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抗癌薬の時間治療
抗癌薬の時間治療 大戸茂弘 九州大学大学院薬学研究院薬剤学 4時 生体には体内時計が存在し 、多くの生体機能をコントロールしている 。そのため約 2 間を周期とする生体リズムが認められる 。また、 薬の効き方を決定する薬の体内での動き 方 や 薬 に 対 す る 生 体 の 感 じ 方 も 生 体 リ ズ ム の 影 響 を受ける(時間 薬 理 学 : 。時間薬理学は、投薬のタイミングを考慮して効果を最大に、また Chronopharmacology) 副作用を最小にすることにより医薬品適正使用の向上を指向した学問分野である 。一方 、 抗癌薬の薬物治療において、癌細胞に対し抗腫蕩効果を最大にする点と正常細胞に対し毒 性を最小にする点が重要である 。従って 、生体の中で細胞の感受性や薬物動態が時間と共 ムにあわせ持続点滴速度を変化させた に刻々と変化しているような状況下では 、生体リス、 り、適切な投薬タイミングを選択する必要がある 。抗癌薬の効果の標的臓器となる癌細胞 や副作用の標的臓器となる正常骨髄細胞の DNA合成能には日周リズムが存在する 。そのた め生体リスムを考慮 して 、抗癌薬の効果を増強し、副作用を軽減することが可能となる 。 癌細胞および正常細胞の細胞動態)および 治療において、抗癌薬に対する生体の感受性 ( 薬物動態の日周リズムをモニターし、生体リズムの中で何を指標に投薬タイミングを設定 するかが重要である 。生活環境、疾患症状、治療状況により生体リスムの位相や振幅が変 容するため、投薬時刻が重要なのではなく個々の生体リズムにマ ッチした時刻に投与する 必要がある 。 1.はじめに 包作用様式から、 J が存在し、多くの生体機能をコ 生体には体内時音│ 寺 下 (type 1) とH 1 支依存性作用 ! 長l i l I) に分類される 2ヘ 濃度依 問依存性作用群 (typeI 4時間を周期とす ントロ ールしている 。そのため約 2 、 存性作用群に は、アルキル化剤、抗癌性抗生物 質 る生体 リズムが認められる 。 また、薬の効き方を決 白金誘導体、 定する薬の体内での動き方や薬に対する生体の感じ 異性薬剤が分類され、 一回大量投与法または中等量 。 従って投薬タ 方も生体リズムの影響を受ける 4,20制 間欠投与法が有効である 。時間依存性作用群には、 イミングを考癒することにより薬の有効性や安全性 代謝措抗剤や植物性アルカ ロイドなどの期特異性薬 を高めることも可能となる 。抗痛薬も 代表的薬物の 剤が分類され、長期頻回分割投与法、持続点滴投与 一つである 。一般に抗癌薬の効果は、薬物動態、薬 法ま たは間欠投与法が有効である 。以上が抗癌薬の 力学および癌細胞の感受性により規定される 。 また sからみた 一般に推奨されている投与 c ti e n lki l elki c 感受性は、癌細胞の増殖状態、細胞周期によって異 方法である 。 しかしながら、生体の中で細胞の感受 なることが知られている 。一方、抗癌薬の薬物治療 性や薬物動態が時間と共に刻々と変化しているよう トポイソメラ ーゼ阻害剤などの周期特 において、癌細胞に対し抗腫焼効果を最大にする点 な状況下では、生体リズムにあわせ持続点滴速度を と正常細胞に対し毒性を最小』こする点が重要である 。 変化 させたり 、適切な投薬タイミングを選択するこ しかし強力な抗癌薬は開発されているものの、その とにより、効果を増強することや副作用を軽減する 重篤な副作用のため治療を中 断せざるを得なくなり、 ことも可能である 。 その作用を発揮できない場合が多い。抗癌薬は殺創1 p (〒812-8582 j . c a . u u h s u y .k r ohdo@pha H寺 I::J ~ 物学 - 6- l3.No.l (2007) . Vo1 福岡市東区 H~ /J:I 3・ 1-1 ) 非 Hodgkinリンパ腫 健常成人骨髄 1 2 0 ~ ~ 。ト 1 2 0 、 I J 、 否 イ 1/ i 吐 100 t 遅 4 日 差 1 1 0 企 友 朴 1 1 0 イ│ 9 0 1 0 0 9 0 \I\.~ 。 。 /A 8 0 4 8 1 2 1 6 2 0 。 採取時刻 4 8 1 2 1 6 2 0 採取時刻 ( n=19-31, mean土 S . E . ) 図 1 非 Hodgkinリンパ腫傷患者 ( 1 8名男子、 6名女子)および健常成人 ( 男子 16名)を対象とした骨髄細 胞の DNA合成能の 日周リ ズム問。24時間の全テ ータ平均を 100%とし、各時点毎に平均と標準誤差(%)を 示す 。 2 . 薬物活性の日周リスム から紹介する 2.1, 1 } 。 多くの薬物の効果、副 作用および薬物動態が 、投 薬時刻により異なることが知られている 。その機序 としてレセプタ 一機能、判所'圭伝達物質などの生体の 感受性や吸収、分布、代謝、羽│ 二世などの薬物動態の 日周リズムが関与している 。 さらに、薬物動態の日 3-1 . 6-メルカプトプリン、 メ卜トレキサート の併用療法 急性 リン パ球'性白 血病小児患者を対象と した 6ー m ' メルカプ トプリン、メ トトレキサート の 周リズムの機序として 肝機能、腎機能、薬物 結合蛋 用療法に 関する │ 臨床試験成績について紹介する 2。 引 維持療法 白量、胃内 pH 、薬物の胃内通過時間などの日周リズ として、 6 メルカプトプリンを何:日、メトトレキ ムが関与している 41。抗癌楽の共通した副 作用とし サー トを 一週間毎に、ピンクリ スチンとプレドニゾ て骨髄抑制や消化管障害がある 。すなわち、活発に ロンを 一 ヶ月毎に投与している 。朝投与では、 増殖を繰り返している 骨髄細胞や消 化管細胞は抗癌 メルカプ トプリンおよびメ トトレキサー卜が午前 薬による副作用の標的臓器となりうる 。健常人の骨 1 0 :00時前に投与された。一 方、夜投与では、午後 髄細胞の DNA 合成能には、活動期に 高値を 、休息期 1 7 :00時以降に投与された 。その結果を図 2に示す 6- に低値を示す有意な 日周リズムが認めら れる ( 図 が 、 78週以上再発が認められ ない患者の生存率 は 、 1)ヘ 同様の所見は、直腸粘膜細胞で、も認められ 朝投与で 82例中 38例で 46%であった。一 方、夜投与 る 5)。一 方、癌細胞の DNA 合成能にも日周リズムが では 36例中 23例で 64%と有意に高い。 これらの機序 認められる 2九 すなわち、生体内では 抗措薬に対す として、まず生体の感受性の側面より、 毒性の標的 る細胞の感受性が時間と共に変化していることが推 l 臓 器である骨髄および 消化管粘膜の DNA 合成能に 察される 。実際に、 S 期特異性薬剤であるメ ト 卜レ は、活動期に最高値を示す有意な日間リズムが認め キサ ート や塩酸イリノテカンの抗腫傷効果や副作用 DNA合成リズムと関連し て合成能が低 下する時間帯には S 期特異性薬剤である 6 -メルカプ および抗癌薬と併用さ れる頼粒球コロニー刺 激因子 ( G C S F)の白血球増加作用は、癌細胞や正常細胞 の細胞動態 ( DNA合成、標的酵素、レセプタ ー数)や 薬物動態の日周リズム と関連して投薬時刻に より変 化す る引22.2,1) られる 5.2710 トプリンおよびメ トトレキサート の毒性が軽減でき るため増量が可能である 。次に薬物動態学的側面よ り、両薬物の血中濃度は 、い ずれも夜間投与時に高 まる方向に薬物動態値が寄与している 。以上の結果 を考慮すると、夜間 投与時は正常細胞の DNA 合成 3 . 抗癌薬の時間薬物治療の具体例 種々の抗癌薬に関して 時間薬理学的所見が報 告さ れているため薬力学的 側面および薬物動態学的側面 H 寺間生物学 が低下している H 寺間部;であり、薬物濃度を高濃度に 維持することが可能となり、 毒性を誘発することな く、効果の増強につながったものと思われる 。 VoI . 13 . N o. l(2007) 7 1 .0 対象, 急性リンパ球性白血病の小児患者 ( 1 1 8名 1 ; 投薬時京1 朝投与 ( 8 2名)、タ投与 ( 3 6名) 。 》" E ω . 2 3 . 6 ω E 薬斉1 ] ; 0 ' o . 4 6 -メルカプ卜プリン (6-MP、1 回/日) メトトレキサ一f"-(MTX、1回/週) 1回/月) ピンクリスチン、プレドニゾン ( 〉 .D 0 a . 2 。。 一一一 , 朝投与 ,夜投与 2 0 4 0 8 0 1 2 0 1 6 0 200 6 0 1 0 0 1 4 0 1 8 0 Weeksfromd i a g n o s i s 図 2 急性リンパ球性白血病の小児患者を対象とした時間薬物治療の有効性の評価回 。 実線;朝投与、点 線 ;タ投与。 3-2. フルオ口ウラシル 、オキサリプラチン、口 性 が 軽 減 で き る た め 増 量 が可能であり、逆に DNA 合成能が高 まる l 時間帯には毒性が増強されるため減 イコボリンの併用療法 大腸痛患者を対象としたフルオロウラシル 、オキ 量 する必要がある 。 次に薬物動態学的側面よりフル サリプラチン、ロイコボリンの併用療法に関する臨 床試験成績について紹介する l九 投与方法は、点滴 2 4時間を通 して 一定量)と 速度を 一定にした場合 ( 不定にした場合(フルオロウラシル、ロイコボリン を午前 04・0 0に最大量、オキサリプラチンを午後 1 6 : ScheduleA m l/h 1 .2i5-FU 1 . 0十一一一一一ーユ 1 F o . l a c . . . 0. 8イ . . . . . . . . . . . . . . . 喧 0.6.[Hï円e'.~':':::':'~ 二・ー 二。;。二二一... 二二.ご二ー一- ー 引 o h 1 0 。表 1に示すように 、50%以上の腫傷の縮 る(図 3) ml !h 篤な消化 器障害や神経障害のため治療を中断あるい 体の感受性の側面より、毒性の標的臓器である骨髄 DNA合 成 リ ズ ム と 関 連 し て 合 成 能 が 低 下 す る 時 間 期特異性薬剤l であるフルオロウラシルの毒 帯には S 1 0 2 2 ScheduleB ( chronomodulation; 去 :) 1 1 ; Fo. l a己 ¥ ~ 111 ," "n~ぷ/ ; ; 1 1 1 // 卜 OHP " ' -1 1s 投与方法 患者数 (効果) 1 寺1 1 日生物学 8 一定速度 不定速度 ( 1 1 寺問治療) 9 3 9 3 統計解析 50%以上の J 重傷縮小 高 (I H 乍)羽) 2 7 (29%) < 4 7 (51%) P<0.05 中止,中断した症例 4 7 (51%) 2 6 (28%) P<O.Ol 粘J j 莫炎 7 0 (76%) 1 3 (14%) P<O.Ol 末梢キ1 1 1経 障害 2 9 (31%) > > > 1 4 (16%) P<O.Ol Vol . l3. No.l (2007) 1 1 国 3 大腸癌患者を対象としたク ロノポンプによる時間 -FU;フルオ 口ウラ シル ( 6 0 0mg/ m2)、 薬物投与計画回 。 5 Fo . l a c. ;口イコポリン ( 300mg/ m' )、卜OHP;オキサリ プ ラチン ( 20mg/ m' )、 5日投薬 +16日休薬 表 1 . 大腸癌患者を対象とした投与方法による効果および劃作用の比較 15) 指標 刊 山 、、u 5V 1 1 ドー←~ーγーマー~ーーマ一一「ーγ~一寸ー十一「ーァ~ーマー「一一~~ー十~~ー」 合成能には、活動期に最 お よ び 消 化 管 粘 膜 の DNA 高 値 を 示 す 有 意 な 日 周 リズムが認められる 5. 15 , 2 九 1 6 : 1 は中止した症例は、時間治療で有意に軽減される 。 これらの機序として次のことが考えられる 。 まず生 . . . 0. 4i 品 gl ucose 0 . 2~I 5 _ . . σ 0 0に最大量 とした時間薬物治療)で比較検討してい 小を 示す奏効率は、 fI寺間治療で、有意に高い。 また重 ( c o n s t ant; 去) 、 オロウラシルを代謝するジヒ ドロ ピリミジンデヒド 薬物動態の 日周リズムが関 与 している 。一 方、Jl重傷 は休息期に最高値を示すが、 DPD)活伯ニ ロゲナ ーゼ ( マー カーや副作用の指標である白 血球数にも有意な 時 薬物 濃 度 は 最 低 値 を 示 す。 DPD活性が低下する l 寺刻に 日周リズムが存在する 。 また 薬物濃度も投薬 H 間 帯 に は フ ル オ ロ ウ ラ シ ル の 減 量 が必要で、逆に 治療学的薬 や TD M( i より異なる 。 その ため 薬効評価l 寺間帯に は増量が可能である 。 DPD活性が高まる H 侍刻に十分注 l l I l 燦 し、採 J 物モニタリング )の実 施に │ またシスプラチンによる吐き気や腎毒性はタ投与時 意しな ければ、誤 った評価に つながるであろ う。 と比較して朝投与時に高く、シスプラチンの腎か ら の排世量の投薬時刻による差異が関与している 山 . 体内時計の分子機 構 から み た治療の可能性 4 寺刻 が 明 示 され るに 現在、添 付 文 書 な ど に 投 薬 H . ドキソルビシン、シスプラチンの併用療法 3 39 V、年齢 2 ,I em g a t FIGOs 表 2は、卵巣癌患者 ( 至っ ているが、時 間治療をさらに展開させる上で 、 生 体 リズムに個体差が存在する点が大きな支障と -87歳)を対象に治療効果および延命効果を指標に なっている 。 そのため、これまで、蓄積された時間 薬 時 間 薬 物 治 療 の 有 効 性 を 検 討 し た 結 果 で あ る1九 理学的所見を 整理して体系化していくことが必要と 8日あたり 60mg/m'の ドキ ソルビシンお 2 9ヶ月間j 寺計遺伝子に関する情 なる 。 このような背景から、 H よびシスプラチンが投与された 。投薬時刻を 考慮し 時間治療の今後の展開について紹介する 。 報に基づき l 0 0 8: ない方法 (U法)、06:00時 に ドキ ソルピシン 、1 最近の創薬研究においては、ゲノム情報の解析に 0時に 6・0 、 0 ) A法 時にシスプラチンを投与する方法 ( 閲する最新の技術を応用して、各種疾患の成因に関 与ーす 8:00時に ドキ ソルビシンを投: シスプラチン、 1 連する蛋白を同定し、それらに対する特異的な分子 、 一 ヶ月毎に A法および B法 を交互に ) B法 る方法 ( 標的治療薬を 開発す ることが望まれている 。 これに A/B法)の 4方法問で比較検討して ( I薬研究は、従来の天然物の化学構造修飾か ら 富J 、 v ' l o i いる 。その結果、投薬時刻を考癒した時間薬物治療 分子標 的あ るい はゲノム情報に 基づいた研究に大 き 使用する方法 により延命効果が有意に改善する 。 また A法と比較 くシフ トし ている 。特に 抗痛 薬の 開発では、従来の して B法では、投与量 を減量 したり投与継続が困難 臨床効果を 示 Iほど強い副作用を示さずに │ 化学療法斉J な症例や出血および感染のため輸血 を必要と する症 す ことから、分子標的治療薬への期待が高 まってい 例 の頻度が、有意 に増加する 。 これらの機序として n管 f る。 こうした状況の中で、癌細胞の増殖およびJ ドキソルビシンによる骨髄毒 性は 06:00時投 薬と 比 I胞増殖因子に日周 リスムが 血管 内皮市U 新生に関わる I 8:00時投薬で高く、これにはドキソルピ シ 較して 1 存在し、時計遺伝子により 制御 されているこ とが明 ンのク リアランス の投薬時刻によ る差異が関与 して c卜 r a ngc u ら か と な っ た 11.18)0 Sarcoma180、 Lewisl い る。 またシス プラチンに よる吐 き気や腎毒性は 重傷を移植したマウス を 1 anomaの各 1 6mel noma、B1 0時投薬で高く 、シスプ 0 6: 0時投薬 と比較し て0 :0 8 1 休息期) 開始時 対象に、 血管新生阻害薬 は、明則 ( t量の投薬時刻による 差異が関 ! l i : ラチンの腎からの羽 I m(活動期 )開始H寺 音J 00投薬において、 H 7: 刻である 0 。 与 している 川 9:00投薬と比較してより 高 い抗腫蕩効 果 刻である 1 以上のように種々の抗癌薬の効果や副作用が投薬 80の腫傷血管新生 に対 oma1 c 。 さらに、 Sar を示す則 合成能 や 時刻により異なり、その機序として DNA 投薬時におい して、抗腫蕩効 果が増強された 07:00 表 2.卵巣癌患者を対象とした抗癌薬の効果に及ぼす投薬時刻の影響10) 投与方法 患者数 延命効果 (月数の中央値) ヨ 0ヶ月 l 6 の生存率 。 (%) 5 1 7 1 A法 7 1 2 4 0 5 B法 0 2 2 3 1 1 B法 A/ 1 1 ~ 8 7 U法 寺刻を考慮しない方法 U法:投薬 H 時にシスプラチンを投与する方法 001 : 8 時にドキ ソルビ シン、 1 1 0 0 : 6 A法:0 0時にドキソルピシンを投与する方法 0 8: 時に シスプラチン、 1 01 0 : B法 06 A/B法 '一 ヶ月毎に A法およ びB法を交互に使用する方法 u 寺 日生 物 学 H No.l (2007) .13. VoI - 9 て 、 1 9 : 0 0投薬と比較してより高い血管新生阻害効 boxe sを介 して CLOCK-BMAL1により促進し、 果を示す。その機序として、血管新生阻害薬の標的 PERとCRYにより抑 f l i りされる 。DBPが肝臓におけ 酵素の 一つである MetAP2 ( メ チオニンアミノベプ るアルブミン遺伝子や数種の P450分子 ( s t e r o i d1 5 、 H 音期後 チダ ーゼ 2)の腫場組織内における 活性 は h y d r o x y l a s e α h y d r o x y l a s e( C y p 3 a 4 )、coumarin7 前半に 高値 を示す有意な日周 リズムを示 三 │ 土から明野j i l iJ御し、転写活性が日周 リズム ( C y p 2 a 5 ))の転写を f す。 さらに MetAP2の活性は、抗腫傷効果および血 を 示 す i九 PAR-domainb a s i cl e u c i n ez i p p e r (PAR 7 : 0 0投薬において、 1 9・ 管新生阻害効果が増強した 0 b Z i p ) 転 写因子 DBP、HLFお よ びTEFのトリプル 0 0投 薬 と 比 較 し て 有 意 に 抑 制 さ れ る 。 MetAP2 Z i pタ ノックアウトマウスを用いた研究で、 PARb mRNAの転写には、時計遺伝子の Feedbackl oop機 ン パ ク がcytochromeP450enzymes、c a r b o x y l e s - 構が関与ーしており、この振動体が刻むリズムによっ e v u l i n i ca c i ds y n t h a s e (ALAS1)、 t e r a s e s、aminol てMetAP2の発現に日周リズムが生じている可能性 P 4 5 0 o x i d o r e d u c t a se ( POR)、 s u l f o t r a n s f e r a s e s、 が示唆された 。生体リズムの分子機構をふまえた血 g l u t a t h i o n e S t r a n s f e r a s e (GST)、a l dehyde de h y - 管新生阻害薬の時間治療を考えた場合、 MetAP2の D P g l u c u r o n o s y l t r a n s f e r a s e s、memd r ogen a s e s、U 活性が上昇する明則前半に投薬することで、血管新 b e r so fdrugt r a n s p o r t e rf a m i l i e sおよび、 c on s t i t u t i v e 生阻害薬が効果的に作用し、より 高い抗腫傷効果が a n d r o s t a n er e c ep t o r (CAR)の ような 薬物代謝お よ 得られると考えられる 。 このような時間生物学的な び解毒に関わる多くの酵素の発現を制御しているこ 観点からのゲノム創薬のアプローチは、癌治療にお Z i pタンパクは、 とが明らかにされている 9)0 PARb ける新たな分子標的治療薬の創製に重要であり、分 CYP2A5、CYP2C50およびCES3のような解毒に関 子標的治療薬の時間治療への今後の展開が期待され わる酵素の発現を制御している 。 PARb Z i pタンパ る。その他の作用機序をもっ薬物に関しでも同様の 1され日周リズムを示す CAR は 、 CYP2 クにより制維I 所見が認められる 11)。 またこのような増殖因子は腫 B10のような解毒に関わる酵素の発現を制御してい 療で過剰発現しており、このリズムを 診断する こと Z i pとCARの両タンパクは、病原体に対 る。PARb により、種々の分子標的治療薬の抗 J重傷効果を増強 する防御機構に関わる ALAS1やPORを制御してい できる至適投薬タイミングを設定することが可能で る。今後種々の薬物代謝酵素お よびトランスポー ある 。一方、正常細胞の分裂リズムを制御している ターなどの日周リズムの成因を解明することにより、 Weel遺伝子も時計遺伝子により制御されており、 薬物動態学的側面から投薬タイミングを設定するた このリズムを診断することにより、種々の抗腫傷薬 めの生体リズムマーカーを抽出することも可能とな の副作用を 1珪減できる至適投薬タイミングを設定す ろう 。 ることが可能で、ある i九 今後種々の標 的分子および 生体 リズムは、健康を保持・ 増進させる 上でも 重 レセプターなどの日周リズムの成因を解明すること 要な役割を果たしている 。生体リズムの破綻が不眠 により、薬力学的側面から投薬タイミングを設定す や胃腸障害などを引き起こし、持続的に続くと精神 るための生イ本リズムマ ーカーを抽出することも可能 疾患などの慢性の疾患を生じることも少なくない。 となろう 。 レ、コーチ 一方、薬物治療中に │ 睡眠 ・覚醒の サイク l 抗癌薬の抗腫療効果および副作用は、薬力学的側 ゾール、体i 間 瓶 町 R i Lなどの生{体木リズズ、ムが変容することが注 面のみならず薬物動態学的側面により影響を受ける 。 目され虫始台めている ω 肝臓は薬物代謝や解毒を行う重要な臓器である 。肝 腫蕩およびび、慢性肝炎治療などに 隔 1 ド │ 幅 1 腐 l 高広く使用されてい 臓では多くの遺伝子が日周リズムを示す。 ラッ トの るが、重要な副作用としてリズム障害 と関連の深い 9 0 6 肝臓を対象としたマイクロアレー解析の結果、 3 うつ状態、不 1民、自殺などが報告されている 1310 の対象遺伝子の中で約 30%の遺伝子が明瞭な日周リ IFN非投与時には、 ヒトにおいてリンパ球数は 0 8 : 0 0 ズムを示す 7 )。その 中で約 90%の遺伝子の振幅強度 時頃に最低となり、 2 2・ 0 0時頃に最高となるが、コー 倍以下であり、 6 7の遺伝子が明 │ 僚な日周リズ は1.5 8: 0 0時頃に最高となり、 2 2 : 0 0 1 1 寺頃 チゾール濃度は 0 ムを示す。 これらは、遺伝子の転写、薬物代謝酵素、 に最低となる 。 これらのリズムは IFNを0 8 : 0 0時頃 トランスポーター、シグナル伝達および免疫関連の に連日投与するとリンパ球数は低値を維持し、コー 遺伝子である 。 SCNや肝臓でリズミックに発現して チゾール濃度は高値を維持する 。すなわち正常なリ いる Dbpは出力系の遺伝子であり、時計遺伝子によ ンパ球数とコーチゾール濃度の逆相関関係は崩れリ り制御されている 29.3ヘ す な わ ち Dbpの転写は E - ズムは消失する 。一方、IFNを2 2 : 0 0時頃に隔日投与 時/lU 生物学 VoI . l3.No.l (2007) n u FNを夜 すると正常に維持される 。以上の結果は、 I に操作することにより至適投薬タイミングを容易に 間に投与し 、かつ隔日に投与することが生体リズム 設定可能な新規時間治療法の開発につながるものと を崩さない理想的な投与方法であることを示してい 思われる 。 FNの生体 リズム障害の機序に る。 しかしながら、 I 以上のように、体内時計の分子機柄を考慮するこ ついては明らかにされていない 。そこで、マウスを とで、 生体リズムマーカーのモニタリ ング、薬物誘 対象に、体内時計の本体である視交叉上核の時計造 発リズム障害の防止および生体 リズムの操作を基般 伝子の H周リズムが薬物投与中に如何 に変容するか にした時間治療が効率 よく行われることが期待され を明らかにすること、および時計遺伝子の日周 リズ る。 ム障害を克服するための至適投薬設計を構築するこ とを目的に以下の検討を行った 。マウスを対象とし . おわりに 5 、 IFNによる生体 リズムの障害が末梢のみならず て 。 薬物 SCNでも認められることを 明 らかにした 12却 3mRNA発現 r e 2、P r l、Pe r e 寺には SCNのP =投与 H ゴ1 際し、少なくとも以下 の側面より紹介した 。治療に │ 量はそれぞれ明朗(休息期)前半、後半、中間に最 の点を考慮して治療指針を 構築すべきであろう 。 FNの連続投与によりそれらの 、 I 高値を示す。一方 1)抗癌薬に対する生体の感受性 および薬物動態の 遺伝子の転写 r e 隔は顕著に低下する 。 P リズムの振 l 日周リズムが如何 に制御されているか、治療にお い 促進因子である lのmRNAも抑制 J ockおよび:Bma α' 種々の抗癌薬の効果、副作用の 日周リズムについ 体の感受性および薬物動態 二 l て紹介し、その機序を と 1 1 : ていずれが相対的に重要である か、生体 リズムの 1 時計機能障害 は活動期前半の投 される 。 IFNによる l で何を指標に投薬タイミングを 設定するかが重要で 薬で認められるが、休息期前半 の投薬では認められ ある 。そのため疾患の症状、薬に対する 生体の感受 ない。 この結果は上記ヒ トでの所見と類似している 。 、 薬物動態の日周リズムの 制御機構を解明するこ 性 FNレセプターには活動期に 高値 また SCNにおける I とが急務である 。 を示す有 意なリズムが存在するため、時計機能障害 細胞周期や 2)生体の感受性の側面から細胞 動態 ( 時刻による 差の機序として考えられる ヘ こ の投薬 l 標的酵素の動き )の日周 リズムが、正常細胞と痛細 のような現象は 他の薬剤でも認められ、生体リズム 胞との問で同じか興なるか(リズムの位相が同じか の障 害が発癌の頻度を高める ことも知られている 。 異なるか)が重要である 。位相が異なる;場合は正常 以外の薬物に関 しでも生体のホメオス そのため IFN 利│胞の感受性が低く 、繊細胞の感受性が高い時刻に タシス機構を維持しながら治療していく ことが、副 投薬することが望ましい。位相 が同じ場合は、薬物 作用、合併症の防止という点で極めて重要で、ある 。 を用い刻1胞動態を 制御することにより 細胞種聞に位 本研究結"*は、薬が体内時計の時計遺伝子に異常を 相の差異を見いだすことも可 能である 。 引 き起こす可能性があること、そして、このような 3)対象が患者であるため生活状 態、病状および輸 有害反応は投薬スケジ‘ュ ール を最適化することで避 液や薬物の投与方法により リズムの位相や振 1隔が変 けることができ、またそうすべきであることを 示 し 化する 。 このように生体リズムの位相や振幅が個人 ている 。 毎に異なるため、投薬 1寺刻が重要なのではなく個々 種々の薬物が、体内時計に作用 し、生体リズムの 位相を変化 させる 。光刺激は主観的暗期に特異的に 奇計の位相を変化 させるが、多くの非光刺激は 体内 H 寺刻に投与することが重 の生体リズムにマッチした n 要であ る。 基本的には、 仁記の点を考慮し、最終的には、効 明 J~J に作用して体 内 時計を リ セットする 。 このよう 果および副作用の日周 リズムに及ぼす生体の感受性 浪給餌などが知 I J J l f な非光向調因子としては、薬物、 l と薬物動態の日周 リズムの相対的寄与を考慮した 上 られている 。例えば、摂食条件を繰り返し操作する 、 最適投与方法および投薬タイミ ングを設定する で 時計遺伝子の日周リスムが摂 ことにより、末梢での │ ことが重要で、ある 。 これまで経験的に行われている 時間常に応じて変化する ことが知られている 6)。 食│ 1日 2回あるいは 3回均等分割する投薬設計を 、生 逆に薬物や摂食条件を操作する ことにより、生体リ 体リズムを考慮して治療効果が 望まれる時間帯に高 スムを調整したり 、意図的に変化 させることも可能 用量、不必要な時間帯には投与 量 を減量するとい っ である 。すなわち、先に記載した生体 リズム診断に た試みだけでも医薬品適正使用 の向上につながるで 基づき生体 リズムに応じて至適投薬タイミ ングを設 あろう 。多くの生体機能や疾患に日周 リズムが認め 定する従来の時間治療に対し、 生体 リスムを積極的 られるため、個々の生体リズムにマッチした投薬タ H寺I/ U ~凶知 ~'f:. l3.No.1 (2007) . Vo1 イミング、投与方法、 製剤の工夫が望まれる 。薬物 Chronopharmacol ogy, pp147・1 7 0, Medpharm 療法の最終ゴールが治 療の個別化であるなら ば、 S c i e n t i f i cPubl i s h e r s,S t u t t g a r t( 1 9 9 6) 個々の生体リズムにマ ッチした 至適投薬設計を構築 することが必要不可欠といえよう 。 1 5)LeviF,Z i d a n iR .MissetJL :Lancet3 5 0 : 6 8 1 6 8 6 ( 1 9 9 7) 1 6)Lundkvi s t GB.Robertson B, Mhl anga JDM, 引用文献 R o t t 巴n b巴r gME,K r i s t e n s s o nK :NeuroR巴port 1)Abrams PG,McCl amrock E,Foon KA : New 9 : 10 5 9 1 0 6 3( 1 9 9 8) EnglJMed3 1 2 : 4 4 3 4 4 4( 1 9 8 5) 2)B j a r n a s o n G A Hrushesky WJ M:C i r c a d i a n Cancer Therapy,pp 2 4 1 2 6 3,CRC P r e s s1 n c, Boca Raton,Ann Arbor,London and Tokyo ( 1 9 9 4) 3) B o c c iV :CancerDrugD e l i v2 : 3 1 33 1 6( 1 9 8 5 ) 4)B r u g u e r o l l e B:C l i n Pharmacokinet 3 5 : 8 3 9 4 ( 1 9 9 8 ) 5)Buchi KN, Moore JG, Hrushesky WJM, S o t h e r n RB, Rubin NH: G a s t r o e n t e r o l o g y 1 0 1・4 1 04 1 5( 1 9 9 1 ) 6)DamiolaF,MinhNL,Prei t n e rN,KornmannB, F l e u r y O l el aF,Schi b l e rU :GenesD巴v1 4 : 2 9 5 0 2 9 6 1( 2 0 0 0 ) 7)D e s a i VG, Mol and CL, Branham WS, Del ongchampR, R FangH .DuffyPH .Peterson C A Beggs ML, Fuscoe J C : Mutation Res 5 4 9 : 1 1 51 2 9( 2 0 0 4 ) 8) DuncanWC:PharmacolTher7 1 :2 5 33 1 2( 1 9 9 6 ) 9)GachonF,O l e l aFF,Schaad0,DescombesP, S c h i bl e rU :CelMetab 4・253 6( 2 0 0 6 ) 1 0 ) Hrushesky WJM,von Roemel i n g, R S o t h e r n RB: Chronopharmacology: C巴lul a r and B i o che m i c a l1 n t e r a c t i o n s, p p 4 3 9 4 7 3, Marcel Dekker1 n c,NewYorkandB a s e l( 1 9 8 9) 1 1)Koya n a g i S, Kuramoto Y, Nakagawa H . Aramaki H . Ohdo S,Soeda S,Shim巴no H : CancerRes6 3 : 7 2 7 77 2 8 3( 2 0 0 3) 1 2)KoyanagiS,OhdoS :MolPharmacol6 2( 6 ): 13 9 3 1 3 9 9( 2 0 0 2 ) 1 3)Lavery D, J Lopez-Mol i n a L, Margue r o n, R F l e u r y O l el aF,ConquetF,S c h i b l e rU,Bonf i l s C :MolC e l lB i oI1 9 : 6 4 8 8 6 4 9 9( 1 9 9 9 ) 1 4 )L e v i F : From t h e B i ol ogi c al C l o c k t o 1 1 寺│ 削生物学 VoI . l3.No.l (2007) 1 7)Matsuo T,Yamaguchi S .M i t s u i S,Emi A Sh imoda F,Okamura H :S c i e n c e3 0 2 : 2 5 5 2 5 9 ( 2 0 0 3 ) 1 8)Nakagawa H . Koyanagi S, Takiguchi T, KuramotoY,SoedaS,ShimenoH .Hi guc h iS. OhdoS :Canc巴rRes6 4 : 8 3 2 8 8 3 3 3( 2 0 0 4 ) 1 9)Nishi mura K Kato H . Saito M: J Nutr S c i Vitami nol38・1 1 7 1 2 5( 1 9 9 2) 2 0)OhdoS :DrugMetabPharmacokinet2 2( 1 ) : 3 1 4 ( 2 0 0 7) 2 1)Ohdo S . Arata N, Furukubo T, Yukawa E, Hi g u c h iS,NakanoS,OgawaN :JPharmacol ExpTher 2 8 5( 1 ): 2 4 2 2 4 6( 1 9 9 8) 2 2 ) Ohdo S, 1 n o ue K . Yukawa E, Higuchi S, NakanoS,OgawaN :JpnJPharmacol7 5・2 8 3 2 9 0( 1 9 9 7) 2 3)Ohdo S,Koyanagi S,Suyama H .Higuchi S, AramakiH・NatureMed7 ・ 3 5 6 3 6 0( 2 0 0 1) 2 4 ) OhdoS,MakinosumiT,I shi z a kiT,YukawaE, HiguchiS,NakanoS,OgawaN :JPharmacol ExpTher2 8 3( 3 ) : 13 8 3 1 3 8 8( 1 9 9 7 ) 2 5 ) Ri vard GE, 1 n f a n t eR i v a r d C, Dresse MF, L e c l e r c JM, Champagne ] : Chronobiol 1 n t 1 0 : 2 0 1 2 0 4( 1 9 9 3) 2 6 ) 下山正徳: 癌と化学療法 3 : 1 1 0 3 1 1 1 0( 1 9 7 6) 2 7)Smaal and, RL o t e1 ( , S o t h巴r nRB,LaerumOD: CancerRes5 3 : 3 1 2 93 1 3 8( 1 9 9 3 ) 2 8)Smol enskyMH .Labrecqu巴 G:Pharmaceuti c al News4: 10 1 6( 1 9 9 7) 2 9)YamaguchiS, M i t s u i S, Yan L, Y a g i t a1 ( , MiyakeS,OkamuraH :MolC e l lB i o l2 0 : 4 7 7 3 4 7 81 (2 0 0 0) 3 0 ) YanL,MiyakeS,OkamuraH :JN e u r o s c iRes 5 9 : 2 9 1 2 9 5( 2 0 0 0 ) 臼 つ