場合であっ
受託者をいいます。)としての受託者ごとに、
ても事業者免税点制度が適用されます。
それぞれ独立した事業者として別々に申告する
─ 647 ─
―消費税法等の改正―
ことになります。他方、事業者免税点制度は、
免税点制度を不適用とする特例(消法10〜12)
中小事業者の事務処理能力に配慮した制度であ
及び資本金1,000万円以上の新設法人の新設2
るので、申告は便宜的に別々に行うにせよ、消
年間事業者免税点制度を不適用とする特例(消
費税の納税に係る事務を行う者が同一である以
法12の2)の適用については、上記の特例(消
上、事務処理能力も全体の課税売上高をもって
法9の2)の規定が優先して適用されるよう所
考えるべきであることから、実質的には固有事
要の整備が行われました。
業および信託事業を合わせたところで判定する
特例が設けられています(消法15④、⑤)
。
3 適用関係
今般創設された上記の特定期間における課税
上記の⑴〜⑹の改正は、平成24年1月1日から
売上高の判定においても、これに準じて、同様
施行されますが、⑴〜⑶の改正は平成25年1月1
の判定を行う特例を設ける等の所要の整備が行
日以後に開始する個人事業者のその年又は法人の
われました(消法15⑦、消令27②一、③二、28
その事業年度について適用されますので、当該年
③一)
。
又は事業年度の特定期間における課税売上高によ
り判定することとなります(改正法附則22①)。
⑹ その他
また、⑸の法人課税信託の固有事業者及び受託事
基準期間における課税売上高が1,000万円以
下である事業者が、相続、合併又は分割等によ
業者の特定期間における課税売上高の判定に関す
る適用関係も基本的に同様です(改正消令附則2)。
り課税事業者の事業を承継した場合等に事業者
二 仕入税額控除制度におけるいわゆる「95%ルール」の見直し
になります。また、仕入れ等に係る消費税額が売
1 改正前の制度の概要
上げに係る消費税額を上回る場合には、控除不足
消費税は、原則として全ての財貨・サービスの
額の還付が行われます。
国内における販売、提供などを課税対象とし、生
仕入税額控除制度は、上記のように課税の累積
産、流通、販売などの全段階において、他の事業
を排除する観点から設けられた制度ですので、仕
者や消費者に財貨・サービスの販売、提供などを
入れ等に係る消費税額については、あくまで課税
行う事業者(法人及び個人事業者)を納税義務者
売上げに対応するもののみが仕入税額控除の対象
とし、その売上げに対して課税されます。
となるというのが原則としての考え方です。この
消費税においては、こうした仕組みを採る関係
ため、非課税売上げである取引を行う事業者であ
上、各取引段階において二重、三重に消費税が課
っても、その取引を行うために消費税が課税され
されないよう、課税の累積を排除するために、事
る財貨・サービスの仕入れ等が一般的に行われま
業者の納付税額の計算に当たっては、その前段階
すが、本来、当該非課税売上げに対応する仕入れ
で課された消費税額を控除する制度(以下「仕入
等に係る消費税額は仕入税額控除の対象とはなり
税額控除制度」といいます。
)が設けられていま
ません。
しかしながら、例えば、預金利子などの非課税
す(消法30)
。
各事業者が申告・納付する消費税額は、原則と
売上げは、その営む事業の内容如何にかかわらず、
して、その課税期間中に発生した売上げに係る消
ほとんどの事業者にあると考えられますが、他方
費税額から仕入れ等に係る消費税額を控除(以下
でこれに伴う課税仕入れ等はほとんどないのが通
「仕入税額控除」といいます。
)して計算すること
常です。こうしたことから、事業者の事務負担等
─ 648 ─
―消費税法等の改正―
に配慮し、事業全体の売上高に基づく課税売上割
配慮する観点等から導入された制度としての本
合(非課税売上げも含めた売上高全体に占める課
来の趣旨を踏まえ、この制度の対象者を、引き
税売上高の割合をいいます。以下同じです。
)を
続き事務負担に配慮する必要があると考えられ
基に、仕入控除税額の計算をすることができると
る一定規模以下の事業者に限定して適用するこ
いう簡便法が設けられています。具体的には、専
ととされました(消法30②)。
ら課税売上げを行う場合として、課税売上割合が
具体的には、95%ルールの適用対象者をその
95%以上である場合には、その課税期間中の仕入
課税期間の課税売上高が5億円以下の事業者に
れ等に係る消費税額が課税売上げに対応するもの
限ることとし、他方で当該課税売上高が5億円
か否かの厳密な区分を行うことを要せず、全額を
を超える事業者については、課税売上割合が95
仕入税額控除の対象とすることができることとさ
%以上であっても、仕入控除税額の計算に当た
れています(以下「95%ルール」といいます。
)
(消
っては、上記の個別対応方式か一括比例配分方
法30①)
。
式のいずれかの方法で計算することとなります。
他方、課税売上割合が95%未満の場合の仕入控
除税額の計算は、
次のように行います(消法30②)
。 ⑵ 当該課税期間における課税売上高の意義
① 個別対応方式
この場合の「課税期間における課税売上高」
課税売上げと非
課税売上げ
課税売上げに共
のみに要す
× 課税売上割合
+
通に要する課税
る課税仕入
仕入れ等の税額
れ等の税額
② 一括比例配分方式(①のような売上げとの
とは、事業者がその課税期間中に国内において
行った課税資産の譲渡等の対価の額(税抜き)
の合計額から、次の①に掲げる金額から②に掲
げる金額を控除した金額の合計額を控除した残
対応関係の区分ができない場合等)
額、すなわち返品等の金額を差し引いた後のネ
その課税期間中の課税仕入れ等
× 課税売上割合
に係る税額の合計額
ットの税抜きの課税売上高をいいます(消法30
仕入税額控除制度のうち95%ルールについては、
① 当該課税期間中に行った売上げに係る対価
⑥)。
消費税導入から既に20年以上が経過しているなか
の返還等の金額(消費税込みの返品等金額)
で、上記のとおり事業者の事務負担等に配慮する
(注)
輸出取引に係る売上げについての対価の
観点から導入された制度であるにもかかわらず、
返還等があった場合には、当該対価の返還
事務処理能力の高い大規模な事業者も含めて一律
等の金額も含めて計算します(消令47の2)
。
にその適用を認める現行制度の問題に対する指摘
② 当該課税期間中に行った売上げに係る対価
が、近年、各方面からなされていました。こうし
の返還等の金額に係る消費税額(4%分)に
たことを背景として、平成23年度改正においては、
100分の125を乗じて算出した金額(①の中に
課税の適正化の観点から95%ルールを適用する事
含まれる5%分の消費税相当額)
業者の範囲をある程度小規模な事業者に限定する
また、「その課税期間の課税売上高が5億円
見直しを行うこととされました。以下、その内容
を超える」か否かは1年間の課税売上高によっ
を具体的に説明します。
て判定することとなりますので、例えば事業年
度が6ヶ月である場合や課税期間の特例(消法
2 改正の内容
19①三〜四の二)の適用を受けている場合など、
⑴ 95%ルールの適用対象者の見直し
その課税期間が1年に満たない場合には、その
改正前の95%ルールは、その課税期間の課税
1年に満たない課税期間の課税売上高を1年間
売上割合が95%以上である全ての事業者に一律
の課税売上高に年換算することとされています。
に認められていましたが、事業者の事務負担に
これは、仮決算による中間申告書を提出する場
─ 649 ─
―消費税法等の改正―
⑶ その他
合も同様です。
なお、事業者免税点制度等の中小事業者向け
法人課税信託の固有事業者及び受託事業者の
特例措置のように「基準期間における課税売上
「当該課税期間における課税売上高」の計算方
高」により判定するのではなく、課税売上割合
法について、上記の事業者免税点制度に係る改
が95%以上か未満かの判定をする場合と同様に、
正における一2⑸の解説で述べたものと同様の
あくまで上記の仕入控除税額を計算する対象期
趣旨から、所要の整備が行われました(消法15
間である「当該課税期間」における課税売上高
⑦、消令27②三、③三、28③二)。
により判定するものであることに留意が必要で
す。
3 適用関係
上記の改正は、平成24年4月1日以後に開始す
る課税期間から適用されます(改正法附則22③)。
三 罰則の見直し
経済社会状況の変化に対応し、税制への信頼の
ある申告書を提出した者に係るものは、一般的
一層の向上を図る観点から、租税に関する罰則に
に未遂犯を設ける意義に乏しく、その対象とは
ついて見直しを行うこととされ、消費税について
されていません。
も次の改正が行われました。
なお、改正の背景等については、後掲「租税罰
⑵ 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設
則その他の納税環境整備関係の改正」の解説を参
積極的な所得隠蔽行為は伴わないものの、故
意に確定申告書をその提出期限までに提出しな
照してください。
いことにより消費税を免れた者は、5年以下の
⑴ 不正還付未遂罪の創設
懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又は
これを併科することとされました(消法64④、
消費税の不正還付の未遂を罰することとされ
⑤)。
ました(消法64②、③)
。なお、この未遂犯の
対象となるのは、仕入税額控除等による控除不
足額(課税標準額に対する消費税額よりも仕入
⑶ 適用関係
控除税額等の控除額が上回ることにより控除し
上記⑴及び⑵の改正は、改正法の公布の日(平
てなお不足額がある場合の当該不足額)の記載
成23年6月30日)から起算して2月を経過した
のある申告書を提出した者に係るものに限るこ
日以後にした違反行為について適用されます
ととされ、中間納付額のみ控除不足額の記載の
(改正法附則1、92)。
四 その他の改正
1 仕入控除不足額の記載のある還付申告
書の添付書類の見直し
⑴ 改正前の制度の概要
て納付税額を計算しますが、その結果、後者の
金額が上回り、控除不足額が生じた場合には、
その控除不足額を還付することとされています。
消費税のこうした仕組みから、輸出主体の事
消費税は、原則として「売上げに係る消費税
業者については恒常的に還付申告書を提出する
額」から「仕入れ等に係る消費税額」を控除し
こととなる場合が多いほか、他の事業者であっ
─ 650 ─
―消費税法等の改正―
ても、多額の設備投資を行った場合等のように
なお、改正の背景等については、後掲「租税罰
仕入れ等に係る消費税額が売上げに係る消費税
則その他の納税環境整備関係の改正」の解説を参
額を上回ることにより還付申告書を提出するこ
照してください。
ととなる場合があります。このような還付申告
書は税務署に毎年16万件程度(平成21年度)も
⑴ 改正の内容
提出されており、それらの大量の還付申告書の
迅速かつ適正な審査を実施する必要性等の観点
① 仕入控除税額等の控除不足額の還付に係る
還付加算金の計算期間
から、平成4年以降、還付申告書の添付書類と
更正等により仕入控除税額等の控除不足額
して「仕入控除税額に関する明細書」の提出を
の還付金が増加した場合において、還付加算
求めていましたが、あくまで事業者の任意に委
金を計算する場合の期間については、従来、
ねられているものでした。
確定申告書の提出期限等からその還付のため
しかし、近年、消費税の仕組みを悪用した多
の支払決定等をする日までの期間とされてい
額の不正還付の事例が発生するなど、不正に対
ましたが、過誤納金に係る還付加算金の計算
する対応が求められていたこと等から、23年度
期間に準じて確定申告書の提出期限等から一
改正においては、上記の不正還付未遂罪の創設
定期間については還付加算金は付さないこと
とあわせ、還付申告書の添付書類を見直すこと
とされました。
とされました。以下、その内容を具体的に説明
具体的には、当該還付加算金を計算する場
合の期間は、次のいずれかの日からその還付
します。
のための支払決定をする日又はその還付金の
⑵ 改正の内容
充当日までの期間とされました(消法54②)。
還付申告書(仕入控除税額等の控除不足額の
(注1)
①における「更正等」とは、更正又は
記載のあるものに限ります。以下同じです。
)
再更正(更正の請求に対する処分に係る
を提出する事業者に対し任意に提出を依頼して
不服申立て又は訴えについての決定若し
いた「仕入控除税額に関する明細書」につき、
くは裁決又は判決を含みます。
)をいいま
その記載事項を見直した上で、その還付申告書
す。
への添付を義務付けることとされました(消規
22③)
。
(注2)
「充当日」とは、還付金につき充当をす
る日(同日前に充当をするのに適するこ
ととなつた日がある場合には、その適す
⑶ 適用関係
ることとなつた日)をいいます。②にお
上記の改正は、平成24年4月1日以後に提出
する還付申告書について適用されます(改正消
規附則②)
。
いても同じです。
イ ロに掲げる場合以外の場合
更正等の日の翌日以後1月を経過した日
2 仕入控除税額等の控除不足額の還付に
係る還付加算金の計算期間の見直し
仕入控除税額等の控除不足額の還付に係る還付
ロ 当該更正等が更正の請求に基づく更正で
ある場合及び更正の請求に対する処分に係
る不服申立て又は訴えについての決定若し
くは裁決又は判決である場合
加算金の計算期間について、過誤納金に係る還付
その更正の請求の日の翌日以後3月を経
加算金の計算期間との均衡を考慮した適切なもの
過した日と当該更正等の日の翌日以後1月
となるよう見直しを行うこととされ、消費税に関
を経過した日とのいずれか早い日
② 中間納付額の控除不足額の還付に係る還付
しても次の改正が行われました。
─ 651 ─
―消費税法等の改正―
には、その納付の日とされます。)の翌日
加算金の計算期間
から次に掲げる日のうちいずれか早い日ま
更正等又は決定による中間納付額の控除不
足額の還付金が増加した場合において、還付
での日数
加算金を計算する場合の期間については、従
イ 更正等の日の翌日以後1月を経過する
来、原則として中間納付額の納付の日の翌日
日(当該更正等が次に掲げるものである
からその還付のための支払決定等をする日ま
場合には、それぞれ次に定める日)
での期間とされていましたが、過誤納金に係
a 更正の請求に基づく更正(当該請求
る還付加算金の計算期間に準じて確定申告書
に対する処分に係る不服申立て又は訴
の提出期限等から一定期間については還付加
えについての決定若しくは裁決又は判
算金は付さないこととされました。
決を含みます。aにおいて同じです。)
具体的には、当該還付加算金を計算する場
当該請求の日の翌日以後3月を経過
合の期間は、還付すべき中間納付額の納付の
する日と当該請求に基づく更正の日の
日(納期限前に納付されている場合は、その
翌日以後1月を経過する日とのいずれ
納期限)の翌日からその還付のための支払決
か早い日
定をする日又はその還付金の充当日までの期
b 国税通則法第25条の決定に係る更正
間ですが、次の還付金の区分に応じ次に定め
(当該決定に係る不服申立て又は訴え
る日数は、その期間の日数から控除すること
についての決定若しくは裁決又は判決
とされました(消法55④)
。
を含み、更正の請求に基づく更正及び
後発的事由に基づき行われた更正を除
(注) ②における「更正等」とは、更正又は再
更正(処分等(更正の請求に対する処分又
きます。)
は国税通則法第25条の決定をいいます。)に
当該決定の日
係る不服申立て又は訴えについての決定若
(注)
「後発的事由」とは、対象課税期間
しくは裁決又は判決を含みます。)をいいま
の課税資産の譲渡等の対価の額の計
す。
算の基礎となった事実のうちに含ま
イ 中間納付額に係る課税期間の消費税につ
れていた無効な行為により生じた経
き決定があった場合の還付金
済的成果がその行為の無効であるこ
当該課税期間の確定申告書の提出期限
とに基因して失われたこと、その事
(その提出期限後にその中間納付額が納付
実のうちに含まれていた取り消しう
された場合には、その納付の日)の翌日か
べき行為が取り消されたことその他
ら当該決定の日までの日数
これらに準ずる理由をいいます(消
ロ 中間納付額に係る課税期間(以下「対象
法55④二イ⑵、消令70②)
。
課税期間」といいます。
)の消費税につき
ロ その還付のための支払決定をする日又
更正等があった場合の還付金
はその還付金に係る充当日
当該対象課税期間の確定申告書の提出期
限(任意に還付を受けるために提出する還
⑵ 適用関係
付申告書(消法46)にあっては、当該申告
上記の改正は、平成24年1月1日以後に支払決
書に係る課税期間の末日の翌日から2月を
定又は充当をする還付金に係る還付加算金につい
経過する日とし、当該提出期限又は当該対
て適用されます(改正法附則22④、⑤)。
象課税期間の末日の翌日から2月を経過す
る日後にその中間納付額が納付された場合
─ 652 ─
―消費税法等の改正―
3 輸出免税物品購入記録票等の様式の見
直し
った貨物(以下「特定輸出貨物」といいます。)
に係る役務の提供(指定保税地域等及び特定輸出
貨物の輸出のための船舶又は航空機への積込みの
輸出物品販売場を経営する事業者が外国人旅行
場所における役務の提供並びに指定保税地域等相
者等(非居住者)に対して最終的に輸出される物
互間の運送に限ります。)については、輸出類似
品を所定の手続をして譲渡した場合には、消費税
取引として消費税を免除することとされています
(旧消令17②四)。
を免除することとされています(消法8)
。
この「所定の手続」においては、輸出免税物品
(注)
「指定保税地域等」とは、指定保税地域、保
購入記録票等(消規別表1、2)の書類を作成す
税蔵置場、保税展示場及び総合保税地域をい
ることとされていますが、この書類については消
います。
費税導入時から見直しが行われていなかったため、
今回の改正では、後述の輸出通関における保税
購入物品の品名等の記載欄が4行しかなく多くの
搬入原則の見直しに伴い、現行の特定輸出貨物に
物品を購入した場合には書類を何枚も作成しなけ
加え、
ればならないなど、実態に沿わない面も生じてい
① 貨物の輸出に係る通関手続をAEO通関業
ました。
者(通関業務その他の輸出及び輸入に関する
今回の改正では、輸出物品販売場における購入
業務を適正かつ確実に遂行することができる
物品の多寡その他の事情により法定された書類の
ものと認められる者として税関長の認定を受
様式により難い場合には、購入物品の記載欄の行
けた認定通関業者をいいます。以下同じで
数を増やす等の変更を加えることができることと
す。)に委託した者が行う輸出申告に係る貨
するほか、事業者が作成する書類については、旅
物
券への貼付けに支障のない範囲内で用紙の大きさ
② AEO製造者(自ら製造した貨物の輸出に
を変更することができることとするなど、輸出物
関する業務の遂行を適正に管理することがで
品販売場制度の適正な執行を担保できる範囲内で、
きるものと認められる者として税関長の認定
実態に即して弾力的に様式の変更ができるよう所
を受けた認定製造者をいいます。以下同じで
要の改正が行われました(消規6ただし書、別表
す。)の管理の下、当該AEO製造者からその
1、2)
。
製造した貨物を取得して輸出しようとする者
なお、この改正は、消費税法施行規則の一部を
が行う輸出申告に係る貨物
改正する省令の施行の日(平成23年6月30日)か
についても、保税地域に搬入することなく輸出の
ら適用されています(改正省令附則①)
。
許可を受けることができることとなったことから、
4 輸出通関における保税搬入原則の見直
しに伴う特例輸出貨物に係る免税
AEO輸出者(法令を遵守する体制を整えてい
これらの貨物に係る役務の提供うち上記の特定輸
出貨物に係る役務の提供と同一の範囲のものにつ
いて、消費税が免税となるよう輸出類似取引の範
囲に加えることとされました(消令17②四)。
る輸出者として、あらかじめ税関長の承認を受け
(注)
改正後においては、上記の特定輸出貨物並
た認定輸出者をいいます。以下同じです。
)は、
びに①及び②の貨物を「特例輸出貨物」と総
輸出貨物を保税地域に搬入することなく、すなわ
称することとされています(関税法30①五)
。
ち保税地域以外の場所に蔵置したまま輸出申告
この改正は、関税定率法等の一部を改正する法
(特定輸出申告)を行い、輸出の許可を受けるこ
律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令
とができることとされています
(旧関税法67の3)
。 (平成23年政令第88号)において行われておりま
この制度による輸出の許可を受けて外国貨物とな
すので、改正の背景等については、後述「第二 ─ 653 ─
―消費税法等の改正―
― 輸出通関における保税搬入原則の見直しに伴
ることができることから、鉱業権等の無形固定資
う改正」の解説を参照してください。
産と同様に調整対象固定資産の範囲に加えるほか、
なお、この改正は、平成23年10月1日から適用
この権利が公共施設等から発生するものであるこ
されます(定率法等一部改正整備政令附則1二)
。
とを考慮し、この権利を譲渡した場合には、資産
5 公共施設等運営権の調整対象固定資産
の範囲への追加等
の譲渡等はその権利に係る公共施設等の所在地に
おいて行われたものとする等の所要の整備が行わ
れました(消令5八ヌ、6①六、17②六)。
課税事業者が行った課税仕入れのうち、一定の
なお、この改正は、民間資金等の活用による公
固定資産に係るものについては、その固定資産が
共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改
長期にわたって使用されることから仕入時の現況
正する法律(平成23年法律第57号)の施行の日か
で税額控除額を確定することが適当でない場合が
ら適用されます(改正消令附則1三)。
あることに配慮し、①課税売上割合が著しく変動
した場合(消法33)
、②固定資産を課税業務用か
6 身体障害者用物品の指定
ら非課税業務用に転用した場合(消法34)
、③非
消費税においては、身体障害者の使用に供する
課税業務用から課税業務用に転用した場合(消法
ための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の
35)には、一定の方法により翌期以降の課税期間
身体障害者用物品の譲渡、貸付け等が非課税とさ
において仕入控除税額を調整することとされてい
れています(消法別表1十)。
ます。このような調整の対象となる資産を「調整
非課税となる身体障害者用物品とは、具体的に
対象固定資産」といいますが、具体的には棚卸資
は義肢、盲人安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、
産以外の資産で、建物、構築物、機械及び装置等
車椅子その他の物品で身体障害者の使用に供する
のほか鉱業権その他の無形固定資産が該当します
ための特殊な性状、構造又は機能を有する物品と
(消法2①十六、消令5)
。
して厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定する
今般、民間資金等の活用による公共施設等の整
ものをいい、48品目が厚生労働省の告示により指
備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号。
定されています(消令14の4、平成3年厚生省告
以下「PFI法」といいます。
)が改正され、
「公共
示130号)。
施設等運営権」が創設されました。この「公共施
今回の改正では、既に非課税物品に指定されて
設等運営権」とは、公共施設等の管理者等が所有
いる物品で同告示の別表に個別製品名が掲げられ
権を有する一定の公共施設等について運営等を行
ているものについて、バージョンアップ等に伴う
い、利用料金を自らの収入として収受する事業を
所要の改正が行われています。
実施する権利をいいます(PFI法2)
。
なお、この改正は、平成23年4月1日から適用
この「公共施設等運営権」は、PFI法により物
されています(平成23年厚労省告示99号)。
権とみなされ、また、譲渡、抵当権等の目的とな
第二 輸入品に対する内国消費税関係の改正
ともに、貿易円滑化のための税関手続の改善、税
はじめに
関における水際取締りの充実・強化等を図るため
平成23年度の関税制度の改正においては、最近
の所要の改正が行われました。また、保税地域か
における内外の経済情勢等に対応するため、特恵
ら引き取られる課税物品に係る内国消費税の納税
関税制度、関税率等について所要の改正を行うと
手続等については、外国貨物の輸入手続等と一体
─ 654 ─
―消費税法等の改正―
的に行うことがその効率性の観点等から必要とさ
関税定率法等の一部を改正する法律(平成23年法
れていることから、これらの関税制度の改正に併
律第7号)の附則において行われています。
せて、輸入品に対する内国消費税の徴収等に関す
また、関係する政省令についても、同日に関税
る法律(昭和30年法律第37号。以下「輸徴法」と
定率法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
いいます。
)についても所要の整備が行われてい
政令の整備等に関する政令が、同年6月30日に関
ます。
税法施行規則の一部を改正する省令(平成23年財
なお、この改正は、本年3月31日に公布された
務省令第47号)が、それぞれ公布されています。
一 輸出通関における保税搬入原則の見直しに伴う改正
ら保税地域に搬入するために運送する場合はもと
1 改正前の制度の概要
より、保税地域に入れた後に他の保税地域等へ運
貨物を輸出しようとする者は、数量及び価格そ
送する場合においても保税運送の承認を受けるこ
の他必要な事項を記載した輸出申告書を税関長に
となく外国貨物のまま運送することが認められて
提出し、輸出に係る許可を受ける必要があります
います。このため、内国消費税の取扱いについて
が(関税法67)
、当該輸出申告は、その申告に係
も、特定輸出貨物である課税物品が保税地域から
る貨物を保税地域に搬入した上で行うことが原則
の引取りに該当する場合であっても、保税運送の
(以下「輸出通関における保税搬入原則」といい
承認を受けた貨物に係る免税と同様の趣旨から内
ます。
)とされていました(旧関税法67の2)
。ま
国消費税を免除することとされています(旧輸徴
た、このため、外国貨物(輸出の許可を受けた貨
法11②)。
物をいいます。以下同じです。
)は、原則として
保税地域以外の場所に置くことができないことと
2 改正の内容
されていました(関税法30①本文)
。
今回の関税制度の改正では、貨物を保税地域に
この輸出する貨物については、輸出の許可を受
入れることなく輸出申告を行うことが可能となれ
けて外国貨物となった後に、他の保税地域等へ移
ば、貨物の出荷から船積みまでの時間の短縮、コ
動する必要が生じる場合がありますが、関税につ
スト削減に繋がることが期待されるとする産業界
いては、税関長の承認を受けて外国貨物のまま運
からの要望等を踏まえ、輸出通関における保税搬
送(以下「保税運送」といいます。
)することが
入原則を見直すこととし、輸出貨物全般について、
できることとされています(関税法63①)
。この
輸出申告を保税地域に貨物を搬入する前に行える
場合においても、その外国貨物が内国消費税の課
こととする見直しが行われました(関税法67①)。
税物品であるときは、保税地域からの引取りに該
ただし、外国貨物は、保税地域以外の場所に置く
当することになるので、内国消費税の納税義務が
ことができない点は現行どおりであることから
成立する建前になりますが、輸出するための許可
(関税法30①本文)、輸出の許可は原則として保税
を受けた貨物であり、国内において消費されず、
地域に搬入した後に行われます。
輸出されるものであるため、内国消費税を免除す
ることとされています(輸徴法11①)
。
しかしながら、AEO通関業者又はAEO製造者
が関与する輸出申告に係る貨物については、そも
また、AEO輸出者が関与する特定輸出貨物に
そも一般貨物と異なりこれまでも保税地域に搬入
ついては、輸出通関における保税搬入原則の対象
する前から輸出申告することが可能である一方、
から除外されているため(旧関税法30①五)
、輸
AEO輸出者が輸出する貨物と異なり輸出の許可
出の許可を受けた後に輸出申告に係る蔵置場所か
は保税地域に搬入してからとされていたため、一
─ 655 ─
―消費税法等の改正―
般貨物と同じ取扱いとなってしまうことになりま
①)。
す。そこで、今般の輸出貨物全般に対する保税搬
このため、内国消費税の取扱いについても、
入原則の見直しに伴い、これらの輸出貨物が船積
AEO通関業者又はAEO製造者が関与する輸出申
み等のため保税地域に入れられるまでの間の管理
告に係る貨物である課税物品が保税地域からの引
を認定事業者(貨物のセキュリティー管理と法令
取りに該当する場合であっても、保税運送の承認
遵守の体制が整備された貿易関連事業者として税
を受けた貨物やAEO輸出者が関与する特定輸出
関長から承認又は認定を受けた者をいいます。
)
貨物に係る免税と同様の趣旨から内国消費税を免
が行っていることを踏まえ、外国貨物は保税地域
除することとされました(輸徴法11②)。
以外の場所に置くことができないとする原則の対
象からも除外することとされました(関税法30①
3 適用関係
五)。これにより、これらの貨物については、外
国貨物でありながら、保税運送の承認を受けるこ
上記の改正は、平成24年10月1日から適用され
ます(定率法等一部改正法附則1一)。
となく運送することも認められました(関税法63
二 その他の改正
1 税関長の権限委任の弾力化に係る改正
また、税関支署の長に委任される権限に係る処
分の対象となる事項の所轄については、管轄区域
関税法及び関税定率法その他の関税に関する法
によることを明確にするとともに、これによるこ
令の規定に基づく税関長の権限は、その一部が税
とが適当でないと認めるときは、税関長が別に定
関支署の長並びに税関出張所及び税関支署出張所
める所轄によることができることとされ(関税規
等の長に委任されています(関税法107、関税令
12)、平成23年7月1日から適用されています(関
92①)が、税関出張所及び税関支署出張所等の長
税規則一部改正省令附則①ただし書)。
に委任される権限については、税関長がその委任
このため、税関支署の長に委任される内国消費
される権限の範囲を制限できる(旧関税令92②)
税に関する権限等についても、同様の見直しが行
ことから、税関手続の利便性向上や水際における
われました(輸徴令30②、輸徴規5)。
効率的な取締りの観点から弾力的な運用が可能と
なっていました。一方、税関支署の長に委任され
る権限については、税関長がその委任される権限
2 HS 条約の改正に伴う関税率表の改訂
に係る改正
の範囲を制限することができる規定がないことか
HS条約(商品の名称及び分類についての統一
ら、弾力的な運用ができない状況にありました。
システムに関する国際条約)附属書の品目表(以
このような状況を踏まえ、税関支署の長に委任
下「HS品目表」といいます。)は、各国の関税率
される権限についても、税関出張所及び税関支署
表の品目分類等を統一し、国際貿易の円滑化を図
出張所等に委任される権限同様、税関手続の利便
るために作成されたものであり、技術革新による
性向上や水際における効率的な取締り等の観点か
新規商品の開発、国際貿易の態様の変化等に対応
ら弾力的な運用を可能とするため、税関長がその
するため、これまでに4回の改正が行われていま
委任される権限の範囲を制限することができるこ
す。
ととされ(関税令92②)
、平成23年4月1日から
平成24年1月1日に発効する5回目のHS品目
適用されています(定率法等一部改正整備政令附
表の改正は、主に①環境保護等の要請を受けた項・
則1)
。
号の新設、変更、②貿易額の多い項・号の新設、
─ 656 ─
―消費税法等の改正―
③貿易額の少ない項・号の統廃合との3つの観点
関税率表)等が改訂されました。
このため、内国消費税に関する規定についても、
から行われており、これを受け関税定率法の別表
(関税率表)及び関税暫定措置法の別表一(暫定
所要の整備が行われています(輸徴法16②)。
─ 657 ─
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