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企業年金型社会的責任投資と金融機関の役割 - RIETI
戦略的年金経営に向けて 企業年金型社会的責任投資と金融機関の役割 第8回「企業の社会的責任と新たな資金の流れに関する研究会」資料 平成15年9月9日 Multi-Product & Investment Counseling 金融機関として果たすべき社会的責任 金融団体による環境及び持続可能な開発に関する国連環境計画(UNEP)宣言 1.3 金融サービス部門は、他の経済部門と協力することによ り、持続可能な開発の重要な貢献者たると我々は考え る。 2.7 我々は、環境保護促進となる製品及びサービスを開発 するよう金融サービス分野に推進を促す。 金融行動を通じた他のセクターへ一定の働きかけが期待されている Multi-Product & Investment Counseling 2 住友信託のビジネスモデル(2つの間接金融機能) 『資産運用型金融機関』 • 伝統的な間接金融 – 預金を集め事業法人等への貸出を行う • 新しいタイプの間接金融 – 実績配当商品を始めとする信託商品を受託し、資金の性格やリ スク選好に応じて、貸出債権、社債、株式などに、市場を通じて 幅広く投資・運用する – 顧客の資産を万全に管理し、情報分析・レポ−ティング・コンサ ルティングなど付加価値の高い情報加工サービスを提供する Multi-Product & Investment Counseling 3 住友信託のCSR CSR推進ビジョン CSR推進体制 社長 社会 経済 ・コンプライアンス ・企業活動を通じた社会貢献 への参加 他 経営会議 ・財務体質強化 ・効率的経営の実践 ・金融ビジネス 不動産事業部門 Multi-Product & Investment Counseling 受託事業部門 コーポレートガバナンス マーケット資金事業部門 環境 ・環境リスク低減への取り組み ・環境配慮行動とその支援 ・自社の環境管理 他 企画部 社会活動統括室 人間 ・雇用・職場環境 ・従業員 ・人材 ・ゆとり・豊かさの実現 他 ホールセール事業部門 最低限果たすべき責任 住友の事業精神 信託の根本理念 リテール事業部門 より積極的に果たす責任 経営管理各部 他 CSR委員会 2003年6月1日 に新たに設置 4 社会的責任に関わる具体的な行動 伝統的間接金融 家計部門 家計部門の超過資金を資金不足の法人部門へ仲介 預金 資金の活用方法は住友信託が決定 ○債権者としてのモニタリング ─直接の資金の出し手である個人に代わって 主に業績を中心に企業行動を監視 産業界 投融資 新しいタイプの間接金融(市場型間接金融) 株式投資 投信の販売 個人資産とリスクマネー の仲介 住友信託 ○社会資本整備事業への融資 社会的責任 マネー 公共部門 ○融資審査による選別 ─非合法企業へ資金流入の阻止 ○デフォルトリスクの一次負担 資金運用、資金調達の多様化を支える信託機能の活用 流動化・証券化 資産流動化 所有・管理・使用の分離によるリ スクシェアリングの促進 公益信託 助成事業の管理・運営の アウトソース 信託が本来備えている 特にSRIは 社会的責任マネーに対して プロダクトを提供 Multi-Product & Investment Counseling PFI 公共事業の資金調達の多様化 ・忠実義務、 ・善管注意義務、 が個人とリスクマネーを仲介 5 信託機能とは 市場経済と自己責任を支える3つめのコンセプト 「Free(自由)」、「Fair(公正)」、及び「Trust(信頼)」 ①主な信託目的 ・資産運用・管理(金銭信託など) 元々信託目的は社会性・地域 ・生活(年金信託など) 性に富んだものが多い ・公益(公益信託など) 受益者 ④信託利益の 交付 信託契約 ①信託目的 ③受託者 ②財産権の移転 委託者 管理運用の指示 Multi-Product & Investment Counseling 善管注意義務 分別管理義務 忠実義務 etc ②財産権の移転とその効果 倒産隔離 ・委託者から信託財産が独立 ・財産権の債権化 小口化・流動化に対する柔軟性 ③受託者の義務 ・善管注意義務 ・分別管理義務 ・忠実義務 信託銀行からの倒産隔離 最良執行 委託者・受益者へのレポーティング ④受益者の権利保護 ・関係者の破綻に際して第3者対抗要件を具備 ・受託者に対する各種請求権(事務処理、報告など) 6 (参考)公益信託 公益信託の設定例(平成15年3月末までに133の設定実績) 委託者 委託者 助成・表彰 助成先 助成先 助成先 助成先 公益信託の設定 助成先 助成先 表彰先 表彰先 財産管理 財産管理 助成先の推薦と 重要事項の同意 (指示勧告) 主務官庁 主務官庁 許可・監督 日常運営 日常運営 運営 運営 委員会等 委員会等 表彰先 表彰先 申請 公益活動 公益活動 住友 住友 信託 信託 Multi-Product & Investment Counseling 財産管理人 財産管理人 重要事項の承認 カトリック・マリア会・セント・ジョセフ奨学育英基金 この基金は、経済的に恵まれない家庭の高校生に奨学金を支給し、 あるいは経済的に恵まれない在日外国人などの子弟である我が国在 住の小中学生に就学援助金を支給することにより就学を支援するも ので、博愛平等の心に充ち敬謙篤実な社会人を育成することを目的 としています。当社が受託している公益信託の中では最大規模の信 託財産を有し、平成14年度には109人の青少年がこの基金の支援を 受けています。(委託者:宗教法人「カトリック・マリア会」) 経団連自然保護基金 社団法人 日本経済団体連合会では、平成4年に基金を設立して自然 保護活動に対する支援を行ってきましたが、内外からの要請の高まり に呼応して支援をさらに拡充するため、その仕組みを改めて公益信託 としたものです。非営利の民間組織が行う、アジア太平洋地域を主と する自然環境の保全に関する業務、および国内の自然環境保全地域 などにおいて行う自然保護活動に対して助成を行っており、自然保護 活動の推進を図り、人類の健康で文化的な生活の確保に資すること を目的としています。平成14年度には23カ国、72件のプロジェクトが助 成を受けています。(委託者:日本経済団体連合会自然保護協議会) 三宅島火山活動災害・被災児童就学援助基金 この基金は、三宅島の火山活動災害に対して、全国のPTAの皆様か ら寄せられた義援金をもとに設定されました。三宅島火山活動を原因 として離島した三宅島の小中学生、居住家屋の倒壊などの被害を受 けた新島などの小中学生に対して就学援助金を給付し、あるいは被 害を受けた三宅島を中心とする小中学校における勉学費用の一部助 成を行うことを目的としています。平成14年度には293名の小中学生 が給付を受けています。(委託者:社団法人日本PTA全国協議会) 7 SRIに対する投資家のニーズ 個人投資家のニーズ(環境省「社会的責任投資に関する日米英3 か国比較調査報告書」 ) 企業年金のSRIに対するニーズ(03年7月開催「デフレ時代の年金資産運用」セミナーのアンケート結果) 「SRIは新しい超過収益源泉である」という考え方について 回答数 納得的である そうは思わない よくわからない 導入視野に検討 5 5 更に詳しく聞いてみたい 11 8 検討対象の一つ 57 33 特に興味はない 24 7 無回答 25 4 合計 122 57 Multi-Product & Investment Counseling 1 1 その他 無回答 19 4 1 15 1 2 1 2 37 20 5 21 8 株式投資型SRIの社会的なインパクト • サプライチェーンとの比較 • 伝統的間接金融との比較 • 株式投資が持つ影響力(その源泉) – 株式市場の特性(市場規模、アクセスの容易さ、機動性等) – 市場参加者の多様性 • すべてのステイクホルダーが呼び込むことができるマーケット • 個人投資家が参加可能なマーケット – 株主行動の持つ意義 Multi-Product & Investment Counseling 9 住友信託の企業年金型SRIファンド 2003年7月24日 毎日新聞朝刊 2003年7月24日日本経済新聞朝刊 Multi-Product & Investment Counseling 10 弊社の企業年金型SRIの特徴 ① SRIの理念とリターンを共に追求するWin-Winの投資哲学 ② 日本で初めての企業年金向けのファンド ③ トリプルボトムラインを網羅 ④ “ベスト・イン・クラス”のポジティブ・スクリーニングプロセス ⑤ リサーチを重視(日本総合研究所とのタイアップ) ⑥ アクティブ運用スキルとリスクコントロール Multi-Product & Investment Counseling 11 4つの評価軸 経済的責任 法的責任 法令遵守、コーポ レートガバナンス、 情報開示 企業が果たす 責任(CSR) 効率的経営の実践、 株主、債権者、従業 員、政府に対する財 務的な貢献 従来型の株式 運用の評価軸 Corporate Social Responsibility 環境的責任 地域、グローバル社会への 環境配慮と貢献(環境会計、 EMS、環境負荷チェック) 社会的責任 消費者への配慮・情報提供、人材育 成・支援、グローバル市場への的確 な対応、社会活動への積極的な参加 従来の株式運用が十分に見ていなかった企業の評価軸 しかし 不祥事リスクの回避、ブランド価値向上等への寄与度は大きい 4つの評価軸を詳細な細目により評価 4つの評価軸を詳細な細目により評価 Multi-Product & Investment Counseling 多面的評価による網羅性 14 ベスト・イン・クラス/ポジティブスクリーニング 投資ユニバース 250∼300社 ポートフォリオ構築の2つの柱 SRIファンド 50∼100社 セクターバイアス 東証33業種ウェイト とSRIウェイトを総合 判断 投資ユニバース 4つの評価軸に 優れた業種の偏り ネガティブ・スクリーニ ングに替わる弊社SRI ファンドの特色 業種ウェイト 銘柄ピック をあらゆる角度から評価 ベスト・イン・クラス 業種2 業種1 業種5 業種3 各業種から最も優 れた企業をピック アップ 4つの評価軸と 市場センチメント を総合判断 業種4 Multi-Product & Investment Counseling 16 ネガティブ・スクリーニングの問題点 ネガティブスクリーニングパフォーマンス (1994/10末∼2003/6末) 平均収益率 対TOPIX 標準偏差 TOPIX -5.458% 17.691% 全体 -5.743% -0.285% 18.449% タバコのみ -5.464% -0.006% 17.717% アルコールのみ -5.482% -0.024% 17.736% 武器のみ -5.475% -0.017% 17.649% 原子力のみ -5.689% -0.231% 18.401% 全てのケース でパフォーマンス が悪化 *2003年3月末のTOPIX構成銘柄から該当銘柄を除外したポートフォリオのバックテスト *武器は防衛庁公表資料より上位5社(納入業者) *原子力は9電力 Multi-Product & Investment Counseling 17 受託者責任上の整理 米国 米国 エリサ法(受託者責任を定めた法律) SRIに関する米労働省(エリサ法の監督官庁)のAdvisory Opinion(Calvert letter) 「受託者信用スタンダードの維持の観点からSRIを除外できない」 (…do not preclude consideration of collateral benefits, such as those offered by a “socially-responsible” fund…) 但し・・・・ • 非財務的要因(社会的要因)を考慮することで事前に財務的要因が損なわれるということが分 かっているのなら、受託者責任に悖る。 • 逆にいうと、財務的要因が損なわれないなら、投資のスタイルがSRIであろうとなかろうと受託 者責任の観点から労働省がSRIを排除する理由はない。 • 特に、非財務的要因ということで具体例としてあげているのは、特定業種を排除することのパ フォーマンスへの影響。例えば、タバコ産業や武器産業を事前に排除することで明らかにパ フォーマンスが市場に比べて劣後すると分かっているなら、それは受託者責任の観点から認 められない 。 ネガティブ・スクリー ポジティブ・スクリー ニングタイプのSRI ニングタイプの しかし SRIは普通のアク は受託者責任上 の懸念がある ティブ運用と同様 Multi-Product & Investment Counseling エリサ法(中立スタンス)と欧州各国 の年金法(積極スタンス)の考え方は 明らかに異なるが、SRI=受託者責 任違反というのは一面的な見方 18 企業側の特徴的な反応(声) • 年金が投資家になるのならば、アンケートへの回答も真 剣にならざる得ない。 • これまでIR上はコスト負担を問われる懸念から、十分ディ スクローズしてこなかったものについて、今後はむしろア ピールしてゆきたい。 • どうすれば投資対象に選ばれるか教授して欲しい。CSR を社内で進める上でマネジメントの説得材料にもなる。 Multi-Product & Investment Counseling 19 投資家のセグメント • 機関投資家 – 企業年金 – 公的年金/公的資金 – 公益法人(財社団、学校、宗教、医療等の法人) – 金融法人(銀行、生保、系統金融機関等) – 事業会社 • 個人投資家(確定拠出型年金を含む) • HNW(富裕層) Multi-Product & Investment Counseling 21 投資家の2つのタイプとSRI SRIビジネス 社会資本 整備事業 への プロジェクト ファイナンス CSR 優良企業 への 株式投資 投資家層 元本確保型運用 社債投資 コミュニティ投資など 低い 公益法人 投資家のリスク許容度 発行する 社債投資 元利払いの確実性 格付け 地域 コミュニティ への 優良企業が 融資 ビジネスが生み出す キャッシュフローの 優先劣後構造 高い Debt 低い Equity (注)信託譲渡して人 為的に優先劣後構 造を作ることも可能 Multi-Product & Investment Counseling 株式投資・匿名出資など 富裕家層 企業年金 高い 22 日本人のリスク選好度(一般論) 日本の一般的個人投資家は欧米諸国に比して現預金に偏重 その他 100% 株式以外の証券 株式・出資金 90% 保険・年金準備金 80% 貸出 現金預金 70% 60% 50% 40% 30% 現預金 20% 10% 0% 日本 米国 英国 ドイツ 出所:Newsweek (2002.6.26) Multi-Product & Investment Counseling 23 投資家は進化する 信託銀行(年金信託財産)の資産配分推移 1970年 22 6 46 75年 29 10 24 60 80年 9 55 85年 10% 20% 国内債券 40% 国内株式 50% 11 外国証券 70% 80% 貸付金 5 8 17 90% リスク資産へ の投資急増 2 41 26 60% 外国資産へ の投資開始 8 11 16 35 30% 13 10 27 34 2000年 17 1 26 46 95年 所謂、金利も のが中心(株 式が6%) 21 17 42 90年 0% 43 100% その他 分散投資をすすめる ことで株式投資単独 のリスクを軽減 社)信託協会資料より作成 Multi-Product & Investment Counseling 24 2つのタイプの投資家が抱える2つの問題点 元本保証型の運用 元本保証型の運用 エクイティ投資型の運用 エクイティ投資型の運用 3年定期金利の推移 3年定期預金金利の推移 資産別/ポートフォリオの累積収益率の推移 4.0 700 60.0% 4資産ポートフォリオ:年度収益率 3.5 1993.07 3.9% 50.0% 国内債券 国内株式 2.5 2.0 1.5 1.0 500 40.0% 外国債券 外国株式 30.6% 400 30.0% 300 200 20.0% 13.9% 13.2% 14.7% 12.4% 10.2% 11.2% 10.0% 0.0% 100 0 0.0 -100 4.5% 3.1% 1.0% 0.0% ▲2.8% ▲1.6% 0.5 1.4% ▲1.3% ▲5.5% ▲0.7% -10.0% ▲11.1% 2002年12月 2001年12月 2000年12月 1999年12月 1998年12月 1997年12月 1996年12月 1995年12月 1994年12月 1993年12月 1992年12月 1991年12月 1990年12月 1989年12月 1988年12月 1987年12月 1986年12月 1985年12月 2003.04 1984年12月 1993.03 -20.0% 4資産ポートフォリオ 金利が未曾有の水準まで低下したため 利息収入が極端に減少 Multi-Product & Investment Counseling 外国株式 25% 国内債券 25% 外国債券 25% 国内株式 25% 世界同時株安で 分散投資の効果 が得られていない 25 年度収益率 累積収益率指数(84/12末=100) 3.0 4資産ポートフォリオ:累積収益率 600 オルタナティブ投資に対するニーズの拡大 日経金融新聞 (2002年3月27日) Multi-Product & Investment Counseling 日経金融新聞 (2002年9月26日) 26 ポートフォリオ再構築とSRI 日本経済新聞(2003年5月3日) こうした面の検討をせずに、年金運営を続けることは「プルー デント」ではあるまい。基本資産配分の前提となる各資産の リスク・リターンの見直しに加え、国内資産に重点を置くホー ムカントリーバイアス、採用するベンチマーク(運用の指標)、 日本株パッシブ運用にもメスを加えるべきだ。代替投資商品 、社会的責任ファンドへの投資検討も欠かせない。 オルタナティブへの投資拡大の検討と同じ文脈 の中でSRIが語られている SRIが持つ代替投資性 分散投資効果向上への寄与 全体のポートフォリオをどうするかという 視点はSRIにおいても必須 Multi-Product & Investment Counseling 27 結論(金融機関の役割) • 金融機能を用いて社会の持続的な発展に貢献することは、金融機 関の果たす社会的責任である。 • 2つのタイプの間接金融機能を発揮することで投資家の「社会的責 任マネー」を企業のCSRを含めた様々な社会的責任活動に結び付 けることができ、またCSRへの支援ともなる。 • 投資家のニーズとリスク許容度の把握とそれに見合う最適なスキー ムの組成がポイント。 投資家に対しては商品の販売という観点だけではなく、ポートフォリ オの向上という観点でアプローチする必要がある。 積極的なプロモーションにより、参加者(特に投資家に対する商品の 供給者)を呼び込み、マーケットの拡大を図る。 • • Multi-Product & Investment Counseling 28 The End 本プレゼンテーションは金融商品の売買、また は取引戦略への参加を勧誘するものではありま せん。 本プレゼンテーションの内容や意見は、発表者 個人に属し、住友信託銀行の公式見解を示す ものではありません。