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大都市圏での高齢化とその影響(PDF:317KB)

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大都市圏での高齢化とその影響(PDF:317KB)
JRI news release
ビジネス環境レポート No.8
大都市圏での高齢化とその影響
~消費市場へのインパクト試算~
2005年9月5日
株式会社 日本総合研究所
調査部 ビジネス戦略研究センター
http://www.jri.co.jp/
< 要 旨 >
(1)高齢化が実体経済に与える影響は、地方よりもむしろ大都市圏で顕著に現れる見通
し。これは、地方での高齢化はすでに相当進んでいるのに対し、大都市圏での高齢化はこ
れから本格化し、2030年までに高齢者人口が急増すると予想されることが背景。
(2)さらに、2000年以降、大都市圏への人口流入が拡大しているため、大都市圏での高
齢者人口の増勢はさらに強まる可能性も。
(3)大都市圏を代表して東京都を取り上げ、今後の高齢化の進行が、世帯構成の変化を
通じて個人消費に与える影響を分析すると、結果は以下の通り。
①消費市場の規模でみると、世帯数の増加、購入単価の上昇(高付加価値化)を背景と
して、少なくとも2015年ごろまでは拡大を続ける見通し。
②消費構成の変化をみると、旅行などの選択的支出よりもむしろ、食料・住宅などの基
礎的支出が大きく拡大する見通し。
(4)以上を踏まえれば、今後、人口減少社会に転じていくなかでも、企業経営の面から
みる限り、いたずらに経済規模の縮小を懸念する必要はないと判断。有望なビジネス・
チャンスは依然として多く存在しており、①大都市圏、②基礎的支出、③高付加価値化、
の三つのキーワードを重視することにより、事業拡大を図ることは十分に可能。
※本資料は内閣府記者クラブ(経済研究会)にて配布しております。
(会社概要)
株式会社 日本総合研究所は、三井住友フィナンシャルグループのグループIT会社であり、情
報システム・コンサルティング・シンクタンクの3機能により顧客価値創造を目指す「知識エン
ジニアリング企業」です。システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供に加え、内
外経済の調査分析・政策提言等の発信、経営戦略・行政改革等のコンサルティング活動、新たな
事業の創出を行うインキュベーション活動など、多岐にわたる企業活動を展開しております。
名 称:株式会社 日本総合研究所(http//www.jri.co.jp)
創 立:1969年2月20日
資本金:100億円
従業員:2,962名(平成17年3月末現在)
社 長:奥山 俊一
理事長:門脇 英晴
東京本社:〒102-0082 東京都千代田区一番町16番
大阪本社:〒550-0013 大阪市西区新町1丁目5番8号
TEL 03-3288-4700(代)
TEL 06-6534-5111(代)
本件に関するご照会は、調査部・枩村宛てにお願い致します。
電話番号: 03-3288-4524
[email protected]
メール:
地域間の特徴
都市部での高齢化が急速に進行する見通し
(1)本レポートでは、今後の高齢化は大都市圏で急速に進行するという認識の下、高齢化の進
行が大都市圏の経済に与える影響について分析を行った。その際、企業経営への示唆を導き出す
ことを狙い、社会保障などの制度面に与える影響ではなく、需要面、とりわけ個人消費に与える
影響に焦点を当てた。
(2)まず、都道府県別に高齢化の状況をみると、65歳以上人口比率は、概ね地方で高く、大都
市圏で低いという傾向がみられる(図表1)。2030年を展望しても、すべての都道府県で65歳以
上人口比率は上昇するものの、地方で高く大都市で低いというパターンは維持される見通しであ
る。このように、比率でみる限り、現在・将来いずれにおいても、高齢化は相対的に地方で進ん
でいるといえる。
(3)もっとも、比率ではなく、規模でみると様相が一変する。すなわち、2000年から2030年に
かけての65歳以上人口の増加数は、地方では各県とも10万~20万人程度にとどまるのに対し、東
京・埼玉・神奈川・千葉で計443万人、愛知で83万人、大阪・兵庫で計141万人と、大都市圏で大
きく増加する(図表2)。伸び率でみても、地方では最大50%程度にとどまるのに対し、東京・
埼玉・神奈川・千葉では倍増するなど、大都市圏で高い伸びとなっている。
(4)こうした違いは、①すでに高齢化が進行している地方では、今後、少子化の影響を受けて
高齢者比率は上昇するものの、高齢者の人口規模自体は大きく変わらない一方、②これまで相対
的に高齢化が遅れていた大都市圏では、高齢化予備軍ともいえる大量の人口(団塊世代以下)の
高齢化が今後本格化するため、高齢者の人口が急増することが原因である。需要水準を決める要
因としては「比率」よりも「規模」が重要であることを勘案すれば、今後の高齢化による実体経
済への影響も、大都市圏で最も顕著に現れると予想される。
(図表1)65歳以上人口の割合
(%)
2000年
2030年
35
30
25
20
15
沖縄県
鹿児島
宮崎県
大分県
熊本県
長崎県
佐賀県
福岡県
高知県
愛媛県
香川県
徳島県
山口県
広島県
岡山県
島根県
鳥取県
和歌山
奈良県
兵庫県
大阪府
京都府
滋賀県
三重県
愛知県
静岡県
岐阜県
長野県
山梨県
福井県
石川県
富山県
新潟県
神奈川
東京都
千葉県
埼玉県
群馬県
栃木県
茨城県
福島県
山形県
秋田県
宮城県
岩手県
青森県
北海道
10
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口、2003年12月推計」
(万人)
(図表2)65歳以上人口の2000年から2030年までの変化
(%)
125
120
増加数(左目盛)
100
100
増加率(右目盛)
80
75
60
50
40
25
20
沖縄県
鹿児島
宮崎県
大分県
熊本県
長崎県
佐賀県
福岡県
高知県
愛媛県
香川県
徳島県
山口県
広島県
岡山県
島根県
鳥取県
和歌山
奈良県
兵庫県
大阪府
京都府
滋賀県
三重県
愛知県
静岡県
岐阜県
長野県
山梨県
福井県
石川県
富山県
新潟県
神奈川
東京都
千葉県
埼玉県
群馬県
栃木県
茨城県
福島県
山形県
秋田県
宮城県
岩手県
青森県
北海道
0
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口、2003年12月推計」
-1-
0
最近の動き
都市部への人口流入が高齢化を加速させる要因に
(1)さらに、大都市圏での高齢化を加速させる要因となる、新たな動きも顕在化している。す
なわち、2000年以降、首都圏、中京圏を中心に、他地域からの人口流入が増加傾向にあり、大都
市圏への人口集中傾向が強まっている(図表3)。
(2)大都市圏への人口流入は、とりわけ東京都で目立っている。そこで、東京都への人口流入
の内訳をみてみると、以下のような特徴を指摘できる。
①都心回帰
…市町村部よりも、都区部への人口流入が多く、都心回帰の動きが強まっていることが窺え
る(図表4)。
②若年層から高齢層へ
…年齢階層別にみると、当初は地価下落を背景に若年層の人口流入が増加したが、2002年ご
ろから、中高年層でも人口流入が増えるなど、年齢層が高まる傾向にある(図表5)。
(3)こうした大都市圏への人口流入は、①中高年層の流入が直接的に高齢化を促すだけでな
く、②大量に流入している若年層が高齢化予備軍としてプールされ、数十年後から高齢化要因と
して顕在化することになる、という影響があるため、大都市圏での高齢者の人口規模には長期に
わたって増加圧力がかかると予想される。
最新の将来推計人口は2000年を基準としているため、こうした人口流入の動きは織り込まれて
おらず、大都市圏での高齢者の人口規模は、現在想定されている以上に膨らむ可能性が高い。実
際、2000年から2004年の間に、東京都への転入超過は34万人であったが、このうち17万人は人口
推計で織り込まれていない想定外の人口流入と試算される(図表6)。
(図表3)過去5年間の転入超過
(2000~2004年)
(図表4)東京都への転入超過の推移
(万人)
8
6
東京都
神奈川県
千葉県
愛知県
埼玉県
4
2
0
▲2
市町村部
都区部
転入超過
▲4
新潟県
長崎県
福島県
北海道
大阪府
▲6
▲8
▲10
▲10
0
10
20
30
40
(万人)
(資料)総務省「住民基本台帳人口移動報告年報」
(注)マイナスの都道府県は転出の方が多かったことを示している。
1982
(図表5)年齢階層別にみた東京都への転入超過
(千人)
(万人)
1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年
20~24歳
28.0
25~29歳
30~34歳
1985
1988
1991
1994
1997
2000
(資料)総務省「住民基本台帳人口移動報告年報」
(注)マイナスは転出の方が多かったことを示している。
2003
(年)
(図表6)将来推計での人口移動予測と
実際の動きとの乖離(2000→2005年)
15
34.4
34.8
35.2
34.7
▲1.1
4.5
9.4
10.3
8.0
10.7
▲4.6
▲1.1
1.5
1.9
1.2
3.1
35~39歳
▲1.5
0.2
1.7
2.2
1.7
2.9
0
40~44歳
0.0
1.2
1.5
2.1
1.9
2.4
▲5
45~49歳
▲0.5
0.4
0.5
1.2
1.5
1.9
50~54歳
▲1.4
▲0.6
▲0.4
▲0.2
▲0.7
0.7
55~59歳
▲2.4
▲1.9
▲1.7
▲1.6
▲1.5
▲0.9
流
入
超
10
5
兵庫
大阪
愛知
神奈川
東京
千葉
埼玉
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来
推計人口」、総務省「住民基本台帳人口移動報告年報」
(注1)流入超=予測-実績。
(注2)予測値は、将来推計人口の封鎖人口と本推計との差。
(注3)実績値は、2000年から2004年までの転入超過数。
(資料)東京都「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」、
厚生労働省「人口動態統計」をもとに日本総合研究所作成
(注)当年の人口-前年の1歳前人口-死亡者数、で試算した。
-2-
福岡
29.7
実体経済への影響
高齢化が都市部での消費市場に大きな影響
(1)以上の認識に基づき、以下では、高齢化が実体経済に与える影響を分析した。多方面にわ
たる影響が予想されるものの、ここでは、GDPの6割弱を占める個人消費に与える影響に絞っ
て分析を行った。また、統計の制約などから、東京都における消費市場を分析対象とした。
(2)分析は、各年齢層ごとの1世帯当たり支出額が不変と仮定し、今後の世帯数の変動によ
り、全体の消費規模・構造がどのように変わっていくかを試算した。使用した基礎データは、
①消費支出額…総務省「全国消費実態調査」1999年(サンプルの多さを重視)。年齢階層は
8区分で、それぞれ単独世帯と二人以上世帯に分けた
②世帯数予測…東京都による予測(図表7)。予測期間は2015年まで
したがって、本試算では、図表7で示した65歳以上の世帯数増加の影響が顕著に現れることに
なる。なお、以下のような下振れ要因、上振れ要因が捨象されているが、②と③の影響により、
実際の消費額は本試算よりも上振れる可能性が高いと考えられる。
①下振れ要因…世帯数予測は中位推計をベースとしているため過剰推計になっている可能性
②上振れ要因…前ページで指摘した2000年以降の人口流入が織り込まれていない
③上振れ要因…所得増加による消費押し上げ効果が除外されている
(3)分析結果を整理すると、以下の2点に集約される。
①消費市場の規模でみると、世帯数の増加、購入単価の上昇(高付加価値化)を背景として、
少なくとも2015年ごろまでは拡大を続けると見込まれる(4ページ)。
②消費構成の変化をみると、旅行などの選択的支出よりもむしろ、食料・住宅などの基礎的支
出が大きく拡大すると見込まれる(5ページ)。
(図表7)東京都の世帯数の予測
(万)
<二人以上の世帯>
2000年
2015年
2000年
2015年
200
150
150
100
+51万
100
+30万
50
50
0
0
15~64歳
15~64歳
65歳~
65歳~
(資料)東京都「東京都世帯数の予測、2001年3月」
-3-
85~
80~84
75~79
70~74
65~69
60~64
55~59
50~54
40~44
35~39
<単独世帯>
(万)
250
250
200
30~34
(歳)
25~29
85~
80~84
75~79
70~74
65~69
60~64
55~59
50~54
45~49
40~44
35~39
30~34
25~29
20~24
15~19
5
0
20~24
2000年
2015年
2000年
2015年
15~19
35
30
25
20
15
10
<単独世帯>
(万)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
45~49
<二人以上の世帯>
(万)
45
40
(歳)
消費市場規模
世帯数の増加、購入単価の上昇が消費需要を押し上げ
(1)まず、東京都の消費市場規模(名目ベース)は、2000年の30.5兆円から、2015年には32.6
兆円と、伸び率は低下するものの、緩やかなペースで拡大すると見込まれる(図表8)。これ
は、世帯数の増加、高価格品へのシフトという二つの消費押し上げ要因が強まることが背景にあ
る。
(2)世帯数の増加
今後、人口減少が予想されるが、少子高齢化により1世帯当たり人員も減少傾向をたどるた
め、世帯数は人口並みのペースほど落ち込まないと見込まれる(図表9)。家計の消費支出は、
食料など人口規模で決まる品目だけでなく、住居・耐久財・光熱など世帯数に左右される品目も
多いため、仮に人口が一定としても、世帯人員の減少によって世帯数が増加すれば、個人消費の
押し上げ要因として働く。実際、世帯人員別に一人当たり消費支出額をみると、世帯人員が少な
くなるにつれて、一人当たり消費支出額が増える傾向がある(図表10)。
(3)高価格品へのシフト
高齢者の消費行動は、若年世代よりも購入単価が高い品目が多いことが特徴である。とりわけ
この傾向は「食料」で強く現れており、代表例として、米(全世帯平均対比+2%)、生鮮魚介
(同1~7%)、牛肉(同12~24%)などが挙げられる(図表11)。購入単価が高い高齢者世帯
が増加していくことにより、全世帯平均の購入単価も上昇し、全体の消費市場規模が拡大するこ
とになる。
さらに、今回の試算には織り込まれていないが、2000年以降、液晶・プラズマテレビが高齢者
世帯を中心に購入されているため、テレビの購入単価も高齢者世帯で大きく上昇している。
(図表8)東京都の消費支出額
(名目ベース)
(兆円)
35
30
26.2
試算
30.5
28.7
(図表9)人口と世帯数の将来推計
(全国ベース、5年前比伸び率)
(%)
5
32.6
4
3
25
世帯数
2
20
1
15
0
10
▲1
5
人口
▲2
0
1990
1995
2000
2005
2010
2015
(年度)
(資料)内閣府「県民経済計算年報」などをもとに日本総合研究所作成
(注)2015年の試算値は世帯構造の変化のみを織り込んだもので、
所得の伸び等は考慮していない。
(図表10)世帯人員別にみた一人当たり
消費支出額(名目、全国ベース)
▲3
2005
2015
2020
2025
(年)
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口、
2002年1月」、「日本の世帯数の将来推計、2003年10月」
(図表11)高齢者の平均購入単価
(2004年、全国ベース)
(平均=100)
140
5人世帯
2010
130
全世帯
60~69歳
70歳以上
4人世帯
120
3人世帯
110
2人世帯
100
単身世帯
0
5
10
(資料)総務省「全国消費実態調査」
(注)調査時点は1999年10月。
15
20
(万円)
90
米
生鮮魚介
牛肉
テレビ
(歳)
(資料)総務省「家計調査年報」
-4-
消費構造
食料・設備修繕などの消費支出が拡大
(1)次に、消費構成の変化をみると、市場規模の拡大が見込まれるものとして以下の項目が挙
げられる。なお、カッコ内の数値は2000年と比較したときの2015年の市場規模の拡大幅である。
①食料(+5,717億円)
…野菜・魚介などの需要拡大、および購入単価の上昇を反映
②その他の消費支出(+5,750億円)
…大半が贈与金であり、若年世代への所得移転という性格
③教養娯楽(+2,584億円)
…余暇時間を利用したパック旅行など教養娯楽サービスが中心
④設備修繕(「住居」の内訳項目、+2,001億円)
…建築年数が経過した住居の補修
⑤光熱・水道(+1,696億円)
…世帯数の増加
⑥保健医療(+1,158億円)
…医療サービスが中心。なお、ここでは自己負担分のみが計上されているため、実際の市場
規模はこれを大きく上回る見込み
(2)これらを、別の視点からみてみると、旅行・被服などの「選択的支出」だけでなく、所得
変動に左右されにくい食料・設備修繕・光熱などの「基礎的支出」の市場規模も大きくなること
を指摘できる。基礎的支出の拡大は、世帯人員の減少、世帯数の増加が主因であり、これにより
景気悪化に伴う個人消費の落ち込みを抑制する効果が強まることが期待される。
(図表12)東京都の消費市場の拡大幅予測(2000→2015年)
<10大項目>
<食料の内訳>
野菜・海藻
魚介類
穀類
果物
調理食品
肉類
菓子類
乳卵類
酒類
油脂・調味料
外食
飲料
食料
住居
光熱・水道
家具・家事用品
被服及び履物
保健医療
交通・通信
教育
教養娯楽
その他の消費支出
0
100
200
300
400
500
0
600
25
50
75
100
125
(十億円)
(十億円)
<その他の消費支出の内訳>
<教養娯楽の内訳>
旅行
贈与金
読書
他の交際費
聴視・観覧
仕送り金
月謝
耐久財
理美容
スポーツ
身の回り用品
会費・つきあい費
他の諸雑費
他の教養娯楽
0
50
100
150
0
50
100
150
200
250
(十億円)
(資料)内閣府「県民経済計算年報」、総務省「全国消費実態調査」などをもとに日本総合研究所作成
-5-
(十億円)
企業経営への示唆
キーワードは、都市部、基礎的支出、高付加価値化
(1)以上のように、①世帯数の増加、購入単価の上昇が人口減少要因を一部相殺して、消費市
場規模は当面拡大が見込まれること、②全体の市場規模が維持されるなか、大きく伸びる分野も
存在していること、を勘案すれば、今後、人口減少社会に転じていくなかでも、いたずらに経済
規模の縮小を懸念する必要はないと判断される。有望なビジネス・チャンスは依然として多く存
在しており、①都市部、②基礎的支出、③高付加価値化、の三つのキーワードを重視することに
より、事業拡大を図ることは十分に可能である。
(2)もっとも、高齢者を対象とした場合、高付加価値化を重視するだけで需要が必ず伸びると
は限らないことに注意が必要である。大画面の液晶・プラズマテレビは高齢者が購入の中心帯に
なっているが、一方で、パソコン、DVDプレーヤー、携帯電話などは高齢者世帯への普及が低
水準にとどまっているほか、自動車、電気洗濯機などでも高価格製品を購入しているのは若年層
である(図表14)。ここから、今後の高齢化経済では、操作の複雑化を伴う「機能追求型」の高
付加価値化よりも、高齢者のライフスタイルに合致した高付加価値化がポイントになることが示
唆される。
(3)さらに、政策面でも、消費市場を活性化させていくことが重要な課題である。当面増加が
見込まれる世帯数は、①1世帯あたり人員の減少には限界があること、②人口の減少幅が大きく
なれば、世帯数も減少せざるを得ないこと、などから、いずれ減少に転じ、消費押し上げ効果が
剥落することが予想される。したがって、所得拡大や消費マインド改善を通じた消費拡大が必要
であり、これを実現させるためには、景気促進的な政策スタンスを維持すると同時に、将来不安
を払拭するような社会保障制度改革を進めることが求められる(図表15)。
(図表13)東京都の消費市場の拡大幅予測
(2000→2015年)
(平均=100)
130
(図表14)年齢階級別の平均購入単価
(2004年、全国ベース)
自動車
電気洗濯機
120
基礎的支出
110
うち贈与金
100
選択的支出
90
0
500
1,000
1,500
2,000
(十億円)
80
(資料)内閣府「県民経済計算年報」などをもとに日本総合研究所作成
(注1)基礎的支出は支出弾性値が1.0未満の費目。支出弾性値は
2004年の家計調査年報の値を使用。
(注2)基礎的支出には食料、設備修繕、光熱・水道、保健医療などが、
選択的支出には被服、交通、教養娯楽サービスなどが含まれる。
70
~29
30~39
40~49
50~59
60~69
70~
(資料)総務省「家計調査年報」
(歳)
(図表15)支出を減らしている理由(複数回答の上位5項目)
今後は年金や社会保険の給付が少なくなるの
ではないかとの不安から
将来の仕事や収入に不安があるから
将来、増税や社会保障負担の引き上げが行
われるのではないかとの不安から
不景気やリストラなどのために収入が頭打ち
になったり、減ったりしているから
低金利で金利収入が少ないから
0
10
20
30
(資料)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査、2005年6月」
(注)1年前と比べて支出を減らした人(全体の40.9%)に対する設問。
40
50
60
70
(%)
-6-
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