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労働災害と健康
保健体育 学習メモ [保健]社会生活と健康 第 83 回 労働災害と健康 今回の学習内容 「労働災害」とは、働くことが原因で起こる病気やけがの ことを言います。高校生のみなさんは、今の自分には関係な いと思っている人が多いかもしれません。でも、仕事につけ ば誰にとっても身近な問題となります。今回は、将来身近な 問題になるであろう「労働災害」について学習します。 講師 国 吉 恵 一 労働災害とその防止 ▼ 世の中にはさまざまな職業があるので、「働く」 い込み「じん肺症」という病気になってしまうこと ことによって起こりやすいけがや病気、つまり労働 があります。有機塗料を扱う職場では「有機溶剤中 災害もさまざまです。例えば、高層ビルの建築現場 毒」による健康被害、コンピューターを長時間不適 では高所から転落する可能性があり、化学物質を扱 切な姿勢で操作することで VDT 障害という健康被 う仕事では爆発や火災のほかに中毒症状を起こす可 害が出ることがあります。 能性もあります。車を運転する仕事では交通事故に 遭遇する危険性が高まります。また、パソコンを使 けんしょう う仕事では視力が低下したり、腱鞘炎になったりす ることもあります。 そして、 「労働災害」の中で、働くことによって 起こる病気や障害を特に、「職業病」といいます。 ふんじん 例えば、工場などでは、小さな粉塵が空気中に飛ぶ 環境があり、そこで仕事を続けると、粉塵を肺に吸 − 159 − 高校講座・学習メモ 保健体育 83[保健]労働災害と健康 作業環境・作業形態を見直そう 「労働災害」や「職業病」を減らすには、「不安全 踏み外すといった不安全行動をとっても転落するこ 行動」と「不安全状態」を減らし、 「作業環境」と「作 とがなくなり、けがを防ぐことができます。これは、 業形態」を見直すことが必要です。 「作業環境」の見直しとなります。また、コンピュー 「作業環境」とは働く場所、「作業形態」とは作業 ターを長時間扱う職場では、正しい姿勢で作業する の量や作業をするときの姿勢を指します。例えば、 ことや連続した長時間作業を避けることなどに注意 高層ビルの建築現場では、高所の作業を少なくした すれば、VDT 障害を防ぐことができます。これは、 り、足場や手すりを作ったり、転落防止の安全ネッ 「作業形態」の見直しとなります。 トや安全帯を用意したりすれば、作業する人が足を 安全管理と健康管理のしくみ ▼ ■職場の安全管理のしくみ ■職場の健康管理のしくみ 労働災害を防ぐために職場ではさまざまな対策が すべての労働者を対象に定期的に健康診断(一般 とられ、労働者を雇う雇用者には職場の安全衛生管 健康診断)が実施されています。また、健康に有害 理の体制を整備することが義務付けられています。 な作用を及ぼす化学物質などにさらされている労働 作業場所や作業方法に危険がある場合、その危険 者を対象とした特殊健康診断も実施され、問題があ を減らす応急処置・防止措置を行ったり、安全設備・ れば、健康相談を受け、日常生活や仕事内容を見直 器具の点検、働く人たちに安全教育や避難訓練・消 すなど、健康の改善行動がされています。 防訓練を行ったりしています。一方、働く側も、作 しかし、安全管理や健康管理をとっていたとして 業をする際に危険を予知したり、危険の原因を取り も、労働災害を完全に防ぐことはできません。そこ 除いたりするなど、安全な職場作りのために積極的 で、労働災害が起こってしまった時に備えて、働く に取り組むことが大切です。 人やその家族を保護するために、労災保険制度が設 けられています。 − 160 − 高校講座・学習メモ