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むこう 125号(2013年10月)
む こ う 神戸をほんまの文化都市にする会 2013年10月20日発行 第 125 号 〒650-0044 神戸市中央区東川崎町1-5-7 神戸情報文化ビル3F文化村 連絡先 TEL・FAX (078)361-5056 e-mail:[email protected] http://honmabunka.news.coocan.jp/ 北村梨花子 探 訪 記 自分のやりたいことにいつも夢中 ~芸術工房タレス代表 曽根保彦さん~ 元町通5丁目に「アマデウス」というクラシッ クライブの喫茶店があったのを覚えていらっしゃ いますか。1987年~2007年まで、曽根さんが経 営していました。曽根さんは、神戸モーツァル トクラブの会員で、この店でモーツァルトクラ ブの例会をしたこともあります。土・日曜日は アマデウス主催のコンサートを開き、平日は、 リクエストをすればクラシックのレコードもか けてくれるという喫茶店でした。 「モーツァルトにこだわっていますか?」と聞くと「そうですね。東遊園地にモー ツァルトの銅像を建てました。」という返事が返ってきました。1991年「没200年モー ツァルト像建設の会」に携わりました。市民13人で、全国からの寄付や、神戸の企業 にも働きかけて、東遊園地の森のところにモーツァルト像を寄贈できました。昨年、 この公園は、明治開港記念の公園として、国の指定公園になりました。「これで、あ の像がどこかへ移転されることはなくなりました。」と、ほんとうにうれしそうに話 す曽根さんです。「でも、おでこの所が白くなっているんですよ。あれっておとせる んですかね。」 アマデウスを手放してからも、それまで培ってきた音楽家とのつながりをもって、 神戸クラシック音楽祭を7回開いてきました。神戸モーツァルトアンサンブルも結成 されました。 それをしばらく休んだのは、本の執筆に時間を使うためでした。2011年に発行され た「暦―千年の孤独」がそれです。上下11話の短編からなる平安期の物語。「由良の とをわたる舟人かぢをたえ行く方も知らぬ恋のみちかな」―百人一首に知られる曽根 好忠の歌ですが、彼については、丹後の国司をつとめたことがあるという他、くわし い伝記はありません。曽根さんは自分と同姓の親しみから、その一生をフィクション で描きました。3人の童を通し、琴・笙・笛の伝承と、貴族だけではなく、平安の庶 民も描きました。さすがに、音楽が印象的に使われていると思いました。なかなか幽 玄の世界です。 さて、曽根さんが今始めようとしているのは、マイナーコンサート。マイナーには 3つの意味があります。①短調 ②メジャーの反対 ( 2 ) ③小さなの意。 12月17日(火)18時30分から、アマデウスを会場に、「アマデウス マイナーコンサー ト」があります。今、アマデウスは曽根さんから3代目の持ち主になっています。カ ルチャー・ルームと、持ち主のピアニストのピアノ教室に使われていて、以前の喫茶 店ではありません。(それで、この取材も文化村です) 出演者は5人が限度、会場は観客も50人でいっぱいです。メジャーではないが、、 実力ある演奏家で、あまり知られていない曲目を中心にしたコンサートです。ヴァイ オリン西村恵一さん、チェロ植木美帆 さん、ピアノ別所ユウキさんの3人で、 モーツァルトやグリーク、ヨーゼフ・ ライヒャの曲が演奏されます。誰もが 知っている曲ももちろんありますが、 ふだんあまり演奏されない曲を聴きに 行きませんか。何しろ、マイナーコン サートです。曽根さんまで電話でお問 い合わせくださるのが安全です。 (黒瀬 記) 「アマデウス マイナーコンサート」 日時:12月17日(火) 18:00開場 18:30開演 場所:「アマデウス」 元町通5丁目4-8 三木ビル地下 料金:2,000円(コーヒー付) 主催:芸術工房タレス 曽根保彦(090-6202-1063) 「都市と文化をめぐる」講座 特別講座 「ヴェネチア・ビエンナーレの魅力」 日時:11月8日(金)18:30 会場:勤労会館406号室 第34回「蘇州・無錫」 日時:2月13日(木) 14:00 劇団四紀会稽古場 18:30 ハーバーランド文化村 講師:竹山清明(京都橘大学教授) 参加費:500円(資料代) ( 3 ) 神戸ドラマ館ボレロ 第16回公演『シングルマザーズ』 作/永井 愛 ・ 演出/三村省三 2013年9月6日 KAVCホール シングルマザーの支援団体事務所を舞台に、児童扶養手当削減を阻止するために 国会を動かそうとするシングルマザーたちのお話。舞台に出てくるシングルマザー たちは、DV、離婚、養育費、働く場、住む場所とさまざまな問題を抱えている。実 話を元にした作品ということもあり、舞台を通してシングルマザー、DV被害の現 状や問題をリアルに感じられた。今の自分はマザーでもシングルマザーでもなく、 母子家庭でもなく生活保護もDV被害も受けてもいない。しかし今後、絶対そうなら ないとは限らず他人事には思えない。「自分だったら、やって(生きて)いけるか? 耐えられるか?何ができる?」「誰もが安定した境遇で暮らすには?」と考えさせ られる作品だ。 (濱田潤子) たかはしべん 心のおくすりコンサート 2013年9月14日(土) in 神戸市勤労会館2F多目的室 たかはしべんさんは、北海道芦別市の炭鉱町生まれ、現在は埼玉県川越市在住の シンガーソングライターです。フォークギターを抱えて全国津々浦々、世界各地で コンサートを行い30年になられます。来春神戸おやこ劇場での鑑賞例会が決まって おり、今回は交流会の形の「大人のためのコンサート」でした。 ご自分の生い立ちや各地で出会った人たちの話を交えて、自作の歌を歌われます。 べんさんのお話と観客自身の経験がリンクし、その歌詞がぐっと心に迫ってくるた めか、涙ぐまれている方がたくさんおられました。「ふるさと」の4番の歌詞「人 はやさしふるさと 平和こそふるさと」(べんさんのオリジナル)は、伝えたいこと そのものだと思いました。 (平澤寿枝) 映画『約束』 先日、映画『約束』を観た。名張毒ぶどう酒事件の死刑囚、奥西さんの話である。 この事件のことは大体知っていて、奥西さんの事を想うといつも胸が痛い。その後、 日本国民救援会の方の講演があり、その活動内容を初めて知った。色々なえん罪事 件を例に出し、えん罪事件の多くは素人でも容疑者が犯人ではないと容易に証明で きることを説明してくれた。えん罪が生み出される背景には、物的証拠が異なる背 景を物語っていても、精神的虐待の結果得た自白を重要視する。過酷な尋問で頭を 狂わされて自白を強要されるさまは末恐ろしい。犯人を挙げる事にのみ必死な警察 ・検察、誤った判決を認めない裁判所。えん罪が生まれる所以は彼らのメンツを守 る為だ。自分の身にも降りかかる可能性があると思うと身の毛がよだつ。 (美夢{神戸映画サークル}) ( 4 ) 神戸の街スポット 脱線「旧ジョネス邸」解体問題、その後 中尾嘉孝(港まち神戸を愛する会) 先号に引き続き、今号もKIITOは足踏みして、旧ジョネス邸に関しての話題を優 先させていただきたい。 マンション開発業者「あなぶき興産」(本社:高松市)に買い取られた塩屋町の 大正時代の洋風住宅「旧ジョネス邸」の保存活用のために、建物の取得に必要な3 億6千万円について、保存運動を進める「旧ジョネス邸を次代に引き継ぐ会」(以 下、「引き継ぐ会」。)のメンバーらは、寄付や買取資金の出資を引き受ける目的 で合同会社「塩屋百年舎」を8月末に設立した。 9月下旬には寄付金、出資申出が合計約5千6百万円となったが、目標額には届 かないため、「旧ジョネス邸を次代に引き継ぐ会」はあなぶき興産側と交渉して9 月下旬の連休に3回目の内覧会を緊急に実施した。 また、同時期に岡山県倉敷市で開催中だった全国町並みゼミ倉敷大会最終日の総 括会議でも、緊急に現地に在住の「引き継ぐ会」メンバーが、連盟加盟団体と一緒 に出資協力の呼びかけを行った。 9月30日までに、「引き継ぐ会」は、再生可能エネルギー事業を展開する某企業 が旧ジョネス邸の買取についてあなぶき興産と交渉を開始したことを明らかにし、 翌10月1日の神戸新聞などで報道がされた。寄付金等は5千7百万円でまだまだ必 要であったが、有力な「買取候補者」の出現に、「旧ジョネス邸」の現地活用を希 求する多くの人々は望みをかけた。 だが10日後の11日の神戸新聞夕刊で、某企業が買収価格であなぶき興産側と折り 合いがつかず、買取交渉の打ち切りについて方針決定したことが報道され、翌12日 同新聞朝刊では、あなぶき興産側が旧ジョネス邸建物を10月25日から解体に着手す ることを明らかにしたことが社会面に大きく取り上げられたのだった。13日午前中、 塩屋地区内で、「引き継ぐ会」メンバーが記者会見を行い、可能な限り部材を保存 していきたいとの見解が示されるに及んだのであった。 (この項続く) ( 5 ) ここでは、加盟団体・個人の文化情報をお伝えします。各行 事への参加については、前もって主催者にお問い合わせ下さい。 次回は、12月中旬に発行の予定です。2014年1~2月の予定 をお知らせ下さい。12月初めまでにお願いします。 担当者:黒瀬晴世 (TEL.FAX/078-531-4903) 〒652-0058 神戸市兵庫区菊水町10丁目39-11-1-507 劇団どろ TEL.FAX/641-0045 ピース・リーディング 「核・ヒバク・人間」 作/非核を選ぶ演劇人の会 日時:11月30日(土)14:00/19:00 12月1日(日)14:00 会場:神戸アートビレッジセンター 料金:前売2,000円 当日2,300円 劇団四紀会TEL/392-2421 FAX/392-2422 「Radio Magic」 作/内田昌夫 森卓也 吉田業 くるひたかし 日時:12月6日(金)19:30 7日(土)18:00 8日(日)13:00/18:00 13日(金)19:30 14日(土)13:00/18:00 15日(日)11:00/15:00 会場:元町プチシアター 料金:1,800円 「渡辺羊子展」 -指が見たもの2013- 日時:11月11日(月)~16日(土) 会場:ヂャラリー白 大阪市北区西天満4-3-3星光ビル2F TEL.FAX/06-6363-0493 「ポウ展Ⅱ」 ブースNO.11 山口よしこ 日時:12月13日(金)~15日(日) 会場:県立美術館ギャラリー棟3F 問い合わせ:ポウ展実行委員会 TEL/592-6697 神戸映画サークル協議会 TEL/371-8550 FAX/371-8551 11月例会「ぼくたちのムッシュ・ラザール」 (11年カナダ) 監督/フィリップ・ファラルドー 日時:11月22日(金)23日(土) ①11:00 ②13:30 ③16:00 ④19:00 ①11:00 ②13:30 ③16:00 ④18:30 会場:神戸朝日ホール 12月例会 「拝啓、愛しています」 (11年韓国) 監督/チュ・チャンミン 日時:12月20日(金)21日(土) ①11:00 ②13:30 ③16:00 ④19:00 ①11:00 ②13:30 ③16:00 ④18:30 会場:神戸朝日ホール NPO神戸100年映画祭 TEL/954-8044 FAX/954-8066 ☆第18回神戸100年映画祭 会場:ピフレホール 11月1日(金) 10:30 「父と暮らせば」 14:00 「ラスト・サムライ」 11月2日(土) 10:30 「クライマーズ・ハイ」 14:40 「わが母の記」 ☆新開地淀川長治メモリアル 会場:神戸アートビレッジセンター 11月8日(金)~10日(日) 「会議は踊る」「アニーよ銃をとれ」 「ニューオーリンズ」「ここに泉あり」 ( 6 ) 神戸芝居カーニバル実行委員会 TEL/090-1914-4907(中島) 「柳家三三独演会」 日時:12月7日(土)15:00 会場:神戸新聞松方ホール 料金:3,000円 会員2,700円 ギャラリー島田 TEL.FAX/262-8058 B1F 11月2日~13日 長岡国人展 11月16日~27日 松原政祐展 11月30日~12月11日 石井一男展 12月14日~25日 山田晃稔・迪子展 1F 11月2日~7日 川端祥夫展 11月9日~14日 ゴトウ千香子展 11月16日~21日 山本千嵯子展 11月23日~28日 南輝子展 11月30日~12月11日 須飼秀和展 12月14日~25日 上村亮太展 いちばぎゃらりぃ侑香TEL.FAX/361-5055 11月4日~15日 冬支度の部屋 11月17日~19日 編み物展 11月30日(土)19:00 ひょうたんライブ 12月7日~13日 バザール・ウィーンの風 12月16日~28日 干支展 12月1日(日)10:30/13:30 ゆかりんシネマ 12月8日(日)17:00 まやはるこライブ 12月28日(土)19:00 ひょうたんライブ あいり・de・オペラTEL.FAX/361-5056 映像で楽しむオペラ講座第46回 「カルメン」 ジョルジュ・ビゼー作曲 カルメン:アグネス・バルツァ ドン・ホセ:ホセ・カレーラス 日時:11月21日(木)18:30 会場:サロン・ド・あいり 解説:竹山清明(オペラ大好き建築家) 料金:2,500円(食事・ワンドリンク付) 神戸東おやこ劇場 TEL.FAX/441-0836 神戸中央おやこ劇場 TEL.FAX/341-8069 神戸垂水おやこ劇場 TEL.FAX/706-1810 神戸須磨北おやこ劇場TEL.FAX/976-0023 幼児・小学低・高学年例会 「星のひとみ」 (劇団風の子公演) 日時:12月15日(日)14:00 会場:うはらホール 神戸演劇鑑賞会 TEL/222-8651 FAX/222-8653 11月例会 「普天間」 (青年劇場公演) 作/坂手洋二 演出/藤井ごう 日時:11月14日(木)18:30 15日(金)18:30 16日(土)13:30 会場:神戸文化ホール(中) 12月例会 「殿様と私」 (文学座) 作/マキノノゾミ 演出/西川伸廣 日時:12月20日(金)18:30 21日(土)13;30 会場:神戸文化ホール(中) 本会のお知らせ ◎読書会 小川洋子著「博士の愛した数式」 日時:10月30日(水)18:45 会場:ハーバーランド文化村「会」事務所 会費:300円(茶菓子付き) 連絡先:361-5056 ◎サロン・ド・ほんま このサロンは、話題提供者の話を聞い て、教養を深めるとともに、互いに持ち 寄った一品を味わい交流する場です。 話題提供者: 日時:11月18日(月)18:30 話題提供者: 宮武博美さん・平澤寿枝さん 「南相馬をたずねて」 会場:ハーバーランド文化村「会」事務所 会費:500円 連絡先:361-5056 ( 7 ) いまどきの文化 シリーズNo.101 「上映作品のセレクト」 元町映画館スタッフ 林 未 来 映画館をしていてよく聞かれるのが、「どうやって上映作品を選んでいるの?」と いうこと。 全国一斉公開でメジャー系の映画を上映しているシネコンは別として、確かにミニシ アターというのはそれぞれにカラーがあるように感じます。それは劇場の設えやスタッ フの雰囲気だけでなく、上映作品によるところも大きい気がします。「このタイプの 作品はどこそこで上映しそうだな」と予測を立てたり、「この劇場はこんな作品もや るんだ!」と嬉しい驚きがあったり。 でも実際、新作の公開をメインとしているミニシアターでは、上映作品の決定は配 給会社の意向によるところが大きいと言えると思います。私たちもオープン前は東京 へ行っていろんな配給会社へ挨拶回りをしました。誰もそんな映画館のことは知らな いのだから、当然です。そうして元町映画館に映画を貸してくれる配給会社さんとの お付き合いが少しずつ始まり、この映画はぜひ上映したい!と思う作品があれば「う ちでやらせてください!」と電話営業をかけ、元町映画館を認識してくれる配給会社 さんがどんどん増えてきました。そうして4年目に入った今、配給会社さんから「こ んな作品どうですか?」とお声をかけていただくものだけでスケジュールがいっぱい になっている状況です。だからと言って何でもかんでも上映しているというわけでも なく、すべての作品に目を通してある程度の選択はするのですが、どれもこれも自分 で選びました!というわけでもありません。というわけで冒頭の質問を投げかけられ ると、答えに困ってしまうのです。質問者が「これこれこういう理由で選んでいます」 という答えを待っているのがわかるので、尚更です。 当館に上映依頼が増えたきっかけとなったのは、2011年9月の『ドリーム・ホーム』 上映ではないかと思います。元町映画館ホームページの「当館について」をご覧になっ ていただければわかりますが、“世界中の優れた芸術作品”を上映する“文化的な” 劇場を目指して設立した当館は、最初ホラー作品などは上映対象に入れていませんで した。ところが『ドリーム・ホーム』を監督した香港のパン・ホーチョンは大阪アジ アン映画祭の常連監督であり映画ファンを唸らせる非常にユニークでセンスの良い映 画を作るにもかかわらず、日本で配給されるのはこれが初めて。これは上映したい、 いや、しなければ…!!これが元町映画館が初めてホラー作品に手を出した瞬間でし た。その後は「『ドリーム・ホーム』上映していらっしゃいましたよねぇ?」とホラー 作品の上映依頼がどんどん来るように。神戸でもシネフェニックスを始め映画館がど んどん閉館している時期で、ふと気づくとホラーなどのジャンルものを上映する劇場 がなくなっていたのです(◯ートビレッジセンターやシネ・◯ーブルではそんな映画 はかからないですよね)。そもそも東京・大阪にくらべスクリーン数の少ない神戸で は、上映される作品の数も限られてきます。それならば、神戸で観られる映画の幅を 拡げるとまではいかないにしても、これ以上狭めないようにするために元町映画館に できることもあるんじゃないか?と積極的にホラーやゾンビなどもラインナップに加 えていきました。実際、どんな映画でもそれを必要とする人はいるのだと私は思って います。自分たちの審美眼に叶うセレクトを大事にするのも良いですが、神戸という 街で観られる映画の多様性を維持するために“セレクトしない”という選択肢もアリ だな、と思います。 2012年夏にはテオ・アンゲロプロス監督の傑作『アレクサンダー大王』と『ムカデ 人間』を同日に上映し、「こんな映画館全世界探してもないよ!」とお客さんに言わ れるまでになりました…。今ではすっかり「神戸イチごった煮の映画館」として映画 ファンに認識されていることを嬉しく思います。 ( 8 )