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気をつけて!入浴剤での転倒事故複雑骨折した事例
記者説明会資料 2007 年 12 月 26 日 独立行政法人 国民生活センター 気をつけて!入浴剤での転倒事故 -複雑骨折した事例も- 入浴剤が入っているお風呂ですべって転倒しケガをしたという事故がPIO-NET(注)に寄せ られている。中には、複雑骨折した事例もある。主にすべりやすい旨の表示がある入浴剤 での事故のようである。 そこで、この種の入浴剤を入れた場合、さら湯に比べてすべりやすくなることがあるの か、またすべりやすさに関する表示はどのようになっているのか調べ、事故の未然防止・ 拡大防止の観点から消費者に注意を促すとともに、業界にも要望を出すこととした。 1.事故の概要 【事例1】 妻がコラーゲン入り入浴剤を入れた浴槽から洗い場に上がる際、足をすべらして転倒し 左手をつき複雑骨折。1ヶ月入院し現在リハビリ中。ラベルに小さく『すべりやすい』と いう注意書きはあるがパッケージに安全性の警告表示をすべきではないか。 (事故発生年月:2007 年 2 月、受傷者:40 歳代、女性、神奈川県) 【事例2】 湯にとろみがつく入浴剤を 1 袋入れて入浴した。浴槽から上がろうとしたら全身や浴槽 がヌルヌルするのですべって右手首の靭帯を傷めてしまった。 (事故発生年月:2006 年 5 月、受傷者:40 歳代、女性、京都府) 【事例3】 妻が孫とお風呂に入っていたときの事故である。妻が孫を抱えた時に、入浴剤を入れた 浴槽ですべり、肋骨を1本骨折。孫にケガはなかった。約3週間の治療が必要と言われた。 (事故発生年月:2002 年 6 月、受傷者:50 歳代、女性、奈良県) 【事例4】 浴槽にゼリー状の風呂になるという入浴剤を入れた。風呂の湯がゼリー状に固まるとい うのではなく、浴槽の下の方にゼリーの小さな固まりが沈んだ状態になった。妊娠 5 ヶ月 の妻が入浴しようと片足を浴槽内に入れたら足をすべらせて、股さき状態になり、左足の 靭帯を損傷した。 1 (事故発生年月:1998 年 6 月、受傷者:30 歳代、女性、東京都) (注)いずれも PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に寄せられた事例で国民 生活センターで把握できたものである。 PIO-NET とは、国民生活センターと全国の消費生活センターをオンラインネットワークで 結び、消費生活に関する情報を蓄積しているデータベースのこと。 2.事例の詳細 「事例 1」、 「事例2」について、国民生活センターより相談者などから聴取した事故時の 状況は以下の通りである。 【事例1の事故の詳細】 転倒事故までに何回か使用していた。事故当日は、娘が入った後自分が入った。浴槽の 下に入浴剤がたまっていると思った。浴槽から出ようとしたときに、左足を上げたところ、 右足がすべり、洗い場の隅のほうに左肩から落ちるような感じで、左上腕部分が捻ったよ うになり、上腕骨を複雑骨折した。神経は切れていなかった。救急車で病院に行き、即入 院した。 【事例2の事故の詳細】 入浴剤(分封タイプ)は秋か冬に入手したもので今回が初めての使用だった。浴槽に七 分くらいのお湯を入れ、残しても仕方がないので、入浴剤を一袋全部入れた。 浴槽から洗い場に上がろうとした時に、足がすべった。手も足もとろみが付いていたた め、壁に手をついたり洗い場で足で踏ん張ることができず、体が横に半周して転び、右手 首を打ってしまった。病院では、強度のねん挫で靭帯が伸びきってしまっているとの診断 結果であった。 3.テスト 事故事例をもとに、入浴剤により浴槽内がすべりやすくなることがあるかを簡易テスト した。 幾つかの入浴剤を溶かした湯とさら湯とで計測値を相対比較してみたところ、事例と同 種品を含め、すべることに関する注意書きがある入浴剤は、すべることに関する注意書き のない入浴剤よりすべりやすい傾向であった。さら湯と比較すると 2 倍前後すべるものが 多く、中にはやや極端にすべりやすくなるものもあった。一方、半身浴などの目的でより 多く入浴剤を投入することを想定し、使用方法に記載してある量の 2 倍の入浴剤を湯に溶 かしてテストしてみたところ、よりすべりやすくなるという結果であった(参考【テスト 方法】、【テスト結果】を参照)。 注意書きには、「(入浴剤を使用すると)浴槽がすべりやすくなる」、「床などにこぼすと 2 すべりやすくなる」といったことが赤文字や太字で記載されているが、中にはそれらが他 の注意書きと同じ大きさ、色で記載されているものも見受けられた(参考の【すべる旨の 注意表示のある入浴剤の一例】を参照)。また、注意書きは、パッケージの裏面にだけ記載 されているものが多かった。初めてそのような入浴剤を使用する人は、裏面の注意書きを 読まない限り、すべりやすいという認識をしないおそれがある。 4.問題点 浴室はその特性上すべるなどにより事故になりやすく重篤事故も起きていることから、 国民生活センターでは 2000 年 8 月にリーフレットを作成し消費者に注意を促しているが、 今回は入浴剤による転倒事故であり、消費者が予見しにくいと思われる点が問題である。 「3.テスト」で、すべりやすい傾向を示す入浴剤があることが分かった。また、注意 書き等の記載は分かりにくく、特に分包タイプのものは、利用後にパッケージを捨ててし まうと 2 番目以降に入浴する人は気付かない懸念があるなど、注意喚起の方法には改善の 余地が見られた。高齢者や子ども、妊婦などへの注意喚起の記載がないものもあった(参 考の【すべる旨の注意表示のある入浴剤の一例】を参照) 。 5.業界への要望 商品の特性上すべりやすい成分等が含まれる場合は、消費者に対する注意喚起を含めて 何らかの対応が必要と思われる。転倒事故を誘発するようなすべりやすい商品については、 特にその旨が容易に認識できるような工夫、高齢者や子ども、妊婦などへの注意、浴槽の 早めの掃除を促す記載などを再考して欲しい。また、できるだけすべりにくい素材に変更 するなどの改善も望まれる。 6.消費者へのアドバイス 入浴剤は様々な種類が出ているが、消費者自らが購入する他、家族の者が買った、プレ ゼントでもらった、というように自ら購入しないケースがあり、実際の使用も入手した本 人以外の者が使うケースもある。使用した入浴剤がすべりやすいと感じた場合は、他の入 浴者を含め、注意すること。また、使用方法に記載された量より多く入浴剤を入れたりす ると、濃度が高くなり、よりすべりやすくなる。高齢者や子ども、妊婦などが利用する場 合は特に注意が必要である。 使用後は浴槽や床などに付着した入浴剤のとろみなどのすべる成分が残っている場合が あるため、念入りな掃除などが必要になる。 【要望先】 日本化粧品工業連合会 化粧品公正取引協議会 3 日本浴用剤工業会 【情報提供先】 厚生労働省医薬食品局審査管理課 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部消費者取引課 内閣府国民生活局消費者調整課 【関連情報】 ● くらしの危険№240「重症になりやすい浴室での事故」(2000 年 8 月発行) [本件連絡先] 独立行政法人国民生活センター 相談調査部危害情報室 TEL:03-3443-6223 4 参考 【入浴剤について】 「入浴剤」は、その目的により、薬事法で「医薬部外品」と「化粧品」に分類される。 「医薬部外品」に分類される「入浴剤」について、薬事法では使用目的(用途)及び人 体に対する作用に関して一定の範囲が定められており、商品の容器等に「医薬部外品」と 記載することとなっている。 一方「化粧品」に分類される「入浴剤」は同法第 2 条 3 項で「人の身体を清潔にし、美 化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗 擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に 対する作用が緩和なもの」であり、 「浴用化粧品」などといわれている。 なお、「医薬部外品」、「化粧品」には該当しないが「入浴剤」と同様に湯に溶かすなどし て用いる商品もある。 【テスト方法】 まず、浴槽に見立てたステンレス製バット(640 ㎜×445 ㎜×185 ㎜)に湯 20 リットル を張り、シリコンゴムを入れて 5 分間放置した。 次に、加重したシリコンゴムを用いてすべり抵抗を測った。以上の方法で下記の 3 項の テストをした。 ① さら湯の場合 ② 使用方法を元に量を調整した入浴剤を溶かした湯の場合(規定の量) ③ 半身浴などを想定して②の量の倍量を溶かした湯の場合(2 倍の量) 【テスト結果】 表.入浴剤テスト検体一覧表 すべる旨の注意表示のある入浴剤 すべる旨の注意表示のない入浴剤 銘柄 入浴剤の種別 銘柄 入浴剤の種別 銘柄 入浴剤の種別 A01 化粧品 A07 医薬部外品 B01 化粧品 A02 化粧品 A08 化粧品 B02 医薬部外品 A03 化粧品 A09 化粧品 B03 医薬部外品 A04 化粧品 A10 化粧品 B04 医薬部外品 A05 化粧品 A11 医薬部外品 A06 化粧品 5 写真.テスト風景 図.入浴剤のすべりやすさテスト結果 さら湯を1としたときのすべりやすさ(相対値) 7 規定の量 2倍の量 さら湯 6 5 4 3 2 1 0 A01 A02 A03 A04 A05 A06 A07 A08 A09 A10 A11 銘柄No. B01 B02 B03 B04 (注)加重したシリコン板をデジタル Push-Pull ゲージで引っ張り、シリコン板が動き始 めるときの引っ張り荷重を計測した。この値を用い、さら湯での引っ張り荷重を 1 と したときの、各検体の引っ張り荷重の比を求めた。 6 【すべる旨の注意表示のある入浴剤の一例】 (注)国民生活センターが市場で入手した入浴剤で「すべる」ことに関する注意書きの記載があ るものの一例として掲載した。 <title>気をつけて!入浴剤での転倒事故-複雑骨折した事例も-</title> 7