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博物館だより - 岐阜市歴史博物館

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博物館だより - 岐阜市歴史博物館
岐阜市歴史博物館
博物館だより
№
「秋澗密林図」川合玉堂
1893 年(明治 26 年) 個人蔵
縦 128.7cm× 横 50.8cm 絹本着色・軸装
玉堂、 歳の時の作品で、この年、累代親戚関係に
あった岐阜の大洞家の次女富子と結婚している。秋の
林の中を渓流が走る様を、がっちりとした構成で描い
ており、画家を志す青年としての謹厳実直な雰囲気が
漂っている作品である。
「澗」は山の間を流れる川の意。
(企画展「金華ゆかりの画家たち」で展示)
.
企画展
ちょっと昔の道具たち
2008. 1.11(金)∼ 3. 9
(日)
今年度で 回目を迎える展覧会。本展は小学
生が社会科で初めて歴史を学習することをふま
え、
「具体物を通して」学習する場の提供と、ハ
ンズオンによる体験やジオラマ式の展示を取り
入れた、
「五感で楽しく」学ぶことを目的に開催
しています。
展示コーナーは児童の生活との関わりから、
「学 校」
「ま ち か ど」
「家 の な か」
「家 の ま わ り
(遊びのコーナー)
」の コーナーとし、
「学校」
「家のなか」が「おじいさん、おばあさんが子ど
ものころ( ∼ 年くらい前)
」
、
「まちかど」
「家
のまわり」を「おとうさん、おかあさんが子ど
ものころ( ∼ 年くらい前)
」を中心とした時
代設定で展示するとともに、各種体験用資料を
配置しています。
本年度は、
「まちかど」コーナーにあった「喫
茶まちかど」を、銭湯「まちかど湯」の展示に
更新します。内風呂が普及する昭和 年代ま
で、銭湯に毎日通った思い出のある方も多いと
思います。のれん、脱衣箱、籐製ベビーベッド
などの展示品を通じて、人との触れ合いが豊か
だった時代を体感してください。
井戸の手押しポンプ
こ れ と は別 に「
∼ 年く ら い 前の 道 具」
コーナーを設け、他のコーナーの展示資料との
比較により、道具の移り変わりが理解できるよ
う にして います。また、会場 内では、ボラ ン
ティアの「ものしり博士」が常駐し、解説や体
験活動の補助をおこなっており、毎年ご好評を
いただいております。
さ て、学 校 団 体 で 本 展 を ご 覧 に な る 場 合、
, 年生向けに専用の見学プログラムを用意し
ております。これとは別に、 年生限定で「た
ぬきの糸車 SPECIAL DAYS」を 日間設定
し、美濃コットンボール銀行の皆さんとものし
り博士による、綿繰り体験・たぬきの糸車紙芝
居・わくわくはらっぱでの昔の遊びなどを組み
合わせた、スペシャルプログラムもあります。
教室コーナーでの学校団体向け授業
また、土曜、日曜、祝祭日には、下記の各種
イベントを開催いたします。ご家族で「ちょっ
と昔」にタイムスリップしながら、楽しいひと
時をお過ごしください。そして、本展が「もの
しり博士」も交え、世代を超えた交流の場とな
れば幸いです。
【関連行事】
< 一般来館者向け >
●新春独楽回し&南京玉すだれ
月 日(日)・ : ・ : ・ :
●おもちゃづくり教室(各日 : ∼, : ∼)
「か ら くり 鬼」[
円] 月 日(日)・「は ね ウ サギ」[
円]
月 日(日)・
「うぐいす笛」
[
円] 月 日(日)
・「布でつ
くる富有柿」
[
円] 月 日(日)
・
「ガリガリとんぼ」
[
円]
月 日(日)
・「たわらころがし」[
円] 月 日(日)
※[ ]内は材料費、定員各回先着 名、開始 分前より整理券
を配布します
●ものしり博士のわくわくワークショップ (各日 : ∼ : , : ∼ : )
月 日・ 日、 月 日・ 日・ 日・ 日、 月 日・
日の各土曜日
●みんなで唄おう!
「日本の歌百選」
( 各日 : ∼)
月 日・ 日、 月 日・ 日・ 日・ 日、 月 日・
日の各土曜日
●みんなあつまれ!紙ヒコウキ大会
月 日(日)・ : ∼
●みんなあつまれ!お手玉大会
月 日(月祝)
・ : ∼
●みんなあつまれ!ベーゴマ大会
月 日(日)・ : ∼
< 学校団体向け >
■学校利用説明会(小学校教諭対象)
月 日(水)・ : ∼
■たぬきの糸車 SPECIAL DAYS
月 日(木)・ 日(金)・ 月 日(木)・ 日(金)
※小学校 年生対象。先着 学級
※都合により内容・時間等が変更になる場合があります
※学校団体見学の申し込みは、随時受け付けております。ご希望
の見学日時が満員となる場合もありますので、お早めに博物館
までご相談ください。
― 2 ―
となっている作品で、神社以
外での公開は初めてとなる貴
重な作品です。
ふるさと岐阜・魅力発見大作戦
日本画家では、その他に太
田稲吉(白木町)、桜井正信
(啓雲町)、杉山祥司(湊町)
、
長縄士郎(玉井町)、林昇(松
2007. 12. 4(火)
∼ 2008. 1. 27
(日)
山町)、松井章(玉井町)、松
岐阜市では、今、金華山と長良川まるごと博
原日沙史(山口町)
、吉田昌代
物館構想やITを活用した町中歩きをすすめ、 (大宮町)の作品を展示しま
まちなか博士などによる「もてなしの心」の育
す。
成に取り組んでいます。
洋画 家 で は美 濃 加 茂 市出
こうした事業をすすめるうえでも、そこに住
身:坂井範一の作品を展示し
む市民の手で地域の歴史や文化を再発見し、市
ま す。範 一 は 東 京 美 術 学 校
民に広く周知することが、ふるさと岐阜の歴史 (現東京芸大)卒業後、新制作
や文化を誇りにし、自信をもって「もてなしの
協会会員として東京で活躍し
坂井範一 「雪竹」
心」を発揮することにつながるものと思います。 ていましたが、戦後、疎開先
このような趣旨にそって、NPO法人「わい
だった湊町に住み、そこを活動拠点として戦後
わいハウス金華」と共催で、岐阜市とNPOの
の岐阜の美術界をリードしてきました。
協働事業推進のためのガイドラインに基づく
今回、展示する「雪竹」は範一が最も好んで
「ふるさと岐阜・魅力再発見大作戦」事業を立ち
描いたモチーフです。孟宗竹に雪が少し積もっ
上げ、その一環として岐阜町・金華の魅力を探
た構図で、日本画を思わせる単純化された構図
る企画展「金華ゆかりの画家たち」展を計画い
は範一の感性の鋭さと発想の豊かさを感じさせ
たしました。
ます。
その他の洋画家では、宇野一(大和町)
、萩野
喜弘(上茶屋町)、早川国彦(栄扇町)
、日比次
郎(矢島町)の作品を展示します。
また、アーチストとして多方面で活躍してい
る日比野克彦(矢島町)の「PARIS・
」
とともに、その妹:日比野充希子の作品「旅は
もう長い」を展示します。
版画家として活躍した武藤六郎(夕陽ヶ丘)
の「折染壁紙」も見ものです。
岐阜を拠点に制作活動を行い、中央に文化を
発信するには大きなハンディキャップがありま
川合玉堂 「入馬」
すが、それを乗り越え頑張ってきた芸術家が、
悠久のときを超え今に伝えられる長良川の鵜
没後、ともすると歴史に埋没し忘れ去られてゆ
飼と斎藤道三・織田信長の居城として知られる
くことが多々あります。
岐阜城、その金華山の麓に市民の憩いの場とし
この事業をとおして金華の住民が、地域の美
て親しまれている岐阜公園。金華校区は歴史と
術愛好家を回り、私蔵されている多くの作品を
文化と自然に恵まれた土地ですが、この地に生
掘り起こすとともに、忘れ去られようとしてい
まれたり、この地を拠点として活躍された画家
るその業績を調査していただきました。
を多く輩出している土地でもあります。
この活動が地域の歴史や文化を再発見する機
歳から京都に移り住むまでの約 年間、米
会となり、地域を理解し愛する機会につながる
屋町で過ごした川合玉堂(木曽川町出身)の
ものと思います。
「入馬」
「山水」
「藍川漁火図」
「秋澗密林図」を
展示します。
「入馬」は伊奈波神社の絵馬の原画
加藤栄三・東一記念美術館
金華ゆかりの画家たち
― 3 ―
寺に伝わる作品を中心に展観し、水谷華山の細
歴博セレクション
密な世界を紹介します。
細密 ─ 水谷華山の世界
月
日(火)∼
水谷華山は慶応
月
年(
日(木)<予定>
)大垣市に生まれ、
少年の頃中尾馬山に彫刻の手ほどきをうけまし
た。明治
年(
たが、同
年、彫刻で生計をたてるため岐阜市
へ移居し、同
)岐阜県巡査を拝命しまし
年には金華山に由来する華山と
なのるようになったのです。
当初、華山が手がけたのは、
「キセル」を入れ
て、腰に指す「煙管筒」が主でしたが、後に文
房具、茶器の類を竹材で作るようになりまし
た。華山は昭和
年(
)に没しましたが、
明治後半から大正期にかけて日本各地で開催さ
れた博覧会や共進会に出品し、多くの賞を受け
ています。
華山がもっとも得意としたのは、鉄筆を用い
て竹材に細密な細工をほどこすことでした。肉
眼ではっきり読めないほどの微細な漢字を鮮明
に刻出してみせたのです。本展では、水谷家か
らご寄贈いただいた作品と華山の還暦を祝って
百個以上の竹印を展示した会場にもなった円徳
■特集展示 (
香筒(部分)
水谷家寄贈
階 総合展示室内) ■
歴史博物館の一角に特集展示コーナーを設置し、 ∼
開しています。
月から
ヵ月ごとにテーマを設けて資料を公
月の日程は次のとおりです。
月
日(日)まで
「美濃刻印須恵器の世界」
月
日(木)∼
月
日(日) 「引札が運ぶお正月」
月
日(木)∼
月
日(日) 「古地図 ∼日本図と世界図∼」
月
日(木)∼
月
日(日) 「金華山麓のやきもの」
■柳津歴史民俗資料室の展示■
分室・柳津歴史民俗資料室(岐阜市柳津町下佐波西
−
もえぎの里
階)では、
月か
ら 月まで次の日程で展示を行います。観覧料は無料です。
月
日(月)まで
「旅のおみやげ」
月
日(水)∼
月
日(日) 「引札にみる文明開化」
月
日(火)∼
月
日(日) 「今日は楽しいひな祭り ∼いろいろなひな人形∼」
月
日(火)∼
「近代消防への変遷」
― 4 ―
当スタッフが織りの様子について実演を交えな
博物館ニュース
がら説明をし、また、個人で来館されたお客様
には実際に織りを体験していただけるようにも
着て!見て!ふれて!弥生時代
∼体験型学習への取り組み∼
今年度
月から
月にかけて小学
する予定でいます。そのために、現在歴博ボラ
ンティアの方々とともに、織りの様子を実演で
年生の歴
きるよう特訓を始めました。より正確な実演が
史学習に合わせて行った「特集展示 弥生時代
できるよう、当館で毎年行われる「夏の子ども
のくらし」は、市内外の多くの学校団体の方や
歴史教室 親子で弥生時代の布を織ろう」でお
一般のお客様のご来館があり、大好評をいただ
世話になった講師の脇田雅彦先生・節子先生(日
きました。当展では弥生時代の衣食住がわかり
本民具学会)にご指導いただいております。織
やすく学べるよう、「石ぼうちょうを使ってみ
るところだけでなく、たて糸の準備など織りに
よう」
、
「貫頭衣(かんとうい)を着てみよう」
いたるまでの過程から行っています。まだまだ
などの体験コーナーを設けました。
スタートしたばかりですが、来年のオープンに
訪れた子どもたちには当時のくらしぶりがと
合わせて今後本格的に活動していきます。
ても新鮮なものとして映ったようで、興味を
持って各体験コーナーに取り組んでもらえまし
た。中には学校からの見学後、個人的に何度も
足を運んでくれるお子さんもいたほど、学習意
欲を引き出せる有意義なものであったと思います。
実演の練習風景
「弥生時代の布作りは糸をつくるところから
布を織るところまですべて手作業で、根気と労
力のいる大変な仕事。子どもたちにもその苦労
今年度の様子
を少しでも感じ取ってもらえたら。同時に今と
ほとんど変わらない織り方の技術を、
年ほ
展示期間中には、お客様や引率の先生方から
ど前にすでに持っていた弥生人の英知にふれて
様々なご意見をいただきました。例えば、「弥
みてほしいです」とは、あるボランティアの方の
生時代と縄文時代の比較ができるようなものを
言葉ですが、スタッフ全員が同じ思いでいます。
展示してほしい!」といったものや、
「布を織っ
他にも弥生時代の人々のくらしぶりがうかが
ている様子を見たい!」といったものです。そ
えるような体験コーナーをいくつか設置するた
ういったご意見をふまえて、次回はより楽しみ
めの準備を行っています。こうした様々な体験
ながら歴史への理解を深めていただけるよう、
コーナーを通して、少しでも子どもたちの理解
再び来年の春に「特集展示 弥生時代のくらし」
を深めるきっかけにしていただければと思って
を計画しています。ここでは、先ほどのご意見
います。
をもとに企画した「布織りを見学しよう」に向
けた取り組みをご紹介します。
特集展示 弥生時代のくらし
このコーナーでは、学校団体の見学の際、担
平成 20 年
― 5 ―
月
日(木)∼ 階特集展示室にて
販売店及び発行所の設置
『教育新聞』の広告の中に
研究ノート
①古本古帳古新聞 御不用御払品精々高価買受
『教育新聞』の発行維持について
申候 美濃国北方町教育新聞販売(下線:黒
黒田隆志
田、以下同様)
書林 寺島傳八
(
『教育 新 聞』 号 頁
年 月 日。以
下、
『教育新聞』から引用する場合は、号数・
はじめに
頁・年月日を表記する)
本稿は「
『教育新聞』の変容と発行維持に関す
②教育新聞一手販売 武儀郡関町 三輪新聞店
)
る一考察」 に続くものである。
( 号 頁
年 月 日)
『教育新聞』は
年 月 日に創刊された。 ③教育新聞大販売 弊店は中学校及び岐阜尋常
この企画は、同年春に岐阜市へ進出した西濃印
高等小学校生徒諸君等の御便利を計るため今
)
刷の河田貞次郎 が社の宣伝を兼ねた事業とし
回発行所の承諾を得て店頭に教育新聞投書函
て社会教育的な新聞か雑誌を発行する計画を小
設置致候間御投書あれば発行所へ取次可申候
)
木曽旭晃 に持ちかけ実現したものである。
岐阜中学校前(知事官舎南)教育新聞特約販
そのため経営の基本方針は、利害を度外視し
売 浦瀬文具店( 号 頁
年 月 日)
たものであった。しかし、少しでも経営に資す
とあるように、書林や新聞販売店・文具店に
るため、広告収入の確保や読者の獲得に努め
おいて取り扱っていた。そして、浦瀬文具店の
た。具体的には、無料配布・拡張号の発行・値
ように中学校の前に店を構えるという地の利を
得たところでは、読者からの投書の取次ぎもし
引き・販売店及び発行所の設置・各種大会の主
ていた。
催と他者主催行事への協賛・広告の掲載などが
あげられる。下線の 項目は考察済みのため、 また、岩手村(現垂井町)の読者から以下の
ような投書が寄せられている。
本稿では販売店及び発行所の設置・各種大会の
私は垂井の青原堂から本誌を購買して居ます
主催と他者主催行事への協賛について取りあげ
が何時も遅れます、殊に六十三号の如きは十
る。
四日に配達しました
)
『岐阜近代史研究会報』 号所収 黒田 岐阜県近
( 号 頁
年 月 日)
代史研究会 年
上記の投書から、青原堂が、送られて来た『教
創刊後の『教育新聞』は 年と ヵ月の間に
号
育新聞』を読者宅まで配達していたことがわか
を刊行し、
年 月 日終刊した。月 回が基
本で、月 回となった時期もあった。また、 部
る。このことは読者との間に既存店を介するこ
頁が基本であるが、経済動向に影響され頁を減
とで、
『教育新聞』の一括発送が可能となり大幅
らすこともあれば、
号を記念して
頁だてに
に手間を省くことができていたことを意味し、
することもあった。なお、
『教育新聞』については
教育新聞発行所にとって既存店が便利な存在で
以下の論稿を参照。
「
『教育新聞』の綱領についての一考察」前掲会報
あったといえる。
号 黒田
年
一方、販売店にとって『教育新聞』の取次ぎ
「
『教育新聞』と綴方教育」
『岐阜県教育史 通史編
は店が抱える業務の一つでしかなく、そのため
近代 』
(第 章‐第 節‐ ) ・ 頁
)河田貞次郎 年 月 日、羽島郡足近村(現羽
利益が出ない、あるいは業務量に見合わない場
島市)に誕生。
年、西濃印刷株式会社を大垣町
合には、この投書にあるように遅配が生じるこ
(現大垣市)に設立。
年から 期岐阜市議会議
ともあったのである。
員を務める。
『岐阜市史 通史編 近代』 ・ 、 ・
頁
上述の教育新聞発行所は岐阜市の西濃印刷社
)小木曽旭晃 年 月 日、厚見郡細畑村(現岐
屋に置かれていたが、それに加えて各地に発行
阜市)に誕生。『教育新聞』の創刊から廃刊まで一
所が設けられていた。名称は「西濃印刷株式会
貫して編集者として携わる。途中、岐阜日日新聞
社教育新聞発行所」で括られているが、すべて
社の編集者(後に編集局長)となり、二足の草鞋
を履くことになった。『岐阜市史 通史編 近代』
個人名で登録されている。その人数は表のとお
∼
頁や『逆境の恩寵』小木曽修二(旭晃)
(生
りである。ここからは登録者一人一発行所(実
活と文化社、
年)を参照。
際は『教育新聞』の勧誘兼配達ヵ)として活動
していたことがうかがえる。
― 6 ―
この発行所が紙面に登場するのは
号(
頁
年 月 日)が最初であるが、以後、発
行 所 の 数 が 伸 び て い る。こ れ は
号( 頁
年 月 日)から、地域青年団に対する団
体購読割引きを始めており、それによる購読団
体の増加と、団体ごとの取り纏め役が発行所を兼
ねたことによると考えられる。
こうした読者の中から発行所を担当する者が出
てきたといえるのではないか。
各種大会の主催と他者主催行事への協賛
『教育新聞』 号( 頁
年 月 日)に
は高等科・尋常科五六年・一般を対象とした
「第十三回 懸賞競書募集」の記事が掲載されて
いる。『教育新聞』の号数と競書会の回数を比べ
ると 号に 回は競書会の募集をしていたこと
表 発行所数の変遷
になり、積極的に開催していたことがわかる。
人数
号数
頁
発行年月日
このほかにも、懸賞補足文( 号 頁)を始め
年 月 日
として懸賞和歌( 号 頁)・懸賞俳句( 号
頁)
・懸賞組立文( 号 頁
年 月 日)
・
年 月 日
懸賞判じ物( 号 頁)などの募集を行ってい
年 月 日
た。
年 月 日
これらは中学文壇( 号 ・ 頁)・才媛文
また発行所設置の目的、時期、役割と実態等
壇( 号 頁)・少年文壇( 号 頁)
・青年文
について、明らかにできる史料がないのが現状
壇( 号 頁
年 月 日)などの作文と比
であるが、 号に社告( 頁
年 月 日) べ掲載する時、紙面の負担が少なくてすみ、多
として以下のような文章が掲載されている。
くの作品と氏名を掲載することができる。この
社告 ●読者紹介者芳名 左の諸君は村内の
利点と紙面に氏名が載って喜ばない投稿者はい
青少年諸君に本紙を愛読せしめんとの熱誠心
ないという考え方で新たな読者を開拓しようと
より、種々奔走せられ各頭書の読者を紹介せ
したのであろう。
られたるは、実に感謝に堪へざるところにし
また、教育新聞発行所では、岐阜市白木町に
て、本社は永く其御厚意を忘却せざるべし、 出店する玉井堂(教育用品文房具雑貨販売)が
茲に芳名を記して謝意を表すると共に、本誌
開店を記念し、同店主催で競書会(=玉井堂開
をして益々改良発展せしめんと欲せらるゝ篤
店記念書道奨励清書大会。 号 頁
年
志の諸君は一人にても多く御勧誘あらんこと
月 日)を開催することになった時、それを賛
を乞ふ。
助することになった( 号 頁
年 月
●十名 郡上郡山田村 村井忠義君
日)。その効果があったのであろう応募総数が
●十名 恵那郡阿木村 三宅亮君
数千枚に達し、そのうち千枚ほどを
年 月
●三名 千葉県君津郡根形村 森竹愛山君
日に善澄寺の本堂に張り並べた。そして、当
●二名 稲葉郡那加村 石田千舟君
日が日曜日ということも手伝って幾千人が入場
以下次号に追々披露可仕候
したとある( 号 頁
年 月 日)。また
これは 人の読者が行った勧誘活動に対する
紙面においては入選者の氏名を掲載した( 号
謝意を表したものであるが、
「以下次号に追々
頁
年 月 日)。これなどは広告の掲載
披露可仕候」とあることから 人以外にも熱誠
と読者獲得の両方において益があったと思われ
心を持って読者を広げようとした者が幾人も存
る。
在していたことがわかる。
しかし、後には以下の記事のように読者の対
そして 人の中の 人、石田千舟は第 回教
象である青少年が集う運動会や雄弁会などに景
育新聞誌友会に参加している( 号 頁
年
品を提供し『教育新聞』を売り込もうとするよ
月 日)
。この誌友会は 号の開催予告記事
うになった。
に「本誌投書家大会!来れ!諸君!」
( 頁
各学校青年会処女会へ社告 本社は各小中
年 月 日)とあるように一般の読者の集いで
学校、青年会、処女会等の運動会、雄弁会
はなく『教育新聞』を自己表現の場として活動
等御開催の節は聊かながら賞品贈呈可仕候
している投稿家の集いであると考えられる。
間前以て開催日時御通知相成度候 教育新
以上のことから、他の 人も石田と同じよう
聞発行所
に『教育新聞』への投稿家であると推測でき、
(
号 頁
年 月 日)
― 7 ―
絵草子店 鳥文斎栄之・画 西村屋永寿堂・版 江戸時代後期
柱絵 縦 56.3cm、横 11.9cm
作者の鳥文斎栄之(1
7
5
6∼18
2
9)は、狩野派の絵師に絵を学んだ後、
旗本でありながら役者絵で有名な鳥居派に学んで浮世絵師となりまし
た。美人画を得意とし、特に頭部が小さくすらりとしたスタイルのよ
い女性像が特徴です。
浮世絵の中でも、特に細長い形式のこの作品は「柱絵」と呼ばれ、縦
長に切った紙を縦に貼り継いで簡単な紙表具の掛軸装に仕立て、柱に
かけて鑑賞できるようにしたものです。
画面の大半を占めているのは、面長で髪に大きな櫛と笄を差した長
身の美人で、その長身をさらに強調するかのように竪縞の着物を着、浮
世絵版画を重ねて巻いているところです。背景である店奥の壁に掛け
られた掛軸は、版画を貼り込んだものでしょう。足元には絵草子と呼
ばれる本や、歌舞伎役者や美人を描いた版画が積み重ねられています。
また、絵がよく見えるように版画を傾斜台に並べたり、横の壁にΩ型の
什器をつけて団扇の柄を差したりするなど、商品の並べ方にも工夫が
見られます。
作品の出版元である西村屋永寿堂は、和本などの書籍のほか絵本、版
画など手広く扱っていました。作品中の店に屋号を表わすものは描か
れていませんが、店先に版画しか描かれない作品もあるなか、豊富な種
類の浮世絵を扱う店を描いたこの作品は、西村屋をモデルにしている
のかもしれません。
*********************************************************
利用の御案内
■ 開館時間
午前9時∼午後5時
(入館は午後4時30分まで)
■ 休 館 日 毎週月曜日と祝日の翌日
(月曜日が休日の場合は翌日)
12月28日
(金)∼1月3日(木)
■ 観 覧 料
歴史博物館常設展、加藤栄三・東一記念美術館
高校生以上 300円(団体2
40円)
小・中学生 150円(団体 90円)
両館共通で観覧される場合
高校生以上 500円(団体4
00円)
小・中学生 250円(団体1
50円)
※団体は20名以上。市内の小・中学生は無料
企 画 展 常設展料金で御覧いただけます。
特 別 展 そのつど定めた金額。
■ 交通案内 JR岐阜駅・名鉄岐阜駅より岐阜公
園または長良橋経由バスにて約15分、「岐阜公
園・歴史博物館前」下車、すぐ東に歴史博物館
があります。
加藤栄三・東一記念美術館は、公園内ロープ
ウェイ乗場すぐ隣です。
博物館だより №67 2
007.
12
編集・発行 岐阜市歴史博物館
〒500−8003 岐阜市大宮町2−18−1 緯05
8
(2
65)
001
0
(分館)加藤栄三・東一記念美術館
〒500−8003 岐阜市大宮町1−46
緯05
8
(2
64)
641
0
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